特別企画・ある韓国人との会話
Special project:Talking with a Korean

 芸術創造センターこぼれ話(以下、こぼれ話)のリスナーの皆様はご存知でしょうが、私Moonstoneは誕生日(6/29)に外食にと出向いた店で、偶然同じ職場の韓国人と出会いました。その席で、7/9に会いましょう、と約束しましてそのとおりに出会った店に赴き、そこで食事を共にしながら韓国の文化、日本に対する認識などを問答しました。以下にその要旨を紹介します。
 その韓国人は40代の男性で、博士号を得ていますので、Dr.Aとします。問答は基本的に英語で行い、必要に応じて店の人に頼んで借りたメモに漢字や略地図などを書きました。韓国の文化とは、韓国の一知識人から見た日本とはどんなものかを垣間見ていただければ幸いです。
 最初にDr.Aがどのような形式(短期か長期かといった具合)で来日されたのかを聞きました。その後私が韓国文化について聞きたい、と申し出て快諾されました。今までこのような機会はなかったとのこと。ちなみにDr.Aは職業の関係で海外駐在経験が長いのです。

Moonstone(以下、M)
韓国では車は道をどう走るのですか?

 ご存知の方も多いでしょうが、日本では車は左側を走りますがアメリカは右側を走ります。Dr.Aはアメリカ駐在経験をお持ちなので、日本と韓国との違いに戸惑いがあったのではないか、と思ったのです。

Dr.A(以下、A)
韓国では車は右側を走ります。

 話によると、韓国、アメリカ、ドイツ、フランスは右側、日本とイギリスは左側を走るそうです。日本に最初に来た時は戸惑ったそうです。


私は以前、韓国ではキリスト教が多数と聞いたことがあるのですが、どうなのですか?
 日本では、年末年始は神道、結婚式は神道だったりキリスト教だったり、キリスト教で重要な年間行事の一つであるクリスマスはありますし、葬式は仏教だったりとごった煮状態ですから、この機会に聞いてみたかったことの一つなのです。


 韓国では約半数が仏教徒で、キリスト教徒は25〜30%くらいです。

 これには驚きました。確かに日本と比較すればキリスト教徒は多いですが、実は韓国では仏教が多数派なのです。仏教の伝来がインド→中国→朝鮮→日本という経路を辿ったことを考えれば、ある意味自然なことかもしれません。
 それに続いて韓国にとっては隣国であり、同じ民族であり、対立している国である北朝鮮の状況に移り、北朝鮮は唯物論のため宗教はない、という話に(唯物論とはマルクスが提唱した共産主義の基本概念で、簡潔に言うと、可逆的に物証出来る存在のみ扱う、という主旨のものです)。
 話題が宗教関係ということで、舞台は韓国(朝鮮半島)から日本に。Dr.Aは日本には神社があることをご存知でしたが(神社は神道の建造物である、と説明しました)、ここから俄かに口調が厳しくなりました。


何故小泉純一郎(首相)は靖国神社に参拝するのですか?

 小泉首相が頻繁に靖国神社に参拝しているのはご存知でしょう。靖国神社には、アジア各国を侵略した軍国日本の指導者、東条英機などA級戦犯が神として祀られています。その他「天皇のために死んだ」人間を神として祀っているのです。そのため、強制連行された韓国・中国などアジア諸国民も勝手に神として祀られていますし、空襲や地上戦が展開された沖縄で犠牲になった民間人は対象外となっています。
 靖国神社のこの行為は勿論、靖国神社に参拝することは、韓国は勿論、中国など他のアジア諸国の激しい怒りを買っています。なのに何故参拝が繰り返されるのか、非常に疑問に感じているのです。日本ではせいぜい「アジア諸国が反発」と紹介する程度ですが、アジア諸国では靖国神社参拝の度に猛烈な反発が挙がっています。日本の侵略による傷痕は決して消えていないのです。


 それは日本政府が未だにあの戦争は侵略戦争と認めないばかりか、美化、正当化さえしているからです。

 それを受けてDr.Aは、日本のヒロヒト(昭和天皇)とドイツのヒトラーとイタリアのムッソリーニは第二次世界大戦を引き起こした侵略者だ、と言いました。私はドイツとイタリアは戦後国旗を変えたが、日本はそれまで何らの法的根拠を持っていなかった「日の丸」を国旗としていること(詳細は「こぼれ話」の「見解・主張書庫」を参照してください)、今、日本では、自民党は勿論、民主党も公明党も憲法9条に焦点を当てて憲法「改正」を競い合っている状況にあることを話しました。知らない、では済まされませんよ。特に有権者は。
 Dr.Aは、日本には共産党と社民党があるがその違いは、と尋ね、私は、共産党は日米軍事同盟(「日米安保条約」と言っても通じず「軍事同盟」と言わないと理解されませんでした)や憲法9条「改正」に反対しているが、社民党は日米軍事同盟を容認しているなど程度の差はあっても「右寄り」政党の一員だ、と説明しました。
 共産党の態度にDr.Aは疑問を抱いた様子を見せました。韓国には共産党がありませし(マレーシアやシンガポールなど、アジアにはその国の歴史的背景などの関係で共産党が存在しない、或いは認められていない国が多いのです)、北朝鮮が共産主義を名乗っていることもあるのでしょう。

共産党は資本主義に反対しているし、私有財産を認めていないではありませんか。
 「共産主義=私有財産否定」というこの手の誤解は多いです。その関連で、共産主義は私有財産や市場経済を否定しているのに、中国では私有財産が認められているし、市場経済が発展しているという「矛盾」にDr.Aは言及しました。当然派生する疑問ではあります。


 マルクスが提唱した共産主義は本来、私有財産を認めています。

 共産主義はあくまで「生産手段の共有」を目的とする思想です(これを歪曲して「共産主義になると女性も共有されるから妻も共有されることになる」などという馬鹿げたデマもありますが)。
 レーニンが主導したロシア革命は、民主的な手続きで選出された代表者で構成される議会という組織がなかったので、抑圧を打破するには実力行使しかなかったが故の出来事であり、「革命=暴力」という公式は必ずしも成立しないこと、スターリンや金日成、金正日などが自らを神のように扱うよう強制した(している)ことは共産主義ではないこと、共産主義を提唱したマルクスは、提唱当時から議会を通じた平和的且つ民主的な政権交代を提唱・支持していて、(日本)共産党もそれを推進していること、共産党が政権を握る中国では市場経済の発展とそれに伴う経済格差是正に取り組んでいることを話しました。
 この説明にはDr.Aもかなり興味を抱いたようでした。韓国は共産主義を名乗る北朝鮮と対立しているという背景もあって、反共意識が日本並み、或いはそれ以上に根強いのです。韓国では先の総選挙で民主労働党という左翼政党が史上初めて国会で議席を獲得しましたが、それに象徴されるように、韓国でも徐々にではありますが誤解に基づく反共意識が薄まりつつあるようです。
 話題が経済問題に及んだことでDr.Aは日本企業のアジア展開に言及。日本企業はアジアの国民を安く雇って多く儲けている、これは経済侵略だ、と厳しく批判。私は、日本企業のアジア展開は日本の雇用、特に若年層の雇用に深刻な影響を与えている、と応じました。

 ここで料理や酒を注文して一息。私は韓国文化に話を戻して、結婚式のスタイルについて質問しました。


韓国では結婚指輪を填めるのですか?
 先に、キリスト教が多数ではない、と聞いたので、結婚式での指輪の交換や左手薬指に指輪を填めるという習慣はないのでは、と思ったからです。


韓国でも結婚の際に指輪を交換します。その時にはダイアモンドの指輪を交換するのが一般的です。

 指輪の交換という儀式は結構共通しているもののようです。気になったのはダイアモンドの指輪を交換するのが一般的、ということ。何故ダイアモンドなのか、と私が尋ねたところ、Dr.Aはこう答えました。


ダイアモンドは最も硬い物質です。そのため「強い絆」「決して離れない」という意味があるのです。

 なるほど、と思いました。ダイアモンドの強度に夫婦の絆の強さをなぞらえているわけですね。韓国は儒教の「女性は男性の家に入ることが出来ない」という思想の影響で夫婦別姓ですが、姓が別であっても夫婦であることには変わりないしその絆を強く持ちたい、という意識があるようです。
 ちなみに、子どもは父親の姓を引き継ぐんですよね、と尋ねたところ、Dr.Aは、そうです、と応じました。これも先に挙げた儒教の影響です。日本でも夫婦別姓が言われていますが、子どもの姓をどうするかを事前に決めておかないととんでもないことになるでしょう。
 私は、日本では結婚指輪にはプラチナがよく使われる、と話しました(プラチナが宝飾品などとして使われるようになったのは近代に入ってからです。何故なら、プラチナは融点が約1700℃と非常に高くて、それだけの高温を出せる溶鉱炉が製造出来なかったからです)。韓国ではダイアモンドの指輪を交換するのが一般的だが、プラチナや金も使われることがあるとのことです。


ダイアモンドは非常に高価なので(笑)、披露宴では親族や友人を沢山呼んで祝金(日本で言うところの祝儀)を集めます。披露宴では300万円、高いものでは2000万円以上することもあります。

 披露宴に金をかけるのは日本だけじゃないようですね(笑)。金がかかる分は祝儀で元を取ろう、というあたりも同じですね。しかし、2000万円もかける場合もあるというのには絶句。それなら中古のマンションでも買えるんじゃ、と私は思うんですけどねぇ。

まだまだありますが、順次公開します。長いですぞ(笑)。


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