芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2003年5月31日更新 Updated on May 31th,2003

2003/5/31

[経済失政のA級戦犯]
 今日の先の見えない不況、空前のデフレを作り出した経済の失政のA級戦犯は間違いなく小泉内閣、特に竹中金融相が編み出した通称「竹中プラン」とそれを推し進める小泉首相です。「竹中プラン」ではアメリカ流の金融査定システムを持ち込み、銀行に自己資本比率(これが8%以上ないと国際業務が出来ず、4%以上ないと通常業務も出来ないと法律で定められている)を高めるように銀行を追い込み、その結果銀行は自己資本比率を上げるために貸し渋り、貸し剥がし、貸出金利の引き上げに走り、結果として企業、特に不景気の影響を一番受けている中小企業の資金繰りを悪化させ、倒産、失業を増やし、景気先行き感を更に悪くする、という悪循環(デフレ・スパイラル)を生み、日銀から銀行の間には税金を含めて金が有り余っているのに銀行から先に金が流れていかない、という金融収縮を起こしているのです。これで景気がよくなる筈がありません。
 某ページではそういう実体経済の流れを知ってか知らずか「竹中プランは必要」と言っていますが、これは経済のイロハを知らない無知の証拠というそしりを免れません。こういう主張が私のページよりずっと多くの人の目に日常的に触れていることを考えると、その責任の大きさを批判せずにはいられません。
 構造改革、という鍍金(めっき)が剥がれた言葉を頻りに持ち上げ、多少の犠牲−犠牲にされる中小企業などは溜まったものじゃないですが−を我慢すれば先は良くなる、という幻想に騙されるのはもう止めにしなければなりません。「経済学を勉強するのは経済学者に騙されないようにするため」という格言があるとおり、学者頭で実体経済を掴まない竹中金融相とそれを強引に推し進める小泉首相の即刻退陣を強く要求しましょう。

「・・・研究室、楽しいですか?」

 晶子が出し抜けに尋ねてくる。俺は一瞬返答に窮したが、直ぐに気を取り直して答える。

「まあな。CDやシンセサイザーと関連があるから、ああ、なるほど、って思うことが多いよ。質問攻めだけは鬱陶しいけど。」
「それだけ祐司さんが頼りにされてるってことですよ。」
「そうかなぁ・・・。何か、良いように使われてるだけ、って感じがするんだけど。」
「それでもきちんと予習したりしてるんでしょ?」
「ああ。何処が自分の担当になるか分からないし、前後関係が読めないとどうしようもないから。」
「私、祐司さんのそういう真面目なところが特に好きなんですよ。」

 そう言って微笑む晶子を見ていると、心なしか気分が晴れてくる。時々自分がやってることが馬鹿馬鹿しく思えることがあるが、晶子にそんな俺が好きだ、と言われて嬉しくない筈がない。俺の心は晶子の言葉で掬われている部分がかなり多いと思う。晶子が居なかったら、俺はどうなっていたんだろう?ちょっと怖くなってくる。

「晶子はどうなんだ?」
「ゼミそのものはアットホームな雰囲気で楽しいですよ。」

 晶子は現代英文学のゼミを希望して無事配属になった。近年大流行したファンタジー小説の原作を読んだりして、その表現方法や過去の英語作品との比較をしているそうだ。何だか聞いてるだけで気楽な雰囲気が感じられるな。その点、俺のゼミは専門用語だらけで味気も何もあったもんじゃない。しかし、ちょっとさっきの答えで引っ掛かるところがあるな・・・。

「そのものは、っていうのはどういう意味?」
「・・・聞きたいですか?」

 晶子がやや暗い、真剣な表情になる。ゼミの仲間内で何かあったんだろうか?何せ去年はあのセクハラ教官のせいで散々な目に遭わされたんだ−俺も余波を被ったが−。その波紋が今尚残っていても不思議じゃない。

雨上がりの午後 第1184回

written by Moonstone

 晶子は窓を閉めて、ベッドに腰掛けている俺の隣に腰を下ろす。

2003/5/30

[早く帰ってこーい]
 シンセサイザーを修理に出してから一月が経とうとしています。でも、代理店に持ち込んだ実家の人間からは何の連絡もありません。私は実家の人間を通して代理店に修理を依頼する格好を取ったので(とても長い道中持って運べるものじゃない)、何の連絡もないということは代理店から何も連絡が入っていないということでもあります。
 本当は6月の企画として1、2曲ピアノソロ曲を作って、オルゴール電報(で良いのか?)みたいなことをしたかったんですが、時間の関係上無理なようです。もっとも以前企画して実際に募集したのに未だ送れていないというツケがあるので、そっちを片付けるのが優先事項なんですが(汗)。
 まあ、実際に企画して準備して募集したところで対応におおわらわ、というほど集まるわけでもないですし(集まった例がない)、高々数人分のために時間を割くのも何か馬鹿らしいですから、私が送りたい、と思ったページ宛に作って送ることを優先していこうと思います。その方が喜んでもらえる可能性が高いですからね。
更に仮とはいえ研究室に配属になったことで、週1コマのゼミに参加させられることになった。内容はスペクトル(註:周波数成分のこと)とそのサンプリング(註:ある対象を一定期間抽出すること)の原理だ。専門教科で出てきたフーリエ変換とかが出てきて、俺は早速智一や他の研究室メンバーの質問攻めを浴びることになった。ゼミと言っても英語の文献を訳して音読するだけなんだから、そのくらい自分でやれ、と何度言っても聞きやしない。もう今では言うのも馬鹿らしくなって何も言わないでノートを放り出すことにしている。
 そんな状況を更にうざったく感じさせるのはこの長雨だ。今年は5月でも所謂「五月晴れ」らしい日があまりなかった。中旬以降、それこそ梅雨空を思わせるどんよりした曇りの日や雨が降ったり止んだりはっきりしない日が多くなった。そして何時の間にやら入梅宣言だ。学業やバイトの忙しさより先に、この長雨が気分をげんなりさせてくれる。

「今夜もこのまま降りそう・・・。この分だと明日も雨ですね・・・。」

 6月のある月曜日、何時ものようにギターとアンプを持って晶子の家にお邪魔した俺は、夕食後の練習の合間に外を見た晶子の言葉を聞いて溜息を吐く。雨の日はギターを背負って片手にアンプ、片手に傘を持って歩いて行かなきゃならないから余計に疲れる。その疲れを癒せるのが晶子との夕食と練習と寛ぎのひと時なんだが、微かに聞こえる雨の音が気分を萎えさせる。

「また駅まで一歩きか・・・。いい加減にして欲しいな、まったく。」
「雨ばかりだと鬱陶しいですけど、降る時降らないとそれはそれで大変なことになりますから、暫くの我慢ですよ。」

雨上がりの午後 第1183回

written by Moonstone

 研究室に配属されたからと言ってもあくまでも「仮」だ。正式に配属される4年の時は3年までの成績が考慮されるから油断ならない。

2003/5/29

[立ち仕事は疲れます]
 昨日は半分デスクワーク(回路設計)、半分は私が管理するストックルームの在庫追加関係の作業でした。前者は兎も角、後者は円形に束になった状態で納入されたケーブルを空のボビンにどう巻いていくかで議論になり、一時は1つあたり2時間かかるガラス旋盤(ガラスパイプを挟んで回しながら加熱することで加工する機械)でゆっくりゆっくり巻いていく方法が採用されました。
 しかし、多少見た目が崩れていても巻かれていれば問題ないのなら、ガラス旋盤より材料工作で使う旋盤の方が効率が良い、という主張を内心譲らないで居た私は(結構頑固者)、無断でケーブルと空のボビンを持ち出し、旋盤にセットして(ベテランの方に手伝ってもらいました)ゆっくり回しつつ巻きました。
 ゆっくりと言ってもガラス旋盤よりは圧倒的に早い。30分もかからずに巻き終わり、ガラス旋盤で巻いていた先輩に見せたら「それで良い」とお墨付きを貰い、結局残り殆どを私が旋盤で巻きました。その間緊張感と立ちっ放し(事実上片足立ち)が続いたので、帰宅して夕食を食べた後、ネットに繋ぐまで爆睡。まあ、更新時間には間に合いましたけど(^^;)。
今日は時計を見ないようにしよう。時間に追われる生活はこれから嫌でも待っているし、こんな時くらい文字どおり時間を忘れて楽しみたい。折角の二人きりの時間んだから、存分に楽しみたい。

「どんな映画なんでしょうね。」
「さあ・・・。それは兎も角、大勢の前で抱きついて泣くのだけは勘弁してくれよ。どうしたら良いか分からないから。」
「そういう時は優しく抱き締めてくれれば良いんですよ。」
「あのなあ・・・。」
「冗談ですよ。もう昔の私じゃないんですから、心配要りませんよ。」

 晶子はそう言って微笑む。この悪戯娘め・・・。寒さで縮こまっていた俺の口元も思わず緩む。まあ、以前みたいに泣きつかれても、それを受け止めるだけの心構えは出来ているつもりだ。俺も昔の俺じゃないんだから。さて、どんな映画が待っているのやら・・・。

 俺の大学生活が3年目に突入して久しい。難関だった2年後期の試験も無事クリアし、大きな関門を一つ乗り越えた。俺が所属する工学部は3年になると本人の希望で研究室に仮配属となる。勿論人気の研究室−大体単位が取りやすいという理由だ−に人が集中するから、その際の「ふるい」としてこれまでの成績が持ち出される。
 俺は事前の調査を踏まえて、自分の趣味が多少なりとも生かせると思った音響・通信工学の研究室を希望して、無事配属となった。進路指導の教官−各学年に一人割り振られるらしい−曰く、俺は非常に成績が良いらしい。試験結果の可否は分かっても詳細まではこれまで分からなかったから、それを聞かされた時は思わず聞き返したくらいだ。
 智一はというと、やはりと言うか何と言うか、俺と同じく音響・通信工学の研究室に配属となった。智一が言うにはギリギリのラインだったそうだ。まあ、事前に試験問題を入手してヤマを張ったり、俺におんぶに抱っこで実験をやってりゃ、配属されたのがずるいと思えるくらいだ。まあ、残る二人の実験での「仲間」は別の研究室に配属になったからまだ良いか。

雨上がりの午後 第1182回

written by Moonstone

 暫く歩いていくと映画館が見えてきた。学生らしい若い集団やカップルが目立つが、それほど人手は多くない。まだチケットを買っている奴も居るところからして、上映開始時間までにはまだ時間はあるようだ。

2003/5/28

[一山越えて]
 昨日、一仕事片付けることが出来ました。配線をほぼ終えたところでふと時計を見たら終業時間を過ぎていたのでびっくりしましたが(笑)。昨日は仕事そのものより風邪の症状に悩まされました。鼻水は止まらないし、咳は一旦出ると窒息しそうになるほど出るし。この際他人の目は気にしておれん、ということでティッシュで鼻栓をしたりしましたが、30分程で効果がなくなってしまうので(それだけ鼻水が出たということ)、結局しょっちゅう鼻をかむことに。
 今でも症状は治まりません。風邪薬が効力を発揮するには最低3日間連続で月曜に処方された薬を飲まないといけないそうなので、恐らく今日も鼻水と咳に悩まされることになるんでしょう。まったく厄介な時に風邪をひいたものです。これからちょっと(だと思う)難しい仕事が控えているというのに・・・。
 ただ、風邪の症状が本格化して以来、結構まともに寝られるようになったのが救いです。どうしてなのかは不明ですが、追加で睡眠薬を飲む必要もなく、朝から眠気に翻弄されることなく仕事に専念出来るのでありがたいですね。このまま風邪の症状だけ消えてくれれば良いんですが(甘い?)
俺は鍵をセーターの下に着ているシャツの胸ポケットに仕舞い、どちらから言い出すまでもなく晶子と手を取り合う。映画館までは歩いてでも十分行ける。時間待ちの可能性もあるがそんなことはお構い無しだ。

「二人で映画って、久しぶりですね。」
「そうだな。前に行った時は付き合う前だったから、付き合うようになってからは今日が初めてか。」
「あの頃から私はその気でしたけどね。」
「俺はまだその気じゃなかった。否、気付かないふりをしてただけかもしれないな。」
「でも、今こうして一緒に居られるんですから、結果オーライですよ。」
「結果オーライ、か・・・。確かにそうだな。」

 俺と晶子の手はしっかり繋がっている。この温もり、この気持ち、この瞬間、どれも大切な記憶にすると同時にこれからに向かって大切に育んでいきたい。抱いて抱かれて、だけの関係になった時は、そこには恐らく何もないだろう。全てを過去に変えてただ抱いて抱かれてに明け暮れる時間・・・。そんなのはまっぴらだ。
 冬の朝の通りは車も人も疎らだ。社会人なら仕事が始まっているだろうし、学生はまだ夢の中か或いはクラブ活動か。剥き出しの顔や手に突き刺さる冷気の針は鋭いが、晶子との接点に意識を向ければそんなこと大して気にならなくなる。
 日頃は学生や社会人の波でごった返す駅前もひっそりしている。俺と晶子はそんな駅前通りを通り過ぎ、映画館へ向かう。あの映画館へ行くのは久しぶりだが、不思議と道程は覚えている。それだけ晶子と一緒に映画を見に行ったっていう思い出が強く脳裏に焼きついているせいか、或いは・・・。
 止めた。今は過去を振り返ってあれこれ考える時間じゃない。今は今を大切にしなきゃいけないんだ。それが晶子との時間を充実させるために最も必要なことだ。それを忘れた時が一番怖い。そうなったら全てが惰性になっちまう。晶子との絆も思い出も一緒に居る時間も何もかもが。それだけは絶対に避けないといけない。

雨上がりの午後 第1181回

written by Moonstone

 俺はコートを着てマフラーを巻き、エアコンを止めて晶子と共に家から出る。そして鍵をかけて・・・これで良し。

2003/5/27

[まだ風邪ひき中(泣)]
 以前にもお話したかもしれませんが、私は風邪をひくと長引くタイプなんです。日曜一日寝て良くなったかと思ったら、咳やくしゃみも出るし鼻水が酷いしで最悪。仕事を休もうかとも思ったんですが事情があって休むわけにはいかなかったので無理矢理出勤。よりによって雨だったので徒歩で。これじゃ拷問だよ(泣)。
 で、職場ではやはりろくに仕事にならず、図面作成などの軽作業に重点をおきました。とてもじゃないが組立を出来る状態じゃなかったので。その後定例の通院。持病の方は回復に向かっているものの風の症状が出ていると話したら、薬を処方してくれました。私は薬を常時飲んでいる都合で、下手に市販の薬を飲めないんです。よってこの薬は私専用。
 帰宅後夕食を食べて横になっていたら、また汗を噴出してシャツと掛け布団が汗まみれ。喉の方はほぼ良くなりましたが咳とくしゃみがたまに出ます。状況次第では今日は仕事を休もうと思います。仕事の進捗は余裕がありますし、無理をしてこじらせたら洒落にならないので。
「何ていう映画?」
「『ナタリー』っていうタイトルです。十数年前に上映されて大ヒットした映画の続編っていう位置付けだそうで、前評判は高いそうですよ。」
「ふーん・・・。」

 こういう暇を持て余す機会はこれから先益々なくなるだろうし、折角晶子と一緒に居られる時間が増えるんだ。これを逃す手はないな。

「行こうか。どんな映画か興味あるし。」
「はい。」

 晶子は嬉しそうに微笑む。晶子も行きたかったみたいだ。まあ、折角招待券を貰ってるんだから使わないと勿体無い、っていう気持ちもあるかもしれないけど、そんなことはどうでも良い。今回の帰省で、晶子と距離が出来ることがどんなに俺の心に大きな穴を開けるか思い知らされた。俺の進路次第じゃ一緒に居られる時間を作るのが難しくなるかもしれない。だからこそ恵まれた機会を大切にしたい。
 俺と晶子は朝食を食べ終わると、晶子が洗い物を済ませてエプロンを外す。行く準備と言っても格好は普段着そのまま。変わったことと言えばせいぜい歯を磨いて髪に櫛を通すくらいだ。それも普段していることと言えばそうだから、別段変わったと頃は何もないと言ったほうが適切か。飾らない普段着の付き合い。これがどんなに気楽でありがたいことか。

「それじゃ、行こうか。」
「はい。」

雨上がりの午後 第1180回

written by Moonstone

「マスターが招待券をくれたんです。期限は今週末までですからまだ余裕はありますけど、祐司さんが暇なら一緒に行きたいな、と思って・・・。」

2003/5/26

[嫌でも休養(泣)]
 夜は身体中の痛みでろくに眠れず、睡眠薬を追加してようやく就寝。それでも殆どまともに眠れることなく目覚めたら、喉の具合はまあ良くなったものの、身体中痛いし熱っぽいし、頭も痛い。朝食後暫く様子を見ようと横になっていたらだんだん熱が出てきて汗まみれ。
 昼食を挟んでも一向に具合は良くならず、布団もシャツも汗まみれ。もうこのまま今日は休もう、と決めてひたすら汗を流すことに。風邪は汗を流すに限る、と言いますからね。
 夕食も季節にお構いなしに湯豆腐と煮込みうどん。そして再びベッドで汗を流すことに専念し、今に至ります。大体具合は良くなりましたが、まだ喉のいがらっぽさと熱っぽさが消えません。今日から仕事なのに大丈夫かな・・・。

「「いただきます。」」

 俺は茶を一口啜った後、朝食を食べ始める。実家に居た時は店を開ける前に叩き起こされるか、昼まで我慢するかのどちらかだったが、晶子と一緒に居る時は大抵不思議と自然に目が覚める。目が覚めないで起こされるのは酒が入った時くらいだ。
 そう言えば昨日は夕食に酒が入ったよな・・・。スクランブルライブから間もなくこっちに戻ってきたから、疲れがドバッと噴き出てよく眠れたってことだろうか。ま、何にせよ、食事が待っていて出てくれるのは本当に助かる。こっちでも夕食は晶子か潤子さんの手料理を食べているが、朝食だけはそういうわけにもいかない。火曜の朝を除いて。

「バイトは明日からですし、今日はどうしますか?」

 晶子が尋ねてくる。確かに今日は月曜だからバイトは休み、大学は今週の木曜からだ。今日は完全にフリー。何も用事はない。さて、どうしたものか・・・。家でゴロゴロしてるのもなんだか勿体無いような気がするし・・・。

「あの・・・よかったら映画を見に行きませんか?」

 考えていたら晶子が話を持ちかけてくる。映画か・・・。映画といえば、晶子と付き合う前に評判の映画に行って、泣いていた晶子に大勢の前で抱きつかれたよな・・・。

雨上がりの午後 第1179回

written by Moonstone

 晶子はエプロンを外し、自分の「指定席」に座る。俺は何時も一人で食事を食べる場所、即ち晶子の向かい側に腰を下ろす。俺と晶子は顔を見合わせて両手を合わせて唱和する。

2003/5/25

[風邪ひいたかな・・・(汗)]
 朝起きたら喉の具合がいまいちでした。いがらっぽい感じで咳払いをすると一時的に取れるものの直ぐに元どおり。このところの陽気に任せて自宅でノースリーブのTシャツで居たのがまずかったかな・・・。
 こうしてお話している今はまずまずなんですが、まだいがらっぽさが残っています。ちょっと熱っぽいし(汗)。このところずっと睡眠時間3、4時間で来ましたから、疲れが蓄積していたんでしょうね。それにこのところ仕事が忙しかったですし。じっくり休養、という考えも頭を過ぎったんですが、晴天だったので布団を干してさらに小説1本+連載の書き溜め(汗)。休めよ。
 で、今日は具合にも依るんですが、多分小説の執筆をするでしょう。何で休まないのかというと、取り敢えずの目標である50万HIT目指して質、量とも充実したページにしていこうと目論んでいるからです。あと7万弱。来月は私の誕生月ですし、更新により力を入れていきたいです。
 俺と晶子は囁き声で挨拶を交わて微笑む。そして俺は晶子の頭を自分の方に近づけて唇と重ね合わせる。晶子の腕が俺の頭を抱き込む。深い、味わい深い余韻が続く。この時間がずっと続けば・・・。

 ・・・俺の視界が徐々に開けてくる。やがて見慣れたベージュの天井が目に映る。カーテンはほんのりと輝きを漏らしている。朝か・・・。何時の間にか寝てしまったんだな。
 意識がはっきりしてくるにしたがって、耳に様々な物音が届いてくる。何かが焼けるような音と、調子良く何かを叩く音・・・。俺の上には晶子ではなく、布団と毛布が被せられている。両隣を見ても晶子は居ない。視線をもっと遠くに向けると、エプロン姿の晶子が包丁で何かを刻んでいるのが見える。俺が身体を起こすと、晶子がそれに気付いたのか、俺の方を向く。

「おはようございます。もうすぐ朝御飯が出来ますよ。」
「おはよう。早いな・・・。」
「昨日は良く眠れましたから。」

 晶子はそう言って微笑み、再び正面を−俺から見れば横を−向く。俺はベッドの下に脱ぎ捨てられているであろう自分の服に手を伸ばす。服はきちんと畳まれて一箇所に積まれている。晶子がそうしておいてくれたんだろう。俺は畳みを崩すのが惜しい服を手に取って着ていく。ふと気付いたんだが、下着は新しいものに代わっている。抜かりないとはこういうことだな。
 俺が服を着終わってベッドから出ると、晶子は皿を両手に持ってやって来る。皿には焼きたての目玉焼きとハムが乗っている。晶子は向かい合わせに皿をテーブルの上に置くと、またキッチンに戻って今度は鍋と炊飯ジャーを持ってくる。晶子は鍋から味噌汁、炊飯ジャーからご飯をよそってやはり向かい合わせに置く。そして前から置いてあった急須から二人分の湯飲みに茶を注ぐ。やはり前からテーブルの上にあった野菜サラダと合わせて朝食が出揃ったようだ。

雨上がりの午後 第1178回

written by Moonstone

「・・・ただいま。」
「お帰りなさい・・・。」

2003/5/24

[好調ですね、ここ(^^)]
 日頃何気ないことや、呆れてしまうようなしょうもないことや、思わず引いてしまうような厳しい主張などをお話しているこのコーナー、お陰様でリスナー延べ数は60000人を突破し、毎日コンスタントに伸ばしていっています。お話している私が言うのも何ですが、不思議なものですね。
 何気ないことやしょうもないことはまあ別として、結構厳しいことを言ったりするわけですよ。思想信条が違う方にとっては「それはおかしいんじゃないの?」と思うこともしばしばだと思うんです。それでも毎日コンスタントにカウンタが回っているのは、主張が受け止め方の違いこそあれ、それなりの何かを持っているのかもしれません。
 あるいは連載をご覧になっているのか・・・。こちらは1000回を突破して久しい長期連載なので、最初からの読者様は少ないと思うんです。偶々目にしてNovels Group 3を知ってか知らずか「参入」した方のほうが多いんじゃないかな・・・。どちらも自分のペースで続けていきますので、これからも引き続き宜しくお願いします。
「あの女性(ひと)と?」
「ああ。バンド演奏が終わってから記念撮影をしたんだけど、その時開口一番聞かれたよ。晶子と上手くやってるか、ってな・・・。その時つくづく実感したよ。俺の隣に一番居て欲しいのはバンド仲間でも宮城でもない、晶子なんだって・・・。今日晶子を抱いて、帰って来たんだ、って実感が強まったよ・・・。俺の前であられもない姿を晒す晶子を見ていて、俺は晶子と時間を共有してるんだ、って思ったよ・・・。」
「祐司さん、今日は何時になく激しかったから・・・。」

 晶子は身体を起こして俺の上に乗りかかり、俺を至近距離から見詰める。電灯に照らされた身体はじっとりと汗ばみ、頬はほんのり紅潮している。俺が晶子の頬に手を当てると、晶子は目を閉じて愛しげに頬擦りをする。

「・・・俺達ってさ、ちょっと変わってるよな・・・。」
「何がですか?」
「俺達が寝た時、きっかけは晶子が作ってるだろ?最初だってそうだったじゃないか。晶子が俺の隣で服を脱いでさ・・・。」
「そういう女は嫌いですか?」
「いいや、愛してる相手から誘われて嬉しくない筈がないさ。だから俺は懸命に晶子を抱くんだ。・・・満足してるかまでは分からないけど。」
「愛してる人に一生懸命抱いてもらって、満足しない筈ないですよ・・・。」

 晶子はゆっくりと倒れこんできて、俺の頬に自分の頬をくっつける。次の瞬間、頬に軽く温かい点が生まれる。俺は再び晶子の髪に指を通して顔を晶子の方に向ける。晶子は心地良さそうに、満足そうに微笑んでいる。

雨上がりの午後 第1177回

written by Moonstone

「向こうじゃ・・・色々あった。楽しい時もあれば窮屈な時もあった・・・。食事食べてた時には言わなかったけど、成人式の会場で宮城と会ったんだ・・・。」

2003/5/23

[仕事の醍醐味]
 私の仕事は専門的で、時には依頼者の無理難題を実現しなければならない厄介なものです。おまけに作っている最中は非常に地味で根気が要る作業が多く、ともすれば自分がやっていることの意義を見失いがちです。
 しかし、昨日仕事が一つ無事に片付いた瞬間、それまでの苦労や頭を悩ませたりしたことが一瞬にして大きな充実感に代わりました。私は東大での業務発表のため久しく普段の仕事から遠ざかっていたので、その分充実感も大きかったです。
 とは言え、まだ仕事はありますし(これまた根気が要る)、新たに一つ入ってきたのですが(^^;)、それらも余裕を持って片付けられそうです。もの作りにおける醍醐味。それはものが出来た瞬間の大きな充実感。久しぶりにそれを味わったことで、仕事の意義を思い出したような気がします。
 激しく求め合った。これが三回目。まだ回数を覚えているということは、逆に言えばそれだけ間隔が開いていて、同時に印象深いということだ。これが呼吸をするのと変わらない感覚になった時が危ないんだよな・・・。

「何か・・・仕込んだ?」
「別に何も・・・。何故ですか?」
「こっちに帰って来ていきなりこうなるとは思わなかったからだよ・・・。晶子が誘ってきたような気もするけど。」
「祐司さんをその気にさせようとしたのは事実ですよ。」
「何で?」
「抱いて欲しかったから・・・。」

 晶子は簡潔明瞭な答えを言って俺に擦り寄り、肩口を枕にする。

「祐司さんがいなかった約1週間・・・。短いようでやっぱり長かったです。私にとっては・・・。電話で祐司さんの声を聞く度に祐司さんと一種に居たい、祐司さんに早く帰って来て欲しい、って思ってたんです・・・。」
「晶子・・・。」
「だから祐司さんの家に来て・・・祐司さんが好きな料理を作って・・・お酒を飲んで気分を盛り上げて・・・会えなかった分だけ愛してもらおう、って・・・。」

 俺は囁くように言う晶子の髪に指を通す。指を滑らせていくと、絹糸のような滑らかな感触が指に伝わる。

雨上がりの午後 第1176回

written by Moonstone

「・・・これって、二度目のご馳走って言うのかな・・・。」
「そうだったら嬉しいです・・・。」

2003/5/22

[眠気に翻弄された日]
 昨日は最悪でした。明け方目を覚ました際に飲んだ睡眠薬の効き目が完全に取れず、酷い眠気を引き摺ったまま職場へ。予定より早く進行しているのと昨日何とか進めた分でまあ何とかなったんですが、昼休みは爆睡。帰宅して夕食を食べた後も爆睡。未だ眠気は完全に取れてません。しつこい。
 今更ですが、薬を飲むんじゃなかったです。効き目の持続期間の上では飲んでも支障はなかったんですが、一昨日までに蓄積した疲労が抜けきっていない状況で眠気を誘発する薬を更に飲んだら、眠気が噴出すことになるのは当然と言えば当然。もっともそんなこと、目覚めた直後の眠い頭で考えるのは無理なんですが。
 昨日も組立作業でほぼ力作業だったので、余計に疲れが溜まったんでしょう。薬を飲むタイミングが悪かったことにそれが重なって・・・。薬なしできちんと寝られれば一番良いんですが、それは現状では不可能。まったく困ったものです。

「はぁ・・・。」

 晶子の甘い吐息が俺の耳の直ぐ傍で聞こえる。俺も呼吸が荒くなっているのを感じる。・・・もう我慢出来ない。俺は晶子の服を脱がしにかかる。その時、晶子の両手が俺の手に重ねられる。

「ベッドへ・・・連れて行って・・・。」

 何かと思えば場所の要求だった。俺は晶子の服から手を離し、晶子の上から退いてその頭と膝の裏側に手を入れて一気に持ち上げる。適度な重みと弾むような弾力が両手に伝わってくる。晶子は目を閉じたまま見た目ぐったりしている。抱きついてくるわけでもなく、全て俺に任せるといった感じだ。
 俺は晶子を静かにベッドに横たえる。その時、俺の首に晶子の腕が回り、食いと引き寄せられる。俺はされるがままに晶子と唇を重ね合う。俺は直ぐに始まった濃厚なキスを続けながら晶子の上に乗りかかる。
 時に抱き合い、時に服を脱がして、俺と晶子は互いに上になったり下になったりしながら濃厚なキスを続ける。久々のこの感触。舌と手と前面に感じるこの離し難い感触。もう止められない・・・。止めたくない・・・。

・・・。

 絶頂を越えた俺の身体から硬直が解ける。そして崩れるままに身を任せて前のめりに倒れ込む。布団とはまったく違う弾力が俺を受け止める。俺は荒い呼吸のまま、俺を受け止めた弾力の主の唇を塞ぐ。暫く温かくて柔らかい唇を堪能した後、俺は唇と身体を離して布団に仰向けになる。

雨上がりの午後 第1175回

written by Moonstone

 俺は晶子の首筋に唇を付ける。何時嗅いでも爽やかで、そして甘酸っぱい香りが鼻の中に入り込んでくる。晶子は何の抵抗もなく首を傾ける。

2003/5/21

[大雑把でも神経磨り減る]
 昨日も午前中は一昨日に続いてフライス加工をしました。今度は穴を開けるのではなく、ケースの天板と底板のフランジ(折れ曲がって出っ張っている部分)を削り取るというものです。昨日と違って精密さが−とは言ってもミリ単位ですが−要求されない、削れてればOKという大雑把なものなので、最初は簡単だと思っていました。
 ところがどっこい、エンドミルの位置をきちんと−目で見た感じ、ですが−中心に合わせないとフランジがきちんと削れていかない。うっかりしているとフランジどころか板まで削ってしまい、皿にはフライスの床板(?)まで削ってしまったり・・・。む、難しい。フライス加工ってやっぱり難しい(汗)。
 午後からは一転して細かい作業。先に完成させた機器の動作試験を実施したものの、相手側の不手際で一部動作確認が出来ず、私の間違いで−資料を見た限りでは間違いないのに−LEDの点灯がおかしくて、日を改めてということに。その後はレタリング(文字のシールを擦り付けていくこと)。字が細かいので目が疲れるし、肩は凝る。どうにか目標を達成した時には、居室には私一人だけでしたとさ(爆)。
 晶子が洗い物を済ませて戻って来る。俺の向かい側に戻ると思ったら、俺の隣に腰を下ろして、肩に凭れかかってくる。随分積極的だな。晶子って酒が入ると結構大胆になるところがあるからな。・・・何だか変な気分になってきた。身体がむずむずする。酒が入ってるせいかな。

「ねえ、祐司さん。」

 不意に晶子が話し掛けてくる。俺の肩に頭を乗せたまま俺を見るその顔は何時になく色っぽい。赤みがかかった頬と半開きの唇が俺を誘っているように見えてならない。・・・やっぱり酒が入ってるせいだな。

「・・・何だ?」
「私のこと、愛してますか?」
「・・・愛してる。」
「私も・・・。」

 俺は晶子の顎に手をかけ、その魅惑的な唇に吸い寄せられるように唇を重ねる。じっくりと味わうように唇を動かし、軽く吸う。益々身体がむずむずしてきた。俺はそっと舌を差し込む。晶子の口は自然に開いて俺の舌を受け入れ、熱い舌が絡んでくる。濃厚なキスを交わしているうちに、晶子の方から徐々に重みがかかってくる。俺は支える間もなく床に倒れ込む。
 晶子が俺の上に乗りかかってくるのが分かる。俺と晶子は自然に抱き合いながら濃厚なキスを続ける。だんだん身体が熱くなってくる。何かおかしい。でも気持ち良さの前には疑念は続かない。俺は身体を反転させて晶子の上に乗りかかる。喉の奥まで抉るような濃厚なキスを暫く続けた後、俺は一旦口と舌を晶子から離す。晶子は目を閉じたまま、早く浅い呼吸をしている。それを見ていると益々身体が熱くなってくる。

雨上がりの午後 第1174回

written by Moonstone

 食事は盛況のうちに終わり、晶子が後片付けをする。俺は残りのビールを呑みながら洗い物をする晶子の様子を眺める。ほんのり頬を赤く染めて荒いものをする様子は、さながら新妻のようだ。去年の暮れ、マスターに晶子のことを未来の奥さん、と言われたことを思い出す。こんな風景が何時も見られるようになると良いなぁ・・・。

2003/5/20

[つ、疲れた・・・]
 昨日は初めてのフライス加工に挑みました。フライスとは何ぞや?と言いますと、ドリルとよく似た刃物(エンドミルと言う)で材料を削ったり穴を開けたりする機械です。移動範囲が大きいので使い方によっては穴を開けたままエンドミルを動かしてより大きな穴を開けたり、広範囲を削ったりすることも可能です。
 昨日はそんな機械を初めて使いました。勿論初めてですから、ベテランの方の指導と監督の下で。原点合わせをしてもらって動かし方の基本を教えてもらったら早速自分の番。緊張となかなか進まない(1回ハンドルを回して1ミリくらい)作業で身体ガチガチでした。
 それでも何とか2枚穴を開けることに成功。これまでボール盤(ドリルで穴を開ける機械)でボコボコ穴を開けてヤスリで削るという原始的なことをやっていたんですが、圧倒的に作業効率は良いです。でももの凄く疲れたので、このお話の直前まで寝てました(爆)。今日もあるんだよなぁ・・・。

「でも晶子。何で俺の家に来たんだ?」
「来ちゃ駄目でしたか?」
「いや、晶子の家の方が勝手が分かってるから料理もやり易いんじゃないかな、て思ってさ。俺の家だと材料が揃ってないから苦労するだろ?」
「そうでもないですよ。料理器具の場所は把握してますし、材料を持ってくるのは自転車を使えばそんなに苦労しないですから。それにそんな極端に量が増えるわけじゃないですし。」
「そうか・・・。ま、俺は帰って来て直ぐに晶子の作った食事が食べられるなら、俺の家だろうが晶子の家だろうが、どっちでも良いんだけど。」
「今日、祐司さんの家に来たのは、もう一つ意味があるんですよ。」
「え?」

 晶子の思いがけない言葉に、俺はまた聞き返す。もう一つの意味って・・・まさか・・・まさかな・・・。はは。正月早々何考えてんだか。晶子がわざわざ網に引っ掛かりに来るようなことをするわけがないじゃないか。・・・でも、前例があるしな・・・。
 俺と晶子は和やかな雰囲気の中で食事を進めていく。時間がちょっと遅いせいもあって、腹に料理がよく入る。好物の油ものということもあるし、俺後のみの味にしてもらってあるから、尚のこと食が進む。ビールを呑みながら食べているせいもあるんだろうか?
 会話の中で今日の成人式のことが話題に上り、俺は高校時代のバンド仲間と約束の場所に集ってスクランブルライブをやったこと、観客が予想以上に多く集まり、途中で成人式の関係者が割り込んできたこと、それを皆で退散させたこと、全員揃って記念撮影したことを話す。やっぱり酒が入っているせいか、舌がよく回る。だが、宮城と再会して記念撮影をしたことは伏せておく。あらぬ誤解を招いて折角の雰囲気を壊したくないからな。

雨上がりの午後 第1173回

written by Moonstone

 言っておいて何だが、我ながら歯の浮くような台詞だと思う。だが、晶子は嬉しそうに微笑む。帰って来て直ぐに晶子の手料理が食べられるなんて、今年は幸先良いかもしれない。少なくとも正月の親戚周りでの心労は完全に吹っ飛んだな。

2003/5/19

[ちょっと気が引けますが・・・]
 昨日は何時もより遅く起きて朝食後新作の執筆に取り掛かりました。目的の新作は、以前から書きたかったもののどうしても展開が纏まらなくて書けずにいた代物。中盤の展開は纏まっていたので、それを頼りに季節を意識して書き始めました。
 いざ書き始めると、不安は徐々に解消され、難関だった前半部分の展開も書き進めることが出来、良い感じで中盤へ繋げました。・・・何だか野球みたいだな(笑)。展開で悩んだ時は思い切って書くことも一つの手段のようです。
 そしてその勢いを保ったまま終盤へ。此処が物語りの雰囲気を纏める植えで非常に重要な部分だと分かっていたので最初は躊躇したんですが、書いてみたら意外とすんなり書けること。そして新作が無事出来上がりました。新作の名はSide Story Group 2の「譬え背丈は違えども」。私自身何としても完結させたいこの物語、少しずつでも書き進めていきます。

「どうですか?」
「美味いな、これ。肉が柔らかくて、肉汁もたっぷりで。今までのより美味いぞ。」
「そうですか。試しにやってみたんですけど、やっぱり効果はあったようですね。」
「どういう細工をしたんだ?」
「肉に下味をつけるときに林檎を摩り下ろしたものを入れたんですよ。」
「林檎?」

 思わず聞き返す。揚げ物と林檎の組み合わせなんて初めてだ。勿論この唐揚げは林檎の味はしない。俺は最初の唐揚げを噛みつつもう一つ唐揚げを箸で摘んでしげしげと観察する。やっぱり何処にも林檎の雰囲気や面影はない。不思議なもんだな、料理ってもんは。

「林檎を摩り下ろしたものを入れると、肉が柔らかくなって食べやすくなるんですよ。」
「何処で知ったんだ?こんなこと。」
「私、正月にマスターと潤子さんの家に居たでしょ?その時潤子さんに教えてもらったんです。潤子さんもこの前発見したばかりなんですって。」
「へえ・・・。潤子さんから教えてもらったのか。」
「でも、味が濃い目に作ってあるのは、私が祐司さんの好みを知ってるからですよ。」

 潤子さんと同じテクニックということを明かしたところで潤子さんとの違いをアピールするなんて、晶子らしい。俺の好みを知っているのは自分だ、と言いたげなのが顔を見ても分かる。やっぱり晶子の奴、潤子さんをライバル視してる一面があるんだな。

「確かに味は潤子さんが作るやつより濃い目だよな。新しく覚えた技に愛情が篭ってて、尚更美味く感じるよ。」

雨上がりの午後 第1172回

written by Moonstone

 考えるより試すに限る。俺は唐揚げを一つ箸で掴んでちょっと観察する。別に見た目には変わったところはない。そのまま口に放り込んで一噛み二噛み・・・。ん?何だが肉の感触が違う。今までのより柔らかくて肉汁が豊富な感じがする。うん、やっぱり今までのとは食べた感触が違う。

2003/5/18

[半分自堕落な休日]
 昨日はたった二時間半の睡眠で目が覚め、朝食後早速新作の執筆に取り掛かりました。そして3時間あまりで仕上げた後次を書こうとしたところで一旦休憩、としたのがまずかった。2時間ほど寝ては目覚めを繰り返した挙句、買い物に行ったら疲れてまた寝ては目覚めてを繰り返す生活。結局書けたのは新作1本だけでした。ああ、勿体無い。
 こんなことならいっそ薬飲んでしっかり寝たほうが良かった・・・って、前にも同じことをお話したような(汗)。どうも睡眠薬(正式には睡眠導入剤)は飲むタイミングや条件が難しくて、それらがぴったり合わないときちんとした睡眠が取れないようです。中途半端に眠気が残るのが一番始末が悪い。
 仕事の方が割と順調に進んでいるのがせめてもの救い。これで仕事が行き詰まってたら気になってまともに寝られたもんじゃない。休日にまで尾を引くタイプですからね。だからこんな病気になったらしいんですが、せめて休日くらいは完全に仕事を切り離して趣味に没頭したいものです。
「夕食で酒を飲むなんて初めてじゃないか?」
「もう大手を振って飲めるんですから良いじゃないですか。それにお酒、飲んできたんでしょ?」

「な、何で分かるんだ?」
「匂いで直ぐ分かりましたよ。鼻は良い方ですから。」

 参ったな・・・。たった一本の酒の匂いを嗅ぎ取るとは。やっぱり晶子には隠し事なんて出来ないな。俺は苦笑いしつつ缶ビールのプルトップを開ける。プシュッという軽やかな音が、少しタイミングをずらして二つ鳴る。晶子も缶ビールを開けたのか。となると、次に来るのは・・・。

「それじゃ、祐司さんの成人を祝って・・・。」
「「乾杯。」」

 やはりこれだよな。カツン、という小さな音がして二つの缶ビールがぶつかる。そして二人揃って缶ビールを傾ける。つい先程味わった苦味と爽快な舌触りが心地良い。一度喉を鳴らす程度飲んだところで一旦缶ビールを机に置く。

「祐司さん、唐揚げとか好きですよね?ちょっと今回は工夫してみましたよ。」
「え?どんな風に?」
「それは食べてみてのお楽しみ、ってことで。」

 また、お楽しみ、か。まあ、食べる楽しみが増えて良いんだが、口に合わなかった場合のことを考えるとちょっとな・・・。今までの晶子の料理は殆ど美味かったが、煮込み料理などが甘口になる傾向があるのには最初ちょっと抵抗があったしな。

雨上がりの午後 第1171回

written by Moonstone

「このビールは?」
「祐司さんの成人祝に乾杯ってことで。」

2003/5/17

[ふー、忙しい(^-^A)]
 今日の更新に合わせて、一気に決議文とMoonlight PAC Edition(プラス上位ページのMoonlight)の号外を作りました。本当は仕事疲れで頭が痛くて休もうと思ったのですが、一旦休んでしまったら時期を逃してしまいかねませんし(そうなる可能性が高い)、問題が問題だけに悠長なことはしていられない、ということで頑張りました。押し付けがましいかもしれませんが、決議や号外は必ずご覧下さい。
 昨日までのお話で我々が気づくべきこと、取るべき態度は散々お話したのでこれ以上しません。新聞やテレビが語らない問題の本質は「しんぶん赤旗」などで知ってください。インターネットがある今ならアンテナを広げるのは容易です。問題は広げる勇気があるかどうかです。
 人は私を「共産党」と罵ります。共産党の称号大いに結構。私は堂々と自分の支持政党を公言します。しかし、今回の問題に限って言えば、「共産党」で片付けるわけにはいきません。我々の何気ない行動全てが「公共の福祉」を名目に規制される恐れがあるのです。それは法案が明記していますし、決議や号外でも言及しています。気付いた時は手遅れだった、では済まされません。ことの重大性を認識して、有事法制反対の声を強く大きくすべきです。

「ただいま。」
「お帰りなさい。荷物を置いて手洗いとうがいをして下さい。もうすぐ出来ますから。」
「分かった。今日のメニューは?」
「それは見てのお楽しみということで。」

 晶子がそういう背後で底の深い鍋に火がかけられている。晶子は直ぐにその鍋の方へ向かう。俺はギターとアンプを部屋の隅に立てかけてから、流しで横目に晶子の料理姿を見ながら手洗いとうがいをする。どうやら揚げ物のようだ。果たして何が出てくるやら・・・。
 タオルで顔を拭った俺は部屋を一望する。自分では綺麗にしたつもりだった部屋がより一層綺麗になっていて、逆に閑散とした印象さえ感じる。外に出ていたものは悉く収納されてしまったようだ。まあ、晶子が部屋を掃除してくれるとは思わなかったし、文句を言う余地もないんだが。
 俺は自分の「指定席」−とは言っても普段自分だけだから指定も何もあったもんじゃないが−に座って食事が出てくるのを待つ。既に綺麗に拭かれた机には、茶碗と汁物の器と野菜サラダ、それに胡瓜ともずくの酢の物が置かれている。あとはご飯と汁物−まあ、味噌汁だろうな−、そして揚げ物らしいメインメニューが出てくるのを待つだけだ。
 少しして、晶子が炊飯ジャーと湯気が立つ鍋を持ってくる。湯気が立つ鍋からは味噌の匂いがする。晶子はしゃがんで汁物の器に交互に、均等になるように味噌汁を注ぐ。そしてまた立ち上がってキッチンの方へ向かう。今度は湯気が立ち上る二つの皿を持ってくる。皿の中身は・・・鳥の唐揚げだ。待ってました、って気分だ。晶子の唐揚げは美味いんだよな。
 晶子はしゃがんで二つの茶碗にご飯を適量よそった後、また立ち上がってキッチンの方へ向かう。そして二本の缶ビールを持ってきて、俺の向かい側に座る。

雨上がりの午後 第1170回

written by Moonstone

 ドアが一旦閉まり、金属音がした後ドアが大きく開く。俺は溢れてきた暖気を逃がさないように素早く中に入ってドアを閉める。晶子は髪を後ろで束ねてエプロンをしている。

2003/5/16

[自身の現状を知れ!]
 有事法案が衆議院で採決されました。「憲法に抵触する危険が払拭出来ない」として「慎重審議」を要求していた民主党が与党との談合で賛成に転じ、元々タカ派の自由党も賛成。「修正」案が出されて僅か2時間半で委員会採決、そして本会議採決ですから、まともな論議のない多数の横暴であることは明らかです。
 これでお分かりでしょう。与党三党は勿論、民主党や自由党が憲法を守る気がない、自民党の亜流だということが。こんな勢力を伸ばしたところで景気も暮らしも少しも良くなる筈がありません。地方議会と同じく、オール与党を形成しているのは他ならぬこれらの政党+社民党なのですから。
 今こそ自民党支持者他有事法案に賛成した政党の支持者は、自分で自分の首を締めていることに気付くべきです。いや、もうとっくに気付いていなければいけないのです。どこまでマゾでいる気なのですか?平気で与党と談合して自身の見解と矛盾する行動を取ったり、それに乗じて賛成するような政党は勿論、張本人の与党を伸ばすことが如何に愚かであるということに気付くべきです。今こそ革新の旗の下に集うべきです。
「祐司さん。今何処ですか?」
「駅の公衆電話だよ。ま、話は後でするから、今から帰る。」
「はい。祐司さん、夕食は?」
「いや、まだ食べてない。」
「丁度良かった。夕食の準備をしてたんですよ。」
「そうなのか?」
「ええ。道中気を付けて帰ってきてくださいね。」
「分かった。それじゃ・・・。」

 俺は受話器を置いてテレホンカードを取って財布にしまう。確かに昨日の夜の電話で帰る予定の時間を教えておいたが、まさか俺の家で夕食の準備をして待っててくれてるとは・・・。俺は気持ちが弾むのを感じながら自転車置き場へ向かう。
 閑散としている自転車置き場から自転車を取り出して外に出てサドルに跨る。ペダルを漕ぐにしたがって肌に突き刺さる冷気が鋭さを増してくるように感じる。冬ならでは、そして自転車やバイクならではの辛さだ。まあ、この程度のことで根を上げてるようじゃとてもやってけないだろうが。
 緩やかな上り坂を登っていき、脇道に入ると俺の家があるアパートが見えてくる。駐車場の敷地に入ると、俺の家の窓が光っているのが見える。チラッと人影らしきものが見えたような気がする。晶子が料理をしているからだろうか。俺は自転車を押して家の前まで来る。
 自転車を壁際に止めてインターホンを押す。すると中から、はい、という声がして足音が近付いてくる。そしてドアが顔が見える程度開く。きちんとドアチェーンがかかっている。この辺の防犯意識もしっかりしてるな。

「どちらさまですか?」
「俺だよ。」
「はい、今開けますから。」

雨上がりの午後 第1169回

written by Moonstone

「はい、安藤です。」
「晶子か?俺、祐司だ。」

2003/5/15

[今日は何の日?]
 即答出来た人はなかなか社会問題をよく見ている人だと思います。今日5月15日は沖縄日本復帰記念日です。日本で唯一地上戦の舞台となり、数多くの悲惨な事件を残した上に、小さな面積に世界で唯一外国の海兵隊基地が存在する島として、基地被害、米軍被害に苦しめられてきました。沖縄は日本軍国主義の、そして日米軍事同盟の典型的的存在です。
 民主党が与党と談合して(修正というレベルのものではない)有事法案を成立へ持ち込む動きが強まる中、沖縄の人々はどんな思いでこの情勢を見ているのでしょうか。「有事」とやらでまず狙われるのは軍事基地です。アメリカの出撃拠点としてアメリカにとって重要な位置にある沖縄は、有事法制において最も危険に晒されることになります。
 日米安保に賛成、というなら、沖縄の基地を日本に移す運動の先頭に立つべきです。アメリカの基地を沖縄だけに背負わせるのは無責任の極みです。先の一斉地方選挙で普天間基地無条件返還を訴える地元宜野湾市長が誕生したように、今こそ日本人は沖縄の人々の声に耳を傾け、基地被害の実態に目を向けるべきです。軍隊は国民を守るためにあるのではありません。そのことを沖縄は見事に証明しています。
「あたしが後で携帯の番号教えるから、電話してよ。それで住所教えるから。あたしから皆に送るわ。」
「分かった。」

 液晶画面の映像を巡って、皆の会話が楽しげに繰り広げられる。何だかんだ言っても皆気楽な形で記念撮影が出来たことに満足しているようだ。俺も満足だ。今後こうやってこれだけの面子がそろう機会はそうそうないだろう。その意味でもこの写真は貴重な記録だ。形だけの成人式よりずっと良い思い出が出来た。今日は本当に良い一日になったな・・・。

 その日の夕方、俺は家を出た。親が送っていこうか、と言ってくれたが、荷物も大してないし、そんな程度で親の手を煩わせたくなかったから断った。行きと同様、ギターとアンプを持って電車に乗り込んだ。
 バンドのメンバーとは、あの後近くのコンビニで買った酒やジュースで乾杯した。自分で車を運転して会場入りした勝平は、唯一ジュースで我慢と相成った。本来なら酒で乾杯したいところだが、成人式早々酒気帯び運転で逮捕なんてことになったら、俺達の責任でもある。少なくともその辺の分別は弁えているつもりだ。
 電車を乗り換え、揺られること2時間半。演奏と長時間の乗車−時期もあるし休みの日だから混んでいる−で立ちながらうつらうつらしていた頃、胡桃町駅に到着した。改札を出ると、外はもう真っ暗だ。冷気が肌に突き刺さる。晶子から貰ったマフラーがありがたい。俺は首をすぼめて公衆電話へ向かう。
 受話器を上げ、親から貰った−親も携帯電話を持っていて要らなくなったそうだ−テレホンカードを差し込み、晶子の家の電話番号をダイアルする。今頃夕飯の用意をしているか、食べている最中か・・・。トゥルルルルル、トゥルルルルル・・・という発信音が続く。
 しかし、5回発信音が続いても晶子は出ない。晶子は長くとも3回目のコールまでには電話に出る。買い物か?否、買い物は週末の午前に行くから臨時に必要なものが出ない限り出ない筈だ。・・・もしかして・・・。俺は一旦受話器を下ろすと、もう一度テレホンカードを差し込むところまでは同じ動作を繰り返して、今度は俺の家の電話番号をダイアルする。トゥルルルルル、トゥルルルルル・・・という発信音が3回目に差し掛かったところでガチャッという音がする。

雨上がりの午後 第1168回

written by Moonstone

「わー、良く撮れてるー。」
「グッドグッド。良い感じじゃないか。」
「何だかあたしの表情、変ー。」
「男の方は俺が全員に送るけど、女の方はどうする?」

2003/5/14

[危険信号点灯!]
 薬の飲み方を変えたら(最初は少量飲んで、目覚めた時点で「不眠時」の薬を飲む)久々にすっきり爽快に目が覚めて、一日しっかり仕事が出来て連載の書き溜めも進みました。これは良いことです。
 しかし、一方では重大な危機が迫っています。トップページやニュース速報でも長らくリンクをはって危険性をアピールしている有事法制が近く衆議院を通過する危険性が強まってきました。民主党がましても愚かなことに「修正協議」という形で与党に抱きこまれたため、与党は確信を持っています。
 有事法制の危険性を此処で語るにはスペースが少な過ぎます。詳しくはトップページのリンクの内容をご覧下さい。一言で言えば、「イラク侵略戦争のような国際法違反の先制攻撃戦争に、我々国民が強制的に動員される仕組みが作られる」ということです。有事法制に賛成する政党や議員をよく覚えておき、次の選挙では必ず落選させなければなりません。戦争をしないと誓った国が戦争をする国になろうとしている。そうしようとしている輩が居る。決して他人事と思うことなくこの問題を考えてみてください。
日本を戦争する国にする有事法制断固反対!
 勝平が集団から離れて、ぽつんと置かれたままになっていた三脚にカメラをセットする。俺達はめいめいにしゃがんだり、前の奴の間から顔を出したりして写真に写れるように準備する。俺の隣には耕次と・・・宮城が居る。ちらっと宮城を見ると、宮城は笑みを浮かべて見せる。俺の表情も自然と緩む。

「・・・よし、これで良い。俺は宏一の横に入るからな。」
「オッケー!」

 勝平が戻って来て、カメラから見て右の方に入る。

「俺がリモコンを操作するから、カメラの赤い光をよく見ててくれ。点滅が点灯に変わって3秒後にシャッターが切れるから。」
「え?点滅が点灯に変わって・・・?」
「あのなぁ・・・。要するに点滅しなくなって光りっ放しになるってことだよ。」
「そうなら初めからそう言ってよね。」
「・・・普通分かるだろ。」

 勝平の呟きの後、カメラの赤いLEDが点滅を始める。そして点滅が点灯に変わり、少し時間を置いてカシャッという音がする。

「念のため、もう一回な。」

 全員が姿勢を崩しかかったところで勝平の声がそれを制止する。全員姿勢を立て直して身構える。その後、カメラのLEDが再び点滅をはじめ、それが点灯に変わって少しした後、カシャッという音がする。

「はい、お疲れー。」

 勝平の声で全員がやれやれといった様子で姿勢を崩す。勝平がカメラに駆け寄り、三脚からカメラを取り外して持ってくる。それを目ざとく見ていたのか、全員が勝平の周りに集まってカメラを覗き込む。カメラの液晶画面には、画面いっぱいにいかにも仲の良い集団といった感じの画像が映し出されている。

雨上がりの午後 第1167回

written by Moonstone

「折角の機会だもの。ここで記念写真を撮っておかないとね。」
「それじゃ、俺のカメラで撮ってやるよ。一人だけ写らないってのもつまらないだろ?」
「和泉君、話せるー。」

2003/5/13

[眠さ炸裂]
 週明け、しかも仕事が最終段階に入る時だというのに睡眠状態は最悪。薬を飲んで寝たと思ったら2時間弱で目を覚まし、その後2時間+1時間転寝しただけ(+としているのは、間に朝食を挟んでいるため)という無茶苦茶な状態。お陰で朝から眠くて大変でした。
 幸い午後は。昼休みに寝たお陰である程度緩和したので仕事を一気に進めて、残りあと少しというところまでこぎつけました。で、その後病院へ。睡眠の以上を訴えたところ、薬を追加してもらいました。この薬、前も貰ったんですけど殆ど効果がなかったんですが。
 まあ、薬を全部一気に飲むのを止めて、目覚めた時に残りを飲む、という風にすれば良いのでしょう(多分)。それで効くのかどうか分かりませんが、兎に角きちんと寝ないと話にならないので、頼りにしたいところです。

「俺達は仲間だ。何かあったら遠慮なく言ってこいよ。こうやって話を聞いて意見を言うだけでもするからさ。」
「そうだぞ、祐司。お前は一人で抱え込みやすい質だからな。仲間っていうのは自分が困った時のよろず相談所でもあるんだぞ。」
「お前がどんな道を進むにしても、俺達は仲間だ。それに変わりはない。」
「祐司!俺達の仲じゃないか!これからも一人で悩まないで、俺達の胸に飛び込んで来いよ!」
「・・・ありがとう、皆。俺・・・皆とバンドやってて本当に良かった。今、改めてそう思うよ。」

 俺が言うと、耕次達は俺の手を取ったり肩を叩いたりする。どの顔も頼もしい笑顔だ。本当に俺はこのバンドのメンバーになっていて良かったと思う。こんな良い奴らに巡り会えた俺は、本当に幸運な奴だ。今日この仲間から貰った意見を胸に大切に保存しておいて、いざという時の虎の巻にしよう。それだけの価値は十分にあると思う。
 ありがとう、皆。今はそうとしか言えないけど、何時か俺が自分の道を切り開いたら、必ず皆に連絡するから。その時は俺のギターで良かったら、指が擦り切れるまで聞かせてみせる。それが大切な仲間に対する俺なりのお礼だと思うから。

「安藤くーん!皆で写真撮ってあげる!」

 甲高い呼び声が聞こえて来る。見ると、宮城をはじめとする振袖集団が駆け寄って来る。

雨上がりの午後 第1166回

written by Moonstone

 耕次が笑みを浮かべて言う。

2003/5/12

[どちらかにしてよ(泣)part2]
 昨日の生活リズムも滅茶苦茶そのもの。夜1時に寝て朝4時起床(爆)。そして朝食後、一昨日未完だった小説を一気に書き上げ、休憩がてら横になったら4時間くらいお昼寝(爆)。そして目覚めてもう1本新作を書き上げて夕食。その後は寝たり起きたり(爆)。
 1日で2本小説を書いたのは恐らく初めてじゃないかな・・・。これでスケジュールの遅れを取り戻すことが出来ました。まあ、疲労倍増でこうしてお話している今でも頭がぼうっとしますけど(何時も、だなんて言っちゃいけない(笑))。
 また今日から仕事。しかも最終段階。恐らく連載を書き溜める余裕もないでしょう。でもこれを乗り越えないと先がありません。本腰を入れて取り組みます。その分連載が短くなってしまうかもしれませんが、ご了承ください。

「俺はお前の腕ならやっていけると思うぜ。生活は厳しいかもしれないけどさ、ギタリストでやっていけないことはないと思うぜ。CDの売上を目指すかどうかは兎も角、どっかの事務所に所属して仕事を貰うようにしていけば、それなりにやっていけるんじゃないか?まだまだ俺達は若いんだ。どれだけでもやり直しは出来るさ。その気があるならやってみろよ!」
「宏一。ことは祐司の将来に関わることだぞ。それに、勢いだけでやっていけるほど、音楽業界は甘くない。祐司の人生をもっと真剣に考えてやれ。」
「俺は真剣に考えていったつもりだぜ?」
「渉。宏一は宏一なりに真剣に考えて言ってくれたんだと思う。」
「祐司・・・。」

 俺はまた小さく溜息を吐く。何だか少しすっきりした気分だ。譬え一時的なものだとしても、友達から色々な意見が聞けたんだ。今後を考える上で十分参考になると思う。

「まだ時間はあるからじっくり考えてみる。最初からプロのギタリストを目指すんじゃなくて、最初は普通に就職して、決心がついたら脱サラって手もあると思う。今の時勢じゃやり直しは難しいかもしれないけど、不可能じゃない筈だ。自分の人生なんだから、自分で模索してみる。勿論、みんなの意見を参考にして、な。」
「祐司。一つ言っておくが・・・。」

 耕次が笑みを浮かべて言う。

雨上がりの午後 第1165回

written by Moonstone

 渉のクールな発言に続いて、宏一が熱く語り始める。

2003/5/11

[どちらかにしてよ(泣)]
 昨日は早朝6時半に目覚めて朝食を食べた後、早速新作の執筆に取り掛かったんですが、突然倦怠感と眠気が出てきてベッドにばったり。そして買出しと食事以外は夜まで殆ど寝てました。こんなことなら朝目覚めた段階で二度寝してりゃ良かったな。
 自律神経のバランスが滅茶苦茶になっている私は、早朝目覚めたと思ったら日中酷い眠気に晒されたりともう散々な目に遭わされています。この状況は治療を始めて3年目になろうという今になっても一向に改善の気配がありません。一体どうしたらこんなふざけた調子を元に戻すことができるんでしょう?
 で、昨日は結局殆ど何も出来ずじまい。小説も冒頭部分を書いただけ。今回は難しい場面を書かなければいけないのでより一層の時間的余裕と集中力が必要なんですが・・・まったくどうしたら良いものやら。どなたか根本的に治療できる方法を知っていたら教えてください。
「ああ。所謂J-POPとかロックとかなら、極端な話、デビューしたがってる奴をライブ会場とかで探して集めりゃ何とかなると思う。だけどジャズとかだと勢いだけじゃやっていけない。それに知名度もJ-POPとかより圧倒的に低い。そんな中で人に知られる存在になるのは難しいと思う。そうでなくても、ギター一本で食っていけるだけの存在になるのも難しいんじゃないか?CDを出したりしていかないと。」
「俺も同意見だな。」

 耕次に続いて話の糸口を引っ張り出した勝平が言う。

「お前の腕前は認める。正直その辺のCD出してるアーティストっていう奴より腕は確かだと思う。だけど耕次が言ったとおり、ジャンルによってCDの売上が格段に違う。これは知名度や愛好者の数が根本的に違うからどうしようもない。ギター一本で食っていこうと思うなら、スタジオミュージシャンで終わりじゃなくて、自分のCDを出してそこそこ売上を出さないと厳しいんじゃないかな。」
「俺も同じだ。」

 腕組みをしていた渉が勝平に続く。

「演奏の腕とCDの売上は比例しない。お前の腕は確かだが、CDを売って暮らしていくのはジャンルによっては厳しいだろう。ただでさえ日本でのミュージシャンの社会的地位は低い。CDが売れないミュージシャンなら尚更だ。俺としては、ギターは趣味に留めておいて、企業や官公庁とかに就職することを勧める。だけどお前がギタリストを目指すなら応援する。」
「良いじゃないか。いっちょチャレンジしてみろよ!」

雨上がりの午後 第1164回

written by Moonstone

「ジャンル?」

2003/5/10

[地金が見えた二つの政党]
 今、トップページでも反対のアピールをしている有事法制について、自民党と民主党が修正協議を行っています。この協議は法案の成立を前提にしたもので、民主党が対案も示しつつ自民党と擦り合わせて有事法制成立に加担することは、許されざる犯罪行為です。
 否、これで民主党や同じく対案を示した自由党の地金が見えたと言うべきでしょう。これらの党が結成された経緯をご存知ですか?民主党は自民党や旧社会党の一部などが、この看板(政党名)では選挙を戦えない、と判断して集団離党して(この時点で既に議員辞職の必要性あり)結党した寄り合い所帯、自由党は自民党の中でもよりタカ派な一派が抜け出して結党した党です(党首が書いた「日本改造計画」を覚えてますか?)。言わば自民党とは親戚関係です。
 国会では野党でも地方議会では自民、公明と組んで、共産党を除くオール与党を形成している例は彼方此方にあって珍しくも何ともありません。むしろ公明党が与党入りしたように、民主党や自由党が政府与党と擦り合わせようとしているのは何ら不思議なことではないのです。こういう政治の枠組みを抜本的に変えるには、これらの潮流とは無縁な共産党を兄弟にする以外にありません。社民党は自民党との連立与党を経験して自民党と同じ水準に堕落していますからあてに出来ません。

「さあ、無理しないで言っちまえよ。」
「折角の機会だ。これだけ面子が揃ってるんだし、言ってみたらどうだ?」
「無理に言わなくても良いが、無理に言わないのも身体に悪いぞ。」
「言っちまえよ、ベイビィ!水臭いじゃないかよ!」

 こりゃ、何か言わないと帰してもらえそうにないな。俺は小さく溜息を吐くと、心にずっと引っかかっているあのことを吐き出しにかかる。

「将来のこと・・・考えてるんだ。俺は勝平と同じく理工系に進んだけど、バイト先でギターを弾いてそれを聞いてもらって拍手を浴びたりしているうちに、プロのギタリストになりたいっていう気も起こってきたんだ。このまま普通に企業や官公庁に就職っていう道で良いのか、って疑問に思うようになってきたんだ。」
「「「「・・・。」」」」
「だけど、皆知ってると思うけど、俺ん家脱サラして自営業やってるだろ?親が苦労したことくらい今の歳になってみりゃ分かるから、音楽で飯を食っていこうとするなんて、絶対反対すると思うんだ。否、絶対反対する。正月の親戚周りの時に思い知らされたからな・・・。バイトで生活費の必要分を捻出するっていう条件で、俺の一人暮らしと大学進学を認めてもらったことには感謝してる。でも、それを逆手にとって俺の人生まで決められたくない。でも、俺自身プロのギタリストとしてやっていけるのか、っていう不安もある。どうしたら良いか・・・分からないんだ。」

 俺が一気に心に痞えていたことを吐き出すと、耕次達は真剣な表情で俺を見ている。お調子者の宏一ですら表情が引き締まっている。少しの沈黙を置いて、耕次が口を開く。

「俺は、お前の腕ならプロとしてやっていけると思う。正直、お前よりずっと下手な、ディストーションかましてコードを掻き鳴らすだけの奴がプロを名乗ってCD出してるんだ。お前ならそれを上回ることは十分可能だと思う。問題は・・・ジャンルだな。」

雨上がりの午後 第1163回

written by Moonstone

 我ながら曖昧だと思う答えを返すと、面子は更に詰め寄ってくる。

2003/5/9

[Idle State]
 昨日は怠惰極まりない日でした。何もする気が起こらず、回路図をチェックするのが関の山。まあ、先日バグが見つかってますから完全にするためには良いんですけど、そのチェックも怠惰なもので、結局バグは見つからず、作業を始めたのはかなり後になってからでした(何時からかはとても言えん)。
 睡眠が正常でないので(まだ自律神経のリズムはぐちゃぐちゃらしい)ツケが翌日に回ってきて、特に午前中まともに動けない(頭の半分は寝てる)、それでも仕事はする、しかも今は疲労感を募らせる内容なため、夜帰宅したら疲労感に負けて寝る、そして本当の就寝時に薬を飲んでも睡眠が正常にならない・・・という悪循環に陥っています。
 これを直すには睡眠が薬なしでも正常にいってくれることが不可欠なんです。夜帰宅してから寝るにしても1、2時間で目覚めるんじゃなくて、いっそ朝まで寝られれば良いんです。でもそこまではいかない。怠惰な状態、即ちIdle Stateから完全に脱出できる日はまだ遠いようです。
「いつも悪いな、勝平。」
「気にすんなよ、耕次。こういうメカ関係は俺の分野だからさ。」

 勝平は俺と同じく理工系の学科−機械工学科だったか−に進んだ男だ。将来は家業を継ぐことになっているらしい。家が中規模の工場を経営しているし、長男でもある勝平には将来のレールが敷かれているってことか。窮屈じゃないのかな?

「勝平。」
「何だ?祐司。」
「お前、将来家業を継ぐんだろ?」
「ああ。その前に10年ほど他の会社で働いて、実務経験を積むつもりだけどな。それがどうかしたか?」
「・・・将来が決まってるなんて、窮屈じゃないか?」
「否。俺はガキの頃から工場で遊んでたし、今でも講義が無い日とかに親父の手伝いをしてる。結構面白いぜ。会社経営をリアルに体験出来るんだからな。」
「そうか・・・。」
「そういや、お前も理工系だったな。何か悩みでもあるのか?」

 勝平が尋ねると、他の面子も一斉に俺の方を向く。な、何だ一体。思わず俺はたじろいてしまう。

「祐司。悩み事があるなら遠慮なく言えよ。相談に乗るぜ。」
「言うだけでも結構すっきりすると思うが。」
「祐司。俺達の間で困ってる奴を放ってはおけないぜ?」
「いや、そんな困ってるとかいうんじゃないんだが・・・何て言うか・・・ちょっと考え事があってさ・・・。」

雨上がりの午後 第1162回

written by Moonstone

「良い感じじゃないか。」
「ナイスだぜ!流石は最強メンバーってとこだな!」
「プリントアウトして全員の家に送る。普通の写真サイズだから場所も取らないだろう。念のために俺のPCでCDに焼いておく。折角の記念写真だからな。」

2003/5/8

[立ち仕事は疲れる〜]
 今の仕事が佳境に入ってきて、力仕事(ケーブルを引っ張りまわしたり皮膜を取ったりするのはかなり力が要る)や立ち仕事(作業机で組み立てるので立たないと出来ない)が多くなってきました。
 ここで何度かお話したとおり、私の今の身体は非常に疲れやすくなっていて、力仕事や立ち仕事が多くなると疲労は数倍増しになります。昨日も遅い夕食を食べて少し連載を書き溜めた後、疲労感に耐えられずに今まで寝ていました。
 しかし、仕事が更に進むとほぼ1日立ちっ放しで作業することが必要になり、そのための自分の体の態勢作りが追いつきません。疲れたからといってストレートに何時間も寝られるわけじゃないので(徹夜後に走り回ったりすると流石に寝られますが)、この先体調管理が難しくなりそう・・・。5月いっぱいは忙しい日々が続きそうです。ああ、どうなることやら。
「OK。」
「分かった。」
「了解。」
「おーし!じゃあ撮影といこうぜ!」

 全員の了解が得られたところで、勝平がリモコンらしい小さな物体を前に差し出してボタンを押す。するとカメラの左上部で赤い光が点滅を始める。撮影が近いことを悟って、俺は俄かに緊張する。やがて点滅が点灯に変わる。緊張が高まる中、耕次が叫ぶ。

「俺達は何時までも仲間だ!忘れるなよ!」

 その一言で緊張感がフッと解ける。そして次の瞬間、カシャッという音が聞こえる。良い感じで撮れたんじゃないだろうか。

「念のため、もう一回行くぞ。」

 勝平が言って、再びリモコンを操作する。カメラのLEDが点滅を始める。そして点滅が点灯に変わり、少し間を置いてカシャッという音がする。無事撮影完了と相成ったようだ。
 勝平が駆け出してカメラの方へ向かう。そして三脚からカメラを取り外して俺達の方に戻って来る。勝平は宮城の友人がやったのと同じようにカメラの裏側、液晶画面を見せる。そこには柔らかい表情の俺、笑顔の耕次と勝平、笑みを浮かべる渉、何故かガッツポーズの宏一が鮮明に写っている。

雨上がりの午後 第1161回

written by Moonstone

「俺がリモコンを操作すると、カメラの赤いLEDの点滅が始まる。それが点灯に変わって3秒後にシャッターが切れる。良いな?」

2003/5/7

[奇怪な白装束集団]
 私、この集団は帰省して初めて知ったんです(爆)。だってそれまでラジオのニュースじゃ一言も触れなかったですから。実家じゃTVが点いていて当たり前なので私もニュースで見たんですが、「スカラー電磁波を防ぐ」とか何とか言って全身白装束、車も白なら周囲も白。おまけに「スカラー電磁波を防ぐ」という意味不明なマークの書かれた紙、などなど・・・。
 私は「スカラー電磁波」という言葉を聞いた瞬間、「こいつらは何も知らない」と直感しました。電磁波はスカラー(量だけで決まる現象。体重とか温度とか)じゃありません。ベクトル(量と方向で決まる現象。「時速10kmの速さで北東に進む」とか「西の方角に30歩」など)です。オウム真理教が科学知識(嘘八百も多々混じってましたが)を悪用していたのに対して、この集団は科学知識が皆無の中で、何も知らないのを良いことに洗脳されている、と感じました。
 しかし、各地で地元住民とトラブルを起こしていて、更に道路交通法違反の車両(フロントガラスに意味不明のマークが書かれた紙を貼りまくっている。フロントガラスとかに物を張るのは違法)を堂々と運転しているのに、警察の対応は甘過ぎます。選挙で共産党が街頭演説をしていると道路の不法占拠(洒落じゃないよ)で逮捕、なんてことをするくせに。宗教(この集団もオウムと同じく反共主義)じゃ仕方ない、なんて対応をしてると、また何時ぞやの事件の二の舞になってしまいますぜ?警察屋さん。
晶子は宮城と激しく対立した「実績」がある。その対立は俺が宮城との関係に明確な区切りをつけたことで解消されたと思うが、別れた筈の前の彼女と自分の彼氏が並んで写っている写真を見て疑いを持たない筈がない。少なくとも俺が晶子の立場だったらそう思う。

「送らなくて良いよ。自分の記念に持っておけば良いだろ?」
「折角撮った二人の記念写真なのよ。青春の一ページとして持っておくべきじゃない?」
「今の彼女に見られて誤解されたら厄介だ。その写真は内輪で仕舞っておいてくれ。俺は記念撮影に応じただけ。それで良いだろ?」
「うーん・・・。よりは戻りそうにないか。まあ良いわ。安藤君の気持ちを踏まえて、この写真はあたし達の記念写真として撮っておくわ。」
「そうしてくれ。」
「祐司!こっち来い!全員で記念撮影するぞ!」

 耕次の呼び声が聞こえて来る。声の方を向くと、俺を除いたバンドのメンバーが集まっている。そこから距離を置いて、勝平が三脚に立てたカメラを覗き込んで何やら調節している。バンドのメンバーで記念撮影をするのか。今回の一連の出来事で一番大事なことだよな。俺は宮城達に別れを告げると、耕次達が集まっているところへ向かう。

「よっし、これで全員集合だ。祐司は俺の隣な。」
「分かった。」

 俺は中央に立つ耕次の空いている左隣に並ぶ。正面から見て左から宏一、耕次、俺、渉と並んだ格好だ。勝平はカメラの調節を終えると高位置の右隣に並ぶ。しかし、何時の間に用意したんだ?全然気付かなかった。俺が宮城やその他の観客との記念撮影に昂じている時だろうか。

雨上がりの午後 第1160回

written by Moonstone

 冗談じゃない。そんなもの家において置けるわけがない。晶子に見つかったらあらぬ誤解を招くのは火を見るより明らかだ。

2003/5/6

[今日から仕事]
 昨日は半日を新作の執筆に充て、残りは殆ど寝てました。この季節は兎に角眠い眠い。1時間くらいの短い睡眠なら薬なしで何回でも繰り返してしまいます。かく言う今も、目覚めて間もない状態だったりします。
 今日からいよいよ仕事再開です。納期の近い仕事が一つ、納期は割と余裕があっても、前の仕事の関係であまりのんびりやってられない仕事が一つ。その他メールの処理など雑用色々。ああ、ちょっと目眩が(笑)。
 有給使って長期休暇を作ったは良いものの、それで崩れた生活リズムを元に戻すのはこの歳になるとなかなか辛い(苦笑)。昨日から仕事のある生活を想定して起床→仕事(新作執筆)→食事・・・としてみましたが、昼食後の休憩がやはり長引く傾向。これを何とかしないと実際大変だろうなぁ・・・。ま、何とかなるでしょう(安易)。
 悪戯っぽく笑って撮影した友人の元へ向かう宮城を見て疑問に思う。授業料って何だ?まさか本当に金を要求するとは思えないが・・・一日恋人同士に戻ろう、なんて言わないだろうな。幾ら晶子が居ないとは言え、そんなことは絶対出来ない。晶子に隠し事なんてしたくない。俺に誠意を向けてくれる晶子を裏切ることになるからだ。
 そう思って宮城と友人達を見ていたら、カメラの裏側を見てなにやら賑やかに騒いでいる。カメラの裏側を見て騒ぐってことは・・・あのカメラはデジカメか。撮った写真を見て写りがどうとか表情がどうとか言っているんだろうか。まあ、それが授業料なら安いもんだが。

「安藤君!撮った写真、見てみなさいよ!」

 宮城の友人の一人が俺に向かって声をかけて盛んに手招きをする。まあ、どんな風に写っているかを見ておくのを悪くはないか。俺は手招きに応じて宮城達のところへ向かう。
 するとカメラを持っていた女が俺にカメラの裏側、液晶画面を見せる。スーツ姿の俺と振袖姿の宮城が並んで写っているその様子は、背景の人ごみやそのほか諸々を除けば、確かに結婚写真みたいだ。

「これ、プリントして安藤君の家に送ってあげるね。」
「家ってどっちだよ。」
「決まってるじゃない。安藤君の実家よ。」

 ちょっと待て。そんなことをされたら家の人間に何を言われるか分かったもんじゃない。宮城は特に母さんに快く思われてないんだから。

「俺の実家に送るのは勘弁してくれ。話がややこしくなる。」
「そう・・・。じゃあ優子。あんたが安藤君の今の家に送ってあげなさいよ。」
「そうね。そうするわ。」

雨上がりの午後 第1159回

written by Moonstone

「喧嘩を避けるあまり本音を出すのを避けてたら、ずれが本格化したときにすり合わせようがなくなるからな。お前との経験で勉強させてもらったよ。」
「じゃあ、授業料はしっかり頂戴するわよ。」
「授業料って・・・。」

2003/5/5

[もう連休も終わりですね]
 移動日だった昨日は朝早く起きたのと長時間の乗車で疲れたせいもあって昼間は殆ど寝ていました。もう今日から本調子にしていかないと連休明けが辛いので(仕事もいっぱいあるし)、生活リズムを正常にしようと思います。
 ネット環境も元どおり。ブロードバンドに浸るとナローバンドで居ることがもどかしくてなりませんね。でも、PC新調は状況が状況だけに出来ませんし、暫くは今の環境で我慢するしかないですね。まあ、ナローバンドでも大きなファイルをダウンロードしたりする時くらいでなければ、さほど苦痛にはならないんですけど。
 故障個所が発覚したシンセサイザは親に持っていってもらいました。販売店に持ち込んで修理してもらうためです。ただ、機種が10年以上前のものなので修理出来るかどうか、修理出来るにしても幾らかかるのか全く不明なので、連絡を待つしかないです。てなわけで音楽グループの更新はまた暫く先になりますので(いい加減にしろよ、お前)、ご了承願います。
 と思ったら、今度は声がかかって、その直後にカシャッという音がしてカメラを持っていた女がカメラを下げて姿勢を元に戻す。どうやら撮影は無事終わったらしい。そう思って一息ついたところで、宮城が俺のスーツの袖をくいくいと引っ張る。

「何だ?」
「あの娘と上手くやってる?」
「ああ。」

 何を聞いてくるかと思えばそんなことか。まあ、存亡の危機に瀕したこともあったがそれも良き経験だろう。順風満帆なばかりだと本音をぶつけ合っていないようで、本当に互いの意見をぶつけ合わなければいけなくなったときに破綻しそうな気がする。・・・そう、宮城との時のように。

「なあんだ。祐司がフリーだったらよりを戻そうかな、なんて思ったんだけど。」
「そんなに都合良くいくか。」
「そうかなー?案外喧嘩とかしてたりして。」

 智一じゃないが、こいつ、探偵雇って調べさせてやいないだろうな。あの出来事は喧嘩というより、俺と晶子の考えの行き違いとタイミングの悪さが重なった事件だ。それでお前とはおしまいだ、なんて言ってりゃ世話ないな。

「喧嘩はしてないけど、考え方の行き違いはたまにある。」
「へえ。でもきちんと話し合いとかしてるんだ。」

雨上がりの午後 第1158回

written by Moonstone

「もう一枚撮るねー!はい、チーズ!」

2003/5/4

[展開が・・・]
 この連休を利用して今までなかなか更新出来なかったSide Story Group 2の新作を書こうと目論んでいたんですが、どちらも(Bug Buster 知世と譬え背丈は違えども)展開が思い浮かばず、結局一日惰眠で潰してしまいました。
 Bug Buster 知世の方は小狼と寺田先生をダブルで病院送りにしてしまったので、一応構想が固まっている新作への「繋ぎ」になる作品が思い浮かばず(小狼を引っ張り出して病院送りにして直ぐに復帰させるというのも・・・)、譬え背丈が違えどもの方はまるで構想が固まらず書きようがない。これじゃ更新のしようがないです。
 どちらも考えて打ち出した作品なので更新を滞らせたくはないし、けど書けないんじゃどうしようもないし・・・。こんなことなら別のグループの作品のストックを増やした方が良かったなぁ。まあ、ここ暫く連日で作品を書いてきましたから、移動日を除いて最後の実家での休養と割り切るのが一番でしょうね。今日自宅へ戻る予定です。

「似合ってるよ。」
「ありがと。」
「ほらほら、優子!さっさと並ぶ!」

 宮城が笑みと共に返事をしたところに友人の声が割り込んでくる。そう言えばこいつら高校時代、俺と宮城が良い雰囲気になったところに、にやけた顔で押し寄せてきては突っ込みを入れたよな・・・。こいつらも変わってないな。変わったのは見た目だけか。まあ、20歳になったからといっていきなり風貌ががらりと変わるわけもないか。
 宮城は友人に言われたとおりに俺の左隣に並ぶ。かなり距離を詰めてくる。離れようとした時、カメラを構えた宮城の友人から怒声が飛んで来る。

「こらーっ!折角記念撮影するのに離れたら意味ないでしょ!」

 ったく、仕方ないか・・・。俺は諦め気分で宮城の接近を許す。俺の左隣に晶子が居るのが当たり前になってしまったから、違う人物が、しかも訳ありの人物が横に並ばれると何となく違和感を感じる。

「安藤君!表情が硬い!笑って笑って!」

 注文の多いカメラマンだな。まあ、こんなところでごたごたを起こしたくはないし−スクランブルライブで十分ごたごたを起こしてると言われればそれまでだが−、素直に顔から力を抜く。その刹那、カシャッという音がする。どうやら撮影されたようだ。音がなかったら撮影されたかどうか分からない。一声かけても良さそうなもんだが、興味本意の素人相手にあれこれ言っても無駄か。

雨上がりの午後 第1157回

written by Moonstone

 ま、そりゃそうだ。俺は一度軽く咳払いをしてから宮城に言う。

2003/5/3

[今こそ「憲法を守れ」の声を高めよう!]
 トップページ最上段にも記載したとおり、今日は憲法記念日です。国会で事実上憲法を死文化する有事法制の成立が狙われるという、非常に緊迫した情勢の中で迎えました。
 今までここやトップページのリンクで有事法制の危険性について紹介してきましたし、有事法制が発動されたらそれを推進した勢力が我先にと戦場に出て行くわけではないということは、以前にもお話しましたので繰り返しません。今日訴えたいことは「今こそ『憲法守れ』の声を高めよう!」ということに尽きます。
 改憲にしろ論憲にしろ、憲法第9条を変え、自衛隊を軍隊として認知させようという企みであることには変わりありません。戦力を放棄すると宣言した日本国憲法の下では、自衛隊は違憲の存在であることは明白です。戦車や戦闘機が戦力でなければ何というのでしょうか?先制攻撃にしろ自衛にしろ、戦力であることには変わりありません。
 その他、憲法の条文が現実生活に生かされていない部分は多々あります。折りしも今日、Moonlight PAC Edition最新号で憲法記念日にあたっての声明を掲載しました。是非一度ご覧いただいて、憲法の理念を現実社会に反映させるよう心がけてください。それが積み重なることによって、日本は真の民主主義国家になるのですから。
憲法改悪を許すな!今こそ憲法を生かそう!

「おっと、皆さんお揃いで。」
「噂をすれば何とやら、ってところか?」

 耕次が宮城達を迎え、勝平が俺を横目で見ながら言う。その口元が悪戯っぽく笑っている。まったく勝平の奴・・・。まあ、自分で言ったとおりもう吹っ切れたんだから良いんだけど。

「人垣が出来たから何かと思って見てみたら、安藤君達なんだもんね。びっくりしたわ。」
「そうそう。まさかこんなところでライブやってるなんて思わなかったもん。成人式そっちのけじゃないの。」
「まあ、私達も人のこと言えないけどね。」

 宮城の友人達はやや興奮気味に話し合う。何時からかは分からないがライブを見ていたらしい。成人式の日に会場で会い、ライブをやろうと約束したことはこいつらには言ってないからな。言う必要もないだろうし。宮城には言ったっけかな・・・。覚えてないが、多分言ってないんだろう。言っていたら多少なりとも覚えてるだろう。
 そんなことを思っていたら宮城が近付いてきた。ちょっと上目遣いなところが晶子を髣髴とさせる。俺と宮城の距離が接近したのを見計らっていたかのように、話し込んでいた宮城の友人達が俺の方に押し寄せてくる。

「さてさて、安藤君と優子が揃ったところで記念撮影、記念撮影。」
「何だか、結婚写真撮るみたいじゃない?」
「言えてる、言えてる!」

 こら、当事者を他所に勝手なこと言うな。昔なら兎も角、俺と宮城はもう高校の同期ってだけの間柄になったんだ。まあ、そんなこと、こいつらが知ってる筈もないか。と思っていたら、俺のスーツの袖がくいくいと引っ張られる。見ると、宮城が何か言いたそうな顔で俺を見ている。

「どう?これ。」
「どうって・・・。」
「似合ってるか似合ってないか、それくらいは言えるでしょ?」

雨上がりの午後 第1156回

written by Moonstone

 何度目かの記念撮影が終わった後、俺の名が呼ばれる。もしや、と思って声の方を見ると、人ごみを掻き分けて振袖姿の女が大挙して押し寄せてくる。その中には・・・同じく振袖姿の宮城も混じっている。勿論初めて見るその服装は、お世辞抜きによく似合っている。何処かの人形みたいだ。

2003/5/2

[今更何を言っている!]
 昨日、偶々「ニュースステーション」を見たのですが(普段はラジオを聞いているから見てない)、そこで航空料金の値上げの原因やバブル後開港の地域空港の現状を紹介していました。航空料金の値上げが関西空港の膨大な赤字の穴埋めに使われていること、地域振興の目玉とされた空港が地域に多大な財政負担をもたらしていること、などなど・・・。
 しかし、私に言わせればキャプションどおり「今更何を言っている!」です。こんなことは共産党やNGOがずっと前から指摘しており、先の一斉地方選挙でも採算の見込みの無い空港計画の見直しや撤回を掲げた政党は共産党のみでした。しかし、私が知る限り、選挙期間中にそのようなことを取り上げたマスコミはありません。
 国民により身近な問題を抱える一斉地方選挙でこのような問題を取り上げないのは何故か。それはこのような問題の根本に政府与党、そして地方議会ではオール与党を形成している共産党以外の政党の議会での推進があり、それを取り上げたら共産党の主張の正当性を裏付けることになり、それは共産党以外の政党にとっても政府にとっても財界にとっても困るからです。ですから私はここで度々言っているのです。「新聞を読むなら「しんぶん赤旗」を読め」と。商業マスコミは不要です。
そして耕次の合図で全員前を−楽器の配置や耕次の向いていた方向からの相対的な位置関係だが−向いて、手を繋いで大きく振り上げ、手を振り下ろすと同時に頭を下げる。拍手と歓声がより大きくなる。頭を上げた俺達は、互いに握手をしたり肩を叩き合ったりする。どいつの顔も晴れやかだ。俺も表情が緩んでいるのが分かる。

「やったな。スクランブルライブは成功だ。」
「当たり前よ!俺達5人は無敵のバンドなんだからな!」

 耕次が言うと、宏一が満面の笑みを浮かべて応える。

「最初はどうなるかと思ったが、無事終わって何よりだな。」
「渉は相変わらずクールだねぇ。」
「お前が熱過ぎるだけだ。」
「止めろ、二人共。折角良い気分で終われたんだから。」

 耕次が渉と宏一の間に割って入る。こういうタイミングは相変わらず上手いな。俺達がそんな感じで互いの労を労っていると、歓声と共に人垣が押し寄せてくる。一体何事だ?!

「すみませーん!写真撮らせてくださーい!」
「お願いしまーす!」

 何だ、記念撮影か。俺達は求めに応じて記念撮影の中に入る。ヴォーカルの耕次とギターの俺は自分で言うのも何だが結構人気がある。まあ、ロックバンドで一番目立つパートだからな。勝平や渉も意外と言っちゃ失礼だが人気がある。こいつらなかなかの美形だからな。宏一は記念撮影に応じると言うより自分から進んで撮ってくれと言っている感じだ。宏一らしい。

「安藤君!写真撮らせてー!」

雨上がりの午後 第1155回

written by Moonstone

 俺と渉は楽器のストラップから身体を抜き、勝平と宏一が後ろからやってくる。俺達は一列に並んでめいめいに手を振って、何時絶えるとも知れない拍手と歓声に応える。

2003/5/1

[労働者、万歳!]
 何とか月代わりの更新も間に合い、行き詰まっていた小説も呆気ないほどあっさりと書き上げてしまいました。そしていよいよ5月。今月は藤の花をバックに世界ネットで(笑)お送りします。
 さて、本日はメーデーです。労働者の雇用、賃金、労働条件の切り下げが「構造改革」「リストラ」などの美名の下で切り下げられ、株価が小泉内閣発足前より約半額までダウンし、バブル後最安値を連日更新するという前代未聞の経済状況の低迷の下で迎える今年のメーデーは、解雇原則自由化などとんでもない内容を含む労働法制の改悪が自公保与党の国会で狙われているという緊迫した情勢の下で迎えます。
 これに痛打を加えるべき一斉地方選挙では、有権者は良識ある判断を示せませんでした。自民党の企業ぐるみ、公明党の創価学会ぐるみ、民主党や社民党の労働組合ぐるみ選挙の前に屈するという最悪の選択肢を選びました。今こそ労働者、有権者は赤旗の下に団結し、労働条件の改善に向けて立ち上がる時です。労働者万歳!メーデー万歳!
♪言葉にすれば短いけれど そこまでの道程は長い
♪二人手を取り合った時から ロマンスのフレーズが始まる

 勝平のピアノソロが入る。クイ中心のフレーズだが、連打が多いから結構大変なところだ。ここは勝平の腕が冴えるところだ。キーボードを入れたこのバンドの真価が発揮されるところだと思う。さあ、最後の盛り上がりは近いぞ。

♪フレーズを歌わなきゃ駄目だよな 書き綴ったのは二人だけれど
♪言葉にして初めて フレーズに息吹が吹き込まれる

♪HEARTFUL ROMANCEを踊ろう 風に舞う花弁のように
♪君と手を取り合い 身を寄せ合って
♪HEARTFUL ROMANCEを語ろう 季節を詠う詩人のように
♪君と向かい合い 瞳を見詰め合って

♪HEARTFUL ROMANCEを踊ろう 風に舞う花弁のように
♪君と手を取り合い 身を寄せ合って
♪HEARTFUL ROMANCEを語ろう 季節を詠う詩人のように
♪君と向かい合い 瞳を見詰め合って

 俺が再び最初のギターフレーズを奏でる。宏一のシンバルワークを交えたフィルに合わせて徐々にテンポを落として・・・最後は宏一のシンバルと合図に、俺と勝平と渉がそれぞれのフレーズを演奏する。そして最後は俺と渉の白玉の上に勝平が高音部を活かした短いフレーズを入れて終わる。
 人垣の間に少しの間沈黙が立ち込めたかと思うと、とびきりの表情と共に拍手と歓声が俺達に贈られる。全5曲の、終わってみればあっという間のスクランブルライブはこれで終了だ。名残惜しい気はするが、これが俺達5人の約束だ。それが達成出来たのだからこれで満足しなきゃ底なしだ。

雨上がりの午後 第1154回

written by Moonstone

 最初のギターフレーズを奏でる。結構自分では気に入っているフレーズなんだが、チラッと人垣を見ると、視線が俺達に集中しているのが分かる。皆真剣そのものの表情で聞き入っているようだ。

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