芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2005年7月31日更新 Updated on July 31th,2005

2005/7/31

[腰が固まった・・・]
 最近の傾向に漏れず昨日も朝5時に起きて、朝食もそこそこに執筆開始。思いの外時間がかかり、正午頃に完成。昼ご飯を作ろうかと思ったら・・・立てない(汗)。座った姿勢から腰が上がらないんです。
 今週は本業でじっと座って神経を集中する作業が多かったんですが、昨日の執筆もそれと同じ。「書くこと」にどっぷり浸かってしまったあまり、腰に猛烈な負担がかかってしまったわけです。腰がきしみながら痛む中、無理矢理姿勢を伸ばして食事の準備&食事。この後今日付更新に向けた作品の構想固め&執筆を行うつもりだったんですが、痛くてどうにも・・・。
 夕食後3時間以上横になって腰を伸ばしたことでどうにか戻りましたが、まだ安定しません。よって更新するなら明日付以降に持ち越しとします。とてもPCの前で試行錯誤しながら書ける状態ではないので(汗)。まあ、月初めに何か出来れば好スタート、と思うようにします。

「そのイベントって、何時から始まるんですか?」
「あ、えーと・・・。午後11時からだったと思います。宏一、どうだ?」
「そのとおり。午後10時受付開始で、午後11時開始。カウントダウンが始まるまでには、屋外特設ステージでイベントがある。入場料は無料だが、場所が限られてるからあまり遅いと入れないかもしれない。」
「どうせ行くなら早めの方が良いな。」

 人気のイベントとなると開場前から行列が出来ることは、店のクリスマスコンサートで経験済みだ。開始まで1時間あるから、といって受付開始時刻に行っても、入場制限に引っかかる可能性が高い。

「仮に行くとなると、晩飯は此処じゃなくてスキー場の中かそこに近い場所で摂るのか?」
「否、食事は此処だ。イベントがあるってことでスキー場内や近場の食堂とかは、混雑してかえって遅くなる可能性がある。此処に戻って来るから、祐司は晶子さんと相談して行くかどうか決めておいてくれ。」
「分かった。」

 今後の方針が固まったのを受けて、食事に専念する。スキーに興じる面子と比べて、町を気ままに散策する俺と晶子は余裕がある。晶子は去年俺が帰省したことで寂しい思いをしたようだから、晶子の意向を尊重したい。晶子のことだから、自分のために俺一人が面子と別行動を取るのを申し訳なく思うだろうが、その辺のフォローはしないとな。

雨上がりの午後 第1959回

written by Moonstone

 耕次の専門分野の用語を使えば「前向きに検討」しているってところか。この地方で有名だと言うし、耕次は色々なことに積極的だから−対する俺はギターのくせに消極的過ぎとよく言われた−、好奇心が沸くんだろう。

2005/7/30

[更新は明日以降]
 何か更新するつもりで構想を練っていたんですが、荒削りのままで進まず、何時の間にやら寝入っていました。慌てて体裁を整えて出す、というのも何ですので、今日あたり腰を据えて取り組んで出来れば更新します。書き下ろし予定が3作(うち2作は長編若しくは連載もの)あるので、そこまで手が回るかどうか疑問ですが。
 ふと気付いたのですが、明日で連載は1959回。8月は丁度1960回と10の位が更新した段階から始まるので、2000回の目処が立てやすいのです。8/31までで1991回になりますから、2000回は9/9になる計算。これも「気付いたらあっという間」なんでしょうね。7月もそうでしたし。
 月代わりが近いということは背景写真を選考しないといけませんが、現在展示している花火の写真はどうも華やかさに欠けるというか、花火らしくない地味なものが多いので、どうしようかと思案中です。派手だとコンテンツが見辛くなるので地味な方が良いかな、とも思います。この辺はなかなか決め難いです。

「で、収穫はあったのか?」
「事前に店頭よりかなり安くなるとは聞いてたけど、実際かなり安かった。俺は饅頭と木彫りの猿の置物。」
「私は漬物3種類と、祐司さんと同じく木彫りの猿の置物です。」
「猿の置物と漬物は分かるが、饅頭はどうするんだ?」
「帰りに実家に寄る時を想定して買った。」
「可能性として含めておくのか。寄った時は手土産になるし、寄らなかったら晶子さんと食べれば良いだろうし、適切な選択だな。」

 耕次とやり取りする。まだ実家に立ち寄るかどうかを決めたわけじゃないが、可能性が消滅したわけじゃない。その時手ぶらというのも何だし、漬物は意外に好き嫌いが出るから、無難に饅頭にした。父さんも母さんも糖尿じゃないし、甘いものは人並みに食べるから、その観点からしても無難な選択だろう。手土産に饅頭はよくある話だが、手土産に漬物という話はあまり聞かない。
 従業員3人がかりで全員分の朝飯が運ばれて来た。朝食は9時までだからそんなにのんびりしてはいられない。量はそこそこだが品数はやっぱりかなり多い。これだと後片付けも一苦労だろう。俺はバイトで注文を取って出来た料理を運んで後片付けをするのが主だが、使用済みの食器を洗うのはキッチンを仕切る晶子と潤子さん。料理を作りつつ次から次へと運ばれて来る食器を洗うんだから、俺だったらうんざりするだろう。晶子は自炊しているからその辺は台所で働く者として意識が完成されているようだ。

「話は変わるが、今日のカウントダウンイベントはどうする?」
「うーん・・・。まだ何とも言えない。折角来たんだからどんなものか見てみたいっていう気持ちもあるけど、混雑の中にわざわざ突っ込んでいくのも気が引けるからな。皆は行くのか?」
「その方針ではある。」

雨上がりの午後 第1958回

written by Moonstone

 案の定、食堂は閑散としている。従業員が片付けに追われる中、俺達は近くの空いている席に座る。程なく従業員が急ぎ足でやって来て、お絞りと湯のみを置いて、茶を汲んでから、少々お待ちください、と言って足早に立ち去る。俺も普段のバイトで混雑している店内を走り回っているから、従業員の気持ちはそれなりに分かるつもりだ。

2005/7/29

[腰痛再燃]
 連日拡大鏡を使っての半田付けで、このところ鳴りを潜めていた腰痛が再発しました。一度始めたら出来る限り続けないと、一旦半田ごての電源を切らないといけないので(半田ごての先端の鉄めっきが酸化して使い物にならなくなってしまうから)動くに動けず、縦横ほぼ10cmの基板を1枚仕上げるのに1時間半はかかるので、腰が硬直してしまうんです。
 使用する部品は殆どが表面実装タイプで、抵抗は米粒より小さく横1mmあるかないかです。そのため拡大鏡を使うんですが、チェックする段階になって拡大鏡を退けると、自分の手がやけに小さく見えます(笑)。
 ようやく1枚出来たと思ってチェックしたら、1本配線が寸断されているのを見つけてがっくり。これも拡大鏡で見て判明したんですが(そうでないととても見えない)、かなりがっくりします。今日で予定数は作れそうですが、腰への負担が増しそうです。

「ところで祐司。お前と晶子さんは朝市に行ったのか?」
「行ったぞ。帰って来てからまだそんなに時間経ってない。」
「6時から今までずっと行ってたのか?」
「はい。6時少し前に起きて。」
「そうですか。よく起きられましたね。」
「普段、朝ご飯を作るために6時には起きていますから。」

 俺は最近まで時間ギリギリまで寝ていた。あの事件以降空きコマの有無に関係なく晶子と一緒に通学するようにしたから、普通の目覚まし時計に加えて携帯のアラームも加わったし、使命感もあってか寝過ごすことなく起きている。夜遅いのは相変わらずだから眠い筈なんだが、慣れというのは凄い。
 対する晶子は行きに俺を迎えに来てくれるから、その分朝が早くなる。俺と一緒に通学するようになったことで、これまで6時半起きだったのが6時と30分早まった。朝の30分というのは感覚的に昼間の1時間以上に匹敵する。早めようとするのは尚更だ。だが、晶子は何の苦もなく起きている。今日だって俺より先に目覚ましに反応して起きてたし。

「此処で立ち話も何だし、朝飯食いそびれないうちに食堂へ行くか。」

 耕次の音頭で、全員揃って食堂へ向かう。1階へ降りたところで、ぞろぞろと続く人波と出くわす。若年層は俺達と入れ替わる形で階上へ、年配層は持っていた上着を羽織って出入り口へ向かう。やはり食堂の混雑のピークが過ぎたようだ。

雨上がりの午後 第1957回

written by Moonstone

 全員揃って寝過ごしたらしい。揃って起きるのは偶然のなせる業だろうが。昨日は俺と晶子より早く起きていたのに今日は全員寝過ごすとは、初日で結構蓄積した疲労が一挙に吹き出たんだろうか。

2005/7/28

[サラ金とマスコミの癒着]
 マスコミ媒体、「伝統」の紙や電波である新聞や雑誌、TVやラジオもそうですが、Webページでもサラ金のCMがでかでかと登場するところが結構あります。スポーツ紙や大衆紙のみならず、全国紙でもです。マスコミはスポンサーがないとたった5分の天気予報さえも自前で作成出来ない(しないのかもしれませんが)、スポンサーにめっきり弱いのは此処などで何度も指摘していますが、サラ金のCMをでかでかと出す無神経ぶりには呆れます。
 サラ金は法定金利以上の利息で金を貸したり、融資の名目で借金を重ねさせるなど数々の違法行為を重ねています。先に業界大手の武富士が社会問題になり、先日やはり大手のアイフルが全国一斉訴訟を起こされるなどしており、マスコミでのCMで負のイメージを覆い隠そうとしているのが透けて見えます。マスコミはサラ金に広告欄やCM、バナーなどでそれに手を貸しているのですから、ある意味共犯者と言えるでしょう。
 「魂の降る里」でも言及していますが、例えば新聞の広告欄は名刺の半分ほどの小さいサイズでも数万から数十万、1面広告ともなれば数千万、場合によっては億単位の金が動くところです。サラ金業界が、政治家に献金攻勢をかけて法定金利の引き下げを阻止しているという実態や、マスコミがサラ金に広告料と引き換えに宣伝の場を提供している実態を考えると、いかにサラ金の金が潤沢か、そして広告料のためなら企業の社会性など不問というマスコミの倫理観のなさが表れています。こんなマスコミなど早々に切り捨てなければいけません。

「宿に戻ろうか。」
「はい。」

 朝飯は混雑を過ぎてからでも構わない。普段は平日朝早い一方で土日は昼まで寝てるという両極端な生活をしてるから、1時間や2時間のずれはずれにならない。それに、急いで朝飯を食べないと遅刻する、とかいう切羽詰った状況でもないから尚更だ。朝市の時間は間もなく終わるからとりあえず宿に戻って、食堂の混み具合を見て今後の行動を決める。そんな流れで良い。
 宿に戻るには意外に歩く必要があった。朝市の店は大通りに沿ってずらりと並んでいたし、幾つもの店を見て回ったから、どうしても遠くに行ってしまう。宿に着いた時には8:00過ぎ。受付で部屋の鍵を返してもらって食堂に向かう。予想どおりといおうか、食堂は混雑している。やっぱり混雑のピークを過ぎるまで待った方が良さそうだ。
 俺と晶子は部屋に戻る。食べ物関係は冷蔵庫に入れ、置物関係は鞄の近くに置いておく。漬物や饅頭は常温で腐るものはあまりないが、冷蔵庫で保管しておくのが無難だ。この町を出るまでに今日を含めてまだ4日あるからな。
 改めて携帯で時刻を見ると、8時15分過ぎ。そろそろピークを過ぎる頃だろう。あまり遅くなると朝飯を食べ損なう。まあ、食べそびれても外で食べれば良いだろうけど。

「祐司さん。食堂へ行ってみませんか?」
「そうだな。時間も丁度良いくらいだし。」

 晶子も同じ考えだったようだ。揃って部屋を出る。俺が鍵を閉めようとした時、両側のドアが開いて人が出て来る。言うまでもなくそれは耕次達。俺と晶子を見て少し驚いた様子を見せる。

「祐司。今から朝食か?」
「ああ。もうそろそろ混雑のピークを過ぎ始めただろうからな。そういう耕次は今起きたのか?渉も。」
「目覚ましはかけておいたんだが、気付かずに寝入っててな・・・。」
「不覚だ。完全に寝過ごした。」
「勝平と宏一もか?」
「耕次と渉と同じく、完全にノックアウトだ。」
「体力には自信あるつもりだったんだけどなぁ〜。」

雨上がりの午後 第1956回

written by Moonstone

 晶子は自炊をしていることもあって漬物の他野菜も欲しい様子だが、漬物だけにする。100グラム70円のものを3種類それぞれ200グラム、つまり420円。置物は同じ大きさの猿が向かい合って両手をつき合わせているものを選ぶ。こちらも500円。それぞれが竹ひごで編まれた籠に−最初に買った時にもらった−買ったものを入れたところで携帯で時刻を見る。8時まであと20分を切ったところだ。宿での朝食の時間は7時から9時。丁度混雑のピークを迎えている頃だろう。

2005/7/27

[7月で台風]
 私が住んでいるところは当初上陸予想圏内だったんですが、台風が東に逸れたので午前中に一時雨の勢いが強まったくらいでした。私は自転車若しくは徒歩で通勤しているので、極端な話ずぶ濡れになってでも帰宅出来ますが、電車通勤の方はこういう時不安でしょう。「これで止まるか?」と思うような雨でも運転見合わせになることがありますから。
 私が子どもの頃、台風の上陸時期は8月下旬から9月上旬、早くても8月中旬だったのですが(210日とかいう言葉もあるくらいですし)、近年はかなり上陸時期が早まっているように思います。ある意味台風に慣れている沖縄はまだしも、近年台風の直撃を受けることが多くなった東北以北は尚更「もう上陸か」という気持ちでしょう。
 地震や台風といった自然災害は防ぎようがありません。ただ、被害を抑えることは出来ます。台風で言うなら浸水被害や土砂崩れを防止することです。これらこそ本来の意味での公共事業と位置づけるべきです。需要見込みのない空港や道路を作るのは公共事業ではなく、建築企業向けの形を変えた資金供与であり、資源の無駄遣いです。

「へえ。こんな大きい白菜が1つ丸ごとで80円ですか。」
「どれも今朝採って来たばかりのものですよ。」

 晶子は値札と品物を見比べて目を輝かせている。晶子は自炊してるから、普段買っているものと比べるんだろう。自炊をとうに放棄している俺は「一度にいっぱい買えて安ければOK」程度の認識しかないが、晶子は普段の買い物でもかなり吟味してるからな。
 他の品物も興味深そうに見てから、晶子と共に他の店を見て回る。漬物も真空パックに入ったものから、木製の桶(おけ)−この辺が情緒豊かだ−に入っていてグラムあたり幾らで売るという、漬物らしくない豪快な売り方もある。置物は猿の他にシンプルなものだと雪だるま、手が込んだものだと山車−この町の春の祭りで使うものを模したものだそうだ−まで色々ある。値段も昨日伯母さんが言ってたとおりかなり安い。単品で1000円以上のものを見つける方が難しい。店頭の置物は小さいものでも7、800円はしたけど、この朝市では500円くらいだ。
 朝市の賑わいは穏やかなものだ。閑散としてはいないが、人波に押されて動かないといけないなんてことはない。ゆったり気ままに店に立ち寄り、品物を見る。この町の名物の1つだというからもっと派手なものかと思っていたんだが、予想が外れてほっとしている。
 幾つか見て回って品物と価格の大まかな傾向を把握したので、購入目的に品物を見て回る。食べ物だと漬物、そしてオーソドックスに饅頭。饅頭は白い表面に黒餡で波模様が描かれているという、ちょっと珍しい一品。置物は猿。掌サイズのもので色々あるが、同じ大きさの猿が寄り添って座っているものが微笑ましい。
 普段家でまともな食事をしない俺が、漬物を買っても意味がない。漬物に不可欠とも言えるご飯を炊くこともしないからだ。よって食べ物分野は饅頭に決定。掌サイズの土産物にしては大きめのものが16個入りで1000円。帰りに実家に立ち寄る可能性を考えての選択だ。置物は同じ大きさのものが寄り添って座っている、これまた掌サイズのものにする。こちらは500円。

雨上がりの午後 第1955回

written by Moonstone

 次は野菜関係。昨日までにも見た八百屋を小さくして、品物だけそのまま持って来た感じだ。白菜、大根、株・・・。冬野菜ばかりだな。温室栽培はしてないんだろうか。それをやってしまったら、普通のスーパーと変わりなくなるだろうが。

2005/7/26

[名前はどうでも良い]
 次期Windowsの名称が発表されました。開発名が「Longhorn」でしたが、商品名となればWindowsを含めたものになるでしょうから、別に驚きも戸惑いもありません。それより、WindowsのOSとしての基幹機能と他の機能を明確に分離して、修正パッチを毎月発表しても次々新しいセキュリティホールが出来るようなことを早急に止めてもらいたいです。
 OSとしての基幹機能はフォーマット(HDDだけでなく画像やテキストなどファイル全般)と入出力があれば十分です。マウスをクリックしたらウィンドウの表示はどうするか、ブランクの記録メディアをドライブに入れるとどうするか、といったことは、基幹機能があれば別途プログラミング出来ますし、その方が後々修正もし易い筈ですし、安全です。
 何故WindowsというOSを中心どころかその機能と一体化させようとするか?何のことはない。WindowsというOSを大量に売りさばき、Windowsの機能を含む(含まざるを得ない)ワープロソフトなどを売ることで更に稼ごうとしているからです。WindowsとIEの一体化(同化と言うべきか)は益々進みますし、プログラミングが安易なおかげでハードウェア、特にメモリに依存する割合が大きくなります。HDDは今は数100GBが万札2、3枚で買えますが、メモリはそうもいきません。結果的に割を食うのは我々消費者なのです。独占寡占が進んだ悪しき例は、Linuxが進歩するなどしない限り解消されないでしょう。
 俺は受付に向かい、カウンターに居た伯母さんに鍵を預ける。これはこれまでと全く変わらないが、こんな早くから居るということは、朝市に出かける客が居ることを見越してのものだろうか。

「お願いします。」
「はい。ごゆっくりどうぞ。」

 意外とかそういう目では見られない。やっぱり朝市も町の行事の1つという位置づけで、宿は客が何時でも出かけられるように誰かがこうして番をしているんだろう。客商売の大変さは俺の実家でも今のバイト先でも経験はあるが、宿のように事実上24時間営業じゃないからな。
 俺は何やら相談事をしている女性グループの脇を通り、待っていた晶子の手を取って宿を出る。その瞬間、剥き出しの頬に強烈な冷気が突き刺さる。この寒さは感覚的に新京市を上回る。雪が積もるくらいだから寒くて当然だろうが、多少厚めに着込んで正解だった。雪こそ降ってないが、これだけ寒ければ雪は要らない。
 俺達が泊まっている宿の周辺は同業者、つまり宿が集中していることもあって、あまり人気がない。朝市目当てらしい人達は居ることは居るが、人数は数えられる程度だ。年齢層で言えば、俺と晶子は飛び抜けて若い。まあ、若さを自慢するつもりなんて毛頭ないし、俺と晶子の目的は人間ウォッチングじゃなくて朝市だ。いちいち人の様子を気にしていたら何も出来ない。俺は晶子の手を引いて歩き始める。晶子が直ぐ隣に並ぶ。
 宿が密集するエリアから大通りに出ると、雰囲気が一変する。この寒い中に幾つもの露天が軒を連ね、商品が陳列されている。早くも商品を品定めしている人が居る。携帯で時刻を見るとまだ6時になってないが、客が来たら開始、という意識で、開始時刻は目安程度のものなんだろう。俺は晶子と一緒に朝市を見て回ることにする。
 最初は土産物関係。木彫りの猿の置物が主体だが、大きさは店頭にあったもののように何処に置くのか聞きたくなるようなものはなくて、掌サイズのものだけだ。まあ、大きなものを置いておいても客も持って帰るのに困るだろうから当然と言えば当然か。値段は・・・確かに安いように思う。土産物屋の店頭で見た時には値段まではっきり見てなかったから、断定は出来ないが。
 最初の店で買ってしまうと、他の店で同じようなもので値段が安いものを見つけてがっくり、なんてこともあるだろうし、店はざっと見た限りでも大通りの両脇にずらりと並んでいる。もう少し見てからでも良いだろう。晶子もそう思ったのか、歩き始めた俺を引き止めることはない。

雨上がりの午後 第1954回

written by Moonstone

 1階も人気は殆どない。全く居ないと思っていたが、数名居る。厚着なのは俺も晶子も同じだが、顔立ちからするに年齢層は高めだ。女性数人のグループで、何やら地図らしいものを真ん中に広げてあれこれ言っている。この場所にはこういうものが売っているとかいうガイドブックみたいなものだろうか。形態を取り出して時刻を見る。朝市開始まで10分ほどある。着替えが速く済んだからだろうが、10分くらいなら歩いている間に過ぎるだろう。

2005/7/25

[1日仕事になっちゃった・・・]
 昨日も朝5時起床(汗)。酒が入って昼間7時間寝たことを差し引いても、朝早過ぎだと思います。休日くらい遅く目覚めても良さそうなものですが、目覚ましより先に起きて目覚ましを消すというのが平日でも常態化してますから、習慣と化しているのかもしれません。
 体調が上向き状態ということで新作制作(昨日付とは別作)に着手。思いの外時間がかかって、仕上げるのに約12時間を要しました。半日PCに向かっていた計算になりますが、年齢の関係で今以上に視力が低下することはないらしいので、その点では安心です。途中口にする水の量が半端ではなく、2リットル(使用済みペットボトルを再利用しています)を5、6回汲み直しました。・・・考えてみると結構凄い消費量ですね。
 土日連続で作品制作に注ぎ込めたのは久しぶりのことです。年明けから体調不良やら腰痛やら突き指やらとアクシデントが重なりましたからね。これから先も更新に励んでいきたいと思います。
 着替えは闇の中で進む。晶子は布団から出て畳の上で、俺は敷布団の上だ。浴衣を脱いで畳んで−俺は晶子のように綺麗に出来ないが−、枕元にある服を着る。ふと隣を見ると、晶子がシャツのボタンを填めている。下は太腿が剥き出しだ。色白だから尚のこと艶やかに見える。
 晶子の太腿を生で見るのはこれが初めてじゃない。つい数日前にこの目で見たばかりだ。見ただけじゃない。自分の指と唇で触れて、その肌の滑らかさも知っている。太腿だけじゃない。他の場所だって見たし触れたし、それはその日だけじゃない。なのにどうして、こんなに艶っぽく見えるんだろう・・・。
 ・・・このままだと晶子に飛び掛りかねない。俺は晶子から視線を逸らして服を着るのに専念する。冬はどうしても着るものが多くなる。それに1枚1枚が厚手だから、何となく落ち着かないと言うか身体に馴染まないというか・・・。服を全部着てから手足を軽く動かす。こうすると「服に覆われている」から「服を着ている」という感覚が芽生える。

「祐司さん。準備出来ました。」
「俺もだ。あとはコートとマフラーだな。」
「私が取ってきますね。」

 晶子は小走りで箪笥に向かい、中から俺と自分のコートとマフラーを取り出し、両手で抱えて持って来る。気が利くと感心するより小間使いにしているようで申し訳なく思う。礼を言ってからコートを着てマフラーを巻く。携帯と財布は・・・あるな。目覚ましがあるから、ってことで携帯はサイレントにして財布と一緒に箪笥にしまっておいた。一箇所違うのは、俺のコートには部屋の鍵が入っていることだ。
 俺は晶子の手を取って部屋を出て鍵をかける。廊下は薄明かりが一定の間隔で灯っているが、外の暗闇を破るには程遠い。当然人気はないから不気味なくらい静まり返っている。こんなところで大声を出すほど馬鹿じゃない。薄明かりのおかげで目が眩むこともなく、俺は晶子と静かな廊下を歩いて階段を下りる。

雨上がりの午後 第1953回

written by Moonstone

 部屋は当然真っ暗だが、手探りでないと何も出来ないということはない。暗闇にある程度目が慣れているからだ。逆にこの状態で電灯を点けたりすると眩しさで目が眩むこともある。晶子が布団から出たのに続いて、俺も布団から出る。着替えは寝る前に枕元に置いておいたから、暗闇の中で闇雲に手を動かす必要はない。

2005/7/24

[1つ山超え]
 朝5時に目を覚ましてから作品制作に取り掛かりました。睡眠障害はかなり深刻で、薬を飲んでも早朝覚醒はなかなか回避出来ません。下手に寝るとろくなことにならないですし、やる気があったので作品制作に取り掛かったわけです。手がけたのは大きな山場を迎えた作品ですので、此処をしっかり纏めて意向に繋げたい、と思っていました。
 途中買い物へ行って、冷凍のフライドポテト(油で揚げれば完成というもの)を購入。普段冷凍食品は買わないんですが、酒でも飲みながら気分良く書こうか、と思って購入したものです。酒そのものは先週あたりに買ったんですが、体調が芳しくなかったがために後で酷い目に遭ったので、京は大丈夫だろうという希望的観測もありました。
 帰宅してフライドポテト(揚げないで電子レンジで加熱)をつまみに飲酒しつつ執筆。予定の半分ほど書けたところで一休みしようと横になって、目覚めた時には19:00間近。横になったのが12:00頃だったので少なくとも7時間は寝ていた計算になります。普段より長い(汗)。おかげで、と言うべきかどうか分かりませんが頭はすっきりしたので一気に書き上げました。ページマップも作りましたので、ややこしくて何処に何があるのか分からない、という方はご利用ください。

「俺達もカウントダウンイベントの話は今日宏一から聞いて知ったばかりだから、まだ行くかどうか決めてない。それは祐司も同じだろ?」
「ああ。」
「行く行かないは勿論自由だから、晶子さんと相談して決めてくれ。行くなら場所を教えるから。」
「分かった。」

 耕次達は俺と晶子が別行動を執っているのを知っているから、今回も一緒に来い、とは言わない。俺も晶子の意思を聞いてから決めたいし、俺としてはあまり気が進まないのもある。人ごみに酔うわけじゃないが、聞いた限りではあまりカウントダウンイベントに魅力を感じないからだ。
 とりあえず、今の目的は明日の朝市に出かけること。早めに風呂に入って床に就くのが賢明だ。朝6時から8時までと比較的時間帯が短いし、土産物目当てに観光客が大量に押し寄せているかもしれない。
 明日で今年も終わりなんだよな。あっという間に1年が過ぎた。来年は就職に代表されるように、自分が進む未来を決めなければならない。でも、今だけは、この町に居る時だけは忘れても良いだろう。時が来れば嫌でも考えたり悩んだりする日々がやって来るんだから。

 ピピピッ、ピピピッ。
鳥の囀(さえず)りのような軽やかな音で、意識が闇から浮かび上がる。俺の左肩に乗っていた重みが消えて、音が止まる。隣では、晶子がうつ伏せのまま身を乗り出して目覚し時計を手にしている。

「祐司さん。朝ですよ。」
「ああ。起きてるよ。ちょっと眠いけど。」

 目覚ましは昨日寝る前にセットした。時刻は5時半。着替える時間を見越してのことだ。カーテンで閉ざされた窓からは、少しも光が入って来ない。まだ夜なんじゃないか、と勘繰ってみたくもなる。暖房が常時入っているおかげで、冬特有の「布団から出るのが寒くて辛い」というのがないだけまし、と思った方が良いか。

雨上がりの午後 第1952回

written by Moonstone

 晶子の誘いを、面子がやんわりと辞退する。スキーは見た目より疲れるらしい。若者向けの繁華街まであるのに温泉宿が多いのもそれを証明している。それに買い物のために朝早く起きたくないという気持ちもあるんだろう。これは俺がどうこう言う話じゃない。俺と晶子だってこの町に来たのにこの年齢の「定番」から外れて昼間から町を歩き回ってるんだから、好き好みに口出しすべきじゃない。

2005/7/23

[少し早めの更新です]
 これから週末の作品制作で余裕が出来るように連載のストックを増やすので、早めに更新することにしました。OSを再インストールしたのでファイルの更新日時はほぼ全て均一になってしまって(HDDに新規書き込みという扱いになりますから)正確には憶えていませんが、今まで連載のストックのファイルが新規になるには半年かかったんですが、どうやら今回はそれを上回るペースになるようです。もう1000行超えちゃいましたし(汗)。
 そう言えば、携帯用ページの更新が滞ったままです(汗)。そこでも小説を掲載していますが、もっと手軽に更新出来るかなという思惑はものの見事に外れました。公開作品となるとたとえ2kBそこそこ(それくらいでないと読み込みに時間がかかるので)でもおざなりには出来ませんからね。
 職場でも考え、自宅でも考え、と考えることから脱却しない生活が最大の問題なのかもしれません。考えない時と言えばせいぜい寝る時くらいのものですし。かと言ってこのページを放り出したくはありませんし・・・。色々なことでジレンマを感じる今日この頃です。

「祐司も晶子さん連れて行くつもりなのか?」
「いや、まだ決めてない。スキー場でのカウントダウンイベントがどんなものか知りたかっただけだ。」
「情報収集ってやつか。」
「そんなところだ。」

 俺はどんなものか知りたかっただけだし、晶子が行きたいと思っているかという問題もある。面子は恐らく全員揃ってカウントダウンイベントに行くだろうが、晶子は俺と2人で静かに年明けを迎えたい、と思ってるかもしれない。去年帰省した時は、親戚回りで満腹の上酔ってたから、晶子からの電話も今思うときちんと出来なかったが、マスターと潤子さんの家で正月を迎えた、と言っていたから今年は俺と2人で、と思ってるかもしれない。こういう機会だから晶子の意思を出来る限り考慮したい。

「祐司さんと私は明日の朝、朝市に出かけるんです。」
「朝市・・・。ああ、年越し朝市ですか。」
「ええ。一度行ってみようってことで。」
「朝何時からなんですか?」
「6時から8時までだそうです。」
「うわっ、そんな朝早くからですか。」

 質問した耕次は顔を顰める。そんな朝早くから出かけたくない、と思ってのことだろうが、俺からすればスキーに行くのも十分寒い思いを味わうことになると思う。

「皆さんはどうされますか?」
「生憎ですけどスキーの疲れを癒すのを優先して、寝させていただきます。」
「同じく。」
「俺も遠慮させてください。」
「あ、俺もパスです。」

雨上がりの午後 第1951回

written by Moonstone

 スキー場でカウントダウンイベントとなると、まさに若者向けだ。年配者でカウントダウンイベントに参加した、という話は聞いたことがない。これも「町の活性化のため」のスキー場建設に伴って出来たイベントだろう。

2005/7/22

[ひたすら考える・・・]
 迷惑メールの多さに辟易して(この前の3連休では150通以上来た)振り分け条件を増やしてより厳しくしたんですが、その条件が13個。出来れば受信前に削除したいんですが、時にフリーメールで感想を下さることがあるので一応確認しないといけない、というジレンマがあります。頭痛の種は此処で1つ。
 もう1つは、月曜から手をつけたCGIのカスタマイズ。メインの機能は問題なく実行出来ることを確認したんですが、管理画面のルーチンが少々おかしいのがまだ直せないでいます。管理画面を使わなくても極端な話データファイルをダウンロードして操作してアップロード、という手段もあるんですが、それだと原始的過ぎますし効率が悪いので、管理画面は結構重要です。一度試してデータの整合性を確認してやり直し。この繰り返しです。此処で頭痛の種がまた1つ。
 今日で連載は1950回。節目の2000回まであと50回となりました。とは言うものの、連載の消費量が激しいので気を抜かずに書き続けていかないといけません。この果てしない戦いは連載終了まで続くと思うとちょっと怖いです。何より連載が自動補充されない(当たり前ですが)のが、ね。此処で頭痛の種がまた1つ。種が芽吹く前に問題を解決したいものです。
 晶子の補足に耕次が言う。確かに今日の出来事は耕次が住んでいる町−耕次も一人暮らしをしている−でなくても、俺と晶子が住んでいる町でも考えないことだ。街頭で声をかけられてついて行ったら商品の勧誘で逃げようにも逃げられなかった、という警告が大学でもあったくらいだ。

「祐司と晶子さんは暇を弄ぶんじゃないかと思ってたけど、そんな心配は全然必要ないな。」
「2人が共通の時間の過ごし方を知ってるから出来るんだろう。」

 耕次の言葉に渉が同意を込めた補足をする。言われるまでもなく、俺と晶子は2人で見た目派手なイベントがあるわけでもない町を1日歩き回る、という退屈に思われるかもしれない時間を楽しめるだけの共通の価値観を持っている。共通の価値観を持つということは、長い付き合いをする上で必要不可欠なことだと思う。
 夕食が6人分揃って運ばれて来た。従業員が1品ずつを6人分持って来る、という図式は今回も変わらない。これもサービスの一環なんだろう。今日の伯母さんの話を思い出すと、切なくさえ思う。

「カウントダウンイベントって、どんなもんなんだ?」
「その辺の事情は宏一が一番良く知ってる。」
「スキー場のゲレンデにでかい電光掲示板を用意して文字どおりカウントダウンを見せて、年が明けたら、ゲレンデの上級者コースから初級者コースまで並べられた松明に、上から順にスキープレイヤーが火をともしていって、最後はオリンピックの聖火台みたいなでかい器か何かに火をつけておしまい、って流れらしい。年末の恒例で此処に来てる、っていうお嬢さんから聞いた。」
「女から聞いた、っていうのが宏一らしいが、まあそういうイベントだ。」
「それはスキー用具を装備してないと会場っていうのか・・・、そこには入れないのか?」
「ああ、それならノープロブレム。カウントダウンイベントのためだけに此処に来てる奴等も結構居るらしい。何でも、この地方じゃ有名な一大イベントだそうだ。」

雨上がりの午後 第1950回

written by Moonstone

「雪合戦が終わってから、審判をしていた伯母さんと雪合戦に参加していた子どもに誘われて、ぜんざいをご馳走になったんです。美味しかったですよ。」
「随分人が良いですね。俺が住んでる町じゃまず考えられないことです。ありえない、と言った方が適切なくらいです。」

2005/7/21

[Windowsの責任です]
 今日付の更新は出鱈目に遅くなりましたが(このお話はA.M.3:00前にしています)、それもこれもWindowsの責任です。例によって例のごとくセキュリティ問題によるアップデートパッチを当てたら、新たなパッチを当ててくれ、と要求されるの繰り返し。折角使わないファイルを移動したりしてHDDの空き容量を増やしたのに、パッチで食われて嫌な気分です。
 .NETだ何だと勝手に自分流のスタンダードを押し付ける様は、まさに自国中心主義を地で行くアメリカの大企業ならではです。OSがこの様ではそれと連動を強めているIEが穴だらけになるのは自明の理。関連商品も当然そうなります。しかもライセンス認証で高額を要求してくるから、尚のこと始末が悪いです。「XPへの置き換えが進まない」理由を当のMicrosoftが分かっているとはとても思えません。
 自宅ではOfficeを持ってもいません。あんな危なくて重いソフトを好き好んで使うわけがありません。PCが急速に高性能になった代わりに、プログラマーがいい加減なことをして(バッファオーバーランなんて初歩中の初歩)、それを高値で売りさばく・・・。ブラウザもそうですが、こんなふざけた現象が許されるのはPC業界の異常ぶりを端的に示すものですし、これが改められない限り、PCが家電製品になるのは不可能です。家電メーカーと手を組んで押し付ければ話は別ですが。
 18:00前にロビーで待っていたら、耕次達が揃って戻って来た。流石の高位置も昨日で懲りたのか、遅刻することはなかった。スキー用具持参派が荷物を置いて戻って来て、揃って食堂に向かった。

「どうだ?スキーの方は。」
「人が昨日より増えたかな。中級者コースを滑ってるんだが、どうも混雑を避けて上側にシフトして来ているらしい。その辺の事情は、底引き網漁のためにあえて初心者コースに居る宏一の方が詳しいだろう。」
「ああ、かなり増えて来た。リフトは朝から行列だし。何でも大晦日にスキー場でカウントダウンイベントがあるから、その前に現地入りしたそうだぜ。大晦日と正月はどの宿も予約でいっぱいだってよ。」
「ということは、混雑はまだピークに向かう途中ってわけか。結構ひっくり返ってる奴が居たから、スキーをしたい奴は多少無理をしてでも混雑を避けて上側にシフトしてるんだろう。」

 カウントダウンイベントか。全国で行楽地や観光地と言われる場所では大抵行われるようになった。花火が打ち上げられたり、電光掲示板に年が明けるまでの秒数がでかでかと表示されたりと、幾つかパターンがある。去年は帰省していたから実家で年を越したが、何処へ行くでもなく平穏且つ退屈な年明けだった。

「祐司と晶子さんはどうだ?今日は祭りに飛び入り参加させてもらったんだろ?」
「ああ。ルールは単純明快で、二手に分かれてひたすら雪球を投げるってもんだった。狙われてたのかどうかは分からないけど、立ってても雪球を作るために屈んでても雪球が飛んで来たし、雪は次から次へと降ってくるし、終わった時は雪だらけだった。途中で何度も雪を払ったし。でも、なかなか楽しかった。」
「力を加減しろ、とか言われたんじゃないか?」
「ああ。俺も晶子も始まる前に言われた。見た目飛び抜けて身長があるから、力があると思うんだろうな。」
「観光の方はどうだ?」
「賑わいはそこそこあるけど、混雑してるってほどじゃないな。昼飯時は店がちょっと混雑してたけど待つほどでもなかった。いたって平和なもんだ。」

雨上がりの午後 第1949回

written by Moonstone

 朝早く起きるのはあまり得意じゃない。普段の生活が夜型なのもあるし、最近はその傾向が顕著になって来たのもある。だけど、早起きした分得するものがありそうな気がする。今日は早めに寝て明日に備えるかな・・・。

2005/7/20

[火狐席捲]
 別に妖怪が出たわけではありません。火狐、つまりFirefoxを職場のPCにインストールして「既定のブラウザ」に設定したんです。私は居室と作業場が別にあって作業専門のPCもある関係で、PCを複数台所有しています。「良いなぁ」という声もあるかもしれませんが、管理がその分増えるので手がかかります。作業専門のPC(以下「PC-A」)は(今時珍しく(?))スタンドアロン、つまりネットに繋がっていないのですが、残りはネットに繋がっています。その上、所有しているPCのOSが全部違うので余計にややこしい(汗)。
 ネットに繋がっているものはダウンロード出来ますが(自宅でCD-RWに焼いてはある)PC-Aではメディアに焼いて持っていく手間が必要になります。インストール自体は簡単ですが、機能拡張がちょっと大変です。好みの設定にするにはFirefoxのサポートページからリンクしている拡張機能一覧(英語)や、作者のページからダウンロードしないといけません。PC-Aでは不可能なのでネットに繋がっている他のPCは、自宅での設定を思い出しながらダウンロード。
 全て揃って「既定のブラウザ」にしてめでたしめでたし、とはいかない(汗)。メールに記載されてあるリンクをクリックすると、勝手に別のブラウザが起動する始末。自宅ではなかった現象だったんですが、メールソフトの側で対処。Windows Updateの時は強制的にIEになるのは仕方ありません。前にもお話したかもしれませんが、MicrosoftはWindowsとIEを一体化させる方針なので、必然的にWindowsの弱点がIEの弱点に直結します。それが嫌なので(本業のソフトウェア制作ではやむを得ませんが)Firefoxに乗り換えたわけです。この辺の詳しい話は、隠し部屋でしようかと思います。

「・・・明日、朝市に行きませんか?」

 少しの沈黙の後、晶子が話を切り出す。普段なら「寝不足なんだからそんな早い時間は勘弁してくれ」と断る−勿論婉曲的にだが−ところだが、今は規則正しい生活を送っているから、携帯のアラームと目覚ましをきちんと合わせて少し早めに寝れば大丈夫だろう。

「行ってみようか。どんなものが売ってるか見てみたいし。」
「朝市が祐司さんと私が暮らしている町でもあれば、そこで買った野菜で料理を作るんですけどね。」
「流石にそれは無理だから、土産物とか見よう。値段も随分安くなる、って伯母さんも言ってたし。」

 晶子が家で料理を作る時には、長期間冷凍したものを使わない。元々必要な分しか買わないし、冷蔵庫に入れておいても長期間だと鮮度が落ちるらしい。じゃあ冷凍庫はというとこちらも結構曲者で、例えば魚の切り身なら1つずつラップに包んで冷凍しないと、解凍と冷凍を繰り返す毎に品質が落ちていくらしい。冷蔵庫は食パンとジャムとビールを入れる場所、冷凍庫は夏に氷を作る場所、という程度の認識しかない俺には想像し難いほど、食材管理にかなり神経を配っている。
 店でもそういう傾向はある。喫茶店だから当然普通の家庭より食材の消費量は多いが−多くなかったら潰れてしまう−、クリスマスコンサート前の泊り込みの買出しに同行したのを見た限りでは、必要な分しか買ってない。潤子さんが最近晶子の影響で凝り始めた紅茶もやっぱり必要分しか買わないし、クッキーもその日の決まった分しか作らない。「完売御礼」と言うのかそういう理由で、店は昼夜賑わっている。
 仮に朝市で野菜を買ったとしても、料理をする場所がない以上は幾ら晶子でもどうしようもない。買ったものを新京市に戻る来月3日までこの部屋の冷蔵庫−備え付けの飲み物が入っている−に保存しておく、ということはしないだろう。となると、買うのは必然的に長期保存が可能な漬物や、基本的に常温で保存出来る土産物に絞られる。
 土産物は昨日今日見たところ、勝平がくれたプリントにあった猿の置物が多くて、他には饅頭(まんじゅう)とか絵葉書とか、観光地ならありそうなものがある。目ぼしいところではやっぱり猿の置物か。何処に置くんだ、と言いたくなるほど大きいものから、机の隅にでも乗せておける掌サイズのものまで大きさは色々あるし、ポーズも色々だ。所謂「言わず聞かず話さず」の格好をした3体が並んでいるものや単体で座っているもの、4つ足で立っているものなど、見ていて結構楽しめる。値段も安くなるから、店頭ではちょっと手が出なかったものも買えるかもしれない。

雨上がりの午後 第1948回

written by Moonstone

 この地で暮らす伯母さんが語った歴史には深みと重みがあった。この町に定住している人間しか分かりえない苦悩、大きな事件を契機にした、長年平和に暮らして来た筈の同じ町民との諍いの勃発、繁栄と引き換えに失った幾つもの物・・・。勝平から聞いてはいたが、肌身で感じている分重みは伯母さんの話の方がずっとあった。

2005/7/19

[延々10時間・・・]
 最近朝起きた時の具合が、良い時と悪い時が両極端になっています。良い時は普通に1日過ごせますが、悪いと最悪起き上がることも出来ません。金曜がまさにそれでした。そこまで行かなくても目覚めが悪い時は結構あります。昨日もどうも寝不足を感じて、昼頃まで寝ていました。
 起きてからは作品制作ではなくてCGIのプログラミング。本当は作品制作のつもりだったんですが、どうも気分が乗らなかったので・・・。CGIは新バージョンと現行のものを比較したら全然違ったので(入力方式どころかデータの構造まで違った)、過去のデータと互換性を持たせて且つ現行ではあるのに新バージョンでは削除された機能の付加が目的です。
 普段からプログラミングの類は色々していますが、CGI(正確にはPerl)のプログラミングは間が空いていたのもあって、かなり梃子摺りました。どうにかデータの互換性を確保して不完全ながらも削除された機能を付加したのは、開始から10時間を過ぎていました(汗)。その間一応食事とかはしましたが、こういうのは一旦手をつけると文字どおり時間を忘れるんですよね・・・。出来るだけ早い時期の置き換えを目指します。

「楽しかったですね。雪合戦。」
「ああ。始まる前に手加減してくれ、って言われたけど、向こうからは遠慮なく雪球が飛んで来たよ。」
「私もですよ。雪を拾っている時でもどんどん飛んで来て、時々雪を払いながら続けてました。祐司さんと違って、私は手加減してとは言われませんでしたけど、あまり力を入れないようにはしました。」
「そういうところは晶子らしいな。」

 男の俺は見た目普通でもそれなりに力があると見られるんだろうが、晶子は見た目より力がある。見るからに重そうなフライパンや鍋を扱う。伊達に店で潤子さんとキッチンを取り仕切っては居ない。喫茶店に限ったことじゃないが、飲食店におけるキッチンは見た目は華やかそうだが実は結構肉体労働の要素が濃い。複数人の料理を作るとなると尚更顕著になる。
 そんなことは子ども達は当然知らないから、「自分より身長がある」という基準で「背が高い=力がある」と推測したんだろう。フライパンや鍋を使う晶子が本気で雪球を投げたら、子どもたちにはかなりの脅威になるだろう。合戦とは言うが厄除けの祭りだし、怪我人を出したくないんだろう。古くからの町は良かれ悪かれ仲間意識が強いからな。

「およばれしたぜんざい、美味しかったですね。」
「あれは美味かったな。あの雪合戦の後でご馳走してもらえるとは思わなかったから、二重に驚いた。ああいうこともあるんだな。」
「この町の歴史も聞けましたものね。・・・やっぱりこの町に昔から住んでいる人にとって、今の賑わいは大きな何かと引き換えにしたものだったんですね。」
「歴史や伝統だけで客を呼べる時代じゃないんだろうけど、寂しいものがあるな。スキー場じゃなくたって住宅地でも山を削って作ってるんだし、その過程でそこに住んでた動物が住む場所を失ったり、賑わう代わりに治安が悪くなったり・・・。上手く両立出来る方法があれば良いんだけど、それを考えてる余裕がないんだろうな。」

雨上がりの午後 第1947回

written by Moonstone

 軽く茶を啜る。茶が身体の中を通っていくと、内側から温もりが広がっていくのが分かる。部屋は暖房が効いているが、空気を暖めたものと食べ物や飲み物の温もりとは性質が異なる。身体を内側から温める1つの手段は、こうして温かいものを飲み食いすることだ。ぜんざいは温かかったが、雪を伴う外の冷えはコートを着ていても体温を奪うには十分だ。

2005/7/18

[PC大工事]
 以前から気になっていた、PCの液晶画面の解像度を変更出来ないという症状の改善のため、朝からメーカーのサポートセンターにTEL。繋がるまで待つこと10分(汗)で担当者の指示助言を受けてPCを調べていくうちに「画面のドライバが破損したかビデオボードが物理的に破損したかのどちらか」という結論に。前者はHDDをフォーマットしてOSをインストールするところから開始、後者はメーカーに修理依頼することでしたが、どちらも私にとっては大差ない(汗)。
 約20分を要した最終診断を行ったところ、メモリやボードの物理的破損はないことが判明。データやらソフトの圧縮ファイルやらをバックアップしてHDDフォーマット→OSインストール。時間はかかりましたがどうにか成功。ドライバも無事認識しました。でも、まだ道半ば。ソフトを解凍→インストール→設定をひたすら繰り返し(途中で必要が生じたのでネット接続)、どうにかPCを復旧させた時には夕方になっていました(汗)。あまりの疲労で2時間ほどぶっ倒れてました。
 今は解像度を最高にしていますが、画面が広いこと広いこと(^^;)。丁度潮時と思って、ブラウザをNetscape4.7からFirefoxに完全に鞍替えしました。拡張機能を幾つか組み込んでやるとタブブラウザとしてもまったく遜色ありません。ページ管理運営はこれまでどおり1024*768を前提にしていきますのでご安心を。OSプリインストールモデルでも支障を来たす(対ウィルスソフトの起動もやたら遅かった)となると、もうPCとOSは別々に購入しないといけないかもしれません。OSのインストールなんて、職場で嫌と言うほどしたのでもう御免なんですけど・・・。
「漬物だとどんなものがお勧めですか?」
「そうですねぇ・・・。山菜はこの時期あんまりありませんで、たくあんとか株とか白菜とか、冬の野菜が良い思います。値段も手頃ですし、日持ちもしますんで土産物にも良いですよ。」

 晶子の問いに伯母さんが答える。山菜はこの時期あまりない、ということは春とかになると山菜の漬物が出回るということだろう。この辺にも季節感が滲み出ている。白菜は冬野菜の定番の1つだということくらい、料理に疎い俺でも知ってる。晶子がこの時期食事を作ると白菜の塩漬けが出て来ることがあるし、実家ではこの時期野菜と言えば白菜、と言わんばかりにしょっちゅう出ていた。

「此処だけと違いますけど、朝は特に寒いんで、しっかり着込んでいかれた方が良いですよ。」
「そうします。」

 俺も晶子もそれほど寒がりじゃないが、冬の朝は肌身に染み込むという表現が相応しい寒さだ。雪が殆ど絶えず降るということは元々降水量が多い上に、雨が雪に変わるほど冷えるということでもある。日が昇る前から始まるんだから、しっかり防寒対策をしていかないと最悪旅館でずっと寝込んでしまう羽目になる。せっかくの旅行なんだからそれは避けたい。
 流石にこの町に長く住んでいるだけのことはあって、色々な裏話を聞けた。中には重苦しいものもあったが、それも歴史の1つとして伝え継いでいく必要があるだろう。歴史は華やかなことばかりで作られるものじゃないんだから。

 ぜんざいをしこたまご馳走になった俺と晶子は、伯母さんと子どもに見送られて家を出た。今は宿に居る。雪合戦とぜんざいでのもてなしを含めて3時間。4時を過ぎれば暗くなり始める時間だから丁度良いだろう、と思ったからだ。観光目的で歩いているから、暗くなってからの遠出はともすれば岐路を見失う恐れがある。
 部屋は布団も浴衣も片付けられて、茶菓子が補充されて盆に乗せられている机がある。部屋に入ってコートを脱いで腰を下ろし、晶子が茶を入れてくれるのを待つ。入れたての茶が差し出される。

「どうぞ。」
「ありがとう。」

雨上がりの午後 第1946回

written by Moonstone

「お二方はこの町に住んでませんで、野菜とかはあまり買う意味ないでしょうけど、漬物とか土産物とかは朝市で買うとかなり安うなりますよ。年寄りは大体朝早いんで、そこら辺を考えてのことでしょうけどね。」

2005/7/17

[改装]
 此処(芸術創造センター)に直接来られる方はあまり変化がないと思いますが、Geckoエンジン搭載のブラウザ(Firefoxなど)でもチップが表示されるように変更しました。IEだとAタグやIMGタグのalt属性がチップとして表示されますが、altは代替テキストという位置づけなのでtitle属性を使わないといけません。Geckoエンジンブラウザは文法チェックがかなり厳しいんですよね。逆に言うとGeckoエンジンブラウザで正常に表示されるようにすると、検索に引っかかりやすくなる傾向があるようです。
 上位ページ(Moonstone Studio)は大幅に変更しました。レイアウトが変わったのと背景画像を此処と同じにしたことが大きな変更点です。本当は科学文化研究所へ開通させるつもりだったんですが、身体の調子を崩したので(少し寝たら治りました)今日以降に持ち越します。まだ殆ど何もありませんけど(汗)。
 私はあまりページのレイアウトに凝らないので(凝るほどセンスがない)、必要がない限り変更しません。凝り始めるときりがなくて、肝心の作品制作が手付かずになってしまうということもあります。よろしければ、URLからpacを取って(.orgまで)Moonstone Studioをご覧ください。

「来年の3日までです。」
「随分長いこと居られるんですねぇ。」
「高校時代の友人との、一足早い卒業旅行なんです。全員違う大学へ行ってますから、こういう機会でもないと顔を合わせられないんですよ。」
「お二方新京大学の学生さん言うてましたけど、何年生なんですか?」
「揃って3年です。今年の4月から4年になります。」
「んなら、卒業論文やら就職活動やらで忙しぅなるでしょうなぁ。何でもこの頃は、就職活動もどんどん前倒しになっとるし就職のために大学院へ行く学生さんも増えとる、って前にTVで言うてましたし。」
「楽が出来るとは思ってないですよ。」
「何かと世知辛いですけど、お二方がええように生活出来ることを祈とります。」
「ありがとうございます。」

 伯母さんは心底良い人のようだ。俺と晶子のことについて深くは尋ねてこないし、こうしてもてなしてくれている上に俺と晶子の将来を案じてくれても居る。社交辞令の一つと言ってしまえばそれまでだが、それで片付けたくないものがある。

「来年の3日まで此処に居られるんでしたら、31日と1日の早朝に大通りに行くと良いですよ。年越し朝市いうて、この町で昔からやっとる朝市があるんですわ。新鮮な野菜や漬物とか、土産物とかも色々安値で出ますんで、普通に買うより得しますよ。」
「その朝市は何時頃から始まるんですか?」
「朝の6時から8時までですわ。まだ暗い時は提灯(ちょうちん)で照らされますんで、心配要りません。」

 今更言うまでもなく冬の夜明けは遅い。朝6時なんてまだ夜かと勘違いするくらいだ。そんな闇の中でどうやって市場をするのかと思ってたんだが、提灯で照らすのか・・・。なかなか風情があるな。

雨上がりの午後 第1945回

written by Moonstone

「お二方は何時まで此処に居られるんですか?」

 3杯目を食べていたところで、伯母さんが尋ねる。

2005/7/16

[一時寝込んでました(汗)]
 長らく続いていた体調不良がピークに達して起き上がるのままならなくなったので、昨日は急遽本業を休みました。昼過ぎから落ち着いたのでのそのそと更新準備をしていました。「大人しく寝てろ」と言われそうですが(汗)、幸い今日から3連休ですのでそれで何とか持ち直すと思います。
 芸術創造センターに直接来られる方(ブックマークやお気に入りを芸術創造センターにしている方)には関係ありませんが、近々ホームページ(Moonstone Studio、つまり此処の上位ページ)を改装します。コンテンツの変動はなくて、レイアウトの変更です。背景画像が1年以上同じで変える気もなくなったので、これを機会に此処とよく似たものにしようかと。
 で、此処の各グループのインデックスも順次標準型にしていきます。現在のものでも表示に支障はありませんが、SEO(検索に引っかかりやすくすること)に合わせたものにした方が行儀が良いと思うので。まあ、メールアドレスを収集する迷惑なプログラムに狙われる可能性も高まりますが(汗)。
 冬のもてなしというぜんざいは本当に美味い。甘いがしつこくないからすいすい食べられる。甘いものが特別好きというわけでもない−嫌いでもないが−俺でも違和感を感じない。

「もっと食べられますか?」
「よろしいですか?」
「えーえー、勿論ですよ。ささっ、遠慮なく。」

 伯母さんは俺から椀を受け取り、鍋の蓋を開けてぜんざいをよそって俺に手渡す。まだほこほこと湯気が立つ温かいぜんざいを存分に堪能する。

「奥様ももう1杯いかがですか?」
「では、お言葉に甘えさせていただきます。」

 同じく椀を空にした晶子も、2杯目のぜんざいを受け取って食べる。晶子は俺が居るからといって食べる量を減らすことはしない。聞けば元々太りにくい体質らしい。ちなみに体重は聞いてない。幾ら何でもそこまで聞く必要はないと思ったからだ。

「おばあちゃん。僕にも頂戴。」
「はいはい。」

 伯母さんは子どもの分もよそう。そして自分のぜんざいを食べる。こうしていると、自宅や晶子の家での食卓を思い出す。和やかで寛げる雰囲気の中、ゆったりと美味しいものを食べる。普段時間にせっつかれて動いている分、そういう時間が尚のこと貴重に感じられる。

雨上がりの午後 第1944回

written by Moonstone

 季節によってもてなす食べ物も違って来るのか・・・。どのくらいの歴史があるのか知らないが、探れば探るほど色々な発見がありそうだ。これこそ観光の醍醐味だろう。決まりきったコースを辿るだけじゃ分からないことはいっぱいあるだろうから。

2005/7/15

[ようやく寝られる・・・]
 昨日付のソフトウェア設定が大幅にずれ込んだ煽りもあって、昨日は一睡もしていません。早い話が徹夜明けです。おかげで胃腸の調子が完全におかしくなっていて、消化の良いものを少量しか口に出来ない状態です。まあ、一晩寝れば治りますが、脳だけが興奮状態にあるので服薬しても寝付くのにちょっと時間がかかるんですよね・・・。
 話は変わりますが、この頃此処でお話してない右手薬指に関して。「何も話さない=治った」と思われるかもしれませんが、実のところ軽く握り拳を作れるようになった程度からあまり回復していません。PCのキーボードを叩いたりといった軽作業をする分には支障ないのですが、力を入れると今でも痛みます。腫れもしっかり残ってますし。やっぱり健康は大切ですね(しみじみ)。
 でもってまた話は変わりますが、此処の連載のストックの行数が1000行に近付いて来ました。今のストックは8番目で3000行を区切りに新規ファイルを作っているんですが、もう1/3に到達するのか、とかなり焦っています。現在は概ね130kB。400字詰め原稿用紙にしたら何枚になるのかと思うとちょっと怖いです(笑)。

「町は賛成反対で真っ二つに分かれましてね。賛成の方は町の活性化のため言うて、反対派は自然と文化を壊す言うて。今まで諍いなんてあらへんかったのに、夜通し言い争うことなんてしょっちゅうでしたよ。んでも結局は、賛成派の方が建設業者とかが後援会の幹事やっとる議員さんとかがいっぱい居ったんもあって、町の一角を若者向けの繁華街にしよう、山切り崩してスキー場にしよう、ってことになって・・・。」
「「・・・。」」
「確かに人はいっぱい来るようにはなりましたわ。んでも、夜でも鍵かけなくて良かったくらいやったのに、酔った若い人とかが暴れたり騒いだりするようになって、町の大人は子どもに、危ないで夜出歩かんように言うとるんですよ。繁華街も一応反対派の言い分取り入れて外見は他の家とかと同じになったんですけど、中身は全然違とります。ゴミも増えたし山には遊びに行けへんようになったし・・・、本当にああして良かったんやろか、て疑問に思とる人はいっぱい居ります。んでも口には出しません。言い争いはもう沢山て思とりますでね。」

 華やかな裏側には、やっぱり暗くてどんよりとした翳がある。どんなものでもそうだろうが、今まで平穏そのものだった町の空気が一変してしまったことと、その過程を肌身で感じている伯母さんの言葉は重い。昨夜を見た限りでも、繁華街は賑わっていた。だが、そこだけ隔絶されたような感があった。あれだけの騒ぎが他の家々に及ばないのがむしろ不思議と言えるかもしれない。

「ああ、すみませんでしたね。お客さんに辛気臭い話してもうて。」
「あ、いえ。」
「ぜんざい、いっぱいありますで食べてってください。この町では、冬はお客さんにぜんざいを振舞うんが慣わしなんですよ。」
「冬はぜんざい、といいますと、季節毎に異なるんですか?」
「ええ。春は雑炊、夏はそうめん、秋はきな粉餅なんですよ。」
「へえ・・・。」

雨上がりの午後 第1943回

written by Moonstone

 今朝勝平が言っていたことと重なる。伯母さんはこの町の人間だから、より詳しいし切実だ。

2005/7/14

[負担を重くすることが「自立」なのか?!]
 出鱈目に遅れてすみません(汗)。ソフトウェアの設定でちょっと梃子摺っていたので。早速話は変わりますが、昨日(7/13)の衆議院厚生労働委員会で、障害者自立支援法案が自民・公明の賛成多数で可決されました。「自立」と銘打っていますが、その内容は能力に応じた料金の負担(応能負担)を受けるサービスの割合による料金の負担(応率負担若しくは定率負担)にするというものです。
 応率負担になれば、障害が重度であればあるほど負担が重くなります。果たして重度の障害者が十分な収入を確保出来ているか?答えは勿論「NO」です。ただでさえ障害者の就職は健常者よりハードルが高く、雇用条件も低いのです。障害が重度であれば働くこともままならず、必然的に家族の負担となりますから、家族にとっても負担増となります。
 障害が重度であればあるほど「自立」が困難な現状で応率負担にするなら、それに耐え得る収入を得られるようにするのが筋と言うものです。これでは「障害者は死ね」と言っているようなものです。税負担が応率から応能に変遷し、税金という共通資産を社会的弱者に配分する「富の分配」へと移行してきた経済史から見ても、現在の日本の政治は逆行そのものです。この法案に「福祉」を掲げる公明党=創価学会が賛成しているのですから、この党の正体が透けて見えるというものです。

「昨日、指輪見せてもろたんや。」
「そうか。私にも見せてくださいませんか?」
「はい。」

 断る理由は何もない。俺と晶子は左手を伯母さんに差し出す。左手薬指に揃って輝く指輪を見て、伯母さんは納得した様子で何度も頷く。この位置に指輪を填めることの意味は、全国共通且つ世代間のギャップも殆どない重要事項のようだ。

「んでも、お二方お若いのに、スキーには行かへんのですか?」
「最初から、この町に来るのは観光が目的だったんです。スキーはしたことがありませんし。」
「私もスキーをしたことがありませんし、夫の旅行に急遽同行させてもらうことになったので、元々あれこれ言う資格はないと思っています。」
「今時珍しいですなぁ。若い人がこの町にスキーせんと来るっちゅうのは。」

 そんなに珍しいかな・・・。確かに昨日今日とこの町を回ってみて、俺と晶子と同年代の観光客には出会わなかったな。観光客だと彼方此方見て回るから無意識のうちにきょろきょろする傾向がある。その判別手段を元にすると、高年齢の観光客は居たが、若年層は居なかった。

「この町も、随分変わってしもうて。」

 伯母さんは小さい溜息を吐く。

「昔は静かな町だったんですわ。春夏秋冬、それぞれの季節に応じた祭りがあって、山に行けば蕨(わらび)やらぜんまいやらがいっぱい採れましたんよ。私が子どもの頃は山を含めた町全体が遊び場やったんですわ。」
「「・・・。」」
「んでも、最近は不景気で人が来んようになって来てね。この町は観光でもって来た町ですんで、どうしようかて騒ぎになって。で、今の町長さんや議員さんが、山削ってスキー場作って、町の一角を若者向けの繁華街にしようて言い出したんですわ。」

雨上がりの午後 第1942回

written by Moonstone

 伯母さんは感嘆の声を挙げる。こちらは全然悪い気がしない。俺自身、指輪を大学で学部で披露した時に結婚は指輪を渡した時だ、と言ったし、その方向で固められることに何ら異論はない。本当に入籍する時も、晶子の誕生日とか分かりやすい方にした方が良いだろう。俺はそういうことをついうっかり忘れてしまうことがあるし、女はそういうことを大切にする生き物だ、って前に晶子も言ってたし。

2005/7/13

[ずっとうつらうつら・・・]
 更新時刻が遅くなっていますが(このお話はA.M.2:30頃にしています)、何かをする気力が起こらなくてぼんやり過ごしているからです。勿論「勿体無い時間の使い方だ」とは思うんですが、頭で幾ら思っても身体が言うことを聞かないので、身体が動き始めるのを待つしかありません。
 で、結局就寝が遅くなる→起きる時刻は変わらない→何時も眠い、の悪循環に陥っています。能率は恐ろしく悪いんですが、騙し騙し続けています(本業も此処も)。治療を始めて5年経過しますが、回復への出口が見えないことに焦燥感を募らせています。
 休職という選択肢もありますが、その間収入が途絶えるのがネックです。一人暮らしなので致命的です。実家に戻るという手段もありますが、この歳になって親に負担をかけたくないし、親も私の持病を「気持ちの持ちよう」としか認識していないので、結局八方塞で自分の内側に溜め込んでいます。最悪の状況ですが、何とか打開策を模索していきたいと思います。
「新京市っていうと・・・、小宮栄の南にある。」
「はい。」

 小宮栄は、新幹線だとのぞみも停まる大きな町だからよく知られているが、新京市自体の知名度はそれほど高くない。俺が中学2年の頃に5つの市町村が合併して出来た新市ということもあるが、名前がやや安直というのもあるだろう。「新しい東京」という由来を聞くと、安直さが際立って感じる。

「お二方は・・・学生さんですか?」
「はい、そうです。学部は違いますけど同じ大学に通っています。」
「新京市に住んどるっちゅうと・・・、新京大学ですかね?」
「はい。私は文学部で、夫は工学部です。」
「はーはー、そうですかー。随分立派なところに通ってらっしゃるんですねえ。」

 伯母さんは感心した様子だ。新京大学は、所在地の新京市の知名度がさほど高くないのに、大学の名前は全国的に知れ渡っている。晶子が居る文学部の他、教育学部、法学部、俺が居る工学部、医学部、理学部の6学部からなる総合大学でどの学部も偏差値でのレベルは高い。だから高校の卒業者の進学実績として上位に名前が挙がる。大学の名前で何もかもが決まるもんじゃないと思うが、合格を報告した後の親の狂喜ぶりや、去年帰省した時の親戚周りでの歓迎ぶりは、その辺の意識改革が全然進んでいないことを如実に証明している。

「お二方大学生っちゅうことは、学生結婚ですかね?」
「はい。」
「結婚したん、去年の5月なんやて。」
「んなら、新婚ほやほやですなぁ。」

雨上がりの午後 第1941回

written by Moonstone

「お二方はどちらからいらしたんですか?」
「新京市です。」

2005/7/12

[甘いもの]
 連載ではぜんざいが登場していますが、私は全般的に甘いものが好きです。チョコレートとカスタードクリーム、チーズケーキが特にお気に入り。男性で決して若いとはいえない私が洋菓子店に行くのもちょっと憚られるので、誕生日とか食べたくなった日にこそこそっと買い込みます。
 チョコレートはバレンタインデーが近づくと売り場に近づけなくなるので厄介ですが、カスタードクリームとチーズケーキは家族に買う、という感覚で時々買っています。コストパフォーマンスという点ではカスタードクリームの方が良いので、最近は専らこちらです。
 男性で甘いものを食べるというのはなかなか抵抗感があります。アイスクリームも好きなのですが、何となく買い辛い・・・。酒も飲めるしタバコも吸える年齢ですし(タバコは吸わない)、何ら怪訝に思われる理由はないんですが、このあたりに「男性が甘いものを食べるのは変」という妙な先入観を感じます。
 晶子が礼を言うと、子どもは嬉しそうに照れくさそうに頭を掻く。・・・ちょっと良い気分じゃないが、子どもにいちいち目くじら立ててても仕方ない。
 襖が開く音がする。振り向くと、大きな両手鍋を持った伯母さんが入って来る。それを待っていたかのように、子どもがコタツから出て俺の背後にある戸棚に走り、何やらごそごそしてから戻る。鍋敷きだ。子どもがコタツの上に置いた鍋敷きの上に乗せられた鍋の隙間から、ほこほこと湯気が立ち上っている。

「ちょっと待ってくださいな。椀(わん)と箸持って来ますんで。」

 伯母さんはいそいそと部屋を出て行き、程なく盆に椀を乗せて戻って来る。4辺に椀と箸が並べられ、伯母さんが鍋を開けて、一番近い俺の椀から順にぜんざいを入れていく。目の前に置かれたぜんざいは鮮明な小豆色で、そこに幾つもの白い餅らしいものが浮かんでいる。温かくて美味そうだ。

「ささっ、どうぞお食べくださいな。」
「「いただきます。」」

 親指の先ほどの大きさの餅を1つ、汁を一口飲む。・・・うん、美味い。餅は口の中でふわりととろけるような柔らかさで、ぜんざいの甘みを十分含んでいる。ぜんざいの汁は甘いがくどくない。さっぱりした味わいと適度な温かさが絶妙だ。

「美味しいですね。」
「凄く美味しいです。」
「そうですか。喜んでもらえて何よりですわ。」

 伯母さんは嬉しそうに目を細める。今日初めて顔を合わせて言葉を交わした間柄だ。出した食べ物を喜んでもらえて嬉しくない筈はない。

雨上がりの午後 第1940回

written by Moonstone

「あの祭りに参加出来るのは、幾つまでなの?」
「6年生までや。兄ちゃんと姉ちゃんは特別や。」
「ありがとう。」

2005/7/11

[メールマガジン]
 土曜日の反動か、昨日は一応起きてはいましたが身体が気だるくてぼんやりしていました。そんな中、PCで更新チェックページなどを見ていてふとメールマガジンに思いを馳せました。
 私はメールマガジンを2つ読んでいます。毎週1回必ず来るので、結構楽しみだったりします。私が使用しているサーバーではメールマガジンの発行も可能で、更新情報や今後の予定、読者様からの感想や設定裏話などを掲載すると面白いかな、と思いました。
 ですが、現実問題として此処の更新で手がいっぱいで携帯用ページは殆ど放置状態なのに、メールマガジンまで手を出せないんですよね・・・。そんなことをぼんやり考えていた1日も終わり、今日から本業再開。・・・身体がもつかちょっと心配です(汗)。
「俺の高校時代の友人との一足早い卒業旅行なんだけど、実質的に新婚旅行を兼ねてるかな。友人はスキーに行ってるし。」
「ふーん。で、スキーせんと二人でこの町歩いて回っとるんか。」
「そういうこと。」

 子どもは意外そうな表情を浮かべる。新婚旅行でこの町に来たというのが珍しいのか、「セオリー」に反して昼間町を観光しているのが珍しいのか分からないが、珍しい存在として映っているのは間違いないようだ。
 珍しく思われるのは別に苦にならない。周囲の動きに倣わないといけないとは思わないし、高校時代バンド活動で生活指導の教師と度々対峙してきた経験もあるからだ。大学に入って単独行動の割合が急に強まったことで、そういう考えはより強くなったように思う。耕次には及ばないだろうが。

「兄ちゃんと姉ちゃんって、歳幾つなん?」
「俺は21歳。」
「私は22歳よ。」
「姉さん女房なんやな。」

 随分詳しいな・・・。今は情報が溢れ返っているから、そういう単語を知っていても不思議じゃないか。

「そういう君は何歳?」
「7歳。小学校2年生や。」

雨上がりの午後 第1939回

written by Moonstone

「去年の5月だから、まだ1年経ってないんだ。」
「なら、此処へ来たんは新婚旅行なん?」

2005/7/10

[少し回復]
 昨日付は更新するだけしてとっとと寝たんですが、3回途中で目を覚ましました。寝られたな、と思えて起きたのがA.M.8:00頃で寝たのが22:00頃でしたから(多分)、10時間くらい寝た計算になります。腰痛も随分治まり、土曜日恒例の買い物に加えて作品制作。途中5時間の休憩を挟んだことを除けば、順調に仕上がりました(公開は半月後を予定)。
 その後、データ転送。現在使用しているPCのHDDは40GBなのですが、何かと容量が気になって使用しないファイルを別のHDDに転送しようと思って、光ドライブと交換したまでは良かったんですが、エクスプローラに出ないので「?」と思いつつ色々調べたら、フォーマットされていないことが判明。即座にフォーマットしてデータを転送しました。
 改めて思ったんですが、画像ファイルは兎に角容量を食いますね。テキストだと50kBなんて相当な量になるのに、画像だと小さいサイズでも簡単に突破します。イラスト系のWebページの管理者様は、バックアップとか結構大変なんじゃないでしょうか。
 伯母さんに案内されて、細い路地を入った途中にあった民家に入る。傘に乗った雪を払ってから畳んで、玄関脇に置く。中は外見とギャップがない。柱や梁(はり)は年季を感じさせる渋い黒味を帯びている。薄暗い屋内は静まり返っている。
 お邪魔します、と言ってから靴を脱いで上がる。伯母さんと子どもは家の奥に進み、襖(ふすま)を開けて中に入る。続いて中に入ると、ほんわかした温もりが頬に当たる。ストーブが端で熱を発している室内は随分広い。俺の自宅くらいはあるだろうか。中央にコタツがあって、子どもはその一角に滑り込むように座る。

「どうぞお座りください。ぜんざい持って来ますんで。」
「ありがとうございます。」

 伯母さんは部屋を出て襖を閉める。俺と晶子はコタツに入る。俺が子どもと向かい合う位置に、晶子がその左隣、子どもの右手側に座る。伯母さんを含めて4人だから、この配置で良いだろう。

「この町ではな、冬はぜんざいを作るんやで。」
「何か特長とかあるの?」
「餅が一口サイズなんや。あとな・・・。小豆がいっぱい入っとる。甘くて美味いんや。」

 晶子の問いに子どもが答える。ぜんざいはあまり食べたことがないが、「主に冬に食べる温かくて甘い食べ物」というイメージを覆すような奇怪なものは入ってないようだ。見知らぬ土地で奇妙なものを出されると食べ辛いし、かと言って厚意で出されたものを無碍にするわけにも行かない。

「兄ちゃんと姉ちゃん、結婚して何年になるん?」

 この子ども、随分突っ込んだことを聞いて来るな・・・。昨日指輪を見せたが、やっぱり気になるんだろうか?

雨上がりの午後 第1938回

written by Moonstone

 子ども達が脇を駆け抜けていく。町の行事でもある雪合戦が終わったから、自分達の遊びに戻るんだろう。妙に甲高い奇声とは違う、どこか懐かしい気分にさえなる子ども達の声。普段暮らしている町とは隔絶されたものが、確かにこの町にはあるように思う。・・・そう思う歳じゃないだろうが。
以下の二つはリンクになっています
メモリアル企画書庫 見解・主張書庫UPDATED!

2005/7/9

[御免、今回はこれだけ]
 比較的時間を要しないグループから新作を拠出するつもりだったんですが、昨日の午後から腰痛まで加わり、とうとう立つこともままならなくなったので鎮痛剤を飲みました。多少収まりましたが所詮は一時凌ぎ。また激しくなってくると思います。
 というわけで、今回は2作品のみと相成りました。楽しみにされていた方には申し訳ありませんが、この様ではどうにも出来ないので、今後に期待してください。更新時刻は早いですが、私は一足先に寝ます。

「一回家に来てぇな。美味いぜんざいあるで。」
「孫も言うてますし、他に用事とかあらへんのでしたら、来てくださいませんか?」

 悪い人じゃなさそうだな・・・。意思確認のため晶子を見る。晶子は笑みを浮かべて頷く。

「それじゃ、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます。」
「えーえー、じゃ、ついて来てくださいな。」

 伯母さんとその孫という子どもの後に続く。脱いだコートは右腕に引っ掛け、左手で傘を差す。掲げた左腕に晶子の手が添えられる。随分赤く染まっている。

「晶子。手が真っ赤だぞ。素手で雪合戦してたのか?」
「ええ。手袋はしてませんから。」
「左手はコートを抱えてるからまだ良いけど、右手くらいは・・・。」

 俺は口で右手の手袋を引っ張って取り、晶子に差し出す。晶子は少し躊躇した様子を見せるが、笑みを浮かべて手袋を受け取り、右手に填める。俺の右手はズボンのポケットに突っ込んでおけば良い。

雨上がりの午後 第1937回

written by Moonstone

 頭に疑問符を浮かべた俺に足元から声がかかる。見ると、昨日俺と晶子が話しかけ、今日この公園に案内してくれた子どもの一人が居る。

2005/7/8

[今日はこれだけ]
 今はもう何も出来ません。結局今週何も出来なかったことが猛烈に悔やまれます。申し訳ありませんが、今日は寝させてください(現在、A.M.3:00前)。

「子どもに好かれる、ええ親になりますよ。」
「だと良いんですけどね・・・。」
「あ、そうそう。折角の機会ですから、家に寄ってかれませんか?」

 え?今度は家に来て良いっていうのか?幾らこの町の人が快いとは言え、ちょっと躊躇してしまう。普段こういうことはないからな。かと言って無下にするのも何だし・・・。

「今日雪合戦に参加させてもらっただけで十分なのに、そこまでしてもらわなくても・・・。」
「良いんですよ。家の孫もお二方を随分気に入ったようですし。」
「お孫さん・・・?」
「兄ちゃん、姉ちゃん。僕のことや!」

 頭に疑問符を浮かべた俺に足元から声がかかる。見ると、昨日俺と晶子が話しかけ、今日この公園に案内してくれた子どもの一人が居る。

雨上がりの午後 第1936回

written by Moonstone

 唐突な質問に曖昧な答えを返したが、「まだ」って言うのは拙かったかな・・・。まあ、良いか。

2005/7/7

[星に願いを]
 ・・・なんて乙女チックなキャプションは似合わないのは分かっては居ますが、もし本当に1つだけ叶えられるなら叶えて欲しい願いはあります。何かは言いません(悪いことではないけどとても言えない)。
 梅雨空の上に夜中でも煌々と照明が灯るので、天の川を見るのは到底無理です。一度見てみたいんですけどね。北極星と北斗七星は冬に見たことがあります。夜遅かったので(本業が深夜までずれこんだ)照明が少なく、冬だったこともあって空が澄んでいたからでしょう。今日本で天の川が見られる場所ってあるのかどうか甚だ疑問ですが。
 帰宅すると少し食べて横になる、の繰り返しですので(やっぱり体力がかなり削られている)したいことが何一つ出来ないで居ますが、明日ぐらいに何かちょっとした更新を加えたいところです。それが出来なかったら週末に備えて体力温存に専念します。
 俺は全身についた雪を払い落とす。子どもが前に居たから足は何とか「被弾」を免れたが、足より上は雪だらけになった。雪を拾うときに屈んだ時に頭は勿論ご丁寧に背中にも当てられたから、落とすにはコートを脱いだ方が手っ取り早い。雪を拾って投げるだけと言ってしまえばそれまでだが、かなりの運動量だったようで、コートを脱ぐと涼しく感じる。
 子ども達はわらわらと伯母さんの方へ向かう。皆それぞれ服についた雪を払い落としている。相手側に居た晶子も、コートを脱いで軽く叩いて雪を落としている。どうやら晶子も結構当てられたようだ。

「皆、いっぱい投げとったなぁ。」

 伯母さんは満面の笑みを浮かべている。厄除けを兼ねているから雪合戦が盛り上がる方が良いだろう。雪の量を気兼ねしながらだと面白みに欠ける。

「これでこの町のオモは飛んでった。来年もええ年にしよな。」

 伯母さんの一声で子ども達が歓声を上げる。オモ・・・。厄除けもあるから、悪いものとかそういう意味だろう。それはそうと、言うことを言っておかないとな。

「今日はありがとうございました。」
「いーえー。お二方、すっかり子ども達に馴染んどったんで、見てて安心出来ましたわ。」
「参加させていただいてありがとうございました。雪合戦は久しぶりだったんですけど、本当に楽しかったです。」
「楽しんでもらえて何よりですわ。それにしてもお二方、よう子ども達に馴染めましたなぁ。お子さん、居るんですか?」
「あ、いえ、まだ・・・。」

雨上がりの午後 第1935回

written by Moonstone

 歓声の中に伯母さんの声が割って入って来る。それを契機に、飛び交っていた雪球の数は急速に減っていき、やがて空から補充されるもの以外の雪はなくなってしまう。雪合戦に熱中して声は聞こえてないと思いきや、実はしっかり聞こえていたようだ。

2005/7/6

[連日遅い・・・]
 昨日も漏れなく気絶してました(汗)。ただでさえ少なめの体力が、体重減少に連動して大幅に削られてしまっているようです。このまま何もしないで週末を待つというのも癪なので、体力温存の策を練っています。
 隙を縫って掲示板のカスタマイズをしています。配布元にはない機能を幾つか組み込みましたが、メールアドレスを妙なプログラムや業者に拾われない機能を組み込むのがかなり厄介で、此処で停滞しています。掲示板でメールアドレス取得から保護する機能を持っているものは殆どないようなので、この機能を組み込めば「誰が書き込んだか」を明示するというメールアドレス記載の本来の目的に回帰出来ると思うんですが・・・。
 掲示板に限らず、CGIの独自利用は大抵のプロバイダでは認めていません。多数のユーザーがネット接続のために使う「中継基地」ですから、そのサーバーをダウンさせる危険性を排除するためです。私は別にサーバーを借りていますが、それでもダウンさせるわけにはいかないので、最悪自分のPCがダウンする程度に収まるようなシステムを構成しています。有名なものですが、自分でCGIを作ってみたいという方には便利なシステムですので、建設中の科学文化研究所で紹介する予定です。
 雪の降りが、まるで雪合戦で消費される分を補充するかのように増して来る。風はないが、かなり視界が遮られる。そんな中でも雪球は飛んで行くし飛んで来る。少しでもぼんやりしていると直ぐ雪だらけにされてしまう。今までなら遠くの子に当てようとしていたものが俺に当たってしまうのかどうかは分からないが、このまま的にされているだけで終わるわけには行かない。雪球の硬さに気をつけながら、適当に方向を変えて雪球を放り投げる。
 歓声が大きくなって来る。元から大きかったが、雪の降りが強くなって前が良く見えない中で雪球が飛んで来るから、こっちこそ、と思ってヒートアップしているんだろう。俺自身、立っていても屈んでいても雪球を立て続けに浴びせられて、雪球を投げるペースが速くなっている。近くの雪を適当に掴んで彼方此方に放り投げている。
 それにしても、どんなペースで投げているのか知らないが、兎に角雪球がどんどん飛んで来る。雪には余裕があるし、空から自動的に補充されるから、手当たり次第に投げているんだろう。おぼろげではあるが、前列なら見える。俺は周囲に比べれば格段に背が高いから、適当に投げたものでも当たってしまうんだろう。
 雪が空から降っているのか、横に飛び交っているのかが曖昧な感じがする。厄除けの祭りでもあるから、兎に角雪を沢山投げれば良い、という感じだ。さながら節分での豆が雪に替わったというところか。俺も何時の間にか雪を両手で固めず、片手で掴んだ分を軽く固めて投げる、という形になっている。こうしないと飛んで来る雪球の格好の標的にしかならない。
 投げる角度をどんどん広げていく。もう近くにある雪を引っ掴んで投げる、の繰り返しで、その間に投げつけられて服についた雪を払う、という感覚だ。最初のうちは1個投げる毎に10個くらい当てられていたが、どうにか5個くらいに減らせたように思う。飛んで来る分だけ投げ返すつもりでペースを挙げる。雪球を硬くしないように、スピードをつけないように、という配慮は忘れない。ひたすら雪球を作って投げる。雑念という厄を払うには丁度良い。

「はーい!じゃあ、止めー!」

雨上がりの午後 第1934回

written by Moonstone

 結構な数の雪球が俺に当たる。厚着だしスピードもさほどないから痛くはないが、雪を拾うために屈んだ時でも容赦なく当てられる。開始早々雪だらけだ。雪を手早く払いつつ、右手と左手で交互に雪球を投げる。俺は右利きだが、こういうスピードも力も、そしてコントロールもさほど要求されない場面では左手で投げるのも良い。

2005/7/5

[一時気絶]
 更新しようと思って準備はしていたんですが、服薬後に強烈な睡魔(元々副作用で眠気が生じるものですが)が襲って来て、一旦横になったら意識を失い、気が付いたら日付を大きく超えてました(汗)。大降りの雨の中思い荷物を担いで長距離歩いて疲れていたのもあるんでしょうけど・・・。
 さて、この頃の事件で「ネットで情報を知って」というのが目に付きます。一昔前なら漫画なりゲームなり思想的な本だったりしたのでしょうが、それでもって「有害」と決め付けたり閲覧を制限するのは、検閲や情報操作でしかありません。爆発物や毒物の製造方法なんて、高校レベルの化学(無機有機問わず)で沢山分かりますし、ある程度専門になると(大学で化学系の学科を専攻するなど)、例えばクロロホルムが麻酔薬よりむしろ溶媒(ものを溶かす材料。食塩水で言えば水が相当)として多用されるものなど、固定概念を覆すようなことまで知ることになります。
 科学や技術といったものは道具です。道具を知識としてどう活用するかは最終的には個人の良心や倫理といったものに委ねざるを得ません。「ネットの情報が危ない」なら、その元になっているであろう、先に挙げた例で言えば高校レベルの化学は全面禁止、書籍も発禁焚書にしないといけません。一律に「危ないから駄目」では、所詮マニュアル人間の別工程での再生産にしかならないのです。そのことが分からない人間が科学技術云々を論じるなどそれこそ論外です。
 晶子をじゃんけんをする。俺がグーで晶子がパー。言うまでもなく晶子の勝ち。どちらに入るかは晶子から先に決めてもらおう。

「晶子からどっちにするか選んで。」
「じゃあ、向かって右側のチームにします。」
「それじゃ俺は左側ってことで。」

 別段どちらを選んだから得するわけでもないし、勝った負けたで騒いだり悔しがったりするものでもない。それこそ思いつきのレベルで決めれば良い。俺と晶子は二手に分かれる。既に子ども達は二手に分かれている。間は・・・10mくらいか?公園が十分広いこともあって横方向に広がっているし、見た目まだ小学1、2年くらいの子も居るから、これくらいの距離が良いんだろう。

「兄ちゃん。あまりきつぅ投げんといてな。」
「分かってるよ。」

 隣の子どもも、明らかに周囲と体格が違う俺が加わったことで、勢いの良い雪球が相手にぶつけられないかと心配しているようだ。俺とてそんなつもりは毛頭ない。軽く握る程度に固めて肩慣らしのキャッチボールをする時の要領で投げるつもりだ。
 晶子は丁度俺と向かい合わせになる位置に居る。晶子は俺とあまり身長が変わらないこともあるが、やっぱり他より抜きん出て見える。横方向に広がっていてスペースもかなり余裕がある。しかも積雪は十分過ぎるほどあるし、今でも空から補充されているから、雪の量を心配する必要は全くない。雪合戦の間どれだけ多く投げるかが楽しみだな。

「じゃあー、はじめー!」

 伯母さんの声で雪合戦の幕が切って落とされる。雪球が小さい弧を描いて幾つも飛び交う。人数が多いから飛び交う数も多くなる。俺は雪球を受けつつ、手にした雪球をほぼ手首の力だけで投げる。腕全体を使うとそれなりにスピードは出るだろうし、そうなると子どもの心配が現実のものになってしまう。

雨上がりの午後 第1933回

written by Moonstone

 厄除けを兼ねた子ども達の祭りで、「一緒のチームに居たい」と駄々をこねる程馬鹿じゃない。元々2人大きいのが居れば二手に分かれるのは予想していたことだし。

2005/7/4

[低空飛行中]
 一応そこそこ食べられるようにはなりましたが、まだ作品制作に取り組める分には回復していません。書下ろしとなると1作でかなりの体力と精神力を必要としますが(特に「Saint Guardians」と「魂の降る里」)、現在の回復具合は体力7割、精神力6割程度です。波が激しい上に不規則なのでどうにも対処出来ないのがもどかしい・・・。
 このまま何もしないで次の週末を待つ、というのはちょっと嫌なので、何かしようと画策しています。「大人しくしてろ」と言われそうですが、100万HITまであと15万を切り、連載も2000回まであと100回を切るまでになったのですから、週末だけ作品公開というのも味気ない気がするからです。
 各グループのご来場者数を見るとやはりSide Story Group 1がトップですが、Novels Group 1(「Saint Guardians」所蔵)とNovels Group 3がかなり強く、アクの強さではダントツのNovels Group 2も根強い支持層があるようです。Novels Group 2ではリクエスト作品、Novels Group 3では作品に登場するアルバムのレビューとアナザーストーリー第2and3弾の実施、としていますが、Novels Group 1はそういった点でまだ「手付かず」ですので、此処で何か出来ないかと考えています。

「伯母ちゃん!待たせたなー!」
「おや、来たね。後ろの人達かい?あんたが昨日言うてたんは。」
「うん。入れたってええやろ?」
「ええよ。」

 あっさり了承された。かと言ってこのまま子ども達の中に加わるのも何だな・・・。俺と晶子は伯母さんに歩み寄る。

「はじめまして。こんにちは。」
「どうもはじめまして。こんにちは。」
「あー、どうもこんにちは。子ども達から昨日話聞いとります。仲良うなった若い兄ちゃんと姉ちゃんをこの会に入れたってくれ、言われましてね。」
「参加させていただいて、ありがとうございます。」
「本日はお世話になります。」
「いーえー。此処も年々子ども少のうなって来とるし、子どもがやることやから子どもの好きなようにさせとんのですよ。雪いっぱいありますで、しっかり投げたってください。」

 この伯母さんは多分「始め」と「終わり」を告げたり、明らかにルール違反−石を入れるとか−な場合に止めに入るためのお目付け役だろう。それも1人で良いということは、この雪合戦が子ども内できちんと受け継がれていっていることの証明と言える。

「会のルールは単純ですねん。二手に分かれてひたすら雪球投げる。今年の審判は私なんですけど、審判が「止め」言うて両手挙げたらおしまい。そんだけですわ。で、お二方は二手に分かれてもらえませんか?大きいのが片方に2人も居ると不利ですんで。」
「分かりました。単純にじゃんけんで決めるか。」
「はい。」

雨上がりの午後 第1932回

written by Moonstone

 目の前が開ける。やがて案内された場所は・・・やはり昨日偶然見つけたあの広大な空き地だった。子ども達が沢山居る。ざっと数えて100人くらいは居るようだ。それだけの人数を収納しても尚、空き地、否、公園には十分余裕がある。雪も余るほどある。長靴を履いている子ども達は苦労しないが、普通の靴を履いている俺と晶子は、運動会か何かの行進のように大きく足を上げないと思うように歩けない。俺と晶子を案内した子ども達の1人が、近くに居る中年の女性に駆け寄る。

2005/7/3

[病人を弄ぶ愚策]
 全身に鉛でも突っ込まれたみたいに重くてしかも鈍く痺れていて、作品制作どころか食事もまともに食べてません(とても食べる気がしない)。キャプションじゃないですが私自身が完全に病人になっています。
 さて、キャプションのお話。今日のプロ野球カープ×ジャイアンツの試合に、脳梗塞で入院療養中の長嶋氏が観覧に来るそうで、スポーツ関連のオンラインニュースは「御前試合」とかで大騒ぎしています。ジャイアンツを取り仕切るのは言うまでもなく読売グループ、頂点には1年足らずで球界に復帰した渡辺氏がオーナーとして君臨しています。「長嶋人気」にあやかろうという腹積もりなのでしょう。渡辺読売もここまで堕ちたか、と思うばかりです。今更長嶋氏を引っ張り出してプロ野球人気が回復すると本気で思っているなら、大間違いでしかありません。
 長嶋氏がプロ野球の歴史に大きな足跡を残した功労者ということは間違いありません。しかし、長嶋氏はもう引退し、しかも脳梗塞を患っている病人です。何時までも「長嶋」「巨人」に執着して取り繕うために、スター選手を他球団から金で毟り取ったことにプロ野球人気を落とした要因の1つがあることに気付かないあまり、病気療養中のところを引っ張り出される長嶋氏の身になれない。渡辺読売の非人道ぶりが今日、長嶋氏を犠牲にして示されるわけです。老害とはまさにこのこと。「長嶋」「巨人」の色あせた栄光が蔓延る限り、日本は何一つ変わらないでしょう。
 茶を飲み干して一息吐いてから、俺は伝票を持って席を立つ。伝票を改めて見ると・・・2人分で2600円。あの味と量から考えると割安と言って良いだろう。
 レジに持って行き、俺が伝票を出したところで、横から晶子の手が差し出される。その手にはしっかり1300円が乗っている。・・・律儀だな。俺はそれを受け取って、自分の分と併せてカウンターに出す。丁度頂きます、との声と引き換えにレシートを貰う。レシートを集める習慣はないが、一応貰っておく。ありがとうございました、の声に送られて店を出る。

「別に良いのに。」
「男の人に払わせるなんて、今時流行りませんよ。」

 こういうのを何の躊躇いもなく言えるのも晶子らしい。俺は傘を広げて差し、晶子を中に入れて雪が降り続く通りに出る。改めて見ると、ここは宿へ続く道、つまり大通りだ。此処を直進していけば、昨日出逢った子ども達が雪だるまを沢山作って待っているだろう。
 観光地らしく人通りはあるが、雪模様を反映して静かな通りを真っ直ぐ歩いていくと、軒下に連なった大小の雪だるまが見えてくる。子ども達も居る。俺と晶子は足を速めて子ども達の元に向かう。

「あ、昨日の兄ちゃんと姉ちゃんやんか!」
「約束どおり来たんやな。」
「約束だからな。」
「丁度ええ時間や。一緒に公園行こ。」

 携帯で時刻を確認していなかったが、どうやら遅刻はしなかったらしい。たとえ遅刻しても此処の子ども達なら1分や2分くらいは目を瞑ってくれそうだが、待ち合わせで遅れるのは好きじゃない。子ども達の後を追って碁盤目のような通りを前に右に進んでいく。蛇行しているが斜め前方に進んでいるのは確かだ。

雨上がりの午後 第1931回

written by Moonstone

「出ようか。」
「はい。」

2005/7/2

[何のための議会か]
 ファイル変換が頓挫しておまけに此処の連載も頓挫して、更新が遅くなってしまいました。リスナーの方には「またか」と思われているでしょうけど、連載のストックは直ぐなくなるので油断なりません。
 さて、本題。「改革の本丸」と小泉内閣が気勢を上げる郵政民営化法案が、特別委員会での採決が自民と民主との間で合意されました。別段驚くことはありません。自民・公明の与党は元より民主も郵政民営化に賛成の立場ですから、妥協がようやく成立しただけに過ぎません。「議論が低調」とマスコミが言っていますが、方向性が同じ「二大政党」に焦点を当ててばかりではそうなって当然です。政治離れを加速させているのはマスコミです。
 先の政府税制調査会で労働者を直撃する大増税計画が出されましたが、これにも民主は賛成の立場です。「年金の財源のため」とか何とか言っていますが、「取りやすいところから取る」立場は同じですから名目が違うに過ぎないのです。そもそも「二大政党」の実態がどんなものかは、アメリカとイギリスの例を見れば容易に分かること。「騙された」と思う前にマスコミの宣伝に(詳細は「見解・主張書庫」にあります)踊らされたことを反省すべきでしょう。
 少しして運ばれて来た定食は、昼飯とするには勿体無いと思うほどの豪華さだ。メインとなる赤みの濃い牛刺身の他茶碗蒸し、味噌汁、漬物、ご飯が乗った盆−トレイと言うべきではないだろう−は、俺と晶子が座る2人用の机をほぼ完全に占拠してしまった。メニューには写真が載ってなかったし、こういう店だとあまり量がないという先入観があったせいで、余計に多く見える。
 眺めてても仕方ないから食べ始める。まずは牛刺身。普通のステーキ肉くらいの大きさと十分な厚みの肉を刺身サイズに切り分けてある。薬味は摩り下ろした生姜と刻み葱。薬味を刺身の上に少し乗せて、軽く醤油に浸して口に入れる。・・・思ったより柔らかい。マグロの刺身より重厚感があるが、しくこくない。薬味の刺激が程好く混じって、ふわりと口の中で溶けて旨みを広げる。

「美味しいですね、これ。」
「そうだな。牛刺身っていうからどんなものかと思ったんだけど。」

 晶子も少し意外そうだ。牛肉を食べる機会はそれほど多くない。焼肉をしようにも自宅じゃ煙が充満して大変なことになるだろうから出来ないし−火事に間違われるからしない方が良いと言われている−、バイト先で食べるにしても晶子の家で食べるにしても、色々なメニューの中の1つという位置づけだからそう頻繁に出て来ない。俺は既に自炊を放棄しているから、自分で買って来て云々という方法は度外視だ。
 思いがけないヒットも相俟って、食事は快調に進む。茶碗蒸しも美味いし、味噌汁も白味噌だが−普段は赤味噌と白味噌を混ぜている−出汁が良く出ていてこれも美味い。観光地の料理は時に当たり外れの落差が大きいとも言うが、この店に限って言えば大当たりと言えるだろう。
 出された時は驚いたが、食べてしまうとあっという間に思う。量も多くもなく少なくもない適量だった。味は申し分ないし、満足満足。昼からの雪合戦に向けて準備は整った。どんな大人数になるかは分からないが、子ども達のパワーに圧倒されるわけにはいかないからな。

雨上がりの午後 第1930回

written by Moonstone

 俺は店員を呼んで、2人揃って牛刺身定食を注文する。多少値は張るが、どんなものか食べてみたいという気持ちの方が先行した。程なく運ばれて来たお絞りで手を拭って茶を啜る。

2005/7/1

[6周年]
 過去ログをご覧の方、若しくは当初からの常連の方はご存知でしょうが、今日でこの日記は6周年を迎えました(連載は10月10日開始ですのでもう少し先)。普段記録とかそういうものを残す習慣があまりない私にしては、かなり珍しい記録です。非公開だったら多分1週間で止めていたと思います(笑)。
 中高生の方は今頃期末試験でしょうが(このページのご来場者の年齢層は高めと予想)、それが過ぎたら夏休みですね。このページには夏休みはありませんので(私の本業の夏休みは9月後半を予定)、何時でもご来場ください。出来る限り、昨日付のように更新時刻が出鱈目にずれるようなことはしないようにします。
 近々、「受信しても見ずに削除する発信元メールアドレス一覧」(長い)を創ります。「ニュース速報」でも既報のとおり、あまりにも迷惑メールが多いことに辟易していて、しかもこちらのフィルタリングをもすり抜けてくるものがあるので、更なる強化が必要と判断したからです。正当な目的で使用している方にはとんだ災難になるかもしれませんが、ご了承願います。
「・・・。」
「だからもし俺が行く気になったら・・・、一緒に来て欲しい。」
「はい。」

 言ってから思っても遅いが、半ばプロポーズ的になってしまったな。でも、飾った言葉を考えて下手に遠回しに言って誤解を招くより、ストレートに言った方が良いだろう。こういう場面では、特に。
 顔見せの時、結婚する意志はあるのか、と問われるかもしれない。俺が左手薬指に指輪を填めているのは去年の帰省で知られたし−自分から言ってないが目立つらしい−、連れ合いの晶子も同じ指輪を填めてるんだ。聞きたくもなるだろう。その時はしっかり言おう。

俺は将来、晶子と結婚する、と・・・。


 気の向くままに歩いていたら、空腹を感じ始めた。携帯で時間を見たら丁度昼時。何処かを狙って歩いていたわけじゃないから場所を探すのに少し手間取ったが、割と近くにあった料理屋に入った。
 外見と中身のギャップはなく、テーブル席と座敷席が半々ほど。昼時ということで割と混んではいたが、待つほどでもなかった。テーブル席はいっぱいだということで座敷席に案内された。やっぱり客層の年齢は高めだ。俺と晶子は見ようによってはかなり目立つ。それを気にしていても仕方ないから、「お品書き」と書かれたメニューを広げる。
 内容は和風の料理屋のそれそのものだ。天ぷら定食はお約束。地元産にこだわりがあるのか、牛刺身定食というのもある。「地元牛肉使用」と対処してある。牛肉を刺身で食べるのは食当たりを起こしそうな気もするが、新鮮なものなら大丈夫だろう。食中毒騒ぎは飲食店にとっては致命的ダメージだから、その辺の対策はしてある筈だ。

雨上がりの午後 第1929回

written by Moonstone

「俺としては、進路をごり押しされたくないから今年は帰省しない方針だったんだけど、晶子の紹介くらいは先んじてしておいた方が良いかな、とも思うんだ。お遊びで指輪を填めた間柄じゃないからな。」


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