芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2003年8月31日更新 Updated on August 31th,2003

2003/8/31

[やることいっぱい(汗)]
 8月最後の今日は日曜で、本来ならゆっくりのんびりまったり過ごしたいところなんですが、背景写真の選定、上位ページの背景画像の作成(これが時間かかる)、そして作品制作・・・。公開してひと安心する暇はほんの僅かな時間しかないんですよね。
 昨日は眠気に負けて一日寝てたので、今日纏めて作るつもりです。どうも最近、土曜日が弱くなってきたな・・・。薬飲んで寝ない方が良いのかも。でも薬飲まないとまともに寝られないし・・・。
 ついさっきまで寝てたので眠くないといえばそういうわけでもなく。薬飲んでないので少し寝ては起き、の繰り返しになるので良く寝た、という気がしないんですよね。ま、今日は徹夜してでも作品制作しましょうかね・・・。
 俺と晶子は並んで店を後にする。すっかり葉だけになったタンポポの丘の合間にある小道を抜けて通りに出る。学生は夏休みだというのにこの通りは相変わらずひっそりとしている。何だかゴーストタウンに来たみたいだ。まあ、こんな暑い日に外へ出る人間といえば、海水浴などの行楽客か営業の人か、或いは暇人かのどれかだろうが。
 俺と晶子は何時の間にか手を繋いでいる。夏場に手を繋いで熱くないか、と問われたら、そんなことはない、と俺は答える。陽射しの熱さと人肌の温もりはまったくの別物だ。それに晶子の手は割とひんやりしているから、むしろ晶子の方が熱い思いをしているんじゃないかと思う。

「コンサート、成功すると良いですね。」

 不意に晶子が言う。

「・・・ああ、そうだな。」
「新京市の公会堂なんてどんな場所かよく知らないですけど、1000人収容出来るんですから、クリスマスコンサートとは比較にならない規模になるでしょうね。」
「それに今度は、演奏は機械任せじゃなくて全部人間でやるんだ。1000人っていったら下手な集会を上回る規模。そんな観客の前で合同の練習回数も決して多いとは言えないプロの人達と共演出来るのか、っていう不安が消せない。」
「大丈夫ですよ。」
「よく言い切れるな。」
「だってクリスマスコンサートだって、去年は100人以上入ったじゃないですか。概算ですけれどもね。それが10倍になるだけですよ。」
 その10倍ってのが問題なんだが・・・。晶子は心臓が強いな。こんな時は俺の方がどっしり構えてなきゃいけないところなんだろうけど、それが出来ないのが何とも情けない。

雨上がりの午後 第1276回

written by Moonstone

「早く晶子の家に行こう。こんなにきつい直射日光の下に居たら日射病になっちまう。」
「そうですね。熱気が篭っているといっても外よりは家の方がまだましですから。」

2003/8/30

[あー、しんど(^^A)]
 というわけで、8月最後の週末に文芸関係グループの揃い踏みを達成することが出来ました。だからと言って別に何か出るわけじゃないんですが、まあ、選り取りみどりで読んでいただくも由、お目当てのグループ目掛けて突進するも由(猪か)。ごゆるりとお楽しみください。
 私としては勿論どれも読んでいただきたいんですが、特にNovels Group 1とSide Story Group 1、Side Story Group 2を読んでいただきたいですね。Novels Group 1は物語の世界に関わるものが出てきますし、Side Story Group 1は法廷での激闘が見れますし、Side Story Group 2は切なさとある人物の積極的な行動が見れます。
 特にSide Story Group 2は今回の更新に間に合うか非常に微妙だったんですが、どうにか思いどおりの形に完成させることが出来て自分でも自信を持てる作品になりました。これまでご覧になっていない方も是非ご覧下さい。CCさくらを知らない方でも楽しめる作品だと思います。

「痛いなぁ、潤子。」
「晶子ちゃんが居るところではそういう表現は使わないで、ってあれほど言ったのに・・・。まったくもう。」

 マスターの言いたいことは分かる。潤子さんはそれを察知して「実力行使」に出たんだろう。別に言わせても良いと思うんだが。俺と晶子がそういう関係になってるってことは晶子本人がばらしてしまったし、俺だって女性専用マンションの中にある晶子の家で晶子とベッドイン、なんて考えちゃいないし。

「それじゃ、失礼します。」
「また明日から宜しくね。」
「「はい。」」

 俺と晶子は同時に返事をして勝手口から外に出る。夏の陽射しが眩しく、肌をじりじりと焦がすように熱い。空気をたっぷり熱気と湿気を帯びている。今年は梅雨明けから暫くは割と涼しい日が続いたんだが、今じゃしっかり夏らしくなっている。じっとり肌に纏わりつくような湿気と肌に突き刺さるかのような強い陽射し。これこそ日本の夏だろう。夏が涼しいと後で大騒ぎすることになるし。

「暑いですねー。」
「ずっと涼しいところに居たから余計に暑く感じるんだろうな。」
「家、熱気が篭ってそう・・・。」
「多分、そうだろうな。幾らエアコンでもそう直ぐには熱気は取れないから、暫くは汗だくで過ごすことになりそうだ。」
「立ってるだけで汗が出てきましたよ。ほら。」

 晶子はそう言って俺に右腕を見せる。確かに白い肌にじわりと汗が滲んでいる。

雨上がりの午後 第1275回

written by Moonstone

 マスターがそこまで言ったところで、潤子さんの強烈な平手打ちがマスターの後頭部にヒットする。マスターの頭ががくんと前に折れる。マスターは後頭部を擦りながらいかにも痛そうに顔を顰める。あれだけ強烈な一撃を食らったらさぞかし痛いだろうに。ちょっとマスターに同情する。

2003/8/29

[イラスト描こうかな・・・]
 このページには創作文芸関係4グループ、二次創作関係2グループ、音楽関係2グループ、美術関係3グループ(2グループは客員だから実質は1グループ)の合計11グループがそれぞれの活動を行っています。このページにお越しの方ならもう言うまでもないことでしょうが、文芸関係のグループが突出していて、その他のグループは殆ど沈黙状態です。
 現在公開中の「Moonlight PAC Edition」最新号でも触れていますが、現在主力の文芸関係グループの更新による集客力やリピーター率が頭打ち状態で、やはりここはイラストを公開すべきなのかな、と思っています。
 描けないことはないんです。以前に隠し部屋をご覧いただいた方はご存知でしょうが、そこで私が描いたイラストを公開していた時期があったんです。でも出来があまりにもしょぼいので公開を止めてしまった経緯があります。CGソフトによる色塗り方法はさっぱり分からないし、色付けをしてもろくなことになりそうもないので、公開するならモノクロイラストでしょうね。果たして私のイラストが見たい、っていう方はいらっしゃるんでしょうかね?仮にアンケート取ったらどんな結果が出るんでしょう?「んなもの、見たくねえ!」ってコメントが多数寄せられそうだな・・・(汗)。
 潤子さんは左手の指だけでトレイを支えたまま、コップをそれぞれの席に置いていく。本当に器用だ。伊達に俺と晶子がバイトするようになるまで二人で店を続けてきたわけじゃないってことが良く分かる。
 俺と晶子は、いただきます、と言ってよく冷えたコップを手に取り、オレンジ色の液体を口に流し込む。冷たさと程好い酸味が清涼感を感じさせてくれる。こってりしたものが多かった食事の後には最適の飲み物だな。俺は一気にオレンジジュースを飲み干してコップをテーブルに置いて小さく溜息を吐く。晶子はゆっくりしたペースで飲んでいる。品の違いが出たな。
 晶子が飲み終えたところで、俺と晶子は顔を見合わせて小さく頷き、ほぼ同時に席を立つ。まだジュースを飲んでいたマスターと潤子さんは、どうしたんんだ、という顔で俺と晶子を見る。

「じゃあ俺達、これで失礼します。」
「なんだ、もっとゆっくりしていって良いんだぞ。」
「そうよ。夕食を食べていってからでも良いじゃない。」
「これから私の家に行きますから。」

 そう、月曜日は俺と晶子が二人きりの時間を満喫する曜日だ。生憎今日はギターを持って来てないし、今日は泊まらずに帰るが−2日も下着を着替えないのはちょっと気が引けるからだ−、晶子の家で夕食を共にすることには変わりない。それにマスターと潤子さんだって、二人きりの時間を持ちたいところだろう。余計なお世話かもしれないが。

「そう。これから二人きりでゆっくりするわけね?」
「はい。月曜日は祐司さんと私の家で過ごす大切な日ですから。」
「おうおう、井上さんも随分はっきり言ってくれるねえ。で、祐司君は晶子ちゃんの手料理を食べて、その後は井上さん本人を食べるって・・・」

雨上がりの午後 第1274回

written by Moonstone

「食後の飲み物よ。さ、どうぞ。」

2003/8/28

[揚げ物食べたい・・・]
 固い話が連続したので、ここらで一息。私は減量中でして、決心して実行し始めてから早1年近くになります。その間、例外を(帰省した時に実家で出された時など)除いては揚げ物を一切食べず、食事も油を使わず専らオーブンと電子レンジで加熱調理しています。そして運動。最初一時体重が増えましたが(筋肉太り。筋肉の方が脂肪より重い)その後少しずつ減り続け、今では標準体重を維持しています。勿論今も、料理も運動も当初の目標を厳守しています。
 しかし、元々私は揚げ物が好きなんです。特に唐揚げとチキンカツが(鳥ばっかだな)。昼食時に外に出る機会があると、その通過地点にコロッケ専門店があって、「1個50円」ののぼりが目を引き、欲望を高めます(^^;)。
 でも、減量中の身にとって揚げ物は極力控えるべきもの。「買って食べたい」という衝動を抑えつつ、行きつけの寿司屋(ランチをやってる)に入るのです。食べたいものが食べられない。でも我慢我慢・・・。酒も原則禁止の私は、食べ物に関する衝動を抑えつつ毎日を過ごしています。禁煙や禁酒はもっと辛いんでしょうね。減量中の方、くれぐれも無茶はしないように、ね。
 俺はマスターと一緒に席を立ち、目の前の食器の山を持ち上げる。食べ終わった食器の山を持つことはバイトでやってることだから珍しくも何ともない。それに折角美味い料理を沢山作ってくれたんだから、これくらいやっても罰はあたるまい。
 食器の山が店の流しに運ばれたところで、俺とマスターはさっさと退散する。ここからは晶子と潤子さんの出番だ。俺とマスターが居たところで邪魔になるだけだから、おとなしく引き下がった方が良い。

「祐司君。井上さんと潤子、俺達の話聞いてたんじゃないか?」

 椅子に腰を下ろしたマスターが、小声で尋ねてくる。俺も小声で答える。

「マスターもそう思いますか。」
「料理の音と料理に集中していて聞こえてないと思ってたんだが・・・、二人揃って耳が良いみたいだな。」
「迂闊なことは言えませんね。」
「まったくだ。まあ、言う材料も見当たらんがな。」
「ええ。」

 俺とマスターは会話を止めて、ゆったりと食後の休憩をする。その間にも店の方からは水の音と食器がぶつかり合う音が絶え間なく聞こえて来る。晶子も潤子さんも普段店のキッチンを切り盛りしているから、勝手は心得ているだろう。本当に俺とマスターは恵まれているよな・・・。
 思ったより早く、両手に若干水分を残して晶子と潤子さんが戻って来る。やはり普段からキッチンを切り盛りしているだけあって手際が良いな。潤子さんは、店で使う銀色のトレイにオレンジジュースらしいものが入ったコップを4人分乗せている。それなりに重みもあるにも関わらず、左手の指だけで支えているとは、潤子さんって腕力もあればバランス感覚も相当あるんだな。

雨上がりの午後 第1273回

written by Moonstone

「じゃあ晶子ちゃん、お願いね。」
「はい。」
「祐司君。俺達もせめて流しに食器を運ぶくらいはしよう。」
「そうですね。」

2003/8/27

[本性表した右翼反動政党]
 とうとう自民党がその本性を剥き出しにしました。集団的自衛権の憲法解釈の変更を含む憲法改正を提起したのです。集団的自衛権というと聞こえは良いですが、先に成立した周辺事態法、有事法制、イラク特別措置法案などなど・・・。これらは日米軍事協力の指針(所謂ガイドライン)に基づくアメリカとの軍事同盟をより強固なものにし、自衛隊を名実共に軍隊とし、「有事」となれは世界の何処へでも軍隊を派兵出来るようにする企てに他なりません。
 これでもうお分かりでしょう。自由民主、と名はありますが、自民党の目指す方向が自由でも民主でもないということが。ただ日本を「戦争出来る国」にして、アメリカと共に世界覇権を狙う大日本帝国万歳の政党であるということが。盗聴法といい、先日本格稼動した住基ネットといい、国民を一元管理し、徴用、徴兵に駆り立てるのが目的なのです。
 それでも尚、自民党候補者のポスターを掲げている家庭を見ると呆れてものも言えません。如何に自民党が公明党と保守新党と共に日本経済を駄目にしたか。国民生活を苦境に追い込んできたか。それでも尚、自民党や公明党などと心中する気なのでしょうか。
 もはや事態は猶予を許しません。秋に予想される総選挙で右翼反動勢力に厳しい審判を下し、政治や行政がアメリカではなく国民の方を向くように一票を投じようではありませんか。本当に「何も変わらない」でしょうか?貴方は全ての選択肢を選んだことがあるのですか?
 何時ものように全員揃って唱和した後、料理を食べにかかる。それにしても凄い量だな。今日買ってきた分を使い切ってしまったんじゃないかと思うくらいだ。まあ、潤子さんもその辺は勘考しているだろうから心配要らないか。俺は好物の唐揚げを中心に料理に舌鼓を打つ。美味い。晶子のリクエストに応えて演奏したことに加えて長話をしたことで腹が減っていたところにこの量だ。俺は遠慮なく料理を食べていく。
 昨日の−言っておくが日付上は今日だ−演奏のことや俺と晶子のなれ初めが話題に上る中−マスターと潤子さんはそのことを聞いても「昔のことだからねぇ」でかわしてしまう−、あれだけあった食事はあっさり片付いてしまった。俺は満腹だ。昼食で満腹になるなんて初めてなんじゃないだろうか?あ、以前試験勉強中のところに晶子が昼飯を作って持って来てくれたことがあったっけ。あの時も腹が膨れたが今日と同じ位かどうかまでは流石に分からない。

「「ご馳走様でした。」」
「綺麗に食べてくれたわね。作った甲斐があったわね?晶子ちゃん。」
「ええ。作ったものが綺麗に食べられていると嬉しいですね。」
「しかし、昼食とは思えん量だったな。やっぱり聞いてたのか?」
「何を?」
「何を、って潤子、お前なぁ・・・。」

 やっぱり潤子さん、しれっとかわすなぁ。こりゃどう足掻いたところで実情を聞き出すのは無理みたいだ。俺が晶子に聞いても多分、否、きっとはぐらかされるだろう。俺の追及なんてたかが知れてるからな。

「私もお腹いっぱいだから、ちょっと休んでから片付けようかな。」
「あ、私も手伝いますから。」
「お願い出来る?嬉しいわ。」
「いえ・・・。」

 晶子ははにかんだ笑みを浮かべる。満面の笑顔も勿論良いけど、こういう可愛らしい表情も良いな。泣くところだけは嬉し泣き以外は絶対御免だ。あれは見ているだけで胸を引き裂かれそうなやりきれない気持ちと激しい罪悪感に苛まれるからな。
 暫くゆったりとした時間が流れた後、潤子さんが席を立って食器を重ね始める。俺と晶子もマスターも目の前にある食器を適当に重ねる。何等分かに食器が重ねられたところで晶子が席を立つ。洗い物を始めるんだろう。

雨上がりの午後 第1272回

written by Moonstone

 潤子さんはしれっとかわし、晶子は明るい笑顔で料理を勧める。やっぱり聞こえてたんだな。まあ、追求したところで白状するとは思えないし、追求したってしょうがないから、ここはテーブルいっぱいに並べられた料理を味わうのが一番だろう。

2003/8/26

[住基ネットは中止せよ!]
 昨日から住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)が本格稼動しました。政府は「全国どこでも住民票が取れる」「自治体で様々なサービスが受けられる」と電子政府構築へ向けた薔薇色の世界を喧伝しています。
 しかし、ネットに触れている皆さんならお分かりかと思いますが、ネットに情報漏洩の危険性は完全に排除出来ません。更に、市役所などに出向く回数は一人年何回あるでしょう?それに自治体毎の様々なサービスとやらも、殆ど実施されていないのが実情です。
 私は仕事でストック(要するに在庫)の管理をしているのですが、その立場から言うなら、国民に11桁の番号をつけるのは名前や住所で調べるより管理がしやすいからです。国民に番号をつけることによって国家による国民の情報の一元掌握を目指すことに、住基ネットの本質があるのです。
 ところで住基ネットにはあの桜井よし子も反対していますが、薬害エイズ訴訟を契機に市民運動を敵視し、右翼系雑誌で頻りに揶揄している右翼反動的人物が、自分と流れを同じくする政府のやり口に文句を言うのはおかしな話です。桜井には自分の報道姿勢の転換の総括をまず最初にやってもらいたいものです。

「はい。そう思います。美人だし、料理は上手だし、良く気は利くし、人当たりは優しいし・・・・。」
「俺達を第一に考えてくれる。俺達の方を見続けてくれる。割れ鍋に閉じ蓋、っていうが、絢爛豪華な閉じ鍋だよな。」
「ええ、そうですね。俺は失恋した直後でささくれ立ってた時期がありましたけど、それでも晶子は俺へのアプローチを止めなかったし、俺についてきてくれました・・・。俺がミュージシャンになる道を選んだとしても俺と一緒に居てくれることを約束してくれる。本当に恵まれてるな、って思います。」
「大事にしないとな。」
「そうですね。」

 俺とマスターが互いのパートナー自慢大会をしていると、お待たせ、という快活な声と共に晶子と潤子さんが料理を運んでくる。海老のチリソースやら焼き餃子やら唐揚げやら−これは晶子が俺の好みを考えてのことだろう−中華料理だが、それにしても量がかなり多いし種類も多い。朝食が軽かったから良いものの、夕食並、或いはそれ以上に豪勢だ。

「随分作ったな。」
「ちょっと張り込んでみたのよ。沢山食べてね。」

 エプロンを外して髪を解いた潤子さんが言う。その表情は何時も以上にご機嫌のようだ。俺の隣に座った晶子も何か嬉しそうにしている。まさか・・・。

「・・・聞こえてたんですか?」
「何のこと?」
「さ、冷めちゃわないうちに食べましょうよ。」

雨上がりの午後 第1271回

written by Moonstone

 何だ、そういう話か・・・。晶子との関係を深く聞かれるのかと警戒したんだが、どうやらその警戒は必要ないようだ。

2003/8/25

[これって歳のせい?]
 今更の感が拭えませんが、暑い日が続いています。もっとも私は買い物を除いてずっと自宅に篭っているので、陽射しの強さとエアコンの稼動状況でしか外の様子を窺い知ることは出来ないんですけどね(引きこもり状態)。
 さて、先週は半分以上出張、しかも日帰りを連続というハードな日程だったのですが、この週末はやる気こそあってもどうも眠くて、予定していたスケジュールの半分はおろか1/5も出来ませんでした。こりゃ次の更新も危ういな(汗)。
 今の自宅に引っ越してきて暫くは、徹夜は勿論のこと、連日連夜ゲーム三昧でも平気な顔して仕事して、週末も景気良く動いていたんですが、今はそうもいかないですね。疲れやすいのは別として、疲れがなかなか取れなくなってきているようです。やっぱりこれって・・・歳のせいなんでしょうか?(大汗)

「昨日はお疲れさんだったな。で、どうだ?」
「どうだ、って何がですか?」
「ミュージシャンになる気になったかどうかだよ。」

 そう来たか・・・。やはりという感もあるが、俺の中ではまだ結論は出ていない。俺がそのことを話すと、マスターは言う。

「君の演奏は、うちのバイトという条件を取り除いても、十分人に聞かせられるものになっていた。この道20年くらい自分の腕一本でミュージシャンやってる連中の中に混じってあれだけの演奏が出来たんだ。君にはミュージシャンの素質があると俺は思う。」
「・・・。」
「勿論将来どうするかは君の判断だから強制はしないし、出来ないし、するつもりもない。ただ、君は自分の腕にもっと自信を持って良いことは確かだ。ジャズバーを回るミュージシャンが嫌なら、何処かの事務所と契約してCDを出したり他のプロのレコーディングに参加するスタジオ・ミュージシャンへの道もある。決してミュージシャンの道が昨日経験してもらったものだけじゃないことだけは覚えておいてくれ。」
「はい。」
「それはそうと・・・祐司君。」

 マスターが唐突ににやける。その髭面でにやけられると正直言って不気味だ。俺は思わず引いてしまう。

「な、何ですか?」
「俺達、良い女と巡り会えたよな。」

雨上がりの午後 第1270回

written by Moonstone

 晶子は嫌な顔一つせずに席を立ち、潤子さんの後を追って店の方へ消える。キッチンには俺とマスターが残された。会話しようにも話題がないから沈黙するしかない。

2003/8/24

[私は一体何を目的に作品を創っているのか?]
 公開中の「Moonlight PAC Edition」最新号では、来場者数とリピーター率上昇に向けた検討を開始した、とあります。そこでも少し触れていますが、その背景には作品公開時のピーク値が頭打ちになっていることがあります。それに加えてそこでは書きませんでしたが、メインコンテンツ(文芸ページなら文芸、CGページならCG)をろくに更新していないのにこのページの通常のご来場者数を上回っているページが多いことに焦りと苛立ちを感じているのもあります。
 しかし、だとすると私はより多くの人に見てもらうために作品を創っていることになります。果たしてこれが正常な状態といえるのでしょうか?仕事ならまだしも趣味の範囲でやっていることなら、来場者数やリピーター率向上は二の次と考えるべきではないでしょうか。
 このページも開設してから5年目の半ばを迎えようとしています。それで約480000人。この数字をどう見るか。多いと見るか少ないと見るか。それによって自分の作品制作に対する取り組みの姿勢が変わってくるように思います。
 勝手口のドアが開いて、買い物袋をぶら下げたマスターと潤子さんが入ってくる。随分な量だ。まあ、家で使う分だけじゃなくて店で使う分もあるから、多くなって当然か。
 俺は晶子のリクエストを5曲ほど演奏した後、キッチンで話をしていた。話は俺から切り出した。何故なら俺の将来に関することだからだ。昨日−くどいようだが日付上は今日だ−の演奏で好評を得られたことを弾みにして音楽への道へ飛び込むべきか、それとも一般的な−世間的に言ってだが−道へ進むのかかなり迷っていることを率直に打ち明けた。
 晶子は、最終的には祐司さんが決めることですけど、と前置きした上で、俺の腕は恋人という条件を取り払っても十分人に聞かせるものになっていたこと、それは客席からの反応が証明した筈だということ、そして俺が音楽の道に進むことに賛成はするけど反対はしないということを話した。
 続いて俺が、晶子はどうするんだ、と尋ねたら、晶子は文学部では進路が事務職に限られてくるから、会社や官庁に就職するよりもこの店で働けるものならそうしたいという気持ちがある、と言った。初めて聞いた具体的な「進路」に俺はちょっと驚いたが、晶子はこの店に対して余程愛着があるらしい。晶子はこの店が開くと同時に働きに出て、夜から俺と「合流」して俺はプロのミュージシャンとして客に演奏を聞かせるのはどうか、というかなり突っ込んだことまで言った。そこまでは思いつかなかったからかなり参考になった。
 その一連の話が終わったところでマスターと潤子さんが帰ってきた、という格好だ。マスターと潤子さんは手分けして買って来たものをキッチンの冷蔵庫と店へ持っていく分に小分けして収納した後、マスターは俺と晶子の向かい側に腰掛け、潤子さんは髪を後ろで束ねてエプロンを着けて晶子に言う。

「晶子ちゃん。これからお昼ご飯作るから手伝ってくれない?」
「はい。分かりました。」

雨上がりの午後 第1269回

written by Moonstone

「ただいまー。」

2003/8/23

[文芸作品と季節]
 このページは今のところ(ってかここ暫く)文芸関係グループがメインになっているわけですが、中には季節の描写を必要とするものがあります。というか、大半の文芸作品は季節や時間の流れの描写がないと成立し得ないんですよね。
 この「季節」というのが結構曲者で、現在の季節に合わせるべきか、それとも現在の季節を無視して書きたいものを書くか、結構悩む時があります。ここの連載も季節(むしろ時間の流れ)をふんだんに織り込んでいますが、これを編集したりしたNovels Group 3では連載との間隔があるため(ないと辛い)季節が今と違ったり・・・(^^;)。
 文芸作品なんだから季節感の描写をしっかり書けばあとは読者がそれに浸ってくれるだろう、という期待もありますが、そのときの季節に合わせた作品を投入した方が季節感を味わえて良いのでは、という考えもあります。オールシーズン違和感なく読める作品というものを書くのは難しい、と思う今日この頃です。
 やれやれ・・・。まだあれだけ演奏してから半日も経ってないのにギターを演奏してくれとは・・・。まあ、マスターと潤子さんが買い物から帰ってくるまで他にすることはないし、晶子が聞きたいって言うんだからその望みを叶えてやろうかな。

「分かった分かった。とりあえずこの腕を退けてくれ。」
「はい。」

 晶子はすんなりと俺を腕から解放する。俺は席を立って店へ向かう。カウンターを出て客席を抜け、ステージに上がる。晶子はステージに一番近いテーブル席の椅子に腰掛けている。

「何が良い?」
「『THE SUMMER OF '68』が聞きたいです。」

 「THE SUMMER OF '68」か・・・。シンセ音とシンプルなリズム音の中、ひたすらアコギで演奏する曲だ。この曲を演奏する時もかなり緊張したが、客には新鮮だったのかかなり好評だったのを覚えている。

「よし、分かった。それじゃ準備するからちょっと待っててくれ。」

 俺はアコギのストラップに身体を通し、PCとシンセサイザーを起動してシーケンサの準備をする。今回は一人だから、他のパートの演奏はシーケンサにお任せだ。準備が整ったところで、俺は椅子を持ってステージ中央に置き、その足元にフットスイッチを持って来て、準備が整ったところで腰を下ろしてギターの位置を決める。これが演奏準備の最終段階だ。準備が整ったところで俺は晶子を見る。晶子は目を輝かせて俺を見ている。たった一人の、だが最も大切な観客を前にして、俺はフットスイッチを押して演奏を始める・・・。

雨上がりの午後 第1268回

written by Moonstone

「な、何だよ。」
「祐司さんのギターが聞きたいなぁ、って思って。」
「つまりこれはおねだり、だと。」
「ご名答。」

2003/8/22

[ゴミ処理は身近な問題]
 昨日は研修(8/20〜8/22。日帰り3連続(汗))の一環でゴミ処理施設を見学しました。そこではゴミを徹底的に分別し、ゴミを蒸し焼きにしてカーボン(炭を粉状にしたようなもの)を取り出し、それを燃料にして蒸気タービンを回して、施設の全電力供給はもとより余った電力を電力会社に売却し、余熱を隣接するハウス農園に提供している、といった、循環型ゴミ処理施設でした。
 その見学の中で、ゴミを破砕する場所に入れるところを見たんですが、施設の方の説明では、ゴミの分別が不徹底な割合が2〜3割ほどあり、そのため破砕するための歯(勿論、巨大なものです)に絡まり、後始末が非常に厄介だ、という話を聞かされました。
 私の住んでいる地域でもゴミの分別がかなり細かいのですが、正直今まではどうせ廃棄炉に放り込んで燃やすんだから一緒だろう、という思いがありました。しかし、分別の不徹底が処理に支障を来たし、結局はその経費が税金となって市民に跳ね返ってくる、ということを目の当たりにして、ゴミの分別に対する認識が変わりました。非常に有意義な見学でした。ゴミ処理は決して処理施設の問題ではなく、社会システムを運営する資金=税金に関わる身近な問題であることを実感しました。皆様もゴミ分別は面倒でも丁寧にしてくださいね。
そんなことを思いながら、俺は晶子と並んで座る。向かい合わせでも良いのにあくまで距離が近い方を選ぶんだな、晶子は・・・。

「「いただきます。」」

 どちらかが合図したわけでもないのにぴったり息が合ったことに、言ってから俺と晶子は顔を見合わせてくすくす笑う。そんな和やかな雰囲気の中遅い朝食を食べていく。BGMなんてもんはないし、必要ない。晶子との会話がBGMでもあり、食欲増進剤でもある。
 晶子は昨日の−日付上は今日だが−初セッションの興奮覚めやらぬ様子で、頻りに歌った時の気分を語り、俺の演奏を持ち上げてくれる。誉められて悪い気はしないが、そんなに晶子の心を揺さぶるような演奏だったんだろうか、と疑問に思う。
 確かに俺の演奏は好評だった。桜井さんや国府さんは勿論のこと、「MORNING STAR」なんかで初めてEWIで俺とユニゾンした勝田さんも、そして終始クールだった青山さんも、俺の演奏は十分プロとして通用するといってくれた。だが、それは初対面の相手だしそれにアマだっていうことを踏まえてのお世辞だったんじゃないかと思えてならない。
 その一方で、終始クールに演奏を続けていた青山さんが、酒が入ったら初めて笑顔を浮かべて、君の演奏は良かった、と言ってくれたことに自信を持ったことも確かだ。青山さんのようにクールで自分にも他人にも厳しいタイプはそうそう人を誉めることはしない。そんな青山さんに認められるだけの腕が俺にはあると思って良いんだろうか?いまいち分からない。
 食事はあっさり終了した。最後にフルーツを凝縮したという表現が相応しいミックスジュースを飲み干してコップをテーブルの上に置く。俺とほぼ同時に食べ終えた晶子が食器を重ねて流しに持っていく。洗い物をするんだろう。何だか晶子にさせてばかりで申し訳なく思う。でも、晶子はこれは自分の役目だと思っているのか、月曜の夕食の後でも俺に洗い物をさせない。
 食器が少ないので洗い物は直ぐに終わる。晶子は備え付けのタオルで手を拭うと、俺の背後に回って両腕を俺の首に回す。後ろから抱きすくめられた格好になったことで、俺の心拍数が急上昇する。こんな程度でドキドキするんだから、俺も案外(?)照れ屋なようだ。

雨上がりの午後 第1267回

written by Moonstone

 晶子の奴、相変わらず潤子さんにライバル意識を持ってるな。別に潤子さんの方にフラフラ寄って行く、なんてことは無いから安心して良いのに・・・。第一、そんなことをしたら晶子は勿論、マスターも黙っちゃいないだろうし。

2003/8/21

[ツクツクボウシが鳴いている・・・]
 夏らしい日が殆どないまま、どうやら季節は秋に向かっているようです。このままだと心配されるのが農作物の冷害。私は昨日出張で電車に乗る機会があったんですが、そこから見える田園風景は明らかに異常。本来ならもう緑色の穂が垂れ下がっていてもおかしくない時期なのに、それが見た限りではまったくなし。1993年以来の大凶作になることはほぼ間違いないでしょう。
 こういう時ものを言うのが食糧備蓄、ひいては国の農業政策ですが、日本は世界有数の食糧輸入国。おまけに米さえも政府による管理方式を止め、市場任せにしようとしているのです。片方で食料自給率を上げると言いながら、片方で食料輸入をどんどん緩和しようとする。政府与党は日本の農業を何と考えているのでしょうか。
 自民党や公明党などが好きな軍隊用語を使えば、食料は戦略物資です。いざとなれば食料提供と引き換えに自国に有利、相手側に不利な条件を飲ませることも出来るわけです。言わば首根っこを掴まれた状況をさらに悪化させようとする日本の農業政策は根本的に間違っていると言わざるを得ません。株価の上下に一喜一憂する暇があったら、国民の生命に関わる第一次産業の振興に本格的に乗り出すべきです。
時間としては長い方じゃないんだが、疲れていたせいもあってよく眠れた。俺は手櫛で髪を整える。整えるといってもヘアスタイルがあるわけじゃないんだが。

「マスターと潤子さんは?」
「揃ってお買い物ですって。昼過ぎに戻る、ってマスターからの伝言です。」

 揃って買い物?てことは今、この家に居るのは俺と晶子だけということになる・・・。マスターと潤子さん、余程俺と晶子を信用しているのか、全然警戒心がないのかのどちらかだな。片方はまだ寝てたっていうのに良いんだろうか?

「さ、朝御飯食べに行きましょう。」
「食べに行こうって・・・晶子は済ませたんじゃないのか?」
「まだですよ。私は祐司さんと一緒に食べたかったですから、用意だけしてもらったんです。」
「そう・・・。」

 晶子はとことん俺と生活のペースを合わせたいみたいだな。こういうのを見ると、昼夜逆転の生活を送る桜井さん達のような道を選ぶことを躊躇してしまう。帰ってくるまで起きて待ってる、なんてことをやりかねない。そうなると晶子の生活を狂わせてしまう。
 兎も角今は朝飯を食べることに専念するかな。俺は晶子の手を取って部屋を出る。俺の手をきゅっと握り返してくる柔らかい感触が伝わってくる。俺は晶子の手を引いて階段を下りて行く。晶子がつんのめって転ばないようにスピードは控えめに、と。
 階段を下りてキッチンに入ると、晶子が俺から離れて冷蔵庫を開ける。そしてサンドイッチが乗った皿とベージュ色の液体が入ったコップを取り出して、テーブルの上に並べて置く。サンドイッチは店で出す量より少し少なめだ。起きるのが遅いことを考慮してのものだろうか。

「私も作ったんですよ。」
「どれを?」
「勿論、祐司さんの分のサンドイッチですよ。ミックスジュースは潤子さんのお手製ですけど、私も材料を覚えましたから味は再現出来ますよ。」

雨上がりの午後 第1266回

written by Moonstone

 俺は布団から出て身体を軽く動かす。筋肉や骨が軋む音がする。寝ていて身体が縮こまっていたのを引き伸ばす、っていう感じだ。そうするとすっかり眠気も取れる。

2003/8/20

[同人誌の作り方]
 コミケで買って来た同人誌をほぼ見終えた(CDはまだ見てないものあり)のですが、市販の本と同じ閉じ方(オフセット印刷)が当たり前のように使われてるんですよね。これってどうすれば良いんでしょう?特に小説本の場合。
 レイアウトまで自分で整えた状態で印刷所に出すものなんでしょうか?だとすると凄く面倒だな・・・。1ページの上から下まで使う方式(市販の文庫本と同じような感じ)ならまだしも、1ページで上下二段に分かれるものは、やっぱり自分でそのようにレイアウトを施した状態で印刷所に出さないと駄目なんでしょうか?
 いや、同人誌を今すぐ作るというわけじゃないんですが、今後の参考として是非知っておきたいんですよね。職場に出入りしている印刷所の営業さんに聞いた方が手っ取り早いかな・・・。何にせよ、同人誌作るのって、それなりに苦労が込められてるんでしょうね。大事にしないと・・・。

「やっぱり祐司さんは真面目な人ですね。」

 俺の耳に晶子の囁きが注ぎ込まれる。かなりの至近距離だということが、晶子の吐息が俺の耳にかかることで分かる。

「寝たふりをしても駄目ですよ。起きてるってことはばれてるんですから。」

 そこまで見抜かれても俺は尚も寝たふりを決め込む。すると俺の頬に柔らかくて温かいものが触れる。そのショックで俺は思わず目を開けてしまう。

「ふふふ。こうすればやっぱり起きますね。祐司さんは口でも身体でも嘘がつけない人だってことは分かってるんですから。」
「・・・参ったな・・・。」

 俺は苦笑いしながら上体を起こして頭を掻く。自分では上手くいってたと思っていたんだが・・・、晶子にしてみればバレバレだったらしい。本当に俺は不器用な人間だ。

「私は9時に起きたんですよ。」
「9時?晶子にしちゃ遅いな。って、昨日寝たのが遅かったから無理もないか。」
「朝食の用意は出来てますから、食べます?」
「今からだと時間的に中途半端じゃないか?」
「マスターと潤子さんも私と同じで9時に起きたんですよ。だから昼食の時間も1時ごろにする、って言ってましたから。」
「そっか・・・。なら起きるかな。」

雨上がりの午後 第1265回

written by Moonstone

 俺の頭上に人の気配を感じる。俺の顔を覆い被さる形で覗き込んでいるんだろう。俺はひたすら寝たふりをする。だが、どうしても瞼がぴくぴくと動いてしまう。夢でも見ているんだろうと思ってくれるかな?

2003/8/19

[やっぱり疲れてたのね(汗)]
 普段は薬を飲んで何時に寝ても6時ごろ勝手に目が覚める私ですが、コミケ帰りの昨日は3時過ぎに寝て起床は10時。朝食後新作の執筆を始めたんですが、昼食後(短い間隔で食事を摂るのはあまり良くないんだけど)眠気に負けて昼寝。目覚めた時にはご飯を炊く時間でした(汗)。
 夕食後「名探偵コナン」を見てから(蘭ちゃん可愛い〜)執筆を再開しましたが、3時間の昼寝による遅れは取り戻せず、後半部分に差し掛かったところで明日に持ち越すことにしました。ネット接続時間までに間に合いそうにもなかったですし、ネット切断後に執筆するつもりはないですし。
 本来は作品制作に充てる土日がコミケ参加で潰れるための穴埋めとして取った有給休暇なんですが、コミケで荷物担いで歩き回ったのはやはり相当な負担になったようです。スケジュール的には少々遅れましたが、休養には良い機会になりました。今日もお休み。一気に遅れを取り戻して作品を仕上げるぞー!・・・予定は未定って言うけどさ(爆)。
「ずっと緊張してたんですか?」
「だって相手はプロだぞ?自分の腕一本で生きてる人達に、大学の勉強の合間にギター弾いてるような俺がまともに太刀打ち出来るとはとても思えなくてさ・・・。」
「でも、祐司さんは立派に演奏を披露してましたよ。」
「緊張感があったからかえって良かったのかな・・・。何にせよ、こんなに疲れるとは思わなかった・・・。」

 そう呟いたところで意識が闇の淵に急降下していく。耳元で晶子が何か言ったような気がしたがよく分からない。晶子には悪いが、今日はもう寝させてくれ・・・。ん?何か頬に触れたような・・・。

Fade out...

 俺が再び目を開けた時、隣に晶子は居なかった。まだ少しぼうっとする頭で腕時計を−昨日外すの忘れた−見ると、10時過ぎだ。大体6時間くらい寝た計算か・・・。朝食には遅い、だけど昼食には早い、中途半端な時間に目が覚めてしまったようだ。冷房のスイッチは入れられたままだ。晶子か潤子さんが気を利かせてそのままにしておいてくれたんだろう。
 俺は上体を起こして一度欠伸をしてから目を擦る。こんな時間に降りていっても迷惑になるだけだな。まだ少し眠気が残っているのを利用して二度寝と洒落込むか。俺は再び横になって掛け布団を被り、目を閉じる。
 トントントン・・・と階段を上ってくる−音が近付いてきてるから上がってきていると分かる−音が聞こえて来る。そして廊下を歩いてくる音が近付いてくる。晶子か潤子さんが様子を見に来たんだろう。俺は寝返りを打ってドアにセを向け、目を閉じたまま耳に意識を集中させる。
 少しだけドアが開く音がする。まだ俺が寝ていると踏んでいるんだろう。足音は板を踏む音から畳を踏む音に変わり、俺の枕元に近付いてくる。出来るだけ足音を立てないようにしているのが分かる。寝たふりをしていることにちょっと罪悪感を感じる。

雨上がりの午後 第1264回

written by Moonstone

「殆ど休まずにプロの人達に混じって遜色ない演奏をするから・・・。私、凄いなぁ、って思いながら見てたんですよ。」
「そう聞こえたなら演奏した甲斐はあったかな・・・。緊張しっ放しだったけど。」

2003/8/18

[コミケ顛末記in2日目(正確には3日目)]
8/17付更新ができなかったことを深くお詫びします(_ _)。
詳細はトップページのニュース速報をご覧下さいませ。
 さて2日目。お目当てのサークルは1日目の倍以上。しかもコミケは最終日のこの日が一番混雑する(らしい)ので、アラームを6時にセットしたのを(出来るだけ早く乗り込むため)確認して例によって例の如く薬を飲んで就寝。そして目覚めた時、眠気眼で枕元のとけいを見たら・・・8時ぃ?!(@_@)アラームは6時にセットした筈。どうやら設定違いでアラームが鳴らなかった模様。どれがアラームのボリュームだか明記しとけよ(怒)。でもぐっすり眠れたなぁ。8時間近く連続で眠れたなんて、何ヶ月ぶりだろ?
 こうして2時間遅刻となったことで頭の中で何かが切れ、「もう遅れたんならしゃあないわ。さっさと朝飯食って行く準備しよっと。」とポジティブに思考転換(良いのか?)。宿泊先にあるレストランで朝食をまったりたっぷり食べて(バイキング形式)荷物まとめて料金払っていざ出発。電車乗り継いで(だから、丸の内線まで長距離歩かせるのを何とかしろよ、JR(怒))ビッグ際と最寄の駅に到着。電車乗り過ごして後戻りしたため時間ロスしたのは内緒(にならないじゃねえかよ)。
 あれ?混んでることは混んでるけど、昨日みたいに会場前を1周させられるようなこともなく、待ち時間30分程で会場入り出来たぞ?どうやら遅刻したせいで混雑のピークを過ぎていた模様。まあ、会場は昨日にも増して大混雑でしたが、これは当然ですね(^^;)。
 で、お目当てのサークル周り。今日も昨日と同様東館と西館の両方にお目当てのサークルが点在するということで、手近なところから手早く巡回。ネットでのページ巡回に組み込んでいるサークルでは、「今度(ページに)ご挨拶に伺いますので。」などとご挨拶(早速行きます(汗))。約4年ぶりの再会、約3年ぶりの再会というサークルでも無事ご挨拶。お相手が私のことを覚えていてくれたのは感激でした。
 しかし、良いことばかりではないのは遅刻したため必然的。買いたかったサークルの出展物が完売になっていたことが数回。特にあるサークルは私が最近注目しているページのサークルということで期待していたんですが・・・。やっぱり知名度が上がると売れるのも早いのね(溜息)。長時間会場前を引っ張りまわされるのは避けられたから、それと引き換えと考えるべきですね。
 長時間並んだサークルがあったのもあって、予想より長く会場に居ましたが、お目当てのサークルの出展物は大体入手出来たので、満足して会場を後にして新幹線の切符を買うべくみどりの窓口へ。帰りはのんびりグリーン車で、と思って指定したら
指定席が満席だとぉ?!(驚愕)
 おいおい、何で「こだま」で(ああ、悲しや)指定席が満席なんだ?!・・・そうか。帰省ラッシュというやつに重なったんだな。コミケは混雑、新幹線も混雑、ああ、何で日本はこんなに人が多いんだぁ!(勝手な奴)でも、東京から座れたのでまあ良いか。新幹線内ではCDを聞きながら(ポータブルプレイヤー持参)今日購入したCD以外の出展物を読破。イラスト関係だけあって直ぐ読めました。しっかし皆さん、どれも絵が上手いなぁ〜(感嘆)。

 ・・・で、無事帰宅してこのお話をしています。全てひっくるめて4万円以上散財しましたが、楽しかったです。何時か自分もコミケに出展するぞ!・・・って何時になることやら(^^;)。
 今日から通常の生活に戻ります。まあ、今日明日と休暇取ってるんですけど、作品制作と買出しで終わるな。これじゃ普通の週末と一緒だ(^^;)。気持ち切り替えて頑張りまーす!休み明けたら出張だーい!(泣)

雨上がりの午後 第1263回

written by Moonstone

「はい。それじゃお休みなさい。」
「お休み。」
「お休みなさい。ゆっくり休んで頂戴。」

 俺がキッチンを出たところで、背後でガタガタと音がしてなにやらやり取りが聞こえた後、晶子がやって来る。俺が寝ると言ったことで、自分も行かないと、と思ったんだろう。

「何も俺に合わせることないんだぞ。」
「私も眠くなってきたからです。」

 晶子はそう言うが、さっきの物音ややり取りを聞けばそれが真っ赤な嘘だということは明らかだ。まあ悪い気はしないし、結構可愛いところがあるんだな、と再認識させられる。
 背後からマスターと潤子さんの冷やかしは飛んでこない。俺達が深い関係になっていることが分かった以上、今更冷やかしてもつまらない、とでも思っているんだろうか。俺は晶子と手を取り合ってキッチンを出て廊下を歩き、階段を上っていく。
 2階に辿り着いたところで手を離そうとするが、晶子が手を離そうとしない。何だ?・・・まさか今からしたい、なんて言い出さないだろうな?物音を立ててしまう・・・否、それ以前に俺が眠くてまともに相手できる状態じゃない、って、それより前に場所が悪い。

「どうしたんだ?」
「一緒に寝ませんか?」

 晶子のストレートな誘い−と言うんだろうか−に、俺はドキッとする。やや上目遣いの晶子を見ていると、拒否する気が失せてくる。というか、拒否すると悪い気がしてならない。この仕草は反則だよなぁ・・・。

「ん・・・良いよ。寝るのはあっちで良いか?」
「はい。」

 晶子が了解したことを受けて、俺は自分の寝る部屋−これまで泊まり込みの度に自分に割り当てられた部屋だ−に晶子の手を引いて向かう。ドアを開けると多少熱を帯びた空気が漏れてくるが、思ったほど暑くない。晶子がドアを閉めたところで、俺は枕元に置いてあるリモコンを手に取って電源ボタンを押す。エアコンが微かな振動音を立てながら動き出し、次第に心地良い冷気を吐き出してくる。
 俺はベルトを緩めて−別に変な意味があるわけじゃない−掛け布団を捲る。俺が右寄りの位置に横になると、晶子がその隣に入ってくる。冷房が効き初めて来たかな、という空気を感じながら、俺は掛け布団をかけて横になる。その途端に晶子が擦り寄ってくる。本当に猫みたいだ。俺は晶子の頭を抱き寄せて自分の肩口に乗せる。

「今日の祐司さん、カッコ良かったです・・・。」

 晶子の囁きが耳に潜り込んでくる。眠りの世界に半ば吸い込まれていた俺は、急に現実世界に引き戻される。

2003/8/17

[コミケ顛末記in1日目(正確には2日目)]
 先日の日記での公約(?)どおり、私は徹夜して霧雨が降る早朝の静かな家を出て駅へ向かいました。時間に余裕を持ち過ぎたため、予定していた電車より1本早い電車に乗車。そして最寄の新幹線の駅に駆け込み(時間間隔が短い)切符を買ってホームへ。そこでまず驚き。
何でこんなに人が居るんだぁ?!(驚愕)
 早朝の新幹線だから空いてるだろう、と思っていたんですが、見事に予想を裏切る大混雑。しかし、私は一駅過ぎたところで幼子連れの女性の厚意で席を空けてもらって東京まで座ることが出来ました。名も知らぬ貴方、どうもありがとうございました(_ _)。
 そしてゆりかこめの混雑と長時間の乗車を避けるつもりで新木場からりんかい鉄道に乗車して国際展示場前駅で下車したら・・・大雨(汗)。なのに大混雑(大汗)。譬え雨だろうがコミケに来るとは、恐るべしっ!(言える立場かよ)
 鞄が濡れるのを気にしながら列に混じってのろのろ歩くこと約1時間。何と会場(ビッグサイト)前をぐるりと一周させられていたことに愕然。幾ら混乱が怖いからって、「こんなに歩き回らせるなー!(怒)どっちみち中は混んでるんだからとっとと中に入れろー!(激怒)」と心の中で叫んでました。
 ようやく入場。まずは東館でお目当てのサークルを回りました。エヴァの他、CCさくらの同人誌やCD(洒落にならないボリュームとのこと)を購入。続いて西館でやはりお目当てのサークルを訪問&暫し懇談&大人買い(笑)。しかし、私はここで重大な問題に気付きました。
私の鞄に入り切らないー!!(絶叫)
 そうです。荷物を最小限に抑えるため、小さい鞄しか持っていなかったのです。ノートPCを入れている鞄には入る筈がない。このまま鞄からはみ出た状態で雨が降る外に出られる筈がない。しまったー!どうすりゃ良いんだー!と頭を抱えていたところに目に入ったのが、西館の同人誌制作グッズ売り場で売っていた防水加工の大きな袋。値段も安かったので(300円)迷わず購入。そしてこの日買ったものをその袋に入れ替え、再び東館に移動して、1回目は混雑で本を見れなかったサークルの様子を見に行ったんですが、混雑が酷いし特に欲しい、というものでもなかったのであっさり撤退。会場から出て電車を乗り継ぎ、ホテルに辿り着いて直ぐにPCに向かって今日の更新準備を整えました。あ、そう言えば・・・。
丸の内線はどうしてあんなに歩かなきゃならんのだ?!(激怒)
 長い廊下をひたすら歩かされましたよ。いっそ東京駅に「東京駅内丸の内線駅」(仮称)を作って電車で移動させてくれ、頼むから。ま、歩き慣れてるからまだ良かったものの、車生活だったら絶対根を上げてたな(^^;)。
 さあ、今日は最終日。内容からして更なる混雑が嫌でも予想出来ます。果たして無事会場入り出来るのか?お目当てのサークルの販売物は入手出来るのか?この顛末記は明日付の日記に続く!乞うご期待(するかな?)

雨上がりの午後 第1262回

written by Moonstone

 緩やかな沈黙の時間が流れていく。マスターも潤子さんもあれこれ俺に言うことで混乱させたり急かしたりするつもりがないんだろう。俺としてもその方がありがたい。ちょっと温(ぬる)くなってきた麦茶をちびちびと飲みながら、ぼんやりと将来を考える。本当にどうしたら良いんだろう?あくまで自分中心でいくか、親や晶子のことを多少なりとも考えるべきか・・・。難しい問題だな、なんて暢気に構えていられる時間も限られている。本気で考える時間を持った方が良さそうだ。今日は多少覚めたとは言え眠気がかなり強いから止めておいたほうが良いだろう。眠気でボケた頭で考えたところでよい結論が出せるとは思えない。

「お待たせしました。」

 晶子がキッチンに戻って来る。茶色がかった髪がしっとりとして、光沢を帯びて一部が頬にくっ付いているのが何とも艶っぽい。晶子が俺の隣に座ると、潤子さんが晶子の前に置いてあった空のコップに氷と麦茶を入れて再び晶子の前に置く。晶子はいただきます、と言って麦茶の入ったコップを傾ける。

「遅くなってすみません。」
「祐司君とは正反対ね。晶子ちゃんは髪が長いから、洗ったり拭いたりするのに時間がかかるから余計そうなるんだろうけど。」
「髪が長いと色々出来るんですけど、手入れに時間がかかるのが難点なんですよね。」
「晶子ちゃんもやっぱりそう?私もそうなのよ。特に拭くのに時間がかかるのよね。」

 俄かに晶子と潤子さんが髪談義で盛り上がる。二人共髪が長いのが特徴なんだが、それ故に抱える問題も同じだと分かると尚更親近感がわくんだろう。俺も髪を伸ばしてみようか、と以前思ったことがあるが、想像してみるとどうも似合いそうにないし、洗うのが鬱陶しそうで止めにしたことがある。男のロングヘアーは一部の例外を除いて似合わないことが殆どだし。
 風呂に入って落ち着いたせいか、眠気がまた強くなってきた。俺は麦茶を飲み干して氷を噛み砕いて紛らわせようとするが、氷を噛むこと自体がかったるくなってきた。こうなるともう大人しく寝るのが一番だな。俺はごちそうさまでした、と言って空になったコップを置いて席を立つ。

「眠いんで先に休ませてもらいます。」
「部屋は何時ものとおりね。布団は敷いてあるから。あと、冷房は付けっ放しで構わないわよ。」

2003/8/16

[さあ、コミケへGO!]
 昨日から東京ビッグサイトで始まっているコミックマーケット、通称コミケ。私は久しぶりに会場に乗り込みます。とはいっても出展ではなく、お目当てのサークルへ行ってブツを買うだけです(前にも言いましたよね?)。
 問題は当日の天候。私は事情があって朝早くから並ぶつもりなのですが(会場前で徹夜する人もいらっしゃるそうで)、当日雨に降られると必然的に傘を差さねばならず、同じく傘を差すであろう周囲とぶつかり合って鬱陶しいんですよね。ガンガン陽射しが照り付けるのもちょっと御免ですが(私は肌が弱いので日焼けすると火傷のようになる)、雨に比べればまだましです。
 このお話をお聞きいただいている頃には、久々に徹夜していることでしょう。私が住んでいる地域から朝早く東京入りするためには薬を飲んで睡眠、としていては到底間に合わないので徹夜をして早々に家を出なければなりません。Uターンラッシュで混んでなきゃ良いんだけどな・・・(汗)。明日の更新は宿泊先から行いますので、お楽しみに!(特に何かあるわけじゃないけど(爆))
 意地か・・・。俺に一番欠けているのはそれかもしれない。自分がこう、と決めたことを貫き通すことがなかなか出来ない。その典型が晶子との付き合いだ。まあ、あれは幸いにも上手くいったから良いんだが。

「腰を落ち着けることにしたのは、潤子と結婚してからだよ。ミュージシャンとして生き続けるのも一つだが、潤子と一緒に過ごせる時間を多く持ちたいっていう気持ちの方が強くなってね。それに音楽と親しめる喫茶店を持ちたい、っていう夢もあったし、潤子もそれに賛同してOL辞めて調理師の免許取ったからな。明達には反対されたけど、結局は温かく見送ってくれた。」
「・・・良いですね。二人の意思がぴったり重なり合ってて。」
「祐司君も井上さんと将来について話し合う時間を持つべきね。今回のコンサートを一つの契機にして、そろそろ自分の進む道を決めた方が良いんじゃないかしら?道を決めるのに早いに越したことはないわよ。」
「そうですね・・・。」

 俺は呟くように応えて、残りの麦茶に口を付ける。確かに俺も気付けばもう3年生。研究室に仮配属になり、先生達の口からも「就職」の二文字がちらつくようになってきた。決して遠い将来のことじゃない。日に日に現実味を帯びて生きている切実な問題だ。
 俺と晶子は時々将来について話し合う。だが、晶子はあくまで俺をサポートする形での選択をすると言う。晶子の将来なんだから晶子はもっと自由に決めても良い筈だ。俺がそう言うと、決まって晶子は「パートナーを支える形も一つの生き方ですよ」と言う。桜井さんが言っていたことが重なる。
 確かに今回のコンサートは一つの契機になるだろう。言い方は悪いがこれで弾みをつけて音楽の道に飛び込むのか、あくまで堅実な−これも適切な言い方じゃないが−道を進むのかをそろそろ決めるべきだろう。選択によっては親との軋轢が生じるだろう。それを承知で音楽の道に進めるのか?幾ら自分の人生だからといっても、大学にまで通わせて貰っているという負い目−これも表現が悪いが−もある。俺の選択次第で晶子の将来まで決めてしまいかねない以上、俺が責任を持って自分の進む道を選択する必要があることに間違いはない。

雨上がりの午後 第1261回

written by Moonstone

「そりゃ不安もあったさ。でも、ミリンダさんと知り合って演奏場所と報酬を用意してもらったり、俺と同じように高卒で直ぐに音楽の道に飛び込んだ明とかと知り合って一緒に演奏するようになって・・・。俺は恵まれてたな、本当に。それに、自分で決めたことだから必ず自分でやっていく、っていう意地もあったしな。」

2003/8/15

[15年侵略戦争終結の日にあたって]
 今日は一般には終戦記念日と言います。しかし、これは加害者としての立場を無視した呼称です。日本は朝鮮を武力と威圧で植民地にし(江藤元総務庁長官が「国連も承認した」と暴言を吐きましたが、その当時国連はおろか国際連盟も存在しません。歴史を知らない、或いは無視している証拠です)、中国に満州国という傀儡政権の国を建国し(満州事変自体が謀略事件であり、満州国は合法的なものではありません)、アジア各地に侵略し、約2000万人にも及ぶ犠牲者を出しました。
 近年、あの戦争を合法化する見方や美化する右翼反動的な動きが顕著ですが、これらは日本を再び戦争する国に導く有事法制やイラク特別措置法案などの一連の自衛隊海外派兵の動きと連動しています。侵略戦争を「解放」「自衛」などと正当化、美化するのは、まさに大量破壊兵器存在の証拠すら怪しく、国連決議もないまま「イラクは脅威」と決め付け、「イラク人民解放」を謳ってイラク攻撃に踏み切ったアメリカやイギリスと同じではないでしょうか。
 確かに日本はアメリカのソ連への軍事的優位を誇示するための生贄として、広島と長崎に原子爆弾を投下され、多大な犠牲者を出しました。しかし、そんな犠牲ばかり生み出す野蛮な侵略戦争に政党として唯一反対した日本共産党や治安維持法の犠牲になった民主的な人々、そして日本の侵略戦争の犠牲になったアジアの人々に対する真摯な謝罪が必要です。私はこの日をあえて「15年侵略戦争終結の日」と呼称し、戦争犠牲者に対する謝罪を表明し、戦争非協力、右翼反動策動反対を宣言します。
「ええ・・・。」
「今日の連中みたいな、ジャズバーなんかを点々と回る、言い方は悪いが裏街道を歩くミュージシャンも居れば、CDを出してこれも表現としてはあまり正しくないが、表街道を歩くミュージシャンも居る。そのどちらが良いか、ってことはどうかな?」

 難しい質問だな・・・。マスターの言う表街道を歩くミュージシャンは人に大なり小なり名前を知られる存在になる可能性があるが、事務所やレコード会社との契約や何やらで束縛されるだろう。逆に裏街道を歩くミュージシャンはある程度の自由と引き換えに、不安定な収入を余儀なくされるだろう。どっちが良いとも言えないし、まだそこまで考えていないというのが正直なところだ。

「ああいうスタイルも良いかな、とは思うんですけど、CDを出すようなミュージシャンへの憧れもありますし・・・。まだどちらが良いか、てことは断定出来ないです。」
「ふむ・・・。祐司君は随分慎重だな。それが井上さんとの付き合いにも表れてるみたいだが。」
「自分の将来のこととなれば尚更よ。祐司君の親御さんだって、折角息子を4年間、しかも名立たる新京大学に通わせたのに、それとはまったく関係のない道を進む、それも世間様で言うところのまともな職業に就かないって聞いたら、恐らく何らかの軋轢が生じるわよ。その点、貴方は恵まれてたけど。」

 潤子さんがマスターの前にあった空のコップに麦茶を注ぐ。

「まあな。高校出てからサックス一本で生きて行くんだ、って宣言して田舎を飛び出したからな。俺の場合。親も半ば説得を諦めてたし、説得したところで俺が言うことを聞く人間じゃないって分かってただろうから。」

 へえ・・・。マスターは高校卒業してから直ぐに音楽の道に飛び込んだのか。どうりで玄人裸足の腕前なわけだ。そう言えばあの店のママさんのミリンダさんがマスターとは20年来の付き合い、とか言ってたな。でも、18歳かそこらで右も左も分からない世界に飛び込むなんて、勇気があるなぁ・・・。

「マスターは怖くなかったんですか?」
「何が?」
「自分の腕一本で未知の世界に飛び込んで生きていけるのか、って。」

雨上がりの午後 第1260回

written by Moonstone

「まあ、明の家庭は子どもが居ても上手くやっていってるモデルケースだからな。それが必ずしも君と井上さんにぴったり当てはまるとは限らない。ライフスタイルやそれに対する考え方なんて、それこそ十人十色だからな。」

2003/8/14

[憧れの存在]
 私は長男で、弟が一人居ます。親戚中で一番遠いところに一人で住むようになって早約10年。そんな私にも憧れの存在があります。おおっ、とうとう色気も素っ気もないこのトークに色恋沙汰か、と思われたかもしれませんね(笑)。
 私にとって憧れの存在。それは「姉」です。そこの貴方、がっくりしませんでしたか?(笑)実のところ、私の姉への憧れ歴はかなり長くて、身長が今の半分ほどしかない頃から姉が欲しい、と思い続けてきました。それは憧れの内容は変わっても(昔は単に姉が欲しい、という願望だけでしたが、高校生ぐらいから自分の話し相手になってくれる、人に自慢出来る美人の姉が欲しい、と具体化してきました(笑))、今尚続いています。
 綺麗な黒髪を微風に靡(なび)かせつつ、「○○○(私の本名)、最近どう?ちゃんと生活してる?」なーんて言われたら、譬え仕事が手につかないくらいの絶不調でも「うん。心配要らない。」って答えちゃいますね〜(爆)。何処かに黒髪が綺麗で性格の良い姉が落ちてませんかね〜。・・・大丈夫か?私(笑)。
 最後に業務連絡。65535人目のリスナーの方は、是非メールか掲示板JewelBoxでご一報願います。ご協力いただいて企画物をやりたいと思います。
「はい。分かってます。」
「それと、祐司君は結構節度があるみたいだからあんまり心配要らないと思うけど、やっぱり身体だけの関係にはならないでね。結婚してからならまだしも、婚約もしてないのにただセックスするだけの関係になったら、もう動物と同じよ。ううん。動物は発情期しかしないから、動物以下かもしれない。」
「その辺は弁えてるつもりです。」
「祐司さんとそんな関係になりたくないですから。」
「ま、君達二人ならそんなに心配は要らんか。くれぐれも避妊には注意するようにな。」
「「はい。」」
「じゃあ晶子ちゃん、お風呂入ってらっしゃい。」
「はい。」

 晶子が俺の横を小走りで駆け抜けていく。俺は晶子が座っていた席の隣の椅子に腰を下ろす。潤子さんがコップに麦茶を注いで、氷を幾つか入れて俺の前に置いてくれる。俺はいただきます、と言ってからコップの麦茶をくいと飲む。独特の香りと味が喉を通り抜けていく。風呂上りだけに爽快だ。

「祐司君。どうかな?ミュージシャンになるイメージは掴めたかい?」

 俺がコップを置いたところでマスターが話し掛けてくる。今日は桜井さんの口から初対面にも関わらず突っ込んだ話が聞けた。そして家族としてのライフスタイルに固定概念は禁物だということも分かった。とても有意義だったことには間違いない。
 ただ、自分が桜井さんのような立場になったらどうなるか、どうするか、まではまだいまいち実感が湧かない。果たして晶子はミュージシャンの俺との生活をどう思うのか、幾ら自分自身夜行性とは言え、生活のために小宮栄まで殆ど毎日夜に出かけて朝に帰る生活が出来るのか、まだよく分からない。

「桜井さんの話で生活の様子はよく分かりましたけど、自分がそうなったらどうなるか、どうするか、ってところまではいまいち実感が湧かないです。」

雨上がりの午後 第1259回

written by Moonstone

「まあ、二人共大学生だし、そこまで関係が深くなっても別に不思議じゃないけどね。ただ、前にも言ったと思うけど、子どもを出汁にした関係にはならないでね。親は子どもを選べても、子どもや親を選べないんだから。」

2003/8/13

[FLASHムービー作りたい]
 私が巡回コースに組み入れているページで、自分のページを紹介するFLASHムービーを公開していたので見たんですが、「FLASHってこんなことまで出来るのか」と思わせられる見事なものでした。センスの問題もあるんでしょうけど。
 私も自分のページを紹介するFLASHムービーを作りたい、と前々から思っていて、FLASHのソフトそのものも持っているんですが、使い方がまったく分からず、それに分かるまで勉強している時間などあるはずもなく(平日の空き時間は連載のストックを増やしてます)、インストールしたまま化石化してます(爆)。こういうのを宝の持ち腐れ、って言うんでしょうね。
 私が見たFLASHムービーを作った方の話では、FLASHムービーを簡単に作れるソフトがあるのだとか。実際に買うとそれなりに値が張るのですが、FLASHが簡単に作れるなら一度試してみようかな、とも思ってます。まあ、私が作ったところで大したものが出来るとは思えないんですけどね(苦笑)。
 晶子の言葉でキッチンの時間が止まる。・・・俺の身体の硬直が解けるのとほぼ同時に、マスターと潤子さんが目を輝かせて俺と晶子を交互に見る。晶子の奴、自分で二人分の墓穴掘ってどうするんだよ・・・。俺は溜息を吐いて右手で顔を覆う。

「え?何々?晶子ちゃん、祐司君ともうそこまで進んじゃったわけ?」
「ほほう。祐司君も奥手な風で意外にやるねぇ。」
「・・・。」
「え、あ、あの、その、何て言うか・・・。」

 指の隙間から、晶子が頬を紅くしてうろたえているのが見える。今更うろたえたところでもう遅い。俺達の関係の深さが完全にばれてしまった。それも墓穴を掘るという最悪の形で。もう何をどう弁解しても通用しないのは火を見るより明らかだ。

「ちゃんと避妊してる?」
「・・・一応安全日にしてますから。それに・・・今までそういうことしたのは3回ですし。」
「3回?何だ、異常に少ないな。何か事情でもあるのか?」
「いや、別に事情があるわけじゃなくて、双方のタイミングが一致した時だけにしてたらそうなっただけですよ。」

 言い訳が通用しないと悟った俺は晶子に代わって説明する。何か特別な状況になった時しかしてないこと。俺の方から求めることはしてないこと−晶子の方に女特有の事情があるし−。身体だけの関係にならないように注意していること。した時の状況やその時の回数−そこまでは覚えちゃいないが−以外は洗いざらい吐き出した。どう誤魔化そうが通用しない以上、説明すべきことはきちんと説明しておいた方が良いだろう。

雨上がりの午後 第1258回

written by Moonstone

「晶子ちゃんが居る前で妙なこと言うんじゃないのっ!」
「痛・・・。相変わらず強烈なツッコミだな。」
「ゆ、祐司さんは早くないですよ。十分満足させてくれるんですから。」

2003/8/12

[広げた風呂敷を畳むこと]
 今、私はこのページで主要な連載を4つ抱えています。その中でもオリジナルの「Saint Guardians」と此処で連載中の「雨上がりの午後」は予想をはるかに上回る規模になって(「魂の降る里」も凄まじい規模になってますが)、特に「雨上がりの午後」は連載1000回を突破して久しいというのにまだ折り返し地点にも到達していません。
 単なる大学生の恋愛ストーリーで終わらず、祐司君と晶子ちゃんの将来に向かって話が進んでいますから(勿論想定済みですが)話が広がって当然なんですが、果たして何処まで風呂敷が広がるのか、話の展開は考えてあってもどれだけ書かなければならないのかはまったく想像がつきません。
 連載2000回を迎えるのは約3年後。それまでに風呂敷を畳めるのかどうかもかなり疑問です。でも、広げた風呂敷は何れは畳まなければいけません。それが祐司君と晶子ちゃんをこの世に送り出した私の責任です。その時までお付き合いくだされば幸いです。2000回突破したら笑ってやってください(笑)。
 キッチンに入ったところで、晶子は椅子に腰掛け、俺は風呂場へ向かう。幾らステージに上がった回数が違うとは言え、晶子もこんな時間まで起きていたら眠くない方が不思議だ。さっさと汗を流して上がるのが賢明だな。
 俺は風呂場に隣接する脱衣所でさっさと服を脱いで風呂に入る。身体を洗うスポンジも俺と晶子それぞれの分が用意されていたりする−クリスマスコンサート前の泊まり込みで風呂に入るからな−。最初に髪を洗って、次に汗でべたついた感のある身体を洗う。手早く洗って湯で泡を洗い落としてさっぱりしたところで湯船に浸かる。そこで思わず溜息が出てしまうのはご愛嬌。
 まったく凄まじい一日だったな・・・。これが大学のある日だったら風呂なんてどうでもいいから兎に角寝させてくれ、と言うところだろう。否、そこまでいく以前にぶっ倒れてるかもしれない。俺ってあんまり体力ないよなぁ・・・。こういう状況でつくづくそれを実感する。もっと体力つけないと、ジャズバーで演奏なんてやってられそうにないな、こりゃ。
 さて・・・。あまり晶子を待たせるわけにいかない。そろそろ上がるか。烏の行水そのものだが、晶子のことが気になって仕方ない。俺は風呂から上がるとこれまた予め用意されていたバスタオルでさっさと身体に残った水滴を拭い、服を着る。服に汗が染み込んでいるのがちょっと嫌だが、泊まらせてもらう上に風呂まで用意してもらったんだから文句は言えない。
 水分を吸ってしっとりした髪を手櫛で適当に整えながらキッチンに入ると、晶子がマスターと潤子さんと談笑していた。ほっとすると同時に、何を話していたのか気になる。

「祐司君、もう上がったの?相変わらず早いわね。」
「昔から烏の行水ですから。」
「ベッドの上で早いのは、彼女を満足させられんぞ。」

 何?!と思った次の瞬間、潤子さんがマスターの頭を引っ叩く。こういうシーン、前にもあったような・・・。

雨上がりの午後 第1257回

written by Moonstone

「私、キッチンで待ってますから、上がったら呼びにきて下さい。」
「分かった。」

2003/8/11

[結局昨日も・・・]
 一日殆ど寝っ放しでした(爆)。まあ、まだ一昨日より小説の執筆が出来たんですが、その量は知れたもの。2日間寝っ放しで逆に疲れないか、と思われるかもしれませんが、寝てたら時間なんてあっという間に過ぎていくものです。
 コミケまであと1週間を切りました。コミケには出来るだけ早く乗り込みたいので相当早起きをしなければならないのですが、果たしてこんな状況でまともに起きれるのか怪しいものです。
 そう言えば、モジュラーケーブルの準備がまだだったな・・・。まあ、電話とモデムを繋いでいるケーブルを引っこ抜いて持っていけば良いか。何だか当日になって「行くの面倒」なんてことにならないか、今から不安です。
「そうですか・・・。俺もどっちかというと夜行性なんですけど、疲労感が・・・。」
「バイトやってから機材の搬入に演奏で殆ど出ずっぱりだったからよ。こんなこと初めてでしょ?」
「え、ええ。」
「慣れないことやって、それも肉体的にも精神的にも疲れることをずっとやったんだから疲れを感じて当然よ。今日はゆっくり休みなさい。」
「はい。そうさせてもらいます。」

 疑問が払拭された俺は、晶子と共に店の奥に向かう。風呂に入る順番はじゃんけんでも何でも良い。生憎だがまだ一緒に入る勇気はない。ベッドの上と風呂場じゃ雰囲気的にも全然違うしな・・・。

「祐司さん、先に入ってください。」

 欠伸をしながら廊下を歩いていると晶子が言う。そう言えば晶子はあまり眠そうな素振りを見せない。ステージに上がった回数が全然違うとは言え、こんな夜遅くまで起きていて眠くないんだろうか?

「晶子は眠くないのか?」
「多少眠いですけど、少なくとも祐司さん程じゃないですよ。ステージに上がった回数そのものが違いますし、私は手ぶらですけど祐司さんはそれなりに重みがあるものをぶら下げて演奏してたんですから、祐司さんの方が圧倒的に疲れてる筈ですよ。だから先に入ってくださいね。」
「・・・悪いな。」

雨上がりの午後 第1256回

written by Moonstone

「私はどちらかと言えば夜行性だから。お店開ける時なんか、欠伸ばっかりしてるわよ。マスターは夜行性が根付いているし、私もそうだけど今の生活リズムに慣れちゃったから多少夜遅くなっても平気よ。」

2003/8/10

[寝っ放し]
 昨日は起床してから朝食を摂ったは良いものの、外は台風接近で大荒れ。こんな中で買い物に行くほど勇気はありません。じゃあ小説執筆でも、と思ったんですが、どうにもやる気が起こらず、結局1日寝てました。
 睡眠不足というわけでもないんですがね・・・。まだ持病が完治してなくて、緩やかな波を描いているということが良く分かります。ネット接続もまた遅刻するし、やる気のなさはかなり深刻です。
 今日はどうかな・・・。少なくとも買い物に行かないと食料が底をつくので行かざるを得ませんが、小説は書かなくても済みますからね。やる気のなさに任せてまた一日寝っ放しという可能性も無きにしも非ず。困ったものです。

「潤子さんって、男の人の扱いに慣れてますね。」
「祐司君みたいな実直なタイプは、ね。」
「おいおい。それじゃ俺が捻くれ者みたいじゃないか。」
「そうじゃない、って言い切れる?」
「勿論。健全健康な四十路男だ。」
「晶子ちゃん。こういう自称健全の男の人には注意した方が良いわよ。」
「潤子ー。」
「あら、怒っちゃった?」
「結構来るものがあったぞ。」

 そうは言うものの、マスターと潤子さんの顔には笑みが浮かんでいる。流石は夫婦。冗談と本気を区別する余裕ってものがあるな。俺と晶子がこの境地に到達するにはまだまだ時間がかかりそうだ。特に俺の方が。

「さ、祐司君と晶子ちゃんはお風呂、お風呂。私達はその次入るから。」
「・・・マスターと潤子さんは眠くないんですか?」

 俺は聞きたかったことを尋ねる。過去にジャズバーで夜行性生活を送っていたであろうマスターは兎も角、潤子さんはマスターと結婚する前は普通のOLだったという。だから少なくともマスターほど夜行性じゃない筈だ。なのに今日はこんな時間まで−さっき時計を見たら4時を過ぎていた−起きていて眠くないんだろうか?そう思っていた俺に、潤子さんはけろっとした顔で言う。

雨上がりの午後 第1255回

written by Moonstone

 言葉に詰まった俺の顎を、笑みを浮かべた潤子さんがさっと撫でる。完全に子ども扱いだ。潤子さんには敵わないな・・・。俺は思わず苦笑いしてしまう。

2003/8/9

[長崎原爆記念日にあたって]
 今日は58年前に長崎に原子爆弾が投下された日です。被爆者は年々高齢化し、原爆の後遺症はその身体を蝕み続けています。核兵器は希代の残虐兵器であり、二度と使用されてはならない兵器です。
 しかし、ブッシュ米政権は「使える核兵器」開発を目論み、非核兵器保有国を含む7カ国を名指しして核兵器使用を選択肢に含んだ先制攻撃論を平気で展開しています。大量破壊兵器の脅威を口実に侵略戦争を強引に推し進める一方で、自分は究極の大量破壊兵器を持って憚らない。こんな矛盾は許してはなりません。核兵器に「使える」も何もありません。
 核兵器も戦争もない真の平和を手にするには、世界の人々が声と力を結集し、ブッシュ米政権やそれにへこへことつき従う小泉政権を追い詰め、退陣させなければいけません。二度と核兵器による犠牲者を出さないためにも、我々は声を大にして叫び、行動しなければなりません。
ノーモア・ヒロシマ!ノーモア・ナガサキ!ノーモア・ヒバクシャ!
機材はしっかり重めのものが残されている。俺はシンセサイザーが入ったハードケースを両手に持って開け放たれている勝手口から店内に入り、先にステージに上がってスタンドを組み立てていた潤子さんの作業が終わったところでシンセサイザーを取り出して所定の位置に置く。
 その足でギターを取りに戻ろうとしたが、晶子がソフトケースに収められたアコギとエレキ両方を持って来てくれた。俺は晶子が手に持っているエレキを受け取ると−アコギの方は背負っているから大丈夫だと言って譲らなかった−、再びステージへ向かう。
 俺と晶子は、これも潤子さんが組み立てたと思う専用のスタンドにギターを並べて立てかける。マスターは二つのサックスをとっくに搬入していたらしく、シンセサイザー周りの配線をしている。マスターは潤子さんの協力を得て、手早く配線を元に戻していく。機材の搬入やセッティングに慣れているあたり、年期の違いを感じさせられる。

「よし、完了だ。皆、お疲れさん。」

 配線を終えたマスターが言う。その一言で一時的に吹き飛ばした眠気がまた戻って来る。だが、車中で晶子の肩を借りて寝たせいか、それほど強烈なものじゃない。黙っていればばれない程度のものだ。一日を終えて、さあ寝るか、という状況とほぼ同じだ。

「お風呂の準備は出来てるから、祐司君と晶子ちゃん、先に入っちゃって。」
「はい。ありがとうございます。」
「何なら一緒に入っても良いのよ。」
「じゅ、潤子さん?!」
「あら、まだそこまで進んでないの?祐司君って結構奥手なのね。」
「いや、奥手とかそういう問題じゃなくて・・・。」
「じゃあ、どういう問題?」
「そ、それはその・・・。」

雨上がりの午後 第1254回

written by Moonstone

 俺は一度深呼吸をして眠気を一時的に追い払うと、ドアから車外に出て荷物の運搬に加わる。

2003/8/8

[遅刻の理由]
 最近、更新時刻が遅くなっています。楽しみにされている皆様(居るか?)にはご心配とご迷惑をお掛けしています。理由は単純。居眠りしてネット接続そのものを遅刻しているせいです(爆)
 別に居眠りしようと思っているわけではないのですが(薬使わなきゃろくに眠れん人間が居眠りするのもおかしな話だ)、適度に効いた空調の心地良さに何時の間にか眠ってしまう、という状態です。
 大本を辿れば、異常に疲れやすい身体が原因なんですがね。極端な話、階段の上り下りだけでも荷物を持ってダッシュで上り下りするのと同じくらい疲れますから、何かするたびに1時間程度の休憩が必要なんです。その休憩の方法でもっとも良いのが睡眠なのですが、ネット接続直前に居眠りしちゃいけませんよねぇ。出来るだけ寝ないように注意します。
「おっ、井上さんの肩枕か。祐司君、ありがたくその厚意を受け取っておきなさい。」
「・・・そうします。」

 ここでじたばたしても始まらないし、晶子の厚意を足蹴にするようなものだ。俺は抗うのを止めて晶子の肩に全面的に頭を預ける。それを感じたのか、俺の頭を押さえていた手の感触が消える。
 急に睡魔が頭全体に広がってきた。俺はそれに抗しようとせず、すんなり睡魔の襲撃を受け入れる。目の前の光景がどんどん暗くなっていく。耳に聞こえるBGMと車の走行音がどんどん遠くなっていく・・・。駄目だ。もう限界。

Fade out...

「・・・じさん、祐司さん。」

 何処からか優しい声が聞こえて来る。目の前がゆっくりと開けてくる。車のエンジン音がだんだんとはっきり聞こえて来る。車の窓から見える景色は動いていない。どうやら店に到着したらしい。俺は頭を晶子の肩から起こす。ちょっと首筋が痛いが、眠気は幾分和らいだ。

「悪い。すっかり寝てたな。」
「いいえ。それよりお店に着きましたから降りましょう。マスターと潤子さんは先に降りてますよ。」
「そうか。それじゃのんびりしてられないな。」

雨上がりの午後 第1253回

written by Moonstone

「着いたら起こしますから、少し寝てください。」
「こ、これって・・・。」

2003/8/7

[く・・・不覚]
 昨日の昼休み、私は食事から帰ってきて(食事は外で済ます時と生協で買ってきたもので済ますときがあって、昨日は外で済ます日)座席に腰掛けて寝ていたんですが、何処をどうしたらそうなるのか分かりませんが、寝違えて首を痛めてしまいました(爆)
 普通にしている分には何ともないのですが、右から後ろを向こうとすると激痛が走ります。このお話をしている今は多少良くなりましたが、不用意に右から後ろを向こうとすると地獄を見ます(汗)。
 私は右から後ろを向くことが多いので(右利きだからか?)、痛みが消えるまでは用心が必要です。鼻風邪が治ったと思ったら今度は不可思議な寝違え。一体どうやったらあの態勢で寝違えられるのか、今でも不思議でなりません。兎に角暫くは後ろを振り向く時に注意せねば・・・。
「若い者が何だらしないこと言ってる。仕事は何でも体力勝負だぞ。ま、今日は初めてだから緊張感で疲れが倍増するのも無理はないがな。」
「二人共、今日は家に泊まっていきなさいよ。これから帰るのも防犯上あまり良くないし、早く休みたいでしょ?」
「はい。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいます。」

 俺は倦怠感に満ち溢れる身体を程好いクッションの座席に委ねる。そうすると余計に眠くなってきて、俺は腕組みをしたままうつらうつらしてしまう。がくんとなったところで目が覚めて正面を向き、またうつらうつらする。その繰り返しだ。

「祐司さん、眠いんだったら寝て良いんですよ。」
「大丈夫。ちょっとうつらうつらしてただけだから。」
「祐司君、殆ど出ずっぱりだったから結構疲れたんじゃない?時間はあるから寝ても構わないわよ。」
「殆ど出ずっぱりだったのは桜井さんや青山さんもそうですから・・・。」

 そうは言ってみるものの、この睡魔はかなり強烈だ。少しでも会話を止めたり思考を停止すると、あっという間に意識を飲み込まれてしまうそうだ。眉間を親指と人差し指で強めに揉んで眠気を紛らわせようとするが、どうも思いどおりにそうなってはくれない。かなりしつこいな、この眠気は・・・。
 俺が眠気と格闘していると、不意に俺の頭に手が回り、左側に引き寄せられる。コツン、という軽い衝撃の続いて弾力感が伝わってくる。俺は顔を上げようとするが、頭を押さえつけている手に阻まれてしまう。

雨上がりの午後 第1252回

written by Moonstone

「約束どおり、バイト代は上乗せしておくからな。」
「はい。それにしても、疲れました・・・。」

2003/8/6

[広島原爆記念日にあたって]
 トップページ最上段にも明記したとおり、今日8/6は広島に原子爆弾が投下された日です。今年の原爆記念日は、アメリカの核兵器使用をも選択肢に入れた先制攻撃戦略の公表とその実施(イラク侵略戦争)、そしてそれに抗する世界的規模の反戦運動の衝突という新しい局面の元で迎えます。
 原爆追悼式典では形ばかりの犠牲者追悼が行われるでしょう。核兵器使用という危険な選択肢を堂々と宣言し、我が物顔で世界を席巻しようとしているアメリカに付き従う、憲法破壊の小泉政権に戦争や核兵器廃絶に真剣に取り組む意思がある筈がありません。
 8月3日から広島で行われている原水爆禁止世界大会にこそ、核兵器廃絶に向けた真摯な取り組みがあります。マスコミ報道はベタ記事扱いですが、だからこそそこに真理と道理があるということ(イラク侵略戦争反対運動をマスコミはまともに取り上げなかった)を忘れてはなりません。
1945年8月6日 A.M.8:15に黙祷!
「了解。」
「分かった。」
「「分かりました。」」
「よし、それじゃいきますか。」

 マスターがそう言って全員が演奏の心構えが出来たところで、青山さんのスネアドラムが鳴る。程なくやって来たハーモニカのパートを俺のギターとマスターのソプラノサックスがユニゾンで奏でる。良い響きだ。どちらか単独より音に厚みと豊かさが加わったような気がする。
 晶子はリズムに合わせて軽快に身体を揺らしている。全然余計な緊張感が感じられない。今を楽しんでいることがよく分かる。その前に俺とマスターのユニゾンがある。客に少しでも楽しんでもらえるように、俺自身楽しまないとな・・・。

 結局演奏する曲を全部演奏しきってしまった。その後は音量の薄いジャズを背景に俺達一行と桜井さん一行が、ママさんや他の客とカクテルグラス片手に談笑した。主要なテーマは二つ。今回の演奏の反省点、そして俺と晶子の関係だ。特に後者は追及が厳しく、今まで秘密にしていた告白のシーンを白状させられる羽目になってしまった。
 閉店時間はあっという間にやってきて、俺達はママさんに挨拶をしてから機材を片付けてマスターの車へ運ぶ。疲れが極限近くまで溜まった身体には拷問に近いが、プロのステージみたいに専任のスタッフがやってくれるわけでもなし、自分達のことは自分達でしなきゃならない。
 マスターと潤子さんがシートベルトを締めた後、マスターがエンジンをかけて車を通りに出す。通りは閑散としていて、たまにサーキット場と勘違いしているらしい猛スピードの車が通り過ぎるだけだ。「MORNING STAR」がBGMとして車内に流れる中、マスターは車を走らせる。

雨上がりの午後 第1251回

written by Moonstone

「それじゃ、最後のヴォーカルが終わってから16小節でフィニッシュということで。」

2003/8/5

[迂闊・・・]
 週末冷房の効いた室内で居眠りしたせいか、鼻風邪をひいてしまい、昨日は大事を取って休みました。うっかりこじらせてまた病院送り、なんて御免ですからね。今ではもうすっかり良くなっています。一日寝てましたから。
 昨日はかなり暑い日だったようですね。カーテンの隙間から差し込む陽射しがかなり強かったので恐らくそうだろうな、と思っていたんですが、案の定ラジオで気温が30℃突破どころか完全に夏日とのこと。弱った身体でそんな気温に晒されたら一気にダウンしてしまうでしょうね。
 最近、カウンタが伸び悩んでいることに少々困惑。あれだけ労力を費やしても、何にもしてないページに負けるんですから世の中無常。まあ、自己満足は十分出来てますからまだ良いんですけどね・・・。何でだろう?
 更に追及の手が伸びようとしたところで青山さんが言う。ちょっと聞いただけでは救世主的な言葉だが、追求は後にして、という文句が入っているのが凄く引っ掛かる。青山さんもクールな割にこの手の話は結構好きなんだろうか?渉は俺と宮城の付き合いにも一貫して我関せず、って感じだったんだが。

「そうだな。お話は後でゆっくりさせてもらうことにしよう。」
「桜井さん・・・。」
「さあてお二人さん、息の合ったところを見せてもらおうか。」

 マスターが嗾(けしか)ける。頼むから炎を煽るようなことは止めてくれ。俺はこの手の話で自分が俎上に上ることが苦手なんだから。まあ、相手は俺の都合なんざ欠片も考えちゃくれてないだろうが。
 とりあえず、今は演奏に集中しよう。まだ演奏曲は幾つもある。疲れが溜まった身体に鞭打つことになるが、これも就職活動の一環だろう。実際就職活動ってのがどんなものかは分からないが、厳しい状況を経験しておけば、その後の厳しい状況にある程度耐えうるだけのものは出来るだろう。
 俺、桜井さん、国府さん、青山さん、そして晶子とマスターがステージに上る。客席から拍手が起こる。どうやら演奏に少なからず期待が寄せられているようだ。そう思うと身が引き締まる。俺は薄暗い証明の下でエフェクターの派メータを調整してこの曲で使う音色にする。

雨上がりの午後 第1250回

written by Moonstone

「明。追求は後にして、今は演奏だ。」

2003/8/4

[寝床大移動]
 私のベッドはエアコンがある部屋の隣の部屋にあるのですが、いまいちエアコンの効きが及ばない、ということでエアコンのある部屋に寝床を移動しました。ベッドですから敷布団と掛け布団と枕を移動しただけですが。
 うーん、やはりエアコンのある部屋だと効きが違いますね。隣の部屋までエアコンの効きが及ぶのには結構時間がかかりますし、その分電気代がかかりますからね(この時期の電気代は切実)。こんなことなら例年どおりもっと早くから移動しておくべきでした。
 久々の週末の晴天ということで布団を干したんですが、布団がふっくらする代わりに熱くなりますね(当たり前)。夏場はこれだから布団をあまり干したくないんですよね。でも干さないと良くないし・・・。難しいところです。

「あの・・・マスターがソプラノサックスが出来るなら、俺の出番はなくなっても良いんじゃないでしょうか?」
「おいおい。井上さんは君の担当だろ?忘れたとは言わせんぞ。」
「う・・・。」

 担当、という単語を出されると弱い。今までのステージや練習でハーモニカのパートを担当してきたのは他でもない俺だし、少なくとも店の常連客にはこの曲はギターが変わった音色で演奏するものとして記憶に焼きついているだろう。マスターが出来るからって選手交替、というわけにはいかないか、やっぱり。

「担当って、安藤君が井上さんを教えたわけ?」

 桜井さんが興味深そうな顔でマスターに尋ねる。するとマスターはこっちをチラッと見てニヤッと笑って答える。

「そうそう。基礎からみっちりとな。今じゃ師弟の関係を通り越して恋人同士になっちゃってるぞ。」
「へえ・・・。どうりで井上さんが安藤君の方をチラチラ見てたわけだ。あの視線には何かある、とは思ってたけど。」

 桜井さんが俺と晶子を交互に見てニヤッと笑う。マスター、何もプライベートなことをこんな大勢の人が居る場所でばらさなくても良いじゃないか。俺は照れ隠しに頭を掻く。俺と晶子は付き合ってるんです、とはっきり言えない自分がもどかしい。

雨上がりの午後 第1249回

written by Moonstone

 何だ何だ、マスターはソプラノサックスを吹ける態勢にしてあったのか。だったら俺の出番はなくても良いんじゃないか?

2003/8/3

[花火大会鑑賞]
 昨日は私の住んでいる地域で行われた花火大会を観に行きました。近くで見ようと思うと最低でも開始2時間前からその場に居なければならず、始まる前にはもうその場から身動き出来なくなるほどの大混雑なので、例年どおり職場の屋上からの鑑賞会に行きました。
 派手。兎に角派手。大型花火の連発は勿論のこと、色鮮やかなスターマインが夜空に炸裂しまくりで、流石に市が後援しているだけあって不景気も何のその、といった感じでした。写真を撮りたかったんですが、生憎カメラの充電とカメラそのものを持って行くのを忘れたので(爆)、皆さんにお見せできないのが残念です(2年程前撮影したものはPhoto Group 1にて展示中)。
 少々蒸し暑かったですが、やはり今年は冷夏なのか風が涼しくて、天候にも恵まれ、良い鑑賞会となりました。来年からは恐らく鑑賞会の実行委員にさせられるので、あまりじっくり観られないでしょう。良い一夏の思い出が出来て良かったです。
 俺の中に漂っていた濃い霧が、ぱあっと晴れていくような気がする。俺は気付かない間に今までの価値観に縛られていたんだ。こういう生き方があっても良いじゃないか。俺は俺なりに、出来ることなら晶子と一緒に、それなりの生活をしていけば良いじゃないか。

「他に聞きたいことはあるかい?」
「いえ、もうありません。ありがとうございました。」

 俺は桜井さんに一礼する。プロのミュージシャンとして実際に生活している人からの貴重な話を幾つも聞けて本当に参考になったし、無意識に自分を縛り付けていた旧来の価値観の鎖を断ち切ることが出来た。本当に今日は良い就職活動が出来たと思う。

「さあて、それじゃ演奏といきますか。『PACIFIC OCEAN PARADICE』からで良いかな?」
「「はい。」」

 俺と晶子は同時に返答する。晶子の表情も心なしかすっきりしたように見える。やはり気になっていたんだろうか?

「よーし、ドラムは大助でピアノは賢一。で、ハーモニカ代わりのギターが安藤君でヴォーカルが井上さんということで。」
「俺もソプラノで混ぜてくれ。」
「文彦?」
「いやな、CDを聞いてたらソプラノで吹いてみたくなって、実際吹いてみたら結構良い感じだったんだ。」

雨上がりの午後 第1248回

written by Moonstone

「だって結婚は二人の合意でするものでしょ?今時家と家の関係や、親の顔色を窺って結婚を決める方がどうかしてるわ。」
「という先輩の意見もある。参考になったかな?」
「はい。十分参考になりました。」

2003/8/2

[プロとアマの違いって?]
 ふと思ったことなんですが、プロとアマの違いって何なんでしょう?自分の作業に対して報酬が貰える、という定義を考えると、コミケで自分の作品を大量に売りさばける人気サークルの方はプロということになるのでは?でもその方がプロを名乗っているかと言えば、必ずしもそうではない。この定義はあまり正確ではないようです。
 自分の作品に責任が持てる、という定義を考えると、プロを自称する方でも目に余る言動を繰り返す人は居ますし、自分をプロと言わない方でも、自分の作品へのこだわりや愛着、それに責任を感じている方は大勢居ます。この定義もあまり正確ではないようです。
 万人受けすればプロか、というのも怪しいですし(目立たないが才能を感じるWebページは多い。その逆も然り)、プロとアマの境界線は凄く曖昧なものだと思います。私は貴方から見てプロでしょうか?アマでしょうか?よろしければ掲示板JewelBoxに書き込んでください。
「そうなんですか・・・。」
「ちなみに収入は嫁さんの方が多いよ。嫁さんは会社勤めだから、定期的に給料が出るし、ボーナスもそれなりに出るし。」

 そうだよなぁ。この手の仕事は一定のギャラしか出ないだろうし、来るなと言われたらそれまでだけど、会社勤めならそれなりに給料も出るし、ボーナスも出るだろう。収入面での格差は明白だ。晶子との生活を考えた場合、どうしてもその点が引っ掛かるんだよな・・・。

「でも、嫁さんは俺の仕事を理解してくれてるし、収入が違うからと言って卑屈になったり尊大になったりしないよ。何を買うかとかは夫婦で相談して決めるし、保育園に子どもを迎えに行く時も恥ずかしいなんて思わない。俺達家族の生活なんだから、人様に迷惑かけない限りとやかく言われる筋合いはない、って構えてるよ。」

 俺は頭を殴打されたようなショックを受ける。そうだ。人様に迷惑をかけなければ、自分達家族がどんなスタイルの生活を送ろうが構わない筈だ。収入の格差があるから支配従属の関係が出来るとか、そんなことはそれこそ旧態依然の考え方なんじゃないか?それがプロのミュージシャンという職業にいまいち誇りを持てなかったり、晶子との関係をあれこれ考えてしまう所以じゃないのか?

「まあ、嫁さんの家族には猛反対されたけどね。そんな浮浪者暮らしの男と結婚なんて許さん、なんて。でも嫁さんは俺が言うのも何だけど毅然としてて、職業に貴賎なしって言うじゃないか、収入なんかより誠実な人が良い、なんて説得してくれたなぁ。文彦もよく似たもんだろ?」
「ああ。潤子の両親には二度と家の敷居を跨ぐな、とまで言われた。でも潤子は俺と一緒に生きることを選んだんだよな。」

雨上がりの午後 第1247回

written by Moonstone

「嫁さんも働いてるから、子どもは昼間保育園に預けて、寝起きの俺が迎えに行って、家族全員揃って一緒に夕食を食べて、まあ、嫁さんが残業で遅くなる時もあるけど、それから俺が出勤、ってパターンだな。」

2003/8/1

[夏だー!花火だー!]
 というわけで背景写真を花火にしてみました(安直)。花火を撮影するのはなかなか難しくて苦労したのですが、今月の背景に選んだ写真は中でもお気に入りの一枚です。花火大会に行けない方、行きたいけど人ごみはごめんだ、という方、この写真を見てひと時の涼を得て下さいませ。
 昨日付更新は遅刻してしまってすみませんでした。ネットに繋ぐまであと10分ある、とベッドに横になったのが運の尽き。涼しさに負けて寝入ってしまいました(爆)。今後はこういうことがないように気をつけます。ほぼ定時に更新されるのを待っておられる方も居るでしょうから(居るかな?)。
 こちらはようやく夏らしく蒸し暑くなってきまして、今はエアコンの効いている室内でお話しています。もっとも私は冷房が苦手なので28℃設定のドライ運転ですけどね。ああ、省エネ生活(笑)。でも、これくらいの方が温度差で身体の調子を崩さないので丁度良いと思うんですけどね。スーパーや百貨店なんかも経費削減を言うなら冷房を控えめにすれば良いんじゃないかな・・・。
「それはそうですけど・・・。」
「君の質問にストレートに答えるなら、あまり割に合わない仕事だと思う。深夜労働なのに割増でギャラが貰えるわけでもないからね。でも、俺は今の生活が楽しい。好きなことやってて贅沢しなけりゃそこそこ生活していけるだけの金は入るんだから、ある意味最高の贅沢な生活とも言えるよ。」

 桜井さんの答えは今のバイトとダブるところがある。接客に演奏にと終始駆け回らなければならない割に食事付きで時給1000円ってのはちょっと安いんじゃないか、と連日忙しくなってきた最近は時々思うことがある。でも、自分の好きなギターを人前で演奏出来て、それで生活費を十分補えるだけの金になるんだから恵まれているといえるだろう。塾の講師でもない限り、時給が1000円単位になることなんてまずないからな。

「次にプライベートに首突っ込むことになりますけど・・・良いですか?」
「余程のことでない限り、質問には答えるよ。」
「じゃあ聞きます。・・・結婚・・・してますか?」

 これが一番聞きたかったことだ。夜行性の生活。あまり割に合わない仕事。それで結婚出来るのか。晶子との将来を考えると、桜井さんの答え次第では再考を要することになるだろう。そう思っている俺に、桜井さんは少し照れくさそうに言う。

「いやあ、まさかそんなことを聞かれるなんてなぁ・・・。」
「明。素直に吐け。」
「了解。してるよ、結婚は。子どもも居るよ。」

 何だ。照れくさそうにしてたのは結婚しているかどうか聴かれるとは思わなかったからなのか。それに子どもも居るとは・・・ちょっと驚きだ。

雨上がりの午後 第1246回

written by Moonstone

「楽しければ貧乏やってても苦にならないし、楽しくなかったら金持ちでもつまらないさ。そういうもんだよ。」


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