【単独制作作品No.100 星の穴場】

written by Moonstone

気まぐれで夜の町を走った。仕事帰りに突拍子もなく始まった夜の旅。
仕事だらけの日常から僅かな間だけでも脱出したかった。
自分の要求だけを受け入れてみたかった。
日頃行かない海辺に車を走らせ、着いたところは道の駅。

営業はとっくに終了。自動販売機の明かりだけが煌々と灯る。
近くに波の音が聞こえるけど、暗過ぎて黒しか見えない。
駐車場も真っ暗。奥に行くと街灯すらない。
寂れた道の駅だからかと訝ったが、ふと空を見上げた瞬間、理由は分かった。

星が犇めく夜空。見慣れた大きな星の隙間を小さな星が埋めている。
時が夏なら天の川も見えそうなほど、小さな星までくっきり見える。
見たこともない星空が、上を見上げるだけで見える。
今目に見える光は、星の光だけ。そんな世界が此処にある。

夜遅く走らなかったら、行ったことがない場所に行こうと思わなかったら、
ずっと此処を知ることはなかっただろう。
此処は誰にも教えずにいたい。
こういう秘密は、今傍に居ない人に教えるには勿体ない。
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