謎町紀行

第36章 辺境の村に蠢く毒蛾

written by Moonstone

「村を挙げての部外者監視体制の一環ですね。」

 無事ボリュームサンドセットを平らげて、シャル本体に戻ったところでシャルが言う。

「このパンフレットが?」
「この店のスタンプが押されたスタンプラリーのページの右下に、QRコードがあります。」
「このQRコードって、村の観光協会のページにアクセスするって書いてあるけど。」
「そのQRコードからアクセスすると、アクセスした時刻に始まり、アクセスした位置やIPアドレスなど、およそオンラインアクセスに関わる全ての情報に加えて、パンフレットの配布場所やシリアル番号も送信されるようになっています。」
「?!」

 フィッシングサイトみたいだ。村役場が音頭を取って綺麗に作られているのは、そういう背景があってのことか。Webページにアクセスすると、ビッグデータの名のもとにあらゆる情報を収集しようとする傾向があるけど、まさかパンフレットに関する情報まで送信されるようになっていたとは。

「シリアル番号がふられたパンフレットでスタンプラリーをすれば、そのパンフレットを受け取った人物が何時何処に行ったか分かります。日付が刻印されているのはそのためである確率が高いです。」
「考えたくないけど、原因はやっぱり…ホーデン社?」
「恐らくは。」

 観光客を装って村の調査や切り崩しの策略を巡らせるホーデン社やトヨトミ市の関係者が、今もこの村に来ていることは十分考えられる。だからこそこういう策で観光客を装ったスパイの動向を監視しているんだろう。市民レベルの監視はタカオ市でもあったし勿論良い気分はしないけど、侵略されるかどうかで神経を尖らせている村の実情を踏まえればやむを得ないと見るべきか。
 それはそれとして、このQRコードへのアクセスをどうするか。シャルの解析結果に間違いはないだろうから、アクセスするとこちらの情報が筒抜けになる。この村に危害を加えるつもりはないし、このスマートフォンの情報を得られたところで別に構わないと言えば構わないけど、やっぱり良い気分はしない。

「スマートフォンの情報を改竄して送信するようにします。アクセス情報自体は残りますが、このスマートフォンであることは完全に隠蔽できます。」
「そんなこと出来るの?」
「オンラインでクライアント側の情報を詐称・改竄するのは容易です。私達がホーデン社やトヨトミ市と無関係の観光客である点をアピールするため、このQRコードにアクセスすること自体は賛成です。」

 シャルはアクセス前にスマートフォンの情報を改竄するというから、僕はそのままQRコードにアクセスする。スマートフォンには村の観光協会のページが表示される。これも特段変わったところはない。財政基盤が小さいであろう村の観光協会にしては、随分見栄えの良いページではある。観光に力を入れているのは本当なんだろうか。

「この村を巡るのは、予定どおり行いましょう。情報収集と同時に、ホーデン社やトヨトミ市の差し金を炙り出すことも考えています。」
「何か策がある?」
「ホーデン社の渉外対策室も、ハネ村の吸収合併に一枚噛んでいることが判明しています。」
「!」
「それを逆手にとって、ホーデン社やトヨトミ市の差し金を炙り出します。」

 自治体の合併に一企業が干渉するなんて、明らかにハネ村の合併問題はホーデン社の意向が働いている。やはり観光客を装ってホーデン社やトヨトミ市の関係者が潜りこんでいる確率は高い。そこまでしてこの広くて小さい村を脅かす理由は…やっぱりヒヒイロカネか?
 シャルの案内でハネ村を巡る。実際にシャル本体で走ってみると、思った以上に広い。都市部みたいに縦横に道路が張り巡らされているわけじゃなく、限られた道路を走るしかないからだろう。地図で見ると近いようでも、実際はぐるっと迂回していかないと行けないとか、村全体が迷路みたいだ。
 人口に対して寺社仏閣は多い。山の中にポツンと佇む、社務所もない神社も−「御用の方は○○神社へ」という看板がある−、何だかんだでオウカ神社と関わりがある。オウカ神社に祀られた夫婦の神から生まれた子どもの神々が、オウカ神社を取り巻くように建てられている。だから社務所がなくてもしっかり絵馬を掛けるところはあって、全て縁結びの願掛けだったりする。
 シャルは社務所で朱印とスタンプを貰っている。最初に行ったハタダ神社の社務所で朱印帳を買って欲しいと言い出して、買ってあげたら嬉々として朱印を集めている。何でも縁結びに大層効果があるとか。観光を装った情報収集…の筈なんだけど、傍から見たら、否、どう見てもご利益にあやかろうと朱印集めをしているようにしか見えない。

「これで4枚目です。今日中に全部回れそうです。」
「えっと…。」
「さ、次に行きましょう。」

 シャルに半ば引っ張られるように、4番目の神社であるツツダ神社の境内を出て、こじんまりした駐車場に居るシャル本体に向かう。朱印帳を抱えてご満悦のシャルを横目に、僕はシステムが起動したシャル本体のナビを見る。次は…16km先か。結構遠いな。

「朱印を貰った神社は、すべてレンカ神社の摂社の配置と相似形を成しています。」

 シャルの発言と同時に、HUDに村全体の略図にオウカ神社とこれまで回った神社の位置関係が示される。これから行く神社を含めて、シャルが朱印を貰った神社は、オウカ神社を取り囲むように配置されている。それに、良く見ると…この図形って五芒星か?

「そのとおりです。ハネ村に配置された神社のうち、朱印を貰える神社は五芒星を描くように、更にオウカ神社はその中心に配置されています。」
「この広大な村で分かりやすい目印もないのに、これだけ精巧に特定の図形を描けるってことは…。」
「間違いなく、高度な測量技術を背景に意図的に配置されたものです。ヒヒイロカネを安置したオウカ神社を守護する意味合いでしょう。」
「オウカ神社の御神体がヒヒイロカネだとしたら、オウカ神社はヒヒイロカネを安置する目的で建てられたと見て良いかな。」
「そう考えて間違いないと思います。五芒星は守護の意味合いがあるそうですから、神社で描いた結界でヒヒイロカネを安置することを考えたのでしょう。」

 呪術や占いが非科学的と断じるのは簡単だけど、それが絶対的に必要とされた時代は確かにあった。ウイルスどころか細菌なんて存在すら知られていない時代、疫病の流行は怨霊の祟りだったり呪いだったりした。それを防ぐため、様々な呪術が施された。科学万能と思われる今だって地鎮祭だの祈祷だのが盛んに行われている。
 五芒星の中心に配置されたオウカ神社は、まさに神聖なものとされただろう。その神聖な場所の、ごく限られた者しか入れない本殿にヒヒイロカネを安置するのは十分筋が通る。どういう経緯があったかは分からないけど、現代でも十分過ぎるほどオーバーテクノロジーのヒヒイロカネを、神聖なものとして神社に封印して近寄れないようにしたのなら、むしろ賢明な判断と言える。
 だけど、金の亡者、言い換えれば欲に溺れた輩には「神聖なもの」という心理的ブレーキはほぼ効果がない。金をはじめとする自分の利益の邪魔になるものは排除する、というのがその手の連中のポリシーだ。その点では一貫しているけど、心理的ブレーキが効く人には厄介なことこの上ない。何しろ話が通じないんだから。

「オウカ神社にあるヒヒイロカネは、やっぱり御神体?」
「現在の偵察機と早期警戒機によるスキャンでは、厳密な位置特定は出来ませんが、本殿にあるのは間違いありません。」
「ホーデン社やトヨトミ市の目的は、ハネ村の吸収合併でヒヒイロカネ調査の口実を得るためと見て良さそうだね。」
「渉外担当室の関与もありますし、そう見て間違いないと思います。」
「これまで、ホーデン社やトヨトミ市の関係者は居た?」
「数名居ました。何れもヒロキさんと私はその他大勢という認識のようで、関心を持っていません。」
「渉外担当室が絡んでるのに、僕とシャルの存在を周知されていないのは不思議というか、詰めが甘いというか。」
「例のSUVの男は、くだらないプライドからヒロキさんと私を付け回していましたが、その情報を渉外担当室に提出して関係者で共有することはしなかったようです。渉外担当室のサーバにも、ヒロキさんと私の情報がSUVの男から通知された記録はなく、ヒロキさんと私がトヨトミ市市内を街宣した際にようやくヒロキさんと私の情報が通知された体たらくです。」
「これまでにないパターンだから、対応が追い付いてないのか…。」

 複数での行動での基本は、情報の共有だ。それを疎かにしていて、諜報組織として大丈夫なのかと他人事ながら疑問に思う。だけど、情報が遅延して通知される確率は十分ある。ホーデン社とトヨトミ市が僕とシャルに対してどういう態度に出るかで、僕とシャルも対策を考える必要がある。

「さ、次の神社へ行きましょう。山間は日が暮れるの早いですから。」

 シャルが神社巡りを急かして来る。シャルにとっては所詮サーバに侵入できて情報も筒抜けの渉外担当室やトヨトミ市の動向への対策を検討するより、縁結びのご利益がある朱印を集める方が重要案件のようだ。シャルの分析能力や攻撃力は信用してるけど、これで良いんだろうか…?
 エハラ市のホテルにチェックインして、近くのチェーン店で夕食。エハラ市は典型的な今時の地方都市で、量販店やチェーン店は幹線道路沿いに豊富にあるけど、それ以外の店は見つけるのが難しい。手近な店で良いかとシャルに聞いてみたら、シャルは全く気にしない様子。
 時間はかかったけど、5つの神社で縁結びのご利益がある朱印を貰って、シャルはすこぶる上機嫌。朱印を集めきった充実感や満足感の前には、夕食の場所なんて問題にならないようだ。シャルはハンバーグセットを頼んで、音符が浮かびあがりそうな表情で待っている。
 その神社が五芒星を描く形で配置されていて、その中心にヒヒイロカネが安置されているオウカ神社があるという事実。そしてそれらの神社があるハネ村を、ホーデン社の事実上の支配下にあるトヨトミ市が吸収合併を狙っているという事実。ホーデン社はスパイ組織である渉外対策室が暗躍しているという事実。ホーデン社とヒヒイロカネが1本の線で繋がった。
 自治体の合併そのものは、住民投票を経て住民自身が決めることだ。それ自体に干渉する意思はない。問題はホーデン社という一民間企業の意向で、自治体が侵略がごとく吸収合併を目論み、スパイを送り込んで文字どおりの工作活動をしていること。これでハネ村の住民に冷静な判断が出来る筈がないし、合併してもしなくても住民間の遺恨が残るだろう。
 ハネ村には鉄道が一切ない。村が運営するコミュティバスを使うか、車を使うしかない。トヨトミ市は合併時には鉄道路線を誘致して、ココヨ市へのアクセスを向上させると謳っている。そんなうまい話はない。鉄道の敷設には莫大な資金が必要だ。仮に誘致できるとしても、土地買収で様々な利権が絡むし、鉄道は利用者が居ないと赤字を生み出す元凶になる。それは結局自治体、つまりは住民の負担になる。

「見所が多いところでしたね。」
「そ、それは良かった。」

 朱印集めは神社も推進していて、5つの朱印を集めてオウカ神社の社務所に提示すると、限定の縁結びお守りが購入できる仕組みになっている。無料じゃないけど朱印を集めないと購入できないというのが何とも微妙なところだけど、シャルはそれを2つ目の神社で知ってからというもの、より朱印集めに注力した。
 昼食に立ち寄ったパンフレットにもスタンプを押せて−これは参拝者が自分で押す−、5つの神社に加えてオウカ神社でもスタンプを押すと、村の記念品がもらえる。オウカ神社は境内が立ち入り禁止だから、社務所は村役場の一室で臨時営業している。時間の都合上、オウカ神社の分は明日に持ち越しだけど、1日で5つの朱印に加えてスタンプも集めたシャルは、これ以上ないほどの満足感でいっぱいのようだ。

「…シャルはどうして縁結びのご利益に熱心なの?」
「縁結びのご利益は、数が多いほどより強固になると思って。」

 そういう考えで縁結びのご利益に熱心だったのか…。思わず脱力してしまう。もしかしたら、もっと良い縁を得られるのを願ってのことかと思ってたんだけど、全くの杞憂だった。

「彼女になったんですから、少なくとも私は、その縁をより強固にしたいと思いますよ。」
「1人で悶々としてたのが、ちょっと馬鹿みたいだね。」
「縁結びの解釈が食い違ってました。行動の前に目的を言うべきでしたね。」

 朱印を集めているシャルは目を輝かせていたし、悪意はないと思っては居た。けど、僕が傍に居るのにどうして縁結びのご利益=良縁祈願に熱中するのか分からなくて、疑心暗鬼になっていた。変に遠慮しないで、どういう目的で朱印を集めているのか聞けば良かった。
 運ばれて来た食事を食べながら、表ではハネ村の印象や明日の計画を話しつつ、裏ではシャルからの分析や調査の結果報告と考察を聞く。やはりハネ村にはホーデン社とトヨトミ市の関係者が複数潜伏していて、写真を撮ったり地図と比較したりしていた。吸収合併後の開発計画の現地調査をしているらしい。
 移動や調査は自由ではある。だけど脛に傷があるのを自覚しているのか、移動で使っている車は何れもエンブレムを偽装している。ホーデン社の車種で比較的マイナーなものを使うあたり、かなり姑息だ。スパイ行為と言われても仕方がない。そんな姑息なことをホーデン社が実行しているのも顰蹙ものだけど、曲がりなりにも自治体であるトヨトミ市が実行しているのが深刻かつ重大だ。少なくとも正当な合併を考えているとは思えない。
 しかも、ホーデン社とトヨトミ市は、共同でスパイ活動をしている。自治体と企業が連携するのは産学官連携とかなら正当だけど、こういう連携は癒着だ。ハネ村を吸収合併した先に何があるのか。鉄道路線の敷設とか良い未来があるように言っているけど、結局のところホーデン社のための合併なのは見え見えだ。

『企業城下町の自治体ならではの問題が、特別突出して腐ったような事例だね。』
『彼らは今も車で移動しながらの工作活動に余念がありません。』
『もう日が暮れて結構経つのに。』
『スパイという毒蛾が本領を発揮するのは、日が暮れてからです。』
『こんな時間に何を。』
『怪文書の散布、合併反対派住民宅へのピンポンダッシュなど、街灯が殆どないのを良いことに色々やらかしています。』

 日本有数、否、世界でも有数の巨大企業と人口40万クラスの自治体が、闇に紛れて低次元な工作活動という名の嫌がらせをしている事実が公になったら、世間はどういう反応をするだろう。ハネ村の周到な行程調査の背景には、ホーデン社とトヨトミ市の癒着による陰湿な嫌がらせがあることが良く分かる。ハネ村の行動を全面支持とはいかないまでも、やむを得ないと思うだけの事情がある。
 シャルが言うには、工作活動は立ち入り禁止のオウカ神社にも及んでいるそうだ。今のオウカ神社は建設現場で使う防音シートを前面に被せただけじゃなく、周囲に高い塀まで設けて、更に有刺鉄線まで張り巡らせている。改修とは思えない様相だけど、それでも尚侵入を試みようとしているそうだ。

『ホーデン社とトヨトミ市は、オウカ神社にヒヒイロカネがあるって知ってる…?』
『ここに双方の思惑の違いがあります。』

 シャルの説明を聞く。ホーデン社は経営層とその子飼である渉外担当室はヒヒイロカネの存在を知っていて、ヒヒイロカネの大々的な捜索のためハネ村の吸収合併を目論んでいるが、トヨトミ市はヒヒイロカネの存在を知らず、市税収入の多くを占めるホーデン社の意向を受けると共に、トヨトミ市側の利害が一致するのもある。
 トヨトミ市は人口40万で、A県では3番目の人口と最大の面積を有する。だけど、A県はあの悪名高いココヨ市が頂点に君臨している。トヨトミ市の立法と行政に御用組合の社員議員と市税収入で侵食して、吸収合併を繰り返して面積は1位になったけど、人口と知名度はココヨ市に及ばない。
 ココヨ市にオフィスビルを持っても、ホーデン社の本社は今もトヨトミ市。会社創業の地をA県一にしようと、ホーデン社の侵食はA県の県議会や行政にも及んだ。結果、A県の立法や行政はホーデン社の意向に忠実になり、ホーデン社の車が我が物顔で徘徊し、警察もホーデン社絡みの事故をまともに操作しなくなって久しい。だけど、人口と知名度はどうあがいてもココヨ市に及ばない状況は不変だ。
 ハネ村を吸収合併しても、人口は誤差程度しか増えない。だけど、面積は更に増えてココヨ市の倍くらいになる。山間部が多い現在のトヨトミ市は、市税収入が多いと言っても毎年劇的に増えるものじゃない。一方でホーデン社が議会と行政に食い込んでいるから税の優遇措置もある。結局ホーデン社の利益や内部留保に対して市税の増加は微々たるものでしかなくなる。
 トヨトミ市はホーデン社の意向に沿う形で、A県全体を取り込むことを画策している。つまりA県=トヨトミ市とすることだ。議会や行政はA県レベルでほぼそうなっているけど、流石に警察への影響力は限られている。やっぱりココヨ市にA県の県警本部、そしてA県も含まれる管区警察本部があるのが大きい。警察は厳然たる縦社会だから。
 そこで、トヨトミ市は広大な土地があるハネ村の吸収合併を目指すにあたり、ホーデン社のテストコースなど土地が必要な施設を誘致することを条件にしてホーデン社を煽っている。勿論、そこにハネ村の意向はない。当事者であるハネ村を余所に、ホーデン社とトヨトミ市が互いに利用したりされたりしながら、ハネ村の吸収合併という当座の目標に向けて手を組んでいる。

『何とも邪な協力関係だね…。』
『利害の一致が両者の行動のコンセプトですから、そうなるのは自然なことです。ちなみにそのコンセプトに基づく行動は、ヒロキさんと私の近くでも展開されています。』
『どういうこと?』
『ヒロキさんと私のテーブルの位置が此処。そして此処と此処。』

 スマートフォンに店内のテーブル配置が表示される。早期警戒機、否、戦闘ヘリからの画像か?上から見た黒髪は僕で、金髪はシャルにしか見えない。

『ホーデン社の渉外担当室の2名、そしてトヨトミ市の秘書課の2名が、こちらの様子を監視しています。』
『!!』

 完全にスパイだ。トヨトミ市は秘書課って、市長や市の幹部の秘書が集約される部署だったと思う。そんな部署が僕とシャルを監視してるってことは、トヨトミ市もヒヒイロカネを知ってるんじゃ…?だとしたら、ヒヒイロカネを巡って三つ巴の争いが始まることになりかねない。しかも、当事者であるハネ村を踏み躙るかもしれない形で。

『先ほども言いましたが、トヨトミ市はヒヒイロカネの存在を知りません。ホーデン社からの情報でヒロキさんと私が吸収合併の邪魔をしかねない存在だとして、彼らは監視しています。』
『安心して良いのかどうか、微妙なところだね…。』
『ヒロキさんと私にとっては、ヒヒイロカネの収拾を目論むホーデン社が対決の対象です。トヨトミ市はヒロキさんと私を妨害しない限り、基本的に放置で構いません。』
『相手は僕とシャルの目的を知らないから、吸収合併の妨害をしようとしていると勘違いして妨害や攻撃をして来るかもしれないね。』
『その時は漏れなく迎撃・反撃するだけです。』

 シャルの言う「迎撃」「反撃」は、最低限でも相手を行動不能にすることを意味する。シャルの逆鱗に触れたらそれこそ再起不能は覚悟しないといけない。全身切り刻まれてメッタ刺しにされて集中治療室送りになった事例はごく最近。機銃掃射やミサイル直撃で身体の一部をふっ飛ばされた事例も、割と最近。
 シャルの分離創製機能の前には、この世界のテクノロジーでは到底及ばない。だからこそ、ホーデン社はヒヒイロカネの収拾を目論んでいると考えた方が良い。自動車会社がヒヒイロカネを入手して何をするつもりなのかは知らないけど、渉外担当室の存在とその言動からして、碌なことに使わないのは確実だ。

『本当はおびき寄せるつもりでしたけど、わざわざ顔を出してくれました。そろそろ面白いことになるでしょう。』
『どういうこと?』
『毒蛾に太陽光を浴びせたらどうなるかの実験です。』

「明日はまず太陽の滝へ行きましょうね。」
「う、うん。」

 太陽の滝は、春分の日と秋分の日にちょうど滝の背後に太陽が沈んでいくというもの。その様子がとても綺麗で、赤い夕陽と重なるとよりロマンチックになることから、恋人達の聖地とされているそうだ。生憎秋分の日と秋分の日には重なってないけど、そんな場所に行ってみたいというシャルの意向に異議を唱えるつもりはない。
 表向きとして明日巡るところの話をしながら食事を済ませて、会計へ。支払いの時ふと店の奥を見ると、ホーデン社とトヨトミ市の工作員が何やらこそこそと連絡を取っているようだ。これからターゲットが店を出るとか連絡してるんだろうか。直接の害はないとはいえ、監視されて良い気分はしない。

「工作員の連絡を受けてどうこうできる状況じゃなくなってますよ。」
「さっき毒蛾に太陽光を浴びせたらどうなるかとか言ってたけど、そのこと?」
「はい。ハネ村は村を挙げての大捕物の真っ最中です。」

 シャル本体に乗り込んで拠点のホテルへ向かう途中、シャルが説明する。闇夜に紛れて工作活動という名のせせこましい嫌がらせをするホーデン社とトヨトミ市の工作員に、上空から閃光弾を投下した。闇を切り裂く強烈な光と大きな音で、思わずその場にしゃがみ込む工作員が続出した。
 何事かと思って住民が外に出て来た。慌てて工作員は逃げようとしたけど、シャルが車の制御系に干渉して操作不能に追い込んだ。急いでいる時に動作しないとパニックになる。住民が不審者と察して突進して来たのを見て、工作員は止むなく車を放棄して走って逃走を始めた。
 ハネ村には有線放送があって、獣害への警戒や行方不明者の捜索依頼などを広域に出来る仕組みがある。その放送にシャルが介入して、不審者が此処と此処に居るので注意と配信した。こういう時、ムラ社会は強く、怖い。一気に住民が鍬やバット、中には鎌や鉈を手にして工作員を追撃し始めた。
 車に乗っていれば話は違うけど、車社会にどっぷり浸っている工作員と、日頃第一次産業中心の肉体労働をしている地元住民では体力が違う。工作員はほうほうの体で逃げ回り、中にはついに捕まってしこたま殴る蹴るされて村役場に連行される者も出ている。
 ハネ村には駐在所がある。当然警察官が常駐しているけど、ムラ社会での駐在所は良くも悪くも地元民のための存在だ。悪い方に働けば、地元民が部外者に犯罪を犯してももみ消される。この場合、村の住民が工作員を捕縛して暴行を加えるのは当然犯罪だけど、駐在所は知らぬ存ぜぬ。捕まった工作員は村役場に監禁されている。
 当然ながら通信機器など所持品はすべて没収され、携帯端末などは破壊された。勿論、村の外に居る他の工作員は連絡が取れなくなる。おかげで僕とシャルが夕食を食べたチェーン店にも居た工作員は、混乱に陥って情報が錯綜している。ホーデン社側とトヨトミ市側で見解や対策の食い違いが生じて、原因の究明もままならない。

「この時間帯にハネ村から50kmほど離れたエハラ市に居るアリバイも十分ですから、ホーデン社やトヨトミ市がヒロキさんと私を警察に突き出そうとしても、無実を証明するのは容易です。」
「だから現金じゃなくてカードで払うように僕に言ったんだね。」
「はい。現金でもレシートに支払い日時が記載されるので十分なアリバイになりますが、カードは決済情報がカード会社に記録されるので、より強固になります。」
「一応、ホーデン社とトヨトミ市の動向は監視しておいて。濡れ衣を着せようとしてくる恐れがないとは言えないから。」
「勿論です。」

 これでホーデン社とトヨトミ市が大人しくなるとは考えづらいけど、多少は抑止力になるだろうか。何となくだけど、これで終わりそうにはない気がする…。
 翌朝、シャルと朝食を取ろうとホテルのレストランに入ると、先に居た客がTVを注視している。「ハネ村、合併圧力の実態を動画で公表」とテロップが出ている。昨日のシャルの工作活動の結果が早くもニュースになったようだ。とりあえず、朝食券と引き換えにトレイを受け取って、料理を選びながら放送を聞く。
 ハネ村が村全域で暗躍していたホーデン社とトヨトミ市の工作員の身柄を確保し、証拠として怪文書など嫌がらせの小道具とそれを積載した車、そして村役場に収容した工作員の映像を公開し、ホーデン社とトヨトミ市に完全な事情説明と全面謝罪を要求し、応じないなら村として訴訟を起こすと発表した。
 映像の全容は既に動画サイトにアップされ、これまでの怪文書や嫌がらせ−生ごみや汚物の投棄もあったそうだ−の証拠を詳細に記録した画像や映像、防犯カメラの映像の抜粋、そして今回の黒基調の服で固めた工作員が徒歩で逃走して捕まるまでの一部始終など、証拠は山ほどある。
 ホーデン社とトヨトミ市は、関係者の不当な身柄拘束と監禁で刑事告訴を検討しているとはするが、肝心の映像などについては調査中を繰り返すのみ。工作員はホーデン社とトヨトミ市の所属であることを、免許証や名刺を並べられて暴露されている。証拠映像の数々と合わせてかなり不利な状況だ。

『動画サイトの閲覧数は、公開から6時間足らずで500万PVを突破しています。』
『500万?!凄い数だね。』
『ハネ村が自らマスコミ各社をはじめ、フリーランスのジャーナリストにも映像サイトを案内した結果、主にフリーランスからSNSやブログで伝搬したようです。マスコミもホーデン社が絡むので当初は消極的でしたが、映像の反響が大きいのと、相手が広告費を出す大企業だから黙殺するのかといった批判をかわせなかったようです。』
『消極的でも、こうしてTVでも報道されたことには違いないから、ホーデン社とトヨトミ市には手痛いダメージだね。』
『はい。映像や写真は全て撮影日時が表示されています。ハネ村も防戦一方ではなく、かなり以前から周到に準備していたようですね。』

 TVニュースはハネ村の村長のインタビューを映す。トヨトミ市からの合併はココヨ市への鉄道路線の敷設など一見バラ色の未来に見えるが、試算したところ、住民税の大幅増額は避けられず、鉄道路線も赤字経営が必至で、結局その負担は合併された村民は勿論、トヨトミ市の住民全体にかぶさると分かり、拒否したが執拗に合併を迫ってきたことを語る。
 動画サイトでは、合併協議の一部始終を捉えたものがあり、辺鄙な村に未来はないだの、大人しくホーデン社の市税収入で潤う−実際は税制優遇措置の数々で言うほど市税収入は巨額じゃない−トヨトミ市の傘下に入れだの、なかなか横柄な物言いが克明に捉えられている。これでは言い逃れできない。
 しかも、腐っても自治体の合併協議の場に、ホーデン社の本社総務課長が居るのか説明が出来ない。更に、合併を迫る言葉や口調は、トヨトミ市に輪をかけて横柄だ。トヨトミ市の一部にならないと限界集落まっしぐらだの、こんな広いだけの村など土地の無駄だの、罵詈雑言としか思えない言葉をスムーズに並べる様から、普段の仕事ぶりがうかがえる。

『交渉という名の圧力をかける前に、ハネ村が証拠の全面公開に踏み切ったので、ホーデン社とトヨトミ市は対策に苦慮しているようです。』

 席に着いたところで、シャルはスマートフォンに映像を表示する。レストランのTVとは違うチャンネルのニュース映像だ。

『しかも、公開先は従来のマスメディアではなく、Web。事態が切迫しているため迅速性を重視したとしていますが、公開や運用におけるしがらみの少なさもあるでしょう。』
『マスメディアだとスポンサーに大企業が多いし、特にこの辺だとホーデン社が必ず圧力をかけて来るだろうね。』
『はい。ホーデン社の対決においてホーデン社の圧力がかかるのが確実な方向での情報公開は無意味です。ハネ村の決断や行動は、ホーデン社やトヨトミ市、そしてマスメディアには予想外で、完全にしてやられたといったところでしょう。』

 マスメディアにとっては、情報の優先的な提供や「情報を伝達してやる」といった感覚を無視された格好だから、内心穏やかじゃないだろう。一方で、有力スポンサーの1つであるホーデン社に首根っこを掴まれたような感もあっただろう。マスメディアの収入の多くは広告収入だから、その広告主を批判することはなかなか出来ない。
 そんな中、ハネ村がホーデン社とトヨトミ市の悪事を予想外の手段で全世界に公開した。証拠としての信憑性は客観的に見て十分高い。それらをネタにしてホーデン社やトヨトミ市を批判することが出来る。ある意味姑息ではあるけど、広告収入頼りだから身動きがとり辛い鬱憤晴らしには絶好の機会になっているのかもしれない。

『ハネ村が公開した証拠の信憑性が非常に高く、自治体の住民が決めるべき課題に民間企業が堂々と介入している面を含めた悪質さから、A県県警がハネ村に捜査員を派遣したようです。』
『ホーデン社に忖度するA県県警相手に、ハネ村が何処まで協力するかな。』
『ココヨ市管轄の警察署レベルでは懸念が強いですが、非常に信憑性の高い証拠が、警察のしがらみも及び難いWebでの公開なので、流石にA県県警もいい加減には出来ないようです。』

 シャルが見せてくれるニュース記事では、A県県警はハネ村に対して拘束した工作員の解放を求める一方で、工作員を脅迫や威力業務妨害などの容疑で事情聴取する方針だという。一方でハネ村は、これまでの嫌がらせの数々を相談してもまともに取り合わなかったことを挙げ、A県県警にも強い不信感を表明している。
 流石にハネ村も警察が出てきた以上は工作員を開放しないと監禁罪に問われかねないけど、こちらを監禁や暴行の罪に問うなら、工作員や命令したホーデン社とトヨトミ市を脅迫や威力業務妨害などで刑事告訴するだろう。既にハネ村は弁護団を結成して、刑事民事の両面で対決姿勢を鮮明にしている。
 全世界に制限なしに公開された証拠が多数あり、その信憑性は非常に高いことから、Web発の口コミで世論はハネ村に圧倒的に優位な情勢のようだ。Webに一旦掲載された情報は、削除してもされてもコピーが何らかの形で残る。自治体の規模や財政面では、ハネ村はホーデン社やトヨトミ市と比べれば弱小極まりないから、Web公開を選んだのは経費の少なさもあるかもしれない。
 だけど、結果的にそれが奏功している。何らかの圧力で動画サイトから削除されたら、真っ先にホーデン社とトヨトミ市に疑いや怒りが向けられる。削除されても別のサイトにクローンが現れ、それが次々とクローンを生み出していくことも十分あり得る。少なくともこれらの証拠は公序良俗に反するものじゃないから、行政や司法が削除を命じることも難しい。
 シャルが閃光弾を投下したのは毒蛾、すなわち工作員の所業を露わにするため。だけど、それがハネ村にとっては長く苦しめられてきた嫌がらせや圧力に対して反撃する絶好の機会になった。合併の是非は住民投票で決めるべきことで、その結果トヨトミ市との合併が選択されることに干渉するつもりもないししちゃいけない。だけど、ホーデン社とトヨトミ市の行動は明らかに卑劣で、住民が冷静な判断をする状況じゃない。

『A県側の動きはまだ見えないね。』
『A県の県議会はホーデン社関係の御用組合出身議員と経営側議員が圧倒的多数ですから、ホーデン社とトヨトミ市を刺激したくないんでしょう。そういった腑抜け議員の支持を受けるA県知事も同様です。』
『実に辛辣だけど、実際そのとおりだよね。』
『この状況での対応の遅さは、A県にとっては致命的事態になり得ます。そうなると、彼らの背後に居るホーデン社にとっても重大な事態に発展する可能性もあります。』
『Webでの所謂炎上時の対処と同じだね。』
『まさにそれです。日頃の微温湯オール与党の環境に骨の髄まで浸りきっているので、事態の重大性に気づかないんでしょう。』

 A県のホーデン社言いなり状態は、前にシャルから聞いている。シャルの言うとおりホーデン社を刺激したくないんだろうけど、状況が状況だけに早期に動かないとA県の態度が問われると思うんだが。

「この調子だとハネ村の観光スポットを回るのは難しそうだね。」
「道路状況を見てみます。」

 シャルがスマートフォンを操作する。ニュース記事が道路状況に一変する。エハラ市とハネ村に絞った道路情報だ。ハネ村に唯一通じる国道413号は、規制情報が出ている。「!」のアイコンをタッチすると表示されるポップアップを見ると「警察による検問 時間帯:終日 終了:未定」とある。早速検問が敷かれているのか。

「検問か。心理的にちょっと行き辛いかな。」
「警察もハネ村も神経を尖らせているところでしょうから、避けた方が良さそうですね。」
『そういえば、昨日のチェーン店で僕とシャルを監視してた連中の動向は分かる?』
『事態を受けて急遽本部−ホーデン社であれば本社、トヨトミ市であれば市役所本庁舎に帰還して、対策を協議しています。』
『スパイ組織だから、それこそ奪還作戦に乗り出すとか?』
『その意見も上がりましたが、警察が既にハネ村に展開していること、ココヨ市やトヨトミ市のような対応はハネ村が許さないことから警察が黙認する可能性は低い、ということで見送られました。』
『検討はしてたのか…。』

 やっぱり考え方が一般的な企業や自治体のものじゃない。動画サイトにあるような、横柄な物言いで合併という名の服従を迫るあたり、シャルが言うところの毒蛾ならではと言うべきか。暴力団と言われても大して違和感はない。ヤクザ企業とヤクザ自治体が共闘して地上げをしていると見れば、結構しっくり来る。
 偶然ではあるけど、結果的に僕とシャルの監視網も一時的かもしれないけど解除された。この隙にヒヒイロカネを回収できると良いんだけど、ヒヒイロカネの回収は基本的にシャルが現地に赴いて、必要なら無力化処理をしてようやくだ。保管場所のオウカ神社は境内立ち入り禁止。無理に入ろうとすると、今度は僕とシャルがハネ村の住民に追い回される羽目になる。
 改めて考えてみると、現状は好転したとは言えない。膠着状態と言うのが一番適切だろうか。と言っても、この状況がどれだけ続くか分からないし、沈静化するのを待っていてもやっぱり何時になるか分からない。待機していたらホーデン社が工作員を送り込んでヒヒイロカネを盗み出すかもしれない。判断が難しい状況だ。

『警察がハネ村から引き上げるまでは、静観しましょう。』
『ホーデン社やトヨトミ市が乗り込んでいかないかな。』
『この状況下でハネ村で何か起これば、真っ先にホーデン社とトヨトミ市が疑われます。また、ハネ村が組織した弁護団は、既にA県警本部と警察庁に脅迫や威力業務妨害、名誉棄損などで刑事告発し、民事でも提訴しました。ハネ村はことをより大きくすることで広く世論を味方につけ、先手先手を打つことで着実にホーデン社とトヨトミ市を追い詰めています。』
『ホーデン社とトヨトミ市は、予想外の反響や批判の前に身動きが取れない状況ってこと?』
『はい。予断は勿論許しませんが、今はホーデン社とトヨトミ市の影響がハネ村から排除されるのを待つのが肝要だと思います。』

 TVニュースでは、ハネ村侵略事件の続報を伝えている。オンラインニュースでも国内主要ニュースの殆どは事件関係。しかもハネ村発の情報が圧倒的だ。シャルが教えてくれた、弁護団の組織と刑事・民事両方での告発、所轄警察署−こともあろうにトヨトミ市にある−じゃなく、上級機関であるA県警本部と警察庁への告発など、ハネ村が情報の量と速さで圧倒している。
 ハネ村の真意は推測の域を出ないけど、恐らく「正攻法」では圧力で報道されなくなって、逆にハネ村に非があるように持って行かれると考えたんだろう。そこで、マスメディアの制御が効き難い、宣伝や流布がマスメディアを経由するより圧倒的に速いインターネットを活用し、先手先手で情報の公開をすることを選んだんだろう。
 インターネットの活用というと、Webページの運営は基本中の基本として、SNSアカウントの運営を中心とする広報活動と、遠隔地の情報収集や制御という、所謂IoTのどちらかと言える。企業規模の大小を問わず、IoTへの執心ぶりは凄まじいけど、結局ビッグデータと言う名の個人情報の収集と利用に行きつく。
 宣伝や広報も、マスメディア向けの発表を自社管理のWebページで行う域を出ない。これまでマスメディアに多額の広告費をつぎ込まないと出来なかった宣伝・広報が容易に出来るようになったんだから、もっと積極的な活動が出来ないのかと思っていたけど、ハネ村は積極的な宣伝・広報ツールとして活用に踏み切った。
 状況がかなり混沌としているから、そこにヒヒイロカネ捜索と回収を目的に僕とシャルが踏み込むことは、事態を悪化させる恐れがある。部外者の僕とシャルの進入を、合併協議の破壊を目論む市民団体の手先とか難癖を付けて、ホーデン社やトヨトミ市、そしてA県が介入する危険がある。

「エハラ市から北に温泉地帯があるんです。そこを巡りましょう。」

 シャルは早速気持ちを切り替えて、温泉巡りの計画を立て始める。弾んだ表情からは危機感や焦燥感は感じられない。シャルは入浴も好きだからな。ここは座して待つべき時か…。
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