芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年10月31日更新 Updated on October 31th,2002

2002/10/31

[こ、腰がぁ・・・(T-T)]
 今、腰の曲げ伸ばしが酷く苦痛です。その度に重い痛みが走ります。これは間違いなく火曜日からの修羅場仕事のせいです。配線、組立作業をしていたんですが、その物体がやたらとでかいので(標準的な机の上に乗せると一番上が頭を超える)立ち作業、それも腰をやや曲げた感じの姿勢を(言い換えれば会釈したような姿勢)継続していなければいけなかったので、こうなっちまったわけです。そのため、帰宅して夕食を食べ終えてからこのお話をするまで寝てました。座ってるだけでも腰が痛むので(泣)。
 その仕事の方ですが、どうにか組み立てが完了しまして、あとは回路基板を挿入して電源基板がぶっ飛ばないか確認するだけです。3台のうち2台の電源基板は私が設計した(クライアントが電源基板を3台分用意するべきところを1台分しか用意してなかった(怒))基板なので、実際の使用に耐えうるだけの電流容量を出せるか、出したところでトランジスタなどがぶっ飛ばないか、トランジスタなどがぶっ飛ぶだけでなく、光弾の回路にダメージを及ぼさないかどうか未知数なんです。
 一応回路基板に無理してヒューズをつけたんですが、それがきちんと働いてくれるかどうか・・・。兎も角それが完了すれば全てが終わるので、自分の設計と放熱設計を信用するしかないです。今日で10月も終わり。区切りの良いところですっきり終わって、祝杯をあげたいところです。
「今の祐司さんと私の関係があるのは、祐司さんは私のお陰だって言ってくれる。私は祐司さんの真面目さや誠実さに惹かれたからだと思ってる・・・。お互いに相手に感謝し合えるって、良いですよね。」
「ああ、そうだな・・・。」

 俺と晶子は顔を見合わせて微笑む。ふと空を見上げると星が煌いている。一時はこの幻想的で綺麗な空にさえ何の感慨も感じなかった。そこまで荒んでいた俺の心を変えてくれたのは、智一が言ったとおり晶子だ。俺が邪険に扱っても、無関心を装っても諦めたり見限ったりすることなく、俺の傍に居てくれたお陰だ。「あの日」はそんな晶子を感動させる日にしたい。でも未だ良い方法が思いつかない。もう残された時間は少ないというのに・・・。

 とうとう「あの日」が来てしまった。否、「あの日」という言い方はもう適切じゃないな。晶子と出会って今日で一年。色々考えてはみたものの良いアイデアは何も思い浮かばなかった。プレゼントを贈るのは晶子を恐縮させてしまうだろうし、その上適当なものも思いつかないし、食事に誘うにしても今日は平日だからそんな余地は何処にもない。
 無い知恵絞って一つ考えついた演出は、バイト帰りに俺と晶子が最初に出会ったコンビニに誘って、今日は何の日か覚えてるか?と切り出すというものだ。他愛もないと言われれば言い返せないんだが、それしか思いつかなかった。出会って一年という記念すべき日に、晶子が荒んでいた俺の心を癒してくれる存在になるための大元の日にその程度しか出来ないのが情けない。最初の専門教科の実験レポートもとっとと済ませて、ギターの練習時間を減らして考えたというのに・・・。
 4コマ目までびっしり詰まった講義で疲れた俺は、重い足を引き摺って定刻直前に−食事の時間が短くなる程度でそんなに厳密じゃないが−店に入る。カランカラン、というカウベルの軽やかな音が鳴り、キッチンで何かしていた潤子さんが俺のほうを向いて微笑みと共に迎えてくれる。カウンターの「指定席」に座っていた晶子が振り向いて同じく微笑を向ける。

「こんばんはー。」
「祐司さん、こんばんは。」
「こんばんは。随分お疲れのようね。」

雨上がりの午後 第973回

written by Moonstone

「前に智一に言われたんだけど、むしろ俺は晶子に礼を言わなきゃならない立場だよ。晶子が一途で挫折にへこたれない性格だから、あれだけ晶子を邪険に扱ってた俺の心の壁を突き崩して晶子の方に向かせたんだ。今の俺と晶子の関係があるのは晶子のお陰だよ。」

2002/10/30

[余裕・・・なのかな?(^^;)]
 いやあ、修羅場修羅場、修羅場も修羅場。私が今の病気を患う前と比べればまだまだですが(それだけ修羅の道を歩いてたってこと)、それでも最近はこんなことがなかったのでかなりしんどかったです。時間が過ぎるのはあっという間でしたね。でも、不思議と帰宅してからぐったりすることもなく、連載の書き溜めを進めて余裕を持って今のお話をしています。
 此処2、3日で急に寒くなりまして、私もいそいそと防寒対策を始めました。布団を厚手のものに替えたり、膝掛け毛布を用意したり(椅子に座っていると足が冷える)と。プロフィールにもあるように私は寒さが苦手というか嫌いな上に、風邪をひいてもおいそれと市販の薬を飲めないので、受験生並に防寒対策を施しています。冬は食べ物が美味しいんですが寒いのだけは何とも・・・。
 最近は体調も良好で、ほぼ以前と変わらないレベルにまで回復しています。薬の処方を変えてもらったのが効いてきたようです。まあ、治療を始めてから2年過ぎたんですから、いい加減回復してもらわないことには、ねえ(^^;)。調子に乗って無理をするとまたぶり返すかもしれないので、今は用心しながら毎日を過ごしています。さて、今日も頑張りましょうか。
「それなら良いんですけど、一つだけ引っかかることがあるんですよね・・・。」
「何が?」
「ここ最近、祐司さん、しょっちゅう考え事してるじゃないですか。実験のことにしては長過ぎるし頻繁だし、何か別のことを考えてるんじゃないかと思って。」
「それは思い違い。実験で智一と同じグループになったから、データと結果だけもらうような良いとこ取りされないようにするにはどうしたら良いか、考えてたんだよ。一般教養の実験でも散々な目に遭ったからさ。」

 実際以前に考えていたことを口にすると、晶子は小さく何度か頷く。その目からは疑念や怒りといったものは感じない。どうやら「あの日」を伏せることは出来たみたいだ。表情に出さないように気を付けながら内心で安堵の溜息を吐く。

「前に祐司さん、伊東さんの実験のフォローとかで、同じ実験を同時にやってるみたいだ、って零してましたものね。」
「今度ばかりは良いように使われたくないからな。まあ、晶子には関係ないことで愚痴ってたことには変わりないけど。」
「祐司さんって私の時もそうでしたけど、冷たいようで実は親身に接する人ですからね。今の時代、そういう人の良さに突け込む人が多いですから、祐司さんみたいな真面目で誠実な人は損ばっかりですよね。」
「否、そうでもないぞ。少なくとも俺は。」
「え?」
「だって、それがきっかけで晶子と今みたいな良い関係になれたんじゃないか。こんな幸運が飛び込んできたんだから、晶子が言ったような性格は損ばっかりじゃないさ。」

 俺がそう言うと、晶子の顔に嬉しそうな、そして照れくさそうな笑みが浮かぶ。晶子のこういう表情を見ると、俺まで嬉しくなってくるんだよな。連鎖反応ってやつかな?

「そう言ってもらえると嬉しいです。」

雨上がりの午後 第972回

written by Moonstone

「・・・そうだったんですか。」
「ああ。俺は晶子と付き合ってて何の不満もないし、潤子さんに晶子のご機嫌取りの指南を仰ぐ必要もないだろ?晶子がそういうタイプじゃないってことは分かってるつもりだよ。」

2002/10/29

[ヤマ場近きに思うこと]
 仕事が佳境に入りつつあります。恐らく今日から週末まで修羅場が続くことかと思います。よって更新が遅れたり、場合によっては行わなかったりする可能性がありますので、予めご了承願います。こういうのはページ運営だけに専念出来ない人間の宿命です。
 今思えば、何だかんだ言っても大学時代が一番時間的に余裕がありましたね。そりゃまあ、3年以降はかなり忙しかったですが、今のことを思えば遠く及びません。あの時代にWebページを構築することを知っていたらもっと色々出来ていたんじゃないでしょうかねぇ。過ぎたことを悔やんでも仕方ありませんが、やっぱり時間的余裕に恵まれていた時代にWebページ構築を始めたかったです。
 今回ほど納期が厳しい仕事は恐らくないでしょう。私の体調も幸い安定しています。それだけに出来るだけ早く片付けて、祝杯をあげたいところです。祝杯と言っても今は原則酒は禁止なので、食べ物になりますけどね。達成感と安堵感の中で美味しいものをたらふく食べたいものです。

「そんなこと、譬え潤子さんでもさせませんから。」
「それだけの気概を持ってるなら、祐司君と私の間に何もやましいことがないってこと、信じてくれても良いんじゃない?」

 潤子さん、上手い。晶子の心理を読んで俺と潤子さんとの間で妙な密談があったことを否定して、同時にそれを晶子に納得させようとするとは。流石に勘当とかの荒波を乗り越えてマスターと結婚して、二人で店を切り盛りしてるだけのことはある。
 晶子は少し視線を落として沈黙した後、納得したような表情で小さく頷く。内心ではまだ疑っているかもしれないが、とりあえずこの場は丸く収まった。俺も当事者の一人だっただけに内心胸を撫で下ろす。でも、バイトが終わって帰る途中で問い質されるんだろうな・・・。何て言ったら良いんだろう?今回は俺が晶子を感動させたいから「あの日」が近いことを言うわけにはいかないし・・・。実験とかよりこっちの方が遥かに厄介だな、こりゃ。

「祐司さん、正直に答えてくださいね。潤子さんと二人で何を話してたんですか?」

 その日のバイトが終わった帰り道、案の定晶子から質問、否、尋問を受けた。晶子の目は真剣そのもの。疑念に加えて怒りすら篭っているように見える。仕方がない。ここは「あの日」のことを伏せた上で経緯を丁寧に話すしかないか。沈黙や誤魔化しは通用しない。それどころか余計に晶子の疑念を増幅させるだけだ。

「俺が考え事してるところに潤子さんが何考え事してるの、って話しかけてきて、丁度この時期俺が宮城と切れたことに話が移って・・・。宮城とはこの前の夏に清算したって話したら、潤子さんが困ったことがあったら遠慮なく話してくれ、相談に乗るし出来るだけのことはするから、って言ってくれたんだよ。」

雨上がりの午後 第971回

written by Moonstone

 潤子さんがさらりと、しかし刺激の強いことを言う。フォローのつもりだろうけど、今の状況じゃますます晶子の疑念を膨らませるだけのような気がするんだが・・・。

2002/10/28

[今週の日曜も・・・]
 寝てました(爆)。やっぱり日曜日は「休ませろ」って身体がストライキを起こしてるみたいです。こうしてお話している今でもかなりかったるい気分です。退屈しないのか、と思うかもしれませんが、時間なんて過ぎるのはあっという間です。あー、本格的に薬飲んで寝よっと・・・。
 とは言ってみたものの、ある意味実家絡みとか宮城関係とかより厄介な問題なんだよな・・・。「あの日」まで日にちもそんなにないし、実験のレポートの調べ物とかで大学でじゃ考えてる余裕もあんまりなさそうだし・・・。本当にどうすりゃ良いものやら。
 晶子が戻って来た。その表情は少しばかり訝しげだ。俺と潤子さんが二人で話をしていたところを見てたんだろうな。自分に話をしないで潤子さんに話すなんて、と嫉妬じみた感情を抱いているかもしれない。晶子はポットを置いてこっちにやって来る。絆の糸が縺(もつ)れないうちに誤解を解いておいたほうが良いな。

「潤子さんとは世間話してただけだから。」
「そうですか・・・。その割に祐司さん、深刻そうな顔してましたね。」
「世間話にも色々あるだろ?明るい話ばかりとは限らないさ。」
「まあ、それはそうですね。」
「・・・あんまり納得してないだろ?」
「離れたところで二人でお話なんて、見ててあんまり良いものじゃないですよ。」

 そりゃもっともだ。俺が晶子との付き合いの不満を漏らしているとか、所謂恋愛指南を受けているとか思われても仕方ないシチュエーションだよな。晶子の目はやっぱり少し訝しげだ。何とか誤解を解いておきたいんだが、まさか「あの日」のことを口に出すわけには行かないし・・・。

「大丈夫よ、晶子ちゃん。祐司君を奪ったりしないから。」

雨上がりの午後 第970回

written by Moonstone

「・・・まあ、無理に言わせるつもりは毛頭ないけど、ご実家の事情とかそういうのだったら遠慮なく話してね。マスターと私も相談に乗るし、出来る限りのことはするから。」
「ありがとうございます。実家絡みとか、そういう厄介な性質の問題じゃないんで・・・。」

2002/10/27

[公明党の事実捻じ曲げ、隠蔽を許すな!(3)]
 (一昨日の続きです)新進党の(覚えてます?)解体後、再結成された公明党は再結成にあたっての「基本制作大綱」で北朝鮮政策について「北朝鮮のわが国に対する挑発的な外交姿勢が改められない限り、日朝国交正常化交渉は当面凍結するべき」(公明新聞1998年11月11日付)と、国交正常化に後ろ向きの態度を示していました。この当時の日朝間には北朝鮮のミサイル問題があり、緊張、対立状況でした。
 ところが、自民党が北朝鮮への食料支援の凍結解除などの動きを見せるようになると立場を急転換し、自民党との連立を決めた1999年7月の党大会では「朝鮮半島の平和へ積極的な関与政策」として、「拉致事件などの解決をあえて『入口』に位置づけないで、国交回復交渉をすすめる機会を粘り強く探る」と言い出しました。同年10月の政権入り目前の9月27日は、神崎代表が駐日米大使と会談し、北朝鮮問題について「拉致問題は重要だが、対話の前提条件にすべきではなく、対話の姿勢を強く打ち出すべきだ」と前提条件なしでの交渉再開を口にしました(公明新聞1999年9月28日付)。つまり、自分達が政権側につくような状況になった途端、立場をころっと変えたのです。これは外交問題を党利党略で扱っているとの批判を免れません。
 公明党=創価学会はこれまでにも日本共産党に対して事実捻じ曲げ、誹謗中中傷、実績横取りなど様々な謀略活動を繰り広げてきました。しかし、創価学会タブー(「鶴タブー」と言う)を持つマスコミはこのような創価学会の蛮行を批判しません。それどころか新聞社は紙面の印刷を創価学会系の印刷会社に委託しているというのですから話になりません。真実を知るには商業マスコミを切り捨て、「しんぶん赤旗」を読むのが最も近道です(おわり)。
 潤子さんはそう言って微笑む。俺は苦笑いするしかない。頭の中の様子が顔に出易いってことを忘れてた。でも実際、今日もバイトをしながら暇さえあれば「あの日」のことを考えていたりする。晶子やマスターにも尋ねられたが、来週からの実験のことで、とか言って誤魔化した。

「ちょっと来週からの実験のことを考えてて・・・。」
「それにしちゃ、複雑な感じがしてたけど。」
「複雑な感じ?」
「実験のことだけならそのことだけに集中している様子になるところなのに、さっきの祐司君はあれをどうしようとか、これはこうした方が良いかな、とか考えてるみたいだったわよ。」

 う、考えてる様子がそのまま表情に出てたか・・・。それにしても潤子さん、人の表情をよく観察してるな。別に悪さを企んでるわけじゃないんだが、晶子とのことはあまりマスターや潤子さんに知られたくない。二人だけが知っていることにしておきたいところだ。

「そういえば、この時期じゃなかったっけ。」
「何がですか?」
「祐司君が前の彼女にふられたのって。」
「・・・ええ。よく覚えてますね。」
「それまで皆勤賞だった祐司君がいきなり無断で休んだから、印象に残ってるのよ。理由を話してくれた時は凄く重い表情だったしね。」

 そう、バイトを始めてからずっと無遅刻無欠勤を通してきた俺が、宮城にふられたショックで飲みまくった自棄酒の煽りで無断で休んだんだ。それ以外で自分の事情でバイトを休んだのは熱を出して寝込んだ時だけだから、潤子さんの印象にも残っていても不思議じゃない。

「まだ、前の彼女からよりを戻そうとか言われて悩んでるとか?」
「いえ、みや・・・前の彼女とは夏に海に行った時に、二人合意の上で綺麗さっぱり清算しました。潤子さんが行くように助言してくれたじゃないですか。」
「あ、そうだったわね。じゃあ、何を悩んでるの?」
「それはちょっと・・・。」

雨上がりの午後 第969回

written by Moonstone

「そんな顔してました?」
「鏡見せてあげれば良かったかしらね。」

2002/10/26

[閑話休題]
 2日連続で固い話が続いたのでここらで一休み。昨日、ようやく倉木麻衣の3rdアルバム「FAIRY TALE」を手に入れました。発売日は勿論チェックしてましたが、予約が遅れたせいか週末になってしまいました。まあ、どのみちゆっくり聞けるのは週末ですから良いんですけどね。
 全12曲からなる今回のアルバムは、前作を上回る良い出来だと思います。これまでアルバムというとシングル発売の曲を掻き集めた文字どおり「アルバム」形式だったり、妙なアレンジを施すという、原曲をわざわざぶち壊しにして集めるようなものが多かったのですが、今回のアルバムは「ファンタジー」を基本にしたものが多く収録されていて(明らかに童話や御伽噺(おとぎばなし)をモチーフにした歌詞がある)、一貫性のあるものに仕上がっていると思います。私としては、特に「Can't forget your love」と「Like a star in the night」が収録されていたのが嬉しかったです。どちらも今まではっきり歌詞が聞き取れなかったので。
 でも、暫くはこの曲をBGMにして作品制作は出来ませんね。何故なら新しい曲や聞きたかった曲だらけなので歌詞の方に意識が行ってしまうからです(^^;)。こういうCDになら、お金を出すに十分な価値がありますね。連載でも晶子ちゃんに歌ってもらおうかな・・・。次回作も今から楽しみです(^^)。

「食事を作りにいきましょうか?」

 晶子が言ってくれたが俺は丁重に辞退した。レポートの纏めの時間は集中したいのもあるし−晶子は居ても邪魔するわけじゃないんだが、念のため−、何より俺のためにわざわざそこまでしてもらう必要はないと思ったからだ。晶子は俺の召使いじゃないんだから。ただでさえ月曜は厄介になってるって言うのに。
 で、実験が月曜日になって−始まりは2コマ目からというのはありがたいが−それが何時終わるか分からないからどうしよう、ということになったんだが、晶子には俺が4コマ目の終了時刻少し過ぎに連絡すると約束した。それで夕食を作って待っていてもらうか、一人で夕食を食べてもらうか−自分の夕食は学食で済ますしかない−決めてもらうというわけだ。それが一番適切だろう。
 実験は一応4コマ目までとはなっているが、テキストを見た限りではそれで終わる保証など何処にもないし、智一が仕入れた情報でも終了が夜になる実験もあるそうだ。まったく厄介なことになったもんだ。でも、そう言うことがあるのを承知で受験したんだから、今更文句を言っても始まらない。
 さて・・・、月が変わって「あの日」が目前に迫って来た。「あの日」とは勿論、俺と晶子が出会った日、10月11日だ。今年は第1回目の実験がある週の木曜日になる。もう本当に目の前だ。なのにそれを前にしても、まだ何をどうするか決められないでいたりする。
 プレゼントは誕生日とかクリスマスとかそういう時には良いがこういう日にはあまり似合わないような気がするし、かと言って俺にとって重大な転機のきっかけになった大切な日を疎かにしたくない。果たしてどうしたものか・・・。マスターや潤子さんに相談しようかとも思ったが止めた。誕生日は晶子に言われるまですっかり忘れてたという無様を晒してしまったから、今回は自分で考えた演出で貴重な思い出を作りたい。

「何難しい顔してるの?」

 不意に潤子さんが話しかけてきた。二人の記念日まであと1週間を切ったバイトの暇な時間、俺はカウンターで水を飲んで休憩していた。晶子は水の入ったポットを持って客席を回っている。マスターはステージでサックスを吹き鳴らしている。「TWILIGHT IN UPPER WEST」だ。「秋は夕暮れ」って確か枕草子にあったけど、黄昏時をタイトルに含んだこの曲は今の時期に良く似合うと思う。

雨上がりの午後 第968回

written by Moonstone

 そう言えば、専門教科の実験は月曜日に組み込まれることになった。で、当日に実験内容や手順を簡潔に纏めたレポートを提出して、同時に先週の実験のレポートを提出して承認を受けないといけない。更に実験も終わったらデータや結果を纏めて報告に行って承認をもらわないといけない。つまり、土日はこれまで以上に負荷が掛かることになったわけだ。

2002/10/25

[公明党の事実捻じ曲げ、隠蔽を許すな!(2)]
 (昨日の続きです)日本共産党が拉致を疑惑と称して後ろ向きな態度だった、という公明党の主張も事実の捻じ曲げです。そもそも拉致の「疑いがある段階」というのは政府と警察が捜査の到達点として公式に明らかにしてきた立場です。ことが国家間の、それも外交ルートがない国との問題であり、更に明確な証拠もなしに安易に疑惑を事実と断定することは出来ません。これは刑事事件の捜査の基本です。公明党はそのことを分かっていないのか。分かっていて言っているのなら尚更悪質です。
 それに「疑惑」という言葉が問題なら、公明新聞の記事や党幹部の発言、国会議員の質問でその言葉を繰り返してきた事実、例えば公明新聞の「日本人拉致疑惑で参考人質疑」(7月26日付)、「政治決断の必要性で一致 日本人拉致疑惑」(8月29日付)、3月に立ち上げたプロジェクトチームの名称「拉致疑惑事件調査等プロジェクト」はどう説明するのか。このような事例は多数存在します。それを覆い隠して「疑惑」という言葉を問題とするのは如何なものか。政党としての資質が問われる問題です。
 第一、共産、公明両党の拉致問題に対する方針や問題提起などの事実を見れば、どちらが「後ろ向き」だったかは明白です。日本共産党は1988年の参院予算委員会で橋本敦議員(当時)が、1978年夏に福井、新潟、鹿児島などの行方不明事件について政府の捜査状況を質(ただ)し、梶山静六国家公安委員長(当時)が「北朝鮮による拉致の疑いが濃厚」と、初めて政府として国会の場で拉致疑惑の存在を認めました。更に1999年1月の衆院本会議質問で不破委員長(当時)が北朝鮮との正式な外交ルートの確立を行うべき、と提案し、同年11月の不破委員長の本会議質問で、ミサイル(テポドン)問題や拉致疑惑などは外交ルートを通じた交渉で解決を図るべきだと提案しました。そして事態は同年12月の日本共産党を含む超党派訪朝団の派遣、政府間の国交正常化交渉再開、そして日朝首脳会談へと進みました。一方、公明党の態度は北朝鮮側の譲歩がない限り国交正常化交渉を再開すべきではない、という立場から始まりました(続く)。

参考記事:「しんぶん赤旗」2002年10月19日付

 試験も今週で終わる。それから間もなく後期の講義日程が発表されて講義が始まる。試験の結果が気になるのは勿論だが、あと少し。終わるまでは後ろを振り返らずに気合を入れて前へ向かおう。やった分の結果は出る筈だ。今俺が出来ることであり、すべきことは、学業とバイトと恋愛の三本柱をしっかり支えること。どれが歪んだり折れたりしてもいけない。
 俺はふぅ、と軽い溜息を吐いて空を見上げる。鮮やかに晴れ上がった空が広がっている。女心と秋の空、なんて言うけど、何時だって変わるときは変わるし変わらないものは変わらない。問題は自分がどういう方向に持っていきたいか、ということだ。俺はそう思う。
 今日は晶子と一緒に夜を過ごす。まだ土曜の夜の余韻が冷め遣らぬ中で一つ屋根の下で一つのベッドで寝ることを思うと身体が少々むずむずするが、俺が今見上げている空のように、爽やかで明るい関係を続けていきたい。あくまで晶子と抱き合う時は互いの心のベクトルが向かい合っている時だけ。それさえ忘れなければ、過ちを犯すことはないだろう。

「祐司。何を空見上げて浸ってるんだ?」
「ん?こういう空は良いなって思ってさ。」
「お前にアンニュイは似合わないって。」
「大きなお世話だ。」

 そんな会話を交わして俺と智一は笑う。笑いにも色々あるが、今の笑いは気持ち良い。恋敵でもあるが時に貴重な助言をくれる親友と共に歩く、こういう時間もなかなか良い。俺って不幸なのか幸運なのか・・・。まあ、少なくとも今は幸運な時期なんだろう。それが何時まで続くかっていう不安もあるが、そんなことを考えても仕方ない。続くかどうかを案じるより続けようとすることを大切にしていかないとな・・・。

 試験が終わって月が変わった。新しい講義日程と共に前期の試験結果も発表された。俺も智一も全てクリア出来た。智一は電気回路論Tと電磁気学Tがクリア出来たのを知った瞬間、その場で万歳三唱した。本人曰く「落ちるかと思ってた」ということだ。
 そして後期からのメインとも言える専門教科の実験のテキストとグループ分けの表が配布された。やっぱりと言うか案の定と言うか、俺と智一は同じグループになった。これを知った智一は万歳三唱した。そして俺の肩をポンと叩いて「よろしく」と一言言った。俺は「知らん」と一言言っておいたが、それが効力を発揮するとは正直思えない。
 晶子の方も全ての試験をクリアした。晶子は自分のことはそっちのけで、俺が全ての試験をクリア出来たことを聞いて喜んでくれた。最後の週末に自分が突然来訪したことで妙な影響を残さなかったかどうか、不安だったそうだ。あれは俺にとって至福の時だったから心配なんて必要ないのに。

雨上がりの午後 第967回

written by Moonstone

 智一は苦笑いする。でも、智一の言うことを聞いていると、そういう表現が的を得ていると思う。こんな執念深いひったくりに晶子を盗られるわけにはいかない。智一の言ったことで参考になる部分を頭に入れて行動していかないとな。

2002/10/24

[公明党の事実捻じ曲げ、隠蔽を許すな!(1)]
 先日国会で各党の代表質問が行われましたが、公明党の代表が、日本共産党が朝鮮労働党(北朝鮮の政権党)と親密な関係を続けていた、拉致を疑惑と称して後ろ向きな態度だった、と述べましたが、ここまで事実関係を捻じ曲げて他党を誹謗中傷する党もそうそうありません。流石は反共を至上命題とする創価学会の政治団体というだけのことはあります。
 確かに日本共産党は1960年代までは朝鮮労働党と通常の外交関係を持っていましたが、1960年代後半に北朝鮮が「南進」(韓国の革命を主導するという内政干渉政策)を提唱し、ソウルの青瓦台(大統領官邸がある)に武装集団を送り込んだりしたことや、1970年代から金日成個人崇拝を押し付けて来たことや、1980年代に発生したラングーン事件(ビルマのラングーンで爆弾テロが起こり、ビルマと韓国の高官数十名が死亡した事件)や大韓航空機爆破事件などの国家テロとも言える行為を行ったりしたことなどの北朝鮮の無法ぶりを厳しく批判し、逆に朝鮮労働党から「帝国主義者達に丸め込まれている」などと攻撃されたために関係は長く断絶しています。
 逆に公明党はというと、金日成個人崇拝を強めた1970年代以降に北朝鮮と親密な関係を持ち、1972年には党委員長を団長とした訪問団を派遣し、歓迎集会では「私たちは昨夜、この国を解放し、この国を本当に廃墟の中から革命思想によって立ち上がらせた、皆さまの敬愛する金日成首相にお目にかかり、対日友好にあふれた雰囲気の中で親しく懇談することができました」と述べたばかりか、公明党が最も嫌っているはずの社会主義、共産主義体制を標榜する(「資本論」やレーニンの著書などを読めば、北朝鮮や旧ソ連などの体制が社会主義や共産主義とは無縁なことは明らか)北朝鮮の体制を、「今回、共和国の各地を参観し、そこに働く人々が、主体思想をもとに、チョンリマ(千里馬)運動で前進する共和国の社会主義建設が大きな成果を収めていることに深い感銘をうけました」と称賛さえしています(発言は何れも公明党の機関紙「公明新聞」に掲載)。自分達のそうした事実を覆い隠し、事実を捻じ曲げて他党を攻撃する態度は厳しく批判されて当然です(続く)。

参考記事:「しんぶん赤旗」2002年10月19日付

「でも智一。俺はお前の気さくで陽気な性格に惚れ込む女が、探せばきっと見つかると思うぞ。少なくとも女を集められる能力は確実に俺より上なんだから、その分可能性も高い筈だし。」
「だからな、性格を見通したり見通されたりするまでに時間がかかるんだよ。それまで女のご機嫌とったりしなきゃならない。俺はそういうのがもう嫌になったんだよ。馬鹿馬鹿しくてさ。」

 智一の言うことは一理ある。相手の性格を把握するには相当の時間と接触の機会が必要だ。俺だって最初は晶子を異常に執念深い奴としか思わなかったし、所詮自分の兄貴に似てるから俺に近寄ってきたんだろ、と軽蔑さえしていた。それがそうじゃなくて、俺に懸命に好意のボールを投げかけてきてくれていることが分かるまでに随分時間がかかったし、晶子とすれ違いも−その時はそうは思わなかったが−起こした。
 もしかしたら、俺自身晶子の性格を全て分かっているつもりで、実はまだ一部しか分かっていないのかもしれない。分かった部分だけに触れて自分と波長が合うから付き合っているのかもしれない。俺と晶子でさえそうなんだから、そこへ行きつくまで女のご機嫌取りをしなきゃならないとなると、流石に耐えられなくなってきたんだろう。智一も変わったな・・・。

「はあ・・・。こうなったら、通学途中に食パン加えた女の子と出会い頭にぶつかる機会を待つしかないんかね。」
「何だそりゃ?」
「つまりは、お前みたいな極めて幸運な機会を待つしかないかな、って意味だよ。」

 妙な喩えでよく分からなかったが、解説されると智一の心境が良く分かる。智一も素の自分に心底惚れ込んでくれる相手が欲しいし、そのきっかけは余程の運がないと出くわす機会がないと思っているんだろう。でも、俺としては、女を寄せる武器をたっぷり保有している智一の方がそういう機会がある可能性が高いと思うんだが。

「ホント、お前ってつくづく運の良い奴だよな。あれだけ鬱陶しがってた相手に諦められないで、結局180度態度を変えたら見事にくっつけられたんだから。」
「俺もそう思う。」
「お前、そう言っておいて晶子ちゃんを泣かせるようなことしたら、それこそ承知しないぞ。遠慮なく割り込ませてもらうからな。」
「そうならないようにするつもり。」
「俺は何時でも隙を窺ってることを忘れるなよ。」
「大学や町に特定人物専門のひったくりが徘徊してるってことだな。」
「お、お前なぁ・・・。」

雨上がりの午後 第966回

written by Moonstone

 引っかかる部分がなくもないが、智一の思いはかなり切実なものがある。智一は本気で、本音で、素の自分と付き合える相手が欲しいんだ。だから、智一が言うところの「偏屈で斜めからものを見るような性格で、外見や財力や女を寄せる武器で圧倒的に自分より劣る」俺の素を見通して俺と付き合うようになった晶子が欲しいし、諦められないんだ。

2002/10/23

[今日はほぼ通常どおりです]
 流石に2日連続大幅遅れ、というのは気が引けますからね(^^;)。それでも何時もより更新が遅かったのは、昨日の更新分をご覧でない方のためです。まあ、「一週間の更新履歴」を見れば一発で分かることなんですが(そのために用意したんだし)、ま、ちょっと余計なお世話ということで。
 昨日も結構疲れたんですが、寝なきゃ駄目、というほどでもなかったです。一昨日は足に相当負担がかかって、物凄い重みと疲労を感じました。当然それは全身にも及ぶわけで・・・。昨日で進行予定に間に合わせることが出来ましたが、まだまだ油断なりません。むしろこれからが本番、と言うべき状況ですから。一時頭痛も感じましたし朝晩冷え込みますから、体調管理は万全にしたいところです。
 その体調のことなんですが、一昨日昨日と良好な状態です。以前ならこの時期は下降線を辿る一方だったんですが、薬の処方を変えてもらったのが効いてきたようです。私が飲む薬は効果を発揮するのに早くて数日、遅いと10日以上かかるものです。これもまだ油断ならないのですが、このままか一方へ向かって一直線、と行って欲しいものです。頭痛や腹痛を感じた時に市販の薬をおいそれと飲めないし、酒も原則禁止、なんてのはもう御免ですし。医療費もそれなりにかかりますからね。
 しかし、智一も相変わらずというか、未だに晶子に執着しているな。金は言うまでもなく、車も持ってるし、話しぶりからするに洒落たデートスポットなんかを知ってるだろうし、ルックスも客観的に見て結構良い方だと思うから、その気になれば直ぐに彼女が出来ると思うんだが・・・。何でそこまで晶子にこだわるんだろう?

「なあ、智一。」
「何だ?」
「前々から思ってたんだけどさ、何で今の今まで晶子にそこまで熱を上げてるんだ?お前なら合コンとかで簡単に彼女が出来ると思うけど。」

 俺が尋ねると、智一は何時になく真剣な表情で答える。

「晶子ちゃんは今まで俺が見てきた女とは違うんだよ。あんな良い娘、お前っていうこぶが付いただけで諦められないさ。」
「でも、お前、以前合コンで聖華女子大の娘とくっついたじゃないか。直ぐに性格の不一致とかで別れたって言ってたけど、その線とかで探してみれば、お前の人脈ならお前が気に入る娘が見つかるんじゃないか?」
「それがそんなに簡単に出来れば何の苦労も要らないだろ。聖華女子大の娘とは確かにコネがあるし、お前が以前言ったように、文学部とか法学部とかの娘を当たってみる手はあるさ。だけどな、晶子ちゃん以上の娘には出会えないんだよ。俺に寄って来る女なんて、大抵俺ん家の財力に目をつけたか、車持ちでセンスが良いとか、自分で言うのも何だけどな、洒落たデートスポットを知ってるとか人伝で聞いた奴ばっかりだ。そんなんで性格が合うもへったくれもありゃしないだろ?」
「そりゃそうだな・・・。」
「それにな、俺、思うんだ。お前は偏屈で斜めからものを見るような奴だけど、一方で真面目で誠実で、人が困ってるのを見て見過ごすようなことは出来ない奴だ。外見や財力や女を寄せる武器では圧倒的に俺に劣るけど、俺にはそういう突っ込んだところでの魅力がないんだ。だから上辺だけの付き合いで終わっちまう。俺はいい加減そういうのに飽きたんだ。だから晶子ちゃんを諦めないんだよ。」

雨上がりの午後 第965回

written by Moonstone

 そう言った智一は一瞬寂しそうな顔をする。晶子に何度も果敢にアタックを試みたものの、結果はその晶子を邪険に扱っていた俺に取られた格好になったことがやっぱり寂しいんだろうな・・・。俺もよく似た経験をしたから−自分が好きだった相手が別の男と付き合うようになったとか−その寂しさや辛さは分からなくもない。

2002/10/22

[今日は早朝更新となりました]
 理由から言うと、肉体的疲労が酷くてとても起きていられず、寝てしまったことです。まず21時ごろから23時頃まで薬なしでぐっすり。まだ疲れが取れなかったのでもう少し、と思って睡眠薬を飲んで1時頃まで。そしていっそ本格的に寝て、朝早く起きて(どうせ朝目が覚めるし)更新するか、ということでまた薬を飲んで6時杉に起きて現在に至る、といった具合です。
 何分突然のことで事前告知出来なかったことをお詫びします。ただ、私も人間であり、尚且つ人の何十倍も疲れ易い身体に鞭打って仕事したりしているわけでして・・・。今、厄介な仕事が追い込み時期に入っているので、立ち仕事や行ったり来たりが多くて肉体的疲労が直ぐに極限に達するんです。それに昨日は疲れていた上に腹痛が酷くて、夕食は果物だけでした。
 今後もこういうことが起こらないという保証はないので、何時もの時間帯に更新されなかったら別の時間にまたご来場下さい。原則毎日更新、ということは崩さずにいくつもりです。

「で、本題に戻るが、予定はどうなんだ?」
「まだ何も考えてない。今は試験のことで頭がいっぱいだから。」
「おいおい、そんなんで大丈夫なのか?」
「試験が終わったら考えるさ。まあ、お前みたいに豪華絢爛なディナーで盛大に祝う、なんてことは出来ないけど。」
「つくづく馬鹿だな、お前って奴は。晶子ちゃんが豪華絢爛な催しや演出を好むタイプじゃないってことは、付き合ってるお前なら十分分かってるだろ。俺ですら分かってるんだから。」
「・・・ああ。」
「お前が出来る範囲のことでやれば、晶子ちゃんは間違いなく喜んでくれるさ。極端な話、『今日は俺たちが出会った日だよな』の一言だけでも感激するかもしれないぞ。」

 そうだ。晶子は豪華なディナーも、高価な服やアクセサリーも、雑誌に紹介されるような演出も望んじゃいない。只二人でその日その時間を過ごせることに幸せを見出せる女なんだ。それはクリスマスの時にも、晶子の誕生日の時にも、もっと遡(さかのぼ)れば、俺が熱を出して寝込んだ時に看病してくれた礼に食事に誘った時もそうだった。俺が出来る範囲のことは高が知れている。でも晶子は誠意さえ篭っていれば心底喜んでくれる。そういう女だ。
 曲を書き下ろして聞いてもらうのも良いだろう。晶子はあまりアクセサリーを付けるタイプじゃないが、俺が買える範囲のペンダントや指輪なんかをプレゼントするのも良いだろう。看病の礼の時のように食事に誘うのも良いだろう。普段何かと晶子からアクションが起こすのを受身になっているような俺だ。俺の方からアクションを起こすだけでも、それこそ智一が言ったように言葉だけでも、晶子は本当に喜んでくれるだろう。だからこそ大切な日は大切にしたい。

「まあ、考えてみる。それにしても智一、お前って付き合い方とかそういう方面は色々詳しいな。実験とかはてんで駄目なくせに。」
「人間誰でも得手不得手はあるもんさ。ま、幾ら詳しくても相手の心を分かろうとしないと駄目だけどな・・・。」

雨上がりの午後 第964回

written by Moonstone

 実際、宮城と付き合ってた時、宮城からの告白一周年を俺がうっかり忘れてたもんだから宮城が怒ってしまって、宮城の友人達の演出でどうにか事態を収束出来たって経験もある。晶子の場合はそうならないと思うが、覚えているに越したことはない。まあ、あの日は忘れようにも忘れられないが。

2002/10/21

[野望は潰えたり]
 日曜日は何かをするというか、目的を持って何かをするということが非常に難しいです。夜それなりに眠れて起きれたにもかかわらず、食事以外はただぼーっと横になるだけ。何かしようという気はあってもそれが表に出てこないんです。で、結局昨日の野望は見事に水の泡、と。
 このお話をする前にも1時間ほど転寝してたんですが、それでも頭がはっきりしません。眠気はそれなりに取れているんですが、兎に角気力が出てきません。義務的にするといった感覚でつまらないことこの上ないです。思いどおりに出来ない自分が嫌に思えるだけです。この分だと来週の更新は壊滅的状況になりそう・・・。ま、更新は義務じゃないですからそれでも良いですよね。何か、日曜日には何もするな、って身体がストライキを起こしてるような・・・。
そうじゃなかったら、あの時点で俺は見限られて、新しいチャンスをみすみす逃していたに違いない。
 この性格、早めに何とかした方が良さそうだな・・・。でも、新しいチャンスが巡ってきたら気持ちをさっと切り替えて、っていうのにはどうも馴染めないんだよな。馴染もうとしないせいもあるだろうけど。

「ところで、予定は何か立ててあるのか?」
「予定って、何の?」
「何の、ってお前なぁ・・・。出会って一周年企画に決まってるだろ。」

 言われてみれば、予定と言われて該当するのはそれしかない。何をボケてるんだ、俺は。智一はいかにも呆れたと言わんばかりの表情で肩をすくめて首を横に振っている。そりゃ呆れるだろう。俺自身呆れてるんだから。

「まったく・・・何でこんなボケボケ男に惚れ込んじゃったんだろうなぁ、晶子ちゃん。美人だけど思考パターンはいまいち理解出来ん。」
「悪かったな。」
「悪いも何も、祐司。お前も女と付き合った経験があるっていうんだから幾らボケボケでも多少は分かってると思うが、年のために言っておいてやる。女って生き物はな、二人の記念日とかそういうのを大切にしたがるもんなんだ。そういうのをいい加減にしてると、相手の憤激を買うぞ。まあ、それで俺にチャンスが巡ってくるならそれでも構わないけどな。」

 忠告なんだか挑発なんだかよく分からない部分もあったが、智一の言うことは概ね正しい。女は付き合い始めた日とか互いの誕生日とか、そういうことを常日頃大切に抱えてるようだ。昨日、晶子も言ってたしな。

雨上がりの午後 第963回

written by Moonstone

 確かにそうだ。あの時の相手が晶子だったから、そして俺が兄さんに似ているという「好条件」があったにせよ、晶子がどれだけ邪険にされても、言葉は悪いが執念深く食らいついてくるタイプだったから、今の俺と晶子の関係があると言っても過言じゃない。

2002/10/20

[びっくりされた方も居るんかな?]
 日付間違ってないか?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。「魂の降る里」新作公開の谷間の週末にこれだけ更新したのは、私自身随分昔のことだと思います。Novels Group 1とNovels Group 3の更新は昨日するつもりだったんですがうっかり忘れてまして(爆)。で、今日に持ち越したわけです。
 それに併せて久しぶりに(恐らく2、3年ぶり)Side Story Group 1で「続・あるまどろみの風景」の新作を公開しましたが、これは昨日書き下ろした、出来たてほやほや(笑)の新作です。Side Story Group 1も最近の更新は「魂の降る里」ばかりで、たまに「マヤちゃん、ふぁいとぉ!PAC編」があるくらいだったので、ここらで叙情的作風のリハビリを兼ねて、と思って一気に書き上げました。予想外に短時間で書けたので(約2時間半かな?)ちょっと驚いています。
 しかし、この週でこれだけ更新しちゃうと次が大変だな(汗)。これからと(お話してるのは夕暮れ時です)今日の体調に全てがかかってますね。今回更新したグループは勿論、久しく更新が滞っているNovels Group 2とSide Story Group 2にも手を出したいところですが、果たして野望(?)どおりことが進むかどうか・・・。ま、頑張ってみます。それにしても旧PCのブラウザ表示、遅いなぁ・・・。やっぱり初代PentiumとCeleronじゃ違いすぎるか(P.S.野望は頓挫。寝過ごした(爆))。
「そりゃ当たり前だろ。お前と晶子ちゃんがきちんと顔合わせできるセッティングをしてやったんだから。それにしてもあの頃のお前、尋常じゃなかったよな。本当に心底嫌そうだって顔してたし。」

 そう、あの頃の俺は本当にまともな精神状態じゃなかった。何もかもがどす黒く見えた。女なんか二度と好きになるもんか、って心に頑なな壁を作った。晶子の話を聞くどころか、姿を見るのも声を聞くのも嫌だった。兎に角女という生き物から離れたかった。それだけしか考えてなかった。

「しかし、今だから聞けるけどさ、何であの時お前、あんなに荒れてたんだ?」
「・・・その時付き合ってた女に、ある夜電話一本でふられたからだよ。」
「はーあ、そうか・・・。成る程ね。」
「相手は俺の気持ちを試すつもりだったらしいけど、結局別の男と付き合ったんだから世話ないさ。ま、その相手とはきっちり清算したから良いけど。」
「お前って、純情一直線って言うか、これと決めたものにはとことんってところがあるから、そんなことがあったら自棄になっちまうのも無理はないわな。そうか・・・。晶子ちゃんが初めての相手じゃなかったのか。」

 最後の一言で少しドキッとしたが、智一はカウンセラーみたいなことを言うな。自分で言うのも変だけど、俺は智一の言うとおり、これと決めたものにはとことん突っ込むタイプだから、そのとことん突っ込んでた対象の宮城に呆気なく袖にされた反動で、もう女なんか、ってなっちまったんだろう。

「しかしな、祐司。そういう事情があったにしても、あの時のお前の態度は幾らなんでもぞんざい過ぎたぞ。せめて話をするくらいの余裕がないと。」
「今思うと、あの時は確かに酷い対応だった。聞く耳一切持つもんか、って思ってたからな。」
「2、3回顔を合わせただけの相手に自分の事情を洗いざらい説明しろとは言わないけどさ、自分の事情はひとまず置いておいて普通に、一人の人間として接するようにした方が良いぞ。お前、相手が晶子ちゃんだったから良かったんだぞ。」

雨上がりの午後 第962回

written by Moonstone

「そう言えばさ、祐司。お前と晶子ちゃんが出会ったのって、このくらいの時期じゃなかったか?」
「人のことなのによく覚えてるな・・・。」

2002/10/19

[あー、やれやれ]
 で、今日も昨日や一昨日と同じく、仕事行って帰って食事食べて寝て起きてこのお話してネットに繋いで・・・というパターンなので、書くことがないです(爆)。まあ、唯一違う点と言えば「あたしンち」をしっかり見たことくらいですね。金曜の夜、これを欠かすわけにはいきません。
 こんな力のない日記が続くと読む方も嫌になってくると思いますので、ちょっと書きますか。前にもここでお話しましたし、このコーナーの最上段の見解・主張のコーナーにも掲載しましたが、中央教育審議会が教育基本法見直しを「不可欠」とした中間骨子を纏めました。その中には前に書いたように「愛国心」や「公」の意識を盛り込むことが書かれています。
 これらに対する私の見解は見解・主張のコーナーをご覧いただくとして(重複しますので)、やっぱりというかマスコミは「これこれこういうことがあった」と書くのみで、問題点や背景に突っ込んだ記事を書きません。上からの「愛国心」や「公」の意識がどんな結果を招いたか、歴史を見れば明らかです。それも高々数十年前の出来事なのにも関わらず、です。政府与党や右翼に「共産党か」と睨まれるのが嫌なのでしょうが、そんなことだから長野県の県知事選挙における動向を事実を踏まえてきちんと報道せずに、争点ぼかしの片棒を担ぐことになるのです。今一番リストラという名の首切りが必要なのはマスコミ自身でしょう。この程度の記事しか書けない記者など要りません。
 俺は心臓が口から飛び出すかと思うくらい驚く。一昨日の夜に晶子と寝て、昨日は時々ベッドに横になってその余韻に浸りながら試験勉強してたのが−端から見れば変態だろう−バレたのかと思った。勿論そんなこと智一に言う筈がないが。

「晶子だって試験があるんだぞ。妙な言い方するなよ。」
「どうだか。実は週末デートでもしてたんじゃないのか?その勢いで夜も一緒に、とか。」

 ・・・こいつ、私立探偵でも雇って俺を監視させてるんじゃないだろうな?ここらで切り返さないと、思わず事実を溢してしまって、それをきっかけに全部吐き出さされかねない。そうなったら智一は錯乱した上に、学科中に尾鰭をつけてばら蒔くに違いない。

「試験期間中にそんな悠長なことやってられるかよ。只でさえここは進級が厳しいんだから。俺は留年なんて絶対許されないんだから尚更だ。」
「留年なんて俺だって真っ平御免さ。でも、この分だと後期に盛り返さないときついかもなぁー。」
「後期から専門教科の実験が入ってくるんだぞ。言っとくけど、グループが分かれたら前期の物理や化学の実験みたいにフォロー出来ないから
そのつもりでな。人の実験にまで構ってられないからな。」
「そんな冷たいこと言うなって。お前の苗字は安藤。俺は伊東。この間に人は居ない。そして情報では実験のグループ分けは4人単位。頭から数えれば、
俺とお前はほぼ間違いなく同じグループになる。というわけで、よろしく頼む。」

 智一はそう言って俺の肩にポンと手を置く。こいつ・・・。何だかんだ言って人の尻馬に乗るのが上手いからな。グループが別になったらなったで、その中の手際の良い奴に擦り寄るだろうし、俺と同じグループになったらなったで「実験は俺には向いてない」とか何とか言って都合の良い部分だけ持っていきやがるだろうな・・・。まあ、智一のあまりの手際の悪さに見るに見かねてフォローする俺も俺だけどな。
 俺と智一は並んで正門へ向かう。晶子は二コマ目に試験があると言っていたから、先に帰るように言っておいてある。言わなきゃ待ってるだろうし、そうなったらまた智一が割り込んでくるのが分かりきっている。それに加えて「今日は夜も一緒だろ?」と一言添えておいた。勿論試験勉強は欠かせないが、食事やリラックス空間が提供されるのはありがたいし、一人で勉強するのがちと寂しく思う。これも一昨日の余韻のせいだろうか。

雨上がりの午後 第961回

written by Moonstone

「お前が仕入れた情報どおりに、講義や教科書の演習問題を解けるようにしておきゃ良かったんじゃないのかよ。それに彼女が出来ないのを俺のせいみたいに言うなよな。」
「ふん。美人の彼女が居る奴は良いよな。いざとなったら彼女に慰めてもらえるんだから。」

2002/10/18

[変化のない一日(悪い意味で)]
 昨日も相変わらず睡眠が滅茶苦茶で苦労しましたが、今日を乗り切れば休めますから辛抱、辛抱。大体、睡眠が滅茶苦茶なのは今に始まったことじゃないですからね。これを一時は酒で誤魔化してたんだから、まあ怖い(汗)。
 今日は特にお話することないですね。仕事から帰ったら食事食べて寝て起きてこのお話してネットに繋いで・・・という、一昨日とまったく同じパターンですし。この生活パターンを脱しないと作品制作のペースを上げることなんて不可能ですな。でも、強力な薬でもどうにもならないんだから、手の施しようがありませんわ。わはは(笑)。

「ヤマ張ってたのか?」
「おおよ。過去問題持ってる奴にコピーさせてもらって、それを完璧に解けるようにしておいたんだけどさぁ。半分ぐらい意表を突かれちまったよ。あんなところから問題出すか?普通。」
「講義や教科書の演習問題から出題されるって言ったのは、他ならぬお前じゃないか。今までの傾向がそのまま続くとは限らないだろ?」
「そりゃそうだけどさぁー。試験の時くらい楽したいってのが人情ってもんだろ?だから過去問題解けりゃ完璧ってことにしてほしいよなぁー。その点、お前、随分余裕じゃないか。」
「俺はひととおり出来るようにしておいたからな。お前から聞いたとおりに。まあ、完璧とは言えないけど8割くらいはいけたと思う。」
「それだけ出来りゃ上等じゃないか。くっそー。何でルックスも懐具合もハートも申し分ない俺が試験ごときで苦しめられなきゃならないんだよー。」
「・・・智一。それって俺に対するあてつけか?」
「よく分かったな。」
「おい。」
「ったく、お前には薬指に指輪嵌め合うほどの相手が居るっていうのに、試験は出来ないわ、彼女は出来ないわ、何でこんなに世の中不公平なんだよ・・・。」

 何だか腹立つな・・・。試験が出来なかったのは、自分が仕入れた情報どおりに講義や教科書の演習問題から出題されるってことで、ひととおりこなせるようにしておかなかったことが原因なんじゃないのか?それに彼女が出来ないことまで俺のせいみたいに言われたら、こっちこそたまったもんじゃない。

雨上がりの午後 第960回

written by Moonstone

 智一が悔しそうな表情で頭を掻きながらぼやく。電気回路論Tの時も同じようなことを言っていたが、ヤマが外れたんだろうか?あの試験でヤマを張るのは危険だと思うんだが。そもそも試験問題が出る範囲を俺に教えたのは智一なんだがな・・・。試しに聞いてみるか。

2002/10/17

[もう勘弁してよ・・・(泣)]
 夜2時に寝れば、普通の人なら6時か7時頃まで寝ろと言われればもっと寝たい、とか思うでしょう?それは私も同じです。でもそれさえ満足に寝られないとしたら、それが1日だけじゃなくて平日毎日だったらどうしますか?今の私の状況がそれです。
 昨日は散々でした。夜の1時半頃に寝て4時に目が覚め、また寝て、6時にまた目が覚めて今度は寝つけず、起きている羽目になりました。で、それで解消出来なかった眠気が出勤後から狙ったように出てきて意識朦朧。そんな中で仕事しました。
 何とか帰宅して食事を済ませて少しした後、眠気を感じて横になったら、また2時間間隔で寝たり目覚めたりの繰り返し。このお話はテレホタイム直前にいそいそとキーを叩いてしています。せめて2時ごろに寝たらせめて7時までは一度も目覚めずに眠れるようになりたい・・・。自律神経のバランスが崩れて、それと分かるまで1年近くかかったが故に重症化してなかなか治らず、日常生活に支障を来している人間の苦悩でした(溜息)。
 俺がそう言うと、晶子は俺との距離を詰めて、頭を俺の肩に乗せるように寄せる。その表情は安堵と嬉しさが混じったものに変わっている。

「私のために帰らないっていうことですか?」
「そう思ってもらって良いよ。」
「親御さんに悪いですけど・・・嬉しいです。」

 俺と晶子は顔を見合わせて微笑む。食事や洗濯が苦もなく済ませられる、肉親との暮らしが懐かしくないと言えば嘘になる。でも、今は今の生活の方が楽しいし、少なくとも食事の点では恵まれている。それにやっぱり晶子と離れたくない。一時的にも距離が出来ることで、晶子に対する疑念を抱くのが怖い。晶子が浮気するのが怖いんじゃない。晶子を信じる心に拭い辛い染みが出来るのが怖いんだ。
 少し賑わいを帯び始めた通りを晶子と並んで歩く。晶子を家まで送り届けたら、半日ほど晶子とは別行動だ。でも、あの店に、バイト先に行けば晶子と会える。それを楽しみにして試験勉強に励むとするか。見上げた残暑の空は蒼く高い。雲一つないその空に輝く光の球は、まだ何も終わっていないことを強調しているように思う・・・。

 翌日の三コマ目が終わった。一コマ目の電気回路論Tに続く電磁気学Tの試験がチャイムの音で終了を告げる。溜息とも苦悶ともつかない声が上がる中、それぞれが解答用紙を教壇の上に持っていき、教室を出て行く。俺も溜息を吐いて緊張を解しつつ解答用紙を提出して外へ出る。その横には晶子じゃなくて智一が居る。

「くっそー、ありゃ難しすぎだ。ギリギリセーフかどうかってとこだな。」

雨上がりの午後 第959回

written by Moonstone

「今の方が生活は大変だけど気楽で良い。それに・・・。」
「それに?」
「俺が実家に帰ったら、その間晶子と会えなくなるだろ?」

2002/10/16

[他所のこと言えるの?]
 昨日、北朝鮮から拉致被害者の生存者の方々が一時帰国されました。で、それより前に小泉首相は北朝鮮を「拉致して殺してしまう」と非難しました。でも私ははっきり言って日本には、特に自民党など先の戦争を美化するような勢力には北朝鮮の体制を非難出来る資格はないと思います。否、資格はありません。その盟主たる小泉首相も同じです。
 或る人物を神格化して絶対不可侵のものとし、それや体制に対する批判や勢力を徹底的に弾圧して監獄送りや処刑も辞さない・・・。これはまさしく戦前戦中の日本そのものじゃないですか。天皇を憲法で「神聖にして侵すべからず」な現人神(あらひとがみ)として神格化し、その元で動く軍国日本に反対した日本共産党や反戦活動家、労働組合、自由主義者などを治安維持法などで徹底的に弾圧し、「蟹工船」で有名な作家、小林多喜二(知られていませんが彼は日本共産党員です)など、苛烈な拷問で獄死した人や非国民呼ばわりされて日陰の生活を余儀なくされた人々は数知れません。それを支えたのは右翼軍国主義者共ですが、彼らはそれに懲りることなくいけしゃあしゃあと生き延び、今度はアメリカの尻馬に乗る形で軍国日本を再現しようとしているではありませんか。「君が代」の「君」は天皇を指す、という答弁が出たではありませんか。そんな勢力が北朝鮮の体制を非難するなどそれこそ目くそ鼻くそ、どんぐりの背比べです。
 アメリカはイラクのフセイン政権を「危険な独裁者」などと言っていますが、自分がそれまで軍事支援しておきながらある日いきなり敵扱いして、国連憲章にも国際法にも違反する先制攻撃を国家安全保障の基本に据えたり、実際に侵略準備までしているというのですから、どちらが「危険な独裁者」でしょうか。日本の右翼軍国主義勢力にせよアメリカにせよ、今一度自分の胸に手を当てて考えてもらわねばなりません。
 食べ終えて少し休んだところで俺が切り出すと、晶子はすんなり了承する。俺と晶子は席を立って、俺は伝票を持ってレジへ向かう。モーニングセット二人分1000円。昨日の思いがけない豪華な昼食や誕生日プレゼントの数々を考えれば、ただにも等しい金額だ。俺は千円札を差し出して会計を済ませ、晶子の手を取って店を出る。
 外は徐々に暑さを増して来た。今日はまたエアコンの世話にならなきゃいけない様相だ。もう9月も終わりに近いんだから、いい加減涼しくなっても良さそうなもんだが・・・。まあ、試験が済んで結果が出るまで気分的に前期の区切りはつかないから、このままでも良いのかもしれない。

「祐司さん。」

 晶子が話し掛けて来る。

「試験勉強、頑張りましょうね。」
「ああ。留年なんてみっともない様晒したくないしな。」
「私の学部は進級の関門がないですけど、いい加減なことはしたくないですから。」
「首席卒業を狙ってるとか?」
「そんなことはないですけど、出来る時に出来るだけのことはやっておきたいですから。色々なことに手を出せるのは学生時代だけだ、ってよく言われましたから。」
「そうだよな。仕事するようになったらそのことで精一杯になって、それ以外のことはどうしても後回しになっちまうらしいからな。ほら、俺の実家は自営業だろ?そのために父さんと母さんが二人して調理師の免許取ったんだけど、父さんは仕事の後や週末に、母さんは殆ど毎日、近くの料理屋へ行ってたんだ。実務経験が必要らしいから。だから免許取るまでそれこそ休む間もなく、って感じで、俺と弟は放ったらかしだったよ。」
「それって、何時頃の話ですか?」
「弟が小学校卒業した年だから・・・俺が中学2年の時か。だからそれ程手はかからなかったと思う。弟とはしょっちゅう喧嘩してたけど、最後の方は取っ組み合いじゃなくて口利かないタイプになった。お互い止めてくれる存在が居なくなったから、取っ組み合いの喧嘩するのが面倒になったのかもな。」
「・・・帰りたいって、思いませんか?」

 晶子が少し不安げな表情で尋ねる。俺は晶子の手を取る手に軽く力を込めて答える。

雨上がりの午後 第958回

written by Moonstone

「出ようか。」
「ええ。」

2002/10/15

[これも時代の流れですかね・・・]
 リンク集Access Streetsの利便性向上に向けた改装へ向けて準備中なのですが、メインPCの戦線離脱で思わぬ停滞を余儀なくされました。旧PCはWin98SEなのですが旧PCは何と(と言うほどでもない?)Win95。これにIE6.0をインストールしようとしたら「Win98や2000とかじゃないと駄目だよ〜」と拒否されてしまいました。
 ページ表示には基準ブラウザとしたNetscape4.7とIE6.0を同時に使用して、その違いを比較する必要があるのですが、Netscapeだけだと果たしてこれが正常に表示されているのかどうかが分からないんですよ。ページにブラウザ情報が書いてあれば話は別なんですが、それが書いてない場合が結構多かったりするんですよね・・・。「IE推奨」とあってもNetscapeでもさほど大きな問題はない場合(ちょっと表示が崩れたりする程度)があるかと思えば、まるででたらめな表示になったりする場合があるので、両方で確かめてみないことには何とも・・・。
 仮にメインPCの修理が完了したとして、戻って来るのは10月下旬、場合によっては11月にずれ込む見通し。正直言って30以上のページの両方表示確認を職場の昼休みでする気はありません。貴重な体力回復時間ですからね。よって、Access Streetsの改装は大幅に遅れそうです。その分分かりやすくて便利なものにしようと思っていますので、ネットサーファーの方は楽しみにお待ち下さい。
「祐司さんと私の立場が逆だったとしたら、きっと祐司さんはそのことを覚えてると思いますよ。」
「そうかもな・・・。」

 俺と晶子は顔を見合わせて互いに笑みを浮かべる。過去に傷を負いつつそれを心の奥底に秘めながら生きている俺と晶子は、思いを共有出来る部分が多いのかもしれない。それが楽しいことだったり悲しいことだったりと色々あるのは当然だが、傷でもあり宝石でもある過去の記憶を重ね合わせることが出来ることは、落ち着きを取り戻した心には良いんじゃないだろうか?
 二人揃ってモーニングセットを注文して、俺と晶子は今日のことを話し合う。晶子も試験勉強がある身だから、此処で朝食を食べた後、俺が家まで送り届けてまたバイトで、という方向で一致した。まさか昼食を作っていってくれ、なんて言えない。言ったら晶子のことだ、本当にそうしかねない。
 程なく注文のモーニングセットはやって来た。店は混み合っているといっても、案内される時に軽く見渡したら既に注文の品がテーブルに置かれている席が殆どだったから、それ程時間はかからなかったようだ。バタートーストにカップのポタージュスープ、小さなサラダ、そして飲み物−二人揃ってアイスティーにした−という内容。これも宮城と付き合っていた時と変わらない。
 試験のことや新しいレパートリーのことなんかを話しながら朝食を食べていると、何だか昨夜のことが夢だったように思える。表面上その証拠は残ってないから−キスマークはついてない筈だ−尚更だ。だけど、宮城との時と同じく、この店のこの席でこの朝食を食べていると、やはり昨夜のことは夢じゃなかったんだと思い直せる。昼過ぎまで寝ていてコンビニの弁当で朝食と昼食を兼ねる普段の週末とは決定的に違う。
 俺と晶子が食事を進めていくうちに、店内の騒々しさは消失していった。騒々しさの元凶の主婦連中が出ていったからだろう。俺と晶子を見て、前みたいにああだこうだ言っていたのかもしれない。だが、内容が聞こえないまま喧騒は過ぎ去ったし、その内容を詮索したところで何の意味もない。俺は晶子との時間を過ごしているんだから、そのことだけ考えていれば良い。

雨上がりの午後 第957回

written by Moonstone

「よく覚えてたな・・・。」
「女は記念日とか思い出の場所とか、そういうことはよく覚えてるんですよ。」
「俺と晶子のことは別として、宮城のことまで覚えてるなんてな・・・。去年の暮れに教えたことだし、宮城に関わることだからてっきり忘れてるものかと思ったんだけど。」

2002/10/14

[うう、不覚・・・(T-T)]
 一昨日がメインPCの修理のための搬送や買出しその他で結構忙しくてあまり作品制作に時間を費やせなかったので(それに徹夜明けで断続的に寝たし)、今日こそ作品制作に没頭するぞ、と思っていたのですが、昨日はほぼ一日ダウンしてました。今回は持病のせいではなく、鼻風邪をひいてしまって作品制作どころではなかったからです(爆)。うー、やっぱり今時期湯冷めすると危険ですな・・・。
 一昨日久しぶりにメインPCでネットに繋いで、ページ巡回や更新準備といった作業をしたのですが、やっぱりやりにくいです。ページを表示するのは遅いし、更新準備で使うワードパッドは複数のウィンドウを開けないし、と今まで当たり前のように使っていたWeb作業環境の良さを思い知りました。モデムは56kですから読み込み速度とかは変わらないんですけどね。
 今日は連休の最終日。家事はほぼ片付けたので今日こそ作品制作に没頭したいです。そのためにも体調維持の対策は(鼻風邪は昨日薬を飲んで寝てたら治りました)万全にしておかないとね(^^)。バックアップしたCD-Rに眠っている新作やその元は明日職場で取り出せば良いことですし(出来るかどうか不安ですが)、最近更新していないグループを中心に作品制作に励もうと思います。
店は混んでいるんだろうか?宮城と一緒に来た時は混んでいる時が多くて、朝っぱらから喫茶店に来るなんて暇人が多いのね、と宮城がぼやいていたもんだ。それじゃ俺達は何なんだ、と言いかけた時もあったが勿論口にはしなかった。
 店のドアを開けると、いらっしゃいませ、という声がしてウェイトレスが駆け寄って来る。何名様ですか、の問いに二人、と答えると、ウェイトレスがこちらへどうぞ、と言って先導する。店内は新聞を読んでいる社会人風の男性や、これまた賑やかを越えて騒々しい主婦連中−自分の家のことはどうしたんだ?−などでかなり混み合っている。俺は晶子の肩を抱いたまま−不思議と恥ずかしいとか思わない−ウェイトレスに席を案内される。案内された席は・・・

宮城と付き合っていた時に必ず座っていた席だった。

 俺が晶子から手を離して向かい合って座り、ウェイトレスがお絞りと水の入ったコップを置いて立ち去った後、俺はお絞りで手を拭きながら思い浮かんで来るあの頃に心が揺り動かされる。まさか過去に付き合っていた相手が座っていた席に今付き合っている相手が座ることになるなんて・・・。晶子の横に宮城の顔が浮かび上がってきて仕方がない。

「この席って、優子さんと一緒に来ていた時に優子さんが座っていた席ですよね?」

 晶子が俺を見ながら問い掛ける。その大きな瞳に吸い寄せられるかのように、俺の視線は晶子から逸れることがない。

雨上がりの午後 第956回

written by Moonstone

 駅前に近付いてきたが人通りは少なくて、閑静な住宅街そのものといった感じだ。このまま直進すれば駅へ辿り着くというところで路地裏に入り、少し歩くと目的の『Alegre』が見えて来る。「営業中」の看板が見える。日曜にこの店に来るのは本当に久しぶりだな。

2002/10/13

[避難も大変です]
 昨日メインPCを修理に出してきました。ところが直るまでに2週間は見ておいてくれと言われた上に幾らくらいかかるか分からないので一旦見積もりを出してもらうことになったので、当面の間旧PCの世話になりそうです。
 その旧PCにWebシステムを移行するのがもの凄く大変でした。バックアップを取るのは差ほど手間はかからなかったのですが(データだけだからそれほど容量はない)、CD-RをCD-ROMで読めないことが発覚して直接のデータ受け渡しは不可能と分かり、残っていたFTP設定(現在のドメインを取得した後にPCの機能を移転した)を利用して、サーバーからダウンロードするという原始的且つ最終手段に。メインPCから今後の更新に必要なデータがもうないかどうか確認しつつ旧PCにダウンロードの指示をするという手間と時間で、とうとう寝る時間を逸してしまいました(汗)。このお話をする時点で2回各1時間半くらい仮眠をしたくらいです。
 どうにかWebシステムもほぼ移行完了して(時間が足りなかった(泣))、店に修理に持っていった後で気付いたのですが、バックアップしたCD-Rの中に今後アップする新作やその元が眠っていることが発覚(爆)。今日職場に出かけてその部分だけ取ってこようと思います。取れるかどうか分かりませんけど(汗)。こういう時、必ず何か一つは忘れ物をするんですよね、私(^^;)。
「・・・はい。」
「それじゃ、行こうか。」

 俺は机の上に置いてあった鍵と財布をズボンのポケットに仕舞い込んで、晶子の肩を抱いたまま家を出る。薄暗かった屋内から一転して残暑を感じさせる強い日差しに、俺は一瞬目を閉じる。でも、それも一瞬のこと。直ぐに明るさに慣れた俺はドアの鍵を閉めて歩き始める。晶子の肩を抱いたまま・・・。
 休日のせいか行き交う車が少ない通りに沿って駅の方向へ歩いていくと、ふと宮城と付き合っていた時のことを思い出す。月に1度くらいのペースで宮城が俺の家に泊り、一つのベッドで朝を迎えて、朝食を食べにこの通りを歩いて『Alegre』へ向かったっけ・・・。あの時もあまり、否、殆ど会話はなかったな。不思議と双方喋らなかった。あれは宮城の時だけかと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

「・・・祐司さん。」

 そう思っていたら、晶子が口を開く。俺は思考と思い出が混濁した海に漂わせていた意識を晶子の方に切替える。

「どうした?」
「祐司さんが外で私の肩を抱いたままなんて珍しいな、って思って。」
「そう言えばそうだな・・・。ま、たまには良いだろ?」
「私は何時でも良いですよ。祐司さんにその気があれば。」

 晶子はそう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる。俺がなかなか人前で仲睦まじいところを見せられないことを分かってて言ってるな・・・。俺は苦笑いして、よりしっかりと晶子の肩を抱いて誤魔化すしかない。晶子の表情が穏やかそのものの様子からして、嫌じゃないんだろう。むしろ晶子は、俺にもっと積極的に自分達の仲をアピール出来るようになって欲しい、と思っているんだろう。誕生日プレゼントのペアリングを嵌める時にも今の位置に嵌めてくれって聞かなかったくらいだし。

雨上がりの午後 第955回

written by Moonstone

「人間なんて万年発情期の生き物だし、その上俺は男だから、変な言い方だけど昨日のことに味を占めて晶子を求めるかもしれない。でも晶子にその気がなかったら拒否すれば良い。否、そうして欲しい。そうじゃないと・・・それこそ俺が恐れていたようなことになりかねないからさ・・・。」

2002/10/12

[一大決心!]
 キーレスポンズが悪くて作業がままならないメインPCですが、今日修理に出すことにしました。このまま放置しても自然回復する筈もなく(したら凄い)、いちいち旧PCを起動してワードパッドを起動して・・・というのが面倒で敵わないからです。元々面倒くさがりですからね(^^;)。問題は修理に出して直って来るかどうかなんですが、こればっかりはやってみないことには・・・。旧PCへのデータの移行はCD-Rに焼いてするつもりですが(CD-RWでは出来ないんですよね)、これが出来なかったらどうしよう(このお話をしている時点ではまだ確認していません)。
 さて、広報紙Moonlight PAC Editionを御覧の方はご存知かと思いますが、リンク集Access Streetsの改装を行うことにしまして、現在リンク先の情報収集を行っています。84もあると流石に面倒です。っジャンルや管理者名は勿論、必要なブラウザのバージョン(最近これが顕著に見られることが多いので)、その他特記事項(JavaScrpitを使ってるか、とか)までNetscapeとIEの両方でそのページを開いて表示を確認してますから。今で半分ほど収集出来たかな、というところです。
 今日は御覧のとおりコンテンツの更新があるので作業開始が遅れる上に時間もかかるでしょうが、この3連休を使って何とか今月末くらいには新装オープンしたいと思っています。でも今は頭が痛いですから(多分昼寝した時何も被らなかったのがまずかった)、作業は控え目にするかもしれません。出来るだけ早いPC(メインPC。旧PCとの差は歴然)が使えるうちに作業を進めておきたいんですけどね・・・。
まあ、普段男一人の部屋を覗こうなんて奴は居ないか。考えられるとすれば、晶子が此処に入ったのを見て壁に耳を当てていた隣人か−顔もろくに知らないからそういう人物である可能性も否定出来ない−、覗き趣味の変質者だろう。後者の場合は注意が必要だな。
 俺がベッドから降りて立ち上がったところで、晶子が俺に身体を寄せて来る。その表情は何処か不安げで、肩を抱かずにはいられない心境になる。俺は晶子を支えるようにその肩を抱いて様子を窺う。晶子は上目遣いで俺を見て言う。

「これで・・・終わりじゃないですよね?」
「そんな筈ないだろ?昨日晶子自身が言ったのに。」
「そうですよね。」
「これからが不安になったのか?」
「少し・・・。」
「これで終わりになるような脆い絆じゃない筈だ、って自分で言ったくせに・・・。」

 俺は晶子の頬に手を添える。晶子は愛しげに眼を閉じてその手に頬擦りをする。晶子の夜を挟んだ矛盾に腹立たしさは感じない。いざ自分を差し出したまでは良かったものの、その時の、言わば頭のブレーカーが吹っ飛んだ状態での行動が今思うと不安に思えるのも無理からぬ話だ。俺が身体を求めるだけの関係に陥りそうで一線を超えるのを恐れていたように、晶子も恐れていたとしても不思議じゃない。

「まだ1年にもなってないんだぞ?俺と晶子は。まだまだ、これからさ。」

 晶子は無言で頷く。

「昨日は特別な日だったんだ。また抱き合うことがあるなら・・・それは二人の心のベクトルが向き合っている時。それで良いんじゃないか?」
「・・・ええ。」

雨上がりの午後 第954回

written by Moonstone

 短いやり取りの後、晶子はファスナーを閉める。これで此処へ来た時の状態に戻った。これなら万が一覗かれても心配は要らない。

2002/10/11

[まだ分からないのかなぁ・・・]
 此処連日株価がどんどん下がっていますが、正直な話、これは小泉首相が内閣総辞職するか、今の「構造改革」とやら、特に「不良債権処理の加速」を辞めない限り止まらないと思ってます。これは株式市場が不良債権処理の加速によって不況が益々深刻化するのでは、と懸念しているからであって、補正予算を作っても(どうせ中身は公共事業だし)止められるものではありません。
 何故、不良債権処理の加速が不況を招くのか。こんなことは経済を少し齧っていれば容易に分かることです。不良債権処理の加速ということは、言い換えれば金融機関が貸出先の査定を厳しくして、その査定に引っ掛かった企業(主、といううか当然中小企業。大企業の数は高が知れている)から資金を回収する(これを「引き剥がし」と言う)ことです。その結果、資金繰りが出来なくなった企業は倒産、従業員は失業。当然、関連先もダメージを受けるでしょう。そういったことでものが売れなくなる、つまりは不況が進む、企業は賃金を下げるし、労働者の懐具合は益々寂しくなるから支出も増えない、となれば、企業は新たな設備投資や製品製造をしなくなるから当然売れ行きがダウンする、そして業績が悪化して金融機関の「引き剥がし」の対象になる・・・この繰り返し(デフレ・スパイラル)だからです。
 ところが何が何でも不良債権処理しかない、と思い込んでいる小泉内閣はこれを止めようとしませんし、銀行の広告料収入や財界関係の情報が得られなくなるのが怖い商業マスコミはこのことを書きません。否、もしかしたら分からないのかもしれません。新聞をネットで見ていると、情報の垂れ流ししかしていないことが容易に分かりますから。こんなことなら中学生の壁新聞の方がまだましというものです。こんな低レベルな商業マスコミ、特に月何千円も取る新聞などとっとと購読を止め、不良債権処理の中止を早くから提唱している「しんぶん赤旗」に切替えましょう。

「外へ食べに行こう。俺の家には食材なんてないし。」
「コンビニへ買い出しですか?」
「否、晶子が良ければ・・・『Alegre』へ行こうか、と。」
「私はそれで構いません。けどお金は・・・。」
「一食くらい俺が奢るよ。」
「それじゃ、お言葉に甘えますね。」
「決まりだな。じゃあ、行く準備でもするか。」
「ええ。」

 晶子は身体を起こしてベッドに腰を下ろした態勢になって髪をさっとかき上げる。その滑らかで豊満な丸みを帯びた身体が、カーテンを通して差し込む朝日に輝いて神々しささえ感じさせる。夜に唇と指を這わせたそれが太古の女神の像を思わせて、少しもいやらしさや肉体的欲望を感じさせない。
 俺が見惚れていることに気付かないらしい晶子は、足をベッドに降ろしてベッドの下を見て屈んでごそごそし始める。服を着始めるんだろう。窓がカーテンで閉ざされていることを確認して、俺も上体を起こす。服を着るのは晶子がある程度服を着てからでも良い。慌てる必要なんてないんだから。
 晶子が下着を着けてブラウスに袖を通し始めたところで、俺はベッドの端に移動する。改めてみると、ベッドの下には俺の服と下着と晶子のスカートが散乱している。昨日互いに服を脱がし合ってポイポイ放り出したからな・・・。まあ、ああいう状況で服をきちんと畳んで、なんて野暮なことは言いっこなしだ。俺は下着から順に服を着ていく。
 ブラウスのボタンを嵌めたらしい晶子は、今日初めて立ち上がる。スカートをはくためだろう。腰を覆う白い下着が目に眩しく映るのは気のせいだろうか?俺はシャツを着てズボンを取って座ったままではく。足を通したところで腰を浮かせて整えれば完了だ。こういう時、男は着替えが楽で良い。俺が服を着るのを済ませた時には、晶子はスカートにブラウスを仕舞い込んでファスナーを締めようとしているところだった。俺はベッドに座って晶子が気負えるのを待つ。

「早いですね。」
「こういうもんだよ。」

雨上がりの午後 第953回

written by Moonstone

 何だ、そのことか・・・。心配して損した。・・・ちょっと残念な気もするが。

2002/10/10

[風邪は治ったけれど・・・]
 薬を飲んで、大事を取って早く寝たのが良かったのか、風邪の方はすっかり良くなりました(^^)。念のため昨日の夜も薬を飲んでおきましたし、用事が済んだら直ぐ寝るつもりです。油断してるとまたやられますからね。私は決して身体が丈夫とは言えない方ですし(現に病気背負い込んでる)。
 自分の身体の方はまあ良しとして、問題なのはメインPC。キーレスポンズが凄く悪くてとても文章を作成出来る状況ではありません。勿論、このお話や連載も旧PCで書いてます。こっちはこっちで何度設定しても日時が無茶苦茶になるという問題があるんですが、キーレスポンズがきちんとあるだけずっとましです。で、修理に出そうかと思っているんですが、HDDには数々のデータやファイルが詰まっていて、前に観測したら既に容量の半分を食っていたり(汗)。バックアップを取るにもそんな時間的余裕は週末しかありませんし、その週末には作品制作がある・・・というジレンマに陥っています。
 メインPCと旧PCでは擬似サーバーの設定やファイル数や内容で大きな違いがある上に、旧PCでは普段使っているテキストエディタが使えない(セーブしようとすると必ず強制終了する)ので、メインPCの設定を旧PCに移行出来ても、ページ運営に支障を来たすのは間違いないでしょう(今までウィンドウを複数開いていたのをいちいちワードパッドを起動してファイルの種類と場所を指定しないといけない)。となると、一旦シャットダウンするか・・・。難しいところです。
「一つになる」のは、せめて俺が20歳になるまで、とは確かに言ったが、本当にそうなるとは思わなかった。晶子は俺がそう言った時から自分を誕生日プレゼントにするつもりだったのかもしれない。

「ん・・・あ、朝・・・?」

 くぐもった声を上げた晶子が目を開けて何度か瞬かせる。起きたままの状態で少し間を置いて俺の方を見る。晶子は俺を見上げるような姿勢のままで本格的な第一声を放つ。

「・・・おはようございます。」
「おはよう。よく寝てたな。」
「今、何時ですか?」
「さっき見た時は8時過ぎだった。だからまだ9時前だと思う。」
「私が起こすって言っておきながら、私の方が後になりましたね・・・。御免なさい。」
「良いさ。結果的に午前中に起きれたんだから。」

 晶子は小さい欠伸をして目を閉じ、枕にしている俺の肩口に猫が擦り寄るように頭を動かす。そして再び目を開けて俺に問い掛ける。

「もう一つのプレゼントは・・・どうでした?」
「・・・最高だった。」
「良かった・・・。」

 晶子は嬉しそうに微笑んで頭を起こして、俺の上に圧し掛かって来る。あの感触が胸を通してくっきりした輪郭を帯びて伝わってくる。まさか・・・もう一回、なんてこと言い出さないだろうな?相手は出来るが、明日試験だから体力は温存したいんだけど・・・。

「朝御飯、どうします?」

雨上がりの午後 第952回

written by Moonstone

 それにしても・・・。晶子が自分をプレゼントの一つにするとはな・・・。漫画や小説ならありそうな話だが、自分自身がそれをもらう−と言って良いのか?−立場になるとは思わなかった。

2002/10/9

[風邪ひいちゃった(汗)]
 一昨日の夜辺りから肌寒くなったにも関わらず、半袖1枚で過ごしていたのが悪かったんでしょうか。昨日は朝からくしゃみと鼻水が止まらず、お話している今は熱っぽかったりもします。一応薬は(勿論、専用に処方してもらったもの)飲んだんですが、これで収まってくれるかどうか・・・。
 お話している今は通勤の時着ているブレザーを羽織っています。ちょっと羽織るものが見つからなかったもので(^^;)。9月中旬まで「秋は来ないのか?」と思うほど暑い日が続いたのですが、秋分の日を過ぎたあたりからやはり季節は変わってきているのですね。職場の敷地ではキンモクセイが芳香を発していますし、「彼岸を過ぎると一雨毎に寒くなっていく」というのは本当のようです。
 問題なのは今明らかに風邪をひきかけていること。以前は兆候の段階で対策を取ったので防げたんですが、今回は症状が表れてからの対処療法になってしまったので、本格的に風邪をひいてしまわないかどうか心配です。何せ私は一度風邪をこじらせて肺炎になった身。また肺炎になり易いので、その原因になる風邪には注意していたつもりだったんですが・・・。悪化しませんように。
私が起こす、なんて言っておきながら結局先に目を覚ましたのは俺か。まあ、そこまで眠らせる原因は俺にもあるわけだから文句を言う資格はないし、晶子を起こしてそうするつもりもない。若干残る気だるさが心地良く感じられる。  晶子を起こさないように注意深く右手で目覚し時計を探り出して見る。時計の針は8時を過ぎたところだ。余韻を味わうようなキスをしてから眠ったのが何時かは知らないが、週末は普段昼過ぎまで寝ている俺としては奇跡的に早い時間に目を覚ましたわけか。俺は探り出した時と同じように注意深く目覚し時計を元に戻して、これからの行動を考える。
 俺と晶子は共に明日以降も試験を控えている身。俺に限定すれば、厄介な教科の試験がある。晶子も試験勉強をしなきゃならないだろうから、晶子を起こしてコンビニへおにぎりとかサンドイッチを買いに行き、朝食を済ませて晶子を送り届けて試験勉強を始めるのが一番模範的ではある。だが、晶子の寝顔を見ていると、どうしても起こすのが憚られる。こんなに気持ち良さそうに寝てるからな・・・。
 この様子だと、このまま晶子が自然に目を覚ますのを待つのが一番適切なようだな。まだ8時過ぎだし、そんなに急がなくても良いだろう。二度寝してしまうかもしれないが、それならそれで良い。明日の朝眠くなるのを覚悟の上で、晶子が目を覚ましてからコンビニに行くなり、『Alegre』にブランチと洒落込むのも一つの手だ。昨日晶子手製のおにぎりとサンドイッチを食べたから、コンビニのそれらは舌が拒絶するかもしれないし。

「ん・・・。」

 晶子が小さい寝言を立てて、より俺に密着して来る。よく見れば−よく見なくても−俺と晶子は裸のままなんだよな・・・。肌の感触や弾力や温もりがダイレクトに伝わって来る。本当に心地良い。夜、それらを指と唇で存分に堪能したことが脳裏に蘇って来て、また口元が緩む。他人から見れば、きっと気味悪い笑みに違いない。

雨上がりの午後 第951回

written by Moonstone

 自然と口元が緩むのを感じつつ、俺はふと左隣、否、左脇を見る。晶子が俺の肩口を枕にして、胸に手を置く形ですーすーと規則的で安らかな寝息を立てている。

2002/10/8

[今こそ戦う労働組合を!]
 昨日は職場でミニプレゼンテーションと言いましょうか、自分の仕事の進捗状況や新規購入の機械などを紹介したりする時間がありまして、私は先週に引き続いてそれをしました。前後編で約1時間にも及んだこの大作(?)は、過労死、過労自殺とメンタルヘルスの重要性、そしてそれらの背景にある雇用問題と労働組合の重要性についてものです。
 これを作るのに資料を書籍やネットから掻き集めたのですが、今まで労働組合というものに無縁だった、或いは無関心だった私達自身が、これから自分達の生活と命(冗談ではない)を守るために必要とせざるを得ない、考えざるをえないということを訴えましたが、戸惑っているような印象でした。
 まあ、いきなりですから無理もないでしょう。でも、これからはそうも言っていられません。小泉悪政が彼方此方に歪みを起こしていて、実際私達の生活にも影響を及ぼしているだけに、労働者が自分の生活と命を守るために団結し、戦う労働組合が今必要なのです。誰かが動かなければ何も始まらないでしょう。ことが始まってからでは手遅れです。私一人でも来年桜が咲く頃に赤旗を掲げるつもりです。
 俺は笑みを浮かべて晶子の頬を軽く突つく。晶子はきゃっ、と小さい悲鳴を上げて身を縮こまらせる。弾力のある頬を何度か軽く突つくと、晶子は猫が嫌がるように顔を動かす。

「この、この。悪戯猫め。」
「やん、やだ、何するんですかぁ。」
「人の誕生日を見事に演出しやがって。どうやっても忘れられない日になっちまったじゃないか。」
「それは祐司さんが自分の誕生日を忘れてたのも大きな要因ですよ。」
「どうせ俺が覚えてても仕掛ける手筈は考えてあったんだろ?」
「それは・・・まあ・・・。」
「やっぱり悪戯猫だ。お仕置きしてやる。」
「お、お仕置きって・・・きゃっ?!」

 俺は素早く晶子を下にして覆い被さり、唇を唇でふさぐ。それから少しして、俺の首が両側から強く抱きかかえられる。俺はそれに呼応する形で晶子をしっかり抱き締める。シングルベッドの上で、俺と晶子は時々上下を入れ替えつつ唇を離さずに舌を絡ませる。何度も立てた音の筈なのに今日に限ってやけに艶かしい響きを含んだ音が、不規則に浮かんでは消えていく・・・。

 闇の淵から俺自身が浮き上がって来る。それと共に目の前の風景が徐々に白んで来る。・・・見えたのはベージュ一色の見慣れた天井。カーテンからは恐らく外は晴なんだろう、明るい光が部屋に広がっている。それに呼び起こされるように、昨夜の出来事が頭に浮かび上がって来る。特に・・・今俺が横になっているベッドの上での出来事が・・・。

雨上がりの午後 第950回

written by Moonstone

 晶子はそう言って苦笑いする。何時もみたいな確証は持てないらしい。晶子もそれ相応に疲れている筈だから、まあ、無理もないか。それに昨日だって起きたのは昼過ぎだったし、そんなに神経質にならなくても良いような気がする。・・・今だからそう思えるだけかもしれないが。

2002/10/7

[つまらない週末]
 週末は完全にダウンする傾向が出て来たということは、やはり10日前後へ向けて確実に体調が悪化の一途を辿っているということでしょう。昨日はネットに繋ぐ30分前にこのお話をするまでPCの前に座ることすら出来ず、食事以外はずっと横になっていました。起き上がる気力はまったくありませんでした。食事も手軽にさっさと済ませました。
 土曜日深夜、2回目の更新をかけられたのは良かったんですが、肝心の昼間に何も出来なきゃ話になりません。今週1週間耐えられるのか今から不安です。お話している今、外は雨です。天気予報では明日も夕方か夜まで雨ということなので余計に憂鬱です(職場や病院まで歩かないといけない)。金曜部朝に転倒して負った傷は今でもまだ痛みますし、踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。自分の運の無さがつくづく嫌になります。
 真っ暗になっても起き上がれずに横になっていて、暗くなった天井を眺めていたら、このまま闇に溶けて消えてしまえればどんなに楽だろう、とか思ってました。誰にも気付かれることなく、跡を残さず消えてしまう。今はそういうことへの憧れめいたものが強いです。
「今日って・・・大丈夫だったのか?」
「心配要りませんよ。」
「それなら良いんだけど・・・。ほら、前に潤子さんとマスターに言われただろ?今更遅いけど、それを思い出したんだ。」
「自分の身体のことは自分が一番よく分かってますよ。女は特に。」

 そうだろうな。付き合う前、無視を通していた俺から名前なんかを聞き出したり俺の受ける講義を探したり、挙句の果てにはバイト先まで身をねじ込ませて俺との接触の時間を増やして俺の心を入れ替えさせた策士の晶子が、俺みたいに自分の大切な日を−これからはあまり大切に思えなくなるような気がしないでもないが−すっかり忘れることなんてないだろう。
 それにしても、流石に疲れた。全身がけだるい。あれだけ激しく自分の全てを出し切るようなことをしたんだから当たり前といえばそうだが、明日は起きれるだろうか?月曜は一コマ目に試験があるから、昼過ぎに起きて深夜まで、ってことは出来れば避けたいんだが。

「明日、って言ってももう今日だけど・・・起きれるかな?」
「午前中にですか?」
「ああ。一応月曜の一コマ目に厄介な試験を控えてる身だからな。」
「私が起こしますよ。」
「大丈夫なのか?」
「多分・・・。」

雨上がりの午後 第949回

written by Moonstone

「・・・こんな時にムードぶち壊すようなこと言うけどさ・・・。」
「何ですか?」

2002/10/6

[遅くなりました]
 昼過ぎまでは体調良かったんですよ。ところが布団を取り込んで横になって休憩してたら何時の間にか寝てしまって(汗)、気付いた時には発生しました、酷い無気力状態が。お陰で夕食を食べるのがやっとでずっと横になってました。ネットに繋ぐことすらも面倒に思えて、何時もより30分遅れで繋いでページ巡回を知ながらこのお話をしています。
 昼過ぎまでに一つのコンテンツの更新準備が出来ました。それに併せてもう一つ更新しておきたいところがあるので、今日は更新が2回かかると思います。更新内容を見てがっかりされても困るんですが、トップページ(http://www.msstudio.org/)からお越しの方はその更新コンテンツを見ることが出来ます。普段芸術創造センターへ直接御来場の皆様も一度覗いて見て下さい。
 で、金曜日に負った傷の具合なのですが、両膝は今でも痛みます。相当強打したようです。布団に膝を付くのですら痛みますからね。あー、それより問題は今でも収まらない無気力状態ですな。今日は更新を止めようかと思ったくらいです。いや、ホントに。それだけ酷いんですよ。身体も心もね。
でも、俺には俺の心理状況があったから待っても待ってもその時は来なかった。だがら、晶子は俺が言うなれば自分で自分の足を引っ張っている状態を「打開」するきっかけとして、俺にとって特別な日である俺の誕生日を選び、服を乱すことで自分の意思を表現したんだろう。

「・・・嫌じゃなかったですか?」

 晶子が不意に尋ねてくる。

「何が?」
「私が痛がらなかったこと・・・。」
「男と寝る時、女は初めてじゃなきゃ駄目、ってことはないだろ?」
「・・・こだわらないんですね。」
「晶子も俺の前に結婚したいって思うくらい好きだった相手が居たんだろ?だったら・・・その相手と寝ててもおかしくないさ。俺もそうなんだから。」

 晶子が俺に擦り寄って来る。否、より密着してきたという方が正しいか。その口元には笑みが浮かんでいる。俺が言ったことがそんなに嬉しいことだったんだろうか?俺は持論を言ったまでなんだが。
 俺は晶子と付き合う前に宮城と付き合っていて、きれいな言い方をすれば「一つになった」し、それはその場その時限りじゃなかった。寝た回数で云々言うつもりはさらさらないが、晶子もそれなりに前の相手と、言い方は悪いがそれなりに「一つになった」数を持っていても何も不思議じゃない。それは俺の手が及ぶはずもない過去のことだ。そこで貞操がどうとか言っても意味がない。大切なのは・・・今なんだから。

・・・そう言えば・・・

雨上がりの午後 第948回

written by Moonstone

 晶子も俺の全てが欲しかったと言った。つまりは一緒に寝る時、俺が狼に変貌しないというある種の確証に基づく安心感と同時に、俺が狼に変貌する時を待っていたのかもしれない。

2002/10/5

[朝っぱらから事故に遭遇]
 で、今は病院から更新、というわけではありませんのでご安心を。昨日の朝、出勤すべく自転車に跨って路地に出ようとしたのですが、その途中にある駐車場の車が、アパートの敷地の石垣から30cmあるかないかぐらいのギリギリのところに停めてありまして・・・。「もうちょっと場所考えて駐車しろよ(怒)」と思いながら注意深く間をすり抜けた・・・までは良かったんですが、石垣に引っ掛かったのか何かでバランスを崩して、路地に出たところで自転車ごと派手に転倒しちゃったんです(汗)。
 で、その拍子に両手両膝を強打してしまい、両手からは出血、両膝は酷く痛む、というわけで酷い目に遭ったんですが、家に戻って治療する時間的余裕も心理的余裕もなくて、身体と自転車を起こしてよろめきながら出勤しました。今お話している時間でも両膝を床に付けることが出来ません。内出血がかなり酷くて触れただけでも痛みます。まったく、駐車する時は周辺の状況を確かめてもらいたいものです。今度あの車にでかい傷でもつけてやろうか、と思っています(怒)。
 ふと俺は気になって、枕元の目覚し時計を手探りで探して見詰める。蛍のような仄かな緑色に輝く時計の針は既に1時を回っている。俺の誕生日は晶子との激しく熱い睦み合いの間に過ぎてしまったわけだ。時計の上では。寝るまではその日という見方もあるから、別に構わないか。俺は時計を手探りで適当なところに置く。

「・・・なあ、晶子・・・。」
「・・・はい?」
「晶子自身も・・・誕生日プレゼントの一つか?」
「半分は・・・。」
「半分?」
「もう半分は・・・祐司さんの全てが欲しいっていう気持ちがあったからです・・・。」
「・・・そうか・・・。」

 正直に言えば、俺も晶子の全てが欲しかった。あの夏の夜に手と唇以外で初めて直に触れた、晶子の肌の滑らかさと柔らかさ、そして俺の「攻め」に悩ましく喘ぐ声や仕草を忘れたことはない。あれ以来何度か、あの夜のことを思い出してその欲求を「処理」していたことも事実だ。
 だけど、その欲求を実行に変化させられなかった。夜、晶子を俺の家に連れ込む口実は、晶子には悪い物言いだが大して悩む必要はない。恐らく、俺の家に泊まっていかないか、と一言言えば、いとも簡単に晶子を家に連れ込めたと思う。何せ何時狼に変貌するかもしれない男の俺を、自分の家に食事付きで寝泊りさせているんだから。
 欲求を実行に移す機会は、それこそ毎週1回必ずあったといっても過言じゃない。それでも俺がその機会を見て見ぬ振りをしてきたのは、やはり一線を超えることで、それだけの関係になってしまうのが怖かったからだ。晶子が俺を自分の家に寝泊りさせてきたのも、見方を変えれば、俺が一線を超えることに恐怖を感じているから狼に変貌することはないと踏んでいたから出来たことだと思う。

雨上がりの午後 第947回

written by Moonstone

 微かな明かりが染み込む闇の世界に、二つの小さな荒い呼吸音が入り乱れて不規則なリズムを形成する。俺は右腕を額に置いて天井を眺める。左肩口には晶子が頭を乗せている。俺に抱きつくように腕を俺の胸に回している。俺の左手は自分の方に抱き寄せるように晶子の頭に置いている。

2002/10/4

[横になったら・・・]
 寝てしまいました(爆)。昨日は体調こそまずまずだったものの眠気が酷くて注意力や集中力が最悪の水準に落ち込んでしまい、何とか仕事の方向性を決めるのが精一杯でした。でも多分、何処かに穴があるでしょうからまた考え直しでしょうな。一体何時になったら仕事の方向性が定まるのやら。まだ眠気が酷いです。
 それに加えてキーボードのレスポンズが無茶苦茶悪いので、このお話をするのも一苦労。本格的な主張は明日に持ち越すことにして、今日はAccess Streetsにリンク1件加えて終わりにします。Access Streetsは今月中を目処に改装するつもりです。以上。
舌が動き、絡み合う音がより勢いを増し、艶かしさを増す。この音を聞いているだけで全身が熱くなってくる。頬にかかる晶子の鼻息も強さと速さを増してくる。多分俺も同じだろう。
 息を切らしながら唇を離す。息を切らしながら目を開けると、晶子も目を開けて早い呼吸を繰り返している。その動きが胸に伝わる柔らかさの加減として感じられる。唇を離したとは言え、俺と晶子の顔の距離は鼻先が触れるか触れないかというくらいだ。俺と晶子はまた見詰め合う。互いの意思を確認するかのように。否、暗黙のうちにそうしているんだと思う。
 そして・・・互いに服を脱がし合う。微かな光の中で一つ、また一つと服がベッドの下に落ちていく。程なく完全に裸になった俺と晶子は再び抱き合い、互いに唇を押し付け合う。そして舌を絡ませる。艶かしい音が静かな室内に幾つも幾つも浮かんでは消える。

そして・・・。

晶子が俺の下で喘ぐ。首が左右に前後に揺れる。
晶子が俺の上で動いて身を沈める。動く度に髪が揺らめく。
俺は晶子の全身に指を触れさせ、唇を這わせる。
俺は絶頂に達する度に、晶子の中に想いの丈を解き放つ。
その度に俺は身を強張らせ、晶子は大きく身体を震わせる。

・・・。

雨上がりの午後 第946回

written by Moonstone

 愛しい。その気持ちだけで晶子と舌を絡ませる。俺の頭に何かが絡み付く。晶子の両腕だろう。俺は晶子の背中に両腕を差し込んで抱き締める。それで俺と晶子はより密着する。

2002/10/3

[こういうこともあるもので・・・]
 昨日は奇跡的に体調が良かったので(完全ではありませんが)一気に一つ仕事を片付けました。半期に一回のこととはいえ非常に手間がかかる仕事で、一昨日は酷い体調不良で殆ど出来なかったのですが、それを一気に挽回しました(残業しましたが)。「ニュース速報」の有事法制関連記事の改訂版を出せたのもそのお陰です。早急な対応が必要なことだったので良かったです。
 その仕事の最中、上司から改善案を持ち出されました。簡単に言えば、データベースを作っておいて利用者が何時何を使ったかという使用記録と共にそのデータベースと照合して金額を計算して記録しておいて、集計の際にその記録をLAN(職場内などのネットワーク)を介して取り出すというものです。私自身、半期に一回のこの仕事の手間が甚大なことを考えると、使用記録をネットワークで結んで一括管理し、集計出来れば楽だろうなぁ、と思っていたので、かなり興味を持ちました。
 問題はデータベースを作る手間(数百の個別データを作成する必要がある)と、ネットワーク化に対応するための研修に私の体調が耐えられるかという点です。体調の良い時期に研修の日程が組まれれば良いんですが・・・。上司は「参考までに」と言っていたので、少し体調の様子を見て結論を出そうと思います。
晶子の両腕が俺の背中に回ったのを感じる。俺は晶子を抱きしめながら、自分に何度も問い掛ける。本当に良いのか?このまま進んでも良いのか?何度も何度も、しつこいくらい・・・。
 そう思案しつつ、俺は晶子の首筋に唇を触れさせる。晶子の首が俺を受け入れるように自然に傾き、んん、というくぐもった小さな声がする。俺の背中に回っている晶子の両手に力が篭る。俺が首筋に唇を這わせていくと、次第に耳に届く呼吸音が早く浅いものになってくる。ふと鼻に意識を移すと、甘酸っぱい香りが染み込んでくるのが分かる。
 俺は晶子の首筋から離れ、改めて晶子と向かい合う。その黒く大きな潤んだ瞳には俺しか映っていない。その瞳を見るうちに、揺れ動いていた俺の心のベクトルが方向と強さを定めていく。俺は晶子を一旦離す。どうして、と言いたげな表情の晶子に俺は小声で言う。

「部屋は・・・暗い方が良いだろ?」

 それだけ言うと、俺は立ち上がって壁にある部屋の電灯のスイッチをOFFにする。明るく照らされていた室内が一気に深い藍色一色の世界へと変わる。それまでの明るく楽しげな雰囲気が一気に妖しく神秘的なものに変わる。これでより心のベクトルの強さと方向が固まったような気がする。
 俺はその場に座ったままの晶子の下に歩み寄り、晶子を抱きかかえる。一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐにそれは目を閉じて俺に寄り添う時のそれになる。俺は晶子をベッドに寝かせてその上に乗りかかる。髪を布団の上に広げた晶子はゆっくり目を開けて俺を見詰める。俺は晶子を見詰める。ただ互いを見詰め合うだけの時間が過ぎていく。閉じたカーテンを通して滲む微かな光が俺と晶子を仄かに照らす。
 どのくらい時間が経っただろう。俺は目を閉じながら晶子に顔を近づける。晶子もそれに合わせるかのように目を閉じていく。そして俺と晶子の唇が重なる。何度目かはもう覚えていない、挨拶にも似た行為。そして二人ほぼ同時に口を開いて舌を絡ませる。舌が動き、絡む度に出る音がやけに艶かしい。暗く静かな部屋にその音が何度も飛散する。

雨上がりの午後 第945回

written by Moonstone

 俺は晶子の言葉で、それこそ自分を固く拘束していた鎖が外れたかのようにゆっくりと身体を晶子の方に向ける。そして晶子をぎゅっと抱きしめる。

2002/10/2

[袂(たもと)分かれて思うこと]
 1時間近く続いたしゃっくりがようやく止まったので、このお話をしています。兎に角昨日は体調が無茶苦茶で、座っているだけでも大変な苦痛を感じるものでした。仕事なんて予定どおり進むかどうか以前の問題。帰宅しても食事を作って食べたら即ダウン。そんな訳でメールのお返事が遅れます。メールを下さった方、すみません。
 昨日の22:00から、このページと歴史を共にして来たと言っても過言ではない(丁度3年半ですし)「やまだひさしのラジアンリミテッド」(以下ラジアン)が深夜枠に移動し、新番組が始まりました。ラジアンは時々ムカッとすることもありましたが、リスナーとの距離を縮めようとする姿勢は良かったです。私の地域では26時、つまり深夜2時からなので、遅くとも深夜2時には寝ないといけない(寝ないよりはまし、という程度ですが)私は聞けません。つまり、9/30が私にとっては最後の放送となりました。新番組は音楽番組のようですが、暫く聞かないことには何とも言えません。
 このページもラジアンのようにご来場者との距離を縮めようと色々試みては来たのですが、悉く失敗して、何とか上手くいっていると言えるのは掲示板JewelBoxくらいですね。でも、今の私ではメールや書き込みが大量に舞い込んでも対応に時間が掛かるので、早く病気を治したいです。
 俺の問いに対する晶子の答えはない。その代わりに俺の首に細くて白い両腕が回り、背中に独特の柔らかさを感じる。背後から抱きつかれた格好だ。自転車を二人の利するときと同じように。でも邪魔な・・・もとい、服一枚がない分、よりリアルにその感触が背中に伝わってくる。

「どうして・・・?」
「?」
「どうして私を拒むんですか?そんなに・・・怖いんですか?」

 ・・・そう、俺は怖い。欲求はあるが恐怖というより不安に近い怖さがそれを凌駕している。晶子は以前俺が言ったこと、即ち、性的関係を持つなら1年経ってからか、せめて俺が20歳になるまで、ということを「忠実に」そして「最も早い時期」に実行にう移すつもりなんだろう。俺への誕生日プレゼントの一つという形を取って。
 だが・・・仮に俺と晶子が一線を超えたら・・・俺と晶子の関係はこれからも続いていくのか?続けられるのか?ただ晶子の家に行く度に、機会があれば晶子をベッドに放り出して服を脱がして自分も脱いで、という関係になってしまうんじゃないか?それは絶対嫌だ。セックスが関係を強める効果はあっても続ける効果はもたないことを、俺は宮城との苦い経験から知った。俺がセックスにある種ロマンチックなものを求めていても、女の方はそうとは限らないんだ。

「祐司さんが恐れる理由は分かるつもりです。でも・・・恐れてばかりじゃ・・・先に進めないんじゃないですか?」
「・・・。」
「私は、祐司さんに愛されたい。もっと近づきたい。それだけです。これっきりで終わりだなんて思ってませんし、思いたくありません。そんなことになるような脆い絆じゃない筈です。」
「・・・。」
「心のベクトルが向き合ってるなら・・・良いんじゃないですか?もう解き放ちましょうよ・・・。20歳になった今日を契機に・・・。過去の束縛から・・・。」

雨上がりの午後 第944回

written by Moonstone

「い、一体何だ?!どうした?!」

2002/10/1

[マスコミが書かない官民癒着]
 「民で出来ることは民で」とよく言いますが、こういうのは癒着と言います。原子力安全・保安院が原発推進関連メーカーの技術者を中途採用、所謂「天上がり」させていたことが判明しました。その「天上がり」技術者は各原発に常駐する原子力保安検査官などに配置されていますが、原子力保安検査官約100名の半数が「天上がり」技術者で占められていたというのです。保安院の佐々木宜彦院長は9/20の第2回評価委員会でこの事実を認めています。
 原子力安全・保安院検査課は「保安検査官が電力会社の自主点検に立ち会う法的な規定はない」「原発を巡回している最中に、自主点検が実施されていれば、立ち会うこともあるが、損傷隠しが発覚した原発の自主点検に、立ち会ったことはない」と言いますが、これはおかしな話です。保安検査官はその名のとおり、原発の安全を保安、検査する官職名のですから、損傷隠しが発覚した原発の自主点検に立ち会ったことはない、ということはあり得ません。全てとは言えないとしても、損傷隠しが発覚した原発の自主点検に何度かは立ち会っている筈です。
 原発推進関連メーカー側としては、自社の製品に損傷が生じたことが発覚して、それが明るみに出ることで原発の安全性と共に自社の製品そのものの信頼性が損なわれるのは困るでしょう。そこで保安検査官に自社や関連会社の技術者が居れば、譬え損傷隠しの点検に立ち合っても見逃させることが出来ます。関連メーカーは幾つか有りますが、あるメーカーAの保安検査官がメーカーBの原発損傷を発表したら、メーカーBから「天上がり」している保安検査官がメーカーA製の原発損傷を探させて発表させるでしょうから、メーカー同士も暗黙の了解で他社製の原発の損傷を見逃していたと考えられます。
 原発一基には億単位の金が動きます。メーカーにとっては旨味たっぷりの「公共事業」なのです。だからその旨味を逃さないためにも保安院と結託して自社の社員を送り込んでいたのです。原発推進関連メーカーは自民党などに多額の政治献金をしていることも踏まえると、一つ間違えれば大事故に発展するところだった一連の事件にも、ムネオ問題同様官民の癒着があったということです。やはり原発の検査、規制機関は第三者が形成するべきです。
参考記事:「しんぶん赤旗」2002年9月27日付

俺が晶子の誕生日にプレゼントしたペアリングも、それを納める箱を含めるとそれなりの大きさになるからポケットに入れると膨らんでしまう筈だが、そんなものは持っていないと思う。・・・何だろう?

「その前に後片付けしますね。」

 晶子はそう言って立ち上がり、皿を重ねてコップと包丁を乗せて台所へ向かう。そしてスポンジに洗剤をつけて洗い物を始める。昼食が詰まっていた重箱も含めて洗い物をする様子は、店のキッチンで時々見かけるそれと変わりない。違う点といえば、髪を束ねているかそうでないかくらいだ。俺は頬杖をついてその様子を見詰める。その様子が台所に溶け込んでいるようにさえ思える。
 泡を振り払った晶子の右手が蛇口に伸びる。水がやや控えめに流れ始め、晶子は泡がついた食器を水洗いして水気を切って洗い桶に入れていく。その手際の良さも洗う様子も本当に台所の風景に溶け込んで見える。自分の家で洗い物をする女・・・。宮城が来た時は決まって外食だっただけに、乙女チックとも言える−乙女じゃないが表現上仕方ない−俺の理想像にぴったりと当てはまる。
 洗い物が終わると、晶子は手を流水に少し浸してから蛇口を閉め、冷蔵庫に備え付けのタオルで手を拭う。そして俺の向かい側に座る・・・かと思ったら、俺の左隣に腰を下ろす。・・・何だかドキドキしてきた。晶子がすぐ隣に座るなんて、晶子の家じゃ当たり前とも言えることなのに・・・。同じことでも場所が違えば気分が違ってくるのか?
 まあ、晶子が俺の家に来るなんてまだ数えるくらいしかないし、こんな夜遅く一緒に居るなんて、俺が熱出して寝込んだとき以来だろう。あの時と違うのは今が疲労感こそあるものの一応健康体ということくらいだ。でも、晶子はどうして俺の隣に座ったんだろう?これが誕生日プレゼントと関係あるんだろうか?

「・・・晶子。」
「はい?」
「その・・・何だ、どうして俺の向かい側じゃなくて隣に座ったんだ?」

 婉曲を伴う必要などないと思った俺は、ドキドキしながらも率直に尋ねる。すると晶子は正面を向いて、つまり俺から視線を逸らして・・・ブラウスのボタンを外し始めた?!上から一つ、また一つとゆっくりと・・・。思いもよらなかった晶子の行動に、俺は視線と全身が一瞬にして硬直してしまう。
 三つか四つほどボタンを外したところで晶子の手が自分の両肩に伸びる。そしてブラウスをずるっと下にずらす。当然首筋や肩のあたりは勿論、下着の紐が丸見えだ。それどころか下着本体までちらちらと・・・。どうしたんだ?何のつもりだ?すると、晶子は着崩したまま俺の肩に両手を置き、その拍子に俺が晶子の方を向く。その目は何時になく潤んでいて、俺に全体重を預けてくる。俺は慌てて晶子を引き離して背を向ける。

雨上がりの午後 第943回

written by Moonstone

 まだ渡していないプレゼント・・・?晶子が手に持っていたものは既に判明して食べられるものは腹の中に収まった。それ以外に晶子が何か持っているとは思えない。

このホームページの著作権一切は作者、若しくは本ページの管理人に帰属します。
Copyright (C) Author,or Administrator of this page,all rights reserved.
ご意見、ご感想はこちらまでお寄せください。
Please mail to msstudio@sun-inet.or.jp.