芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2003年1月31日更新 Updated on January 31th,2003

2003/1/31

[どうやら無事・・・っぽい(^^;)]
 喉の引っ掛かりは、一晩寝たらすっかりなくなりました。大事に至らなくてほっとしています。風邪だろうがインフルエンザだろうが、私がダウンしたらページの息の根が止まってしまいますからね。それだけは避けたいところです。何せテキスト主体の地味なページですから、更新くらいはきっちりしていかないと、ね(^^)。
 いよいよ1月も今日で最後です。明日の更新で背景写真が変わります。まあ、それくらいなら良いんですが、今回は複数のコンテンツの更新と重なりますから、かなり忙しくなりそうです。こことページ更新のログの新規ファイルを作らないといけませんし。睡眠不足は避けたいので早めに済ませたいところです。背景写真がどうなるかは明日のお楽しみということで。
 このお話中でも昨日のようにやかんで湯を沸かして加湿していますが、肝心の暖房がろくに効かず、吐く息が白いです。エアコンも換え時なんでしょうかねぇ・・・。あと約2ヶ月、頑張って部屋を暖めて欲しいものです。
それを受け止めるのは俺だ。その俺がぐらついていたら、晶子の精神が崩壊しかねない。大学でのいじめという話は聞いたことがないが、晶子は髪が茶色がかっているというだけで辛酸を舐めさせられてきたんだ。そんな高校時代の辛い記憶も重なって、誰かに泣きつきたくなっても全然不思議じゃない。その時、俺の前でなら好きなだけ泣けるように身構えてないといけない。

「俺としては、『もう私、どうして良いか分からない』『フッ、心配要らない。俺がついてるぜ』『ありがとう、智一さん』なーんて展開があるかな、と思ってたんだが。」
「声真似は止めろ。気味悪い。でも、やっぱりそういう考えがあったか。」
「こういっちゃお前には悪いが、そりゃあ多少は期待したさ。でも、今のお前を見ている限り、そういう展開は期待出来そうにないな。」
「させるか。」
「・・・晶子ちゃんも幸せだろうな。四方八方敵だらけになっても、お前が居れば言い方は悪いが泣きつきに行っても良いんだから。そうでないと、やってられないだろうな。あんなデマメールが大学中に乱れ飛ぶようじゃ。本気にする奴も少なからず居るだろうし。」
「お前もその一人だろ?」
「い、いや、俺は内容に加えて、晶子ちゃんとお前の名前が出てきたからびっくりしただけであってだな・・・。」
「説得力なし。」

 俺が言うと、智一は苦笑いする。まあ、この程度なら掴みかかる必要はない。心配なのは晶子だ。今ごろどうしてるんだろう・・・。それが気がかりでならない。こういう時同じ学科に居れば、少なくとも同じ学部に居れば、心強いだろうが、こればっかりは仕方ない。今日から学部を変えてくれ、なんて言えるわけないしな。

雨上がりの午後 第1065回

written by Moonstone

 だからこそ、俺がしっかりしてないといけない。晶子の性格だ。衆人環視の前では何とか耐え凌ぐだろう。だが、それから解放されたら一気にやり場のない怒りと悲しみが噴き出すだろう。

2003/1/30

[風邪・・・?それとも・・・?(汗)]
 帰宅してから暫く喉の調子が悪かったです。夕食の準備をしたりやかんで湯を沸かしたりしているうちに目立たなくはなったんですが、未だ引っ掛かるものを感じます。昨日はこちらでも午前中に雪が舞うほど寒かったですからね(帰宅した頃、近辺では雪が降っていたらしい)、風邪にやられたかもしれません。風邪ならまだしも(これでも十分辛いが)インフルエンザだと本当に洒落にならないので、お話している今でも湯を沸かして加湿しています。帰宅した時の室内の湿度が40%を切ってましたからね(気温は10℃切ってた(汗))。これだと暖房を入れても効果が薄いので、原始的な方法ですが加湿に踏み切りました。
 昨日は比較的体調が良かったので、フル回転で回路基板を作っていました。まあ、作るのは機械なので(銅箔をカッターで削って配線を形成するタイプ)基板の裏表をひっくり返したり基板やツールを交換したりしていただけですが、人様に渡すことになっている基板なので「御免なさーい。そこは自分で何とかしてくださいねー」なんて言うわけにはいきません。自分のでもそんな基板は嫌ですけど。
 まだPCに向かうと気分が悪くなるんですが、月曜や火曜ほどではありませんでした(あの時は本当にきつかった)。職場では一日中PCに向かっているのに何故でしょう?職場でPCと睨めっこしてる反動かな?

「それにしても・・・チャンスを逃したな。」
「何がチャンスだ。デマで俺が狼狽するのにつけこんで、晶子を引っ手繰ろうとでも思ったか?」
「言い方は悪かったが・・・お前がここまでどっしり構えてるというか、噂を意に介さないとは思わなかった。多少は驚くかと思ったんだが・・・。」
「デマの出所もこうなることも十分予想してたさ。」
「てことは、晶子ちゃん、田畑助教授をふったのか?」
「ああ。」

 セクハラ対策委員会に訴えたということは言わないでおく。そこまで言う必要はないだろうし、話を盗み聞きした奴が新たなデマを流す可能性もあるからだ。

「これじゃ、俺の割り込む余地はなさそうだな。」
「あるわけないだろ。」
「いや、前に晶子ちゃんと田畑助教授の噂を聞いたときのお前とは随分違うな、と思ってさ。」
「俺が晶子を信じなくて何が彼氏だ、ってことを十分思い知らされたからな。」
「何だ?晶子ちゃんと喧嘩でもしたのか?」
「ちょっとな。そのお陰で晶子ともっと親密になれたけど。」
「ふう・・・。益々俺の割り込む余地がなくなったな、こりゃ。」

 智一が肩を竦めて言う。だが、その表情は呆れたというより敵わないねといった感じだ。宮城が言った言葉じゃないが、隙が生じれば割り込んでやろうという気はあったんだろう。だが、そうさせるわけにはいかない。晶子を取られたくないというのもあるし、何より俺がしっかりしてなかったら晶子が心の拠り所を無くしてしまう。それが一番怖い。
 幾ら周囲から浮いた存在だといっても、これまでとは状況が全然違う。デマメールの内容どおり、目に付いた男という男とヤりまくってる超淫乱女のレッテルを貼られるんだ。あんな美人が、という驚きもあれば、陰ではそういうことをしてたのか、という冷めた見方もあるだろう。後者が特に怖い。これは白眼視に繋がるばかりか、田畑を「信奉」する他の学生からいじめを受けることになりかねない。それこそ大学に行きたくないと思う状況に追い込まれる可能性もある。

雨上がりの午後 第1064回

written by Moonstone

 智一が躍起になっているのを見て、俺は思わず笑みを零す。智一としては、朝来た俺が周囲の様子が変なのを妙に思い、自分の口から問題のメールについて聞かされて狼狽するか懸命に火消しに回るかどちらかだろうと思っていたんだろう。だがお生憎様。そんな下らない予想どおりにことは進まない。

2003/1/29

[今日も引き続き・・・]
 体調不良の中でお話しております(汗)。どうも長期化の様相を呈しています。ひたすら横になっていることでしか楽になる方法がないのが実情です。まったく困ったものです・・・。ページ更新も億劫に感じるようになってきました。気分が酷く落ち込んでいて機械的に身体が動いていたような時期でも、ページ更新はまさに亡者のようにPCに向かってやっていたものですが。
 あ、職場のPCのモニタがCRTから液晶に変わりました。あの軽さで(片手で持てる)あの画面の大きさ(17インチ以上かな?1280*1024も楽勝)、しかも画面くっきりでお値段70000円弱なんですから、世の中随分進歩したもんです。もうCRT製造を打ち切るメーカーも出てきたそうで。少なくともPCの世界では液晶が表示を支配するんでしょうか?一般はまだ不透明な部分が多いですけど。
 しかし、CRTがなくなると、「マヤちゃん、ふぁいとぉ!PAC編」でリツコがピンクの怪獣を黙らせる必殺技「CRT落とし」が、ある意味貴重な道具を無駄遣い(?)していることになりますね(^^;)。でも「液晶落とし」じゃ効きそうにないですし・・・。やっぱりCRTは存在してもらいたいものです。こんなの私の勝手な都合ですけどね。
「あ、ありがとう。」
「わ、私も・・・。」

 残り二人も智一の傍に寄って必死にシャーペンを動かす。こうしてまたレポートのクローンが出来上がるってわけか。もう怒るのも馬鹿馬鹿しい。社会人になったら嫌でも自分でしなきゃならないことがあるのに、今から訓練しておかなくてどうするつもりなんだ。まあ、そいつの将来なんて俺の知ったこっちゃないが。
 周囲を見回すと、何時ものようにざわめいている。今までと違うところと言えば、時折俺と目が合って直ぐに逸らす奴が少なからず居るということだ。話の内容は聞かなくても分かっている。聞きたくもないが。しかし、デマがもう出回るとは・・・。流石に手が早いだけのことはある。
 所詮デマなんて、本人が堂々と構えてればこんな程度のもんだ。それに学科の奴とは智一以外は殆ど喋ったことがないし、友達離れを憂える必要もない。信じたいなら勝手に信じろ。好きにすれば良い。ただ、そのデマを以ってして俺と晶子の関係を壊そうとするなら・・・話は別だがな。問題は晶子だ。様子が分からないだけに心配が募る。

 俺と智一は、切りの良いところで遅い昼食を摂りに生協の食堂へ向かう。他の二人は談笑していた連中と一緒に先に行っちまったが何時ものことだから何も言わない。言うだけ無駄だ。道中、智一は溜息を吐いて言う。

「しかし、デマメールがあれだけ派手に流れるとはねぇ・・・。」
「そのデマを本気にしてたくせに、よく言うな。」
「ほ、本気にしちゃいないさ。ただ、内容が内容で、それにお前の名前まで出てきたからびっくりしちまっただけだよ。」
「フン、どうだか。」
「ほ、本当だって。」

雨上がりの午後 第1063回

written by Moonstone

「何だ?」
「そ、その・・・。レポートを・・・。」
「写したけりゃ写しな。何時ものことだろ?」

2003/1/28

[うー、気分悪い・・・]
 また気分が悪いです。どうも月曜日はこういう傾向が出てきていかんですな・・・。早めに帰宅して夕食を済ませた後は殆ど横になっていました。一時は寝てたかな?意識が途切れた部分もあるし。
 で、やっぱりPCに向かうだけでも気分が悪くなるので、ぎりぎりまで寝てました。これはもう薬で抑えたり改善したり出来るものじゃなさそうなので・・・。不自由な身体ですが、自分の身体ゆえ文句も言えません。
 今日もページ更新を終わらせたら出来るだけ早くネットを切って寝ようと思います。睡眠不足じゃないんですけど、兎に角寝てないと気分が悪くて仕方ないので・・・。やっぱり心配事を早めに片付けた方が良いようです。
 俺は鞄から先週のレポートと一緒に、今日の実験の目的や実験内容をまとめたレポートと記録用のノートと筆記用具を取り出す。そして智一に向き直る。智一は予想外といわんばかりの表情で俺を見ている。俺が驚いて狼狽するとでも思ってたんだろうが、当事者の晶子に関わっている人物として、それに晶子が訴えた相手の性格からして、驚くのも馬鹿馬鹿しい。

「・・・今日はレポート出来てるのか?」
「・・・あ、い、いや、分からなかったところがあるけど・・・。」
「写すなら今のうちに写せ。先生が来たら手遅れだぞ。」
「す、すまん。」

 智一は気を取り直して俺からレポートを受け取って、自分のレポートと向き合って忙しなく首を左右に動かしながらシャーペンを動かす。

「あ、あの・・・。」

 同じグループの残り二人のうち、一人が恐る恐るといった様子で話し掛けてくる。この二人、実験の時は他所を訪ね歩いて手の空いている奴と談笑しているくせにレポートや口頭発表は俺任せ、というどうしようもない奴らだ。どうせこいつらも出所不明のメールとやらを見るか聞くかしたんだろう。学部には個人に割り振られたパソコンがあるから−複数で共有していて、ログイン名とパスワードで個別設定になる−、それでメールを見ていたとしても不思議じゃない。

雨上がりの午後 第1062回

written by Moonstone

 俺が重ねて尋ねると、智一は言葉を失って視線を彼方此方に彷徨わせる。出所不明も何も、出所は簡単に予想がつく。それに、誹謗中傷のメールが飛び交うことくらい十分予想範囲内だ。今更驚くこともない。

2003/1/27

[ちょっと遅れましたが・・・]
 昨日は一日寝てました(爆)。それはさておき、金曜日の「千と千尋の神隠し」の画面が赤っぽい、という話が彼方此方のページで見られました。DVDで赤っぽいと問題になり、訴訟に発展したものですが、私が自宅のTVで未定多分には赤っぽくは感じなかったんですがね・・・。
 私は前日お話したとおり劇場版を見てますが、その時の色合いまでしっかり覚えてはいませんし、自宅のTVも色合いがおかしいわけじゃないので、赤っぽくは感じなかったんです。第一DVDが赤っぽいということ自体それらについて言及したページを見てようやく思い出したくらいですし、話の内容が良ければそれで良いのではないか、と。
 話が気に入らないのなら見なきゃ良いだけのことです。画面や色合いといった表面的なものを問題にして、作品そのものの価値まで決めてしまうのは如何なものでしょう。表面的なものに囚われて本質である話の内容を問題にしないのは、作品鑑賞の仕方としては問題ではないかと思います。先にも述べたように、話が気に入らなければ見なきゃ良いんですから。
理由は簡単。「俺が実験のレポートとかで忙しいだろうから、食事や起床時間と練習時間を保障するため」だ。取り計らいは勿論嬉しいが、初日の夜から物音を立てて晶子を「避難」させるようなことはしないで欲しい。まあ、一緒に寝る口実が出来たってもんだが。
 眠気が残る目を擦りながら今日の実験がある部屋に入ると、それまでざわめいていた室内が急に静まり返った。・・・何だ?一体。俺が周囲を見回すと、それまで俺に集中していた視線は直ぐに逸れるが、何やらひそひそと話しているのが彼方此方で見られる。
 気味悪さと嫌らしさを感じながら実験器具のあるテーブルへ−今日の実験はトランジスタの特性測定だ−向かうと、智一が血相を変えて俺に駆け寄ってきた。また「レポート見せてくれ」か?やれやれと思いつつ一先ず鞄をテーブルに置くと、智一が焦った様子で話し掛ける。

「お、おい、祐司!」
「レポートなら見せてやるよ。」
「それどころじゃない!大学中にもの凄いメールが飛び交ってるぞ!」

 メール・・・。その単語で俺は嫌な予感を感じる。否、予感というより確信出来る−したくはないが−予想だ。智一は焦りを隠し切れない様子で言葉を続ける。

「あ、あの晶子ちゃんが、目に付いた男という男とヤりまくってるっていう、出所不明のメールが大学中に流れてるんだ!」
「・・・だから?」
「だからって・・・。お前、どうにも思わないのか?!それに加えて、お前の名前まで出てて、お前が誰の子かも分からない子どもの父親候補にされてるって言われてるんだぞ!」
「・・・だから?」

雨上がりの午後 第1061回

written by Moonstone

 晶子がセクハラ対策委員会に訴えた日の翌週の月曜日。店のクリスマスコンサートがいよいよ来週に迫ってきたということで、俺と晶子は一昨日からマスターと潤子さんの家に泊まりこんでいる。

2003/1/26

[うう、出遅れ・・・(T-T)]
 寝るのが遅かったのが尾を引いてしまい、昨日起きたのは昼前。早速買い物に行き(今回は転びませんでしたよ(笑))、朝食を済ませてさあ執筆作業開始・・・と思ったんですが、どうもその気になれず、ゲームで遊ぶ始末。
 結局執筆を始めたのは14時過ぎで、このお話をしている現在(22時30分過ぎ)でもまだ仕上がっていません。今日中の完成は見送って、明日仕上げようと思います。ちょっとのんびりした日程ですが、どのみち日曜日はくたばる時間が長いですから、あと少しで完成というところまで持っていけばそれで良いと思います。
 やっぱりスタートというものは大切ですね。時期を外すと身体がついて来ない・・・。先日は遅くまでネットで小説を読んでましたからね(18禁ものと違うぞ(汗))。他所様の小説を読むのは久しぶりのことです。なかなか読み応えがあって、ついつい夜更かし・・・。ま、休みの日くらいはこういう出鱈目な生活も良いでしょう。無理せず慌てず、のんびりと・・・。
田舎は兎角保守的で妙なな内輪意識があったりする。何処からともなく飛び出したデマがあらぬ方向にまで拡散して、その圧力に耐えられなかったとしても仕方がない。その点から見れば、俺は変な言い方だが恵まれていた方だろう。
 だが、今度ばかりはそうはいかない。晶子にまた同じ辛酸を舐めさせるわけにはいかない。俺がしっかりしてなかったら、晶子は大学でも、そしてバイト先でも居場所を失ってしまう。本当に孤独な生活を送らなきゃならなくなる。それで大学を辞めて実家に帰ったら、また妙なデマの嵐が吹き荒れるだろう。晶子をそんな目に遭わせるわけにはいかない。

「・・・俺がその時の彼氏を責めることは出来ない。田舎の噂とその圧力は俺の実家のある地域以上だと思うから。」
「・・・。」
「でも、もう二度とそんな思いはさせない。俺が晶子の心の拠り所にならなかったら、晶子は行き場を失っちまう。それじゃ、俺が晶子の彼氏を名乗る資格なんてない。」
「祐司さん・・・。」
「デマを信じる奴にはそうさせておけば良い。だけど、晶子の身に危害が及ぶようなら、遠慮なく言ってくれ。俺が叩き潰してやる。だから・・・晶子は自分のことだけ考えるんだ。良いな?」
「・・・はい。」

 晶子はようやく微笑みを浮かべる。しかしその表情から悲しみの色は消えてはいない。辛い過去の記憶を呼び覚ましてしまったんだから無理もないだろう。だけど晶子の泣くところは見たくない。泣くならせめて俺の前だけにして欲しい。そのためには俺がしっかりしてないといけない。これは俺と晶子にとって一つの正念場と言えるだろう。智一や宮城に割り込まれないためにも、俺がどっしり構えて晶子を受け止めなきゃいけない。愛する相手の涙は、嬉し泣きの時だけで十分だ。

雨上がりの午後 第1060回

written by Moonstone

 俺の言葉に、晶子は小さく頷く。噂に負けてしまったってわけか・・・。俺にその当時の晶子の彼氏を責めることは出来ない。

2003/1/25

[久しぶりのTVでの映画鑑賞]
 TVでは木曜、金曜、土曜、日曜に映画の時間がありますが、大抵その時間はラジオを聞きながら作品制作などページ関連の作業をしているか、ベッドでくたばっているかのどちらかなんですが(爆)、昨日の日本テレビ系金曜ロードショーだけは以前からチェックしていました。「千と千尋の神隠し」があったからです。
 この映画、ここの常連さんならご存知かと思いますが、私が実家で療養中に勧められて見に行った映画です。当時は(今でもそうですが)外出する気分になれず、渋々見に行ったんですが、10数年ぶりに見た映画なのにすっかり見入ってしまい、「見て良かった」と感慨を覚えたものです。「名探偵コナン」を見ていたら今週の金曜ロードショーで放送するというので、今週耐え抜いてきました。
 CMが多いのには辟易しましたが(弟からDVDを借りて見たので尚更感じた)、やっぱり良い映画は何時見ても良いですね。耐え抜いた甲斐があったというものです。千尋と名前を思い出したハクとの対面の場面では、また感動してしまいました。私も人を感動させる作品を一つでも多く作れる創造者になりたい。そうなるにはどうすれば良いのか・・・。それは私に科せられた課題ですね。それを探求していきたいと思います。

「昨日わざわざ俺の家に来て、俺に自分の決断を宣言して、それを実行したんだ。もう後には引けない。晶子は自分のやれることをやれば良い。俺のことを心配する必要はない。俺だって学科じゃ今でも孤立しているようなもんだ。田畑が流したデマを信じて何を言ったところで大して状況が変わるわけじゃない。」
「私が調子に乗らなければ・・・」
「今更何を言っても手遅れだ。なっちまったもんは仕方ない。それよりこれからのことを考えるんだ。人の噂も75日、って言うけど、その75日、約2ヵ月半、晶子が周囲からの白眼視に耐えられるかどうかが、俺は一番心配なんだ。」
「私が周囲からの圧力に屈すること・・・ですか?」
「ああ。幾ら晶子が学部で浮いた存在だからって、噂の威力は相当なもんだ。特に色恋沙汰はな。晶子が大学に行くのが辛いと思うようになったら、学業に支障を来しかねない。」
「悪意のある噂がどれだけ人を傷つけるものか、私は知っているつもりです。」

 はっきりした口調で言った晶子の顔は、悲しみに溢れている。過去にそういうことがあったのか?髪が茶色がかっていることで、記憶力のない教師や質の悪い連中に難癖をつけられ続けたことは知ってるが・・・それ以外にも噂絡みで辛い思いをしてきたんだろうか?

「・・・祐司さんと付き合う前、もっと遡れば今の大学に合格してこの町に来る前に、私は大恋愛をしたんです。」

 晶子はやや視線を落とし気味にして言う。大恋愛・・・。そう言えば晶子も失恋した経験があるんだったな。俺も高校時代、宮城とは学校中で知らないものは居ないと言われるくらい有名な恋愛関係にあったし。

「その恋愛が周囲に発覚してから、一気に噂が広がったんです。それこそ根も葉もないものに尾鰭がついたものが・・・。私の実家は田舎ですから余計にそれが酷くて・・・。私とそのときの彼は噂に負けずに一緒に居よう、って約束してたんですけど・・・。結局・・・。」
「・・・ふられちまったのか。」

雨上がりの午後 第1059回

written by Moonstone

 晶子は神妙な面持ちで短く答える。キャンパスセクハラそのものの話を持ちかけられた翌日、即行で訴えたのは良いが、それで田畑が逆恨みしてろくでもない行動に打って出て、その被害が俺に及ぶことを案じているんだろう。気持ちは嬉しいが、俺としては晶子は自分のことだけ考えていれば良いと思う。

2003/1/24

[私のジンクス]
 私には結構ありがたいジンクスがあります。それは「曇り、若しくは雨がぱらついている程度なら、外出しても自分が帰る頃には雨は降っていない」というものです。昨日も朝から曇っていて、夜に雨が降ったらしくてアスファルトの色が濃くなっていました。いざ出勤、とばかりに外へ出ると雨がぱらついていました。でも歩いて行くには時間が間に合わないので(私は冬場、朝食を終えたら布団に潜ってるんです。だからうっかり二度寝してしまって大慌て、ということが度々(汗)。きょうもそれ(爆))、自分のジンクスを信じて自転車で強行突破しました。
 昼食に出掛ける時にはかなり降っていて、「あー、やっぱりせめて傘は持って来るべきだったかな(置き傘はしてあるけど)」と思っていたのですが、帰ろうと思って外を見たら、空こそ曇ってはいるものの雨はすっかり止んでいました。私はひと安心して自転車で帰りました。
 自転車といえば・・・この前の土曜日に派手に転んで左肩、左肘、左膝を強打して、左肘には酷い擦り傷を負うという災難に見舞われたんですが、左肩はほぼ完治。左肘や左膝も傷の部分を物に触れさせてもそれほど痛くなくなりました。そういう経験をして間もないということもあって、濡れた道路ではスピードをあまり出さないようにしています。アスファルト部分はまだしも、マンホールなど金属部分は要注意です。土曜日にすっ転んだ場所も金属部分(側溝を覆う金属の柵のような蓋)でした。気をつけないと・・・。
俺は晶子を起こさないように右手を離し、枕元の目覚し時計を右手一つで調整する。俺の方が疲れで先に寝ると思っていたが、安心した晶子の方が先に眠っちまったか・・・。まあ、夜を共にするのは久しぶりだし、安心して眠れたならそれに越したことはない。・・・俺も眠くなってきた。後は自然の流れに任せよう。俺と晶子が互いを求め合った時のように・・・。

 翌日、晶子は大学のセクハラ対策委員会に訴えた。行動は決まっていたとはいえ、まさかこんなに早く行動を起こすとは思わなかった。だが、一方で安心していたりする。晶子が俺との交際の継続と田畑との「決別」を決めた以上、暢気に構えていたら田畑がどんな手段に訴えるか分からないからだ。
 訴えたということは、バイトが終わってから何時ものように晶子の家に寄って紅茶をご馳走になった席で聞いた。セクハラ対策委員会は訴えを受理し、証拠としてあの会話の一部始終を録音したICレコーダーを提出したそうだ。あれほど明確な証拠があれば、田畑に何らかの処分が下るのは避けられまい。
 だが、問題はこれからだ。「原告」である晶子と「被告」である田畑は、共にセクハラ対策委員会の要請に応じて尋問を受けることになるという。田畑にしてみれば、自分に気があると思っていた相手がある日いきなりセクハラだと訴えたら驚くだろうし、それこそ逆恨みしかねない。否、しても何ら不思議じゃない。それで晶子や俺を誹謗中傷するメールを大学中にばら撒くことも十分考えられる。俺は何を言われようが構わないが、晶子は大丈夫だろうか・・・?

「耐えられるのか?根も葉もないデマを流されたりしても・・・。」
「大丈夫です。それより私は祐司さんにまで被害が及ぶのが・・・。」
「俺は構わない。友人といえば智一くらいしか居ないし、智一だって晶子への想いを捨てていない以上、妙なデマを信用したりはしないだろう。第一、俺が誰と付き合おうがそれこそ俺の自由だ。他人にあれこれ言われる筋合いはない。それより、当事者である自分のことを優先するんだ。」
「はい・・・。」

雨上がりの午後 第1058回

written by Moonstone

 明かりが煌々と灯る室内はしんと静まり返っている。晶子は何度か頬擦りをした後、俺の手を握ったまま俺の直ぐ傍で安らかな寝息を立てている。

2003/1/23

[我が初心を振り返る]
 昨日のお話とも少し関連することです。先日、巡回コースで何時ものように訪れたページで管理人の方が「長年温めてきた話」というもののイラストや世界設定(文章)、そしてそれらに関して書かれた日記を拝見しました。そこでは何度も「自己満足」という言葉が出てきました。
 それで私は思いました。私もページを始めた頃は本当に自己満足で満足していたな、と。自分が書き溜めてきた作品や新たな世界設定に基づく連載を始めたり・・・。それが何時の間にやら他のページをライバル視するようになって、あのページに追いつき、あのページを追い越せ、とばかりに作品を作っては投入する、ということを繰り返してきました。その結果、それなりの御来場者数を獲得することは出来ましたが、何かを忘れてしまったような気がしてなりませんでした。楽しみでやっていたページ更新が仕事のような感じになって・・・。
 やはり御来場者数や反応にこだわり過ぎているのでしょうか。これだけの時間と労力をつぎ込んだ作品なんだから、もっとメールや描き込みがあっても良い筈だ、と思い悩むことも度々。自己満足では済まず、ご来場者を満足させようと考える方向にシフトし過ぎているのかもしれません。自分のページなんだから反応を気にせず自己満足に徹すれば良いんじゃないか?誰のためのページなんだ?何のために作品を作っているんだ?そのページの作品と日記を拝見して、そんなことを思いました。
 つまりは俺に抱かれたかったってわけか・・・。確かに今日の晶子の乱れ方は前より激しかった。一度俺がダウンした時も−今日はただでさえ疲れてる−5分あったかなかったかくらいの小休止を挟んで晶子が俺を求めてきた。だから今の俺には指一本動かす力も残ってない。文字どおりベッドにぐったり横たわっている状態だ。
 晶子は身を沈めて俺の直ぐ横に顔を埋める。髪が俺の顔にかかる。繊細で滑らかな感触が心地良い。甘酸っぱくて芳(かぐわ)しい匂いが鼻を擽る。この匂いは晶子の家のシャンプーのものだ。俺の家に来る前に風呂に入ってきたんだろうか?そしてこの寒い中俺の家に来て、決して十分とはいえない暖かさの中で一人、俺を待っていたんだろうか?

「私の味方で・・いてくれますよね・・・?」

 晶子が耳元で呟くように尋ねる。やっぱり不安なんだろう。俺にとっては嬉しい選択とは言え、根も葉もない噂を流されて白眼視される可能性もあるんだから。こんな時こそ、まかりなりにも晶子の彼氏を名乗る俺がしっかりしないとな。

「勿論俺は、晶子の味方だよ。最後の一人になっても、俺は晶子の味方で居続ける。それが俺の役目だと思うから。」
「嬉しい・・・。」

 晶子は俺に頬擦りしてくる。滑らかな感触が頬を撫でるように行き来する。俺の腕の近くで、何かが何かを探すようにもぞもぞと動いているのを感じる。やがてそれは、俺の手を探し当てて指と指の間に入り込んでぎゅっと手を握る。俺も痛くならない程度に強く握り返す。
 晶子を少しでも安心させられるなら、晶子から笑顔を消さないためになるのなら、俺は何だってやってやる。悪魔にでもなってやる。常に時間を共有出来ないのがこれほど悔しく思えたことはない。だが、その分俺は晶子をしっかり守る。決して噂の飛び火を恐れたりはしない。恐れていたら話にならない。わざわざ俺の家に来て、俺に抱かれることになるのを承知の上で俺の帰りを待っていたこの健気な命の灯火を守るのは・・・俺しか居ない。

雨上がりの午後 第1057回

written by Moonstone

「ああなるって予想が出来てるのに、女性専用のマンションに祐司さんを入れられると思います?」
「・・・なるほど。」
「それに・・・あの日以来一度も祐司さんに抱かれてなかったから・・・。」

2003/1/22

[自分について思うこと]
 昨日職場の新年会がありまして、その場で部署が異動になった方と話す機会がありました。最初は私が計画している職場の労働組合設立の進捗状況についての話だったのですが、その方から色々助言を受けました。
 「自分を含めてそういうこと(労働法制を知る必要があることや労働組合の重要性について)を知らないから、まずそれを知らせる必要がある」・・・確かにそれはそうです。私は知っていても他の人が知っているとは限らない、むしろその方が言っていたとおり、知らない人の方が多いと考えて、設立へ一足飛びに行くのではなく、一つ一つステップを踏むことが必要ですね。私自身は危機感でいっぱいなのですが、周囲は必ずしもそうではない。そんな状況から始めるわけですから、地ならしをする必要がありますね。
 そしてまた別の助言「自分の考えに押し潰されちゃいけない。緩急をつけないと病気になっちゃうぞ」・・・まあ、病気になっちゃってますから手遅れって言えば手遅れなんですが(苦笑)。私は自分が携わっていることが思うように進まないと、それは自分のせいだ、と思い込みがちです。それはこのページの運営にも言えることかもしれません。自分が労力と時間を割いて作った作品に対して反響があまりにも少ないのは何故か、と悩むことが多いですからね。考えることは必要だが、思い詰めてはいけない、ということでしょう。このページにご来場の方、このコーナーのリスナーの皆様は作品やこの文面から私に対してどんな印象を抱いておられるのか分かりませんが、もっと(良い意味で)いい加減になっても良いのかもしれません。その意味では数値目標を設定したのは失敗だったかな・・・。
 二つの唇が音もなく重なる。直ぐにどちらともなく口を開いて舌を絡ませる。緩やかな、しかし濃厚な舌のチークダンスが微かな音を立てて続く。俺が晶子の体を抱く腕と、晶子が俺の首を抱く腕に力が篭る。厚着を通しても感じる晶子の胸の弾力感が、俺の胸の高鳴りをよりいっそう激しくする。頭を熱くする。舌のチークダンスが自然に終わった後、俺と晶子は互いの服を脱がし合う。

・・・。

「・・・なあ、晶子。」
「はい?」
「こうなるって、予想してたのか?」
「ええ。」

 晶子の答えを受けて俺は小さい溜息を吐く。電灯で照らされた室内の隅の方、一人用のベッドには俺と晶子が横になっている。布団と毛布を被っているが、勿論二人共裸だ。暖房が効いているとは言え室内は割と冷えるから、ことが済んでから布団と毛布を被った。ことの最中には冷えなんて感じなかった。もっともそんなことを考える余裕はなかったんだが。
 晶子に誘導されたような形とはいえ、俺は晶子を抱いた。晶子を抱いたのは大体3ヶ月ぶりくらいか・・・。俺の20歳の誕生日の夜以来だから。一度関係を持った割には随分ご無沙汰だが、これまでそういう機会がなかったし、バイト帰りに晶子を家に連れ込んでベッドイン、なんてことも考えたこともなかった。それにしても・・・何で晶子はわざわざ俺の家に来たんだ?合鍵を渡しているから何時でも入れるが、こうなることを予想していたのなら、それを避けることも出来た筈だ。

「・・・何で今日、俺の家に来たんだ?」
「相談に乗って欲しかったから・・・。」
「それだけなら、何時ものとおり、晶子の家でも良かったんじゃないか?」
「もう・・・。鈍いですね。」

 俺の肩口を枕にしていた晶子が−頭から布団を被っているような状態だ−頭を起こし、両手を俺の脇について俺の上に乗りかかる。光沢を帯びた長い髪が肩を伝って敷布団に流れ落ちる。

雨上がりの午後 第1056回

written by Moonstone

 俺と晶子はどちらから言うこともなく、ベッドからはみ出た下半身をベッドの上へとずらす。俺が晶子の首筋から唇を離し、顔を晶子の前に出し、目を閉じながらゆっくりと近づける。晶子の目もそれにあわせて閉じていく。

2003/1/21

[気分悪い・・・]
 キャプションどおり、非常に体調が悪いです。PCの前に向かうだけでも酷い吐き気のようなものを感じます。夕食後からこのお話をするまでずっと寝てました。それで多少は良くなったんですが、まだ不快さは消えていません。
 日曜、否、先週の金曜辺りからずっと続いている体調の波の谷間が、今長期化しているようです。そんなわけですので、暫くこのコーナーでまともにお話することは出来ないと思います。体調の悪さを乗り越えてでもお話したいというものがあれば別ですが・・・。
 ネットも直ぐに切ると思います。兎に角PCに向かうこと自体がまともに出来ないので・・・。勿論メールや掲示板への書き込みにはきちんと対応しますので、その辺はご遠慮なく。ちょっと遅れるかもしれませんが。
俺の顔が映る晶子の瞳を見ていると、俺の心に強い決意が湧いてくる。晶子の心の支えになろう、と。大学で孤立した生活を送らなければならなくなったら、幾ら今は平気だと言ってもやはり耐え難いことになるだろう。そうなったら俺が晶子の心の拠り所にならなきゃいけない。それがまかりなりにも彼氏を名乗る俺の役割だ。

「こんなに事態をこじれさせて、こんなことを言うのはあつかましいとは思います。でも私は・・・。」
「・・・。」
「私は祐司さんを愛してます。この気持ちに嘘偽りはありません。」

 こんな至近距離でこんなことを言われるのは、夏に遊園地で観覧車に乗ったとき以来じゃないだろうか?・・・胸が高鳴ってくる。返すべき言葉は・・・決まってる。

「俺も晶子を愛してる。」

 次の瞬間、晶子が俺に抱きついてきた。俺の首に両腕を回し、頬を摺り寄せてくる。俺はその背中に両腕を回してそっと抱きしめ、その背中を擦る。鼻を擽る甘酸っぱい香りに誘われるように、俺は晶子の首筋に唇を触れさせる。すると俺の身体がゆっくり前方に引き寄せられる。そしてそのまま、俺は晶子の上に重なるようにベッドに横たわる、否、横たえられる。

雨上がりの午後 第1055回

written by Moonstone

 俺は椅子から立ち上がり、晶子の直ぐ傍に腰を降ろす。晶子の視線は俺の動きに追随する。俺と晶子は至近距離で見詰め合う。

2003/1/20

[肩まで痛い・・・(泣)]
 土曜日の不幸な事故の影響が1日置いて左肩にも出てきました。やっぱり左肩も強打していたらしく、かなり痛いです。普通に動かす分にはそれほど支障はないのですが、物を掴んで引っ張ったりすると痛みます。かなり注意していないと痛みで物を落としたりしかねない状態です。
 これで左肩、左肘、左膝の三箇所にダメージを負ったことがが分かりました。左から倒れたので当然といえば当然ですが。昨日は完全休養日ということで大人しく横になってました。横になっている限り、ダメージが大きい肘や膝に負担はかかりませんし。
 肘と膝、特に肘は擦り傷も加わっているのでかなりのダメージです。物に接触させることが出来ませんし、膝に至っては深く曲げることが出来ません。これだと自転車を運転出来るかどうか微妙なところです。一昨日点灯した直後に自転車のタイヤを見たら、かなり溝がなくなっていたので、余計に滑り易くなっていたんでしょうね・・・。タイヤ交換が必要かも。
そうなったら余計に息苦しくなるだろう。これには究極の選択に近いものがある。俺としては勿論、前者を選んで欲しいんだが・・・ここは当事者である晶子の判断を待つしかない。どちらにしても厳しい現実が控えていると言って良い選択肢が2つだけだ。あと1つあるといえばそうだが・・・これは晶子の学業生活を断つことだ。幾ら何でもこれは選択肢に挙げられない。

「・・・祐司さんと別れるなんて、出来ません。」

 晶子が俺を見ながら小さな、しかしはっきりした口調で言う。

「元はと言えば、先生をその気にさせるような軽はずみな対応をした私に責任があります。自分が蒔いた種は自分で刈り取らなければなりません。ですから、訴える方を選びます。それ以外の選択はありえません。」
「その後、逆に晶子が追い詰められるようなことになっても良いんだな?」
「今回こんなことになったのは自分の責任ですから、その結果を受けるのは当然です。それに・・・。」
「ん?」
「私は元々学部では浮いた存在ですし、根拠のない噂をばら撒かれて周囲から白い目で見られるようになっても大して変わりありません。どのみち白い目で見られる現実が待っているんですから、いいえ、譬えそんなことがなくても、私は祐司さんと一緒に居る方を選びます。それ以外考えられません。」

 晶子の口調ははっきりしている。判断に迷いがない証拠だ。自分で蒔いた種は自分で刈り取る・・・か。晶子は過ぎるほどに自分に責任があると思い、選択の結果待ち受けているかもしれない試練を受けると言う。一度は晶子が自分と田畑を天秤に掛けていると思い込み、関係断絶まで告げた俺には、晶子の言葉が重く感じる。

雨上がりの午後 第1054回

written by Moonstone

 もう1つの選択肢を選んで欲しいとはさらさら思ってない。強要された付き合いなんて息苦しいだけだろうし、噂が噂を呼ぶということになって、結果的に周囲から白眼視されることになるかもしれない。

2003/1/19

[ああ、災難・・・(泣)]
 今朝方、私の住んでいる地域では雨がぱらついていました。でも買い物に行こうとした時には既に止んでいました。私は準備を整えると、何時ものように自転車に跨って買い物に出発しました。
 何時も通る裏通りを走り、前方をゆっくり走るおじいさんを追い越して意気揚揚とカーブを曲がろうとしたそのときでした!不意に自転車が横滑りして、私は左肘と左膝をアスファルトで強打してしまいました。
 あまりの痛みに(経験者ならお分かりでしょう。自転車で転ぶと痛いんですよ)なかなか起き上がれずに居た私の傍を、前に追い越したおじいさんが通り過ぎ、その時に衝撃的な一言を残していったのです!

♪自転車で転んで〜♪(明らかに歌っていた(怒))

 声かけるなら別の言い方があるだろう、と心の中で叫びつつ、私は何とか態勢を立て直して買い物へ向かいました。帰宅してから傷の具合を見たら、左肘は酷い擦り傷を負っていて、左膝は赤く腫れていました。今でも左膝を床につけることは出来ません。この痛みは当分続きそうです。何だかこのところ災難続きだなぁ・・・(溜息)。
 考えられる対策は・・・2つ。どちらを取るかは当事者である晶子の判断に委ねるべきだろう。俺としては勿論1つの方を選んで欲しい。だが、それで万事丸く収まるとは限らない。晶子が見詰める中、俺は口を開く。

「・・・方策は2つだな。」
「2つ・・・ですか?」
「ああ。1つは大学のセクハラ対策委員会に訴えることだ。そしてもう1つは・・・俺と別れて田畑と付き合うことだ。」
「え・・・。」
「セクハラ対策委員会は秘密厳守という建前になってる。それにそんな鮮明な音声があって、そこで田畑自身がそう受け止められても仕方ない、と明言しているとおり、単位と引き換えに交際を迫っているのは明白だ。田畑に懲戒処分が下るのはほぼ間違いないだろう。でも・・・。」
「でも?」
「懲戒処分といっても精々停職何ヶ月ってところだろう。それを受けて田畑が辞職するとは言い切れない。こんなご時世だから処分期間が終わったら職務復帰する方を選ぶだろう。そうなったら晶子は、今後田畑とぎくしゃくしたまま大学生活を送らなきゃならない。」
「・・・。」
「それに、さっきの田畑の口ぶりからして、訴えられて処分されたことを逆恨みして、根も葉もない噂をでっち上げてばら撒く可能性がある。そうなったら晶子は文学部に居辛くなるのは避けられない。」
「だからもう1つの選択肢に、祐司さんと別れて先生と付き合うということを挙げたんですね?」

 晶子の問いに俺は無言で頷く。ことを公にすれば田畑に釘を刺すことは出来る。だが、その後が問題だ。懲戒免職にでもならない限り、田畑がそれこそ逆恨みして「逆襲」してくる可能性は十分考えられる。そうなったら晶子は白眼視されることになる。俺とは学部も居場所も違うから、晶子は孤立した状態でこれからの大学生活を送らなきゃならなくなってしまう。

雨上がりの午後 第1053回

written by Moonstone

 ガタガタと物音がして足音が少し聞こえた後、ドアが開き、閉じる音がしたところで晶子がペンの頭を押して音声を止める。俺は怒りよりも、とうとう来たか、という思いを感じる。晶子は俺の方を向く。その大きな瞳は何かを訴えているようだ。否、訴えていると言った方が良いか。

2003/1/18

[絶不調です]
 昨日(お話段階では今日1/17)は体長が最悪で、殆ど動くことが出来ませんでした。PCの前に向かうのも苦痛です。前の連休では軽かった体調変動の谷間が昨日に来たみたいです。こうなるともう薬でも治しようがないので、軽作業とか、出来るだけ心身に負担をかけないことをしてやり過ごすしかありません。
 今日の更新は前からちょこちょこ準備してきたもので、昨日に集中させなくて正解だったと思っています。今週末はゆっくり休んで、月曜からの仕事に備えるつもりです。本当はこういう空き時間を活用して、書きかけの作品を仕上げたりとか、新たに作品を作り始めるといったことが出きれば良いんですがね・・・。
 兎に角今は座っていることさえも辛いので、これをご覧戴いているころには時間帯によってはネットから切って寝ているかもしれません。連休に活動できて回復に近付いている、と思ったんですが、一歩進んで一歩下がった感じです。今日は動けるかな・・・。かなり不安です。
『冗談は止めてください。』
『冗談なんかじゃないさ。僕は真剣だ。君と付き合いたい。』
『生憎ですが、私には交際相手が居るんです。先生もご存知の筈ですが。』
『ああ、前の男子学生のことだね?でも彼は君に絶交を告げて立ち去ったじゃないか。君の言い分も聞かずに。』
『あれは私が彼に状況を話さずに居た上に、彼があんな現場を目の当たりして誤解してしまったからです。もうその誤解は解けて、今も彼と交際しています。』
『でも、彼と付き合うか僕と付き合うかは君次第であることには違いない筈だ。僕は真剣だ。そろそろ浮名流しは止めて真剣な交際をしたいんだよ。気持ちを切り替えてみてはくれないかな?』
『それは出来ません。私は彼を愛しています。先生と交際するために、いえ、誰と交際するためであろうと、その気持ちを捨てることは出来ません。』
『・・・僕をその気にさせておきながら捨てるなんて、随分だな。』
『人聞きの悪い言い方は止めてください。確かに先生とは気軽にお話したり、生協で食事をご一緒したりしました。でもそれで以って、私が先生と交際したいという意思表示だったと受け止められても困ります。』
『でも僕は、君に僕と交際する意思があると受け止めた。この気持ちはどうしてくれるんだね?』
『どうしてくれる、と言われても・・・。』
『君がこの大学を卒業できるかどうかは、僕の手の内にあるといっても良い。君が他の教科で全て優を取ったとしてもね。』
『・・・先生の講義の単位と引き換えに交際しろ、と仰りたいんですか?』
『そう受け止められても仕方ないね。まあ僕だって、この場で即答しろ、なんて野暮なことは言いたくないから少し考える余裕はあげるよ。今後のことをよく考えた上で結論を僕に示してくれ。』
『・・・分かりました。この話、全て記憶しましたから。』
『良い返事を待ってるよ。』
『・・・失礼します。』

雨上がりの午後 第1052回

written by Moonstone

『折り入って話がある、って何ですか?先生。』
『井上さん。考え直して貰えないかな?』
『何をですか?』
『とぼけないでくれよ。僕と付き合うことをだよ。』

2003/1/17

[本日は連載拡大版をお送りします]
 昨日よもやのトラブルで急遽休載という事態を招いてしまい、楽しみにされていた方には申し訳ないことをしたと思っております。そのお詫びと言っては何ですが、昨日予告したとおり、連載を拡大してお送りします。一挙2回分連続掲載です。今後はメディアの定期的な交換など万全を期しますので、ご容赦くださいますよう宜しくお願いいたします。
 2回分といっても読むのにそれほど時間はかからないと思います。書くのにはそれなりに時間がかかってるんですけどね。まあ、こういうのは小説に限ったことではなくて、マンガやイラストもそうです。これは経験された方でないとなかなか実感が湧かないと思いますが、今回は「それなりに時間を書けたものを一挙大放出」するということです。自分で蒔いた種ですから自分で刈り取らなきゃならんのは当然ですけど(苦笑)。それでは、連載拡大版をお楽しみください。
 俺は増幅されてくる不安を感じながら受話器を置く。まさか田畑に無理矢理交際を迫られたのか?考えれば考えるほど嫌な方向へ考えが増幅されていく。俺は自転車に跨ると、懸命にペダルを漕いで自分の家、晶子が待つ場所へ向かう。何があったのか聞かなきゃならない。場合によっては晶子を守らなきゃならない。頼むから無事で居てくれ・・・。今日は家までがやけに遠く感じる。

雨上がりの午後 第1051回

written by Moonstone

 自転車を降り、息を切らしながらドアの傍まで押していくと、明かりの灯った屋内から物音が速いテンポで近づいてくる。俺が帰ってきたことを察して鍵を開けに来たんだろう。俺じゃなかったらどうするつもりだ。まあ、こんな時間−22時半を過ぎている−の来客といえば泥棒くらいのもんだろうし、それならご丁寧にも物音を立ててくるような間抜けな真似はしないか。
 俺はドアの前に立ち、インターホンを押す。するとドアが僅かに開く。俺がドアの隙間から覗き込むと、ほっとした表情の晶子の顔が見える。しっかりドアチェーンがかかっているところを見ると、防犯意識はしっかりしているらしい。普段ガチガチのセキュリティで守られている家に住んでいるだけに衰えているかと思ったが、その辺は問題ないようだ。

「ただいま。」
「お帰りなさい。今、ドア開けますね。」

 一度ドアが閉まると、ガチャガチャと物音がして、ドアが人一人入れる分くらい開かれる。俺がさっさと中に入ると、晶子が素早く、尚且つ大きな音を立てないようにドアを閉めて鍵とドアチェーンを掛ける。室内は暖房が効いているようだが、玄関口は外ほどではないが流石に冷える。俺は靴を脱いで上がり、マフラーを外しつつ奥へ進む。

「今日は随分遅かったですね。」
「実験が最初からやり直しになる羽目になってさ・・・。途中で止めたらもう一度最初から、ってやつだし、測定そのものも時間がかかるやつだから。」
「相変わらず大変ですね。」
「専門教科の実験だからな。4単位もある必須科目だし逃げるわけにもいかないし、今の学科に入った宿命みたいなもんさ。」

 俺はコートを脱いで椅子の背凭れに被せ、鞄を机の上に置く。晶子は何時の間にか俺の隣に居る。俺はとりあえず流しに向かい、顔を洗ってうがいをする。この時期風邪をひいたら洒落にならない。かといって風邪の予防接種なんてないし、あってもそんなの受けてる時間はないから、原始的な、しかし基本的なこの方法で予防するしかない。水が一気に顔と手の体温を奪うが、これは仕方ない。
 タオルで顔を手を拭った後、俺は椅子に座って溜め息を吐く。晶子はベッドに腰を降ろす。俺の雑用は済んだことだし、晶子が自分の家でなくて此処に来た−以前合鍵を渡したから何時だって入れる−理由を聞かなきゃならない。正直聞きたくないという気持ちも若干あるが、まかりなりにも自分の彼女の悩みなんかを聞かないようじゃいけない。それは前の事件で嫌と言うほど思い知った。

「・・・なあ、晶子。」
「はい。」
「今日は何で・・・俺の家に来たんだ?」

 単刀直入に尋ねると、晶子は俺から視線を逸らしてやや俯く。俺は問い詰めるようなことはせず、晶子からの返答を待つ。少しして、晶子がセーターの襟元に手を突っ込んでペンを取り出す。あれは・・・俺がこの前の週末に渡したICレコーダーじゃないか。ということはやはり田畑絡みか、と思う俺の前で、晶子はペンの頭を一度だけ押す。すると雑踏を小さくしてくぐもらせたような音に混じってドアが開き、閉じる音がして、その後何やら物音がして−多分椅子か何かに腰掛ける音だろう−それに続いて音声が溢れ出してくる。

雨上がりの午後 第1050回

written by Moonstone

「や、やっぱり怒ってるか?」
「もう怒りを通り越して呆れてる段階だよ。せめて口頭発表くらい答えてくれ。」
「だってさ、俺には全然分からないからさ・・・。」
「俺だって無い知恵絞って答えてるんだ。ようはやる気があるかないかだろうが。」
「た、確かにそうだけど・・・。」
「お前に愚痴ったってしょうがないから良いや。今日も何とか終わったし。レポートは自分でやれよ。分かってるだろうな?」
「も、勿論。」

 智一の、勿論、って言葉もあてにならない。提出間際になって此処を教えてくれ、と泣きついてくるのも珍しくない。俺が昼休みや空き時間に図書館で調べたりして懸命に仕上げたレポートのクローンがいとも簡単に出来てしまうのを目の当たりにし続けてると、いい加減怒るのも馬鹿らしくなってくる。こういうのを「言うだけ無駄」と言うんだろう。
 俺は正門前で智一と別れて、一人歩いて駅へ向かう。ホームは流石に閑散としている。最終電車じゃないが、遅い時間帯であることには違いない。晶子はもう寝てるんじゃないかな・・・。否、流石にまだ早いか。小学生じゃあるまいし。俺は溜息を吐いて、ホームに入ってきた中身ガラガラの電車に乗り込む。
 約10分、暖房が効いた電車に揺られて、俺は電車を降りる。一転して冷たい空気が俺に飛び掛ってくる。俺は自転車置き場へ向かい、取り出し易くなった場所から−時間が遅いとこういう時は楽で良い−自転車を取り出して外へ出て、電話ボックスへ向かう。そして財布から10円玉を取り出して放り込み、受話器を手に取り、晶子の家の電話番号をダイアルする。
 だが、10回コール音がなっても晶子は出ない。寝てるのか?否、これだけ何回も鳴れば大抵の人間は起きるだろう。それとも何処かへ出かけてるのか?・・・もしかしたら、と思って、俺は一旦受話器を下ろして、今度は自分の家の電話番号をダイアルする。3回目のコール音が鳴り終わったところで、ガチャッと受話器が外れる音がする。

「はい、安藤です。」
「俺、祐司だよ。」 「祐司さん・・・。よく私が此処に居るって分かりましたね。」 「もしかしたら、と思ってかけてみたら正解だったんだよ・・・。家に電話したけど出なかったから何かあったのかと思ったぞ。」
「心配かけて御免なさい。でも、今日は此処に来たくて・・・。」
「何か・・・あったのか?」
「・・・それについては、祐司さんの家でお話します。」
「・・・分かった。それじゃ、今からそっちへ行くから。」
「はい。待ってますね。」

2003/1/16

[だあああぁ〜!(号泣)]
 何人いらっしゃるか知りませんが、「雨上がりの午後」をご覧の皆様、誠に申し訳ありません。トップページの記載どおり、本日の「雨上がりの午後」は臨時休載とさせていただきます。
 理由は簡単。FDに記録してあった書き溜めファイルが壊れていて、読み込み過程でメインPCのファイルまで壊れてしまったからです。職場に行けばバックアップファイルがあるんですが、帰宅して夕食を済ませたのにまた職場へ行くのは流石に面倒だ、ということで、何度かアクセスを試み、旧PCで読めるかどうか試したんですが、どうしても駄目で諦めざるを得ませんでした。楽しみにされていた方、本当にごめんなさい。その分といっては何ですが、明日は拡大版として何時もより多く掲載しますので、何卒ご了承ください。
 エクスプローラでファイルは見えて、他のファイルは読めたんですよ。よりによって書き溜めファイルに限って読めないんです。こればっかりはどうしようもありません。ユメ〜!FDを直す魔法をかけてくれ〜!(安っぽい願いだな(汗))
 靖国神社は「天皇のために死んだ」人間を「英霊」として祀り、あの侵略戦争を引き起こし、日本のみならずアジア人民に多大な災禍を齎した東条元首相らA級戦犯14人を合祀している、侵略戦争を崇め奉る神社です。靖国神社には「日の丸」がはためき、人間魚雷「回天」(神風特攻隊の海軍バージョン)や大砲などを「大東亜戦争」という当時の呼称そのままに展示しています。
 それに靖国神社は戦前、天皇のために死んだ人間を祀る神社として軍国主義の精神的支柱となり、戦後も先に述べたようにA級戦犯を合祀し、侵略戦争賛美の展示物を常設したりと、侵略戦争を賛美する存在であり、侵略戦争の象徴的存在なのです。だから首相や閣僚が参拝する度にアジア各国が批判の声を上げ、先の参拝では日中国交正常化30周年の年にも関わらず小泉首相が参拝を実行して江沢民国家主席が激怒し、中国訪問が出来なかったのです。勿論今回の参拝に対しても中国や韓国を始め、アジア諸国が批判の声を上げているのです。更に首相という公人として靖国神社という宗教施設の一つに参拝することは、政教分離を定めた日本国憲法違反です。当然、年始の伊勢神宮参拝も政教分離に違反する行為です。
 本当に「二度と戦争を起こさない」ことを内外に表明するには、靖国神社に参拝せず、イラク戦争反対を明言し、インド洋から自衛隊を撤退させることです。戦争放棄を謳った日本国憲法を遵守する義務(第99条)を実践することです。政府与党が有事法制成立に執念を燃やす今、靖国神社を参拝したことは、政府与党を代表する人物が侵略戦争を肯定する立場に立ち、再び国民やアジア諸国に「いつか来た道」を歩ませようとしているに他なりません。右翼軍国主義勢力の台頭を阻止するには、民主主義の担い手である一般市民が常に権力を監視し、問題行動を起こせばすぐさま批判し、謝罪や反省に追い込むだけの見識を身につけることが肝要です。それがかつての侵略戦争の犠牲者の命を無駄にしない、教訓とする行為です。
 今日はこの連載スペースを使って、もう一つのお話をさせていただきます。うー、何でファイルが見えるのに読めないんだよ〜(泣)←かなり諦めが悪い奴
 1/14、小泉首相がまたしても靖国神社に参拝しました。本人曰く「二度と戦争を起こさないように」という願いを込めてだそうですが、こんなものは靖国神社の招待と歴史を知っている人間には嘘っぱちだと直ぐに分かる、政策と同じで軽薄で無計画なものだということは直ぐに分かります。

2003/1/15

[わーい、終わったー!(^^)]
 今週末が期限、延長絶対不可の仕事が昨日無事終わりました。殆ど金曜日の指摘を受けて修正したもので良く、少々単語の修正を(同じ内容でも用語が違うのを統一する。これ結構大切)したり、説明を追加したりするくらいでOKが出たので、郵送の手配。これで完了(^^)。
 わーい、手が空いた、と思ったら、以前作った回路基板と図面が欲しいという仕事が入ってきたので(これはいきなりだった)、早速資料整理&図面描き開始。これは期限に割と余裕があるんですが、発表の準備があるので油断なりません。手早く済ませたいところです。こういうのは部品代もろくに請求出来ないから、本当はやりたくないんですけどね〜。社会人の宿命ですな(それほど大袈裟なものではない)。
 それは別として、最近手がかさつき気味。私は肌が弱いですし、その上寒さに弱いので、どうしても身体にがたが出てくるんですよね。兎に角風邪やインフルエンザにはやられないように注意したいところです。

「いやあ、祐司。今日は悪かった。マジで悪かった。反省してる。」
「もう聞き飽きた。」
「いや、マジで悪かったと思ってる。勘弁してくれ。」
「まあ、装置を止めてしまって、最初から測定やり直し、って羽目になったのは俺を手助けしようとしてのことだってことくらいは分かるから、もう謝らなくて良い。大体、智一の『悪かった』っていう言葉は著しく信頼性に欠ける。」
「ううっ、キツイことを・・・。」

 そう、今日の帰りが遅くなったのは、ただでさえ時間がかかることが分かっている−先に経験したグループから話を聞いていた−半導体の電流、電圧の温度特性を測定する装置−恒温槽という−を、智一が測定終わり近くになったところで止めてしまったせいだ。まあ、温度表示を見ながら電流、電圧の値を一人ノートに書きとめていた俺を見かねてか、智一が横から手を出してうっかり装置の電源スイッチを切ってしまったんだから、不可抗力と言えばそれまでだが。
 正直言って、俺が入っている実験グループの人間は、智一を含めて三人共使い物にならない。特に智一以外の二人は指示待ちで動くどころか、手が空いている他のグループの奴らと暢気に談笑していたりする。これでよくこの大学に合格できたもんだ。まあ、実験が出来るかどうかは入試には関係ないんだが・・・なんかやりきれないものを感じる。
 智一は完全に俺の指示待ちだ。まだ動くだけ他の二人と比べればましだが、実験の邪魔になったりすることはしょっちゅうだ。お陰で帰りが遅くなってしまう。今日はとうとう晶子と夕食を食べる時間をなくしてしまった。それが疲れた身体と心に余計に重みを加える。

「その分、講義のノートは心配するな。きっちり取ってるからさ。」
「見せない、って言ったらぶっ飛ばすところだからな。」

雨上がりの午後 第1049回

written by Moonstone

 教官に提出した実験結果とそれに対する考察の口頭発表にようやくOKが出たことで実験から解放され、俺は疲れ切った身体を引き摺るように街灯が点々と灯る通りを歩く。隣には・・・今日の帰りが遅くなった元凶が居る。

2003/1/14

[休みなんてあっという間]
 年末年始でおかしくなった身体のリズムを再調整するのに丁度良いこの連休ももうおしまい。今日からまた仕事が始まります。昨日一昨日と寝ている時間が多かったんですが、仕事は待ってはくれません。今度は「間に合わなかった」は許されないので、しっかり進めたいところです。
 そう言えば昨日は成人の日だったんですね。私からすれば遠い過去の話なんですが、選挙権が得られたことに喜びを覚えたものです。自分の意思表示が出来る、と。昨日成人式を迎えられた皆さんにも、先人達の戦いと犠牲の上に得られた普通選挙権という重みを実感してもらい、4月の一斉地方選挙その他で発揮出来る人は必ず発揮して欲しいと思います。
 今日は昨日一昨日で仕上げたテキスト関係の文章を公開しました。どれも対岸の火事で済まされそうな問題ですが、決して他人事ではありません。自らの問題として捉え、「いつか来た道」へ逆戻りさせないように声を高め、結集していく必要があります。更新情報では是非、と書きましたが、「必ず」読んで下さい。繰り返しますが他人事ではないのですから。

「来週頭までBGM代わりにさせてもらいますね。」
「き、機能を悪用したな!」
「利用した、って言ってくださいよ。こういう重要な会話なんかを記録するために使うんですよね?この機械って。」
「そ、そりゃそうだけど・・・。」
「じゃあ、さっきの録音は問題ないですよね?」

 俺には晶子の笑みが小悪魔のそれに見えて仕方がない。果たして本当にこんな代物を渡して良かったものか、とちょっと後悔の念さえ感じてしまう。このまま使われたら、迂闊なことは言えないな・・・。このICレコーダー、小さい割に感度はかなり高いから隠して録音していても分からない。まあ、その方が田畑対策には有効なんだが、俺に対して使われることまでは考えてなかった。・・・晶子が策士だってことを忘れてた俺が悪いのか?
 俺は苦笑いを隠すために紅茶を啜る。一度録音した内容は次の内容を録音すると上書きされてしまって消えてしまうから、さっきの会話は田畑対策に備える月曜日まで残されるだろう。何だか子どもに玩具を与えて喜んでいるところを見ているような気分だな・・・。意外に晶子も子どもっぽいというか、茶目っ気というものがあるように思う。
 まあ、晶子のそういう純粋なところが長所でもあり短所でもあるんだが、長所もあれば短所もあるのが人間だろう。それが出会い、時に波長が重なり時にぶつかって人間関係が築かれていくんだと思う。それを避けていたら・・・何も始まらない。続くものも終わってしまう。俺は今日の事件でそれを思い知らされたような気がする。

 翌週頭の月曜日。俺は実験が長引いたお陰で帰りが遅くなった。晶子には夕食を済ませておいてくれ、と連絡しておいたが、晶子の手料理を食べたかったのは言うまでもない。生協で昼食も夕食も食べるのは正直言ってレパートリーも限られてくるから飽きてしまう。

雨上がりの午後 第1048回

written by Moonstone

 晶子が急に悪戯っぽい笑みを浮かべて、例のICレコーダーを手に取り、小さい赤いボタンを押してからペンの頭を1回押す。すると、さっきの会話がそっくりそのまま聞こえて来た!晶子の奴、俺に気付かれないように録音にセットしてたのか!

2003/1/13

[珍しく動けた(喜)]
 日曜日は食事以外昼間はぐったり動けずそのまま、という状況がずっと続いていますが、昨日はどうにか動くことが出来ました。一昨日から書いていた新作を1本書き上げ、お話の時点では広報紙Moonlight PAC Editionの最新号発行へ向けて準備中です。明日発行出来るかな、といった具合です。
 さて、先日公開した「マッドリッちゃん奮戦記」ですが、あれは以前から書いていたものではなく、ある日(平日)一気に書き上げた代物です。以前から構想自体は頭にあったんですが、ああいうタイプの作品は勢いがないと書けないですからね。書こう、と思ったある日一気に書き上げたんです。大体3時間か4時間くらいですかね。筆の遅い自分としてはかなり早い方です。
 このシリーズ、改造手術対象者が色々居るだけに(笑)様々な構想があります。それを文章にして公開するまでに時間がかかるのが難点なんですが、兎角固い内容の作品が多い中、こういう作品で笑っていただければ幸いです。

「祐司さんがわざわざ小宮栄まで行って買って来てくれたのは、私を心配してくれてのことですか?」
「ああ。もうあんなごたごたは御免だし、田畑がこれからどんな手を使ってくるか分からないからな。学校のセクハラ行為は被害者の親告が頼りだし、加害者が身に覚えはないと言えば処分されないこともままあるらしいから、明確な証拠があった方が、その後の被害を未然に食い止められることになるだろ?」
「元々私が後先考えずに気楽に対応してたのが間違いだったんですよね・・・。でも、祐司さんが心配してくれるのは嬉しいです。・・・ところで祐司さん。」

 晶子の表情が俄かに真剣みを帯びる。俺は宮城と会って食事をしながら談笑したことに鎌を掛けられるのかと思って、内心冷や汗をかく。

「私のこと・・・愛してくれてます?」

 思いがけない問いかけに一瞬驚いたが、宮城とのことに鎌を掛けられなかったことで内心安堵し、晶子の目を見て率直に答える。

「勿論、愛してるよ。」
「私が祐司さんと田畑先生を二股かけてないって、信じてくれますか?」
「ああ。信じる。あのごたごたは俺の勝手な被害妄想が生んだようなものだからな。相手を信じなきゃ恋愛なんてやってられないって改めて実感したよ。」
「・・・聞きましたからね。」
「?」

雨上がりの午後 第1047回

written by Moonstone

 晶子はICレコーダーをテーブルの上に置く。その時ちょっと指が動いたような・・・。ま、気のせいだろう。晶子は俺を見詰めて口を開く。

2003/1/12

[あーん、見れないーっ!(T-T)]
 別に上り階段で女子高生のミニスカートの中が見れないという意味ではありません(爆)。ほ、本当ですよ(汗)。「見れない」のは前にここでもお話したアニメ「魔法遣いに大切なこと」のことです。だから本当ですってば(汗)。
 芸術創造センターからもリンクしている公式ページには「テレビ朝日で1/9より放送」ということが書いてあったので、楽しみにしてたんですよ。本当なら2:00には寝ないと翌日辛いのに、ユメの声聞きたさに(ああ、ミーハー(笑))頑張って起きてました。しかし、始まったのはわけの分からんアジア映画。待てども待てども始まらない。・・・おかしい。怪しい。
 一体何故?!と思った私はネットに繋いで公式ページを確認。すると「テレビ朝日」とは書いてあっても「テレビ朝日系列」とは書いてない。つまり、テレビ朝日以外では見れないということ。私の住んでいる場所で見られるのはテレビ朝日「系列」局なので見れないということが発覚(泣)。がっくりした私はネットを切って、そそくさとベッドに潜り込みましたとさ(号泣)。
「はい。」
「それに家計簿や小説を保存する時、サーとかジーとか音するか?」
「いいえ。祐司さんの説明は分かるんですけど、それがこんな小さいもので実現されてるっていうのがちょっと信じられなくて・・・。」
「俺もそれを見た時はちょっと驚いたさ。まさかペン型のものがあるとは思わなかったからな。・・・さて、一度止めて再生してみたら?」
「あ、はい。」

 晶子はペン本体の小さな赤いボタンを押して、ペンの頭を1回押す。すると、録音を始めてからの俺と晶子の会話が鮮明に再現され始める。晶子は驚きのあまり呆気に取られている様子だ。会話が途切れたところで、晶子はもう一度小さな赤いボタンを押す。そして再びペンをしげしげと観察する。

「これは凄いですね・・・。」
「それなら普段携帯していても怪しまれることはないだろ?操作はちょっと面倒だけど、慣れればそんなに不自由はしないと思ってそれにしたんだ。」
「そうですね。さっき使ってみた感じではシャーペンと同じ感覚でしたから、特に違和感はないです。こんな良いもの、ありがとうございます。」
「気にしなくて良いよ。それより取扱説明書に書いてあるけど、再生の音声が弱くなってきたら電池を替える頃合だと思ってくれ。いざって時にきちんと録音出来ないんじゃ、宝の持ち腐れだからな。」
「はい。それは注意します。大切にしますね。」
「使って貰えればそいつも本望だろうよ。」

雨上がりの午後 第1046回

written by Moonstone

「音声を0と1だけで構成されるデジタル信号に変換して、パソコンにあるのと同じようなメモリに記録してるんだ。晶子はノートパソコン持ってるだろ?」

2003/1/11

[やっぱり思い通りにはいかない]
 今週末が期限と前から言っていた仕事ですが、結局間に合いませんでした(爆)。上司のチェックで殆ど全て書き直しという羽目になりましたからね(^^;)。でも反論しようにも反論出来ないんですよね。いえ、上司が嫌いとかそういうわけじゃなくって、実際的を得た指摘だからです。「あ、確かにその方が良いよなぁ」と思う指摘ですから、それを無視していてはいけません。
 で、期限に間に合わなくて大丈夫なのか、とお思いかもしれませんが、実際のところ来週末までに完成させれば大丈夫だったりします。じゃあ何で今週末だ、と言っていたかというと、これは自分へのプレッシャーです。期限をあえて早めに設定しておくことで心理的余裕を持っておくということと、それくらい余裕を持って取り込んだ方が良いと思ったからです。
 で、書き直しはほぼ出来てしまいましたから(こういう時、自分はもの書きだなぁと思う)、週明けに早速上司のチェックを受けるだけの状態です。今度は通過すると良いなあ〜。長引くのは御免ですからね。来週末は本当に締め切りですから、連休明けでボケてるわけにはいかないですね。この休みの間、出来るだけのことはしようと思います。
 その日のバイトが終わって晶子の家で紅茶を飲みつつ、俺と晶子はICレコーダーを話のネタにしている。晶子は初めて見る−俺も初めて見たが−カセットテープを使わないレコーダー、それもペンかシャーペンにしか見えないICレコーダーが余程珍しく思えるらしく、手にとってしげしげと眺めている。
 俺がICレコーダーを渡した時は流石に驚いたが、今後の田畑対策のため、と会に行った理由を説明すると、晶子は恐縮して代金を払うと言い出した。勿論俺は丁重に断った。これは晶子のためでもあり晶子の彼氏である俺のためでもあるし、何より一方的に田畑との関係を疑って関係断絶まで告げたことに対する詫びのつもりでもあるからだ。ただ、宮城と偶然会って昼食を共にしたことは言っていない。新たなトラブルを生む要因になりかねないからだ。晶子とて決して宮城を楽観視していないだろう。あの夏の夜の俺と宮城との話し合いを立ち聞きしていたんだから。

「試してみて良いですか?」
「もうそれは晶子のものなんだから、使うのは自由だよ。」
「それじゃ・・・。」

 晶子は先に俺が説明したとおり、ペンの頭をカチカチとノックする。これで録音が開始されたわけだが、晶子はどうも本当に録音しているのかどうか疑わしいらしく、ペンを色々な角度から観察している。

「大丈夫だって。電池が入っているのは俺ので確認してあるし。それより録音してるんだから、何か喋ってみなよ。」
「祐司さんの言葉も録音されたんですか?」
「晶子がそう尋ねた言葉もな。」
「録音してるって雰囲気がないんですよね・・・。サーとかジーとかいう音がしないですから・・・。」

雨上がりの午後 第1045回

written by Moonstone

「へえ・・・。これで録音や再生が出来るんですか・・・。」
「ああ。一見普通のペンかシャーペンにしか見えないだろ?」

2003/1/10

[ふざけるな!財界&政府与党!(2)]
 (昨日の続きです)まず財界側としては、社会保障などに対する企業負担を軽減したいという思惑があります。現に社会保障は昨年10月の高齢者医療改悪に代表されるように削減される一方ですが、その社会保障の国の負担分を増やせば(消費税1%増税でポンと何千億、何兆という金が国の懐に入る)、労使折半の企業負担分を軽減することが出来るからです。リストラという名の首切りや賃金切り下げなど労働条件を切り下げておいて、更に自分達の負担を減らして儲けを溜め込もう(内部留保と言う)というのですから、身勝手ここに極まれり、ではないでしょうか。
 さらに財界の中で大企業の集団である日本経団連は、年始の「提言」で「経済界の考えに共鳴し行動する政治家」を企業献金などで支援するとしています。要は自分達の思惑どおりに動く政治家を資金援助しようと言っているのです。主権者は国民であり、企業ではありません。企業が政治家に献金するのは見返りを要求しているからだということは財界幹部もあけすけに語っていることであり、主権在民を金で踏みにじるという、極めて悪質な行動と言わなければなりません。
 そして政府与党の方ですが、これは与党に限ったことではありません。共産党以外の政党は企業献金を受け取り、更に政党助成金も受け取っています。これは無所属の会(中村敦夫氏など)も含みます。元々政党助成金は「企業団体献金を廃止するから」という条件付きで導入されたもの。しかしその約束は反故にされ、企業献金を当てにしています。そうでないと活動(選挙ポスターを作ったりすることも含む)出来ないからです。財界の消費税率アップの発言を後押し、称賛する発言が相次いだのは、「経済界の考えに共鳴し行動する」ところを見せて、企業献金を多く貰いたいからに他なりません。これがあのムネオ事件に代表される政治と財界の癒着の構図でなくて何でしょうか。
 「政治家は金に汚い」というのは、財界の意向を丸呑みにして動いているからです。それを正すには企業団体献金を禁止し、自分達の活動資金は自前で賄うようにするため、政党助成金も廃止すべきです。それを身を以って実践しているのは共産党のみ。本当に政界を浄化したいのなら、共産党を国政や地方政治の場で強く大きくすることが必要なのではないでしょうか。(終わり)
これが恐らく最後の会う機会になるだろう。此処での別れをきっかけに、俺と宮城はそれぞれの道へ戻って歩くのを再開する。もう振り返るのは心の中でのみ。それも誰にも話さない秘め事としてのみだ。

「俺はこのまま帰るから、4月からの仕事、元気で頑張れよ。」
「うん。祐司こそ、あの娘と仲良くね。隙があったら学生と社会人の垣根なんて乗り越えてでも割り込んでやるから。」
「そうさせないようにする。」
「じゃあ・・・元気でね。」

 宮城がすっと手を差し出す。俺も抵抗なく手を差し出し、ぐっと握手する。時間にすればほんの数秒の間に、幾つもの言葉が音もなく、しかし目まぐるしく俺と宮城の間を行き来したような気がする。自然に手が離れると、俺と宮城は同時に背を向け合い、俺は駅へ向かって歩き始める。もう振り返らない。旧友とのひと時の出会いはもう終わったんだから・・・。
 俺は切符売り場で切符を買い、中央改札を通って停車中の急行に乗る。下りのこの便は割と空いているとはいえ、それなりに人が乗っている。俺は空いていた座席に腰を下ろして発車時間を待つことにする。
 コートのポケットに手を差し入れる。中には包装紙の滑らかな感触とそれと幅た違う滑らかな感触の二つが同居している。今日はこれを、ICレコーダーを買うために小宮栄を訪れた。思いがけないハプニングはあったが、無事目的のものは手に入れられた。操作方法は少々面倒な感もなくはないが、シャーペンを使う感覚で使えることが分かっているから、晶子の手にも直ぐ馴染むだろう。

「間もなくー3番ホームからー、月峰神社方面、新京市行き急行が発車いたしまーす。ご乗車の方はーお急ぎください。」

 少々間延びした感のあるアナウンスが流れる。それに続いて、何人かが電車に駆け込んで来る。それが少し続いたら、車内はかなり混み合うようになった。座っている安心感を狙ってか、朝無理矢理追い払った眠気が倍になって逆襲してきた。胡桃町駅までは約1時間。眠っていても大丈夫だろう。意外に降りる駅の手前で目が醒めるもんだ。寝過ごす場合もないとは言えないが。

「3番ホームからー、新京市行き急行が発車いたしまーす。」

 眠気をより倍増させるようなアナウンスが流れた後、ホイッスルの音が聞こえ、ドアが閉まる。そして軽い衝撃を伴って電車がゆっくり加速していく。電車が規則的な心地良い揺れを醸し出すようになると、俺の眠気はピークに達する。・・・大人しく寝るとするか。帰ったら・・・まずは実験のレポートの仕上げだな・・・。

雨上がりの午後 第1044回

written by Moonstone

 店を出たところで俺と宮城は別れることになる。俺は自宅に帰らなきゃならないし、宮城は一人暮らしの準備で店を回らなきゃならないからだ。

2003/1/9

[ふざけんな!財界&政府与党!(1)]
 公務員すら給与削減されるほどの深刻な不況の折、年始早々財界が馬鹿なことを口走りました。去る1/6、日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の財界三団体の首脳が「少子高齢化社会に備えた社会保障」の財源として、消費税増税を言い出したのです。日本経団連の奥田碩会長は「ぜいたく品は高率、生活必需品は低率にするなど格差を付ければいい」と言い、日本商工会議所の山口信夫会頭は、「情勢をみながら(消費税の税率を)上げる時期は早晩来る」と言ってのけています。これより先、日本経団連が1/1付で発表した新ビジョンとやらに、現在5%の消費税率を2004年度から1%ずつ引き上げ、最終的に16%にするという提言を盛り込んでいます。
 それに呼応して1/7、政府与党が続々と消費税率アップを示唆、容認する発言をしました。福田康夫官房長官は「消費税(増税)は大きな税制上の課題で、わが国の財政状況や他国とのバランスも考えて、どうするのか今後、議論を大いにしないといけない。消費税の議論を妨げるものではない」と言い、塩川正十郎財務相は年金の国庫負担率を引き上げる際の財源手当について、「(消費税などの)間接税をもう少し強く負担してもらう方向にいかざるを得ない」と言い、悪名高き竹中平蔵金融・経済財政担当相も「(消費税率引き上げは)中長期的には幅広く、選択肢を限らず議論することが必要だ」と述べました。平沼赳夫経済産業相に至っては、先の財界の消費税率引き上げ発言について「示唆に富んだ提言だ」と賛美さえしました。
 所得の高低に関わらず税金を取る間接税、とりわけ生活に必要不可欠なものにまで降りかかる消費税をこの時期に上げたら、国民消費が余計に落ち込む→需要が低下→企業の業績悪化と繋がるのは目に見えています。なのに何故財界と政府与党が消費税率アップの大合唱をするのか。そこには財界と政府与党の思惑の一致があります。(続く)
(発言内容は「しんぶん赤旗」1/7付、1/8付より引用)
携帯電話にはメモリ機能があって、複数の相手先を記憶出来るということくらいは知っている。それは即ち自分の秘密を持ち歩いていると公言しているようなもので、俺には物騒に思えるし、同時に手が届かない秘密をちらつかされているようで不快に感じる。

「このメモ、捨てないでよね。また話す機会があるかもしれないし。」
「学生と社会人、まして宮城は不規則な生活なんだから、電話なんてしないさ。迷惑だろ?仕事中や疲れて家に帰ったところに電話がかかってきたら。」
「仕事中なら手短に済ませれば良いこどだし、それに疲れて一人家に居る時こそ、誰かと話したくなるものよ。祐司だって、一人ぽつんと家に居ると余計に気が滅入っちゃわない?」
「そうでもないぞ。」
「まあ、今の祐司はあの娘と一緒のバイトで家も行き来してるからそう思うんだろうけど、あたしは今実家に居ても、一人で部屋に居るのがつまらなくなる時が結構あるのよ。そんな時は携帯で友達と話したり、メールやり取りしたりしてる。」
「ふーん・・・。」
「内容なんてどうでも良いの。ただ話したりメールやり取りするだけでも、自分は一人じゃないんだ、って思えるのよ。そこがポイント。祐司も就職してあの娘と合う時間が少なくなったらきっと携帯が欲しくなると思うわ。」
「そんなもんかね。」
「祐司、電話そのものが苦手だもんね。でもこれからの時代、携帯くらい持ってなきゃ駄目よ。電子工学科に居るなら興味本位で買っても不思議じゃないと思うんだけどな・・・。」
「少なくとも今の俺には必要ないし、携帯電話に払う金があるならギターの方につぎ込むさ。」
「ふー、やれやれ。祐司のギター好きは治ってないか。」

 宮城は肩をすくめて呆れたといった調子で言う。そう言えば高校時代、バンドの練習に夢中な俺に「あたしとギターとどっちが大事なの?」っていう厄介な質問をぶつけてきたっけ。「優子ちゃんは−その当時はそう呼んでいた−勿論大切だけど、ギターも大切だし、比べようがない」って答えを返したら、「それってインチキ」と怒られたな・・・。それから時は流れても、俺のギターへの愛着は宮城を呆れさせるほど変わってないようだ。
 宮城からのメモを受け取った俺と宮城は店を出る。勘定は別々に支払った。もう宮城を離すまいとご機嫌を取る必要もないし、高校の同期に戻ったんだから、片方が勘定を担う必要や義務はない筈だ。宮城もその点は心得ているようで、自分の分の勘定を済ませた。

雨上がりの午後 第1043回

written by Moonstone

 そう言って宮城は胸ポケットから携帯電話を取り出して見せた。パステル調のピンク色の折り畳めるタイプのもので、カメラ機能も搭載しているとのこと。今じゃそれが当たり前らしいが、携帯電話を持ってさえいない俺には珍しい代物であると同時に、何か違和感を感じずにはいられないものだ。

2003/1/8

[気が滅入る・・・]
 まずは昨日の更新時。ファイルをアップして確認のためにアクセスしてみたら、アクセスカウンタがリセットされていました。稀にあるんですが、まさか年始早々に襲ってくるとは・・・。現在は復旧しているようですがアクセス数を幾らか損失したのは間違いありません。かなりショックで、確認を済ませたらとっとと寝てしまいました。不貞寝というやつです。
 続いて風邪の具合。一晩寝たら良くなるかと思ったら一向に改善せず、放っておくと鼻水が滴り落ちてくる有様。頭もぐらぐらしてかなり不快でした。このお話をしている今でも隣にティッシュの箱が置いてあります。
 もう一つは仕事の進捗状況。身体の具合が前述の有様なので絶えず鼻をかみ、更に頭がぐらぐらするせいでろくに集中出来ず、文章をひととおり書き終えて一部写真や図を挿入するだけで切り上げました。まあ、これだけでもそれなりに形になってきたんですが、「これだ」というレイアウトに出来ませんでした。
 私は風邪をひくと長引く傾向があるので、当分悩まされることでしょう。市販の薬は迂闊に飲めないし、専用の風邪薬はストックがなくなったし、自然治癒力に頼るしかありません。まったく、何でよりによってこんな時期に・・・。こんな状況ですので気が滅入っています。
「何?実家継ぐの?」
「それはない。親もそうさせるつもりはないって言ってるし。」
「じゃあ今流行りのベンチャー企業だっけ、それを立ち上げるとか。」
「それは秘密。」
「ぶー、ケチ。」
「それはお互い様だろ。」

 俺が言うと、二人揃ってくすくすと笑う。何だか昔に逆戻りしたみたいな気分だ。もしあの行き違いがなかったら、彼氏彼女の関係でこうしていられたかもしれない。でも、俺にとってはその関係はもう過去のこと。今は高校の同期。それだけの関係だ。俺には大切な存在が居る。今更過去に戻るなんてのは勿論、考えちゃいけないことだ。少なくとも俺はそう思う。
 そうこうしているうちに注文の品が運ばれてきた。腹ごしらえをしながら、俺と宮城は話を続けた。内容はもっぱら互いの現況についてのこと。俺はバイトと学業の両立が結構しんどいこと、そして晶子との関係は同じバイトをしていることもあって−これは宮城も驚いた−順調に続いているということを、宮城は短大の講義やゼミが就職活動で殆ど崩壊状態にあること−これは政治と企業の責任だ−、そして就職への意気込み。一般的ではない業界−この辺が引っかかるが−だけに不安はあるが、それに負けずに頑張るとのこと。まあ、宮城の性格なら新しい環境にもすんなり適応出来るだろう。
 ゆったりした時間が流れて、食事も済んだ。俺が出るか、と言うと、宮城はちょっと待って、と言ってコートのポケットからメモ帳とペンを取り出して何やら書いて俺に差し出した。090から始まる10桁の番号。それは紛れもなく携帯電話の番号だった。

「あたしの仕事、携帯が必須みたいなもんだっていうし、友達も持ってるから前に買ったの。実際今も持ってるわよ。」

雨上がりの午後 第1042回

written by Moonstone

「でも祐司は良いよね。何てったってあの新京大学の工学部。会社なんて選り取りみどりでしょ?」
「さあ・・・。まだその辺の情報は仕入れてないから何とも言えない。それに、普通に会社や官庁に就職するって決めたわけじゃないし。」

2003/1/7

[鼻水ズルズル・・・]
 昨日の昼頃から鼻水が止まりません。どうやら風邪をひいてしまったようです。何せこっちも雪がうっすら積もるほど冷え込みましたからね(この辺では雪は滅多に降らない)。その上暖房は職場も自宅もろくに効かないし・・・。寒さにやられたらしいです。感冒(かんぼう)ってやつですね。
 ウィルスにやられたタイプでないですから、温かくして早く寝れば大丈夫だと思いますが、一度風邪をひいてこじらせて肺炎にやられた身ですので、油断は禁物。期限付きの仕事も待ってますし、大事に至らないうちに治したいものです。ったく、だから寒いのは嫌いなんだよ・・・(怒)。
 話は変わりますが、本日付でCG Group 2にアップした年賀状CG、ご覧戴いたでしょうか?あれはTerragenというフリーソフトで描かれたものなんですが、同じくTerragenを使っている私には(親ページから来られている方にはご周知のとおりだと思いますが)とても真似出来ない代物です。
 作者の方はここでも以前紹介した「月深館」の管理人様です。「月深館」ではこの他にも素晴らしいTerragen作品を見ることが出来ますので、是非一度訪れてみてください。そしてこのページでの展示作品の感想をお送りください。きっと喜ばれることと思います。
で、宮城はそれを見逃さずに突っ込みを入れてきているんだろう。誤魔化しが出来ないのはこういうとき不便だ。こういう時は問いかけを反射させるのが一番だ。

「かく言うお前は、彼氏出来たのか?」
「忘れた?あたしは祐司と区切りをつけただけで、諦めたわけじゃないって。」
「・・・いい加減諦めろよ。お前も地元離れてそれこそ距離が広がるんだし。」
「ううん。距離は広がらないわよ。逆に縮まる。」
「何?」
「あたしの職場ね、此処小宮栄にあるの。住む所ももう決まってるわよ。まさにオフィス街のど真ん中。便利なんだけどちょっと手狭でね・・・。まあ、都心だから仕方ないけど。」

 俺は驚きを隠せない。てっきりこの近辺から離れるのかと思ったら、逆に俺との物理的距離が縮まる小宮栄に来るとは・・・。ま、まあ、俺は学生だし、宮城は不規則な仕事だって言うし、「接近」を警戒する必要はないか。

「意外だな・・・。地元を離れるって言うから、この近辺から出るのかと思った。」
「就職先も探せば意外にあるものよ。職種を選ばなきゃ、の話だけどね。親は反対したけど、祐司みたいに会社選べる程レベル高くないし、丁度上手い具合に欠員があったからこれを逃す手はない、ってことで内定取り付けて既成事実作って押し切っちゃった。」
「宮城らしいな。で、何の仕事なんだ?」
「ふふふ。それは秘密。」
「教えろよ。減るもんじゃなし。」
「だーめ。何れ同窓会名簿で分かるわよ。」

 ちっ、肝心なことははぐらかしやがるな・・・。まあ、確かに何れは分かることだろうし、幾ら宮城を追求したところで体良くはぐらかされるのは目に見えている。此処は引いた方が賢明だな。

雨上がりの午後 第1041回

written by Moonstone

 こいつ、探偵雇って調べさせてるんじゃないだろうな・・・。表面上は平静を装っているつもりだが、顔に出てるかもしれない。多分そうだろうな・・・。

2003/1/6

[こんなことで大丈夫なのか?!(大汗)]
 年末年始最後の休みだった昨日、買い出しが終わったら殆ど寝てました。動こう、何かしよう、という気は起こるんですが、実行に移せない・・・。身体が動かない・・・。日曜恒例の完全休養として自分自身で納得させましたが、今日の仕事始めからこんな調子だったら大変です。期限付き、しかも今週末、締め切り延期は不可という仕事が待ってますから。
 医師の診断では「身体が休養したがっているのだから決して無理をしないように」とのことですが、1日何も出来ないというのはやっぱり勿体無い話です。やっぱり早く良くなることを目指すことしかないんですかね(溜息)。
 自宅へ戻って初めて食事らしい食事(御飯やおかずがきっちり揃っていると言う意味)を食べましたが、身体が動かなくても腹は減る、自分でどうにかしないと食事は出てこない、後片付けもしなきゃいけない。本当に今日から大丈夫なのかな(汗)。
 宮城は俺の腕を引っ張って歩いていく。まさかこんなところで宮城に会うとは・・・。それも一緒に食事だなんて、デートじゃあるまいし。だが、宮城は俺の腕をしっかり掴んで離しそうにない。仕方ない。此処は大人しくついて行くことにするか。前みたいに顔を見るのも嫌だってこともないし、間もなく地元を離れる宮城と最後の顔合わせになるだろうから、少々一緒の時間を持っても悪くはないか。

 俺は宮城に案内されて、地下街の1軒の飲食店に入る。俺のバイト先とよく似た、否、それ以上に女性が好きそうなテーブルや椅子が並ぶ、如何にも女性層をターゲットにしているといった感じの店だ。中は案の定女性客が多くて、男の俺はかなり目立つ。居心地の悪さを感じつつ、俺と宮城は二人向かい合わせに座る形の席に案内される。ふと腕時計を見ると11時半過ぎ。昼過ぎに起きて朝食と昼食を兼用する普段の週末から考えれば極めて「健全」な時間だ。
 俺はサンドイッチセット−飲み物には紅茶を選んだ−を、宮城はミートスパゲッティとホットコーヒーを注文する。注文を受けた店員が去った後、宮城が興味津々といった表情で話し掛けてくる。

「ねえねえ。あの娘(こ)とは上手くやってるの?」
「まあな。」

 いきなり核心に突っ込んできた質問に、俺はどぎまぎしながら曖昧な返事を返す。こっちの事情を知らないのを良いことに・・・。あ、知らなくて当然か。別れて以来全然連絡とってないし。

「実はちょっと喧嘩とかしてたりして。」
「憶測だ、憶測。」

雨上がりの午後 第1040回

written by Moonstone

「ねえ祐司。折角会ったんだしさ、お昼一緒に食べない?あたし、朝からずっと歩き詰だからいい加減疲れてきたし。」
「俺はバイトと実験のレポート仕上げなきゃならないから・・・。」
「たかが1時間くらいのこと良いじゃない。さ、行こ行こ。」
「お、おい!」

2003/1/5

[通常営業・・・かな?]
 本日付より自宅からの更新となります。ネット環境は格段に落ちますが(元に戻っただけ)時間的より何より精神的余裕が出来ます。仕事が始まったら精神的余裕もなくなりそうですが(汗)、せめてネットの場では精神的余裕を大切にしたいですね。特に作品制作に関しては自宅の方が落ち着いて出来ますから。
 一日中ネットに繋げると言うのも考え物ですね。どうしても自分のページのカウンタの回転状況やメール、書き込みのチェックがしたくなるし、他所様のページも見たくなりますし・・・。年末年始で作品制作が思うように進まなかったのは、その辺にも原因があるような気がします。
 このお話をする前に即行でNovels Group 4の新作を書き上げたんですが、帰省中はそんなこと思いつきもしませんでした。のんびりまったり、は否定しませんが、少なくとも私がこのページを運営する上では不要、むしろ邪魔なもののようです。少なくとも年度末までに40万HITを達成するまでは。
 朝食もそこそこに家を出て更に駅からかなり歩いたせいか、腹の虫が騒ぎ始めた。これで地下街を通ったらふらふらと飲食店に入っちまいそうだ。ここは兎に角誘惑を逃れるためにも早く電車に飛び乗って、家に帰った方が無難だな。俺は駅へ向かう足を速める。人で混み合っているとはいえ、吹きっ晒しの屋外に長時間居るのは俺には辛い。

「祐司。」

 不意に背後から声がして右肩に手が置かれる。この声・・・もしや・・・!俺が振り向くと、背後に宮城が立っていた。黒のハーフコートに同じく黒のマフラー、黒のズボンという出で立ちの宮城は、宝物か何かを見つけた子どものような笑みを浮かべている。

「宮城・・・。」
「久しぶりね。わざわざ小宮栄に来るなんて、何かあったの?」
「まあ、ちょっと買い物にな。こっちの店じゃないと場所知らないから。それより、宮城こそ何で此処に?」
「あたし、4月から就職でしょ?それで地元離れることになるから、一人暮らしに必要な家電製品とかを見て回ってるの。決めたものは自宅に配送して貰うように代金引換払いで注文してる。」
「そうか。地元出るのか・・・。」
「通えないこともないんだけど、一人暮らしの方が融通利くし、仕事柄不規則な生活になるから、電車乗り遅れたらアウトだし。」

 宮城は短大だから、来年3月で学生生活が終わりなんだっけ。不規則な生活になる上に一人暮らしってのは、大変だろうな・・・。まあ、その点は宮城のことだ。何とでもするだろう。

雨上がりの午後 第1039回

written by Moonstone

 俺は店の外に出る。暖房が効いていた店内に慣れていた身体が、凍てつく空気に包まれてブルッと振るえる。夏場もそうだが、屋内と屋外の寒暖の差はなかなか厳しいものがある。その辺を加減すれば省エネも掛け声だけに終わらずに済むだろうし、経費削減にも繋がって一石二鳥だと思うんだが。

2003/1/4

[結局2本か・・・(汗)]
 約1週間の帰省期間中、書けた小説は2本だけ。あまりにも少な過ぎますね。年末年始で外へ連れ出される機会が多かったのと、それが長時間化したこと、他には途中外へ連れ出されたせいで集中出来なかったこともあります。しかし、やっぱり2本は少ないな・・・。これなら帰省しない方が良いかも。
 食事や洗濯といった家事をしなくて良い、特に食事が黙っていても用意されるのはありがたいんですが、自由度は格段に落ちます。私は一気に書き上げる方なので、食事の時間をスライドしたり洗濯しつつ、といったことができないんですよ。特に前者が大きい。ネット環境は弟のを使うので書いて気になるんですが、作品制作には関係ないですからねぇ・・・。
 本日自宅に戻ります。休みが明けたら早速仕上げなければならない仕事が待っています。でも、一度独立して一人で生計を立てるようになると、もう滅多なことでは戻らない方が良いのかもしれません。

「その800円、ってのはちょっと邪魔だな・・・。何とかなりません?」
「お客様、なかなかお上手ですねえー。・・・分かりました。では15000円ポッキリでどうです?」
「OK。じゃ、1つはラッピングしてもらえます?」
「かしこまりました。お買い上げありがとうございます。お支払いはこちらです。どうぞ。」

 店員は俺が差し出した商品を受け取って棚に戻し、棚の下から小さな箱を2つ取り出して俺を先導してレジへ向かう。そしてレジの女性店員に何やら話して俺をレジに案内し、自分もレジの中に入って1つの箱をラッピングし始める。

「ありがとうございます。2点お買い上げで15000円になります。」

 俺はポケットの財布から2万円を取り出して差し出す。店員はそれと引き換えに5000円札とレシートを差し出す。俺がそれらを受け取って財布にしまって間もなく、ラッピングが完了する。男性店員が箱剥き出しのものとラッピングされたものを両手で下から支えるように差し出す。俺はそれを受け取ってコートのポケットに仕舞う。

「どうも。」
「「ありがとうございました。」」

 店員の声に送られて俺はエスカレーターへ向かう。なかなか良いものが手に入った。さて、用も済んだことだし、とっとと帰って実験のレポートを仕上げるとするかな・・・。

雨上がりの午後 第1038回

written by Moonstone

 店員がズボンのポケットから取り出して叩いた電卓を見せる。2つで税込み15800円。十分予算範囲内だ。でも、ここであっさりOKするのはちょっと癪だから、値段交渉をやってみるか。

2003/1/3

[ちょっと一息つきましょう]
 年始早々固い話が続いたので、ここらで肩の力を抜きましょうか。年末も年末、12/31に意を決して眼鏡を新調しました。例の踏んで壊した眼鏡の代わりです。長時間PCに向かっても疲れないように、度は壊した眼鏡のものを、と決めていた上に偶然その度のレンズがあったので(なかったら言い逃れして買わないでおこうと思ってた)あとはフレーム。私としては視界が狭くなるのは避けたかったので従来型のフレームを希望したんですが、同行の父親や店員から「今時」のフレーム(枠が殆ど目立たないタイプ)を勧められました。店員の説明では視界が狭くなるようなことはあまりない、ということ。
 で、フレームを「今時」のものにして代金を先に払って時間をつぶすこと約3時間で(その間、正月用の食材などの買出し)出来上がりの連絡が父親の携帯電話に。まさかもう出来るとは思わなかったので半信半疑だったのですが(信じろよ)店に行くときちんと出来てました。で、実際かけてみると思いのほか視界は広い。そりゃ壊したものよりは隅の方が狭いですが、レンズの形状を考えると十分な広さ。おまけに軽いこと軽いこと。全体で100gあるかどうかというところです。勿論、レンズの度は壊したものと同じなので目が眩むこともない。
 価格はそれなりにしましたが、夏に購入した寝具を考えれば安いもの。勿論お話している今もかけています。眼鏡が変わると人相も変わるもので、多少は若返ったような気が(笑)。今度は壊さず、もっと大切に使って、先代よりもっと長持ちさせたいと思います(先代は10年以上使った)。
操作性としてはダブルクリックみたいな操作を必要としない上に早送りや巻き戻しといった機能もある箱型の方が良いが、値段が問題だ。ケチるつもりはないが、そんなに金の持ち合わせがない。それにいざっていう時、いかにも録音してます、っていう感じの箱型はちょっと問題があるな・・・。

「こっちの・・・ペンみたいな方の録音は、どんな感じでボタンを押せば良いんですか?」
「シャーペンの芯が出るまで押すような感覚で押してもらえれば結構です。回数と速さは機械が判別しますので、何回押しても変わりません。」
「試してみて良いですか?」
「はい。勿論どうぞ。」

 俺はペン型のICレコーダーの頭を言われたような感覚で2回押して、適当に喋ってみる。時々距離を開けたりして、どれくらいの音量が録音できるのかどうかも併せてチェックするつもりだ。
 適当に録音してみたところで、赤い小さなボタンを押す。小さい割に押した感覚はしっかりしてて、録音途中で止めてしまう、ということはなさそうだ。そして頭を1回だけ押すと、俺がさっき喋った声と共に、店内に流れているBGMや他の客や店員の会話なんかが雑音みたいに、それでいて割とはっきり聞こえて来る。小さい割に良く出来てるな・・・。3時間録音出来るなら、午前午後のどちらか寝てても大丈夫だな。

「これは・・・なかなか・・・。」
「そちらの商品は、私立探偵の方からもよくお買い上げいただいております。探偵さんですと目立つ装備は禁物だということで・・・。」
「別に探偵ごっこするわけじゃないけど、これはなかなか良いな・・・。これにするかな。これ、2つ下さい。」
「ありがとうございます。お値段の方は2点お買い上げいただくということも併せて努力させていただいて・・・税込みでこんなもので如何でしょう?」

雨上がりの午後 第1037回

written by Moonstone

 店員は俺に二つの形状の違う商品を差し出す。俺はそれを受け取って見比べつつ、指でボタンを触ったりして操作性の感触を確かめる。

2003/1/2

[年賀状で考えてほしいこと]
 皆さんの元に様々な形の(裏面の話。形を変えたら追加料金取られます)年賀状が届いていることかと思いますが、この年賀状を契機に考えてほしいことがあります。「果たして郵政民営化で良いのか」ということを。
 今は財界言いなりの政府与党による規制緩和の大合唱で、軒並みこれまでの規制が撤廃、或いは緩和されています。そして「民でできるものは民で」をスローガンに民営化がどんどん進み、マスコミも賛美叱咤の嵐です。郵政事業、即ち年賀状をはじめとする葉書、切手の販売、配達なども例外ではなく、郵政公社化のステップを踏んで民営化が狙われています。
 「郵政事業を民営化すれば料金競争が進んで安くなる」「様々なサービスを選べる」などと言いますが、料金競争が進んだら、儲からないところは切り捨てられます。ズバリ言えば、僻地(へきち)や島といった遠いところや届けるのに時間がかかるところの郵便局がなくなったり、そこに郵便を送ったりする料金が高騰したりします。これは現に郵政事業が民営化されたスウェーデンなどで実際に起こっています。ユニバーサルサービス(全国何処でも均一の料金でサービスが受けられる)が崩壊してしまいます。それに今の郵便サービス以外にどんなサービスを選べる余地があるのでしょうか?現に今、様々な運送会社が宅配事業に参加していて、郵便局員が自前でゆうパックを買ってノルマを達成する、という馬鹿みたいな話も起こっているのです(マスコミが書かないだけ)。
 以前にもお話したかもしれませんが、「民営化」という言葉に酔っていませんか?民営化で自分が運営に参加出来ると思ってやしませんか?違います。民営化というのは儲けを第一に考えるものであり、儲からないものは切り捨てるという、一般企業と同じことをするということです(一般企業が悪いというわけではないのであしからず)。マスコミの民営化賛美叱咤の論調に踊らされず、民営化すれば何でも良いのか、と考え直して下さい。
 良かった。また歩き回ることになる羽目にならずに済んだか。俺はその店員に礼を言ってエスカレーターで3階へ向かう。3階に到着すると、デスクトップ、ノート問わずにパソコンがずらりと並んでいる。自作機とやらも扱っているらしく、マザーボードやケースが入った棚も見える。兎も角俺は目的のICレコーダーの置き場に手っ取り早く辿り着くために、近くの店員に声をかける。若い男性店員がこれまた営業スマイルを浮かべて話し掛けてくる。

「お客様、どういった商品をお探しでしょうか?」
「ICレコーダーを探してるんですけど、どこにあります?」
「それならご案内いたします。どうぞ。」

 店員に先導されて、俺は店内を歩いていく。少し奥の方まで歩いたところで店員が足を止め、手で棚を指し示す。

「こちらになります。録音時間や形状でお値段が違ってきますが、どのような商品をご希望ですか?」
「そうだな・・・。3時間くらい録音できるやつで、大きさは小さければ小さい方が良い。操作性が良くて使いやすいと良いな。」
「それでしたら・・・そうですねえ・・・。このあたりになりますかね。」

 店員は棚から掌に収まるくらいの箱型サイズのものとペン型の二つを手に取って見せる。箱型サイズのものはボタンが明確だが、ペン型の方は操作方法がちょっと想像出来ない。

「こちら、箱型のものですと、6時間録音が可能です。ポケットにも十分入ります。赤いボタンが録音、青いボタンが再生ボタンです。勿論停止ボタンもございます。早送り、巻き戻し機能もございます。」
「ふーん・・・。」
「で、こちら、ペン型のものですと、3時間録音が可能です。これはシャーペンとほぼ同サイズですね。ペンの頭を早く連続で2回押しますと録音、1回押すだけですと再生になります。停止は本体脇の小さい赤いボタンを押すことで可能です。早送りや巻き戻しといった機能はございません。停止すると自動的に最初に戻ります。」
「値段はどんなものになりますか?」
「えっと・・・箱型のものですと3万円から、ペン型のものですと1万円からになります。勿論お値段の方は努力させていただきます。」
「ちょっと触らせてもらえませんか?」
「どうぞどうぞ。」

雨上がりの午後 第1036回

written by Moonstone

「どういった商品をお探しでしょうか?」
「ICレコーダーってあります?カセットじゃなくて持ち運びに便利そうなやつ。」
「はい、ございますよ。そのような商品でしたら、パソコン関連商品があります3階へお願いします。」

2003/1/1

[あけましておめでとうございます]
 初めて長期休暇で(1週間程度ですけど(^^;))シャットダウンしないことにしたこの年末年始、皆様は如何お過ごしでしょうか?私は相変わらず2日に1本のペースで作品制作をしています。あー、やっぱり年末年始は外出する機会が多いから普段より明らかにペースが落ちますね。
 2003年は国内外で緊迫した局面から始まります。国内に目を向ければ小泉「構造改革」による不況の深刻化と更なる国民負担増計画。国外に目を向ければ憲法違反の自衛隊派兵とアメリカへの戦争協力の緊密化。それを踏まえて再び国内に目を向ければ、1月の通常国会で再び有事法制が攻防の焦点になってくるでしょう。幾多の犠牲の上に築かれた不戦を誓った憲法が瀬戸際に追い込まれているのです。賃金、社会保障など各面で切り捨てられる国民生活と同様に。
 春には一斉地方選挙があります。昨年冬の茨城県議会議員選挙では保守王国ぶりが無様に露呈しましたが、政治や暮らしの向きを抜本的に変えたいなら、それだけの主張を持つ政党の力を議員数の増加や議席占有率の上昇、首長の交代という形で強めなければなりません。これは有権者の権利であり、義務でもあり、責任でもあるのです。白票や棄権は現体制に対する白紙委任状にしかならないということを念頭に置いてください。
 このページは4月で4周年を迎えます。しかし、更新ペースがこれまでのものを維持出来るという保障はありません。労働組合の立ち上げの各種準備で労働法制を本格的に学習しなければならず(素人に分かるように教えられるようになっておかないといけない)、そのために作品制作の時間を削減せざるをえないかもしれません。でも、どれだけ時間がかかろうが、連載作品は必ず完結させる気構えですので、今年もご愛顧くださいますよう宜しくお願いいたします。
 そこで俺が考えたのは、ICレコーダーを晶子に持たせることだ。ICレコーダーなら携帯にも不自由しない大きさや形状のものがあるし、その大きさに似合わず長時間、しかも鮮明に録音できるという。俺自身、講義にバイトにギターの練習で疲れが溜まってダウン寸前になるということがあったし−それで帰宅しようとしたときに例の場面に出くわしたのは本当にタイミングが悪かったと思う−、智一に負担をかけるわけにもいかないから、一つ持っておきたいと思っていたところだ。まあ、智一の場合は実験で散々世話焼かせられてるからお互い様と言えばそうなんだが。
 他の客の流れに乗って電車を降りた俺は、中央改札を通って商店街へ向かう。駅は地下にあって、そこから別の鉄道会社の路線や商店街、或いはオフィス街に出られるようになっている。ICレコーダーはパソコンや携帯電話を扱っていてそこそこ大きな規模の店なら置いてあるだろうから、幾つか知っている店を回ってみようと思う。新京市の都心はよく知らないし、その中から家電販売店な何処かでICレコーダーを売っている所を探し出すのは至難の業だ。
 バイトは休むつもりもないし休める状況じゃないから−クリスマスコンサートは目前だ−、とっとと買い物を済ませて帰るつもりだ。昼食は帰りにコンビニに寄って弁当かおにぎりあたりを買って済ますつもりだ。外食は高くつくから避けたい。それにICレコーダーがどの程度の価格か分からないのもある。事前に大学のPCで調べておくんだったな・・・。
 まずは寒い外を避けて地下道を通り、ICレコーダーを売っていそうな店を探す。流石に地下の商店街にはその手の店はなさそうだな・・・。仕方ない。寒いのを我慢して外に出るか。地下道を歩き回ってたら、食べ物の匂いにつられて食欲を満たす方向に走ってしまいそうだ。
 近くにあった通用口を上って外に出ると、肌に刺さるような冷気が襲い掛かってくる。厚着にロングコート、マフラーという防寒対策を施していても、剥き出しの頬まではカバー出来ない。カバーすると警察の厄介になりかねないから仕方がない。俺は手近な知っている店に向かう。今の一人暮らしを始める前に親父と一緒に小宮栄に来て家電製品の店を回ったから、その記憶を頼りに人で賑わう大通りを歩いていく。
 1軒目にはなかった。パソコンは腐るほどあったが・・・。2軒目にもなし。家電製品がパソコンを含めてズラリ揃う中で、ICレコーダーはなかった。かなり歩いて3軒目の店に入る。ここは品揃えが豊富なことで名が知れてる量販店だから、1つや2つ置いてあるだろう。
 中は広い上に何階もあるし、今まで散々歩き回ったお陰で腹も減ったし歩き疲れた。ICレコーダーがあるかないか自分の足で確かめるのは面倒だ。俺は近くに居た店員に声をかける。中年の男性の店員は、所謂営業スマイルを浮かべつつ話し掛けてくる。

雨上がりの午後 第1035回

written by Moonstone

 今後田畑が自分の講義の単位と引き換えに交際を迫るという、インターネットで検索すればズラリと例が並ぶセクハラ行為に出ないとは限らない。むしろそうするものと考えたほうが良いだろう。だが、それは明確な証拠がないと被害を立証するのがなかなか難しいという。

このホームページの著作権一切は作者、若しくは本ページの管理人に帰属します。
Copyright (C) Author,or Administrator of this page,all rights reserved.
ご意見、ご感想はこちらまでお寄せください。
Please mail to msstudio@sun-inet.or.jp.