謎町紀行 第76章

追い詰められ、傀儡と化すボスママ

written by Moonstone

 翌朝。ワイシャツネグリジェ姿のシャルに起こされ、若干の寝不足を洗顔と朝食で解消して出発。目指すはカノキタ市、母親グループの代表宅。最寄りのインターからシャルのHUD表示のサポートを受けて、市の中心部を迂回する。現在、市役所を中心にカノキタ市は大混乱中。警察も出動する騒ぎになっているのは、これから向かう母親グループの代表も大いに関係している。

「シャル。母親グループの代表は逃げてない?」
「逃走を試みています。周辺被害を防ぐため、あえて逃走経路を用意して、そちらに誘導しています。」
「やっぱり逃げるか…。」

 カノキタ市の混乱は、流入した外国人世帯とカノキタ市の市民の小競り合いが発端となった。生活保護を求めて長蛇の列を作る外国人世帯とその整理案内や炊き出しなどの支援を行う支援団体に対し、一般市民が行政の停滞と市の財政のさらなる圧迫、つまりは自分達の負担増大の不満を市役所や支援団体にぶつけ始めた。
 市役所は市民相手だから対応に苦慮する一方、支援団体は支援対象の外国人が最重要で、市民ははっきり言って二の次。これが市民運動やリベラル政党の支持がなかなか広がらない、逆に敬遠されることさえある原因なんだけど、それを多少オブラートに包んだとはいえ口に出した上に、「差別」を盾に排除を図ったことで市民の怒りが爆発した。
 「差別」は自分達の行動や発言を退けるための絶対的な印籠じゃない。それを市民団体などは意外なほど分かっていない。利権を貪り、他者を抑圧し、反対や批判を「差別」として排撃することが、かつて西日本を中心に展開された同和利権であり、現代のBLMやLGBT、フェミニズムなど所謂ポリコレ運動だ。これで自分達の支持や理解が広がると思う方がおかしい。
 カノキタ市の市民と支援団体の間で激しい口論が勃発し、ついに小競り合いが始まった。市役所は慌てて警察を呼んで事態の収拾を図ったけど、これが火に油を注ぐことになった。この手の支援団体は警察を嫌う傾向が強いし、市民は自分達の生活が脅かされているところに警察を呼ばれて、自分達が加害者なのかと怒りを更に増した。
 警察が手を出しあぐむ中、カノキタ市の市民と支援団体の小競り合いは乱闘に発展した。警察も流石に制止に入ったが、市民から「流れ込んできた外国人と余所者に生活を脅かされる市民を逮捕するのか」「上級国民は犯罪を犯しても警護するのに市民は即逮捕か」と激しい批判を受け、割って入って冷静になるよう要請するのが精いっぱいだ。
 今の状況は警察にはかなり分が悪い。最近ではA県でホーデン社と癒着して交通事故や違反の揉み消し、捜査情報の横流し、被害者への圧力など、ホーデン社の専属警備会社そのものの悪行を繰り返してきた。更にO県では宗教団体神祖黎明会と癒着して地上げに臓器密売とマフィアそのものの悪事を働いた国会議員が、逮捕されずに暢気に任意の事情聴取。いくら「罪状が固まり次第逮捕・起訴する」と言ったところで、一般市民との扱いの格差が露骨すぎる。
 そんな状況で様々な角度から生活を圧迫される市民を逮捕したら、警察への批判はさらに強まるのは必至。実際、A県ではこれまでの反動で、警察関係者への販売停止を掲げる店舗や企業が複数出ている。通常勤務でも「ホーデン社の警護だけしてろ」と罵声を浴びることは日常茶飯事だという。
 混乱の収拾の目途が立たない中、この事態を招いた大きな原因である市長と母親グループの代表は表に出て来ない。市長は完全に引きこもり、母親グループの代表は、昨夜からの報道を受けてカノキタ市からの逃亡を図っている。報道とはズバリ、件の主計官との不倫関係。
 重要な宝物であるヒヒイロカネの一部を譲り渡したことが妙に引っ掛かっていて、もしかして、と思ってシャルに調査してもらったらビンゴだった。主計官が最初にカノキタ市を訪れて、当時は市民団体だった母親グループと会談したことが契機になって、霞が関とカノキタ市で遠距離恋愛ならぬ遠距離不倫が始まった。
 主計官も既婚者だからダブル不倫。しかも主計官という特殊な立場での不倫は、スキャンダルとしてはまたとないものだ。シャルは調査結果を匿名で複数のマスコミに流した。財務省の有力幹部であり、カノキタ市から国会議員に立候補が事実上決定したばかりの主計官と、カノキタ市を牛耳る母親グループの代表の不倫は、一気に拡散した。
 主計官はカノキタ市での会談を取りやめて霞が関にとんぼ返り。母親グループの代表は自宅に引き籠る一方で逃亡の機会を窺っている。シャルは主計官を航空部隊に追跡・監視させると同時に、母親グループの代表を誘導して、騒ぎから隔離したところで捕縛・尋問するつもりだ。

「母親グループの代表が、自宅から逃亡を開始しました。誘導を開始します。」
「頼むよ。」

 HUDが示す道は不規則に左折右折する。渋滞や信号を避けて、最短時間で目的地に向かうためだ。HUDには赤と黒のマーカーがある。赤が目標地点、黒が母親グループの代表の現在地。黒のマーカーはフラフラしながら赤のマーカーに向けて移動している。
 市街地を抜け、住宅地を掻い潜り、田園地帯を走る。赤のマーカーに向かう移動が直線に近くなってくる。黒のマーカーは、相変わらずフラフラしながら赤のマーカーに近づいている。見えてきたのは…公民館?HUDと方向からして、公民館らしい平屋の建物が目標地点らしい。
 HUDの指示に従って公民館脇の駐車場にシャル本体を止め、シャルと一緒に建物に入る。周辺は人家より田んぼの方が多い環境。母親グループの代表の自宅は、住宅地のど真ん中。地理的な関係性はないように思うけど、シャルの考えだから適当に選んだわけではないだろう。

「あ、あんた達、誰?!」

 建物に踏み込んで最初のドアを開けると、12畳程度の畳の部屋に性格がきつそうな印象の女性がいた。彼女が件の母親グループの代表か。

「週刊誌?!新聞?!どっちにしても、マスコミに用はないわよ!!出てって!!」
「そうはいきません。出してもらいましょうか。幸運と未来を齎す宝物とやらを。」

 シャルが前に進み出る。声のトーンが普段より低い。冷徹な執行者に切り替わっている。

「!!あ、あんた、あの宝物をどうして?!」
「あなたの疑問に答える謂れも義務も義理もありません。出してもらいましょう。」
「そ、そうはいくか!!」
「これ以上、神の啓示とやらに人様を巻き込むのは止めるんだ。…君の両親からの伝言、確かに伝えたよ。」
「欲望に溺れた猿は、人間の言葉なんて理解できませんよ。」
「失礼な奴等ね!!」

 母親グループの代表は、コートのポケットに手を突っ込んで何かを取り出す。黒光りするあれは…拳銃?!

「悪党に拳銃はつきものですね。そんなチャチな道具で何が出来ると?」
「こ、これが見えないわけ?!拳銃よ、拳銃!!」
「だから、そんなチャチな道具で何が出来るのかと。」
「う、煩い!!近づくな!!近づいたら撃つわよ!!」
「ド素人が拳銃をまともに使えるとでも?使えたところでどうにもなりませんが。」
「煩い!!」

 シャルが近づこうとするより前に、代表が拳銃を僕とシャルに向けて引き金を引く。乾いた破裂音のような音がした次の瞬間、シャルが額より少し上のあたりで、左手の親指と人差し指で弾丸を摘まんでいた。弾丸が飛んでくるところは見えなかったけど、シャルにとっては指で摘まむように取れる程度でしかなかったか。

「ド素人の割にはまともに射撃できましたね。」
「た、弾を指で?!あ、あんた、何者?!」
「あなたの疑問に答える謂れも義務も義理もありません。何とも同じことを言わせるあたり、所詮は猿ですね。」

 シャルが言うと同時に、床や壁や天井から無数の触手が伸びて代表を捕らえる。両腕と両足を完全に封じて、正面から見て大の字になるように拘束する。握られていた拳銃も、触手が指を引き剥がして奪い取る。代表は迎撃も逃亡も何も出来ない。

「な、何なの?!これは?!」
「しつこいですね。あなたの疑問に答える謂れも義務も義理もありません。こちらの質問には答えていただきます。」
「か、勝手な理屈を!!」
「財務官僚と5年も不倫をして、自分の実績作りのために市と県の財政を食い荒らし、不倫相手の財務官僚の威光を笠に着て次期市長を狙っておいて、どの口が言いますか。」

 シャルが言うや否や、触手が代表を殴打して、そのまま代表の顔を繰り返し殴る。触手の先端が動いているだけだから、それだけ見れば擽(くすぐ)っているような動きだけど、代表の顔は限界まで左右に触れる。渾身の力を込めて金属バットで往復フックしているようなものだろう。

「大人しく喋るなら、この程度にしておきます。良いですか?」
「は…はひ…。」
「主計官から渡された宝物の正体を知っていますか?」
「し、知りません。」

 代表が否定すると、触手が代表の顔を殴打する。強い力と強固な金属で殴っているから、顔の形がひしゃげてしまっている。本当に容赦ない。

「大人しく喋らなければ、どんどん顔が変形するだけです。そのうち夫や子どもでも、親でも分からないほどになるでしょうね。」
「ほ…本当に…知りません。」

 代表が途切れ途切れに言うと、触手が遠慮なく代表の顔を殴打する。首が千切れ飛ぶんじゃないかと思う一撃の連続で、本当に顔の原型が分からなくなってきた。厳生寺で住職や半グレ集団を半殺しどころか3/4くらい殺した時を彷彿とさせる。

「日本語が分からないようですねー。言って聞かないなら身体に聞くまででーす。国家の秘密を忠実に守って死ぬのも良いでしょうねー。」

 まずい。シャルの声のトーンが一気に下がって、抑揚に欠けた語尾の伸ばし方をする。完全に切れた状態だ。そこには一片の慈悲も情けもない。すべてを吐かなければこのまま殺す。ただそれだけしか感じられない。

「ほ…本当に…何も…知らないです…。彼から…この宝を持つ者は…この国…、ひいては、せ、世界の支配者の証だ、と…。」
「懲りない猿ですねー。」
「本当。本当に…それ以外、聞かされてなひ…です。し、信じて…信じてくだ、さひ…。」
「猿の言うことを素直に信用するわけないでしょうー?」

 懇願する代表にシャルが容赦ない制裁を加える。顔が原形を留めないほどひしゃげている。鼻と口から血が垂れ流される。気を失ったのか、代表ががっくり項垂れる。触手が血の付いた髪を引っ張り上げて強引に顔を上げさせ、みぞおちに一撃を叩き込む。気を失ったことがシャルの逆鱗に触れたんだろうけど、少々理不尽ではある。代表は激しく嘔吐して、激しく咳き込む。

「何を勝手に気絶してるんですかー?気絶すれば解放されるとでも思いましたかー?」
「本当に知らない…。し、信じて…。お願ひ…です…。お願いしまふ…。」
「猿との会話では埒が明きませんねー。直接脳みそに聞きますかー。」

 触手が何本も代表の頭に突き立てられる。カエルを締め上げるような声がする。目らしい部分を見開いた代表の頭に無数の太い血管のようなものが浮かぶ。何とも言えない悲鳴のような呻き声のような音を発する代表を他所に、触手が不規則に動く。文字どおり脳みそを引っ掻き回しているように見えて仕方ない。

「…ほうら、嘘つき。」

 シャルがほくそ笑むような、嘲笑するような、獲物を捕らえた猛獣のような笑みを浮かべる。代表の頭から触手が一斉に引き抜かれる。口と鼻らしい穴から血を垂れ流し続ける代表は、がっくり項垂れて生きているのか死んでいるのか分からない。

「支配者の証とやらは返してもらいまーす。猿に拒否権はありませーん。」

 触手の1本が代表のコートの内ポケットに入り、掌サイズの球体を取り出す。見た目普通の金属球のあれがヒヒイロカネ。財務省の主計官クラスで継承あるいは争奪されていると見られる「支配者の証」の一部。こんな金属球を「支配者の証」と称し、崇め、継承或いは争う様はあまりにも無様で醜い。

「猿には猿らしい末路を用意しておきまーす。せいぜい吊し上げられることですねー。」

 触手の1本が平たくなって代表の顔を覆う。少しして離れると、夥しい出血がすっかり止まり、元通りになった。あれだけ激しい制裁を加えて、原形を留めないほどボロボロにして、一瞬で元に戻した理由が分からない。猿らしい末路の意味も分からない。そもそも、カノキタ市のかなり北の端の集落まで追い込んだ理由も分からない。

「これから順に説明します。この猿の末路と共に。」

 シャルの口調が普段のものになる。代表の何かがシャルの癇に障ったんだろう。単純にヒヒイロカネを持っていただけなら、いったん拘束して回収したら記憶を消して解放となっただろう。何がシャルの逆鱗に触れたのか、そして代表の末路とは何か、シャルからの説明を待つ。
 触手から解放された代表は、畳に膝から落下して倒れ伏す。と思ったら反射的に立ち上がり、一目散に部屋から出て行く。僕とシャルが全く目に入っていないようだった。特に自分を徹底的に痛めつけた相手であるシャルは、敵わないとしても睨みつけるくらいしてもおかしくないのに。

「此処は、例の母親グループの原点ともいえる場所です。母親グループはこの地域に住む母親の育児サークルでした。」

 この地域は、市町村合併によるカノキタ市の誕生前後も、市街地から離れた雪深い過疎の地域だった。スズリ市ハクエン町から出奔した代表はタザワ市に流れ着き、当時タザワ大学病院に勤務していた現在の夫と婚活パーティーで知り合い、若い女性という地域ので希少価値を巧みに利用して結婚に持ち込んだ。
 見てくれは客観的に見てかなり良い方だと思うし、20代という婚活パーティーで有利な条件を持ち合わせていた代表は、結婚後早々に出産。その時、夫の実家があるこの地域に新居を構えた。夫の両親とは敷地内別居。この地域では特に珍しくない生活形態だったけど、代表はここで育児サークルを立ち上げた。
 同世代の母親は、代表と違ってこの地域か近隣で生まれ育った人が多い。だから割と高い確率で小さい頃から顔馴染みであることが多いけど、それゆえに話しにくいこともある。子どもの成長には個人差があるし、敷地内別居あるいは同居の夫の両親、特に母親と、親族からの干渉や圧力もある。その息苦しさの解消を目的としたサークルだった。
 見てくれの良さ、タザワ大学病院勤務の夫というステータスで、代表は育児サークルの中心人物となって活動した。だけど、一方で代表の行動が鼻に付き始めた。元々正体不明の人物の儀式らしいものに共鳴して、女性中心の社会を作ると宣言して出奔したから、田舎の風習が色濃く残るこの地方では、嫁の反乱と映りやすい。
 育児サークルが周囲の反発や妨害に晒されるようになって、代表が取った行動は、この地域からの出奔だった。夫を時に唆し、時に泣き落とし、時に恫喝して、一家でカノキタ市に移住した。夫の勤務先があるタザワ市じゃなくてカノキタ市にした理由は、「伊邪那美神の啓示を受けたから」。

「唐突に伊邪那美が出て来たけど、それは例の人物が関係してる?」
「直接対面してはいませんが、洗脳された際に深層心理に植え付けられ、要所で問題の人物の意図通りの選択をするようになったようです。」
「移住先のカノキタ市で、問題の主計官と邂逅した。それはつまり、主計官も例の人物と関係があるってことじゃ?」
「聡いですね。直接の証拠はありませんが、主計官が後に代表と不倫の逢瀬をした際に『支配者にとって必要な啓示を与える人物』と言及しています。」
「支配層にかなり食い込んでいると見て良いね…。」

 代表を洗脳した例の人物を、ヒヒイロカネを持っている主計官が知っている事実。例の人物の間接的な誘導によって、母親グループの代表がカノキタ市に移住して、主計官と邂逅した事実。そして主計官が出身地のカノキタ市を足場として国会に進出しようとして、代表はカノキタ市の次期市長を狙っていた事実。
 これらの事実から、例の人物は政権や経営層など、所謂支配層に相当深く食い込んでいて、体制維持のために暗躍していると考えられる。体制の維持には体制に忠実である必要がある。絶大な権力を持つと同時に君臨する国家があることが大前提となる高級官僚は、体制の改革より維持に傾きやすい。体制への忠誠の度合いを示す指標としてヒヒイロカネが使われていると考えることも可能だ。「支配者の証」という代名詞がそれを仄めかしているように思う。

「…シャル。主計官はどうする?」
「身を隠して霞が関に帰還中です。マスコミが大挙して自宅マンションに押し寄せていて、周辺はかなり混乱しています。」
「凄い切り替えの早さだね。母親グループの代表はどうでも良いわけか。」
「母親グループの代表は、主計官にとっては言ってみれば現地妻。自身の選挙の地盤を固め、ついでに性欲も発散できれば上出来というわけです。」
「徹底的に利己的だね…。こんな人物が事務次官の有力候補だったなんて…。」
「体よく利用されただけの代表は哀れなものです。もっとも、主計官の威光を笠に着て市役所に食い込んで子育て行政を牛耳ったんですから、その代償と言えますね。」

 シャルが誘導したこの建物-公民館だと思う-は、母親グループと代表の原点。代表は此処に追い詰められて何かを感じただろうか?育児サークルを立ち上げた原点を思い出しただろうか?権力や支配とは無縁もしくは思いもしなかったであろう時代のことを。今となってはもう手遅れかもしれないけど。
 僕とシャルは建物を出る。何時の間にか武装した人達-SMSAが展開している。流石に無数の触手が拷問しているところに無関係の人が踏み込んだら大騒ぎになる。シャルが周囲の安全のために展開を要請したんだろう。

「シャル様。先ほどA級容疑者が出て行きましたが、シャル様の事前の連絡どおり拘束しませんでした。」
「ご苦労様です。事前連絡どおり私の航空部隊が追跡しています。撤収の際、建物と周辺の確認、並びに周辺住民の記憶の消去をお願いします。」
「了解しました。」

 シャルが本体のトランクを開けて、ヒヒイロカネ収納ボックスに「支配者の証」と銘打たれたヒヒイロカネを入れる。多くの人々の羨望を集め、血で血を洗う争奪戦の中心になったであろう「支配者の証」は、瞬く間に他のヒヒイロカネを一体化して、単なる白銀色の物体の一部になってしまう。
 敬礼するSMSA職員に見送られて、僕とシャルはシャル本体に乗り込む。システムを起動すると、HUDの一部に映像が出る。無表情で走り続けるその人物は、まぎれもない母親グループの代表。いったい何処へ?HUDのマーカーを見ると、南に移動しているようだ。

「経路を表示します。猿の末路を見物しながら、他の状況などを説明します。移動をお願いします。」
「分かった。」

 シャルは「猿らしい末路を用意した」と言っていた。「せいぜい吊し上げられることだ」とも。何となく想像できるけど、そうさせた後が気になる。シャルが直接僕やシャルに危害を加えていない、ヒヒイロカネを宝物として崇めてはいたけど他人に危害を加えていない代表に苛烈な制裁を加えた理由も。