雨上がりの午後

Chapter 351 石垣への夫婦旅行(最終日)〜日常へ

written by Moonstone

「祐司さーん。そろそろ起きてくださーい。…。」

「…!」

 ぼやけた意識で晶子の声を聞いていたら、急に息がし辛くなった。口に柔らかいものが割って入って来て縦横無尽にひっかきまわすからだ。半ば強引に意識を明瞭にさせられ、目を開くと、顔のごく一部しか見えない晶子が俺の視界を覆っている。

「…はぁ。お寝坊さんですね。」
「な…何て起こし方するんだ。」
「昨夜のお返しです。」

 それを言われると返す言葉がない。数年ぶりの水着姿に欲情を刺激されて、風呂の時からじっくり攻め立てた。晶子の腰が立たなくなってぐったりしても尚、欲情に任せて思うがままにした。汗ばんだ身体を投げ出して息も絶え絶えな状態で「好きにして」と呟いたのが、火に油を注いだ格好だが。
 今の晶子は昨夜の面影は微塵もない。ブラウスにベスト、ズボンという至ってシンプルな普段の服装。夜が明けたらガラッと変わるのはもはや隠し芸だ。俺は眠気がまだ残ってるが、晶子に畳まれた服と下着を出されて徐に着る。顔を洗ってうがいをしてから朝飯のためレストランに赴く。
 どうしても晶子の衣装の印象が先行するが、このホテルの朝飯はなかなか美味い。沖縄料理目白押しかと思いきや、それは勿論としてスクランブルエッグや唐揚げといった一般的なメニューも織り交ぜている。沖縄色を出したビュッフェスタイルという表現がしっくりくる。

「お昼までどうします?」

 席に着いて、氷水を2人分持って来た晶子が言う。

「飛行機は…15時過ぎだったな。」
「はい。余裕を見て13時くらいに空港に行くとしても、お昼までは完全にフリーですよ。」
「島は実質2周したし…。買い物くらいか。」

 俺は職場に、晶子は店に、2人揃ってめぐみちゃんに土産を買っていくが、それは空港の待ち時間でも出来る。逆に、島を回ったり別の離島に行ったりするには時間が足りない。微妙な残り時間だが、ホテルでチェックアウトギリギリまで待機するのもちょっと勿体ない。
 レンタカーは今日まで借りていて、空港にほど近い店舗に直接行けば良い。だから空港行き≒レンタカー返却だ。石垣は全般的に走りやすかったが、繁華街は信号もあるし交通量も結構ある。どのみち近くの駐車場に車を置いて行動することになる。

「土産物探しも兼ねて繁華街を回るか。」
「はい。」

 無難な路線だが、繁華街なら飲食店も豊富だろうし、土産物や店そのものを見て回るのも良い。沖縄地方の産物というとまずちんすこう、次に泡盛。無理に奇をてらうと絶対失敗するが、ちょっと意外性がある土産物があると良い。特にめぐみちゃんは喜ぶだろうし。
 最初から相談するつもりだったのか、晶子は地図を広げる。繁華街は最初の徒歩での散策や右回りでの島一周でチラッと見た。このホテルから東の方にあるあやぱにモール、現在はユーグレナモールという場所がそうらしい。アーケード街だから、天候が悪くても安心だ。
 買う量が多少増えても、空港までは車に乗せて行ける。小宮栄空港からがちょっと大変だが。土産物は勿論、雑貨や酒、飲食店も揃っていて、市場もあるようだ。市場は今日石垣を発つ俺と晶子には使いようがない施設だが、石垣市中心部の台所的施設になっているだろう。
 東の方には大型量販店が散見される。メモリカードや水着の調達でお世話になった。土産物を見たり買ったりするなら地元の商店街の方が良いだろう。昼飯を済ませてからでも空港には十分間に合う。石垣旅行最後の楽しみは商店街巡りで決まりだ。
 一直線に伸びたアーケードは地下トンネルのようだ。車で行くことも考えたが、距離はさほどでもないし、駐車場の問題から徒歩で出かけることにした。チェックアウトを先に済ませて貴重品をフロントに預け、それ以外は車に詰め込んでおくというスタイルだ。
 身軽で良いし、何より駐車場を探してウロウロしなくて良い。車で付き纏う課題は何と言っても駐車場。土地勘のないところだと余計に苦労する。どうも石垣市の中心部は駐車場があまり豊富じゃないようだ。普段は徒歩か自転車だから、多少の距離なら歩いて行こうという結論に俺と晶子は達する。
 此処まで歩いてみて、その価値判断は正解だったと感じる。道が全体的にさほど広くない上に交通量はそこそこ多い。その上繁華街周辺は建物が密集していて、駐車場は途中1つしか見当たらなかった。既に満車だったのは言うまでもない。
 満車やそれに近い駐車場で空きを待つため車が列を作ることがある。これが渋滞を生む。片側1車線のところで入場待ちの列が出来ると、追い越そうにも対向車が来る恐れがある。後方ほど見通しが悪いから対向車と正面衝突するリスクが高まる。
 地図を見ると、駐車場はユーグレナモールの至近距離には2つ。そのうち大きい方の1つが途中にあったが、そこは満車だった。もう1つはあまり広くなさそうだし、一方通行があったりと難しい。土地勘がない場合は避けた方が無難な立地だ。
 海沿いに複数の広い駐車場があるが、そこから歩くとなるとホテルから歩くのとあまり変わらない。それならホテルの駐車場に車を待機させておいて、買い物を持ち帰って空港に向かう方が、時間の面でも料金の面でも得だ。ホテルの駐車場は無料なんだから。

「アーケードがある商店街って、初めて見ます。」
「屋根付きというか、道が覆われてないタイプならあるか?」
「それもないです。出身地は個人商店が点在するような形でしたから。」
「そうだったか。一度行った時はそこまで気が回らなかったな。」
「周囲の景色まで観察する余裕がなくても無理ないですよ。」
「かく言う俺も、こういう完全なアーケードがある商店街は初めてだ。小宮栄は地下街しか知らないし。」

 軒先を広くしたような感じのアーケードがある商店街は地元の駅前にあった。雨風に晒されないし買い物客には便利なアーケードは、建築から維持管理までかなり金がかかると聞いた。見た感じ、建築も修理も大仕事だろうとは思う。
 公共事業が無駄遣いになりやすいのは、造る時は色々な意味で入念に進めても、造り終えたらそのままで良いとなる傾向が強いからだ。建物はそのままでも経年劣化していく。使い方が悪かったり、逆に全く使われないと寿命が短くなる。
 使っても使わなくても、建物は存在するだけで何らかの出費を必要とする。固定資産税だったり賃貸料だったり。使われるならその分利用料が入ったり、経費があったりする。使われないのが一番問題で、出費ばかりになってしまう。それが「無駄な公共事業」の典型例でもある。
 アーケードに入る。通路の両側に小ぢんまりとした店が軒を連ねている。雑貨だったり酒だったり、菓子や果物もある。土産と聞いて思いつくものはひととおり揃っているようだ。正直、店の数や品揃えは胡桃町の商店より良いと思う。

「お菓子って、ちんすこう以外だと何が良いでしょう?」
「紅芋タルトっていうのが良いかもしれない。色で好き嫌いが出るかもしれないが。」

 タルトというくらいだから洋菓子店で見るタルトと同系統と見て良いだろう。問題は色。赤紫は普段の食べ物にはない色だ。亜熱帯地方のせいか、全体的に食べ物の色が派手なのもあるが、この色を毒々しいと感じると食べるのが躊躇われるかもしれない。
 土産物としては趣味の相違のリスクがあるアクセサリーや雑貨と比べても食べ物が一番無難だが、好みの問題はどうしても避けて通れない。偏食は度外視するとしても、甘いものが苦手とか、餡が苦手とか色々ある。それらをすべて回避するのは相当難しい。
 土産物だから、やっぱり「らしさ」が欲しい。何処でも買えるようなものなら、今の時代通販もあるし、新京市なら小宮栄に出ればだいたい何でもある。それより遠路はるばる日本の南の果てに来たんだから、石垣らしい、八重山らしいものが良い。

「そう言えば、紅芋は川平で食べましたね。アイスでしたけど。」
「そう…だったな。あれがあのままタルトになっているかは分からないが、色を除いて好き嫌いが出難そうではあるな。」
「芋は基本的に味が甘いタイプですから、余程の味付けじゃなければ問題なく食べられる筈です。」
「晶子が言うなら大丈夫だな。」

 俺も決して味音痴じゃないが、料理を食べて味が識別できる範疇を出ない。晶子はこの材料ならこういう味、これとこれをこう調理すればこういう味になるというところまで分かる。その知識と経験と能力で作られる創作料理に外れはない。
 色はもうどうしようもないが、味が良ければ見た目のマイナス分は意外性でプラスに転じるし、見た目がプラス分ならよりプラスに加算される。紅芋タルトも候補に入れておいて間違いはないだろう。
 店を回っていく。ちんすこうや紅芋タルトといった菓子類の土産は彼方此方にある。値段は何処も同じのようだ。試食できると良いと思っていたが、どの店も試食できるようだ。やっぱり初めてのものや見た目ちょっと尻込みしてしまうタイプだから、試食で確認してもらう必要があると踏んでいるんだろうか。

「ちんすこうって、色々な味があるんですね。」
「そのようだな。1つだけかと思ってた。」

 菓子類の土産候補の1つ、ちんすこうは、塩だけでも地元石垣島のものの他、宮古島、北谷(「ちゃたん」と読むらしい)、ぬちまーす−方言で「命の塩」らしい−がある。他にミルク、パイナップル、抹茶、チョコショコラとバラエティに富んでいる。
 そもそも、俺はちんすこうという名前は知っていても、味の詳細は知らない。意外とそういう人は多いんじゃないだろうか。有名どころの土産と言っても毎日食べるもんでもないし、食べる前から情報、今だと特にネット経由で情報を得ている場合が多い。
 その情報が正確ならまだしも、個人的見解をさも多数が納得する見解のように表現したり、悪意を以て曲解や捏造をした結果である場合も多くて、その真偽は容易に確認できない。マスコミを偏見や捏造と批判する割には、ネットの側も偏見や捏造が溢れているのが実情だ。
 実際は問題なく食べられたり、万人受けするタイプだったりするものでも、先に偏見や捏造でネガティブなイメージが植えつけられていると、いざ選ぶとなった際に及び腰になることは十分ある。ちんすこうもその1つかもしれない。

「万人受けするタイプを選んだ方が良いな。味の好みは分かれやすいから。」
「至極もっともですね。だとすると…。」

 晶子は真剣に考える。店のスタッフはオーナーの渡辺夫妻を除くと晶子が最年長。実際は4歳か5歳しか離れてないんだが、その自分が買っていくものだから余計に気を遣うんだろう。俺は「不味くなくて地域色が出ていれば良い」というある意味安直な考え方だが。
 暫く考えて晶子が選んだのは、石垣の塩の味。奇しくも俺と同じになった。俺も試食してみたが、一番万人受けしそうなものがこの味だった。塩味と見て塩辛いと思いがちだが−俺も最初はそうだった−実際食べてみると塩味は殆ど感じない。
 アイスや餡にごく僅かに醤油を落とすと甘みが増すというが、この塩味はそういう演出のためと見た方が良さそうだ。大きさや価格も手頃。沖縄地方の土産≒ちんすこうとなったのは、こういう手頃さもあるように思う。

「紅芋タルトも買っていきませんか?」
「運ぶのは…2箱くらいなら増えても良いか。」

 土産を買う時になるのが荷物の増加。帰りの飛行機でもあの保安検査ってものがあるが、あの時は荷物を手当たり次第にトレイに乗せないといけない。それが嫌なら手荷物カウンターで預けるしかないが、土産物が崩れたりしない保証はない。
 実際、電子機器や壊れやすいものは機内に持ち込む案内がなされている。オーケストラが使う高価な楽器を手荷物として預けたら、使い物にならなくなってしまったという話を聞いたことがある。大量にある重い荷物を短時間で機内に収納するんだから、扱いは推して知るべしか。
 土産物も基本は機内持ち込みの選択肢を取ることになる。持ち込める荷物はあまり大きなものや重いものを想定していない。行きの飛行機で小さめのキャリーバッグを荷物入れに押し込めようとする女性グループがいて、渋滞を作っていた。
 あの時は「何やってるんだ」と思ったが、無暗に荷物を増やすと自分がそう思われる側になる。飛行機はあの巨大さの割に出入り口が1つしかないし、通路も狭いから簡単に渋滞する。土産を買うのは良いが、飛行機に持ち込むことも考えておく必要がある。

「荷物なら、私が大きめのバッグを持ってきてますから、それに入れれば十分1つにまとまりますよ。」
「そんなもの持ってきてたのか。」
「何も入ってなければ小さく畳んでおけますし、あれば何かと便利だろうと思って。」
「流石だな…。」

 こういう細やかな配慮や気の回し方は、俺じゃ到底及ばない。晶子が俺の妻で本当に良かったと何度も思わせられる。俺も晶子に任せっ放しにならないように、常日頃考えて行動するようにしないといけないな。
 紅芋タルトもそれぞれ1箱ずつ買う。この時点で、店の人が全部入る大きい袋に入れ替えてくれる。紙袋だから念のため晶子が持ってきたバッグに後で入れるが、手提げ袋の段階で一括して持てるのはありがたい。

「ありがとうございます。」
「たくさん買ってくれて持つのが大変そうですからね。袋は二重にしておきましたんで。」

 この人、ちんすこうを試食して籠に入れた時までは大して関心なさそうだったが、紅芋タルトを2箱籠に入れたら明らかに注目し始めた。意外と現金だな。価格でいえばちんすこう2箱と比べて倍以上だし、試食だけの冷やかしじゃないと分かれば喜ぶのは自然ではある。

「あと、めぐみちゃんの分はどうしましょう?」
「菓子より常時身につけられるアクセサリーみたいなものが良いかもな。」
「そうですね。となると…、ストラップとか。」
「めぐみちゃん、携帯は持ってたか?」
「まだ持ってないです。中学生になるまでは持たせないと高島さんが決めているそうです。」

 ストラップは携帯と=で繋がりやすいが、キーホルダーやバッグとかのワンポイントのアクセサリーにすることも出来る。どのみち菓子はめぐみちゃんと高島さん用に買っていくし−それをちんすこうか紅芋タルトか別のものにするかは未定−、めぐみちゃん用にアクセサリー類が良い。
 あまり高価なものは俺も晶子も買い辛いし、めぐみちゃんが扱いに困るし、高島さんも困るだろう。アクセサリーは結構選ぶのが難しいのは、晶子への指輪とイヤリングで身に染みて分かっている。これは晶子に一任するのが良さそうだ。

「晶子が選んでみてくれないか?」
「私、アクセサリーを買わないですし、今あるものも祐司さんからもらったものだけですよ。」
「数じゃなくてセンスの問題。俺が可愛いって思うものより晶子が可愛いって思うものの方が、めぐみちゃんの感性に合いやすいだろうし。」
「そうだと良いんですけど…。」

 確かに、晶子は同年代どころか女性全体から見ても、所有するアクセサリーの数が異様に少ない。服やバッグの数も恐らく非常に少ない方だと確信に近いレベルで推測できる。「燃費」の面からすると非常に高いが、所有のアクセサリーとの比較検討は難しい。
 複数の服やアクセサリーをちりばめるより、今あるものを徹底的に使うというのが晶子の方針だ。結婚した今もその方針は堅持されている。おかげでアクセサリーは指輪とイヤリングのみだが、指輪は常時、イヤリングはフォーマルな場を中心にその方針どおりに活用されている。
 幸い、晶子にはセンスの良さがある。これは俺がどうやっても真似できないものの1つだ。めぐみちゃんが実の母以上に晶子を慕っているのも事実。晶子が選ぶことで複数の角度から外れを防ぐことが出来る。
 晶子は再び真剣に選び始める。この店は土産物店というだけあって、菓子以外にアクセサリーや酒も色々ある。晶子は菓子を選ぶとき以上に真剣に選んでいる。俺はあれこれ言うより選択肢を出された時に答えたりするに留めておくのが無難だ。

「?このストラップって…。」

 暫く選んでいた晶子が、1つのストラップに注目する。ストラップを掌に置いて、今度はそれをもう片方の手で覆って…。何してるんだ?

「祐司さん。これ買っても良いですか?」
「その価格なら全く問題ないが、何か仕掛けがあるのか?」
「これ、よく見てくださいね。」

 晶子はもう一度ストラップを掌に置いて、それをもう片方の手で覆う。その隙間から見えるのは…!
 晶子が用意していたバッグに土産物を詰め込み、タクシーで空港に到着。ターミナル前にロータリーがあるから、降りれば直ぐにターミナルビルに入れる。機内持ち込みの荷物は1つ増えたが、俺が持てば良いことだし、十分持ったり上げ下ろししたり出来る重さだ。
 バッグは見覚えがあると思ったら、正月にめぐみちゃんに会いに行った時のものだった。ユニバーサルスタジオでめぐみちゃんがぬいぐるみを買ってもらったり獲得したりした際、晶子がめぐみちゃんの目の前でこのバッグに入れて送り届けた。
 元々このバッグは晶子のもので、旅行や引っ越しの時に使うものとして持ってはいたが使う機会がなかった。めぐみちゃんに会いに行く時がバッグのデビューだったが、丈夫で使い勝手が良いと分かり、今回の旅行に持ってきたそうだ。
 バッグには菓子類の箱が5箱、小分けの袋や店で入れてもらった袋と共に入っているが、まだまだ余裕がある。ちなみにめぐみちゃん用に買ったストラップは、晶子が自分のハンドバッグに大切にしまっている。きっと喜ぶに違いない。

「本当に楽しかったです。」

 どうしても緊張する保安検査を終え、ゲート近くの椅子に座って晶子が言う。

「祐司さんと日常を離れて別世界の時間を過ごせて…。こんな幸せに浸れるなんて…。」
「怪我の功名って言うのか?こういう場合。何れにせよ、来て良かった。」

 元々は、600万もの追徴違約金の支払い後も、何かと高島さんを通じて晶子を引き戻そうとする晶子の両親と実兄の執拗さとそこから湧き出るストレスから一時的にでも脱却するため、として渡辺夫妻に旅行を提案されたのが発端だ。そこに南十字星を見たいという晶子の要望が重なって石垣行きが決まった。
 晶子は本当に楽しそうだった。天候は偶然にも終日快晴で、初日の夜にいきなり南十字星を見つけられたし、その翌日は浜辺でよりくっきり輝く様子も見られた。わざわざ星座早見盤まで用意していたんだから、意気込みが分かるというものだ。
 予想をはるかに上回る透明さの海には驚いた。晶子はその透き通る海に惹かれて泳ぎたくなり、現地調達で水着を買って竹富島に渡って海水浴に興じた。人が少なく、サンゴが底に広がる海を自由に泳いで潜ったのは、まさに別世界そのものだった。
 晶子の貴重な衣装替えが見られた機会でもあった。琉球衣装はまさに当時の上流階級の令嬢そのもの。俺も夢中で写真を撮った。それが良からぬ輩の欲望と妙なプライドを刺激してちょっと危険な雰囲気にもなったが、晶子の機転で退けることが出来た。
 現地で浮上した海水浴に付随する水着は強烈だった。スタイルの良さを最大限引き出すデザインだったし、露出が多い衣装を着る晶子を見ることは普段ないから、新鮮さも強かった。その分、昨夜はじっくり激しく攻め立てることになったが。

「また来られるように、2人で頑張ろう。」
「はい。そうですよね。2人で頑張れば良いんですよね。」

 そう、今は俺と晶子が2人で相互補完できる。協力や分担も出来る。まだまだ晶子の両親と実兄の執拗な要求は続くだろうが、根負けしたら全てが終わる。論外として退け続ければ良い。公正証書もあるし、高島さんとめぐみちゃんがいる。
 あと30分ほどで石垣を離れる時が来る。名残惜しいがこれが最後じゃない。そうするのは他でもない、俺と晶子だ。また来たいと思うなら、その時に向けて日々を過ごし、金を貯めて、外敵を退ける。2人なら…出来る。
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