芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2000年4月30日更新 Updated on April 30th,2000

2000/4/29

[明日からお休みです]
 1日お休みして間も無いというのに、今度は1週間ほどお休みします(^^;)。今度は療養を兼ねた帰省です。これまでとは違って今はノートPCという便利なものがあるので、やろうと思えば更新や掲示板とメールのレスも出来るでしょうが、モジュラージャックがあったかどうか覚えてませんし(実家じゃ電話なんて殆ど縁が無かった(^^;))、この機会に存分に休んで作品のストックも揃えようと思います。
 そんな訳で、1週間の間更新が完全にストップしますが、掲示板JewelBox以外の各グループは通常どおり営業しますし、メールは常時受け付けております(笑)。断末魔・・・もとい(汗)、追い込みで多少なりとも更新しましたので、感想などよろしくお願いします(_ _)。

[まだまだ続きます(溜め息)]
 テレビとかだと「まだまだ続きます」は「間もなく終わります」と等価ですが、私の場合は文字どおりまだまだ続きます(汗)。続くのは勿論胸部の痛みと通院。金曜日に病院に行ったのですが、結局医者も首を捻るばかりで病名を特定できず、診察対象を心臓以外にも広げて徹底的に検査したりすることになりました。
 今度CTスキャン(あの自分の身体の輪切りが見れるやつ(笑))も撮ります。一度肺炎を患っているので、その残骸が悪さをしているかもしれないとか・・・。
 しかし、まあ、あまり気にしないことですねと言われましたが・・・

気にしたくなくても気になるから、こっちは参ってるんだ!(激怒)

 ・・・失礼(汗)。やっぱり痛みってものは他人には理解し難いものなんだな、とつくづく思います。この1週間で治ってくれればそれで良いんですが・・・。

それでは、5/7の定期更新で再びお目にかかりましょう!(^o^)/

 店を出てからめっきり口数が少なくなった井上が不意に問い掛けてくる。此処から近い本屋というと、俺が雑誌を買うのによく行く本屋だ。雑誌はこの前買ったばかりだし、特別行く用事はない。
 だが、俺の顔をじっと見る井上の視線が行きたい、と強く訴えかけているように感じられてならない。井上は目で訴えるのが本当に上手い。二人とも一人暮らしだし、門限なんて自分次第だから別に家路を急ぐ必要はない。

「・・・行くか。」
「ええ。」

 井上は嬉しそうに頷く。感情がそのまま顔に出るのも井上らしい。その手は俺のコートの袖を掴んだままだ。それが当たり前のようになっている。そしてそれに何も違和感を覚えない俺がいる。

 夜になっても本屋の賑わいは変わらない。否、むしろより盛況かもしれない。家ですることがないのかどうか知らないが、本屋には何時でも客が居るものだ。買う買わないは別として。
 俺と井上は適当に店内を回る。このくらいの時間帯の客層は男一人が多くて、俺と井上のように男女二人連れというのはかなり目立つ。俺の方に向けられた視線が心なしかちくちくと気になる。多分その最大の要因は・・・未だコートの袖から井上の手が離れていないせいだろう。

「?どうしたんですか?」
「いや、ちょっとな・・・。」

 井上に尋ねられて俺は曖昧に答える。羨望と嫉妬の視線を感じるなんて勘違い男の言い草みたいだし、話題には似つかわしくない。

「安藤さんはこういうの、あんまり好きじゃないんですか?」
「こういうのって・・・?」
「今、私がやってるようなこと。」
「・・・慣れてないんだ。あんまり・・・やったことない。」
「前の彼女とも?」
「・・・人前であんまりくっつく方じゃなかった。学校だと何かとからかわれるし。」
「嫌じゃないんですね?」
「それは・・・ない。」

 嫌だったらとっくに払い除けてるだろう。もう、こうして袖を掴まれることに俺はすっかり馴染んでいる。しかし、前の彼女、という言葉が出てきたときはちょっとどきっとした。しかもその問いに答えるなんて、俺自身驚いている。

雨上がりの午後 第192回

written by Moonstone

 俺と井上は並んで夜道を歩く。何時も使う改札口の側に出て歩き慣れた道を辿って行く。当然、自転車より時間はかかるが、このまま歩けば何れは俺の家に着く。俺を泊り込んで看病するために井上が荷物を置いたままだから、それを取りに一旦俺の家に帰ってから、井上の家まで送っていくつもりだ。

「本屋・・・寄っていきませんか?」

2000/4/28

[戻ってきました]
 また2日ほどすれば長期にお休みするのですが(^^;)。今日には病院での検査と診察が控えています。お休みの間所用で出掛けていたのですが、その間も頻繁に疼いて、最終手段として持参した心臓病用の薬(ニトログリセリン)を使ったら、一時的には治まったんです(副作用の頭痛とかがこれまた酷いですが(汗))。
 心臓病の可能性もあるといわれているだけに、薬の効果があったことは重要視しています。診察の結果次第では入院ということも考えられますが、むしろ延々と痛みに苛まれるよりその方が良いのかも知れません。でも、連休の間に作品書き溜めたいのに、退屈至極の日々になるのは嫌だなぁ(電磁波の関係で多分PCは持ち込めないでしょう)。

[リスナーの皆様にご確認頂きたいのですが]
 前々からお話しているサーバー移転のことですが、大半のファイルは移転を完了しました。移転してから今までの間に更新で変わったり増えたりした分はまだ追加していませんが。移転できるということはつまり、新サーバーにアクセスできるということです(当然か(^^;))。
 移転先は独自ドメインですので、URLがかなり短くなります。アクセスのお試し版として、あまりお目にかかることのない総代ページ(芸術創造センターのトップページではなくて、Moonstone Studioのトップページ)にアクセスできるようにしてあります。もし興味がございましたらアクセスしてみて下さい。こちらからジャンプします。芸術創造センターのURLもインデックスを移設次第このコーナーで先行して御案内致します。
 井上もその視線を感じたらしい。席を立ったときから俺のコートの袖を掴んで離そうとしなかった。それは今でもそのままだ。そして俺はもう、それを振り払うかどうかということを考えることはない。

「今日はご馳走様でした。」

 俺が支払いを済ませて揃って店を出たところで、井上が礼を言う。

「いや、良いよ。今日は俺が看病の礼に誘ったんだから。」
「でも、ご馳走になったのは変わりないですよ。」

 井上はかなり律儀なタイプだ。誘った側としてもこういうタイプだと多少自分の財布が痛んでも嫌な気はしない。こういうときは男が金を出して当然、なんて考えが結局未だに幅を利かせているから、余計そう思う。
 ・・・その一方で、毎週月曜日に井上の料理をさも当然といわんばかりに食べていた俺が居る。礼を言わなきゃならないのはむしろ俺の方だ。

「・・・今までありがとう。」
「え・・・?」
「毎回練習の度に料理食わせてもらったのに、一度も礼を言ってなかったから・・・。」
「ああ、それなら良いんですよ。何時も丁寧に教えてもらってるんですから。それより、さっきのはちょっとびっくりしました。」
「?」
「今まで、って何だか今生の別れみたいで・・・。」

 井上の表情が少し雨降り前の重みを帯びる。俺は文字どおり「今まで」の井上のもてなしに感謝したつもりで言ったんだが・・・。

「あ、そんな意味じゃない。今まで言ってなかった分の礼を言おうと思っただけだから。」
「・・・じゃあ、これでお別れじゃないんですね。」
「そんなつもりは・・・ない。」

 無意識のうちに最後の一言に力が篭る。これで終わりだなんて・・・俺だって御免だ。ほんの一言が言えなかったばかりに招いてしまった、本当なら必要ない筈の行き違いがどんなに辛いか、もう嫌というほど判った。ほんの一言の取り違えでも同じ事が起こり得る。言葉ってやつは本当に恐ろしい。

雨上がりの午後 第192回

written by Moonstone

 食事を終えた俺と井上は店を出る。二人分で5000円。料理の量と味に比べればお得な値段だ。食事が終わって店を出ようとした頃になると、閑散としていた店内に徐々に客が入り始めた。多分会社員だろう。スーツ姿の男性がこの店の客層らしい。知る人ぞ知る店、というタイプのようだ。
 そんな中で俺と井上は明らかに浮いているように見えた。特に井上は男性ばかりの客の中では嫌でも際立つ。客観的に見て−否、主観的に見ても−人目を引く容姿なせいか、客の視線が井上に集中しているのが俺にも判った。

2000/4/26

[明日はお休みします]
 トップページに表記していた日付が勘違いで1日ずれていましたが(汗)、明日4/27はシャットダウンとさせていただきます。厳密には夕方以降に時間をずらせば更新できると思いますが、事前通知も無しにばたばたと更新するより1日間を取った方が良いと判断しました。
 シャットダウンといっても通例どおりページそのものは営業しておりますし、レスなども順次行いますので御来場下さいませ。

[夢や希望が無いというけれど・・・]
 「今時の若者は夢が無い」「冷めている」「将来に悲観的だ」・・・こんな論調が目立ちます。そして次には「若者らしく夢を持て」などと来るわけですが、今の社会が夢を持ったり将来に希望を持てるような大層なものじゃないということをまるで判っていません。幼い頃から常に勝者と敗者の色分けがなされ、真面目に働いてきた労働者が「リストラ」の横文字(横文字を使うなという人間が使っている!)で切り捨てられ、賭博感覚で一攫千金を得るようなことが重宝される・・・こんな真面目に生きるほど馬鹿を見るような社会で悲観的になるなという方が無理な話です。
 今盛んに言われている規制緩和万能、自由競争万能は一握りの勝者の表正代を作る為に無数の死骸が必要だと言っているのと同じです。アメリカはそれをやったが故に貧富の二極化が進み、それが犯罪大国の要因となっていることから、評論家やマスコミは目を逸らそうとしています。ここでもやはり建前と本音があるのです。
 これは外食の目的が生活の一部としての必要条件か−人間食わなきゃ生きていけない−、自炊より割増な値段と引き換えにより良い味を求めるか、それともファッション感覚でお洒落な気分を味わいたいかによって決まる。俺の普段の食事は一番目の目的の為だが、今日は二番目だ。
 潤子さんと一緒にキッチンを切り盛りできる腕を持つ井上を誘ってきたわけだから、井上の作り出すそれと同等以上の味でないと、これなら何時もどおり井上の家で食事を食べた方が良かった、というみっともないことになる。

「美味しいですね、ここの料理。」
「ああ、本当に美味いな。」

 井上が目を輝かせて言う。俺は料理を口に運びながら相槌を打つ。雰囲気の演出なんか何処吹く風。何時もの月曜夜の団欒をもう少し賑やかにしたくらいだ。。
 智一の話からも今日お世辞にもお洒落とはいえないこの店に入ることをあっさりOKしたことからも、井上は3番目の目的、つまり洒落た雰囲気を味わいたがるタイプじゃないようだ。だから、料理の味が思いのほか良かったのは俺にも井上にも都合が良かったわけだ。

 考えてみると、俺と井上は彼氏だ彼女だと立場を意識し合うような関係じゃないように思う。勿論、井上は明らかに俺を異性として好きだと言ったんだろうし、気持ちが掴み切れていない俺にしても、井上が他の道行く女や大学に居る女よりずっと特別な存在であることはもう疑いようの無い事実だ。
 だが、構えたり出方を伺ったりするような、異性関係にありがちな駆け引きとは縁遠い。他愛も無い話をしたり共通項の音楽を嗜んだり、こうした界隈の店で一緒に食事をしたりと、肩肘張らずに気兼ねなく付き合える存在に思える。

 これが本当に好きだという気持ちなのか、或いは恋愛の意味で好きなのか友情の意味で好きなのか、俺にはまだ判らない。唯一つ今の俺がはっきり望んでいると言えることは・・・

この関係を失いたくない、ということだ。

 そして・・・俺が井上の告白に言葉を返すとき・・・この関係がどうなるんだろう?
何れ返事をすると約束はした。だがもしどんな返事をするにしても、この関係が壊れるようなら・・・返事をしないままで居るべきなのかもしれない。
 だが、返事をしなければこの関係が続くかといえば、そんな保証は何処にも無い。それに待ちきれななくなった井上は別の男の元に走るかもしれない。

このままで居ることは・・・許されないんだろうか?

雨上がりの午後 第190回

written by Moonstone

 暫くして断続的に料理が運ばれてきた。どれも大皿に盛り付けされている形なので、同時に運ばれてきた食器で適時分け合いながら食べ進めていくことになる。問題の味の方は・・・こう言っちゃ店に失礼だが、予想以上に美味い。最初に運ばれてきたスープから既に、その辺の店を凌駕している。これは思わぬ掘り出し物だ。
 その店に入ろうと思うかどうかの判断基準はやっぱり見た目に拠るところが大きい。料理は食べてみなきゃ分からないが、建物や窓から見える調度品が綺麗ならちょっと入ってみようか、という気分になるものだろう。だから、デートのときの食事場所がマニュアルなんて形で紹介されるわけだ。

2000/4/25

御来場者41000人突破です!(歓喜)

 昨日はお話に夢中ですっかり忘れてました(爆)。コンスタントに増えていることに安住しちゃいけないのですが。この病床(?)の身には嬉しい限りです。それでは今日のお話を始めましょう・・・。
[眠れない夜に・・・]
 前々からお話してますように、私は原因不明の胸部の痛み(位置は心臓付近)を抱えていて、厄介なことに朝晩必ず痛むので本来寝るべき時間に寝られない状態がかれこれ一月近く続いています。それでも職場には朝決まった時間に入りますから、疲労は当然蓄積します。帰宅して夕食を作って食べると、そこで疲労がどかっと出て2、3時間気絶するように眠る(危ない^^;)。で、夜寝られなくて・・・と悪循環になっています。
 今までは酒を睡眠薬代りにしていましたが、痛みが心臓病の可能性もあってそれ用の薬を処方されている今は事実上不可能です(心臓病にアルコールは厳禁)。なので今は無理に寝ようとしないで、買って間も無いノートPCに向かいます。
 何をするかといえば、ここの連載や公開作品を書いたり、ゲームをしたり、公開中の自作曲や他のページからダウンロードした曲を聞いたり・・・。何かをやっていて疲れたり一段落ついたと思ったら別のことに切替えることを眠いな、と思うまで気ままに繰り返しています。そして時々、某チャットに飛び込みます(笑)。
 車の多い通りに面しているので頻繁に聞こえる車の走行音も、2:00を過ぎると殆ど無くなります。テレビもラジオも点けないので無音に近い室内で赴くままに紡がれて行く・・・その一つである連載「雨上がりの午後」はあと少しで連載200回を迎えようとしています。
 夕食時にはまだ時間が早いせいか、俺と井上の他に客は居ない。奥の調理場から調理する音が絶え間なく聞こえてくる。

「どんなところに連れてってくれるのかな、って実は期待してたんですよ。」

 井上が身を乗り出して話し始める。俺に任せるとは言ってもやはり期待していたことが分かって、益々味のほうが気になる。

「でも、高いところじゃなくて良かったです。」
「?」
「私、そういうお店に今まで縁がなかったから、テーブルマナーとかよく分からないんですよ。」
「あ、そうなのか。」
「この席で言うべきじゃないとは思うんですけど・・・一昨日伊東さんが食事に連れて行ってくれた時、物凄く高そうなお店で緊張しちゃって味が分からなかったんですよ。それでちょっと私と住んでる世界が違うな、って思ったんです。」

 智一の言ったとおりだ。少し意外な感じもするが、井上は高級な店が肌に合わないらしい。もっともそうでなけりゃ、自炊なんてやってないだろう。俺の場合は単に面倒なだけだが。

「智一にはそれが普通だ。あいつの家は裕福だから。」
「だから今日ももしそういう店だったらどうしようかなって思ったんですけど、こういう普段着で来れるようなお店だったから安心しました。」
「俺も高級料理には無縁の人間だしな。こういう店じゃないと入り辛い。」
「やっぱり同じ世界に住んでる人だと良いですね。」

 同意を求めているように聞こえる。否、語尾が若干上がり気味だったから念押ししているように聞こえなくもない。俺は溜息混じりに答える。

「まあ・・・確かにな。」

 よく考えてみれば、俺は井上を食事に誘っているんだから多少は気の利いたことを言っても良いものだ。まったく俺は素直じゃない。こんなことだから起こさなくても良い諍いを起こして、智一まで巻き込んじまうんだ。
 だが、同意が得られて嬉しいのか、井上はテーブルの上に両肘を立てて組んだ両手に顎を乗せて微笑んでいる。井上のこの顔を見ていると、あれこれ悩んでいたことが頭の中からすうっと消えていくような気がする。

雨上がりの午後 第189回

written by Moonstone

 本当は駅の反対側に出なくても、何度か行ったことのある喫茶店でも良かったのかもしれない。だが、その店は今日休みだった筈だし−飲食店は月曜休みが多い−、あの女の残像があるところへ井上を連れて行きたくなかったのがある。
 井上への礼ということで食事に誘った店で、妙にメニューに詳しかったりしてあの女との事を詮索されたくない。思い出したくないのは勿論だし、井上との食事が不味くなったら話にならない。

2000/4/24

[ちょっとお出掛け・・・]
 お出掛けといっても、このページに関係することでして(笑)。現在第1写真グループで公開中の写真集「花と木々の季節に」の次回以降公開分の候補を撮影する為です。先週出掛けるつもりだったのですが、天候不順に加えてお馴染み(?)の胸部の痛みがあって見送ったんです。幸い今週の週末は痛みが割と落着いていたので、眠気を振り切って出掛けました。
 一回の撮影は歩いて行動するので大体1時間半以上かかります。早朝を選ぶのは人や車が少なくて道路に面したところを撮影するのに邪魔が少ないからです。それに今回の撮影対象が対象だけに、何時も以上に人目が気になって撮影に集中できないと思って・・・。

 今回の撮影対象は桜が散った後に咲く花の撮影。花見はソメイヨシノが咲く時期に集中しますが、その後に八重桜など別の桜が咲きます。そして道端や土手に咲く花。前者はまだしも後者はいきなり道端で雑草にカメラを向けるので、何も知らないと変な人でしかありません(^^;)。
強い痛みや持続性の痛みに見舞われることもなく、撮影は順調に進みました。その最後の方、帰路で側溝の傍に咲いていた(笑)花を撮影していた時、見知らぬ飼い猫(首輪があったので)が「にゃ〜」と鳴きながら擦り寄ってきまして(笑)、しゃがんでいた私は撮影中だったので追い払うことも出来ず、猫の擦り擦り攻撃を受けていました(笑)
 結局その猫は猫らしく(?)気が済んだのかさっさと立ち去りましたが、外出ならではともいえる些細な、でも新鮮な出来事でした(^-^)。私が猫好きだったら、撮影対象を猫に切替えていたでしょう(爆)

「良いんですか?」

 問いかけに引き寄せられるように再び井上に視線を合わせる。心なしか目が大きく見開かれていて、驚きと嬉しさが交錯しているような表情だ。

「ん・・・今まで俺から井上に何かするってことなかったからさ・・・。」

 そう言いつつまた視線が井上から逸れていく。女を食事に誘うなんて初めてでもないというのに・・・。あの女との経験は何の役にも立ってない。

「・・・別に嫌なら・・・それで良いけど。」
「いいえ。喜んで。」

 井上の声が弾む。俺はほっとすると同時に胸にじんわりと安堵感が広がっていくのを感じる。その中には・・・まだ一緒に居られるという気持ちが嬉しさの色合いを伴って存在している・・・。

 何時も使う駅前の、線路を挟んで反対側は俺にとって未知の世界だ。月曜以外の平日の昼間は大学と自宅との往復だから何時も使う改札口の反対側に立ち入る余地はないし、夜はバイトだから余計に縁がない。
 土日の昼間は寝てるかギターの練習か曲のアレンジかで、買い物に出るにしても食事はコンビニで済ませるし、雑誌とかを買う本屋も近いところ。夜はやっぱりバイトだからこれまた反対側とは縁遠い。
 その一角にある中華料理屋「香蘭」。俺と井上との食事の場に選ばれたのはこじんまりとしてちょっと古びた感じがする、「Dandelion Hill」とは正反対の趣のある店だ。センスに乏しい俺としても、こういうときの食事の場としてはちょっと不似合いだと思う。だが、食事の場を探して思い切って駅の反対側に出て最初に目に留まったこの店が、何故か気になった。これもセンスといえばそうなんだろうが、一般的なセンスからずれているのは確かだ。
 俺がこの店でどうかと尋ねた時、井上は嫌がるかと思ったが、拍子抜けするほどあっさりとOKした。

「安藤さんが誘ってくれたんですから、安藤さんの判断にお任せします。」

 こんな台詞を付け加えた。俺を立てようとしているのだろうか。頼りにされるようで嬉しい反面、直感で選んだ責任が圧し掛かって来る。勿論、この店に入るのは初めてだ。メニューで2人用のコースメニューを指定して待つ間、俺の意識はどうしても味がどうかに向く。

雨上がりの午後 第188回

written by Moonstone

「その・・・今日、何処か・・・食事に行かないか・・・?」
「え?」
「ん・・・と、土日と熱出して寝込んだのを看病してもらったから・・・そのお礼というか・・・まあ、そういうことでさ・・・。」

 自分でそう言いながら、全く様になってないと思う。もう少しスマートに言えないものか?視線が何時の間にか逸れているのも、自信のなさの表れだろうか。

2000/4/23

[寝られるって幸せ・・・]
 実に数日ぶりに3時間以上寝られました(爆)。それまでぶっ通しでPCに向かっていて数日ろくに寝られなかったのもありますが、途中で目覚めることなく寝られるなんて最近そうそうないことなんですよね(^^;)。え?規則正しい生活?何ですか、それ(爆)

[痴漢の冤罪で思うこと]
 新聞では殆ど取りあげられなかったことですが、無実の罪を着せられた男性が無罪判決を勝ち取りました。その罪とは痴漢です。満員電車の中で当時女子大生の「被害者」に痴漢と言われ、そのまま警察に連行され痴漢の罪を認めて罰金を払うか起訴されるかを迫られ、無実を争っていたというものです。
 この事件の問題点は2つあります。一つは言うまでもなく警察の違法な取り調べです。刑事ドラマでよく見られる取り調べは完全に違法であることを、もっとテレビ局は認識して制作を見直すべきです。もっともそうすると警察のPR番組「警察24時」が出来なくなるから、やろうとしないでしょうけど。
 そしてもう一つは「被害者」の女性の行動。痴漢は親告罪(被害者が訴えないと立件されない)であるが故に、「被害者」であることを盾にすれば、主観次第で無関係の人間を犯罪者に仕立てることが可能だという認識が欠如しています。これは決して冗談ではありません。実際、電車で携帯電話を注意された女性が注意した男性を痴漢として警察に突き出したという事件も起こっています。そして、このような痴漢の無実を争う裁判は決して珍しくないのです。

 性犯罪が凶悪化しているのは事実ですし、痴漢が犯罪行為であることは言うまでもありません。しかし、思い込みや報復感情で無実の男性を犯罪者に仕立て上げることに対しては、損害賠償や刑事告訴など断固たる態度で臨むべきです。マスコミはこの「被害者」を批判しませんが、やっぱり実は女性優先の世の中、女性を批判すると何を言われるか判らないからでしょう。
「多分・・・気のせいじゃないと思いますよ。」
「?」
「家の外と中が違うからですよ、きっと。」

 そりゃ違うのは当然だが・・・何か引っかかるというか含みがあるように感じる。井上は判ってくれるかな?と言いたげな表情で俺を見ている。家の外と中で違うこと・・。温度が違う。こんなことは当たり前だ。じゃあ何が違う?

・・・!
・・・井上の奴・・・。

「・・・確かに違うよな。」
「何か判りました?」
「判らせたかったくせに・・・。」

 俺は毒づくが気分は決して悪くない。自然と口元が綻ぶのが判る。自分が含ませたことが伝わって嬉しいのか、井上は如何にも嬉しそうに微笑む。家の外と中で違うこと、それは・・・

井上が居るか居ないかということだ・・・。

 井上が用意していた紅茶で−昨日の晩、持ってきたそうだ−一息つく。井上の家に行くと何時も最初にしていることだが、自分の家だとまた違った感じがする。雑誌や音響機器が占拠するこの家は紅茶が似合う雰囲気じゃない。
 井上と「共通項」の音楽の話をしながら、これからのことを考える。智一には井上を誘ってみるというようなことを言ったは良いが、何と言って誘えば良いのか・・・。「食事に行くか」じゃ味気ないし、「看病のお礼に」なんて照れくさいし・・・。

「・・・あ、あのさ。井上。」

 今度のレパートリーに加える「THE GATES OF LOVE」の歌い方やアレンジの話が一区切りついたところで、俺の口が勝手に動く。考えが纏まってから切り出そうと思っていたのに・・・何故?

「はい?」
「・・・え、えっと・・・。」

 切り出したは良いが何を言うか纏まっていないから口篭もってしまう。俺から話し始めて何でもない、なんてからかってるみたいで変だし・・・。
 ちらっと井上を見ると、別に訝るわけでも苛立つわけでもなくじっと俺を見ている。俺から話を始めるなんて今まで滅多になかったから、もしかしたら、と期待しているのかもしれない。誘いの言葉がぽんぽん出てくる程器用じゃない俺としては、こうして待ってくれるのは有り難い。

雨上がりの午後 第187回

written by Moonstone

 俺は鞄を「指定位置」である机の脇に置いてコートを脱ぐ。・・・直ぐに外へ出るなら別に脱ぐ必要もないか、とは思うが、部屋は思いのほか暖かく感じる。エアコンを入れてたんだろうか?

「井上。俺が居ない間エアコン使ってた?」
「いえ。使ってませんけど。」
「何か暖かいんだよなぁ。気のせいか・・・?」

2000/4/22

[体力消耗が先か、精神失調が先か(をい)]
 今週の平日の睡眠時間、合計8時間。さらに日増しに食が細くなって木曜日夜からほぼ1日、半ば絶食状態(飲み物と菓子少々)。寝ようにも寝られず、食べる気力も起こらず、慢性疲労どころの話ではなくなってきています(大汗)。
 理由は言うまでもなく、終日続く胸の痛みです。シャットダウン以外で突然数日更新が止まったら、何かあったと思って下さい。いや、本当に。

[何とかならないか?プロ野球報道]
 最初に断っておきますが、私はそれほどプロ野球が好きではありません。球団より選手個人を応援する方なので、ファンの球団はありません。

 桜はすっかり散りましたが、プロ野球は真っ盛り。移動日が多い月曜日以外何処かのチャンネルで報道しています。子どもの頃と違ってテレビを見る時間がめっきり減りましたし、ビデオに撮る番組もない(デッキもないし)のでゴールデンタイムに延々と報道されてもそれほど影響はないのですが、逆にニュースなどで巨人中心の報道が横行するのが非常に気になります
 グループ企業の読売系列は言うに及ばず、他の民放もプロ野球は巨人が第一と言わんばかりの報道。ファンが多いかもしれません。歴史ある球団かもしれません。しかし、プロ野球ファンが全て巨人ファンではないですし、まして巨人が常に勝って優勝すべきという報道は、明らかに他の球団のファンやプロ野球が嫌いな人を無視した暴挙です。

 このような巨人中心主義はまさにマスコミの体質そのものが現れた一例といえます。変革を求め、その施策を提言するようでいて実のところは脈々と続く多数を支援し、最悪その亜流までで留めようとする・・・。マスコミもまた権力の一部であり、本音では現状変革を望んでいない。そう考えると、単に巨人が云々だけでは済まない問題だと思います。
 余計なほど良く響く音が一度だけ鳴ると、直ぐに奥のほうから、はい、という返事が聞こえて、それに続いて軽くて早い足音が近づいてくるのが判る。俺は軽く咳払いなどして立つ。何だか俺が井上の家を訪ねるみたいだ。その井上の家も歌の練習で毎週出入りしているうちにセキュリティの固さ以外は慣れてしまったというのに。
 ドアの鍵が開く音がして、ドアチェーンがかかった状態でドアが開く。その隙間から井上の顔が見える。

「どちら様ですか?」
「この家の住人。」
「判ってますよ。今開けますね。」

 井上は一旦ドアを閉めるとドアチェーンを外して直ぐにドアを開ける。今度は全開に近いくらいに大きく開いたドアから俺は自分の家に入る。そこで俺は改めて笑顔を浮かべた井上の出迎えを受ける。

「お帰りなさい。」
「・・・ただいま。」
「今度はきちんと挨拶できましたね。」
「ガキじゃあるまいし・・・。で、何かあった?」
「ピザ屋さんのチラシが郵便受けに一度入りましたけど、それ以外は何もなかったですよ。電話もなかったですし。」
「そうか。用心していると案外変な奴は来ないみたいだな。」

 靴を脱いで隣接する台所を通ってリビングに向かう。読み散らしていた雑誌は綺麗に床に積まれている。床や棚に目立ち始めていた埃もすっかり姿を消している。井上が掃除をしたんだろう。自分の家と比べてあまりに汚いこの家で留守番しているのが耐えられなかったとしても無理はない。

「部屋、掃除してくれたのか?」
「ええ。時間もありましたし。」
「別に良いのに。」
「月曜日は私、講義がないから掃除が日課になってるんですよ。」

 掃除が日課になるなんて俺には理解し辛い話だ。俺なんかは実家に居た頃、親の雷が落ちるまで部屋の掃除をしなかった。一人暮らしを始めて雷を落とす存在が居なくなったことでずぼらに拍車がかかったところもある。
 まあ、あの女が来る時くらいは雑誌を片付けて掃除機をかけたが・・・それももう必要なくなって荒れる一方になっていた。家や部屋はその使用者の精神状態が出るものなのかもしれない。

雨上がりの午後 第186回

written by Moonstone

 アパートの前で自転車を降りる。自転車を押して玄関に面した通路に入る。台所に面した窓が背後から白い光に照らされている。自転車のスタンドを立てて鍵をかけると、俺はドアの前に立って一度軽く深呼吸をしてからインターホンを押す。

2000/4/21

 うむぅ・・・。このところずっと疼いてます・・・。では、今日のお話を始めましょう。

[本音を言ったらどうなんです?(その3)]
 「どうして男女や恋愛で本音が言えないか?」という命題に対する第2の理由ですが、恋愛がベースとする欲求レベルが、男性と女性で相違があるためです。男性は昨日お話したように生存や種の保存に直結する第1次欲求の割合が高いのに対し、女性は第2次欲求、所謂大脳新皮質に関係する欲求の割合が高いといえます。自分をより美しく、より際立たせたいという欲求もそれで、典型的な例がブランド品(バッグや服だけでなく男性でも)を好み易いブランド志向です。
 何故このようにベースとなる欲求レベルが違うか?それは男性がより多く自分の子孫を残そうとするのに対し、女性はより良い(優秀な)子孫を残そうとするからです。言い換えれば男性が女性を見て「良い女」と思う時と、女性が男性を見て「良い男」と思う時、この「良い」が持つ意味が違うのです。

 さらに文明が高度化して権利意識、特に女性の言動が法律や倫理を背景に正当化されやすくなったことで、本能的、動物的な第1次欲求に対して高等生物に見られる大脳新皮質に基づく理性的、人間的な第2次欲求の無意識の優越感が(「人間が動物より優秀だ」という感じ)より前面に出るようになります。
 勿論女性にも第1次欲求はあるわけですが、第2次欲求は「理性的」だから表現しても良いが、第1次欲求は「本能的」だから表現するのが憚られるという意識が出来上がって来るわけです。これは昨日もお話したことですね。

 これを踏まえると、前にもお話したように「外見より中身が大切」「性格が一番」というのはそれこそ奇麗事でしかないということが、よくお分かりいただけると思います。もっともこの見解が絶対正しい、などと言うつもりはさらさらありませんので、誤解されませんよう・・・。
 コール音が鳴る間、俺は妙な気分になる。井上が居るという意識が頭にあるせいだろうか?初めて井上の家に電話する時もやけに緊張してなかなかダイアルできなかったし、井上が電話に出てからも暫く何も言えなくて井上を不安がらせたことを思い出す。まったく情けない話だ。

「はい、・・・安藤です。」

 3回のコール音の後に井上の声が聞こえてきた。俺は前みたいに不審者と思われないように直ぐ返事する。

「あ、俺・・・安藤だけど。」
「安藤さん。今何処です?」
「今さっき駅に着いたところ。これから帰るから・・・。」
「はい、待ってますね。」

 最初少し警戒気味だったが、俺だと分かると直ぐ何時もの明るい調子に戻る。こうして会話をしていると、さっきまで首と心にぶら下がっていた重みが急に軽くなっていくように思う。

「何か・・・自分の家に電話するなんて変な気分。」
「普段はそうですよね。逆に誰も居ない筈なのに出たら怖いですよ。」
「そりゃそうだ。・・・じゃあ、そろそろ切るから。」
「帰り道、気を付けて下さいね。」
「ああ、分かってるよ。それじゃ。」

 俺は適当なところで電話を終える。駅に着いたら取り敢えず連絡するという約束は果たしたし、このままだと10円どころじゃ済まないような気がしたせいもある。
 俺は自転車置き場へ行って、鮨詰め状態の中から自分の自転車を取り出して通路から乗って走り出す。自転車だと厳しい季節が日増しに色濃くなってきているのが分かる。早く帰りたい。ただ、早く帰りたいと思うのは何時もなら単に寒いからという理由だけだが、今日はそれに加えて、否、それ以上に人が待っているからという理由が大きい。待っている人が井上でなければこんな気持ちになるかどうか・・・今ではならないような気がする。

 僅かに残っていた夕暮れの残像も自転車に乗っている間に闇に消え入る。すっかり暗くなった通りを走って行くと、住み慣れた俺の家があるアパートが見えてくる。その1階の角部屋に、何時もなら点っている筈のない部屋の明かりが見える。初めて自分以外の人間が自分の家で待っているという実感が強まってくる。

雨上がりの午後 第185回

written by Moonstone

 俺は今日は幸い空いている電話ボックスに入ると、受話器を取って硬貨を入れて自分の家の電話番号をダイアルする。実家に居たときは帰りが遅くなるとかでたまに電話をしたことがあるが、自分一人で暮らす今の家に電話をするなんて勿論初めてだ。

2000/4/20

[毎日書いていて・・・]
 「日記」兼「主張」兼「愚痴の垂れ流し(汗)」であるこのコーナーも気付けば早リスナー3000人を突破。開設当初からあるグループの大半を追い抜いて、第2創作グループに迫っています。こういうコーナーは意外に毎日チェックされる傾向がありますね。私自身、巡回先の日記を必ず読んでたりします(笑)。
 日記など個人的なことをページに載せるべきではない、という「大御所」の意見もありますが、ページ管理人の生々しい感情や意見があると(私のは生々し過ぎるかも)結構真剣に読むものです。それに個人のWebページは個人のものであって、「大御所」の意見にほいほいと従う必要はないでしょう(ああ、トゲトゲ)。

[本音を言ったらどうなんです?(その2)]
 「どうして男女や恋愛で本音が言えないか?」という命題に対する私の回答ですが、まず第一の理由は本質が欲求絡みであるという事実を隠蔽させられているためだと思います。人間が行動する原理原則は第1次か第2次かの違いはあっても、殆どの場合(全てとは敢えて言いません)欲求に基づいています。特に睡眠欲、食欲、性欲といった第1次欲求は生物が生存し、種を維持する上で必要なものですから、ある程度抑制できてもそれを除去することは非常に困難なものです。
 恋愛も本質を辿ればこの第1次欲求に辿り着きます。特に男性の場合はこれが顕著です。アイドルが知名度を高めるのに水着姿の写真集やビデオを発表するのは、男性の第1次欲求に訴えるのが最も効果的だからです。ところがこれだけ女性の権利が強く叫ばれるようになると(「女性をモノ扱いしている」とかいうやつです)、第1次欲求を出すことは悪であるという認識が浸透します。ですから本音である第1次欲求を表に出せなくなるのです。
 もう一つの理由は今回少し触れた、恋愛がベースとする欲求レベルの男性と女性の相違にあるのですが、これは明日お話しましょう。

これは・・・好きという気持ちといって良いんだろうか・・・?
単なる寂しさが嫌なことから派生した独占欲なんじゃないのか・・・?
まだ・・・まだ俺には判らない・・・。

 何時もの駅に降り立った時間は普段の月曜日と何ら変わらない。だが、日増しに早まる夕暮れは時間が遅くなったような錯覚を起こさせる。既に辺りは夕暮れも後半に差し掛かっていて、白色光を放つ街灯が存在感を際立たせて始めている。肌に刺さる冷気が痛い。もっと服の重ね着が必要なようだ。
 一人暮らしを始めて最初の冬はもう直ぐそこまで迫っている。冬といえばクリスマスというイベントがある。あの女と付き合っていたとき、デートをしてプレゼント交換なんて可愛らしいことをやったものだ。両方とも高校生でバイトが御法度の学校だったから、内容はそれこそ「高校生らしい」ものだった。だが・・・あの時貰ったプレゼントは全て滅茶苦茶になってこの世から消え失せた。プレゼントを受け取った俺自身の手で・・・。
 どうして「身近な存在」とやらに乗り換えたのかあの女、優子に真相を聞きたいという気持ちが残っているのは否定できない。今更聞き出したところでどうなるわけでもなし、まして寄りが戻るなんて思っちゃいないが・・・納得できない形で終わったせいか、まだ未練があるんだろうか?

 あのことを考えていると無意識に俯き加減になる。首だけじゃなく心も。惰性に近い感覚で改札を潜って隣接する自転車置き場に行こうとしたところで、正面入り口脇にある電話ボックスが目に止まる。何時もならその辺に佇むオブジェ同然の濃いグレーの箱を封じた透明の囲いが、俺の脳裏から何時もと違うことを掘り起こす。

「・・・電話、するんだったな・・・。」

 何時もなら誰も居ない俺の家に、今日は俺以外の人間が居る。留守番をしている筈の井上に、駅に着いたら電話する、と言ったのは他でもない俺自身だ。俺はズボンのポケットから財布を取り出してテレホンカードを探し始めて直ぐある筈がないことに気づく。

・・・あの夜、全部捨てたんだった・・・。

 また首と心が重くなったのを感じながら、俺は10円硬貨を1枚取り出して公衆電話に向かう。携帯電話が当たり前のようになった今の時代、公衆電話はあまり使われないのかと思いきや、帰りの時間や雨降りでは結構使われていたりする。いくら電話が1人1台の時代と言っても単にこれから帰る、とか連絡するくらいなら公衆電話で事足りるものだ。

雨上がりの午後 第184回

written by Moonstone

 そう思うと・・・井上は俺より智一とくっついた方が良いのかも知れないとも思う。少なくとも飽きたり疲れたりすることはないだろう。だが、その善人的な思いは直ぐに霧散する。あの二人で居る時間を知ってしまったから、それを他人−ちょっと嫌な言い方だが−に渡したくない。これが本音だ。

2000/4/19

[痛む痛む。まだまだ痛む(泣)]
 朝から晩まで延々と続く圧迫感と時折やって来る刺すような痛みは昨日も続きました(今でも続いてます)。痛み止めではまったく抑えられないのは相変わらずで、周囲に仮病と思われるのが嫌で、平静を装って痛みが収まるのをひたすら待つことがしばしばです。
 こんなのが半月以上も続いたら嫌でも精神的に悪影響が出てきます(- -;)。「何でこんな目に遭わなきゃならんのだ」という思いから派生する苛立ちに仕事面から来る徒労感や無力感、そして今の状況が周囲に理解されると思えないというある種の孤独感が重なって、疲れていてもろくに寝られない状態になっています。ぼんやりしていると車の前に飛び出したりしそうな気がして、ああ、ちょっと危ない状況だなぁと思う事が日増しに多くなっています(危険・・・て他人事かい)。こうして闘病日記のごとく書いているのは、ぐちゃぐちゃになりがちな思考の整理をするためでもあるんです。

[本音を言ったらどうなんです?(その1)]
 私の職場は専門的な分野故に男性の割合が高いために、数人集まって酒が入れば(当然自腹っす)大抵女性の話がでます。私は酒を飲んでない状態で(投薬治療中なので殆ど飲めない)会話を聞いたり時々加わったりするのですが、場を凍らせることは珍しくありません。
 私は本音の時代というなら、男女や恋愛でも本音を言えと言ってそれを実践しているだけなのですが、一般には夢も希望も無い冷め過ぎた見方、となるようです。夢や希望を持つより現実を見ろと散々言われて来ている割には、こういうことになると現実を見れないのはどういうことか?この命題に対する私の見解は明日お話したいと思います。
 智一に言われてはっとする。井上が智一とデートする前日−俺が熱を出して寝込む前日でもある−、潤子さんにも同じようなことを言われたことを思い出す。
 今度のことにしたって、俺は井上に看病してもらうだけだった。病気だったから仕方ないといってしまえばそれまでかもしれない。だが、俺は2日間井上に礼のひとつもまだ言っていないんだ。

「俺は何もしてません、って顔してるぜ。」
「・・・そうか?」
「だから、不器用なお前にはアンニュイと誤魔化しは似合わないんだって。」

 今度もえらい言われようだが、実際そのとおりだと思う。俺は苦笑いするしかない。

「ま、彼女は高級レストランとかだと気後れするみたいだから、その辺の喫茶店とかで良いんじゃないか?」
「喫茶店か・・・。」
「お前のバイト先喫茶店だろ?丁度良い。ご馳走してやれ。きっと喜ぶぞ。」

 高級レストランなんて店の場所もマナーもろくに知らないから、気軽に行ける店の方が俺としても良い。しかし・・・喫茶店を出されたときはちょっと慌てた。結果的にそうなったとはいえ、まさか同じバイトをしているなんて今の状況で言える筈がない。それこそ抜け駆けしていたと言われても文句は言えない。
 何にしても智一の言うことはもっともだ。途中で幕切れになったが井上とデートをしただけのことはある。・・・そうか。デートに誘ってみるのも良いかも知れない。曲選びのために一緒にCDを買いに行ったのはデートと言えなくもないが、俺からそうしようと誘ったわけじゃないし、井上のペースに嵌ったようであまり乗り気じゃなかった。そのくせその過程で自分の気持ちが分からなくなって混乱してたりしたが。

「・・・誘ってみる。」
「ようやくやる気になったみたいだな。あんな良い娘に想われるなんて長い人生の中で滅多にないってこと忘れるなよ。特にお前みたいな女心に疎い奴は。」
「・・・そうだな。」
「ま、俺もそのうち再挑戦するから、それまでに体制を整えとけよ。じゃあな。」

 智一は何時ものようにさっと手を上げてその場を立ち去る。俺が智一の立場だったら、果たして好きな女が向いている相手と普段どおりで居られるだろうか?それも見ず知らずじゃない、平日に必ず顔を合わせる、それも他より多少なりとも親しいといえる相手と・・・。俺じゃ到底出来そうにない。顔を合わせまいと必死に避けるか、よくも俺を馬鹿にしたな、と罵るのが関の山だろう。

雨上がりの午後 第183回

written by Moonstone

「・・・ああ。」
「ほお、多少はそういうことに気が回るのか。」
「まるで俺が気の回らないような言い方だな。」
「実際そうじゃねえか。」
「・・・。」
「一回食事にでも連れてってやれよ。どうせ今までお前からアクション起こしたことなんてないだろ?」

2000/4/18

 最近具合が良かったのに月曜は朝からじくじくと痛みが続いて、おまけに仕事はどれだけやっても思うように進まないわ、一向にPCの更新が出来ないわで、夕飯を作る気力はおろか食欲すらまともに沸きませんでした(- -;)。憂鬱はまだまだ続きそうです。さて、今日のお話は日曜日の更新について・・・。

[久々に色々やってみました]
 めっきり更新の量が減って久しい中、新規公開が出来て少しほっとしています。まずは此処の連載でお馴染み(?)の第3創作グループ。もはや定期更新に無くてはならないグループになりましたが、今回は大幅な加筆を施しました。
 前に歌詞が使えればなぁ、というお話(ぼやき?)をしましたが、その後リスナーの方から著作権に関する情報をお寄せいただきました。「引用」なら出所を明記すれば可能であるということで、連載では使用を見送った歌詞を今回差し込みました。作品が引き立てられたなぁ、というのが私の印象ですが如何でしょうか?まだの方は是非ご覧ください。

 次は第2SSグループ。新規開始のグループですがここではかなり前からお話してきましたので、とうとうやったか、と思われる方もいらっしゃるかも(^^;)。最初の被害者は何となく想像できるかもしれませんが、数本分の構想が固まっていますので、知世の壊れっぷりを楽しんでもらえれば幸いです。

 最後は第1写真グループ。このところなかなか写真撮影に出ることが出来なかったのですが、どうにか季節限定ものを撮影することが出来たので、先行公開に踏み切りました。これまでは写真撮影をひととおり終えてから公開する写真を選んでいましたが、今回はある小テーマについて揃い次第公開して行くことにしました。
 更新が遅れたのは、此処の英訳で梃子摺ったからです(笑)。日本語の部分は直ぐに出来たんですが、詩的な文章にした分英訳が難しくて、少々(かなり(?)怪しいかも・・・(^^;)。ま、花見の雰囲気をお楽しみ下さい。

 4/16まで実行すると言っていた随時更新が不発に終わったので、せめて最後くらいとそれなりに力を入れたつもりです。次はそろそろ開設当初からあるグループを豪快に更新したいものです。

雨上がりの午後 第182回

written by Moonstone

 もやもや感を感じながら興味がないって言っても説得力がなかったみたいだ。智一の言うとおり、俺は不器用なんだから誤魔化そうなんて考えないほうが良いみたいだ。

「言っとくけど・・・ぼやぼやしてると俺か他の男が取っちまうぞ。惚れられてたら絶対安全ってことはないんだぜ。」
「・・・。」
「まったく・・・晶子ちゃんも何で女心に鈍いお前に惚れたんかねぇ。一回聞いてみたいよ。」

 智一がぼやくが、それは俺だって聞いてみたい。見た目も冴えない俺に言い寄るなんて、あの女くらいだと思ってた。だから、あの女に捨てられてもう駄目だ、二度と恋愛なんて出来ないってなっちまったんだが。
 ・・・以前、井上は俺が兄に似てるって言ってたな。それがきっかけだったとしても、あんなに邪険に扱われて尚諦めない理由は何なんだろう?・・・やっぱり、「好きだから」なのか?

 結局それから智一から井上とのことについて尋ねられることはなかった。俺としては2日間にあったことをあれこれ聞かれるのはかなわないし、智一も好きだった、否、好きな女が自分以外の男と何があったのか聞くのは躊躇いがあるのかもしれない。多かれ少なかれ誰にでもそういう感情はあるものだ。
 昼飯は挟んだ講義も何時ものように淡々と進んで何時の間にか終わり、俺は何時ものように智一と共に帰途についた。そして別れ際、何時もならじゃあな、とでも言う智一が俺に尋ねた。

「今日は晶子ちゃんと会うのか?」

 いきなりな問いかけに内心驚いた。俺の家で井上が留守番をしている筈だが、それを知っているかのように感じた。抜け駆けしたようで−実際そうか−後ろめたいような気持ちもあるせいだろうか?

2000/4/17

御来場者数40000人突破です!(歓喜)

 ・・・トップには書きましたけどこっちでは忘れてました(^^;)。バタバタしてましたからねぇ。では今日のお話を始めましょう。

[もう少し使い込んでみて・・・]
 土曜日に買ったノートPCを昨日の一連の更新作業に使ってみました。画面サイズと色のbit数を旧PCに合わせて、Netscapeのウィンドウの大きさを調整してから何時ものようにエディタで入力。旧PCよりウィンドウをガンガン開けるし、おまけに開くのが早いので、作業性は快適ですね(CeleronとノーマルPentiumじゃねえ(笑))。ただ、キー操作が今までと違うところが結構あって、戸惑うこともしばしば。差引するとややプラスってところでしょうか。
 ネットに繋いでファイルをアップロードしたり初めてページを表示する時は多少表示が速いくらいですね。読込はモデムに依存するから当然ですが(笑)。一旦読み込んでキャッシュに入ると無茶早いですが(^^;)。旧PCはCRTフィルターを付けていますが、ノートPCはそのままです。画面は見易いのですが色表示が違うらしくて、昨日活動を開始した第2SSグループの「担当より」でケロちゃんの台詞の色が旧PCで見るとちょっと見辛いので、どちらを基準にしようかと思案中です(汗)。
 まあ、ノートPCを買う理由でもあった、簡単に持ち運びできて、色々な姿勢で操作できるというメリットは私には大きいので、新PCにはこれからも精一杯動いてもらいましょう(笑)。
 智一に聞かれて俺は口篭もる。まだ言ってないというより、まだ気持ちが分かってないなんて、智一にしてみればふざけた話だろう。惚れていた井上の気持ちが向いている相手がまだ好きかどうか分からないなんて・・・。

「お前な。言っとくけど俺は振られたんだからな。」
「え?」
「鈍い奴だな。振られたことは間違いないけど、諦めたわけじゃないってことだよ。」
「!!」

 そうだ・・・。振られたからって別に手を引かなきゃならないってことはない。智一が諦めてないってことは、まだ智一と井上が近づく可能性はゼロじゃない。
 ・・・井上が俺の返事を待てなかったら、そうなるかもしれない。俺が言った後で井上が心変わりするかもしれない。だからって手を拱くのか?・・・もう御免だ。熱を出して寝込んでいたあの時のやり切れなさや、井上がバイトに行っていたあの時の寂しさは・・・もう耐えられないだろう。井上と居る時間の良さを知ってしまったから・・・。

「まあ、晶子ちゃんのあの性格からすると俺にはかなり不利みたいだがな・・・あ、そういえばお前は興味ないんだっけ?」

 智一は笑みを浮かべながら俺を横目で見る。意地悪というか・・・挑発するような顔だ。以前なら尚も興味がないと突っ張っていただろうが、もうそんな理由はない。あのもやもや感も今はない。

「・・・今は・・・違う。」
「ったく、あの時素直にそう言ってりゃ良いんだよ。」
「・・・あの時って・・・。」
「興味はないんだな?って俺が念押しした時に決まってるだろ。興味がないのにあんな無理してますって言い方するか。」
「・・・そう見えたのか?」
「見えたってもんじゃねえよ。不器用なくせに意地張るな。簡単に本心がばれるんだから。」
「・・・。」

雨上がりの午後 第181回

written by Moonstone

 智一に言われてはっとなる。自分の気持ち・・・。まだ井上には伝えていない。それより前に、今までの関わりを通じて井上に抱くようになった気持ちが本当に好きという気持ちなのか、まだ分からないでいる。

「祐司。お前まさか・・・、まだ晶子ちゃんに言ってないとか?」

2000/4/16

[大きな買い物]
 前々から欲しかった(隠し部屋知ってる方はご存知でしょう)ノートPCを昨日ようやく手に入れました(歓喜)。帰省などで自宅を離れると作品製作がノートとシャーペンだけになってしまうので(^^;)、欲しいというより必要の割合が多かったんです。欲しいと思い始めたのは昨年あたりからなんですが、資金の目処が立つまでひたすら待ちました(笑)。
 優先度はCPUは何を選んでも今まで使っていたPCより絶対性能が良いので(笑)、Celeron以上でOK、HDDは10GB以上というのが最低条件。ハードウェアでMIDI音源を持っていることもポイント。で、迷ったのがDVD-ROMを取るかCD-R/RWを取るかでした。散々迷った末にこれから写真を扱うことが多くなってバックアップもフロッピーではやってられないということで、CD-R/RWの方を取りました。DVDよ、また次に会おう(何時になるやら)。
 それで機種を決めましたが、少しでも安く買おうと店を歩き回ること(雨だと私は歩くしかない)約2時間(^^;)。どうにか買って早速システム構築にかかりまして(作品製作はどうした)、数時間かかってようやくディレクトリの構築やソフトのインストールを終えました(汗)。
 使ってみた感想は・・・使いやすいです。キーの反応も早いしストロークもはっきり分かるので、キーボードを叩くのが楽しくなりますね。ただ、起動がノーマルPentiumの現行マシンより遅いのは何とも・・・(汗)。まあ、Win98でプリインストールが多いからこんなもんでしょうか?あと、擬似サーバーの設定がどうしてもうまくいかないので、CGIの実験は当分出来ないのが悲しいです(T-T)。

 ・・・え?機種ですか?それは・・・内緒です(爆)。ノートPCだと姿勢をいろいろ変えながら出来て楽ですね。あ、隠し部屋の内容もちょっと更新しておきます。

「一応俺は、『安藤は君には興味がないって言ってる。それでも君は気にかけるのか?』って聞いたよ。そしたら晶子ちゃん、何て言ったと思う?」
「・・・判らない。」
「『彼が私のことどう思ってても、私は彼が心配なんです。』ってさ。この果報者。」
「・・・。」
「で、とどめに、私には好きな人が居るからお付き合いできません、だって。彼女も結構不器用って言うか天然って言うか・・・あそこまでお前のことを気にかけといて、今更好きな人って代名詞を使わなくても誰のことか直ぐに分かるのにな。」
「・・・。」
「そう言ったらもう俺が止める間もない、ダッシュで帰っちまったよ。はあ〜あ。お前が熱出さなきゃ、晶子ちゃんが途中で帰ることもなかっただろうな。お前、タイミング良すぎ。」
「・・・確かに。」

 もし俺が熱を出さずに何時ものようにバイトに出ていたら、電話口に出るように言われただろう。そうなったとしてもあの時の状態じゃ、互いに意地を張ったままで電話を切ることになっていたに違いない。
 第一、傍に居て欲しいとか言ったり甘えたりするなんて、とても素面じゃ無理だ。俺と井上の行き違いが解消されたのは、俺が熱を出して寝込んだからと言って良い。

「・・・俺と井上の諍いに巻き込んじまったな。」
「まったくだ。喧嘩するのは仲が良いって言うけどさ、その喧嘩に対象外の人間巻き込んで余計な期待持たせるなよな。」
「・・・悪い。」
「まあ、振られたのはショックじゃないって言えば嘘になるけど、約束の時間は守ってくれたし、支払いとかもかなり気にかけてくれたし、断るにしたってちゃんと面と向かってはっきり言ってくれたから、後には引かないな。」
「強いな、お前・・・。」

 智一は何時もと変わらない軽い調子だが、内心穏やかじゃないだろう。好きな女が興味がないと試合放棄を宣言した男の方を向いていて、自分の方を振り向くと思いきや、実は全く音沙汰なしだったんだから。
 智一は譬え結果が駄目でも相手の良いところをちゃんと評価できる。振られて敢え無く全否定になった俺とこの辺が違う。

「俺は場数を踏んでるからな。経験豊富な俺に言わせると彼女、袖にするには勿体なさ過ぎる。あんな良い娘、今時そうそうお目にかかれないぞ。」
「・・・そうだな。」
「おっ、多少は正直になったか。」
「え?」
「まさか自分の気持ちに気付いてないなんてことはないよな?」

雨上がりの午後 第180回

written by Moonstone

「電話のやり取りを見てたら晶子ちゃん、途中でえらく驚いてさ。何かと思ったら電話を切った後で、お前が熱を出して寝込んでるって聞いたから帰りますって言ったよ。彼女、お前のバイト先まで調べてたんだな。」
「・・・ああ。」

 智一は俺と居の得得が同じバイト先に居ることは知らないんだろうか?確認しておきたい気もするが、「勝利」を誇示するようで気が引ける。

2000/4/15

[早速ですが・・・]
 はい、本日「Access Streets」に加えたのは他でもない、私が昨日探そうかなと言っていた井上喜久子さんのページです(爆)。JewelBoxの書き込みで情報を戴いて早速行ってきました(^^;)。で、ブックマークにも忘れず加えました(^^;;)。ああ、萌え暴走は止まらない・・・。
 一応紹介しますと、井上さんは「らんま1/2」の天童かすみ役、PSの「テイルズオブディスティニー」のフィリア役、映画「フェアゲーム」のシンディ・クロフォードの吹き替え、そして何より「ああっ女神さまっ」のベルダンディー役で有名な方で、私はベルダンディーの声で転んだ口です(笑)。上品で控えめだけど、芯は強い女性役にぴったりだと思ってます(^-^)。
 井上さんのファンの方は、4/16に第3創作グループで公開する「雨上がりの午後」Chapter14に「あの」告白シーンがありますので、声を想像しながら御覧戴いて言われてみたい〜!と転がって下さい(爆)。BGMがあると尚グッドかと。(^-^)b

[今更何言ってるんです?]
 石原都知事が舌禍事件を起こして(恐らく本人の予想外に)抗議が湧き起こっています。マスコミや識者が「強権的体質」「蔑視感情の持ち主」と批判していますが、私に言わせれば今更遅いの一言です。石原都知事が国会議員時代からタカ派国粋主義で有名な人物で、これまでにも同種の事件を起こしていることくらい少し調べれば直ぐ分かりますし、映像や文章として記録に残すのが職業のジャーナリストなら多少なりとも覚えている筈です。まあ、紙面や電波を使っているマスコミは、過去のことなどいちいち覚えちゃいないんでしょうが(だから何度でも同じ事をする)。
 「無党派」なら大丈夫という幻想を振りまき、その言動を無条件に礼賛して知事当選への地ならしをしておきながら、今更「彼の発言は問題だ」と批判しても遅すぎます。選挙の時に問い質さなかった怠慢を反省すべきです。それにしても彼と同傾向のマスコミグループはどうして弁護しないんでしょうね?この辺りからも雰囲気だけで報道している無勉強ぶりが窺えます。
 不意に肩を叩かれ、背後から声がする。振り向くと何時になく神妙な顔をした智一が居た。ますます増幅する緊張感に俺の顔は自然に強張る。

「・・・智一。」
「具合はどうなんだ?」
「え?」

 智一の意外な第一声に俺は思わず聞き返す。

「何だよ、え?って。土曜に熱出して唸ってたんだろ?」
「何で・・・知ってるんだ?」
「お前馬鹿か。晶子ちゃんの口から聞いたからだよ。」

 ・・・本当に俺は馬鹿だ。井上がバイト先にかけた電話で潤子さんから俺が熱を出して寝込んだことを知ったなら、智一にも帰る理由とかで説明していてもおかしくない。

「で、具合は?」
「・・・ああ、何とか良くなった。」
「そっか。・・・ま、立ち話もなんだし、歩きながら話そうぜ。」

 俺と智一は並んで歩く。こんなことも随分久しぶりに思う。俺から何か言おうと思っても言葉が思いつかない。謝る・・・?何を・・・?俺と井上の痴話喧嘩に巻き込んだことをか?どうやって謝れば良いんだ・・・?

「・・・お前が晶子ちゃんに興味がないって言って、晶子ちゃんがデートOKしてくれたことは、正直チャンスだって思ったよ。」
「・・・。」
「で、当日デートしてて晶子ちゃんの反応を観察してたんだけどさ・・・、ちゃんと礼は言ってくれたし喜んではくれてたけど、心底楽しいっていうんじゃなくて、俺を気遣ってるような・・・そうそう、意識此処にあらずって感じだったな。」
「・・・。」
「考えてたデートコースを回ってから、夕方になって予約しておいたレストランに行こうとした時だったかな。電話して良いですか?って聞いたんだよ。相手先を聞くなんて無粋なことはしたくないから勿論オッケーしたけどな。晶子ちゃん、今時珍しく携帯持ってないから公衆電話からかけて、開口一番こう言ったよ。」
「・・・何て?」
「『安藤さんはどうしてますか?』って・・・。参ったよ。晶子ちゃんは俺とのデートの最中でもお前のことを考えてたんだからな。」

 智一のぼやきが聞いていて辛い。やっぱり俺と井上の意地の張り合いが智一の気持ちを振り回していた。感じるだけじゃどうにもならないが、罪悪感を感じずにはいられない。優越感なんてこれっぽっちも感じやしない。こういう事が勝ち負けの問題じゃないっていうことが本当に今更だか肌身に染みる。

雨上がりの午後 第179回

written by Moonstone

 大学の敷地内に入ると緊張感が更に増す。落ち込んでるか怒っているか・・・。俺が智一の立場だったら、お前らのトラブルに巻き込んでその上俺を弄びやがってと怒るところだ。実際そのとおりだと言われても反論できない。

「祐司。」

2000/4/14

[独自ドメインを取得しました!]
 キャプションどおりです(笑)。まだ移設中ですので公開しませんが、URLは現行の半分程度になります。勿論取得したからといって直ぐに新装オープンなどとできる筈がなく、ファイルを移転(新たにディレクトリ構成を構築)する必要があります。現在ファイルの整理もしながら移転作業をしているのですが、ファイルの数と量が相当多くてなかなか進みません(汗)。
 驚いたのはファイルの容量で、概算したら現在の容量の2/3近くを消費していることが分かりました。第1創作グループだけで1MBあったのには呆然(^^;)。写真とかはまだしも、テキストでこんなに容量を食うとは・・・。

[今日設置したリンクは・・・]
 「Access Streets」を御覧戴いた方は「とうとう加えたか」と思われるかもしれませんね(^^;)。はい、連載に登場する渡辺潤子の名前の由来であって、イメージCVでもある岩男潤子さんのオフィシャルページです。某チャットでURLが紹介されたので早速別ウィンドウを開いてジャンプしました。
 命名が安直だったせいか今までどんな方か知らなかったのですが(汗)、渡辺潤子のイメージにかなり近いなあというのが写真を見た印象です。偶然ですが年齢も同じですし。勿論、このページは自分のブラウザ(Netscape)のブックマークにも登録してあります(爆)。井上喜久子さんのページも探そうかな・・・。

「あ、い、さ、つ、は?」

 井上はあの得意の笑みを浮かべながら俺の鼻の頭を軽く突つく。俺はあの言葉を返そうとするが、なかなか言葉にならない。あまりにももどかしい時間がゆっくりと流れ、ようやく絞り出すようにあの言葉が輪郭を帯びる。

「・・・行ってきます・・・。」
「はい。気を付けて・・・。」

 井上はにこやかに手を振る。俺もつられて手を振りながらドアを開けて外へ出る。これじゃ夫婦か同居しているカップルじゃないか・・・。もっとも、端から見たらそうとしか見えないだろう。
 ドアを閉めて壁に寄せて置いてある自転車に乗る。日増しに強くなる冷気を切り分けて駅への道を走る。駐輪場に自転車を置いて改札を潜る。・・・普段と変わらないこの道のりが軽い。

井上に見送られて家を出ただけでこんなに違うのか・・・?
だとしたら、これから俺は一人であの家に居られるのか・・・?

でも・・・ただ一人が寂しいからってことで、このまま井上を好きになって行くのか?
それは果たして・・・本当に好きってことなのか・・・?

俺にはまだ・・・判らない・・・。

 何時もの駅で降りて改札を潜り、大学へ向かう道を歩いて行くと緊張感が増して来るのを感じる。この緊張感は井上と額合わせをしたり、井上が横で寝ていた時のものとはまったく違う。・・・理由は唯一つ、智一に会うからだ。
 智一は俺と井上が互いに意地を張った故のトラブルに巻き込まれた被害者と言える。智一が井上に熱を上げていたのは前々から知っているし、その気持ちも合コンとかで付き合うような遊び感覚じゃないことも分かっていた。だから今回の件で井上とデートできることになったのは、智一にとってはそれこそ願ってもないチャンスだったと思う。

 だが、どういう経緯があったかはよく分からないが、井上の話を聞いた限りではデートの途中で井上は智一に「好きな人」が居るから付き合えないと言って、「好きな人」の看病をするために帰ったわけだ。そしてその「好きな人」とやらが、あろうことか井上に興味がないと言った俺だった・・・なんて、智一にとっちゃ笑い話にもなりはしないだろう。

雨上がりの午後 第178回

written by Moonstone

「じゃ、じゃあ、留守番頼む・・・。」
「はい、行ってらっしゃい。」
「・・・。」
「挨拶は?」

 俺は井上に言われてようやく我に帰る。久しぶりに聞いた「行ってらっしゃい」という言葉・・・。実家に居た時は空気のような、時には邪魔にすら思った言葉が、こんなに心に響くなんて・・・。

2000/4/13

[コンピュータの常識、非常識]
 コンピュータ(以下PC)をある程度使われる方は一度くらい「ソフトが勝手に終了して途中のデータが消えた」とか「周辺機器を加えたらうまく動作しなくなった」という経験があると思います。自作PCの経験がある方ならさらに発展(?)して「OSがインストールできない」とか「ドライバーをインストールすると動かなくなる」とかいう経験をお持ちではないでしょうか?
 いくらPCの性能は日進月歩を超える勢いで向上しているとは言っても、この様な問題はまったく改善されないどころか、ますます顕著になっているように思います。OSやドライバー、何かのソフトウェアをインストールするのもウィザードなるもので一見簡単に出来るように見えて、不具合が起こるとどうにも判らなかったりします。「詳細」など見てもユーザーには何の参考にもならないですしね(笑)。

 しかし、これでやっていけるのがPC世界の不思議なところです。家電や自動車でこのような問題が起これば、間違いなくリコールの対象になるでしょう。放置すれば事故を起こしたりして訴訟問題に発展しかねません。でも、PCだと「相性」とか「衝突」で済んでしまいます。そうなるとユーザーはお手上げで、運が悪かったと思うしかないでしょう。
 ソフトに不具合があっても解決にはバージョンアップでさらに出費が必要だったりするのも同様でしょう。こんな「曖昧な」PCによる「情報化社会」や「IT革命」など心許ないものです。まあ、これらを声高に叫ぶ新聞や評論家は「自己責任」なる便利な責任回避の一言で片付けるんでしょうけどね(笑)。

「はい。」
「俺は駅に着いた時点で一回連絡するけど、ドアチェーンはかけたままにしておいて良いよ。」
「じゃあ、安藤さんは?」
「1回インターホンを鳴らすから、それで俺かどうか確認して。駅から大体10分くらいだから、それが目安になると思う。」
「私は安藤さんからの電話を待ってれば良いんですね?」
「ああ。一人で居ていきなりドアの鍵があいたらびっくりするだろ?」
「そうですね。」

 井上は嬉しそうに微笑みながら俺の横にしゃがむ。何かと思って振り向くと、井上が両手を俺の肩に置いて寄り掛かるような感じになる。

「私のこと・・・心配してくれてるんですか?」
「・・・そりゃ、女一人で留守番なんて今は物騒だから・・・。」
「それで・・・?」
「・・・心配・・・だよ。」

 俺を見詰める瞳に圧迫感を感じる。威圧的では勿論ないが、本音を言って、と訴えられているように感じる。・・・そう、本音だ。否、さっきの物騒だからって言ったのも、もっと溯れば一昨日マスターと潤子さんが来た時にドアチェーンを掛けて応対するようにって言ったのも井上が心配だったからだ。今は・・・そうとしか思えない。

「嬉しい・・・。」
「そ、そうか・・・?」
「好きな人に自分のこと心配してもらって、嬉しくない筈ないですよ。」

 井上は俺の肩に乗せている両手の上に自分の顎を乗せる。もう少し井上が顔を前に出すか、或いは俺がそうすれば、唇が触れ合うくらいの距離だ・・・。
 全身が一気に熱くなった俺は、慌てて視線を足元に戻す。あのままだと本当にキスをしそうな雰囲気を感じた。今日は朝から刺激が強いことが多すぎる。
 靴紐をこれでもかというほどしっかり結び終えると、俺は脇に置いておいた鞄を抱えて立ち上がる。井上は俺の肩から離れて続いて立ち上がる。

雨上がりの午後 第177回

written by Moonstone

 一昨日だったか、マスターと潤子さんが来てくれた時に最初誰か分からなくて−当然か−ドアチェーンを掛けて応対するように言った。夜はまだしも昼間でも用心しなきゃならないなんて、嫌な世の中だ。
 まあ、俺もつい最近まで一日井上を疑って、用心してたんだから、あまり偉そうなことは言えないか。

2000/4/12

[独自ドメインを取る理由]
 前からお話しているように、独自ドメイン取得へ向けて準備を進めています。独自ドメインにするとどうなるかというと、簡単に言えばURLが短くなります。今のURLは契約プロバイダーの下層ディレクトリという感じになっていますが、これが一般企業のページのように独立して存在する感じになるわけです。
 当然コストはそれなりに掛かるわけで、趣味にしては仰々しいかもしれません。一つは容量が切迫しているので、独自ドメイン取得と同時にサービスを(この様なサービス(ホスティング・サービス)はアメリカにサーバーがあるので、国内の一般のプロバイダーより容量がかなり多い)利用して容量を増やすためで、もう一つはネット運営に精力的に取り込んでいるというアピールのためです。

 前にもお話したように、私にとってこのページは単なる趣味の範疇を通り越しているところがあって、少なくとも娯楽というスタンスではないことは確かです。この姿勢があだになって他の同様のページと比較してかなり「固い」という印象を与えているのは否めませんが、それならいっそ芸術に対する私の姿勢をより鮮明に打ち出そう、という意志が独自ドメインに目を向けさせたように思います。
 もう一つ上げるなら、これだけ投資するならそれなりのことをしたい、と自分への発奮材料でもあります。まあ、下手に新聞を購読するよりは絶対自分にはプラスになると思うので、負担増という感覚はあまりありませんが、折角増える容量を有意義に使いたいですね。
 何時もなら火の元と戸締まりを確認してから−一人暮らしを始める前に親から何度も念押しされた−時間を気にしながらいそいそと靴を履く玄関先でも、今日はのんびり腰を下ろして靴紐を確認して結び直したりする。普段なら、解け始めて先の方が足の動きに合わせて地面とぶつかるようになって初めて気にするようなものなのに。

「何か身の回りのもので買っておくものとかあります?」

 背後から井上が声をかけて来る。・・・一人居るか居ないかでこうも違うんだろうか?今までならそれこそ、時間に余裕があるのは目覚める時間が早かったせいだ、と断定していただろう。靴紐だってそうだ。
 だが、今の余裕、時間的なものだけじゃなくて精神的なものは、そう簡単に結論づけられないものだと今は思う。前に潤子さんが、恋愛ごとは定理や公式で割り切れるもんじゃない、って言ったけど、精神的なことは本来そんなものなんだろう。直ぐに結論や回答を求めるのは俺の悪い癖かもしれない。

「いや、特にない。まあパンはくらいだけど・・・それは帰りに買えば済むし。」
「そうですか。」
「あ、それから・・・ドアチェーンは忘れないようにな。今の時代、どんな奴が来るか分からないから。」

 平日は、昼間は大学で夜はバイトだから滅多に出くわさないが、土日のように昼間家に居ると、時々訳の分からない奴等の訪問を受けることがある。
 勿論その訪問はこっちから依頼したものじゃなくてまったくもって迷惑なもので、ありがちな景品と引き替えに新聞の購読を迫って来たり−珍しい景品ならOKというわけではないが−、耳障りの良い言葉が表紙に並ぶ有り難い−らしい−本を見せてきたり、どう見てもノーブランド品を自前で包装したようなハンカチだの何だのを見せつつ募金をお願いしてきたり・・・。

 寝てた時にインターホンを鳴らしたり、その上ノックまでする奴も多いから、悪い寝起きで腹を立てた俺は怒鳴りつけて追い返すんだが、井上は普段セキュリティでガチガチのマンションに住んでるから馴染みがないだろうし、仮に訪問されても俺みたいな事が出来るようなタイプには思えない。そういう招かざる客は大人しい奴を「標的」に迫って来るらしいから、井上は要注意だろう。

雨上がりの午後 第176回

written by Moonstone

 大学へ行く準備を整えた俺は、鞄を持って玄関へ向かう。偶然井上とお揃いになったシャツの上にはこれからの季節では標準装備となるセーターとコートを重ねている。珍しくかなり時間に余裕がある。駅まで歩いて行っても間に合うくらいだ。一人暮らしを始めてからこんな事はなかった。

2000/4/11

[もう暫く病院通いだ〜い(半ば自棄)]
 TVで「まだまだ続きます」と言う時は間もなく終わりを意味しますが(笑)、私が抱える胸部の痛みはそれこそ「まだまだ続いています」(泣)。病院でも未だ原因が特定できなくて対症療法(痛み止め)しか出来ず、その痛み止めも今まで効かなかったし、どうしろと言うのやら(- -;)。
 それはさておき、病院に行くとさらに悪化するような気がします。兎に角待ち時間が長すぎます。予約時間というものがあるのですが、それがまともに守られた試しはないどころか、誤差1時間など望むべくもありません(- -;)。その間も当然痛む時は痛みますし、いっそ待合室にも医師を配置した方が良いのでは?(笑)

[「変わらない」は怠慢の誤魔化しじゃないですか?]
 投票に行かない理由とか政治に無関心な理由でよく聞く回答が「誰がやっても変わらないから」という答えです。私はこれこそ「変わらない」根本的な理由だと思います。変わらないから投票しないというのは結局、その政権に白紙委任状を手渡すのと同じです。今までの系列やしがらみ以外に目を向けないで、変わる筈がありません。
 結局「変わらない」というのは自らの怠慢を誤魔化すための方便であり、敢えて厳しいことを言うなら、そんな意識しかないから選挙の時に体よく集票マシンにされている(白紙委任も含む)ことを自覚するべきでしょう。
 井上はやけに嬉しそうに微笑む。もしかしたら井上も、誰も居ない家に帰ることに躊躇いみたいなものがあるのかもしれない。・・・一人は何もないときは良いが、二人の良さに浸ってしまうと寂しく感じるのが難点だな・・・。

 朝食を済ませた後、俺と井上はそれぞれ着替える。井上はリビングで、俺は久しぶりに身体を洗うこともあって風呂場でだ。別に風呂に入らなくても死にはしないが、熱で相当汗を掻いたのか身体が嫌にべたつくのが我慢ならない。これより前に時間を見たら、余裕はあるにしてものんびり湯船に浸かるにはちょっと時間が少ないから身体と頭を洗ってシャワーを浴びるだけにする。この季節になるとそろそろ湯船が必要なんだが、今日は仕方がない。
 湯船は蓋が開いた状態で湯は落とされている。井上が掃除をしたらしく随分奇麗だ。俺が眠った後にこの湯船に井上が浸かってたのか・・・。この事を考えるのは止めておこう。さっき胸元が見えたことといい、今朝起きたら横で寝てたことといい、病み上がりには刺激が強すぎることが−病み上がりでなくても強いか−続いているから、妙な気持ちになって来る・・・。

 手早くべたつく髪と体を洗ってバスタオルで拭いてから、予め用意しておいた服を着る。井上はもう着替えを済ませていると思うが、さすがにいきなりアコディオンカーテンを開け放つのはちょっと躊躇ってしまう。

「・・・井上、そっちは良いか?」
「あ、良いですよ。着替えは済んでますから。」

 リビングと境界のないキッチンと風呂場を隔てるアコーディオンカーテンを様子を窺いつつ開ける。キッチンの壁から顔を出すと、昨日着ていたものとは別の服に着替えた井上がこっちを向いて座っていたところを見て、二人同時に思わずあっ、と声を漏らす。

「シャツ・・・同じ色ですね。」
「・・・偶然・・・な。」

 そう、偶然だ。まさか井上が俺の持っている服を知っている筈がない。店に来ていったこともあるがこの時期コートやセーターに隠れることが多いし、如何に井上といえど全てを覚えているとは思えない。だが・・・結果的にブルーの長袖シャツがお揃いという現実が今、目の前に在る。

雨上がりの午後 第175回

written by Moonstone

「・・・井上は良いのか?」
「何がですか?」
「俺が帰って来るのは大体3時半か4時前・・・。それまで暇じゃないか?」
「CD聴いてますよ。あと、此処にある雑誌も読んで良いですか?」
「良いよ、それは。・・・それで良いなら・・・。」
「じゃあ決まりですね。留守番してます。」

2000/4/10

[胸の痛みは悪化中。何だよこれ(泣)]
 最初の頃は時々内側から針で突つかれるような感じだったのですが、今は不規則に刺されるような痛みに襲われます。土曜の昼間はそれが何度も連続して胸を押さえて唸ってました(汗)。
 今は唸るほど酷くはないですが、疼くような痛みを時折感じます。痛み止めで抑えられるか根本的に治せるか出来れば良いんですが・・・。どうもあれこれ考え事をしていると痛みが強くなって来るような傾向があるので、今抱えている問題は必要時以外は考えないようにしているのですが、結局頭に浮かんで来ては痛みに唸っています(汗)。早く治したいものです(切実)。

[こんな先生が居たらなぁ(*^^*)]
 もうお分かりでしょう(笑)。日曜18:00、教育テレビで放送される番組といえば「CCさくら」。今回からオープニングとエンディングが変わりました。BSから御覧の方はご存知ですね(笑)。
 どれだけ胸が痛かろうが絶対見逃すまいと(なんて執念だ(^^;))忘れずに5分前にテレビを点けてチャンネルを合わせて待機(笑)。何故なら観月歌帆が登場するからです!登場してからはさくらと一緒に「はにゃ〜ん」となってました(爆)。前半はスーツ姿(一番好き)、後半は巫女さん姿で登場。篠原恵美さんの声は何時聞いてもハマってます〜(*^^*)。
 久しぶりに楽しいと思えることでした。何も知らない人が聞いたら「この程度のことで」とか「たかがアニメで」とか思われるでしょうが、お偉方の仰々しくかつ白々しい御託より、ずっと良いと思えるものです。少なくとも私には・・・。

「今日、練習はどうします?」

 井上が尋ねる。そうか、今日は月曜日だから何時もなら井上の家で歌の練習をするんだった。寝込んで曜日の感覚が多少おかしくなっているようだ。
 それは別として、身体の方は若干違和感があるが頭がぐらついたり視界が回るようなこともない。殆ど寝てたから体が鈍っているだけだろう。大学と此処を往復すれば多分消える程度のものだ。

「何時ものようにやろう。」
「良いんですか?病み上がりなのに。」
「もう大丈夫だから。」

 そうは言ってもあれだけ派手に熱を出した身だ。井上が確認したくなるのも無理はないか・・・。

「何にしても、大学から帰ったら一度連絡する。」
「・・・安藤さんはどっちが良いですか?」
「?」
「此処で待ってようかなって。」

 此処でって・・・留守番するってことか?俺の看病も済んだのにどうして・・・?

「・・・井上の家じゃなくって・・・?」
「此処で待ち合わせすれば、もし安藤さんがまた具合が悪くなっても大丈夫でしょ?」
「そんなに柔じゃ・・・。」

 言いかけたところでふと思う。このまま井上が此処に居たら俺が帰った時・・・井上が出迎えてくれるのか・・・?「お帰りなさい」って・・・一人暮らしを始めてから聞いたことがない・・・。
 念願の一人暮らしが出来るようになったせいで今までホームシックなんか無縁だったから−親と仲が悪かったわけじゃないが−、無人のこの家に帰って来ると「俺の場所がある」と思う事がしばしばあった。あの女から突然別れを告げられたあの日、飲んだくれて「思い出の品」を悉く破壊してそのまま不貞寝したけど、あんなみっともないこと家族と一緒だと迂闊に出来ないだろう。
 だから今までは一人で良かった。あの女と切れたから、この部屋にはもう俺一人以外考えられないと思っていた。だけど昨日・・・井上がバイトに出掛けた時に感じたあの気分は・・・どうしようもなかった。

もう一人じゃ駄目なんだろうか?

雨上がりの午後 第174回

written by Moonstone

 二人の朝食が始まった。何時もなら時計代りにテレビを点けて、下らないワイドショーの音声を聞き流しつつトーストとインスタントコーヒーを流れ作業的に流し込むんだが、今日はテレビの音声がない代りに目の前に井上が居る。
 寝間着姿のまま二人で朝食・・・。正直、明日からのバイトが怖い。井上が2日間泊り込んだことはマスターと潤子さんは知っている筈だし、何を言われるか分かったもんじゃない。

2000/4/9

 今日から話題(?)毎にキャプションを入れてみることにしました。では早速・・・。

[まだ続く胸の痛みで思わぬ副作用が・・・]

御来場者39000人突破です(喜)

 ・・・のっけから意気消沈気味ですが(汗)、実際、悪化の一途を辿る精神状態では喜ぶことすらまともに出来なくなっています。というより、何も嬉しいとか思う事がない日々が続いています(危険だなぁ)。
 うっかりしているとページの更新も「どうでも良いや(音声消去中)」と思ったりします。精神まで痛みの影響が来たのか、それとも痛みが元々精神的なものなのか(何かこれっぽい)・・・。今までも落ち込むことはありましたが、これほど長期で深刻なことはなかったので、どうして良いか分からないでいます。

 ちなみに昨日と今日の(音声消去中)の部分、最初は書いていたんですがやっぱり止めました。所詮力が違い過ぎますし、今は徹底抗戦する気力もありません。それ以前に最初の方でも明らかなように、気力が日増しに衰えてますから・・・(- -;)。

[「さくら」に纏わること、あれこれ]
 土曜日のお約束となった(笑)地上波での「CCさくら」の放送を楽しみにしていたのですが、番組欄にない!(衝撃)・・・よく考えてみたら、先週「放送時間が変わる」とテロップが出ていたことを思い出しました(^^;)。明日忘れないようにしないと・・・。以前居眠りして半分見逃したこともあるので(^^;)。
 私の住んでいる地域では桜が満開と発表されたそうです(ラジオで言っていた)。期間限定の典型例である(?)この時機を逃す手はない、ということで、今日(お話している時点では明日)写真撮影に繰り出そうと思います。桜だけじゃなくて他の花、それこそ道端に咲いている小さい花も撮るつもりです。

 もう一つ。「CCさくら」関係のグループを4/16の定期更新で新規設置します。まあ、絵は無理なので小説(SS)です。これが発奮材料になって落ち込み続きの状態から脱却したいという意味もあります。
 また、広報紙で報道済みですが、これに併せて文芸部門を分離分割します。SS系が2つになるので大まかな分野毎に纏めている部門も分けようというものです。名称や内容は変わりませんのでご安心を。

雨上がりの午後 第173回

written by Moonstone

「さ、出来ましたよ。」

 テーブルの上に食器を並べ終えた井上が言う。俺のテーブルは雑誌やCDが積み重なって物置同然になっていたんだが、井上が一時床に退けて二人分のスペースを確保した。日頃のだらしない生活を知られたようで気恥ずかしい。

 炊きたての御飯と味噌汁、目玉焼きがそれぞれ湯気を立てている。朝に和食なんて一人暮らしを始めて以来記憶にない。雑誌やCDの谷間−隙間か−にトースト1枚が乗った皿とインスタントコーヒーの入ったカップを置いてさっさと済ませていた。
 今までそれで疑問を感じたことはなかった。朝食の準備に時間をかけるくらいなら少しでも長く寝ていたいという気持ちがあったし、手っ取り早く済ませられるから良いだろう、というある意味投遣りな気持ちがあった。だが、今朝は温かい食事があって、それも二人分ある・・・。これに浸ってしまうと、これからは今までの朝食が侘びしくて仕方がなくなりそうな気がする。

 ベッドから出た俺は井上と向かい合わせになって腰を下ろす。井上が急須で湯飲みに茶を入れて差し出す。その時少し前屈みになった拍子に、パジャマが撓んで深めのV字を描く襟元からちらっと胸元が見えた・・・。一瞬だが。

「まずお茶を飲んだ方が良いですよ。起き抜けにいきなり食べると異に悪いですから。」
「あ、ああ・・・。そうする・・・。」

 一気に激しさを増した心臓の鼓動が聞こえやしないかと思いつつ、差し出された湯飲みの茶を啜る。熱い茶が胃に染みる。不思議とそれで食べる準備がきちんと整ったように感じる。

「普段はパンみたいですけど、たまには良いでしょ?」
「何で分かるんだ?」
「冷蔵庫見れば分かりますよ。さ、どうぞ。」

 あの女、優子が泊って行った翌朝は近くの喫茶店へ−バイト先じゃない−食べに行ったものだ。だから手作りの食事で迎える朝は実家に居た時以来になる・・・。そう考えると、寝間着姿で朝食を食べているなんて、知らない人間に見られたらどうにも説明しようがない状況だ。

2000/4/8

 また帰宅してから寝てました(汗)。寝られるだけましなんですが。

 4/7付更新の後で確認の為にこのコーナーを開いたら2997人目でした(笑)。3000人目の方には参加型企画にご協力頂きたいので、御報告をお待ちしております。今度は・・・連載に登場する喫茶店のお客として、そのキャラと会話する形式(質問も可)にしたいと思いますが、3000人目の方が御自身で考えた企画でもOKです。

 今は多少落ち着きを取り戻しています。一昨日(4/6)の夜は大荒れでした。胸の痛みはぶり返して来るし、痛み止めは効かないし、仕事は多いし(やり直しや新規もある)、作品製作はままならないし、おまけに(音声消去中)ということが積もり積もって、そこに身体の疲れが重なったせいだと思います。
 元々せっかちな性格ですし、自分が何かした分、目に見える形で結果が欲しいと思いがちです。実際問題、思ったとおりに物事が運ぶ筈はそうそうないとは分かってはいるんですが・・・理想と現実のギャップに悩む事が最近多くなっています。このページの運営は自分にとって趣味の範疇をとっくに通り越しているように思います。少し肩の力を抜けば良いのかもしれませんが、自分自身がそれを許さないんですよね(^^;)。
 それに・・・この1週間あまり、むしろ疑う方が自分を偽っていた。意地を張り続けることに疲れて、挙げ句の果てに寝込んでれば−それが全てじゃないにしても−世話がない。
 井上が僅かに眠気の残る目を擦って体を起こし、片方の手を俺の頭に回して引き寄せつつ、顔を近付けて来る。・・・額と額が軽くぶつかる。昨日は眼を閉じていたが、今は視界の全てを井上の顔が占めている。ようやく解けた緊張が再び強烈に全身を縛る。瞬きすら出来ず、思わず息も止めてしまう。

「熱、下がりましたね。」
「・・・。」
「昨日の夜、念のために熱冷まし飲んでもらったんですけど、もしかしたら必要なかったかも・・・。」

 ・・・昨日の夜・・・?井上がマスターと潤子さんと一緒に帰って来てから、夕飯食べて−一部食べさせてもらったな、そう言えば−、CDとそれに合わせて井上が歌うのを聞いてたら眠くなって・・・。それ以外何もしてない筈だが?

「熱冷ましって・・・昨日の夜、何時飲んだ?」
「安藤さんが寝た後ですよ。」
「・・・寝た後って・・・。」
「言ったとおりの意味ですよ。」

 井上は悪戯っぽく微笑む。・・・寝た後ってことは井上が飲ませたってことだよな。無意識で飲めるほど器用じゃないし・・・。!まさか、井上の奴・・・。

「く、口移しで飲ませたんじゃないよな?!」
「え?そうして欲しかったんですか?」
「そ、そうじゃなくて・・・そうしたかどうかって聞いてるんだよ!」
「・・・さあ。」
「さ、さあ、って・・・!」
「朝御飯作りますね。」

 問い詰めようとする俺をあっさり逸らかして、井上はベッドから降りる。俺はキッチンへ向かう井上の後ろ姿を呆然と見送るしかない・・・。

雨上がりの午後 第172回

written by Moonstone

 優子のことは別にしても、だ。果たして俺自身楽だっただろうか?疑い続ければ、信じなければ楽に為れると思っていた。あんな思いをするのを未然に防げると思っていた。井上と出会った当初の一月くらい前、否、つい一昨日まで疑い続けて、信じなくて楽だったか?
 ・・・最初のうちはそうだったかもしれない。だが、成り行きであれ井上との交流が深まるようになってからは、疑う方が余計に疲れたように思う。

2000/4/7

 何時もの更新時間(多少誤差あり)より約1日遅れの更新です(大汗)。前にもよく似たことがありましたが、あの時は事前通知をしましたね(^^;)。今日事前通知なしで遅れた理由は簡単です。久しぶりの猛烈な眠気に耐え切れずに横になって、気が付いたら朝だった(爆)と。最近これほど長時間(合計8時間くらい)寝たのは随分久しぶりです。休日でもあれこれやってると4,5時間程度なんてざらですし、寝ようにも痛みで満足に寝られない(痛みが眠気に勝る)のもあるんですが。

 その胸の痛みがまた酷くなってきて困ってます(- -;)。昨日の夜、途中までお話の準備をしていた時、大体1行につき多い時で10回くらいは手が止まってました。相変わらず痛み止めは効かないし(小麦粉固めたやつじゃあるまいな)、さっきもお話したようにこの痛みで夜も満足に寝られないのもあって、疲れてることが自分でも分かります。
 昨日は多少早く帰ったのですが夕食を作ろうという気は起こらず、店を探すついでに外に出ました。初めて入った店は時間のせいか客が私一人で、2人用のテーブルで黙々と食べてました。もう何もかも嫌になったなどと思いながら(汗)。空腹が和らいで多少ましになりましたが、今でもふとそう思ったりするので、かなり精神状態が悪化しているのは間違いないです(大汗)。今何かについて言い始めるとそれこそ聞くに堪えない罵詈雑言を並べ立てそうな気がするので、またの機会にします(言いたいことはたっぷりありますが)。
 感情は知らず知らずのうちに−表情に出さなくても−表に出ているのかもしれない。あの女、優子も俺のそんな感情を感じ取って、信じてくれないなら、となったのかもしれない。
 ・・・こんな風にあの記憶を振り返れるなんて、思ってもみなかった。あれからまだ時間もそう経ってないし、何より事が事だったから、延々と心の奥底に傷を刻み続けるものかと思っていた。こう思えるのは今だけかもしれない。だが、あんな記憶に振り回され続けるより、あんなこともあったな、と時に苦味を思い出すくらいの方が良いに決まってる。

 よく考えてみれば、あの記憶に振り回されるのは、捨てられてからもあの女に弄ばれてるのと同じだ。馬鹿げてるとしか言いようがない。あんな思いをさせられてまでまだ拘っているのはもしかしたら、あの女に未練があるからなんだろうか・・・?

「どうしたんですか?」
「ん・・・信じるってことが最近なかったな、って思って。」
「信じるには、相手がそれだけのものを持ってないと駄目ですからね。」
「俺の場合は・・・信用できないって決め付けてただけさ。」

 だが、井上はどうして俺を信用できるんだろう?いくら俺が病気で、そのままだと湯冷めするとはいえ、何時目を覚ますか分からない男が寝ているベッドで寝るか?

「俺は・・・信用できるのか?」
「出来ますし、してますよ。」
「何で・・・?」
「好きだから、じゃ答えになりませんか?」
「・・・。」
「私、好きになった人はとことん信用したいんです。そうじゃないと・・・自分が辛いから・・・。」
「・・・。」

 信じてないと辛い・・・。少し前ならきっと、その逆だ。信じる方が辛いんだ、とむきになって言い返しただろう。信じてあんな目に遭ったんだ、と。だが、疑って何になった?疑われていることを感じて、あの女、優子は嫌な思いをしてたかもしれない。

雨上がりの午後 第171回

written by Moonstone

 信じてる・・・。俺は信じるとかそういうものから、随分縁遠くなっていた。あの女に突然−予兆はあったが−別れを告げられてからは、女なんか信じられるか、ってなったし、その前からもあの女を信じるより疑う方が多かったように思う。もしかしたら、って・・・。

2000/4/6

 更新が遅くなりました(汗)。夜になると痛むのでよく寝られなくて寝不足気味なのもあるんですが、帰宅してから居眠りするのが習慣になってるような・・・。

 昨日の連載を書いていて、歌詞を実際に引用できればなぁと強く思いました。前の井上の告白シーン(そのうち第3創作グループで再掲載します)でも引用できればもっと色々描写できたのに、と思いましたが、昨日の分は尚更でしたね。著作権そのものを否定する気はさらさら無いのですが、どうにか出来ないものでしょうか?

 ノートPCを買おうと思います(^o^)。前の週末も具合の良い時に買い物に出たついでに下調べに行ったんですが、どのメーカーもよく似た性能なので余計に選び難かったりします(^^;)。ノートPCは、帰省とかで今使っているPCが使えない時に作品の製作やネット接続をするのが主な役目ですが、少なくとも今使っているPCよりは絶対に性能は良いので、優先事項で変わるくらいでしょうか?多少CPUパワーが低くても値段の安さを取るか、多少割高になっても新製品にするか、DVDが付いているものを買うか、というように・・・。
 いえ、DVDと言えばMATRIXとばかりに大量に並んでるんですよね。それ程面白いものかどうかちょっと気になるので見てみようかな、と思うのですがビデオデッキがないからいっそDVD、でも単体のデッキは置き場所に困るので(ポータブルは高い!)、ノートPCで見れるならその方が良いか、と。
 何にせよ30万くらいはするのでじっくり選んで決めたいのですが・・・迷ってる間に新しい機種が出て余計に迷ってしまいます(爆)。ああ、悲しきは優柔不断・・・。
 ・・・そう言えば、今何時だ?昨日は井上の歌を聴いていたら眠っちまったから目覚ましをかけた覚えはないし・・・。しかし、あれは本当に子守り歌みたいだったな・・・。
 ・・・今はまず、時刻を確認しよう。そう思って俺は枕元にある筈の目覚しを取ろうと、体を横に捻る。そこで俺が目にしたものは・・・

・・・井上だった・・・。

 俺は片方の肘を敷布団に立てた状態で固まってしまう。この驚きは、昨日掛け布団の上に突っ伏して寝ているのを見た時など比較にならない。自分の知らない間に女が寝ているのを見て驚かない奴はそうそう居ないと思うが。
 茶色がかった髪が敷布団に広げて仰向けに眠っている井上は、水色と青のストライプ模様のパジャマを着ている。規則的に上下する胸と微かに聞こえる寝息、少し俺の方に向いた寝顔のインパクトは間近で見る分、昨日よりずっと強い。だが、全く無防備そのものの井上の寝顔を見ていると、何故か妙な衝動は沸かない。その寝顔を暫く眺めていたいと思うのが正直な感想だ。

 昨日も突っ伏して寝ていたし、やっぱり看病は疲れるんだろう。そんなことを思っていると、井上がゆっくりと目を開ける。

「ん・・・あ、安藤さん・・・。起きてたんですか?」
「ついさっき、な。」

 井上は驚きもせず、眠気が残っているのか少しとろんとした表情で俺を見る。自分からベッドに潜り込んだから驚かないのは或る意味当然だが、眠そうにしているのは普段の快活な様子からはちょっと想像できない。やっぱりそれだけ疲れてたということか?それを2日も続けた井上が間近で見せる無防備な様子が、たまらなく愛しく思う。

「昨日、安藤さんが寝た後お風呂借りたんですよ・・・。先に断っておくべきだったんですけど・・・。」
「良いさ、それくらいのこと・・・。でも、何でベッドに・・・?」
「今時期湯冷めし易いですし、お風呂の後で眠くなってきて・・・。」

 俺も睡眠不足に湯冷めが重なって熱を出したと思うから、ベッドで寝たのはその意味では賢明な判断だ。だけど・・・

「俺がその・・・何かするとか、考えなかったのか・・・?」

 俺の問いに、井上は眠気の残る顔に微笑みを浮かべて答える。

「全然・・・。だって、そんなことする人じゃないって信じてますから・・・。」

雨上がりの午後 第170回

written by Moonstone

Fade in...

 ・・・視界が再び戻る。眠気を引き摺りがちな俺にしては珍しく気持ちの良い目覚めだ。額に手を当ててみるが熱っぽさは感じない。内側からの火照りも消えている。どうやら熱は完全に下がったようだ。全身を包むような倦怠感を感じない朝が何だか有り難いものに感じる。これなら大学にも行けるだろう。付き合いがあまり無い俺はノートを貸してくれとは言い辛いから、あまり休みたくない。

2000/4/5

 胸の痛み(恋の病ではないので念のため)、此処数日和らいできたと思ったら、また痛くなってきました(汗)。使わなくて済むと思っていた痛み止めを持ち歩かないといけないようです。やれやれ・・・。

 さて、今日は随時更新第2弾として「Total Guidance」と「Moonlight PAC Edition」を更新しました。「Total Guidance」は別としても(読んだ方って居ます?)今回の目玉はやはり「Moonlight PAC Edition」でしょう。初めて投稿作品(CG以外で)を掲載しましたからね。レイアウトをどうしようか考えた末、大々的に最上段に持ってきました。やっぱり記事の中で優先度が一番高いと思ったので(^^)。一度も読んだことない方も、本号は是非ご覧ください。
 レイアウトでもう一つ。グループの中で唯一変更されていない第1SSグループもレイアウトを変更しています。index.htmlの段階ではフレームを使わないことで統一したいと思っていますが、作品のシリーズが多くて数もバラバラなのでレイアウトに苦労します(^^;)。一先ず完成したら直ぐに変更します。何時の間にか25000人を突破してましたから、表示もその時代えます。
 こういうのって無茶苦茶時間が掛かるわりに作品の数には全く関係ないので躊躇するんですが、gif特許問題の絡みもあるので、やるしかないんですよね。センスが無いのも一因なんでしょうが(苦笑)。
 4曲目の「COME AND GO WITH ME」が流れ始める。井上は手に持った歌詞カードを追いながら口ずさみ、ハネたリズムに合わせて控えめに身体を揺らす。レパートリーの候補曲じゃないが、井上は結構気に入っているようだ。
 深夜に近いこともあってか控えめな音量で編まれる歌声が、子守り歌のように聞こえる。ふと井上が俺の方を向く。歌いながら柔らかい微笑みを浮かべ、そのまま俺の方と歌詞に視線を交互に移しながら歌い続ける。
 ・・・井上も子守り歌代りに思っているみたいだ。得意のあの微笑みといい、熱に魘された俺をあやした−実際そんな感じだった−ことといい、俺がガキで井上が母親というイメージがぴったり当て嵌まる。情けない気もするが、今は病気だからまあ良いか・・・と思ったりもする。投遣りな気分というより、浸っているという感じだ。

 曲は「CATALINA RAIN」を経てレパートリー候補曲の「THE GATES OF LOVE」に移る。井上は片方の手を胸に当てて、時々微かに首を振りながら歌声を紡ぐ。本物の歌手みたいな情感たっぷりの歌い方だ。だが、少しも嫌みとかわざとらしいとかは思わない。歌い方を変えたのは、勿論意味があってのことだと思うが・・・。
 CDを一緒に探した日にCDに合わせて歌うのを聴いた時より、かなり上手くなっているように思う。CDと歌声とのずれは殆ど感じられないくらいだ。あれから俺とすれ違いがあった間も練習してたんだろうか?

 そして曲は最後の「PRECIOUS MEMORY」に移る。男女混成のコーラスがあるこの曲もまた意味深というか・・・。タイトルからしてそうだ。今の俺にはまだあの記憶をそう思えるほど気持ちの整理は完了していない。だが、井上はその歌詞に乗せて「それ以上のものが必要なのよ」と仄めかして、否、語り掛けているように感じる。
 熱が残るこの頭には洗脳のような効果がありそうだ。まあ、それならそれでも良い。あんな記憶に振り回されるのは俺だってもう御免だ。剥がれ落ちた幸せのペンキの欠片を見てあの色は良かった、と嘆いたところで、再び同じ色で塗り直せることは期待出来るないし、期待する気もない。もっと奇麗な色で上塗りできるならその方が良いだろう。

 ・・・こんなことを思うこと自体、井上の歌に洗脳されかかっている証拠かもしれない。視界がぼやけてきた・・・。井上の歌声が頭に溶け込んで来る。腹が膨れたのもあるんだろうが、昨日熱で気を失った時とは違って、ずっと気分が良い・・・。視界も意識も歌声が漂う白の中に溶け込んで行く・・・。

Fade out...

雨上がりの午後 第169回

written by Moonstone

 食事が終わって再び横になった俺は、井上とCDを聞く。一人で居た時は車の走行音と同レベルの右から左へ筒抜けていく「音」の羅列にしか感じられなかったが、今は違う。ちゃんと「曲」として聞こえる。
 聞いているCDは、今度レパートリーに加える「THE GATES OF LOVE」のある『LIME PIE』で、俺の持っているものだ。井上も着替えとか洗面用具は持ってきたが、CDまで持っていこうとは思わなかったらしい。まあ、看病しに行くのに自分の「暇潰し」の道具を持って行く人間もそうそう居ないだろうが。

2000/4/4

御来場者38000人突破です!(歓喜)

 ・・・そして2日間の臨時シャットダウンを終了しました。この間も具合の良い時にはネットに繋いでメールと掲示板のチェックをしていたのですが(寝てろよ)、数名の方からお祝いの言葉を頂いて、本当に嬉しく思っています(^^)。
 私の方は不意に痛む時はありますが、以前のように動きが止まるほどのものは随分減りました。痛みというのは流血や火傷みたいに他からはなかなか理解されないと思いますが(そりゃあ血が流れてれば分かるって(笑))、私が苦しめられたのは事実ですし、「痛かったし今も痛む時が在る」としか言えません。・・・何か投げ槍ですね。ま、痛みに苛まれたこの1週間、何かと思う事が色々ありまして・・・。

 さて、気分を変えて今後のお知らせを。トップページの更新履歴や「次回定期更新」ではお知らせしていますが、4/16まで開設1周年記念祭として、定期更新以外でも何かが完成次第随時更新します。これは開設1周年で何かそれらしいことをしたいというのもありますし、これを契機に作品製作を活発にしたいという自分への発奮材料でもあります。明日に向けても早速準備中です。何が更新されるかは明日御来場下さい、としか言えません(笑)。
 それからもう一つニュースです。検索サイト「同人ネット」において、芸術創造センターが「クールサイト」として紹介されています(歓喜)。私も見てびっくりしました。登録後にメールで高い評価を戴いて喜んでまだ日が浅いので尚更です(^^;)。「同人ネット」へは下部の検索サイトのバナー集のバナーからリンクしていますので、是非一度ご確認ください。
 輝く井上の瞳から無言の圧力を感じる−威圧的ではないが−。全身が再び熱くなるのを感じながら、俺は口を開けてレンゲに顔を近付ける。するとレンゲの先がそっと口に差し込まれる。俺が反射的に口を閉じるとゆっくりと傾けられて、温かいお粥が口の中に注ぎ込まれて来る。
 一口分のお粥が口に含まれたところで、レンゲが口からそっと引き抜かれる。俺は息と一緒にお粥を飲み込む。とても味わうどころじゃない。

「こういうのって、看病らしいですよね。」
「・・・そうだな。」
「あ、怒ってます?」
「否・・・照れくさいだけ。」

 今までこうしたことがないのもあるだろうが−あの女ともしていない−、正直言ってこういうのは照れくさい。井上はどうなんだろう?

「井上は・・・照れくさくないのか?」
「まあ、ちょっと照れくさいですけど・・・やってみたい、って気持ちの方が強いですね。」
「そ、そう・・・。」

 やっぱりこの辺り、井上と俺は違う。俺もあの女、優子と付き合っていた時一度やってみたいと思ったことはあるが、どうしても切り出せなかった。理由は言うまでもない。照れくさかったからだ。
 一度すれば満足するかと思いきや、井上はさらにお粥を掬ってきっちり数回湯気を軽く吹き飛ばしてから俺の口に近付ける。どうやら一回したら満足というわけではないらしい。

「・・・まだ?」
「一回だけじゃ看病にならないでしょ?」

 観念した俺はおかずを適当に割り込ませながら、井上にお粥を食べさせてもらう。お粥が乗ったレンゲが差し出されるのも次から次へじゃなくて、適度に間隔を空けられるから食べるのを慌てる必要はない。単に自分の欲求を満たしたいがためにやっているんじゃないんだと思うと、やっぱり嬉しい。そして、そんな心遣いを素直に受け止められていることも嬉しく思う。
 災い転じて福と為る・・・。悪い時には悪いことばかり続くものだと思っていたが、意外にそうでもないようだ。もっとも俺の場合、あの女にいきなり別れを告げられたことはまだしも、それに続いた井上との出会いは自分で勝手に災難と思い込んでいただけなんだが・・・。

雨上がりの午後 第168回

written by Moonstone

 井上はレンゲでお粥を掬うと、ご丁寧にも立ち上る湯気を数回吹いてから差し出す。こういうシーンは漫画か小説くらいのものかと思っていたが、まさか自分がその立場になるとは・・・。

「はい、どうぞ。」
「・・・。」
「早く食べないと冷めちゃいますよ。」

2000/4/1

本日で開設1周年を迎えました!(大歓喜)

 ・・・なのに出鼻を挫かれてしまいました(泣)。以前からお話していた心臓の痛みに関して総合病院で精密検査を行った結果、心臓そのものには異常はないものの、痛みの原因を特定できるには至らず(胸膜炎の疑いがあるそうな)、暫く投薬を行いながら様子を見ることになりました。実際問題、現在も薬で痛みを軽減していますが、効果があるのか無いのか分かりません(飲んでも暫く痛いし、時間が経過してもやっぱり痛い(汗))。
 このような状況では予定していた開設記念祭はおろか、通常の更新も満足に行えないと判断して、4/2,4/3両日は臨時にシャットダウンさせて頂き、療養に専念することにしました。散々な2年目のスタートとなりましたが、これからも御来場頂けると幸いに思います。

 私の病状報告はこのくらいにしておいて、病院の様子でもお話しましょう。移転新築されたその病院は何だかホテルのような雰囲気で、凄く奇麗でした。ですがやっぱり待ち時間は長い。エコー撮影(したんですよ)の時には30分以上待たされるし、診察までにも患者さんでいっぱいの待合室で同じくらい立ちっぱなしで(席は占拠されてた)待たされ・・・。その間もしっかり痛んでました(泣)。
 極めつけは薬の受け渡し。何で1種類の薬を貰うだけで1時間近くも待たされにゃならんのだ?!(怒)その間も当然痛みましたし・・・。患者さんの数に対して医者の絶対数が少なすぎます(医者余りなんて元々大嘘ですが)。こういう時に税金の使い方を間違ってるとつくづく思います。あああ、まだ痛いぃ・・・(泣)。
 井上は席を立っていそいそと台所へ向かう。その足取りが妙に軽く見えるのは果たして気のせいか、俺の思い上がりか・・・。何にしても井上のお粥がまた食べられるのは嬉しいし、早く治したいと思う。それにこれ以上、井上に迷惑を掛けたくない。

 暫くして解凍を済ませた魚の照焼きと茹で野菜に加えて、土鍋に入ったお粥が運ばれてきた。膝に乗った盆がちょっと重いが今は全然苦にならない。早速俺は土鍋の蓋を開ける。封じられていた白い湯気が塊となって飛び出し、中央に朱色の梅肉が際立つ白い柔らかい食べ物が見える。

「じゃあ・・・いただきます。」
「はい、どうぞ。熱いから気を付けて下さいね。」

 真っ先に手を伸ばしたのは言うまでもなく、お粥を掬う為のレンゲだ。白い平面を崩すのはちょっと惜しい気もするが、レンゲを差し入れて一口分を掬い、立ち上る湯気に数回息を吹きかけて口に入れる。

「・・・美味いな、やっぱり。」
「そうですか?味は変えてないつもりですけど・・・。」
「・・・否、美味い。」

 薄い塩味に梅肉から染み出した微かな酸味。これは昼間のものと変わらない。だが、いや、だからこそ美味いんだと思う。自分が食べたいと思って作ってもらったものが、味わいたかった味を持っていたから・・・。
 熱がまだ残っている割には食は進む。潤子さんお手製の照焼きも勿論美味いが、やっぱり既に半分以上なくなったお粥の力が大きい。量から考えても、お粥の方が減り具合が早い。

「・・・ねえ、安藤さん。」
「ん?」
「食べさせてあげましょうか?」

 俺は思わず噴き出しそうになって寸前で口を押さえる。井上の目は冗談を言っている様子じゃない。何を期待しているのか輝いているようにすら思える。あ、実際期待してるのか・・・。

「じ、自分で食べられるから良い・・・。」
「これも看病のうちですよ。普段だと恥ずかしくてやろうと思ってもなかなか出来ないですけどね。」

 じゃあ、前々からやりたいと思ってたのか?戸惑っていると井上は俺の手からレンゲを半ば奪い取る。この場合、看病は名目にすぎないようだ。

雨上がりの午後 第167回

written by Moonstone

「じゃあ、お粥も作りますね。」
「ん・・・。」

 ちょっと素っ気無いと思う。だが、お粥が食べたい、と率直に言ったことが今になって照れくさく感じる。井上に甘えるのは今に始まったことじゃないんだが、甘えることに慣れていないせいかもしれない。俺にしてみれば甘え上手というのは変に思うが・・・。

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