芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年9月30日更新 Updated on September 30th,2002

2002/9/30

[またまた駄目駄目]
 予想どおりと言いましょうか・・・。結局日曜もダウンしちゃいまして、ここの更新がやっとです。土用日曜と2日連続でダウンしたのは初めてじゃないかな・・・。体調が悪化の一途を辿っていることがよく分かって情けない限りです。
 あ、土曜日の御来場者数が日にちカウンタを設置して初めて1000人の大台を突破したようで・・・。嬉しいのは勿論ですが、「9月末に向けて断続的に更新をかける」という公約が守れなかったのは悔しいです。明日から10月。気持ちも新たにページ運営をしていきますので、宜しくお願いします。
晶子にとって潤子さんは女としての理想像であると同時にライバル意識を抱く相手でもあるみたいだからな。俺が晶子に抱く気持ちと潤子さんに抱く気持ちはまったく違うから安心しても良いと思うんだが・・・。
 俺と晶子は談笑しながらケーキを食べていく。何だかんだ言っても疲れていたところに甘くて美味いものが入って来たから、ケーキは順調に俺の腹の中に入っていく。小さいとはいえ全体の3/4ものチョコレートケーキを食べるのは初めてなだけに不安があったのは事実だが−最初躊躇したのはそのせいだ−、案外すいすいと腹に入っていく。先に自分の分を食べ終えた晶子は、紅茶を少しずつ飲みながら俺と談笑する。その時見せる笑顔が可愛くてたまらない。
 ケーキを食べ終えてふと時計を見ると、既に11時を過ぎている。晶子には悪いことしたな。俺への誕生日プレゼントを作ってくれた上に俺の誕生日を祝ってくれた。後片付けは俺がしてでも晶子を家に送っていかないとな・・・。夜は何かと物騒だし、そうでなくても白昼堂々と公道で刃物を振り回したりする人間が出るくらいだ。腕に自信があるかと問われると困ってしまうが、居ないよりはましだろう。

「今日は本当にありがとう。本当に嬉しい誕生日だったよ。」
「どういたしまして。マスターと潤子さんへのお礼も忘れないでくださいね。」
「ああ、それは勿論。じゃあ行くか。」
「行くって・・・何処へ?」
「何処へって・・・。晶子の家以外に何処へ行くんだよ。」
「まだ渡していない誕生日プレゼントがありますから。」

雨上がりの午後 第942回

written by Moonstone

 晶子は安心したような笑みを浮かべてケーキを食べ始める。俺の反応を窺っていたらしい。やっぱり前回が潤子さんのものだっただけに、自分の作ったものの味が俺に合うか気になっていたんだろう。

2002/9/29

[今日は(も?)駄目駄目]
 本当は今日にも幾つか更新するつもりだったんですが、全然身体が動かなくて・・・。今こうしてお話しているのもやっとという有り様です。やっぱり確実に体調が悪化してますね。明日もこうだったら最悪だな・・・(汗)。兎に角今日は此処のお話も最小限に留めておきます。楽しみにしていた方、すみません。明日には何とかしたいと思います。
「よ、3/4もか・・・。」
「去年は食べたんでしょう?潤子さん手製のケーキ。まさか・・・私の場合は食べられないんですか?」
「い、いや、そうじゃなくて、半分ずつの方が良いかなって。晶子が手間暇掛けて作ってくれたものだし、そのお礼という意味で。」
「手間暇掛けて作ったのは私も潤子さんも同じですよ。さ、どうぞ。」

 どうやら3/4食べるのが必然らしい。まあ、晶子手製のケーキが食べられるのは嬉しいし、たまには良いだろう。ケーキなんて唯でさえ縁のない人間だからな。折角の文章が欠けたのは惜しいが、食べなきゃ作ってくれた意味が無い。
 俺はフォークでケーキを一口サイズに切って口に運ぶ。柔らかい触感にチョコレートのほろ苦さと生クリームの甘さが絡み合って絶妙な味になって口いっぱいに広がる。最初の一切れを食べた後、俺は迷わず率直な感想を口にする。

「美味い。これ、目茶苦茶美味い。」
「チョコレートケーキはどうかな、って思ったんですけど、喜んでもらえて良かった・・・。」

雨上がりの午後 第941回

written by Moonstone

「1/4がノルマか?」
「いいえ。祐司さんの分は3/4ですよ。今日の主役ですから。」

2002/9/28

[いい加減にしろ、アメリカ!]
 体調が著しく悪化して来た管理人ですが、皆様は如何お過ごしでしょうか?やっぱり人間は身体が資本ですね(しみじみ)。
 さて、アメリカのイラク先制攻撃が問題になっている最中、とんでもないことが明らかになりました。何と、イラク先制攻撃論の急先鋒の一人、ラムズフェルド国防長官が、彼が言うところの「世界最悪の指導者」フセイン・イラク大統領が大量破壊兵器を開発する手助けをしていたというのです。これは『ニューズウィーク』が国務省の解禁文書に基づいて暴露したものですが、1983年12月20日、時はイラン・イラク戦争の真っ只中でしたが、当時民間人だった同氏が時のレーガン大統領の特使としてイラクを訪問し、両国の関係改善について会談しました。
 その会談後、当時劣勢だったイラクに対してイランの軍事情報を提供したり、イラク原子力委員会が生物兵器開発に使用可能な細菌培養菌の入手を許したり、挙げ句の果てにはイラク国内のクルド人に大して毒ガスを撒く際のヘリコプターを提供し、「イランの仕業」と弁護したり、米国産穀物の借款供与や兵器の新規購入の援助、軍事指導などを行いました。イラン革命で中東の支配拠点を失ったアメリカは、そのイランと戦うイラクに目をつけ、新たな支配拠点を構築しようとイラクを援助していたのです。イラン・イラク戦争もアメリカと旧ソ連の代替戦争と指摘されたのはこのためです。
 で、アメリカの援助を受けたイラクは調子に乗ってクウェートを侵略したわけですが、そこに来て時のブッシュ(現大統領の父)大統領が掌を返してイラクを攻撃するようになったのです。アフガニスタン内戦と類似した構図です。アフガニスタンに侵略して来た旧ソ連軍に対抗するタリバンを援助しておいて、自国がテロにやられたら、タリバンがテロ組織を援助していると言い出してアフガニスタンに報復名目で攻撃を仕掛けたのですから。アメリカの他国への介入、無責任且つ横暴な外交姿勢がまたも表れた格好です。
 自分で相手に危険性を持たせておいて、自分の都合である日いきなりその相手を敵として攻撃しようとするのですから、身勝手目茶苦茶そのものです。こんなアメリカの戦争姿勢を「選択肢の一つとして理解する」(小泉首相)などと言ってのける日本政府の対米従属ぶりは目を覆うばかりです。こんな無法且つ身勝手な戦争を許してはいけません。「イラク攻撃反対」と共にこの様なアメリカ従属での戦争に乗り出す「有事法制」廃案の世論を高めていかなければなりません。

参考記事:「しんぶん赤旗」2002年9月25日付

 あの時は宮城との中がぎくしゃくしていた頃で誕生日プレゼントどころじゃなくて−一応、誕生日おめでとうの言葉は電話でもらったが−、手間暇掛けて作ってくれたものを貰えて本当に嬉しかった。
 でも、今日はそれ以上に嬉しい。マスターも潤子さんも、そして晶子も、俺の誕生日を覚えていてくれて、それぞれから心の篭ったプレゼントをもらえたんだから。

「・・・ありがとう、晶子。今は・・・それしか言葉が思いつかない・・・。」
「その一言で十分ですよ。さ、ケーキ食べましょう。去年は潤子さんから貰ったそうですけど、私も負けてないつもりですよ。」
「あ、ああ。これ・・・作るのに時間かかっただろ?」
「勿論、それなりには。」
「晶子も試験勉強で忙しい筈なのに・・・。」
「私は祐司さんに比べればずっと楽ですよ。・・・あ、そうだ。蝋燭立てましょうね。」

 晶子は包みに同封されていた封筒を開けて蝋燭の入った小さな袋を取り出す。これもマスターと潤子さんとの「裏取り引き」の一つだったのか。俺は晶子がケーキの外周に沿って色とりどりの蝋燭を立てていくのを見守る。そう言えば・・・火はどうするんだ?俺は煙草を吸わないし、晶子も吸わないから−偏見だが女の煙草はあまり良く思わない−ここには灰皿やマッチやライターなんでものが無いんだが。
 だが、その不安は蝋燭を立て終えた後の晶子の行動で直ぐに分かった。晶子がやはり封筒から店のロゴとたんぽぽのイラストが描かれたマッチを取り出して−一応店は禁煙じゃない。喫茶店だからな−火をつけていく。晶子の手際の良さで、マッチの消費量は3本で済んだ。念のため蝋燭を数えてみると・・・1本、2本・・・あ、ちゃんと20本ある。

「それじゃ祐司さん、一気に吹き消して下さいね。」
「ああ、分かった。」

 俺は息を大きく吸い込んで蝋燭の火に息を吹きかける。蝋燭の小さな炎は水平に大きく傾いたと思うと消えて小さな煙に変わっていく。20本全ての蝋燭の火を消したところで、晶子が拍手する。心に直に伝わって来るような、温かくて優しい微笑みを浮かべながら。

「20歳の誕生日、おめでとうございます。」
「ありがと。はは・・・ケーキの蝋燭を吹き消すなんて、何年ぶりかな・・・。」
「それじゃ食べましょうね。」

 晶子は蝋燭をケーキから退けると、一旦席を立って台所に行き、戸棚から小型の包丁を持って来る。俺が一回も使ったことがないものを俺以外の人間が初めて使う・・・。如何に俺が台所と縁が薄いかよく分かる。晶子はまず文字に垂直方向に包丁を入れて、続いて文字に水平方向に包丁を入れる。そして包丁とフォークで支えながら俺と自分の皿の上に置く。・・・ちょっと待て。1/4が最小の大きさなのか?幾らケーキが小さいといっても結構あるぞ。

雨上がりの午後 第940回

written by Moonstone

 俺は返す言葉が見当たらない。多少ハードだが好条件のバイトをさせてもらっている上に、こんなものまで貰えるなんて・・・。そう言えば去年の誕生日には潤子さん手製の小さなケーキをもらったっけ。

2002/9/27

[眠い日は続く]
 体調が下降線の一途を、言い換えれば悪化の一途を辿っている今、眠気が睡眠でしっかり制御出来なくて困っています。そんな中で仕事を進めるのは勿論、ページの運営も一苦労です。何せ少しでもやる気のある時に無理してでもやらないと、何も出来なくなってぐったりばったりするだけなので。
 昨日は上手く波に乗れたので細かいことですがグループの更新が出来たんです。ここもしっかり書けましたし。ところが今日は波に乗る前にダウンしてしまったので、身体と心が重く感じる中(そういう病気なんです)、無理矢理身体を動かしています。
 一応今日で今週仕事に行く日が終わりなので、週末へ向かって迷うことなく更新をかけようと思います。今日は「あたしンち」が休みなのでテレビは完全無視してページ更新の準備と実行に入る予定です。この週末、しっかりチェックして下さい。

「誕生日おめでとう、祐司さん。」

 記憶の大地を掘り返して感触があったものが、喉に引っ掛かっていて出てこなかったものが一気に噴き出してその形を露にする。そうだ・・・。今日9月16日は俺の誕生日だったんだ。氷解した謎は最初の少々の呆気なさから胸の底から沸き上がってくる嬉しさと温かさに代わってじわじわと込み上げて来る。晶子とは誕生日を教え合った。晶子の誕生日にはペアリングをプレゼントした。だが自分のことはすっかり忘れていた。そうか・・・。そうだったんだ・・・。

「俺の・・・誕生日だったんだ。」
「だった、じゃないですよ。まだ今は9月16日ですから。それじゃ、もう一つの謎も明かしますね。」

 晶子は潤子さんから受け取った包みを開いて見せる。中に入っていたものは複数のギターの弦と洒落た感じの封筒だった。手に取って見ると、ギターの弦はナイロン、スチール共に高級品で、俺が買おうと思っても二の足を踏み続けていたものだ。それが各1つずつじゃなくて5つずつもある。相当金がかかったに違いない。

「こんな高級品をこんなに・・・。」
「先週の日曜日にマスターと潤子さんから電話があって、二人からプレゼントを送りたいんだけど何が良いか、って尋ねられたんです。それで相談した結果、何時も素敵な音を聞かせてくれる祐司さんの腕に相応しいものを、ということで高級なギターの弦をプレゼントすることにしたんです。」
「マスターと・・・潤子さんが・・・。」
「折角の腕をより引き立たせるには良い道具が必要だろう、ってマスターが言ってましたよ。」

雨上がりの午後 第939回

written by Moonstone

 俺は声が出ないまま、視線をケーキの上から向かい側に座っている晶子に向ける。晶子は優しく温かい微笑みと共に口を開く。

2002/9/26

[考え直すのは今]
 続々と明らかになり、東京電力だけではない様相を呈している原発の損傷ですが、これらは単に家の壁にひびが入った、というレベルの問題ではなく(まあ、家の壁にひびが入るのも住人にとっては大変なことですが)、周辺地域を放射能汚染する重大事故に繋がりかねない個所で頻発しています。炉心隔壁や再循環系配管という単語が出て来ますが、これらは原子炉の心臓部に当たる個所なのです。これらが破損すれば最悪の場合は原子炉の破壊、チェルノブイリ原発事故と同様な事故を引き起こしかねません。
 そんな危険な損傷を「運転に支障が無ければ問題無い」と安全基準を緩める論を展開していたのが、東京電力の副社長であり、東京電力の調査委員会の委員に名を連ねているというのですから、呆れた話です。これでは泥棒に泥棒を捕まえろと言っている様なものです。国や電力会社から完全に独立した第三者機関による全国の原発の一斉調査が必要です。
 で、このように原発事故を問題にすると必ずと言って良いほど出て来るのが「それなら電気を使うな」という論ですが、これは消費者の状況を弁(わきま)えない暴論です。消費者は電力の発生源を選べないのです。それに消費者が原発を立ててくれ、と頼んだのではなく、国の政策として原発立地を補助金という餌をちらつかせたり、電力会社が工作員(立地推進員とか言っているようですが)を派遣してやはり補助金をちらつかせて原発を売り込んだりして推し進めて来た結果です。
 物には何でも寿命というものがあります。それは原発も例外ではありません。まして放射能という人体や環境に有害なものを撒き散らせる危険性が常に付き纏う原発は、寿命が来たからはい交換、とは簡単にはいかないのです。既に欧州では原発の新規立地を取り止めたり、原発そのものをなくしてその代わりに太陽光や風力、地熱といった自然エネルギーによる発電の割合増加を目指して行動しています。原発、それも危険極まりないプルトニウムを燃料にするプルサーマル計画など、欧州は勿論、アメリカですら撤退しているのに、それを国策として推進しているのは日本だけです。
 原発の事故は交通事故とは訳が違います。チェルノブイリ事件でも散々騒がれたように、周辺国へも重大な放射能汚染を齎すのです。交通事故でも死傷者や事故車両の撤去などの間に渋滞が発生しますが、放射能汚染は何百年、何千年とその地域に悪影響を齎すのです。今こそ日本は原発推進を見直し、先の開発・環境サミットでも提起されたように自然エネルギーによる電力供給を推進するべきではないでしょうか。

「不機嫌も何も・・・俺一人分からないままことが進んでるようで、胸の中がもやもやした感じなんだよ。」
「私が勿体ぶってますからね。でも、もう直ぐ思い出してもらえますから、そのもやもやは一気に吹き飛びますよ。」
「それに期待するしかないのか・・・。」

 俺はもう一度小さく溜息を吐く。そこまでひた隠しにするくらいなんだから余程のことなんだろうが、思い出そうと記憶の大地を彼方此方掘り返してみるが、感触らしいものは感じるんだがそれが何だか判らない。だから余計にもやもや感が増して来る。ま、家に帰れば分かるらしいから、そうするしかないか・・・。
 程なく俺の家に着く。窓はどれも真っ暗だ。まあ、これは何時ものとおりなんだが、何だか謎の扉を開ける直前のようで気持ちが逸って来る。ドアの前に立ってズボンのポケットから鍵を取り出してドアのノブに差し込んで回して鍵を開け、中に入る。そして早速部屋の電灯を点ける。一刻も早く謎を明らかにしてもらうために。続いて入って来た晶子は俺の気持ちを察したのか、苦笑いして言う。

「慌てなくても大丈夫ですよ。まだ1時間以上ありますから。」
「?1時間以上?」
「ええ。それじゃちょっと荷物を置かせてもらいますね。お皿と紅茶を用意しますから。」

 晶子はそう言って抱えていた包みと持っていた箱をテーブルの上に置く。

「まだ駄目ですよ、開けちゃ。あと少しの辛抱ですから。」
 俺が箱を開けようとすると即座に晶子が制する。ちっ、よく見てるな・・・。俺は箱を開けない代わりに鼻先を近付けてみる。匂いは・・・しない。料理の類じゃないみたいだ。箱の側面に手を触れてみると、外の空気で多少弱まっているとはいえ、かなり冷えている。匂いがしなくて冷やす必要があるもの・・・一体何だ?それに紅茶・・・。益々わけが分からなくなってくる。そして箱と包みの中身が物凄く気になる。もう極限に達していると言って良い。
 5分ほどして紅茶を沸かした晶子が、カップ二つとティーポット代わりの湯気を立てる小さいやかん、そして俺が使ったことがない四角の小さ目の皿とフォークをペアにして二つ持って来てテーブルに並べる。小さ目の皿にフォーク・・・。何か、何かある。確かこれは・・・口の直ぐ置くまで出て来ているのに出てこない。もどかしいったらありゃしない。

「お待たせしました。じゃあ思い出してもらいますね。」

 晶子はそう言って箱を結わえていた紐を解き、蓋を開ける。現れたものを見て俺は思わずあっ、と声を上げる。箱の中身は・・・そう・・・

円形のケーキだった。

そしてチョコレートらしい褐色の色で覆われた上には、クリームのデコレーションに囲まれてこう書かれてある

Happy birthday Yuhji with love

雨上がりの午後 第938回

written by Moonstone

「祐司さん、不機嫌そうですね。」

 不意に晶子が言う。俺は小さく溜息を吐いて答える。

2002/9/25

[一山越えて・・・]
 シャットダウン前に行う予定だった機器の最終調整も昨日大したトラブルもなく無事終了し、クライアントに引き渡すことが出来ました(喜)。後は購入した部品などの合計算出といったデスクワークをちょいちょいと済ませて 全て終わり。4月以来続いていた仕事の繁茂期も峠を越したようです。
 となると私の方は、訳が分からないので暫く棚上げにしていたものと、私に今の病気を患わせた厄介極まりない仕事の続きが控えています。それらに取り組むとなるとまた病気が悪化しそうな気がしてならないんですが、やらなきゃ先に進まない、言い換えれば病気悪化の種を残し続けることになるので、取り組まざるを得ません。腰を据えて取り組んで、何度も水入りしながら進めていくしかないでしょう。
 仕事は昨日こそ大したこともなく過ぎ去っていったんですが、体調の悪化は歯止めがかからず、このお話も定刻(23:00)を過ぎてからしています。機能も触れたように、これから来月の10日前後に向かって体調が悪化の一途を辿っていくので、仕事の着手はもう少し先延ばしした方が良さそうな感じ・・・。でも、体調が良好になる期間は1週間もないので(せいぜい2、3日)今からぼつぼつ手をつけていった方が無難かな・・・。考えてるだけで具合が悪くなってきたので、今日の午前中の具合で判断しようと思います。
晶子が「ちょっと待ってて下さいね」と言って急ぎ足でマンションに入って行った。俺は適度な冷気の中、一人晶子が戻って来るのを待つ。晶子は今日の昼に弁当を作って持ってきてくれて、その箱を俺の家に置きっ放しにしてきたから俺の家に来るつもりなんだろうが、それもやっぱり今日に関係があることなんだろうな・・・。
 10分ほど待った頃になって、晶子がロビーに姿を現した。その手には潤子さんから受け取った包みとは違う箱がある。夕食はもう食べたから夜食でも作ってきたのか?俺は夜食は食べない習慣なんだが−仮に腹が減ったら水を飲む−やっぱり今日という日に絡んで夜食を作ってくれたんだろうか?そうだとすると食べないわけにはいかないな。

「お待たせしました。」

 開いたドアから出て来た晶子が俺の元に歩み寄って来る。行きは急ぎ足だったのに帰りは歩いて来た。やけに時間がかかったのはそのせいか。てことは、中身は崩れ易いものなのか?崩れ易いものというと・・・一体何だろう?

「さ、祐司さんの家へ行きましょう。」
「今日が何の日か思い出させてくれるんじゃないのか?」
「心配要りませんよ。この箱が開いた時、謎は明らかになりますから。」

 どうやらまだ教えないつもりらしい。まったく・・・そんなに勿体ぶるようなことなのか?謎が未だ明かされない上に新しい謎−晶子が抱えている包みだ−が加わって、疑心暗鬼が益々強まって来る。晶子の奴、マスターと潤子さんと口裏合わせて俺を驚かせるつもりなんだろう。謎が気になって仕方が無い俺は、ひとまず晶子と一緒に自分の家に向かうことにする。そう言えば・・・バイトが終わってから俺が晶子を家に入れるのは初めてだな。熱出した時は例外として。
 時折車が走り去っていく通りを俺と晶子は歩いていく。会話はない。俺が話したいことは今日が何の日なのか、書けた包みや手に持った箱が何なのか、ということだけだし、それを口にしたところで晶子が口を割るとは思えない。そうでなければ今の今迄勿体ぶったりしない筈だ。

雨上がりの午後 第937回

written by Moonstone

 俺は何時ものように晶子と一緒に晶子の家があるマンションの前まで来る。普通なら紅茶をご馳走になって帰るところなんだが、今日は違う。

2002/9/24

[皆様、お久しぶりです]
 10日間に及ぶ長期シャットダウンを終え、本日から活動再開です。シャットダウン中にも2回このコーナーを更新しましたが、「Total Guidance」でもシャットダウンについては「(更新などが)不可能或いは大幅に遅れる」とありますから、「更新しない」わけではないんですよ、ははははは(笑)。
 ま、そういう屁理屈はおいといて、シャットダウンの間に作品をどれだけ書いたか、ということなんですが、9/19で言ったとおり、書き下ろし3作+1/3、編集もの3作です。10日間でそれだけか、と言われそうですが、後半で殆ど身体が動かせなくて・・・。弟の協力でネットに何時でも繋げるという条件を利用してネットサーフィンをするのが関の山で、後は殆どぐったりしてました。シャットダウン最終日の昨日も1日ぐったりしてましたからね。この先がちょっと不安です。
 それでも何とか積み上げたストックを利用して、9月中に断続的に更新します。30日が上半期最後ということもあるので、大型の更新を予定しています。これから身体の調子が下降線を辿っていくんですが、やれるだけのことはやりますので、是非これからもご来場下さい。掲示板JewelBoxのご利用もお待ちしております。
食事が終わったら着替えてバイトの始まりだ。ここには客としてきたわけじゃなくてバイトしに来たんだから、何時までも考え事をしているわけにはいかない。引っ掛かりが残るのはもどかしくてならないが、マスターの言ったとおり、晶子が思い出させてくれるのを待つのが賢明なようだ。
 俺は晶子とほぼ同じに食事を終えて、ごちそうさまでした、という言葉と共にトレイを差し出す。潤子さんは料理の手を休めてそれらを受け取って流しに置いて水を張る。晶子は席を立って自分のエプロンが掛けてある場所へ向かい、俺はカウンターから中に入って奥に着替えに行く。これも何時もどおりだ。変わったこと、つまり今日が何の日が判らないことを除けば、そんなことは一つもない。さて・・・今日もバイトに励むか。

「あー、今日も忙しかったなぁ〜。」

 俺は星輝く夜空に向けて組んだ両手を挙げる。今日も忙しい日だった。仕事帰りの社会人−店の雰囲気柄か女性の方が多いが−や塾帰りの中高生で賑わい、恒例のリクエストも大盛況の中で抽選が行われた。晶子が2つ、俺が1つ、俺と潤子さんのペアが1つ−難題のEL TOROだった−、マスターが1つだった。この調子だと、潤子さんがリクエスト対象に加わる明日は今日にも増して忙しくなるだろう。バイトの時間なんて、本当にあっという間に過ぎ去った。
 さて・・・問題は2つ。1つは晶子がバイトが終わったら思い出してもらうという今日という日、それにもう一つ「仕事の後の一杯」の後で晶子が潤子さんから加わった包み。何でも潤子さんが言うには「これは後のお楽しみ」とのこと。気になることが余計に増えた上に、包みを受け取る過程でマスターと潤子さんはやっぱり今日が何の日か知っていることが分かって、俺だけ仲間外れにされているような気がする。一体今日は何の日なんだ?そんなに大層なことがあったか?

雨上がりの午後 第936回

written by Moonstone

 マスターはあっけらかんと言い、注文の品らしいスパゲッティを茹でていた潤子さんは苦笑いして言う。俺は首を傾げつつ食事を再開してスピードを上げる。

2002/9/19

[またお会いしましたね(^^;)]
 シャットダウン中と違うんかい、と突っ込まれそうですが、一応そうです(爆)。1日中PCに向かって小説書いてます。書き下ろし3作+1/3、編集もの(何かバレるな)3作、ってところです。
 さて、初の日朝首脳会談が終わりました。そこでは北朝鮮が拉致を事実と認めて謝罪したこと、国交正常化交渉を続けることなどが明らかになりました。拉致が事実であり、それも死亡者があったということは断腸の思いです。死亡者の方々にはこの場を借りてご冥福をお祈りします。
 今まで拉致疑惑を否定してきた北朝鮮の最高権力者が拉致を事実として認め、謝罪したことは今回の首脳会談の大きな成果といって良いでしょう。勿論、これで一件落着とすることなく、個々の事項に関する詳細な情報提供や生存者の帰国あるいは家族との面会の措置を取ることなどを求めていかなくてはいけません。この問題を含む諸問題は今後の国交正常化交渉の場において、先日述べたようにその解決を前提としない包括的な形で交渉し、解決へ向かうべきです。また、日本側も1910年から1945年における植民地支配や朝鮮人の強制労働、所謂「慰安婦」問題に対する誠実な態度が求められます。
 今回の首脳会談の成果を疑問視する向きがありますが、たった1回の首脳会談で、それも国交正常化交渉が長らく中断していた状況で全てが一気に解決する筈がありません。問題解決はあくまで外交という平和的手段で双方が妙な取引や駆け引きなしに、真剣に取り組むことで解決していくものです。拉致の事実が明らかになったからといって、以前あったように在日韓国、朝鮮人に対する嫌がらせをするようでは、何の解決にも結びつかないばかりか相手側の感情を害するだけです。今こそ冷静に、近隣諸国の一つとして関係を密にし、相互理解と協調を日朝双方の国民や政府が考えるべき時です。
今日は洋食系か。昨日の夕食はキノコの炊き込み御飯と吸い物に胡瓜ともずくの酢の物と漬物だったか。こんな事はしっかり覚えてるくせに、今日は何の日かまったく思い出せないっていうのはどういうことだ?俺の頭の構造を疑ってしまう。

「はい、お待たせ。」

 俺が尚を考え込んでいるところに、潤子さんがトレイに乗せた夕食を差し出して来る。俺はありがとうございます、と言ってそれを受け取る。その時、潤子さんが俺に向かって口を開く。

「晶子ちゃんは、祐司君が覚えてない、って答えた後で何か言ったの?」
「え?あ、えっと・・・『バイトが終わったら思い出してもらいますよ』みたいなことを・・・。」
「じゃあ、その時まで我慢するしかないわね。」

 潤子さんに言われて、俺は沈黙するしか出来ない。凄くもどかしい気分のまま、俺はいただきます、と言って夕食を食べ始める。今日のメインは鳥肉のソテーか。表面が黄金色になっているのは、食べてみて卵のせいだと分かった。でも今日が何の日なのかは一向に分からない。何かこう・・・喉元まで出てきてるんだけどそこで引っ掛かってると言うか・・・そう表現するのが相応しい気分だな。
 食べつつも必死で考える。晶子と関係がある日じゃないことは確かだ。俺と晶子が出会ったのは忘れもしない10月11日の夜。場所は何時ものコンビニ。それはあと1ヶ月くらい先のことだからそれはそれとして・・・。うーん・・・。どうしても引っ掛かって出てこない。何かあった筈だ。何か・・・。

「井上さんが思い出させてくれるって言ってるんだから、その時まで期待して待ってる方が良いんじゃないか?」

 不意にマスターが言って来る。ふと晶子の方を見ると、かなり食べ終わっている。一方の俺はまだ半分も食べていない。それだけ考えることで頭がいっぱいで食が進んでなかったってことか。

「・・・ねえ、マスター。それに潤子さん。まさかとは思いますけど、晶子と何か裏取り引きしてるんじゃないでしょうね?」
「別に。」
「裏取り引きって・・・悪いことするわけじゃないんだから。」

雨上がりの午後 第935回

written by Moonstone

 ふと潤子さんの方を見ると、フライパンに落とし蓋をして蒸し焼きしている間にポタージュスープを温めつつサラダを作っている。

2002/9/17

[シャットダウン中ですがいきなり更新(笑)]
 皆様、如何お過ごしでしょうか?シャットダウン中ですが、話したいことが出てきましたので今回の更新となりました。今後もこういうことがあり得ますので、毎日のチェックはお忘れなく(笑)。
 さて、史上初の日本と北朝鮮の首脳会談が近づいています。北朝鮮は、戦前、戦中を通して占領、支配してきたアジア各国の中で唯一国交がない国であり、所謂「過去の清算」も行われていない(それそのものも極めて不充分ですが)唯一の国です。今回の首脳会談で国交正常化へ向けた「包括的な協議」(小泉首相)が行われる予定とされていることは、非常に大きな意味を持ちます。
 その一方で、北朝鮮に家族を拉致されたとされる所謂「拉致疑惑」問題の解決なしに国交正常化はあり得ない、拉致問題が解決しなければ会談を中止するべきだ、などという主張が、拉致疑惑の関係者や議員、識者、マスコミなどから上がっています。しかし、これは国家間の問題解決の順番を間違っています。国家間に存在する問題を解決するには、まず正式な外交ルートである国交を確立することが必要です。その上で国家間の諸問題を交渉のテーブルに乗せて話し合いを進めて解決する、というのが外交の基本です。拉致疑惑のご家族の心中は察して余りあるものがありますが、だからといって右翼論客やメディアが市民運動を揶揄するために度々言うように「感情的」になってはいけません。
 「この問題が解決しなければ先はなし」というこの種の主張は、アメリカがイラクに対して言う、国連の査察を受け入れなければ自国の脅威とみなして先制攻撃する、という国連憲章を無視した(武力行使は他国からの攻撃に対する自衛のみ容認される、と51条にある)暴論と同じレベルです。イラクが国連の査察を無条件に受け入れることは言うまでもありませんが、アメリカが言う大量破壊兵器開発疑惑やテロリスト支援疑惑の証拠すら示せず、査察を受け入れなければ先はなし、というのはとても正常な外交とは言えません。外交手段による国家間の諸問題の平和的解決が、第二次世界大戦で世界が学んだ教訓の筈です。日本もアメリカも今こそ外交の原点に立ち返る時です。

「ん?何だ?」
「どうしたの?」

 二人が尋ねてきたところで、俺は少し身を乗り出して単刀直入に質問を投げかける。

「今日って何の日か、知ってますか?」

 これで長々と心に引っ掛かっていた謎が明らかになる。そう思ってマスターと潤子さんの言葉に期待を寄せる。すると、マスターと潤子さんは顔を見合わせて、意外そうな表情で答える。

「・・・敬老の日の翌日だろ?」
「別に旧盆でも何でもない、普通の土曜日だけど・・・?」

 何だか聞いた俺が間抜けに思えて来た。・・・否、絶対何かある。晶子は、覚えてないみたいですね、とか、覚えていないことで意外性が増す、とか言っていた。何もない筈がない。きっと何か隠してるに違いない。俺は重ねて問い掛ける。この謎を解く鍵は二人が握っているに違いない。晶子が頑として教えてくれない以上、二人から聞き出すしか謎を解く術はない。

「いや、だって晶子は今日、出し抜けに俺の家に弁当を持ってきてくれて、そこで『今日が何の日か覚えてますか?』って聞いてきて、俺が覚えがないって答えると呆れたような顔をされたんですよ。何かあるんでしょ?ねえ。」
「井上さんがそう言ったからって、俺と潤子に聞かれてもなぁ・・・。」

 俺の問いにマスターは困ったような顔をして洗い物を再開する。マスターは駄目か。となると潤子さんしか居ない。俺は潤子さんに目で回答してくれるように訴えかける。

「・・・さあ。別に思い当たることはないけど。」

 潤子さんは首を傾げてそう言うと、夕食の準備を再開する。隠してる。絶対何か隠してる。・・・もしかして、晶子と口裏合わせをしてるんじゃないか?策士としては相当な晶子のことだ。可能性がないとは言い切れない。これ以上マスターと潤子さんに尋ねても逸らかされるのがオチだろう。うー、気になって気になって仕方がない。
 俺はテーブルを人差し指で叩きながらあれこれ考える。敬老の日の翌日。そう言えば、昨日は休みだってことで昼まで寝てたな。それは今日も変わらないか。コンビニに弁当を買いに言ってそれを食ってから試験勉強をして、5時半過ぎに着替えてバイトに出掛けて、ここで晶子と合流したよな・・・。晶子が弁当を作ってきてくれて一緒に食べたこと以外は今日と同じだ・・・。うーん・・・。何かあったような気がしないでもないんだけどな・・・。

雨上がりの午後 第934回

written by Moonstone

「マスター、潤子さん。一つ聞きたいことがあるんですけど。」

 俺が話を切り出すと、マスターと潤子さんが手を休めて俺の方を見る。

2002/9/14

[暫くお休みします♪]
 予定していた機器の最終調整は、部品発送元が発送先を間違えてしまって届かないという変なトラブルによって実現しませんでした(爆)。まあ、こういうこともたまにはありますわな。最終調整は連休明けに持越しです。
 遅くなりましたが、私は今日9/14から夏休みです。私の職場は一斉に全員この週に休み、というのではなくて、個人個人で計画を立てて取るんです。来週1週間丸々休むので10連休ですね。夏の暑い盛りと身体の辛い時期を乗り切った分、ゆっくりのんびり休みつつ、作品制作をするつもりです。で、ネット環境も大幅に制約されますので、日付上では明日9/15から9/23までシャットダウンさせていただきます。
 シャットダウン中は原則更新しません。勿論このコーナーも。ただ、何かの気まぐれで更新するかもしれませんので、最低でも毎日1回のチェックはお忘れなく(笑)。更新するとしたら更新時間も何時もとは異なります。幸いにしてキーレスポンズの良いノートPCが使えることになったので、懸念していた作品制作のハンディも解消されます(このお話もそのノートPCで書いてます)。何にせよ約1週間ゆっくり休んできます。それでは、また後日お会いしましょう。(^^)/~~~
その音で、それまで俯いていた頭がむっくりと起き上がり、髭をたっぷり蓄えた顔がその様子に似合わない微笑みで俺と晶子を出迎える。

「「こんにちはー。」」
「おっ、今日は二人一緒か。潤子はもうすぐ来るだろうから、何時もの席に座ってなさい。」
「「はい。」」

 俺と晶子は正面にあるカウンターの、何時もの椅子に腰掛ける。場所は中央付近、俺の左隣に晶子がいる。これも何時もの週末と変わらない。再び俯いたマスターの方から水の音がする。どうやら洗い物をしているらしい。コーヒー作りが主な仕事というか、接客以外はほぼそれだけしかしないマスターにしては珍しい。まあ、俺と晶子が居ない間は潤子さんと二人で切り盛りしてるんだから、やらざるをえない時も当然あるだろう。

「祐司君、晶子ちゃん、こんにちは。」

「あ、こんにちは。」
「こんにちは。」
「今から夕食準備するから、もうちょっと待っててね。」

 髪を後ろで束ねた、たんぽぽの刺繍が施されたエプロンを着けた潤子さんが駆け寄ってきて、俺と晶子の後ろを通り抜けてカウンターの隅から中に入る。そして休む間もなく夕食の準備に取り掛かる。これも何時もと変わらない。待ち受けている忙しさを前にした、ひとときの安らぎの時間。さて・・・役者が揃ったところで早速聞いてみるか。

雨上がりの午後 第933回

written by Moonstone

 カランカラン。
聞き慣れたカウベルの音が夕暮れ時の空に響く。俺と晶子のバイト先「Dandelion Hill」で人を出迎える最初の音だ。

2002/9/13

[急いでお話しています(汗)]
 キーレスポンズの良いノートPCを暫く借りられたんですが、ファイルセーブに失敗して、この日記部分が全部消されてしまいました(泣)。どうもFDは機種によって相性の良し悪しがあるような・・・。ま、何時までも悔やんでても先に進まないので、今日のお話を始めます。
 昨日始めた時はどうなることかと思った2台目の機器配線&組立ですが、予想外に呆気なく終了しました。やっぱり前日に下準備をしたのが有効だったようです。何せ24×2の配線を所定の位置(回路基板のあるコネクタの決まったピン)まで長さを計って(まあ、それほど厳密じゃないですが)配線してコネクタ接続できるようにしなきゃいけませんからね。1台目は下準備の仕方を間違って大変な目に遭ったので、学習効果(笑)を発揮して進めました。
 あとは細かい調整が残っているんですが、これは手間がかかるだけですので順調に進めば直ぐ終わるでしょう。そこで失敗が見つかると少々手間がかかるんですが、今までのことを思えば大したことじゃありません。書類の整理も済みましたし、ストックルーム(部品置き場)の在庫状況のチェックと不足分の発注も済みましたし、調整が終われば安心してシャットダウンが出来ます。さて、もうひと踏ん張りしますかね・・・。

「驚いた。凄く軽くなった。今まで自分の手で揉んだり湿布を貼るしかしなかったけど、それよりずっとすっきりした。」
「本を読んで覚えたんですよ。人にするのは今日が初めてですけどね。」
「へえ、本からか・・・。色々な本読んでるんだな。流石は文学部。」
「単に本を読むのが好きなだけですよ。それでたまたまマッサージのやり方みたいな本を読んで、試験勉強の休憩の時に自分で試して覚えたんです。」
「助かった。これで肩凝ったままバイトに出掛けなくて済むよ。」

 俺は部屋の鍵を取って、少し屈んで晶子の頬に唇を軽く押し付ける。晶子は驚いた様子でキスをした右頬に手をやって俺を見るが、直ぐにそれは嬉しそうなものに変わる。俺からアクションを起こすことはあまりないから、予想外だっただろうし、多分嬉しかったんだろう。

「たまには良いだろ?」
「・・・嬉しい・・・。また感動させられちゃいました。」
「さ、行くか。今日が何の日か、早く知りたいし。」
「ええ。」

 俺は戸締まりを確認してから先に晶子を外に出して、続いて俺が出てドアの鍵を閉める。鍵をズボンのポケットに仕舞って晶子と並んで歩き始める。・・・そう言えば、晶子は持ってきた重箱を持ってないな。俺の家に寄って片付けるつもりなのか?まあ、迷惑じゃないし、そこまで水道代をケチらないから、それならそれで構わないが。
 問題は今日が一体何の日なのか、ということ。これに尽きる。晶子に聞いてもバイトが終わるまでは絶対に口を割らないだろうし・・・。そうだ、マスターか潤子さんに聞いてみよう。もしかしたら何か知ってるかもしれない。時間が過ぎるのが待ち遠しいとこれほど思うのは、恐らく初めてなんじゃないかな・・・。

雨上がりの午後 第932回

written by Moonstone

 晶子が俺の両肩から手を離して問い掛ける。俺は右肩から左肩の順で交互に回して感触を確かめる。確かにマッサージ前よりぐっと楽になった。俺は立ち上がって晶子に言う。

2002/9/12

[さあ、仕切り直しだ!]
 昨日(実際は9/10)ICを間違えるという大ポカをやらかして少し遅れた機器制作は、2台目の組み立てをやっている最中に肝心要のICが届いて、先に汲み上げた1台目の動作試験に・・・入ろうとしたところで、先行している上司からレギュレーター(ある値の電圧を出すIC)を放熱するようにした方が良いとの指摘を受け、急いでその部分を改良して(少々面倒でしたがやむを得ない。ICが熱で壊れてしまう可能性があるから)、それを終えてようやく動作試験に入りました。
 動作試験は2回ほどトラブルが発生しましたが、何れも直ぐに原因が判明したので(1つは配線が何時の間にか外れていた)簡単に解決して無事1台目が完成しました(喜)。そして時計を見たら・・・とっくに19:00越えてやがる(汗)。私は持病のせいで無理が利かない身体なので19:00には帰るようにしているんですが、上司からの遅れを少しでも取り戻そうと必死に動作試験を続けていたら「期限」を大きくオーバー。それも前日に続いて。身体には良くないんですけどね〜。
 問題は2台目。下準備の配線は大体済ませてありますが、電源部分の配線がまだ手付かず状態。これが直ぐに済むようなものではないので(曲芸的な配線技術を必要とする。自分で設計しておいて何だけど(爆))、遅れは取り戻せそうにないです。何とか今週中に区切りをつけたいんですが、果たしてどうなることやら・・・。今日明日の踏ん張りにかかっていると言えるでしょう。明日は更新が遅れるかもしれませんがご了承ください(既に「期限」オーバーは覚悟の上)。
電磁気学Tには追試はないそうだし、これは必須科目だから単位を落としたら2年から3年へ進む時に留年へ一歩近付くことになる。留年は不可だから−4年分しか学費は用意しないと言われている−自力で何とかするしかない。ま、帰ってからと明日に大きく時間を割いてしっかり取組むか。

「もうそんな時間か・・・。早いなぁ。」
「CDだと大体2枚半ってところですけど、その間、祐司さん、ちっとも視線を机から逸らしませんでしたね。」
「一応本番を想定してるからな。本番で視線をあちこち動かしてたらカンニング扱いされて失格決定になりかねない。」
「本当に凄い集中力ですね。こんなことを試験開始からずっとやってきたんでしょ?私じゃ到底ついて行けませんね。」
「新京大学の理系学部は試験が厳しいって聞いてたし、それを承知で受験して入ったんだから今更文句言っても始まらないさ。」

 俺が席を立とうとすると、晶子が俺の元に駆け寄ってきて俺の両肩を軽く下に押す。座ったままで、という意味だろうが、一体何だろう?

「肩凝ったでしょ?マッサージしますから。」
「出来るのか?」
「ええ、一応。短時間コースで行きますね。料金は勿論無料ですから。」

 苦笑いして椅子に座り直した俺の両肩を、晶子がゆっくり揉み解しはじめる。意外に握力があるのか、それとも俺の肩がそれだけ凝っていたのかは分からないが、かなり痛く感じる。だが、痛みの中で次第に肩が軽く感じてきたのは事実だ。どうやらかなり本格的なマッサージらしい。

「はい、おしまい。どうですか?」

雨上がりの午後 第931回

written by Moonstone

 高校時代はご丁寧にも補講やらペナルティーが−問題集を解いて提出するとか−あって、それをすれば済んだが、大学はそうはいかない。

2002/9/11

[災難の日]
 昨日は波の谷間の日で、午前中から午後暫くにかけて身体がまったく動かず、仕事になりませんでした。こういう日、ここ3、4ヶ月の間に1ヶ月に1度の間隔で周期的に訪れるようになっていて、その日はどうにも身体が動かないので困っています。医者が言うには回復の途中という証拠らしいんですが、迷惑なことこの上ないです。女性も毎月苦しんでるんでしょうね。形は違いますが。
 で、仕事の方でも大ポカをやらかしまして、設計ミスが発覚したことで組み立て最中だった部品を交換する羽目に。それはまあ、部品を入れ替えて配線を繋ぎ直せば済むことだったんですが(それでも手間はそれなりにかかる)、もう一つはちょっと洒落にならない大ポカでして・・・ICを設計の位置どおりに差し込んで電源を入れても、動作しないばかりかICの表面は熱くなり(これは回路異常の典型的症状です)、ICのピン(足)の電圧推移を見てみても予期しない動作をする。訳が分からないままICが壊れたと判断した私は、別のICに交換してみたんですが・・・こちらだとOK。「?」と思っていた私に同じ機器を組み立てていた上司がICカタログを持って来て一言。

このIC、1回路だけのICじゃないの?

 実はこの機器に使うICは、1つのICに同じ回路が2つ入っているタイプなのですが、私が上司から受け取ったカタログを見てみると、壊れたと思っていたICは1つのICに1回路のみ。当然ピン配置(何処に電源を入れるとか入力信号を入れるとか)は違う。これじゃ100年経っても動く筈はなし。慌てて2回路のものを注文しましたが、上司曰く「アホだなぁ〜」。・・・言い訳しようがありません。何処でどう間違えたのやら。トホホ・・・(泣)。
先にルーズリーフの楽譜に演習問題の文と図を書き出して、それが終わったら教科書を閉じて解答にかかる。背後で食器が軽くぶつかり合う音が聞こえるが、気になるほどのレベルじゃない。それより記憶が新鮮なうちに問題を解くのが先決だ。
 俺はシャーペンを動かす手を度々止めて、考え思い出ししながら解答していく。公式はややこしいがある程度法則性があるから、それを掴んでしまえば一つの公式から芋蔓(いもづる)式にずるずると引っ張り出せる。記憶にある公式を変形したり数値を当て嵌めたりしながら、一つ一つ問題を解いていく。・・・これはどうにかなりそうだな。
 概念を理解しているかどうかと言われると困ってしまうが、兎に角今は目先の試験という大きく険しい山を突破するのが先だ。高校時代、一応物理は得意科目だったから−周囲からはよく変人扱いされたが−、公式だけ覚えているというわけでもない。概念がどうも掴み辛い個所があるというくらいのものだ。
 どうにかひととおり解き終えた。やはり公式や定義を覚えきれてなかった部分があってどうしても解けなかったものもあるが、大体2/3は完全に解答出来た。さて、答え合わせをするか・・・。講義中必死に取ったノートにある解答を見ながら答え合わせをしていく。・・・結構出来ている。「○○の定義『・・・』を利用して」とかいう部分をそっくりぬかした部分が幾つかあるが、そういうのはまあ別として、どうにか解答に行き着いている。概念の理解に苦しんだ辺りは流石に正解率が悪い。数値計算をするだけの部分にも関わらず、てんで違う値になっていたりする。この辺を特に念入りに復習する必要がありそうだな。
 続いて電磁器学Tに取り掛かる。これは概念が分かり辛いところが多いので−無限大とか言われてもピンと来ない−かなり苦しむことになりそうだ。少なくとも高校の物理の延長線上にあるようなところはきちんと押さえてあるつもりだ。明日はこれに大きく時間を割くことになりそうだな。教科書の例題や演習問題を見ながら−例題は勿論解答を見ないように−懸命に公式や定義と格闘する。やっぱり厄介だ。今までの試験の中では電子回路論Tと同じくらい、否、それ以上に突破が難しそうだ。だったら尚更しっかりやらないとな・・・。

「祐司さん。時間になりましたよ。」

 ようやく1/4程問題を解いたところで晶子から声がかかる。それまで張り詰めていた緊張の糸がぷっつり切れて、俺はシャーペンを放り出して背筋を伸ばしながら溜息を吐く。これはまだまだ勉強が足りないな。範囲が広いくせに講義の内容が教科書そのまま、という感じだったから自分で補うしかない。この辺が高校時代と大きく違う。

雨上がりの午後 第930回

written by Moonstone

 晶子がカップなどを片付け始めるのを見て、俺は放り出したシャーペンを持ってまずは電気回路論Tの方から試験勉強を再開する。

2002/9/10

[寝過ごしちゃった(汗)]
 昨日は日曜からの移行に加えてハードな仕事に慌しい帰宅後の行動(夕食を食べつつ洗濯を進めて、約1時間後に病院へ行って、帰ってきたら洗濯の続きや洗い物)で疲れ果てて居眠り。一旦目を覚ましたんですが「まだ良いか」と思ったらすうっと意識がなくなって、目が覚めたら23:30過ぎてました(汗)。やっぱり疲れてたわけね。
 昨日の更新では「雨上がりの午後」の本編を追加しましたが、定期更新制度がなくなったので、何時何が更新されるかは分からないということです。シャットダウン前にもちょっと更新するつもりですので、まめにチェックしててくださいね(はぁと)。明日もハードなので今日はこの辺で。どうせなら睡眠薬飲んでしっかり寝て、目覚めてから更新するんだったな・・・。
知りたいと思うほどその気持ちが膨らんで来る。俺に関係があるということなんだから必然的と言えるだろう。

「なあ、晶子。俺を感動させる必要があるっていう今日は、一体何の日なんだ?」
「バイトが終わったら必ず思い出しますよ。」
「そういう意味ありげな言い方されると余計に気になって仕方ない。教えてくれよ。」
「覚えてないから意外性があるんですよ。今教えちゃったら折角のそれが台無しになっちゃいますから。」

 晶子は禅問答みたいな言葉で巧みに俺を逸(はぐ)らかす。策士の晶子に俺が適う筈もないか・・・。俺は溜息を吐いてギターを片付けにかかる。ストラップから体を引き抜いてそのストラップを外して、ソフトケースに仕舞う。シンセサイザーのボリュームを最小限に絞って電源を切り、最後にパソコンのシーケンサソフトを終了させて電源を切る。これで片付けは終了。ついでに息抜きも終了だ。
 時計を見ると3時半を少し過ぎたところだ。バイトに出掛けるのは余裕を持って5時40分頃にしているから、まだ2時間ほどある。今度は教科書やノートの公式なんかを見ずに演習問題を解けるかどうかを試すことにするか。2時間あればそれなりに出来る筈だ。あとは帰宅してからと明日に振り分ければ準備は整うと思う。

「じゃあ、俺は試験勉強の続きをするから、5時半になったら教えてくれないか?」
「ええ、分かりました。後片付けもしておきますね。」
「頼むよ。」

雨上がりの午後 第929回

written by Moonstone

 俺を感動させる・・・?これも今日という日と意外性とやらに関係があるんだろうか?バイトが終われば分かることらしいが、今知りたいことには変わりはない。

2002/9/9

[い〜も〜む〜し、ゴ〜ロゴロ♪]
 昨日はほぼ1日寝てました(爆)。やりたいことは色々あったんですがどうもあと一歩やる気が出てこなくて、布団に転がってました。座ったり立ったりしていた時間の合計より寝てた時間の方が多いです、はい(^^;)。まあ、何もしないでゴロゴロしているだけという日もあっていいでしょう。週末2日共作品制作は大変ですし、そうでなくても疲れ易い身体を存分に休めさせる時間が普段はないんですから。
 ですから変わったことなんてありゃしません。まあ、昨日知ったことといえば、宇多田ヒカルが結婚したってことくらいですか。でも、言っちゃ悪いですがもって2、3年で離婚でしょう。宇多田ヒカルが芸能活動を減らすか辞めない限りは。だって、近年、女性が著名な芸能人で結婚してずっと続いているなんてないでしょう?安室にしかりPUFFYの片割れ(名前忘れた)にしかり飯島直子にしかり。両方が芸能活動をしていれば顔を合わせる時間を仕事以外じゃそう簡単に持てないでしょうし(仕事で顔を合わせても夫婦やってる時間なんてありゃしない筈)、結局「すれ違いが多い」で離婚となるのがオチでしょう。
 「結婚したら女は家庭に入れ」と言うつもりはないですし、一旦仕事を辞めたら復帰は難しいのが現状です(芸能界はそうじゃないかも知れんが)。でも、顔を合わせて話をする時間を持って夫婦であり、一つの最小単位の家族でしょう。仕事の場で家庭を構築するなんて出来ないんですから。先にも述べたように、仕事で顔を合わせても夫婦やってる時間なんてありゃしない筈ですから。今後どうなるかは当人達次第ですが、「ああ、やっぱりな」という結末にならないようにしてほしいものです。
ベースとドラムも複雑になる。4WAY(註:両手足を独立させて演奏する、ドラムの基本奏法の一つ)が出来ないと絶対叩けないフレーズだ。これは完全に俺の趣味だ。俺はそんな中で出来るだけ滑らかに、そして軽やかに歌うようにギターを弾く。音が伸びるところではアームも効かせて、音が生きていることをアピールする。ここが自分でアレンジしておいて一番苦戦した、そして一番出来が良いと思っている部分だ。何時もなら割と適当に弾くところだが、今日は晶子という大切な観客が居る。自然と気合いが入る。
 楽器全てが勢いを最大限まで持ち上げて、一転して静かな雰囲気を醸し出す。ストリングスは控えめで音もあまり動かず、ピアノもクイ(註:コードの音の塊のこと)が中心になり、ベースは少々フレーズがあるがドラムは極めて控えめにシンバルワーク中心になる。俺のギターはその中でリバーブを効かせた音を響かせる。そして細かいシンバルワークとジャズっぽいピアノとベース、白玉(註:二分音符或いは全音符のこと)が続くストリングスの中で、俺はギターをジャズっぽくフレーズを下らせていく。そしてストリングスとベースと共に音を伸ばしつつ自然に音が消えるのを待つ。
 音が消えて俺がギターから手を離したところで、パチパチと拍手が起こる。晶子が感動した様子で手が痛くなりそうなほど叩いている。オリジナルとはかなり違って忙しない感じのアレンジバージョンだが、どうやら晶子には気に入ってもらえたようだ。やっぱり人に聞いてもらって拍手をもらえるのは嬉しい。

「凄いです。こんなに凄いアレンジバージョンがあるなんて・・・。のめりこんじゃいました。」
「ふう・・・。ステージで演奏する時並に気合いが入ったよ。客が居ると違うな、やっぱり。」
「これって、お店に持っていくつもりはないんですか?」
「店じゃアコースティックギターの音が染み付いちゃってるからな。多分変に聞こえるから持っていくことはないと思う。」
「じゃあ、私だけが聞けるんですね?」
「そうだな。そういうのもあって良いだろ?」
「本当は私が祐司さんを感動させなきゃならないのに、不覚にも感動させられちゃいました。」

雨上がりの午後 第928回

written by Moonstone

 一旦基本フレーズに戻ってストリングスとユニゾンした後、ピアノがジャズの様相を強め始める。ストリングスの動きも速くなる。

2002/9/8

[同人誌を読んで]
 金曜の夜、私からささやかな楽しみを奪った(大袈裟じゃないっす)テレビの問題は昨日無事解決しました。昨日は前日(つまり金曜日)遅くまで起きていたせいで出足が通常より1時間ほど遅れて始まりました。まあ、休日にすることといったら作品制作に決まってるんですが。制作そのものの時間は5時間ほどだったんですが、途中の休憩がやたらと長くなた影響で、完成した頃には既にテレホタイムまで1時間を切っていました。作品が完成したといっても、キーレスポンズの良い旧PCで書いたところまでですから、メインPCにファイルを転送してブラウザの大きさに合わせて改行を加える手間があるんですけどね。
 前日遅くまで起きていた理由はソフトウェアのダウンロードで時間がかかったことなんですが(56kモデムじゃ仕方ないわな)、その間、前日の夜届いた、通販で買ったエヴァ系同人誌を読んでました。7冊くらいまとめ買いしたうえに、1冊が物凄いボリュームの本だったので(数年間分の再録版)ダウンロードの間の暇潰しには十分すぎるくらいだったのですが、奇麗に装飾された表紙や中身を見ていて、イラスト、それにカラーの威力を思い知りました。
 私が仮に「Saint Guardians」や「雨上がりの午後」を出版したら、絶対無味乾燥な、哲学書か何かと間違うような表紙になるに違いありません(断言)。ただでさえオリジナル小説は需要が低いのに、そんな装飾では売れる以前の問題でしょう。やっぱりイラストは誰かに依頼するしかないんでしょうかね。でも、自分の好きな絵柄を持っている人は大抵多忙だったり有料だったり(これは実際に問い合わせないと分かりませんが)しますから、依頼し辛い。何方か「イラスト描いてやっても良いぞ」という奇特且つ慈悲深い方はいらっしゃいませんかねぇ・・・。
改めて俺の中での晶子の存在感の大きさを実感する。俺はそれに依存するんじゃなくて、それに負けないだけの存在感を晶子の頭に中に示せないと駄目だな。そうじゃないとさっき晶子が言った台詞じゃないが、晶子の彼氏失格だ。
 コーヒーを飲み終えた俺は試験勉強を再開しようと思うが、何か晶子に礼が出来ないかと考える。昼食を創って持ってきてくれた上に休憩のコーヒーも入れてくれた。・・・ま、俺が出来る礼といえば、ギターの音を聞かせることくらいか。俺は徐に立ち上がると愛用のエレキギターを−晶子の家に練習する時に持っていくやつだ−ソフトケースから取り出して、アンプとパソコン、そしてシンセサイザーの電源を入れる。

「何を演奏してくれるんですか?」
「『AZURE』のアレンジバージョン。ストリングスとかも入ってるからそれなりに様になってると思う。今まで非公開のやつ。」
「へえ・・・。」
「店じゃアコースティックギターでやるのが暗黙の了解みたいなもんだからな。データは作ったけど店に持っていってないんだ。家で息抜きと指慣らし兼ねてたまに弾いてる。」
「じゃあ、私が初めて聞く人間なんですね?」
「そういうこと。それじゃ・・・ちょっと待って。」

 俺は起動したパソコンのマウスを操作してシーケンサソフトを起動してデータファイルをロードする。画面に音符やコントロールチェンジ(註:MIDIでボリュームや音程を変化させたりする機能が割り振られた番号とそのデータ)があることを示す記号が並んだのを確認して、演奏開始のボタンをクリックする。
 俺が考えた、柔らかいストリングスのイントロに続いて、俺のギターが入る。一回目はギターのみ、二回目はストリングスとピアノとベースが入る。そしてサビのところでドラムのシンバルワークが入り、ストリングスが勢いを増す。俺のギターはその中にエレキギター特有の伸びと響きを使った音を漂わせる。
 ストリングスとピアノとベース、軽いドラムの音が続く中、俺の指はフレットを忙しなく動きまわり、弦を爪弾く。ストリングスとピアノが控えめになったところがギターの独断場だ。フレットの上を動く左手がより動きを激しくし、右手が指が残像を見せるほど早く弦を爪弾く。俺が得意とするライトハンドを織り交ぜたフレーズが、控えめなストリングスに乗って部屋にこだまする。・・・良い感じだ。

雨上がりの午後 第927回

written by Moonstone

 晶子が嬉しそうに微笑む。本当に心安らぐ・・・。晶子が居ると居ないとではこんなに違うんだな・・・。

2002/9/7

[それは昨日のことでした]
 帰宅した私は真っ先に冷房(ドライです。雨でジメジメしてたので)のスイッチを入れ、続いてテレビの電源を入れた時のことです。金曜の夜7:30〜8:00、テレビ朝日系のアニメ「あたしンち」は、月曜から金曜の仕事でへろへろになった私の心を和ませてくれる、最近特別お気に入りの番組なんです。レッドキングとピグモンを(分からん人、すみません。両方怪獣です)合わせたような母が巻き起こす様々なトラブルは、理屈抜きに笑えるんです。今週はハードだっただけに尚更楽しみにしていたんです(力説)。しかし、テレビの電源を入れて現れた画面は・・・

・・・砂嵐・・・?!
な、何じゃ、こりゃあーっ!!(激怒)

どうやら夕方の雷雨で共同アンテナがやられたらしいのです。どのチャンネルもまったく映らない。せめて音声だけでも、と思った私は、ラジオをテレビの音声に切替えて聞くことにしました。夕食を食べつつ聞こえて来るのは、愉快な母やみかん、ユズヒコ(プラス父(笑)やその他大勢)の声や様々な音・・・。

・・・む、空しい(号泣)

「あたしンち」は絵の要素が強いアニメなので(まあ、テレビは絵や画像があるからテレビなのですが)、音だけだとつまらないことこの上ない。テレビは復旧の見込みなし。私はどんよりとした気分で音声だけ聞いてました。恒例のおまけはよりによって間違い探し。絵がないと分かる筈もない。番組が終わった後、私は心の中で絶叫しました。

雷雨め−!私の楽しみを返せーっ!(激怒&号泣)

でも、その後通販で買った本(エヴァ系のやつ数点)とドーナツ10個とバッグを1050円でゲット出来てちょっと幸せ♪(安上がりな奴(^^;))
「駄目です。今日は祐司さんは受け身に徹して下さい。」
「・・・それも今日という日絡みか?」
「ええ。祐司さんは机に座って待ってて下さいね。」

 晶子はそう言って戸棚へ向かい、インスタントコーヒーを入れる準備を始める。一応ものは揃ってるし、コーヒーは昼の休憩の時によく飲むから−夜の休憩の時は缶ビールになったりする−晶子も所在が分かりやすい筈だ。晶子はインスタントコーヒーが入った瓶とカップ2つ、砂糖が入った金属の入れ物とクリープを取り出して、コンロで二人分の湯を沸かし始める。調理器具の所在は晶子の方がよく知っているから−情けない気もするが−晶子に任せておけば大丈夫だろう。
 程なく湯が沸く音が聞こえて来たかと思うとそれが止まり、何かをかき混ぜたりする音が聞こえて来る。コーヒーを作っている音だろう。俺は背筋を伸ばして腰を左右に捻りながらコーヒーが出来上がるのを待つ。一人だと休憩の支度とかも自分でしなきゃならないから、こういう時誰かが居てくれるのはありがたい。それが晶子なら尚更だ。
 俺は椅子から立ち上がってテーブルへ向かう。幾ら休憩といっても、折角二人居るのにそっぽを向きながらコーヒーを啜(すす)るなんて侘びしい話だ。俺が床に腰を下ろすと、晶子が砂糖とクリープとスプーンに続いて二人分のコーヒーを持って来て俺の向かい側に座る。そしてそのうち一方をスプーンと共に俺の前に差し出す。
 俺が先に砂糖とクリープを入れると、晶子は砂糖だけ入れてかき混ぜてから飲み始める。何分肩が凝る問題の連続だっただけに、コーヒーの芳香と苦みが何とも心地良い。俺は一口飲んだところでカップを置いて大きく溜息を吐く。本当に一息ついているという実感がする。自分一人でやってる時は試験勉強の番外編みたいな感じで何か味気なかったが、今日は晶子が作ってくれたせいだろう、本当に張り詰めていた緊張の糸が緩む。

「2時間以上もよく連続して出来ますね。私は1時間毎に休憩してますよ。」
「俺は一旦休憩すると結構長いからな。それに切りの良いところまで進めないと休憩したくないって思うから、長時間勉強、割と長時間休憩、っパターン。」
「それだけ集中力があるってことですよ。その反動が休憩時間の長さになって出て来るんですよ。」
「そうかな・・・。今日は何時も以上に集中出来た。晶子が本当に邪魔にならないようにしててくれたからな。」
「進級がかかった大切な試験の勉強を邪魔するなんて、祐司さんの彼女失格ですよ。」
「そういう気遣いが嬉しいんだよな。ありがとう。」
「どういたしまして。」

雨上がりの午後 第926回

written by Moonstone

「お疲れ様。コーヒーでも入れましょうか?」
「今日は俺がやるよ。晶子は客だから。」

2002/9/6

[マスコミは国民の敵だ!]
 先日話題にした東京電力の原子力発電所のデータ改ざん事件ですが、これは企業ぐるみに加えて国ぐるみだったことが判明しました。東京電力の副社長が経済産業相の原子力利用に関する諮問機関の委員に名を連ねているのです。そして原子力発電所を管理する保安院は、2年前に内部告発で情報を得ていながら、今日に至るまで事態を放置していたどころか、先の諮問機関では「多少の傷なら原子力発電を続行して良い」ように規則を改めようとしていたというのです。これが企業と国がグルになって、安全より原子力推進を優先させていたと言う以外、どう言えばいいでしょうか?
 ところが、マスコミは先日も述べたように疑わしい原子力発電所を停止して総点検を実施しろ、とか、こういう重大な問題に触れようとしません。その根本にあるのは広告料収入です。マスコミは広告料収入で経営しているのです。リスナーの皆さんが払っている(であろう)新聞料金は、マスコミの収入というより販売店の収入と考えて良いでしょう。それくらい、マスコミの広告料収入依存は強いのです。だから企業の問題点を書けない。
 新聞をよく見て下さい。全面記事で埋め尽くされているページなんてまずない筈です。広告が紙面の大半を占めていることも珍しくありません。こうした広告料はちょっとした広さで数万、数十万。全面広告ともなれば数千万単位の金が動きます。こんなことだから国民の視線に立った報道をせず、政府、大企業や財界の視線で記事を書くのです。国民の痛みや苦しみが分からないのです。重要法案の問題点を突けないのです。
 マスコミは政府与党、大企業や資本家のためにある、言い換えればブルジョア階級のものと考えるべきです。ブルジョワジー、言い換えれば無産階級、労働者である国民が接するべきものではありません。労働者たるもの、国民たるもの、購読料金を得ておきながらその視線や意向を無視するマスコミなど切り捨てて、大多数の国民の視線に立った報道をする「しんぶん赤旗」を読むべきです。私は共産党員ではありませんが、昨今のマスコミの退廃ぶりを見るにつけて強くそう思います。
。だが・・・俺と晶子が出会ってからまだ1年経ってないから、今日は記念日もへったくれもない筈だ。何があったか色々考えてみるが、思い出されるのは宮城とのぎくしゃくした関係を修復しようと躍起になっていたことくらいだ。こんなことはこの場で思い出したくなかったが仕方ない。それにしても一体何なんだ?

「晶子。覚えてないのは悪かった。だから教えてくれ。今日は何の日なんだ?」
「答えは夜、バイトが終わってから教えますよ。いえ、思い出してもらいますよ。」
「何かよく分からないけど、今じゃ駄目なのか?」
「今だと、祐司さんが覚えてないことで意外性が増すところに水を差すことになっちゃいますから。」

 ???どういう意味だ?謎めいた晶子の言葉を受けて俺は再度考えてみるが、まったく思い当たる節がない。困ったな・・・。俺が分からないことで晶子が分かっていること。少なくとも出会ってまだ1年経ってないから二人の記念日に該当する日じゃないことは確かだと思うが、気になって身体がむずむずする。
 俺と晶子はその後和やかに昼食の時間を過ごしたが、俺が時々今日が何の日が尋ねても、晶子はバイトが終わってから思い出してもらいます、の一点張りで教えてくれなかった。晶子も意外に強情なところがあるから、こりゃ晶子の言うとおりバイトが終わった後を待つしかなさそうだ。
 俺は昼食後、試験勉強を始めた。今度は電気回路論Tと電磁気学T。共に厄介な科目だ。正直な話、講義を聞いていても殆ど理解出来なかった。何でも聞いた話によると、講義や教科書の演習問題から出題されるそうだから−この辺の情報は智一が意外に詳しい−、教科書の演習問題とノートに記録しておいた演習問題を、教科書やノート記載の公式と見比べながら解いていく。これがなかなか厄介だが、教科書を見ながらなら解けないこともない。俺は必死に机に向かい続ける。
 ふとベッドの方を見ると、晶子がヘッドホンをしてベッドに腰掛けてCDを聞いている。食事が済んだ後後片付けを済ませて帰るのかと思ったら、邪魔にならないようにするから居させてくれ、と言ってきた。勉強の邪魔にならないならCDを聞くなり雑誌を読むなり好きにして良い、と俺が言ったとおり、晶子は俺の勉強の邪魔にならないようにしている。どんな試験勉強なのか、と覗いて来るかとも思ったがそんなこともなく、俺が気にしなければ居ないも同然の存在感になっている。流石にかつて俺をストーカーの如く執念深く追い駆けただけのことはある。
 ひととおり問題を解き終えたところで、俺はシャーペンを放り出して背骨をぐっと伸ばす。ボキボキという音がする。時計を見ると3時を過ぎている。一息つくか、と思ったところで晶子がヘッドホンを外して歩み寄って来る。CDを聞くことで頭がいっぱいかと思ったら、俺の様子を監視していたようだ。

雨上がりの午後 第925回

written by Moonstone

 晶子は少し呆れた顔で小さい溜息を吐く。重大なことではないようだが、晶子としては覚えておいて欲しかった日らしい。

2002/9/5

[大失態とはまさにこのこと]
 連載をご愛読くださっている皆様は、昨日の分を見て「?」と思われたかもしれません。私はまったく気付かなかった上に、掲示板JewelBoxでご指摘を受けても当初は何のことやらさっぱり分かりませんでした。で、暫く考えた後、もの凄く嫌な予感がしてこのコーナーのウィンドウを開いて、昨日と一昨日の連載を見比べること約10秒。

・・・あ(滝汗)

 はい、そうです。昨日の連載の大半が一昨日の連載と同一部分だったのです。転寝直後で頭が多少ボケていたとか(そのくせ日記部分はしっかり書いてる)、一昨日の分が何処で終わっているかきちんと確かめずに惰性で書き溜めからコピー&ペーストしてしまったとか、言い訳しません(してんじゃねえか)。読者の皆様、ごめんなさい(_ _)。その埋め合わせといっては何ですが、今日は連載部分を拡張します。昨日の分とあわせてご覧下さい。
 腹の虫が騒ぐので、俺は梅干しの種を手に吐き出して、何度か噛んでから飲み込む。それでも腹の虫は騒ぎを鎮めようとしない。それどころかもっとよこせとさえ言って来る。普段ならコンビニ弁当で満足する筈の俺の腹の虫が、もっとよこせ、もっとよこせ、とせがんで来る。俺の意志と一致しているから余計に始末が悪い。俺は半ば本能的にお握りとサンドイッチを次々取っては口に放り込む。

「祐司さん、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。量はそれなりにありますから。」
「・・・あ、何せ昼飯にこんな美味いものが食えるのが嬉しくてさ、腹の虫が大騒ぎしてるんだよ。普段は学食かコンビニの弁当だろ?だから手作りの料理がたらふく食えるのは本当、嬉しいよ。ありがとう。」
「お弁当一つでそんなに喜んでもらえると、何か恐縮しちゃいますね。」

 晶子がはにかんだ笑みを浮かべる。俺にしてみれば、自分の試験勉強や家のこともあるだろうに、俺のために弁当を作って持ってきてくれたんだから、恐縮されると逆に困っちまう。・・・でも何で今日来たんだ?先週の土曜日でも別に良い筈だし、作って持って来いなんて命令した覚えもないし・・・何でだ?

「それにしても、何で今日いきなり作ってきてくれたんだ?」
「前に聞いたの覚えてます?『来週の土曜日空いてますか?』って聞いたこと。」
「・・・そう言えばそんなこと聞かれたな。でも、あの時は聞いてみたかっただけとか言ってなかったか?」
「そうですけど・・・。祐司さん。」

 晶子が急に真剣な表情をして身を乗り出して来る。サンドイッチを食べていた俺はその迫力に押されて、急いで咀嚼して飲み込んで、晶子の出方を窺う。・・・俺、何か晶子を怒らせるようなことしたか?少なくともこれまでは喧嘩もしてないし、今日も今に至るまでトラブルがあったとは思えないし、そんな覚えもない。

「何だ?」
「今日、何の日か覚えてないんですか?」
「今日?・・・何かあったか?俺と晶子が出会ったのは確か10月11日の筈だし、最初のキスはクリスマスの夜だったよな?それ以外に記念日に相当する日なんてあったか?覚えがないぞ。」
「・・・覚えてないみたいですね。」

雨上がりの午後 第924回

written by Moonstone

 俺と晶子は流しへ行って手を洗って、冷蔵庫に取り付けたタオル掛けに掛けられたタオルで手を拭いてテーブルへ戻る。腹の虫が暴れてきた。早く晶子の手料理をよこせ、と言っているような気がする。弁当を前にすると腹の虫の意志と俺の意志が一致して、食事よこせ、と手に要求して来る。

「じゃあ、いただきます。」
「はい、どうぞ。私もいただきます。」

 俺は早速お握りに手を伸ばし、齧り付く。ほんのりした塩味と共に独特の酸味が口に広がる。梅干しが入っているのを引き当てたのか。コンビににもお握りがあるが食べたことはない。自分で包装を取って海苔を巻くという作業が面倒に感じてならないからだ。こんな不精じゃ、自炊なんて夢のまた夢だな。

2002/9/4

[辞任で終わりですかい?]
 東京電力の原子力発電所のデータ改ざん事件で、社長他役員が総退陣するとのこと。退陣・・・言い換えれば辞任、ですよね。不正を知たことが明らかで起訴されても尚議員辞職をしない鈴木宗男よりはましとは言え、このまま放置されていたら重大事故に繋がりかねなかったデータ改ざんで、辞任=辞職で退職金たんまりもらってさよなら、でおしまいなんですか?これを一般社員がやっていたら、間違いなく懲戒免職、退職金無しで放り出され、再就職などままならないでしょう。それが社長とかになると、重大責任があっても辞任で済んで、退職金もたんまりもらってほとぼりが冷めたら財界の要職に復帰、という「救済」シナリオが用意されてるんですか。実に羨ましいものですねぇ。
 マスコミも事件の重大さを報じる一方で、こういう筋の通らないことがまかり通る事実に何ら触れようとしません。それはマスコミが財界の権力に擦り寄って情報を得ているからであり、財界の意向に反することは書けないのです。それは、これだけの重大事件が発覚し、直ちに原子炉を停止して総点検を実施すべきなのにそれを一切主張せず、ただ役員の退職の様子を報道しているだけの様子にも象徴されます。
 トップダウンの組織なら、上へ行くほど責任が重くなるのは当然。企業は上の指示や命令なしには動かないのです。その規模が大きければ大きいほど。その方針が道義的に誤っている、などと異議を唱えるから、企業の中で共産党員が嫌われるわけです(東京電力、中部電力、関西電力では、共産党員に対する思想差別が長く続き、最終的には原告の共産党員の全面勝利の和解で集結しました)。辞任ではなく懲戒免職にすべきだ、と何故マスコミは書けない?そんなに自力で情報を得るのが面倒なのか?そんなに右翼に睨まれるのが怖いのか?何にせよ、此処でもマスコミと財界の馴れ合い体質を見ることが出来ます。前から何度もお話しているように、こんなマスコミは早々に切り捨てるべきです。
 昼御飯作ってきたって・・・わざわざそのために来たっていうのか?俺はとりあえず晶子を中に入れて鍵をかけ、包丁を洗い桶に戻して部屋へ戻る。晶子はテーブルの上で風呂敷包みを解き始めていた。最近は掃除の時の手間を考えて出来るだけ散らかさないようにしているから、以前のように雑誌やCDを片付けて場所確保、なんてことはしなくて良い。

「昼過ぎまで寝てるって聞きましたから、このくらいに来れば起きてるかな、って思って来たんですけど、ぎりぎりセーフでしたね。」
「晶子は試験勉強とか良いのか?」
「今度のテストは1科目だけですし、日程も楽ですから、日曜でも十分間に合いますよ。それよりお腹空いてるでしょ?」
「あ、ああ・・・。」
「コンビニのお弁当とかだけだとつまらないでしょう?しっかりしたものを食べて栄養を摂らないと試験勉強もはかどりませんよ。」

 晶子は風呂敷包みを広げる。すると3段重ねの重箱が姿を現す。晶子が上から順に段を崩していくと、下からお握りが入った箱、サンドイッチが詰まった箱、おかずが詰まった箱が全容を明らかにする。おかずは焼き肉や卵焼きといった、俺が好きな食べ物で揃えられている。晶子が俺好みに合わせてくれたんだろう。仕方無しにコンビニへ行こうとしていた俺の少々重かった心が急に軽くなっていく。

「折角の土曜日だっていうのに悪いな・・・。」
「いえ。それより一緒に食事が出来ることが楽しみで・・・。」

 どうやら晶子は俺と一緒に食事がしたいが為に、わざわざ重箱3段の弁当を詰めて来たようだ。ま、来た理由なんてどうでも良い。一人でコンビニの弁当を食うより、食費が浮くのは勿論−これは晶子に言うべきことじゃないが−、晶子手製の弁当を二人で食べる方が楽しいし、きつめの傾向があるコンビニの弁当より食べ易い。それにコンビニの弁当なんて添加物だらけで、食ってる間に身体の調子が悪くなりそうな気がする時がある。

「手を洗わせて下さいね。」
「ああ、良いよ。俺も一応洗うか。食事前だし。」

雨上がりの午後 第923回

written by Moonstone

「折角の土曜日だっていうのに悪いな・・・。」
「いえ。それより一緒に食事が出来ることが楽しみで・・・。」

2002/9/3

[特になし]
 昨日は平穏そのものの日で、特別これと言ったことはありませんでした。日曜から月曜の切り替えがあまり上手くいかなくて、終日眠かったことくらいですね。長野県知事選挙については昨日お話しましたし。
 最後の定期更新となった8/19で予告した昨日に久しぶりに来た方は、来ない間の更新日程に関する大転換にちょっとびっくりしたかもしれませんが、これはニュース速報に書いたとおりのことですので、以後ご承知くださいとしか言えません。まあ、作品制作の時間や曜日を考えると、ある程度定期化するのは避けられないかもしれませんが。
 昼御飯作ってきたって・・・わざわざそのために来たっていうのか?俺はとりあえず晶子を中に入れて鍵をかけ、包丁を洗い桶に戻して部屋へ戻る。晶子はテーブルの上で風呂敷包みを解き始めていた。最近は掃除の時の手間を考えて出来るだけ散らかさないようにしているから、以前のように雑誌やCDを片付けて場所確保、なんてことはしなくて良い。

「昼過ぎまで寝てるって聞きましたから、このくらいに来れば起きてるかな、って思って来たんですけど、ぎりぎりセーフでしたね。」
「晶子は試験勉強とか良いのか?」
「今度のテストは1科目だけですし、日程も楽ですから、日曜でも十分間に合いますよ。それよりお腹空いてるでしょ?」
「あ、ああ・・・。」
「コンビニのお弁当とかだけだとつまらないでしょう?しっかりしたものを食べて栄養を摂らないと試験勉強もはかどりませんよ。」

 晶子は風呂敷包みを広げる。すると3段重ねの重箱が姿を現す。晶子が上から順に段を崩していくと、下からお握りが入った箱、サンドイッチが詰まった箱、おかずが詰まった箱が全容を明らかにする。おかずは焼き肉や卵焼きといった、俺が好きな食べ物で揃えられている。晶子が俺好みに合わせてくれたんだろう。仕方無しにコンビニへ行こうとしていた俺の少々重かった心が急に軽くなっていく。

雨上がりの午後 第922回

written by Moonstone

「お昼御飯まだだったんですね。丁度良かったです。」
「丁度良かったって・・・?」
「お昼御飯作ってきました。一緒に食べましょう。」

2002/9/2

[長野県知事再選]
 昨日の長野知事選挙で、共産党議員団を除く全会派からの不信任決議を受けて失職、再出馬した前知事が再選されました。任期半ばに県議会多数派が知事不信任を、それも2つのダム建設中止を「県政の混乱を招いた」と言いがかりをつけての決議を受けての失職という前代未聞の出来事で、選挙は事実上、共産党が支援する前知事と知事不信任を決議した県議会多数派が推す女性弁護士候補の一騎打ちになりました。
 組織力では圧倒的に前知事が不利で、県内の殆どの市町村長が敵対する(県議会多数派が推薦しているから)という状況の中で再選を果たしたということは、県議会の勢力図と有権者の意識のずれが如何に大きいかと言うことを示したと言えます。マスコミは「争点が見えにくい選挙」などと言っていましたが、争点はダムに代表される大型公共事業見直しをはじめとする前知事の方針の継続か、その逆かということは候補者の支援会派を見ても、知事不信任に至る経緯を見れば明らかです。オール与党に逆らえないマスコミのだらしなさがここでも露呈した格好です。
 前知事が再選されたことで、県議会多数派や市町村長が手痛いダメージを受けるのは必至です。来年の一斉地方選挙でもこの影響が現れるでしょう。県議会多数派などは今回の結果を厳粛に受け止め、道理ある論戦を展開するべきです。
ま、それならそれで良い。寝不足の解消と試験勉強に注ぎ込むだけだ。これも半期に一度の試練だ。今日も家に帰ったら気合いを入れ直して試験勉強するか・・・。

 振り返ってみれば日が過ぎるのはあっという間だ。試験日程も残すところ来週1週間のみとなった。これまでのところはどうにか乗り越えてこれたが、最後の試験が終わるまで油断はならない。今日は土曜日。さっき目を覚ましたばかりで時計を見れば12時半を過ぎている。まだ少し眠いが腹の虫が騒ぎ出したから、それを押さえるのが先決だ。俺はベッドから出て服を着替える。幾ら何でもパジャマ姿で日中外へ出る度胸はない。
 鍵を持って、さあ家を出るか、と思ったところでインターホンが鳴る。・・・また新聞か宗教の勧誘か?先週は良い気持ちで寝てたところを新聞の勧誘がしつこく鳴らすインターホンに叩き起こされて、俺は怒りのあまり包丁を握り締めてドアを開け、呑気に新聞購読を勧めてきたおっさんに包丁を振り上げて、殺されたいのか、と脅したら血相を変えて逃げて行った。また懲りずにやってきたか?まあ、別の新聞の勧誘なら先週の事件なんざ知る筈もないが・・・。
 インターホンはしつこくはないものの、一定の間隔で鳴らされる。新聞じゃなければ宗教か?まあ、何でも良いがとっとと退散願う以外俺の頭には選択肢が思いつかない。寝起きで少々頭が朦朧とする中、俺は「最終手段」の包丁を握ってドアを開ける。そこで俺は思わず大声を上げそうになる。

「ま、晶子?!」
「御免なさい。起こしちゃいました?」
「いや、昼飯買いに出掛けようと思ってたところだから・・・。ちょっと待って。」

 俺はドアチェーンを外して人が入れるように改めてドアを開ける。晶子は白地に縦横のラインが描かれたブラウスに薄い紺色のフレアスカートという姿で、手には縦に長い風呂敷包みを持っている。一体何のようだ?

雨上がりの午後 第921回

written by Moonstone

 何やら禅問答みたいな会話だな。来週の土曜日って・・・何かあったか?今は試験とバイトの両立で頭がいっぱいで何も思いつかない。思いつかないということは特別何もないんだろう。

2002/9/1

[1年もあと1/3ですよ]
 奇数月故にトップページと上位ページの背景が同時に変わりました。私の住んでいるところではまだ残暑が厳しいですが「秋は夕暮れ」と言われるように夕暮れ時のもので統一してみましたが、如何でしょう?トップページの写真は私自身化なり気に入っているものなので10月にも使いたいんですが、同じ背景写真が二月も続く、というのは・・・ねえ(何が「ねえ」だよ(汗))。
 昨日は9/2公開予定の新作を書いていました。ちょっと休憩が長引いてしまったので完成が遅れましたが、以前のように日付を越えてしまうということはありませんでした。これでまずは一安心ですな。同じ公開予定の他の常連組も揃ってますし。え?何で9/2なのかって?これは前回の最終定期更新となった8/19時点で、次回定期更新が9/2だというのを見て、それまでこのページに来ていない人に定期更新制度がなくなったことを通知する必要があるからです。一応9/2に前回の「公約」どおり更新して、今度からは何時更新するか分からないからね、ということを伝えようと。9/2を待っている人も少なからず居るでしょうし。
 まあ、私も甘いというか・・・(^^;)。定期更新制度を無くしたんだから容赦なく更新しちゃえば良いか、と思うんですが、9/2を待っている方が少なからず居る可能性が否定出来ない以上は、一応その旨を伝えておいた方が親切なのでは、と思うわけですよ。端からSide Story Group 1狙いの人にはあまり関係ないかもしれませんけどね。Side Story Group 1の更新チェックをしてもらっているページに、更新チェックから外してもらうように頼んだ方が定期更新制度撤廃の趣旨を徹底出来るでしょうね。ま、これはもう暫く様子を見て考えることにします。
「それなら良いんですけど・・・。絶対無理はしないで下さいね。」
「ああ。」

 少なくとも今の試験地獄を切り抜ければ1週間程度の空白期間が出来る。後期は10月1日からとなってはいるが、実際に始まるのは1週間ほど後だという話だから、それまでの辛抱だ。成績優秀と言わないものの留年は不可、というのが一人暮らしをする際の親との条件だから、意地でも突破してやる、という気持ちが強い。そうでないとこの先晶子と付き合い続けるなんて不可能だ。
 しかし、疲れが蓄積されているのは事実だ。土日は昼過ぎまで寝てる有り様だし、それでバイトに行くまでの時間やバイトから帰った後に慌てて試験勉強をしてるんだから、ある意味悪循環とも言える。だが、普段の寝不足を取り戻すには土日しかないし、眠れる時に眠っておかないとそれこそ身体を壊して試験どころの話じゃなくなる。・・・兎に角後暫くの辛抱だ。

「祐司さん、来週の土曜日って空いてます?」
「来週の土曜日?」

 俺は疲れもあってか思わず聞き返す。土曜日・・・。試験は月曜から金曜までだし、土曜といえば昼過ぎまで寝ていて、それから昼食を買いに出て試験勉強とギターの練習を交互にしてバイトに出掛ける、といった生活だ。今度の土曜日も同じだろう。その次の週も試験はあるからな。

「空いてるといえば空いてると思うけど・・・何で?」
「ちょっと聞いてみただけです。」
「な、何だそりゃ?!」

 何かと思えば聞いてみただけとは・・・。生憎今の俺には怒る元気もないし、晶子の呆気ない答えに怒りを通り越して呆れてしまう。俺は溜息を吐いて晶子に言う。

「ウケを狙うにしては毒が多いぞ、今の俺には。」
「御免なさい。でも、聞いておきたかったんで・・・。」
「?どういうことだ?」
「だからさっき言ったじゃないですか。聞いてみただけだって。」

雨上がりの午後 第920回

written by Moonstone

「それどころじゃないよ。ギターの練習は毎日しないと、店のステージに立った時に頭が真っ白になっちまいかねないからやってるんだ。勉強の間の息抜きって面もあるしな。」

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