芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2000年8月31日更新 Updated on August 31th,2000

2000/8/26

ご来場者58000人突破です!(歓喜)

 ・・・学生さんの夏休み期間中でも平均的にご来場いただいているようです。夏休みでも卒論とかで学校に来てらっしゃるんでしょうか?そう言えば私も学部4年の時には出てたっけ・・・。

[明日からシャットダウンします]
 8月は休んでばっかりじゃないか、と言われるとそのとおりです、としか言いようがないんですが(^^;)、事前の告知のとおり明日からシャットダウンします。それで少しでも身体が休めて・・・と言いながら、シャットダウン明け直ぐに定期更新、なんていう自分を痛めつけるような無茶な日程を組んでますしね〜。本当に治す気があるのか、と言われそう(^^;)。
 でも、休むことと何もしないことは等価であるとは限らない、と思うんです。普段、特に平日にはどうしても時間的制約や雑用がついて回りますし、それが大幅に少なくなるつかの間の時にやりたいことをすることが私にとっての休養になる・・・と良いんですが、終日キーボードを叩く自分の姿が早くも目に浮かびます(爆)。

 長いお休みを戴く代わりに、といっては何ですが、久々に書いた「マヤちゃん、ふぁいとぉ!PAC編」を公開しました。是非ご覧下さいませ(_ _)。ギャグものは最近BB知世にかかりっきりでしたが、私にとってのギャグの原点といえるこのシリーズを忘れてやしません。やりたかったことがようやく一つ出来た。そんな思いです。
 しかし、らうんど2を差し置いてらうんど3を公開するとは・・・(^^;)。諸般の事情で仕方ないんですが、らうんど2も早く公開できるようにしたいです。
 だが、その基準はあくまでも俺が自分で決めて−何時の間にか決まっていたというべきか−自分の中でしか有効でない。井上の・・・まだ晶子と呼ぶのに慣れないな・・・付き合うという基準は俺と違っても何ら不思議じゃない。
 井上・・・晶子にとっては、名前を呼び合う仲かどうかが基準なのかもしれない。そう思うと・・・名前で呼ばれるのは俺にとってもかなり覚悟が必要なように思える。
 静まりかけていた心臓が再び激しく脈動する。井上・・・晶子が心なしか俺の方にじりじりと迫って来ているように思える。その潤んだ瞳が名前で呼びたいと訴えているように思えてならない。

「ん・・・。何か・・・照れくさいな・・・。」
「慣れの問題ですよ。マスターや潤子さんには名前で呼ばれてるじゃないですか。」
「そりゃそうだけど・・・マスターや潤子さんとは全然重みが違うから・・・。」
「重みって・・・?」
「マスターと潤子さんの場合は身内みたいな感覚だけど・・・井上の場合は・・・」
「晶子、ですよ。」
「・・・晶子・・・の場合は・・・特別だからな・・・。」

 言ってから告白に近いようなことを言ったと気付く。まあ・・・そう受け取ってもらっても構わないんだが・・・。

「嫌じゃないんですね?」
「それは・・・間違いない。」
「何て呼べば良いですか?」
「うーん・・・。俺がファーストネーム呼び捨てにしてるから、それで良いよ。」
「それだと・・・あの女性(ひと)と同じになっちゃう・・・。」
「・・・。」

 晶子はあの女のことを意識しているみたいだ。未だ俺の心の中に巣食っていることに対する対抗心の表れと考えるのは思い上がりだろうか?

「祐司君、じゃマスターと潤子さんと変わらないし・・・。だとすると、あと残るは・・・祐司さん・・・?」
「?!」

雨上がりの午後 第295回

written by Moonstone

 俺にとって付き合っているかどうかの基準は、どちらかが告白をして相手がそれをOKしたという経緯を踏まえているかどうかだと思っている。ある意味明確な基準を置いているのは、それが異性と付き合うのに必要な通過儀礼だと思っているからだ。

2000/8/25

[どうやら更新できそうです]
 昨日お話した「マヤちゃん、ふぁいとぉ!」の新作ですが、この2日で一気に最後まで書き上げました。何ヶ月もほったらかしになっていたものがこうもあっさり出来てしまうのは、やっぱり勢いのお陰でしょうか?体調は小康状態というレベルなんですが・・・。まだ胸は時々痛みますし、
 当初は読み切りにするつもりでしたが長くなったので分けることにしました。前後編若しくは前、中、後編の3回くらいになりそうです。久しぶりのシリーズ更新だけに、面白く仕上げたいです(^^)。シャットダウン直前に公開するべく編集してますので、公開の際には是非ご覧下さい(_ _)。でも、これで力を出し尽くして燃え尽きちゃったら話にならないんですが(爆)。

[こちらも久々、ページ巡り]
 体調不良とこのページのぎりぎり状態での運営で(今も殆どぎりぎりですけど)、久しく出来なかったページ巡りを少ししてみました。ブックマークのページからリンクを辿ったり掲示板のURLリンクをクリックしてお邪魔してみると、知らない間に幾つもページが出来ていたり、前に見た時よりさらに充実していたり・・・。
 数々のページを見ると、自分でもこんな風に出来たら、と思うんですよね。それがページの開設や改装へと繋がっていく・・・。ネット世界ならではの連鎖反応と言えるかもしれませんね。
 異性と名前で呼び合うというのは、俺にとっては一大事だ。潤子さんのときは例外中の例外と言って良い。それにあの時は相手と正式に−告白があってそれを相手がOKしたという意味で−付き合っていたし、期間もかなり経ってからだったからそろそろ名前で呼んで良いかな、と心の何処かで憧れめいたものもあったから、まだ心の準備がし易かったのかもしれない。
 でも、今回はまだ正式に付き合っていない相手から−俺が返事をすればそれで済むことなんだが−いきなり言うように頼まれたから心の準備もろくにないままに口にすることになった。緊張して当然といえば当然か。

 頭の中で何度か晶子、と呼んでみるが・・・やっぱり慣れないせいか物凄く照れくさい。俺は溶けかけの氷を数個口に含む。口の中に含んだ冷気とその感触は口の中で何度か転がしている間に小さくなって少し冷たい氷水になってしまう。
 俺はバリバリと氷を噛み砕いて一気に飲み干す。この冬の最中に氷水を飲むなんて普段ならしないんだが、今日は、否、今はそうでもしないと火照りが収まりそうにもない。

「私も・・・名前で呼んで良いですか?」
「え?!」
「安藤さんって呼んでるのも私が知ってる中では私くらいだから・・・。」
「ん・・・。それでも良いんだけどな。今まで安藤さん、なんて呼ばれたことなんてないし。」
「でも・・・私も名前で呼びたいです・・・。」

 マスターや潤子さんに名前で呼ばれるようになった頃は多少照れくさかったし、智一と名前で呼び合うようになるには最初ちょっと抵抗があった。あまり名前で呼び合うことに慣れてないし、それほど親密な関係にならないこともある。
 だが、井上と、否、晶子と名前で呼び合うというのは全然意味や重みが違う。まだ返事もしていないのに、俺にとって付き合っているという事実だけがどんどん積み重なっていくような気がする。・・・悪い気はしないが、返事をする意味が薄れていくような気がしなくもない。
 このまま既成事実だけがどんどん積み重なっていったら、何のために井上、じゃなくて晶子を待たせ続けているのか分からない。このままだと気付いたら付き合ってたってことになりそうだ。

もしかしたら・・・もう、付き合ってるのかもしれない・・・。

雨上がりの午後 第294回

written by Moonstone

ねえ・・・。名前で呼び合わない?
名前で・・・?ちょっと照れくさいな・・・。
何時までも安藤君、優子ちゃん、なんて余所余所しいじゃない。
・・・まあ、付き合って2年になるし・・・。
私、祐司って呼ぶね。決まり。ねえ、私のこと呼んでみて。・・・祐司。
・・・うーん。・・・じゃあ・・・優子。
はーい。

2000/8/24

[久々に勢いで書いています]
 何かというと、まったく進んでなかった「マヤちゃん、ふぁいとぉ!」の新作です。このシリーズを本格的に書くのは本当に久しぶりのことです。らうんど2がプログラムしようにも予想される量の多さに今の状況ではほぼ実現不可能と判断して形式を練り直しているので、先にらうんど3を書いているのですが(爆)。
 私は書こう、と思ったときに書けないと全くと言って良いほど進まないタイプですし(威張れないですが)、今は状況が状況なのでなかなか作品製作に、特に勢いが必要なギャグものは最近BB知世で精一杯でしたので、今の勢いが続くうちに書ければ良いなぁ、と思っています(^^;)。もし書き上げることが出来たら、シャットダウン前に公開しますね。

[事故と機密]
 ロシアの原子力潜水艦沈没事故で、ロシアの機密優先が批判の槍玉に上がっています。普通の感覚ではそれは当然でしょう。人命より機密の方が大事と言わんばかりの対応でしたから。でも、軍隊というのは本来、そうやって機密を最優先する組織ではないでしょうか?そういう見方をすれば、ロシアの対応は機密を守る上で当然といえるわけです。
 軍隊は必要と言うのなら、そういう価値観から堂々と「あれは軍隊として当然の対応だ」と言うマスコミや識者が居ても良さそうなものなんですが・・・。「神の国」発言でもだんまりを決め込んだことといい、如何にマスコミや識者が高みからものを言っているかがよく分かるというものです。

「井上が嫌いだとかそんなんじゃないけど・・・今まで井上って呼ぶことに違和感が無かったから・・・そのまま続いてるだけさ。」
「私は・・・私が知る限りの人の中で一人だけ安藤さんに苗字で呼ばれてるんです・・・。それが何だか・・・寂しくて・・・。」
「・・・。」
「無理強いはしませんけど・・・私のことも名前で呼んで欲しい・・・。」

 そう言った井上の頬が急に赤みを増して井上は俯く。井上自身かなり勇気が必要なことだったようだ。そして俺も、潤子さんのことを名前で呼ぶようになった頃とは比較にならない、そして全然違う身体の火照りを感じる。

「・・・良いのか?」
「ええ・・・。」
「じゃあ・・・晶子・・・さん。」
「最後の『さん』は要らないですよ。」
「ん・・・一応井上の方が年長だし・・・。」
「同じ学年ですよ・・・。それに・・・さん付けされたら名前で呼んでもらう意味が薄くなるように思うから・・・。」
「そうかな・・・。じゃあもう一回・・・。」
「・・・。」

 井上は小さく頷いて真剣な、そして少し潤んだ目で俺を見詰める。心拍数とその抑揚が胸を突き破りそうなほどに激しく、強くなる。ジュースを飲んで間もないのに喉の渇きが凄い。俺は緊張を解す意味を兼ねて唾をごくっと飲み干す。そしてがちがちに固くなってさらに震えまで出ている唇を動かしてその名を呼ぶ。

「・・・晶子・・・。」
「はい・・・。」

 胸を触らなくてもはっきり聞こえて感じられるほど、俺の胸は痛く高鳴る。でもこの痛みは少しも不快じゃない。この痛みは・・・一度感じたことがある。あの女と付き合って2年になろうというとき、二人でとある観光地へ出掛けたときのことだった。今でもあの時のことは覚えている・・・。

雨上がりの午後 第293回

written by Moonstone

 潤子さんと出会った時間と井上と出会った時間の差は半年くらいだ。それを考えると・・・井上の言うことはもっともかもしれないな・・・。前にも井上は俺が潤子さんを引き合いに出されたことを快く思ってなかった。そういう気持ちもあるんだろうか?

2000/8/23

[うたた寝、居眠り、そして寝ぼけ]
 以上が帰宅して夕食を食べた後の行動です(爆)。昨日以上にぐったりしてて、寝起きで頭は半分起きてて瞼は寝ているも同然の状態でPCの前に座ってもネットに繋げるのが精一杯でした(^^;)。横になっている間に冷房が丁度良い具合に効いてくるのでより寝やすい環境にしているとも言えます。
 こういう非常事態(?)に役立つのが連載の書き溜め。日記部分で大抵時間がかかるだけにコピー&ペーストでスペースが埋まるのは心理的に楽です。しかし早速使っているような状況で、書き溜めがシャットダウンまで持つのかなぁ・・・(^^;)。

[唐突ですが、出会いについて]
 本当に唐突ですね。まあ、寝起きだからということで(笑)。小説に限らず人間関係を描く上で重要な要素を占めるのは人と人との出会いだと思うんです。この連載でも一つの別れの後に訪れた出会いから、今の関係にまで続いていますし、一期一会という言葉は死語になりえないでしょう。
 勿論、連載のような恋愛ものには出会いが欠かせないわけですが、思えば見合いみたいに決められた出会いなんてのはむしろ少数で、出会いというのはある日突然に、というのが大半なんじゃないでしょうか?劇的な出会いかどうかはその時の状況やインパクトの程度だと思います。私は一度その劇的な出会いというものを体験してみたいですね(笑)。リスナーの皆様は如何でしょうか?

「あの女性(ひと)のこと・・・今でも心の中では名前で呼んでるんですよね。」
「な、何だよ、いきなり・・・」
「前に安藤さんが熱で魘されていたとき、うわ言であの女性のこと、名前で呼んでたから・・・。」
「・・・あれは習慣みたいなもんだよ。別に・・・意味なんてない。」

 何を言い出すかと思えばあの時のことか・・・。ちょっと嫌な気がする。自分の身に覚えが無いことを−うわ言だから自分で言っているなんて分かる筈が無い−いきなり蒸し返されたこともあるが、まだあの女のことをあの時のままで呼んでいる自分が嫌に思う。
 意識して口に出したことは無い筈だが、少なくとも夢の中ではまだ優子と呼んでいるのは確かだ。そしてあの女のことを心の中で呼称するときには未だに時々だが、優子、と言っていることも確かだ。
 考えてみればあの時のままで呼ぶ理由なんて何処にも無い。中学高校で女子を呼ぶときのように−そんなに呼ぶ機会はなかったが−苗字で宮城、と言えば良い筈なんだが、習慣ってやつは恐ろしい・・・。

「何だか・・・ちょっと悔しいです。」
「悔しいって・・・?」
「だって、嫌いになった筈の人のことを名前で呼んで、嫌いじゃない私のことはまだ他人みたいに苗字で呼ばれてるから・・・。」
「・・・付き合ってもないのに名前で呼ぶなんて変だろ?馴れ馴れしいし・・・。」
「でも・・・潤子さんのことは名前で呼んでますよね・・・。」
「・・・。」
「数ヶ月の違いで・・・こんなに変わるんですか?」

 俺の方を向いて投げかけられた井上の言葉が重く響く。確かに潤子さんのことは此処でバイトをするようになって程なく名前で呼ぶようになった。そう呼んで構わないと潤子さん自身が言ったのもあるし、ずっと欲しいと思っていた姉のような存在である潤子さんに対する憧れが自然とそうさせたのかもしれない。
 井上とは出会ったときの俺の精神状態が最悪だったし、井上、と呼ぶことに何も違和感を感じなかった。今でもそうだ。ただ、呼ぶときの感情は今と昔とじゃ全然違う。昔といってもつい2ヶ月くらい前のことなんだが。

雨上がりの午後 第292回

written by Moonstone

「・・・安藤さん。」
「・・・ん?何だ?」

 何か別の切り出し方は無いか、それとももう練習を再開するか、と考えていると、今度は井上から話し掛けてくる。横を向いたままの井上の表情は真剣で何処か悲しげで・・・何かを訴えたいという意思がありありと見える。

2000/8/22

[休日でも日記にならないと・・・]
 平日なんてさらに日記にならないです。敢えて書くなら・・・相も変わらず先の見えない仕事が続いて精神的にぐったりしてしまいました。ただそれだけ(爆)。・・・ここまでお話して1時間以上ぐったりしつつ考えても日常についてお話することは何も思いつかなかったり(汗)。
 そう言えば昨日確認した時点でこのコーナーのリスナーが6000人にあと少しになってました。大半のグループを追い抜いてしまいましたね(笑)。例として、6000人目の方にはご質問にお答えするなどの参加型企画を考えていますので、是非ご連絡ください。

[連載を書いていてふと思ったこと]
 連載に限ったことではないんですけど、一つの場面を描くのって意外に行数を必要としますね。もっと端折って書けば良いのかもしれませんが、この場面ではこういうことを考えるんじゃないか、とか考えて書き連ねていくと何時の間にか増えています(笑)。
 特に連載のような一人称ものだと、その人物の主観や思考が文章でも支配的になりますからどうしても長くなり易いですね。未だ安藤君が告白の返事をしてないのはそういう理由かも(^^;)。彼って結構あれこれ考えるタイプですからね(笑)。
 井上は俺の傍の床に腰を下ろし、ストローを取り出してコップに入れてそこから飲む。思わぬところで育ちの違いが出たみたいだ。
 休憩の間にも俺と井上の間に会話はない。練習のときも抑揚とかテンポとか歌や演奏に関する細かいところを指摘したり打ち合わせたりはしたが、それ以外の会話はまったくない。
 練習から切り離したこの休憩時間は氷がコップや別の氷と擦れあって立てるカラカラという軽い音くらいしか部屋にはない。それがないとまさに沈黙の真っ只中だ。気まずいことこの上なく感じる。

 困ったな・・・。どうもこういう状況になると井上と二人っきりということを意識してしまう。練習のときはパートナーということにのめり込んでそれ以外考えないが、練習から離れると途端に特別な存在に思えてしまう。
 さっきのマスターの問いかけを別の意味に取る。井上への返事・・・。昨日の夜は遠回しが過ぎて空振りに終わったから、今度言う時は失敗しないようにストレートに・・・。
 そんなことを考えているとどんどん心拍数が上がって来る。オレンジジュースで喉を潤しているつもりが、逆に喉が渇いてくる。意識しないようにと思えば思うほど井上の一挙一動を意識してしまう。このままじゃ間が持たない。どうしよう。どうやって話を切り出そう・・・。

「い、井上・・・。」
「・・・はい。」
「・・・喉は・・・良いか?」
「ええ。今日は全然痛くないです。」
「なら良いけど・・・。」

 俺は良くない。思い切って話を切り出したつもりが、結局井上の喉の具合を尋ねてしまった。好きだ、の一言がどうしても喉に引っかかって出てこない。喉をどうこう考えなきゃならないのは俺の方じゃないか・・・?
 こうしている間にジュースはなくなり、後は溶けかけの氷が残るのみになった。わざとコップを振ってカラカラと音を立ててみたりする。・・・余計に気まずく感じるから直ぐ止める。

雨上がりの午後 第291回

written by Moonstone

 俺は中に入って布団の上に腰を下ろしてから、トレイの上に乗ったコップとストローを一つずつ井上に手渡す。俺はストローを使わずに、そのままコップからジュースを口に運ぶ。

2000/8/21

[思えば随分久しぶりのこと]
 この週末は作品製作に没頭していました。まあ、SS関係と連載の書き溜めだけなんですが、此処最近それすらもまったく出来なかったので(間際になって一気に作りこんでばかりでした(^^;))今度の定期更新は勿論、シャットダウン前の臨時更新も出来るかな〜、と都合良く思っています(笑)。
 特に身体の具合が良かったわけではなくて、ただ創りたいと思ったからひたすら創ったんです。時間の割に進捗状況はあまり進んでないじゃないか、と言われればそれまでですけど、私の場合、家のこともしなきゃなりませんし、元々作品製作に時間がかかる方なんで(^^;)。連載ものだと写真のサムネイルくらいの容量(約10kB)にするだけで1日くらいは軽くかかります。遅いですね。

 でも、本来は義務感よりこういう創りたい、それを見てもらいたい、という気持ちでページを運営するべきなんでしょうね。そうでないと自分が辛いですし、余裕のなさに拍車をかけるだけですから。出来るときに出来るところまでする。それで良いんじゃないかと思います。
 ・・・え?その他何かなかったのかって?二度寝して(1回目はどうしてもはっきり目が覚めないんです)昼前まで寝てて、家のことをやった他は「CCさくら」の地上波放送を見て後は作品製作のみでした(爆)。何て日記にならない生活をしてるんでしょうね(^^;)。

「あの・・・マスター。」
「ん?おお、祐司君か。一瞬誰かと思った。」
「2人分の飲み物を何か貰えませんか?練習の合間に一息入れようと思って・・・。」
「ん、分かった。温かい方か冷たい方かどっちが良い?」
「・・・冷たい方で。」
「冷たい方というと・・・オレンジジュースで良いか?」
「はい。」

 マスターは手を洗ってタオルで拭うと、手早くコップを取り出して氷を入れ、冷蔵庫から取り出したオレンジジュースを注ぐ。そして最後に2つのコップにストローを添えて銀色のトレイに乗せる。この辺り、流石に喫茶店のマスターだけあって手際が良い。

「ありがとうございます。」
「いやいや。それより、上手くやってるか?」
「はい。順調に進んでます。」
「そうかそうか。大いに結構。無理だけはしないようにな。」
「はい。それじゃ・・・。」

 オレンジジュースの入ったコップを二つ持って部屋へ戻るうちに、マスターの言ったのは別の意味を含んでいたんじゃないか、とふと思う。要するに井上とどうとかそういう意味で。だとすると、あの受け答えはちょっとまずかったかな・・・。
 ドアの前に辿り着いてトレイの下側に左手を回してドアを開けようとノブに手を伸ばすと、先にドアが開いて井上が出てくる。

「何で俺が来たって分かったんだ?」
「え?足音が近付いてきたからですよ。」
「あ、そうか・・・。」

 意外に足音はよく聞こえるらしいが、これほどタイミングが良いと戻って来るのを待って外の音に注意深く耳を傾けていたんじゃないか、と都合良く考えたりする。・・・そんなわけないか。

雨上がりの午後 第290回

written by Moonstone

 階段を駆け下りてダイニングと廊下を抜けて店の様子を伺う。キッチンではマスターが食器を洗っている。珍しい光景を目にしたような気がする。マスターがキッチンで目にするときは大抵コーヒーを沸かしているときだからな。

2000/8/20

ご来場者57000人突破です!(歓喜)

 ・・・昨日言い忘れてました(^^;)。シャットダウンを2回も挟んだせいか、ちょっと鈍いかな?まあ、56000人突破が凄く早かったからその反動かもしれませんね。今日は定期更新です。ごゆっくりお楽しみください(_ _)。

[久しぶりのカラオケで]
 この月2回のオフ会に共通してあったのがカラオケ。こういう宴会の類では定番の一つといえるでしょう。そこには今時の歌が多いわけです。で、普段そういうものを殆ど聞かない、ラジオで流れてきても聞き流す私には当然歌える曲は殆どありません(^^;)。もっぱら聞き役です。タイトルを知っていたり、聞いたことがある曲であっても、最後までひととおり歌えるほど知っていることは珍しいですからね。
 先日のオフ会はカラオケの割合が多くて、退屈はしなかったんですが(昔のアニメソングとかもあって懐かしがってました)歌えないことにもどかしさを感じました。カラオケに行ったのは実に数年ぶりなのですが、多少は歌えるようにしておいた方が良いかな・・・。せめて連載でも出してる「Secret of my heaat」はきっちり詠えるようにしておきたいです。

「チューニング完了。井上は?」
「・・・はい。準備できました。」
「それじゃ始めるか・・・。」

 俺は何時ものようにアレンジした4小節のイントロからボサノヴァのリズムを刻み始める。そしてそれが4小説分刻まれたところで、井上のヴォーカルが被さる。何時もと変わらない「Fly me to the moon」だ。
 俺が初めて人に音楽を教えた題材になった曲であり、井上が初めてステージで見知らぬ客に自分の歌声を披露した曲・・・。俺にとっても井上にとってもこの曲との因縁は深い。
 昨日の音合わせで喉を傷めた様子だったので心配だった井上のヴォーカルは、何時ものように繊細で透明感があって、それでいて輪郭がはっきりしている・・・。ギターで伴奏をするのが心地良い。思わず俺も歌詞を口ずさむ。練習というよりくつろぎの時間という感じがしないでもない。演奏する手だけが勝手に動いて、意識は井上の歌声に傾いている。
 最初の頃、音程を追いかけて真似るのが精一杯だった様子は見る影もない。腹の辺りに両手を当てて−腹式呼吸を意識してのことだろう−朗々と歌う姿は、ヴォーカルとして立派に様になっている。もう俺があれこれ教えるなんて余地はないように思う。

 適度に間隔を置きながらだが、練習は淡々とした調子で進んでいく。俺と井上がペアを組んで演奏する何時もの曲に加えてジングルベルや赤鼻のトナカイなんていうクリスマスソングの定番曲もだ。これらはマスターと潤子さんも加わるんだが、自分達のパートをしっかり練習しておくに越したことはない。
 ひととおり演奏したところで休憩することにする。俺も腕が疲れてきたし、何より井上が喉を傷める恐れがあるから、様子を見て負担がかかるようなら練習を切り上げてでも井上の喉を保護しないといけない。これは今の俺の責任でもある。

「俺、下に行って何か飲み物貰ってくる。」
「あ、それなら私が・・・。」
「たまには俺にもこういうことさせてくれ。」

 俺は立ち上がろうとした井上を制して部屋を出る。こういう気配り的なことは何時も井上のやることだ。たまには俺がやらないと後ろめたいものを感じる。

雨上がりの午後 第289回

written by Moonstone

 俺はストラップを身体に通して畳んだ布団に腰を下ろしてチューニングを合わせる。井上は俺とは逆に立ち上がる。座って歌うことはないから、本番に則した姿勢にするというわけか。
 ちらっと井上を見ると、喉に手を当てて小さい声で色々な音程を出している。井上の楽器である喉も生楽器の一つといえるから、やはりチューニングは欠かせないらしい。音程の外れた伴奏と歌は違和感たっぷりだからな・・・。

2000/8/19

[休養してきた・・・つもりです(汗)]
 2回目のシャットダウンから帰ってきました。今回は前から約束のあった別のオフ会に出掛けたのですが(勿論薬は携帯、アルコールは不可)、現在の体力では日帰り強行軍での更新は不可能と判断して期間を2日間にした次第です。
 存分に楽しんで帰ってきたのは18日午前(現地をほぼ始発で出ました)。薬を飲まないときちんと出てこない眠気を今出したら多分目覚めるのは夜。その後もまともに作業は出来まい。定期更新を間近に控えた日程でこれ以上ロスするわけにはいかない、と1時間ばかりうたた寝をしただけで更新準備に取り掛かりました。

 当然、現在もその真っ最中です。これまでに完成した作品に加えて、広報紙の更新、第1写真グループの追加写真の選定、未だ完成していない短文の英訳、そして可能な限り他のグループでも作品を製作・・・。やることはいっぱいあります。一つ一つ片付けていかないとこれまでの繰り返しになるので、徹夜してでも手早く一気に進めたいところですが・・・一度はちゃんと寝ないと(はい、17日は徹夜でした(爆))大ダメージになって噴き出してくる可能性が高いので、このお話をお聞きいただいている時点では私は多分寝ていると思います(^^;)。
 精神的には休養になりましたが、肉体的には相当疲労が蓄積しました。眠いけど薬で引き出さないと寝られない。そんな状態なんです。
 だが、こうして今親でも兄弟でもない他人と一緒に食事をして何かの話題で会話をしているだけで・・・不思議と夢見の悪さが和らいでいくような気がするのは何故なんだろう?人間は一人で生きていけないというのは、こういうことなんだろうか?
 ・・・俺が井上に抱いている気持ちは、その一種なんじゃないか?一人じゃ寂しいから誰かと一緒に居たい、誰かに傍に居て欲しい・・・。寝込んだとき俺はそう思った。その対象がたまたま井上だったというだけじゃないんだろうか?

 だけどあの時、井上がバイトから帰って来てベッドの傍らにあった椅子に井上が腰掛けた瞬間、俺の心の隙間にぴったり嵌ったのは井上だったとも確かに思った。あれが潤子さんや母親や、・・・あまり考えたくないが優子だったら同じように思ったかというと、多分違うと思う。
 ・・・何だか考えれば考えるほど、自分の本当の気持ちがどれなのか何なのか、分からなくなってくる。映画館から井上を連れ出したときみたいにあまり考えないうちに行動に出られれば良いんだが・・・。やっぱり返事をしようとなると考えてしまう。自分の気持ちが本当に「好き」というものなのかどうかということを・・・。

 朝食を終えた後、俺と井上は早速2階に戻って練習の準備を始める。俺はアンプとかが必要ないアコースティック・ギターを取りに店内に入る。まだ回転前の店内は当然だか照明はまだ灯っていなくて、閉じられたブラインドから漏れ込んで来る光と足音の長い残響が少し寂寥感を感じさせる。
 ステージにおいてあるアコースティック・ギターを取って、俺は2階へ向かう。井上は先に俺の部屋に行っている筈だ。井上が俺の部屋で練習しようと言い出し、特に反対する理由もなかったからだ。
 必要ないだろうとノックもせずにドアを開けると、井上は床に腰を下ろして待っていた。部屋はほんのりと暖かい。エアコンのスイッチは入っているが温度設定を控えめにしてあるみたいだ。昨夜もそうだったが、音楽は歌うにしても演奏するにしても意外に運動の側面があるように思う。

「待たせたな。それじゃ早速始めようか。何からする?」
「やっぱり・・・『Fly me to the moon』から。」
「よし。それじゃ・・・。」

雨上がりの午後 第288回

written by Moonstone

 俺が生活費を一部自分で賄うという親からの条件を飲んででも一人暮らしが必然になる距離にある今の大学を選んだのは、その鬱陶しさから逃れて一人暮らしがしたかったことが一つの要因だ。

2000/8/16

 前回シャットダウンのドキュメントをお話していますが、また明日から2日間シャットダウンします(^^;)。それが明けたら直ぐ定期更新・・・大丈夫か?(汗)

[シャットダウン・ドキュメント(その3)]
 第2日目のオフ会で待っていたものは・・・焼肉の物凄い煙と表現し難いほどに濃い会話の嵐でした(笑)。特にさくら組(CCさくらフリーク諸氏)の会話は深層水の如く(?)濃くて深い。それこそ第2SSグループで展開中のBB知世なら「いけませんわ!」と絶叫して退治に乗り出すこと必至の内容でした(^^;)。私はそれに混じって歌帆の絵柄を含むトレーディングカードを誇示してたり(爆)。ちなみに私は全くの素面。これで酒が入ってたらどうなっていたことやら。
 終わって帰る頃には雨が降る降る。そりゃ台風が近付いてましたからね。傘など持っている筈もない私は焼肉の匂いがびっしり染み込んだ全身をずぶ濡れにして宿泊先に帰りました(笑)。

 第3日目の13日は2日目と同じ時間に起きてチェックアウトしてそのままコミケへ行くための待ち合わせ場所へ直行・・・って、見事に場所を勘違い(爆)。大慌てで電車に飛び乗り通路を突っ走り、時間ギリギリで到着したときには汗でびっしょり。その中には多分冷や汗も混じっていたに違いない(^^;)。
 確かに混んではいましたが、それでも思いの他簡単に会場入り出来ました。ここで自由行動となって私は待ち合わせ組みのお一人と一緒に途中までCCさくら関係のブースをチェックした後、その方と別れて目的の創作系ブースに並びました。ここで待つこと10分以上(汗)。買えるのかどうか不安でしたが無事ゲット。もうその他のブースは何処に何があるのか見当がつかないし時間も迫っていたのでそのまま帰途に就きました。
 かなり疲れましたけど、良い刺激を貰って気分転換が出来た3日間だったと思います。人間たまには旅行とかした方が良いみたいです。
・・・おしまい♪

「井上。喉の方は良いのか?無理すると・・・。」
「もう大丈夫です。昨日はつい力が入りすぎて喉から出しちゃいましたから、安藤さんに教えてもらったお腹から声を出す基本に返って練習しようかなって思って・・・。」

 ああ、そうだった。喉で歌おうとすると喉が潰れやすいから腹から声を出すと喉の負担が軽くなるし響きも良くなる、と教えたのは他ならぬ俺自身だ。もっともその知識は、高校時代のバンドでヴォーカルをやってた奴が喉を痛めたとき、合唱部の知り合いに相談して教えてもらった方法の受け売りなんだが。
 それにしても、昨日の喉の痛みが歌った曲の量が多かったせいなのは勿論だが、それを反省材料にして声の出し方を原点に戻そうと思うなんて、なかなかの向上心だと思う。俺がそれを反故にする理由は何処にも見当たらない。

「じゃあ、俺も練習に付き合うかな。」
「ありがとうございます。」
「別に礼なんて良いよ。伴奏があった方がやり易いだろ?」
「・・・ええ。」

 礼を言ったときの笑顔に少し陰りが出たような気がする。別に気に障るようなことを言ったつもりはないが・・・。井上は感情が表情に出易い分、表情が曇る方向に傾くとちょっと戸惑ってしまう。
 井上が歌う曲の大半は俺が演奏を担当するから、井上と一緒に練習することは俺にとってもプラスであることには変わりはない。それに半日あれば相当練習できるだろう。井上が喉を潰さないように気をつけないといけないが。

「じゃあ、お昼の時間になったら呼びに行くわね。」
「はい。」
「二人とも熱心なのは良いが、あまり無理をしないようにな。昨日の練習で分かったと思うが、結局は何をするにしても身体が資本なんだから。」
「は、はい。」

 それまであまり口を開かなかったマスターがアドバイスする。こちらもちゃんと話を聞いていたのか・・・。会話がある朝食なんて、こっちに引っ越してきてから随分縁遠くなっていたから、何だかじんわりと温かいものが心に広がるような気がする。
 実家に居たときは家族の大切さとか重みなんて全然意識しなかったし、時には家族というものに鬱陶しささえ感じたこともある。別に親兄弟と深刻な諍いがあったわけじゃなくて、今思うと多分反抗期に毛が生えたようなものだったんだろう。

雨上がりの午後 第287回

written by Moonstone

 何時の間にやら2階で井上と練習する方向に向かっている。まあ、暇を持て余すよりは良いだろうが・・・喉は大丈夫なんだろうか?練習に精を出して喉を潰したらそれこそ洒落にならない。

2000/8/15

[シャットダウン・ドキュメント(その2)]
 第2日目の12日は何時もより少し早めの起床。この日はコミケに行かず、まずは数名の方々と待ち合わせして秋葉原へ行くため、所要時間が大凡しか分からないので早めに出ようということで・・・。その甲斐あって待ち合わせ時間より30分早く到着。面識のない方も居らしたので、待ち合わせ場所が正しいのか確認できるまでちょいと焦りました(^^;)。
 秋葉原も表通りは安売り店が連なっていますが、少し裏通りに入ると昔ながらのジャンク店や電子部品店があったりして、秋葉原らしいなぁと思いました。
 そしてその中で入ったマンガ・アニメ関係の店で・・・買ってしまいました。CCさくらのトレーディングカードを。それも我が愛しの歌帆の顔が確認できる(袋が透明だったので)という理由だけで3袋も(猛爆)。今の再放送では歌帆が出てこなくなったので、コミックスと合わせて歌帆の姿が楽しめる宝物となりますね(^^)。運悪く見逃した弓道姿もあって実に素敵なものです。(^^)b

 歩き回ってさすがに少々疲れた夕方頃、今度は実に数年ぶりのカラオケへ。先日お会いできたAkane様、Inma様とそのご家族を含めてのものとあって大盛り上がり♪お二人は歌も上手くて二度びっくりしました。歌の上手い人が多くてまだびっくり。私は歌モノをろくに知らないので、辛うじて知っているCCさくら関係の曲を一緒に口ずさんでました(笑)。
 そしてオフ会。今まで2回お誘いを受けながらどれも直前になって体調を崩してキャンセルというお馬鹿な私は、今回は薬の力を借りつつ出席。そこで待っていたものは・・・?
・・・続く♪
「何だかぼうっとしてるから・・・。」
「朝ぼけっとするのは珍しいことじゃないよ。それに言っただろ?今日は夢見が悪かったって・・・。」

 語尾の方で声の調子が少し荒くなってしまったように思う。心配してくれるのは嬉しいが、あの夢のことに少しでも触れられようとすると反射的に拒否して跳ね返そうとする。・・・これじゃ、井上と出会った頃と同じじゃないか。あの頃から全く進歩してない俺が情けない。

「相当嫌な夢見たのね。」

 潤子さんがキッチンの角で卵を叩いて言う。器用に次々と片手で卵を割って焼いていながら、話は聞いていたのか・・・。本当に器用な人だ。

「本当に嫌な夢見ると、どうしても表に出ちゃうのよね。意識してなくても。」
「・・・そうですね。」
「まあ、あんまり気にしないようにね。演奏とかにも出ちゃうから。」
「はい・・・。気をつけます。」

 心が荒れていると彼方此方にその余波が及ぶ。表情にも言葉にも、そして指先にも音にも・・・。大舞台が間近に控えている今、メンタルな部分の制御が下手な俺は余計に神経を使わないといけない。
 潤子さん手製の朝食が続々と食卓に並び始める。明日からジャムを塗った食パン1枚、インスタントコーヒー1枚の食事に戻るかと思うとちょっと気が重いが、今くらいは贅沢な気分に浸っておくことにしよう・・・。

「祐司君と晶子ちゃんは、今日の昼はどうするの?」

 朝食が終わりに差し掛かった頃になって潤子さんが尋ねる。俺と井上のバイトは夕方からということになってるから、半日は一応フリーだ。昨日は映画に行ったが・・・さて、今日はどうしようか。

「別にすることも出掛ける用事もないですけど・・・。」
「2階でコンサートの練習してても良いですか?」
「それは全然構わないわよ。床を激しく踏み鳴らしたりしなければね。」
「安藤さん、一緒に練習しませんか?」

雨上がりの午後 第286回

written by Moonstone

「安藤さん、大丈夫ですか?」

 井上が不意に声をかける。勿論井上には驚かすつもりはなかっただろうが・・・揺れ動く心の動きを見られていたような気がしてびくっとしてしまう。

「あ、ああ、大丈夫だって。本当に・・・。」

2000/8/14

[シャットダウン・ドキュメント(その1)]
 シャットダウン前の10日付で最悪の状況に陥って遺言のようなお話をしました。ご心配をおかけしたかもしれませんが、実際あれだけのお話をするだけでも3時間程ぐったりしてからようやく、という状況だったので(汗)。
 その10日当日(お話をしているのは日付の前日なので)にある程度持ち直した状態でシャットダウンに入りました。今回のシャットダウンの目的は東京でのコミケ行きに加えて、久しぶりの単独での宿泊旅行をすることで気分転換を狙ってのことです。前者は勿論ですが、今回は後者の重要性が高いですね。

 第1日目の11日。この日は東京入りと同時にコミケ会場入りする関係で、朝が何時もより2時間は早かったです。しかし、私の悪い癖で出発直前にバタバタしてしまって、電車の時間にはギリギリでした(^^;)。東京入りしてしまえばコミケ会場に行くのは初めてではないので、行列に並ぶ時間を考えるだけ。
 その日は暑いこと暑いこと(汗)。行列は予想より遥かに少なかった(去年の冬は蛇行してました)のですが、あまりの暑さに2本のペットボトルを空にしてしまいました。事前にチェックしておいたブースで商品を無事確保して、さらに第1CGグループに幾つもCGを戴いているま〜く様に加えてAkane様とInma様にお会いできました(^^)。お二人にはお会いできる時の記念として持参した「Dreaming」(第1SSグループにて公開中)の直筆原稿をお渡ししました。
 今は直接キーボードを叩くことが殆どなので、直筆原稿が残っている文芸作品は殆どありません。私としてはその意味で貴重なものなので投稿先であるお二人にお渡しした次第です。驚かれていましたが、喜んでいただけたようで何よりです。

 昼食を挟んで目に付いたものを買った後コミケ会場を後にして宿泊先へ。この日はコミケそのものや乗り換え(何で500m以上も歩かにゃならんのだ)、宿泊先と、兎に角歩きに歩いた1日でした。そのためか、薬を飲んだら程なくお休みと相成りましたとさ(笑)。
・・・続く♪

雨上がりの午後 第285回

written by Moonstone

「・・・おはようございます。」
「祐司君おはよう。もう少しで出来るからね。」
「おお、おはよう。・・・何か今日は寝起きが良くないみたいだな。」
「・・・そうですかね。」
「瞼がちょっと腫れぼったくて重たそうだし・・・やっぱり井上さんに添い寝して貰わないと駄目か?」
「な・・・何言ってんですか?!」
「お話は座ってからでも良いんじゃない?」
「話すも何も・・・単に嫌な夢見ただけですよ。」

 まだあの夢は頭から離れようとしない。あの女はいともあっさりと切って棄てたが、俺はまだ切りたくない、切れているなら繋ぎたいと心の何処かで思ってるんだろうか?もしかしたら、あの女に未練がないと思っているのは表向きだけなんだろうか?自分の心の本当の姿が分からない・・・。
 俺はマスターの隣、井上と向かう合うという昨日と同じ席に座る。あの女の影がちらつくような今の心の状態だと、井上と顔を合わせるのが辛い。井上が居ることが辛いんじゃないのは勿論なんだが・・・。

 こういう場合、視線を合わせる位置が難しい。井上と顔が向き合うのは辛いから、俺は頬杖をついた姿勢で、井上の斜め後ろで目玉焼きを焼くらしく火にかけたフライパンの様子をちらちら眺めながら鍋の味噌汁をかき回している潤子さんの後姿をぼんやり眺めることにする。
 長い髪を後ろで束ねて調理をしている潤子さんを見ていると、構図は違うが、俺が寝込んだとき井上がお粥を作ってくれたときのことを思い出す。そして思う。あの日井上がバイトに出掛けた後井上に対して抱いた気持ちは・・・ただ、寂しいというだけだったんだろうか?あの時の気持ちの背景を考えれば確かに寂しかったのは事実だ。だが、それだけだったのかどうか・・・今となっては覚えていない、否、分からない・・・。

2000/8/10

[暗転・・・]
 昨日はその一言に尽きます。お先真っ暗です。胸も酷く痛みますし、まだこれからもこんな状況が続くのかと思うと、もうどうにかなってしまいそうです。
 事前の告示どおり、明日から3日間シャットダウンとさせていただきますが、そのまま復帰できるかどうか全く自信がありません。シャットダウンから明けて数日経っても更新が始まらなかったら、私に何かあったと思ってください。こうしてお話しておけば、何かのときの遺言の代わりにはなるでしょう。

 リスナーの皆様には申し訳ありませんが、今日はもうこれ以上お話する気力がありません。

「じゃあ、私、先に下へ行ってますね。」

 井上はそう言って立ち上がると、さっさと部屋を出て行く。その素っ気無いまでの動きに俺は止める間もない。呼び止めようとしたときには、足音は下へ向かって降り始めていた。
 また機会を逃してしまった・・・。気持ちはそれなりに高揚してはいるが身体の反応がそれについてこない。目覚めてまだ間もないせいもあるだろうが、無意識のレベルでまだ躊躇しているのが原因なんだろうか?
 さっきの夢といい、まだ心の何処かにあの女、優子への未練があって井上に気持ちを移らせまいと抵抗しているのか、それとも優子との終わり方が今でも引っ掛かっていて、また同じ思いをしたくないなら止めておけ、と引き止めているのか分からないが・・・優子の記憶が絡んでいるのは確かだろう。何と言っても昨日本人に出くわしてしまったから、記憶や顔形が再び鮮明さを取り戻してしまったように思う。・・・思うようにことが進まないのは状況が変わっても変わらないってことか。

 俺は布団から出て冷気が身体に染みないうちに手早く着替えて、荷物を鞄の中に突っ込んで布団をそれなりに畳んでから部屋を出て下へ向かう。もう今日で泊り込みの「合宿」は終わる。思い返してみるとあっという間だった。井上と昨日の昼間に出掛けなかったら時間の流れる感覚はもう少し遅くなっていたかもしれない。あの時間は本当に・・・色々なことがあった。
 ダイニングに降り立つと、潤子さんが朝ご飯の仕度をしていてマスターが自分の席で新聞を読んで、井上がその斜め前に座っている。井上が座っている以外は昨日の朝と同じ風景だ。

雨上がりの午後 第284回

written by Moonstone

「・・・まあ、そうかもしれないな。」

 結局曖昧な言い方しか出来ない。言ってから気付くが、今は二人だけだし返事を言うには絶好の機会じゃないか?そう思うと冷気を感じ始めていた体が内側から急に熱くなってくる。朝から気持ちが忙しなく移り変わる日だな、今日は・・・。

2000/8/9

[お返事、書いてます]
 8/6の第1SSグループ更新を待っていたかのように、ほぼ時期を同じくして感想メールを複数戴きまして、そのお返事を書いては順次発送しております。折角戴いた感想メールですので、お返事は必ずするようにしています。考えながら書いてますので時間はかかりますけどね。
 勿論、これまで戴いた感想メールはきっちり保存してありますとも(笑)。作品を公開して何が一番嬉しいかといえば誰かから反応があることではないかと思います。そうでなかったら自分で作ったものを自分だけで楽しんでれば済むことですし(ちょっと変かな?)、月何千円も投資してまでネットに繋いだり、ましてやドメインを確保しようなどとは思いません。

 ・・・何だか感想メールを催促してるみたいですね(^^;)。実際に版権元の知名度や読者層の厚さで圧倒的な第1SSグループでさえ、開設して1年と1/3が過ぎた時点で総数50くらい、創作系など掲示板を含めて感想を貰えれば御の字という状態です(笑)。一時はそれだけ自分の作品が面白くないのか、とかなり落ち込みましたが、今は感想を戴いたら時間をかけてでもきっちりお返事する、そのことだけを考えています。
 実際はちょっと、なんてレベルじゃないんだが、井上をさらに不安にさせるわけにはいかない。ここは我慢のしどころだろう。

「・・・風邪とかは?」
「いや、それは大丈夫・・・。夢だけだから・・・。」
「それなら良いんですけど・・・起きられます?」
「そんなに気を遣わなくて良いよ。・・・夢なんて少ししたら簡単に忘れるようなものだから。」

 普段ならそうだ。リアルだった夢でも目覚めて数分もしないうちにすっかり忘れてしまうか、こんな感じの夢だったな、という漠然としたものになる。
 だが、今日の夢は今でもまだはっきり覚えている。まだ輪郭や声すら消えそうにない。夢そのものがリアルだったのは勿論−夢の途中でこれが夢だって気づくことは稀だと思う−出てきた相手が悪過ぎるし、昨日井上と住宅街に迷い込んで歩いたことがあって、記憶の彼方此方に感染してしまったような感じだ。
 俺はまだ醒めない悪夢を頭から跳ね飛ばすように何度も首を横に振る。放っておいたら何時まででもついて回りそうな気がしたからだ。

「本当に・・・大丈夫ですか?」
「ああ、そのうち忘れるから。それより・・・井上はどうして此処に?」
「安藤さんがまだ起きてなかったらそろそろ起こそうかな、って思って。今、潤子さんが朝御飯の支度してますから。」
「・・・起きたら朝御飯が待ってる生活がどんなに楽か、今日改めて思い知った。」
「私もそうですよ。でも、二人で交代するだけでも結構楽になると思うんですけどね。」

 そりゃ負担は半分になるからな、と言おうとしたところでふと思う。何だか一緒に住まないか、と暗に誘っているような台詞じゃないか?現に今の井上の目はそう言っているように見える。
 こういう目で見詰められると回答に困る。以前なら何言ってるんだ、とか邪険に扱えば終わりだが今はそんな気はしないし、そんな訳にはいかない。

雨上がりの午後 第283回

written by Moonstone

「かなり顔色が悪いですよ。」
「・・・自分じゃ分からないけど・・・そう見える?」
「見えるも何も・・・真っ青ですよ。余程嫌な夢だったんですね?」
「・・・ちょっと、な。」

2000/8/8

ご来場者56000人突破です!(歓喜)

 ・・・何でしょう、この早さは(^^;)。掲示板JewelBoxでのご報告で知ったのですが、これまで更新時に確認がてら見てきたカウンタの推移からして、更新した8/6の1日で約500人のご来場者があったという計算になります。やっぱり第1SSグループの影響でしょうか?

[最近、音楽を聞いてないな・・・]
 連載で自分の趣味丸出しにしておいて、こんなことをお話するのも変な感じなのですが(汗)、実際、この1年以上音楽CDを買った記憶がありません。その上、ここ数ヶ月、音楽を聞こうと思って聞いた記憶がありません(爆)。
 ラジオからはメジャーな曲を中心に殆ど何かの音楽が流れてくるんですが、その殆どは趣味に合わないので聞き流してます。でも、メロディの音とかコード進行とかについ耳が向くのはもはや条件反射です(^^;)。
 思えば精神状態が悪くなって作品製作がさらに遅くなり始めたのは、音楽を聴かなくなったのとほぼ同じ時期なんですよね。逆に考えれば音楽を聴かなくなるほど心の余裕がなくなって、それが今の病状を招くことになったのかも・・・。
 以前は1日1回くらいは音楽を聴いてましたし、音楽を流しながら作品製作をすることも多かったです。それが今では完全無音状態が当たり前になってます。予兆はかなり前から出ていたということなんでしょうね。第1SSグループの連載ではないですが、一番分かっていそうで実は分からないのは自分自身なのかもしれません。
 全力で走れば簡単に追いつけそうな気がするし、実際走って追いつくには短すぎるような距離だが、どうしても足が動かない。俺の足が優子の歩調に合わせて動いているような感じだ。
 それにこの街は変だ。俺と優子以外に人の気配が全く感じられない。それどころか子どもの歓声や車の走行音も聞こえない。一体、この街は何処だ?否、そんなことより優子は何処へ行こうとしてるんだ?

「待てってば。優子。」
「追いついてみれば?追いついたら教えてあげる。」
「くそっ・・・。」

 俺は懸命に走るが、優子とは付かず離れずの距離を短くすることも、そして長くすることも出来ない。何だか俺と優子の間に見えない壁が出来ているか、虚像を追っているかどちらかのように思える。街の景色は変化してはいくが、色はモノクロのままだ。
 優子は何処へ行こうとしてるんだ?優子は何処まで行くつもりなんだ?俺は優子に永遠に追いつけないのか?待ってくれ、優子、待ってくれ・・・。

 次の瞬間、ぱっと視界が変わる。起き上がって周囲を見回す。何度か見回すがそれは俺が寝泊りしている部屋に間違いない。カーテンは既に明るく輝いている。枕元に置いておいた腕時計を見ると、8時を過ぎている。
 あのモノクロ世界での優子の追跡が−追いかけっことは言わない−夢だったと分かると、安堵と同時に嫌悪感が湧き上がる。この期に及んでまだあの女のことを夢に見るなんて・・・。もういい加減にして欲しい。俺は立てた膝に肘を乗せ、広げた手に額を乗せて目をぐっと閉じる。今日は朝から嫌な気分だ・・・。

「・・・安藤・・・さん?」

 不意に声がかかる。顔を上げて声の方を見ると、井上が半分ほど開けたドアから不安そうに俺を見ている。そして不安の色をさらに増して俺の傍に駆け寄ってくる。

「どうしたんですか?具合悪いんだったら薬とか貰ってきますけど・・・。」
「いや、違う・・・。夢見が悪かっただけ・・・。」

 俺は無理に微笑を作って首を横に振る。井上に無用な心配をかけたくないという一心が俺にそうさせる。

雨上がりの午後 第282回

written by Moonstone

「待ってくれ、何処へ行くんだよ。」
「知らない。ついて来れば分かるかもね。」
「ついて来ればって・・・。」

 俺は優子の後を追う。優子は俺から付かず離れずの距離を巧みに保ちながら見知らぬモノクロの街の中を小走りで進んでいく。

2000/8/7

[今度は寝過ぎ(爆)]
 土曜日の花火鑑賞が立ちっぱなしだったことでさすがに疲れが溜まったので、定期更新を終えて直ぐに薬を飲んでとっとと寝ました。0時過ぎでしたかね。
 そうしたら途中9時に目覚ましで一度起きましたが過ぎに止めて寝たので、目覚めたのは昼前。その後も今日の更新の準備を多少しましたが、昼間は殆ど横になってました。体力そのものが低下しているのもありますけど疲れの蓄積が限界に達すると、なかなか抜けないんですよ(^^;)。
 第1写真グループの小テーマの短文も日本語は殆ど出来ましたが、英訳が手付かずです。少なくともシャットダウンまでにはどうにかしたいんですが・・・。

[CCさくら最終巻]
 土曜日にようやく手に入れた(近くに親子連れが居て取り辛かった(^^;))CCさくらの最終巻(12巻)。我が愛しの歌帆が出てきたのは嬉しいんですけど・・・大凡予想はしてましたがよりによってあのキザったらしい小僧とラブラブになったんかぁ(T-T)
 まあ、歌帆が幸せになることそのものは良いんですけどね。歌帆と手を取り合ったり、至近距離から見詰め合ったりできるとっても羨ましい立場にあの小僧が就くとは・・・ねぇ。即刻私と代われというのが率直な気持ちです(爆)。ラストは別として、そこが一番引っかかる終わり方でした。やっぱり歌帆萌えの私は3、4巻あたりを見て転がってるのが無難ですな(笑)。
 俺は小声で潤子さんに抗議する。井上がもう寝ているかもしれないと思うと無意識にそうなる。井上も疲れているだろうし、寝ているところを起こされたら迷惑なことくらい分かってるつもりだ。

「あら、この静かな廊下で普通の声で何か話してたら、ドア越しでも十分聞こえるわよ。テレビとか点けてなければね。」
「・・・。」
「やっぱりこの際、ストレートに言った方が良いんじゃない?その方が女の子としては嬉しさが増すと思うけど。」
「・・・そうですか?」
「私の考えだけどね。好きだって言われて嬉しいのは男の子の側だって同じでしょ?」
「それは・・・確かに。」

 からかうかと思ったら一転アドバイスをする潤子さん。少し意外にも思えるが、気にかけてくれているんだろうか?

「イブの日とか、クリスマスの夜っていうのも狙い目かもね。まあ、何にしても事前の心構えはしっかりね。」
「は、はい。・・・お休みなさい。」
「お休みなさい。」

 俺は部屋へ戻って暖房のスイッチを切って布団に潜る。ひんやりとした感覚が暖まるのを待つ間、潤子さんのアドバイスを反芻する。ストレートに気持ちを伝えること、事前の心構え・・・。今日の俺にはどれも欠けていたことだ。ただ盛り上がった気持ちの勢いだけで井上が気付くようにさり気なく言おうとして、結局心配していると言うことだけしか伝わらなかった。
 ただでさえ不器用な俺が、相手が気付くようにさり気なく言おうとすること自体、無謀というか身の程知らずだったといえばそうだ。井上もそうだし・・・あの女も面と向かって言った。気持ちを伝えるには・・・やっぱり・・・シンプルに飾り気ない言葉の方が良いんだろうか・・・。
 ・・・布団が自分と一体になってきたような感触と共に、眠気が急速に増してくる・・・。もう・・・考えるのも・・・ままならなくなって・・・

Fade out...

雨上がりの午後 第281回

written by Moonstone

 潤子さん、聞いてたのか?!俺が風呂に入る前の井上とのやり取りを。そう思うと全身がかあっと熱くなる。風呂に入っていたときとは全然違う熱さだ。

「盗み聞きするなんてずるいですよ。」

2000/8/6

[はは、殆どまともに寝てないや(汗)]
 金曜の夜に居眠りをしてから以後、延々と何度か休憩を挟みながらPCの前に座り、ひたすらキーボードを叩き続けていました(^^;)。その内の殆どの時間は「魂の降る里」執筆に費やされたんじゃないでしょうかねぇ。前回さくらのグループ(第2SSグループ)をアップしたので、このままだと置き忘れてしまうというある種の危機感のようなものがありましたから。
 どうにか完成してアップできるようにしたところで、またしても広報紙の編集が手付かず状態なことに気付く(大汗)。やっぱり健全な生活を送っていると更新準備が週末に集中するのでなかなかグループ以外に手が回らないです(汗)。来週末はシャットダウンだし・・・。書くべきことは山とあるのに・・・。自分の不甲斐なさに溜息しかないです。

[花火、見てきました]
 またか、と思われるでしょうね(^^;)。撮影も兼ねて行ってきました。今度は近場なので時間的には十分余裕もあって、場所も原則予約(当日でも可ですけど人数把握のため)なので混雑しているとはいえ余裕がありました。でも、今度は前回と違って立ちっぱなしだったんです(汗)。お陰で足が痛いです。体力的にも辛いかったですが、立ってないと見辛いし肝心の撮影が殆ど出来ないので仕方なかったんです。
 で、今回も前回と同じくらい(約150枚)撮影したんですが・・・今回は距離がやや遠いのもあって難しかったです。花火の派手さでは前回を上回るものなんですが、上手く撮れているかというとタイミングとかの関係でそれはどうやら・・・(まだ確認してない)。それより肝心の小テーマ毎の短文が、このお話をしている時点でまだ出来てなかったりして(爆)。どうすんだよ、まったく・・・(- -;)。
「それは安藤さんも同じですよ。マスターも潤子さんも・・・誰一人欠けても駄目なんですから。」
「・・・そうだな。」

 そりゃ確かにそうなんだけど・・・井上が風邪をひくのと井上以外が風邪をひくのとでは俺の中での重みが違う。マスターや潤子さんがどうでも良いと言う訳では決してないが、井上が心配だったと言うことが上手く伝わらないのがもどかしい。

「・・・それじゃ、お休みなさい。」
「・・・あ、あの・・・。」
「何か?」
「・・・風邪、ひかないようにな。」
「ええ。心配してくれて嬉しいです、凄く・・・。」

 井上はその言葉どおり嬉しそうに微笑んで向きを変えて部屋へ向かう。心配していたことは伝わったみたいだが・・・やっぱり特別な気持ちは遠まわしじゃ伝わらないか・・・。言うべきことをスパッと言えれば良いんだが、そんな勇気が整わないまま、気持ちの盛り上がりだけで伝えようとしたことが間違いだったか・・・。
 今更あれこれ気付いたところでもう遅い。風呂の順番もあるし、これ以上長時間井上を寒い廊下に引き止めるわけにはいかない。風邪をひくのを心配していながら俺が風邪をひかせたらそれこそ犯罪同然だ。
 俺は溜息混じりに階段を下りていく。もどかしさがひととき忘れていた疲れをどっと噴き出させる。腕が重く、足がだるい。兎に角今はゆっくり風呂に浸かって休もう・・・。

 風呂から上がってきてマスターと潤子さんの部屋のドアをノックする。すると程なく潤子さんが顔を出す。

「お風呂空きました・・・。」
「・・・何だか随分疲れたみたいね。」
「ええ、ちょっと・・・。」

 風呂に浸かってはっきりしない自分について考えていたら益々疲れが噴き出してきて、身体はさっぱりしたが心はぐったりしたままだ。こういうときに限ってすんなり表に出るから困ったものだ・・・。

「はっきり言えれば良いんだけど、それがなかなか難しいのよねぇ。いざってなるとやっぱり相手に先に気付いて欲しいって思うから。」
「・・・?!」
「まあ、今日はドクターストップってところね。ゆっくり休んで体力気力が充実してからでも遅くないんじゃない?」

雨上がりの午後 第280回

written by Moonstone

 声の掠れも殆ど無くなっている。潤子さんの用意したミルクが効いたんだろうか?或いは風呂場で湿気を吸い込んだことが良かったのかもしれないが、何にせよ大事に至らなかったようでほっとする。

「良かった・・・。暖かくしてゆっくり休んでくれよ。今、井上が風邪ひいたら洒落にならないから。」

2000/8/5

[久しぶりに居眠り(^^;)]
 最近は薬の力もあってか、かなり健全な生活(眠気との格闘は別)を送っていたのですが、昨日は作品製作が長引いて、それから薬を使って寝たので後を引いたようです(^^;)。それに昼過ぎからバタバタと慌しくなってもうぐったり。
 帰宅して食事して、更新準備のためにPCを起動してちょいと遊んで(こら)、眠いなぁと思って横になったが最後、薬を使わないで連続で寝られる限界時間である3時間、しっかり寝てしまいました(爆)。明日定期更新だってのに全然準備できてないし、土曜日は出掛ける用事があるし・・・定期更新はコミケ後にするべきだったか、と今更後悔(汗)。でも、ぶち上げてしまった以上、出来るところまでやります、はい。

[新しいお金]
 2000円札に新500円硬貨。新しく出回り始めたお金が昨日、たまたま手に入りました。その時にははっきり見てなかったので、今改めて見てみると・・・こんなもの発行する理由あるのか?と思うこと頻り。
 500円硬貨は大きさ以外100円硬貨と手で触った区別がつかないし・・・無駄遣いの典型ですな、これは。2000円札はあの宴会サミットの舞台を片面にして印象深げにしようとしたんでしょうが、そんな金があるなら雇用振興とか公的融資(銀行お助けじゃなくて中小企業の)に回した方が余程有効だと思うんですが・・・。
 マスコミは何でそういうことに目を向けないのかって、所詮奴等は「報道の自由」という絶対権力を手にして言葉遊びに明け暮れる暇人の集団ですから、気付かないのも無理ないでしょうけど。

「・・・な、何じっと見てるんですか?!」
「あ、私達に構わなくて良いから続けて頂戴。」
「そうそう。映画みたいなシーンを見せてくれよ。」
「あ、あの・・・何か勘違いしてません?」
「え?そうじゃないの?」
「違いますよ!」

 まったくこの夫婦は・・・。俺は懸命に否定するが、多分また顔色には出てるんだろうな。井上の喉の具合を気にかけていたら、好奇たっぷりの視線が二つ控えていることをすっかり忘れていた。
 でも、実際問題として井上の喉は気がかりだ。声も多少掠れていたように思う。さっき俺が口にした言葉は本心そのままだ。コンサートの本番も近い今、井上が喉を壊したらプログラムそのものを大幅に縮小せざるを得ないだろう。それだけヴォーカルとしての井上の存在は不可欠なものになっている。
 ・・・さすがにこの場で口にするのは憚られるが、俺自身にとっても同じだ。井上がヴォーカルとして一歩を踏み出した頃から「パートナー」として、「教える側」として−そんな大層なレベルじゃないが−ずっと行動を共にしてきた存在だ。それがそっくり抜け落ちたら・・・演奏曲が減ってラッキー、だなんてとても思えない。

・・・言うならやっぱり・・・今日か・・・?
気持ちの持ち上がっている今日言わなかったら・・・何時言えるんだ?

 音合わせは井上の喉の具合もあって、そのまま終了となった。潤子さんが温い牛乳を用意して井上に飲ませた。何でも痛めた喉には良いらしい。
 風呂は昨日と同じく、井上からということになった。否、自然にそうなったと言った方が良い。兎に角井上の具合が気がかりだ。この時期喉を痛めて、そこに疲労が重なって風邪をひく、なんてことも十分有り得る。そうなったら・・・洒落にならない。
 エアコンのスイッチを入れて自分の部屋で待つこと暫し。ドアがノックされた。俺は着替えだの何だのを抱えてすぐさまドアを開ける。風呂上りの井上がそこに立っていた。音合わせを終えた後の横顔に似た艶っぽさがたっぷり滲んでいる。特にその整った形の唇に・・・。

「お風呂、空きましたよ。」
「・・・喉、大丈夫か?」
「ええ。かなり楽になりました。」

雨上がりの午後 第279回

written by Moonstone

 辺りを見回すと、マスターがサックスを片手に、潤子さんがピアノの向こうから俺と井上をじっと見詰めている。明らかにその視線は何かを期待している。
 妙な沈黙が俺の身体の熱気を急激に冷ましていく。それに反比例して別の熱気が急上昇してくる。

2000/8/4

 暑中お見舞い申し上げます(_ _)。いやあ、今日は目茶目茶暑かったです。仕事場は冷房が控えめながらも効いているので過ごしやすいのですが(実は冷房に弱い私が密かに設定温度を上げたんですよ(爆))、外へ出ると猛烈な熱気が堪えます、はい。
 多少回復してきたとはいえ、まだ体力が完全ではない私には強烈過ぎますよ(汗)。まだまだ暑い日が続くらしいですが、水不足が心配ですね。梅雨にあまり纏まった雨が降らなかったですから・・・。

[CGI計画]
 以前お話したCGIが徐々に形になってきました。このコーナーの更新の他に、未だ発送できない「水無月便り」のMIDIや定期更新に向けての作品製作に追われてなかなか進まないでいたのですが、ようやく項目の表示が出来るまで進みました(^^;)。
 今回作っているのは判定もの。有名なところでは「家電占い」とか「寿司占い」とかに見られるもので、設問に答えてその結果を判定するというタイプのものです。内容は・・・第2SSグループ、即ちCCさくらの内容に基づいて萌える女性キャラを判定するというものです。

 メールフォーム「Shooting Star」はプログラムそのものに梃子摺りましたが、今回はまず設問の内容に梃子摺っています(笑)。基本的に「お遊び」的な位置付けのものですが何分私自身がそういう雰囲気になかなか馴染めない方なので、設問の内容が固くならないようにいろいろ考えています。
 あと、判定のプログラムはそれほど難しいものではないのですが、判定の基準が難しいですね。どの設問にどう答えたら誰になるか・・・これまた悩みの種です。でも、プログラムの楽しさはこうして仕様を考えているときとそれが形になっていくときなんじゃないかな、と思います。デバッグは地獄ですけどね(爆)。

「これくらいで良いかな?」

 3回目の「COME AND GO WITH ME」の音合わせが終わってマスターが言ったときには、時計の針はとっくに午前0時を回っていた。空調が効いている中で緊張感たっぷりの演奏をしたから、もう汗だくだ。
 この熱さでセーターなんて着てられない。とっくに脱いでしまって今座っている椅子の背凭れにかけてあるし、下に着ていたシャツも袖を肘のところまで捲っている。捲るといっても井上みたいに袖口の幅に合わせて丁寧に折り曲げるというものじゃなくて、乱暴に引っ張りあげただけのようなものだが。
 井上の頬はすっかり上気して赤みを帯び、そこに照明を浴びて輝く汗の湿り気を含んだ髪が少しばかり張り付いている。早く小さく肩で息をする様子が妙に艶かしい・・・。
 見詰めたままだと変なこと考えてしまいそうだ。視線を素早く井上から逸らして、疲れきった体に食い込むストラップから身体を抜く。身軽にはなったが、逆に疲れがどっと出てきたように感じる。

「良いと思いますよ・・・。俺が聞いていた限り、気になる部分は特になかったですし。」
「じゃあ、これで終わりにするか。本番さながらだったから皆疲れただろう。」 「さすがに熱いわ・・・。当日はお客さんも居ることだし、空調を控えめにした方が良いかもね。」
「そうだな・・・。」
「体力勝負ですね、コンサートって・・・。」
「そうなんだよ。普段のリクエストより曲数も多いし、それもフル稼働だからね。腕は別としてコンサートは兎に角体力が第一だよ。」
「晶子ちゃん、喉は大丈夫?」
「さすがに・・・ちょっと痛いですね。」

 井上は喉に手をやって小さく何度か咳をする。クリスマスソングには歌がつき物だし、他にも手持ちのレパートリーやセッション曲もある。井上は自分そのものが楽器だから、その疲れ方は俺やマスターや潤子さんの者とは質が違うだろう。

「大丈夫か?井上。」
「え、ええ・・・。」
「無理すんなよ。井上の楽器は井上自身なんだ。壊れたら修理に出して治す、なんて簡単にはいかないんだぞ。」
「・・・はい。」

 小さく頷く井上の顔はまだ赤い。だが、ちょっと赤みが増したようにも思うのは気のせいか?・・・それより何だか二つの強い視線を感じる。

雨上がりの午後 第278回

written by Moonstone

 そんな騒動の後の音合わせは、一転して真剣かつ入念に進められた。今日が泊り込みの最終日だから、事実上4人揃って音合わせができるのはこれが最後になる。熱が入って当然というものだ。
 予定されたプログラムにしたがってクリスマスの定番ソングを交えながらそれぞれのソロ曲とセッションする曲を順番にこなしていった。中でもセッションする曲のうち、コンサートで初めて披露する曲は本番並みの緊張感が漂っていた。

2000/8/3

ご来場者55000人突破です!(歓喜)

 ・・・やっぱり明らかに客足が鈍ってますね〜。学生さん@学校からネットの数が多いということの証明なんでしょうか?「無料で遊び放題なんて」などとは言いません。むしろ時間に余裕のある今のうちに、情報の取捨選択とそこからの判断力を身につける訓練の一つとして、積極的に繋いであちこち見て回った方が良いと思います。
[これは洒落にならんことですよ!!]
 一部の新聞やテレビ、雑誌が報道した、興信所への個人情報の流出。これは明らかに警察が関与していると考えて間違いありません。何故なら報道済みのようにその会社の社長は警察OBでその人脈を会社のWebページで誇らしげに宣伝していることに加え、戸籍、住所の他に訴訟関連の情報や犯罪歴の調査結果など、警察しか知りえないような情報があるからです。
 権力志向のマスコミはだんまりを決め込んでるようですが、こういうのはもはや権力べったりでジャーナリズムの神経が麻痺した輩の集団です。こんな新聞や雑誌は読んではいけませんし、そのテレビ局の番組のスポンサーになっている企業の商品は買ってはいけません。それくらいの毅然たる対処が民主主義社会の担い手たる一般市民には必要なんです。

 それに、警察内部の情報がこうも安易に漏れ出したという事実。これは洒落になりません。神奈川県警の警官が犯罪被害者の情報をネタに脅迫しようとした事実、再三被害を訴えながらまともに対応しない怠慢、これらをまともに処分できない無責任。こんな警察が8月15日から犯罪に関係すると自分たちが見なせば電話やFAXは勿論、Eメールなども無制限に盗聴できるようになるんですよ!自民、公明、自由の三党が数の力で成立させた盗聴法案によって!
 これは犯罪をしてなければ関係ない、では済まされません。友人に疑いがかかれば(決めるのはあくまで警察です!)その友人への電話やEメールも盗聴の対象になり、それをネタに警官が脅迫してくるかもしれない、そしてそれを訴えても対応しようとしない、そんな社会になったらどうしますか?

「ほお〜。祐司君もなかなか紳士的なところがあるんだな。」

 マスターの関心は俺が井上にしたことに−手を繋いだなんてことは一言も言ってない−移ったようだ。

「そういうのをさりげなくされると、女の子はぐっと来るのよね?晶子ちゃん。」
「あれは・・・本当に嬉しかったです。心配してくれてるんだって思えて・・・。」
「おおっ、大幅にポイントアップだな、祐司君。」

 ・・・関心が向いたのはマスターだけに留まらなかったか。俺の両側でそんな会話をされると・・・照れくさいやら恥ずかしいやら・・・。俺は右も左も向けなくて、無言でカップの中にある黒に近い茶褐色の液体の表面を見るくらいしか出来ない。

「祐司君。頬っぺたどころか、耳まで紅くなってるぞ。」
「え?!まさか。」
「まさかも何も・・・何なら鏡見てみる?」
「・・・いや、いいです。」

 しまった。表面上冷静を装っていたつもりだが、見事に顔色に出てしまったか・・・。本当に俺って奴は不器用な人間だ。改めて実感させられる。

「そ、それより、音合わせしましょうよ。」
「おっ、照れ隠しに話をそっちへ逸らすか?」
「マスター・・・!」
「そうね。先に音合わせした方が良いかしら。話は後でゆっくり聞けることだし。」
「潤子さんまで・・・。」

 夫婦でちくちくと俺を突いて遊んでる。完全に玩具にされてる。だが、不思議と怒りとかそういう感情は全く湧き上がってこない。あの女と出くわしたときとは正反対だ。
 ・・・こんな感じ、かつてあったな・・・。ああ、そうだ。高校の時、あの女、優子と付き合っていたときだ・・・。休みの日にデートしてたところを同級生のグループに見られて、翌日それをネタにクラス中から散々冷やかされたときだ。バンドのメンバーに突かれたときとか、優子の友人に二人一緒に冷やかされたときとか・・・。
 その感情と同じだってことは・・・俺が今、井上に対して抱いている感情は・・・あの時の優子に対する感情と同じだと確信するに十分な材料なんじゃないか?

ならば・・・もう迷うことはない筈だ。
あの告白に対する返事を・・・言うなら、今だ・・・。

雨上がりの午後 第277回

written by Moonstone

 俺は映画の内容や出来具合より、井上と暗闇の中でしっかり手を握り合っていたことや、公衆の面前で泣きつかれたことの方がずっと鮮明に脳裏に焼き付いている。まあ、出来事があまりに強烈だったから当然といえば当然なんだが。

2000/8/2

[またやられたぁ・・・(- -;)]
 今の仕事で制御用プログラムを作っているのですが、発覚してから2週間近く解決しなかった厄介な問題が呆気なく解決しました。実質たった1行の追加で(爆)。ああ、良かったぁという安堵の気持ちより、これだけのことで何で、という苦悩とそれが分からなかった自分に対する怒りの気持ちの方が強いです。
 当然ながら解決に至るまでに何回もの試行錯誤があったわけですが、それが失敗する度にズキズキ痛んだんですよ、胸が。痛む理由は勿論、現在治療中の病気のせいなんですが、それを自宅などで思い出すだけでも痛むことがありました(汗)。否、これをお話する過程で思い出しただけでも痛みました(大汗)。

 考えなきゃ良いのに、と言われれば確かにそのとおりなのですが、仕事と離れていてもその時点での問題点の対策を考えてしまうんですよ。もはや無意識のレベルで(^^;)。こういう性格だから神経症になったりするんでしょうね。病院で貰ったパンフレットを見て、一部を除いて自分のことをそのまま書かれているような気がしたくらいですから(爆)。
 そのパンフレットには対策というか心構えが書いてあるのですが、なかなか実践するのは難しいです(^^;)。特に「ゆとり」が。仕事は勿論、家事も全部一人でやってるので「ゆとり」も何も・・・という状態です。このページの更新はもはや日課なんですが、日課も家事と同レベルといえばそうかも・・・(汗)。
 それから潤子さんお手製の夕食を食べてバイトを始めて・・・。気がついたら店を閉める時間になっていた。そんな感じだ。週末の賑わいを見せていた店内も静まり返り、片付けと掃除の音が時々聞こえる程度だ。
 それが終わると全員揃って一息つく。4人並んで座るのももう何ら違和感を感じない。「FROM THE BOTTOM OF MY HEART」が控えめの音量で流れるカウンターで、それぞれに飲み物を口に運ぶ。さっきまでとは違って、まったりとした時の流れに身と心を委ねる。

「どうだった?今日のデートは。」

 マスターの不意打ちに俺は思わずコーヒーを吹き出しそうになる。昼間の練習のときにも聞かなかったのに−客が居る前ではさすがに聞かないか−、こんな落ち着いた良い雰囲気の中でそんな質問をしないで欲しい・・・。

「デ、デートって・・・。」
「私、思わず泣いちゃったんですよ・・・。終わってからも暫く立てなくて、ロビーに出てから安藤さんに泣きついたりして、迷惑かけちゃいました。」
「ほお・・・そんな感動的な映画だったのか。」
「ええ。ラストシーンが特に・・・。」

 質問に実直に答える井上でも、やっぱり昔を思い出したというようなことは言わないか・・・。そりゃ言いたくないだろう。あえだけ取り乱したくらいのことなんだから。
 俺が寝込んだとき、井上は過去を忘れられるはずがない、忘れようとすれば負担になると言った。井上はそれを実践してまた過去に苦しめられた。やっぱり過去は何が何でも振り払わなきゃ、何時までもついて回るんじゃないか、と思う。

「祐司くんはどうだった?」
「俺は・・・台詞の少ない映画だな、って思いました。」
「いや、そうじゃなくて内容の方。」
「うーん・・・。恋愛ものの割に淡々としてるな、と思ったくらいですね。」
「二人の反応が対照的だなぁ。井上さんは立てなくなるほど泣いて、祐司君は映画の内容より作品としての出来具合を見てたってことか・・・。」
「二人とも泣いてたらきっと大変なことになってたわよ。晶子ちゃんとしては特に祐司君が冷静で良かったんじゃない?」
「ええ。涙を拭いてくれたり気遣ってくれたりしてくれたんで、それが凄く嬉しかったです・・・。」

雨上がりの午後 第276回

written by Moonstone

 店に戻ってからの時間は、外出していたときとは違って一気に加速度を増して瞬く間に過ぎていった。初めての昼間のステージは自分のソロ「AZURE」と井上とのペア曲「FLY ME TO THE MOON」に「THE GATES OF LOVE」、そしてマスターが飛び入り参加して「JUNGLE DANCE」と、割と閑散としていた店内は予期せぬステージに大いに沸いた。演奏の出来も自分では十分及第点を超えていたと思う。

2000/8/1

[月初め恒例の背景チェンジ!]
 ということで(笑)、今回は連日続く蒸し暑い日々をせめて気分的にでも和らげようと、花火にしてみました。当然ながら黒が多い背景になりましたが、前回が昼間だったこともあって対照的で良いんでないかな、と自己満足(^^;)。前の背景は意外に評判が良かったのですが、今回は如何でしょう?
 背景に画像を入れるとどうしても重くなるのですが、テキストの塊の如きこのページでは数少ない、画像での表現の場という位置付けになっています。季節ならでは、という写真や、これ良いなぁ、と思える写真を選べると良いんですが・・・。そんな題材を揃えるためにも写真の腕をもっと上げなければ(燃)。

[コミケ目指して何ヶ月(笑)]
 夏のコミケ(通称:夏コミ)が近付いてきたこともあって、参加される方のページではブースの案内があったり、内容のダイジェスト紹介なんてものがあったりします。実は今表示されているシャットダウン予定日は夏コミの日程そのものだったりします(爆)。ええ、行きますとも。大枚はたいていざ東京へ・・・って大袈裟(^^;)。
 そういうのを見てると、身の程知らずとは分っていても自分もコミケに出展したい!と思うものでして・・・。前には相当先だとお話したと思いますが、冬の出展を目指してみようかな〜などと思い始めています。まあ、出展するとしたら創作か版権ものかにしても小説+オリジナルサントラという感じでしょうね。
 売れる売れないを問題にしたら到底手の届かない世界でしょう。イラストがないと圧倒的に不利で、さらに創作だと初参加なら売れれば御の字とも聞いたことがあります。元が取れないのは承知の上で一度挑戦してみよう、結果は自己満足の範囲で良いんじゃないか、そう思っています。決して芳しいとはいえない今の病状で夏コミへ行くのは、今の思いが続けば申し込むつもりでもあるからです。

「てっきり『今日は泊まりで帰れません』って電話が来るかと思ってたけど。」
「な、何で・・・。」
「あの映画、カップルをその気にさせるっていうから、二人が帰ってこないと思ってマスターも接客に顔を出してるのよ。普段はあんまりやらないのに。」
「帰ってこないって・・・今日は何時ものとおりバイトがあるから・・・。」
「事前に電話一本きちんと入れてくれれば、お休みってことにするから安心してね。」
「安心って・・・。」

 何だか先走ってるというか・・・妙に期待してないか?俺と井上がくっついたとしても、潤子さんにメリットは特にないと思うんだが・・・。単なる好奇心か、それとも恋愛の−特に井上サイドとしての−指南役としても思惑なんだろうか?

「まだバイトまでには時間があるから、ステージ使って練習しても良いわよ。少しだけどお客さんも居るし、リハーサルには丁度良いんじゃない?疲れてるなら部屋で休んでても良いし・・・。」
「良いんですか?」
「良いも何も・・・ステージに上がる人が練習するのを咎める理由なんてないじゃない?」

 潤子さんは随分あっけらかんと言う。バイトの人間とはいえ言わば時間外利用になるというのに・・・。

「但し・・・演奏のギャラは無しよ。」
「・・・分ってますよ。」
「どうせやるんだったら、リハーサルでも良い演奏聞かせてね。」

 潤子さんは微笑んでウインクする。こういう仕草が本当に嫌味なく様になる女性だ。久しぶりの映画に加えて走ったり歩いたりでちょっと疲れてはいるが、バイトが始まるまでの時間を遊ばせるのは惜しい。コンサートはもう間近に迫ってるんだから・・・。

「俺、やります。」
「あ、私も。」
「丁度良いわね。二人ペアでやる曲も聞かせてくれると嬉しいんだけど。」
「リクエストにお答えします。良いだろ?井上。」

 井上は小さく頷く。その顔には柔らかくて心の底から嬉しそうな微笑が浮かんでいる。影を消すには・・・明るい光で全てを照らすのが一番だ。

雨上がりの午後 第275回

written by Moonstone

「「ただいま〜。」」
「あら、お帰りなさい。随分早かったわね。」

 裏口から入った俺と井上はキッチンから店に顔を出す。丁度コーヒーカップ片手に一息入れていた潤子さんが出迎える。マスターの顔は見えない。接客をしているんだろうか?特に慣れない女性客は、そのいかつい風貌に結構びびることもあるんだが・・・大丈夫なんだろうか?

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