芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年5月31日更新 Updated on March 31th,2002

2002/5/31

[明日から水無月]
 テレホタイム直前まで居眠りしてて(こういう時に限って1、2時間は薬なしで寝られる)慌ててお話をしています(この段階でもうP.M.11:00越えちゃいましたけど(爆))。昨日は朝から晩まで回路基板作りで忙しく、あっという間に終業時間をオーバーしました。
 今作っている回路基板は、仕事で使っているセミカスタムICがきちんと動作しているかどうかを試す為のものです。何で実際の(仕事で作っている機器の基板を)試さないのかといいますと、その基板は他の要素が絡んでいてその要素が上手く機能しないので(現在専用ICを発注中)、そのICが動作するかどうかを確かめることが出来ない状態にあるんです。
 面倒なことですが、回路の中核をなすICが動作しないことには話にならないので、このテスト基板はどうしても必要なわけです。本体を作るためにテスト用の回路を作るということは別の仕事で嫌と言うほどしたので、意外に苦痛に感じないのは良いこと・・・なのか?(^^;)
 今日で5月も終わり。連休明けから思わしくなかった体調の方もかなり改善されてきました(寝られなかったのが大きかったです)。明日から私の誕生月である水無月。何か良いことあると良いなぁ〜。
心なしか足が重い。頭の中では否定派の残党が最後の力を振り絞って戦っているという状態だ。その戦いももう直ぐ終わるだろう。否、終わらせられると言った方が良いか。
 晶子は追ってこない。諦めたか潤子さんに止められたか・・・。どっちにしろ、俺を「援護」してくれる人は誰も居ない。俺一人で臨まなきゃいけない。「約束」の場所で宮城と本当にさよならする為の儀式に・・・。

 俺は急ぐことなく、一人で浜辺へ向かう。夜の浜辺には人影は見えない。昨日同様、浜辺との接点で波が崩れる時に白色を見せる以外は墨汁を流し込んだかのように漆黒の世界である海と、色鮮やかで煌きもそれぞれ異なる煌きを見せる星が輝いている空がある。昨日と違うのは、隣に誰も居ないことだ。晶子、どう思ってるだろうな・・・。
 だが、俺自身明確な区切りをつけようとして決めたことだし、今更後戻りは出来ない。そうでないと、今日の後味悪い別れ方のままで思い出の最上段が形成されることになってしまう。潤子さんが言ったとおり、けじめをつける時間が必要なんだ。俺にとっても宮城にとっても・・・。
 浜辺に出て砂を踏む感触を感じながら北へ向かって歩いて行く。5分ほど歩くと、大小様々な漁船がふわりふわりと揺れているのが見えてきた。待ち合わせ場所に指定されたのは、確か漁港傍の灯台・・・。改めて見てみると、周期的に光を回し続ける灯台が闇の中に小さく浮かんでいる。まだかなり距離はありそうだ。
 あんな場所に女一人で居て大丈夫なのかとふと思う。だが、その推測は軽く吹き飛ぶ。友人達が暗闇に隠れて宮城を監視しているだろう。不測の事態の場合は即座に飛び出して、その娘は彼氏と待ち合わせ中、とかいって「虫」を追い払う腹積もりなんだろう。女は一人じゃ何かと不利だが、集団になると男以上に強くなるからな・・・。

雨上がりの午後 第827回

written by Moonstone

 俺は徐に立ち上がってそう言う。晶子はまさか、というような顔をしている。その視線に絶えられない俺は、晶子から視線を逸らして部屋を出る。

2002/5/30

[自衛隊の正体見たり]
 海上自衛隊の一幹部が防衛庁に情報公開請求をした人の身辺調査をしたリストを作成していたという事件が発覚しましたが、私に言わせれば、防衛庁関係者が自分達の組織の情報公開を求める人間の情報を調べてリストアップするのは何ら不思議ではありません。むしろ今まで発覚しなかったのが不思議です。軍隊は秘密で固められた組織なのですから。
 防衛や自衛と名はついていますが、自衛隊はれっきとした軍隊であり、防衛庁はその事務組織です。戦車やミサイルや戦闘機を保有する組織を軍隊と呼ばないで何と言うのですか?自衛の為、という美辞麗句はかつての戦争でも使われた、自国の武力行使を正当化するもの以外の何物でもありません。
 そもそも日本は憲法第9条で戦争の放棄、交戦権の否認を謳っています。条文を素直に読めば自衛隊が違憲の存在であることは明白です。戦後間もなく旧ソ連と冷戦に突入したアメリカと日本の反動勢力が条文の解釈を捻じ曲げて作り、発展させてきたのが自衛隊という名の軍隊なのです。有事法制という憲法に背く法律が国会で審議されている今だからこそ、日本国憲法をよく読んでください。特に前文と第9条を。
「晶子ちゃんの気持ちは分かるわ。」
「だったら・・・!」
「でもね、このまますれ違いのままで後味悪く終わるよりは、双方合意の上でさっぱりと別れたほうが良いんじゃないかな、って思うのよ。祐司君の心の為にもね。」
「「・・・。」」
「祐司君は恐らくだけど、心の整理の目処が立ったところで出くわして早速よりを戻したいなんて言われて混乱してると思うの。それに前の彼女も、優子とか言ってたわね?あの娘も自分のやったことの浅はかさと祐司君に誤解されたままじゃ、まあ、それが誤解されても仕方なかったものだと思うけど、そのままじゃ祐司君のことを思い出には出来ないんじゃないかしら?」
「・・・祐司さんに心の整理をさせるためにも、あの女性のけじめをつけさせるためにも必要だ、って潤子さんは言いたいんですか?」
「要約すればね。勿論、私は祐司君に行きなさいって言える立場じゃないことは分かってるわよ。ただ、昼間のあの険悪な雰囲気のままで、尻切れトンボのままで終わっちゃって、祐司君がそれで納得出来るのかなって思うの。」

 潤子さんの言うことには一理ある。確かに昼間の別れ方はそれこそ切れない包丁で切った野菜みたいに繋がっているようでいないような、しっくり来ないものだった。あれが宮城との最後の瞬間となってこれから俺の心の中に残るのかと思うと、何だかもどかしいような、モヤモヤした気分を感じる。
 潤子さんの冷静且つ筋の通った話に、晶子も反論出来ないらしい。もう一度さり気なく腕時計を見ると、「約束」の時間まであと5分もなくなっている。別に俺が遅れても、それこそ行かなくても宮城の友人達は俺を責めたりはしないと言っていた。優子にもそうさせないと言っていた。だけど・・・。

・・・。

「・・・散歩、してきます・・・。」

雨上がりの午後 第826回

written by Moonstone

「もう祐司さんとあの女性との関係は終わったんです!今は私が祐司さんの彼女なんです!譬え少しの時間であっても、昔に戻らせるなんて許せません!」

2002/5/29

[こんなのって・・・(汗)]
 今の私は強力な睡眠薬を飲まないと満足に寝られない状態なんですが、月曜の夜、ネットを切断して薬を飲んでベッドに潜り込んだ・・・までは良かったんですが、眠れない(汗)。1時間経っても眠気が出てこなくて仕方がないので、楽な姿勢でCDを聞いて(耳に流した、と言ったほうが良いか)再び寝たのですが、その時点で空は明るくなってました(汗)。結局寝たのはA.M.5:00過ぎで、起きたのはA.M.8:00前。「あの薬を飲んでも3時間寝られないんかい」と愕然としました。
 災難はまだ続きました。P.M.2:00頃から今更のように激しい眠気が襲ってきて、とても仕事どころではなくなりました(回路の設計中でCRTを見ているだけでぶわっと意識が遠のく)。止む無く2時間程別室で仮眠を取りました。このままじゃ仕事どころか意識を保っていることすら不可能だったので。
 仮眠の後はかなりすっきりして、どうにか仕事を進めることが出来ました。しかし、泣く子も眠らせる筈の薬だというのに(即効性も高い)満足に効かなかったというのは大変なことです。これ以上薬を強めるわけにはいかないですから。何時になったら薬なしでぐっすり眠れるやら・・・(泣)。
晶子は荷物を整理していて、潤子さんはお茶を飲み、俺とマスターは横になって肘を立てた手を枕にしてテレビを見ている。もっとも俺の場合、テレビの画像も映像も全く頭に残らない。あのことが頭にこびりついて離れなくて、時折小さな溜息を吐きながら「約束」をどうするかを巡って、頭の中で肯定派と否定派が激しくぶつかり合っているのを傍観するだけだ。
 そうしている間にも時間だけは過ぎていく。ふと腕時計を見ると「約束」の時間まで10分を切っていた。無論、俺の頭の中では未だ肯定派と否定派が血みどろの死闘を演じている。こんな闘い、援軍なしで決着がつく筈もない。両軍全滅で翌日を迎えるのが関の山だ。

「祐司君。行ってあげたら?」

 不意に「援軍」が入る。肯定派が勢いづくかと思いきや、突然のことで両軍入り乱れて大混乱を起こしてしまっている。荷物の整理を終えて潤子さんと一緒に茶を飲んでいた晶子が目の色を変えて潤子さんを睨む。その気持ちは一応分かるつもりだ。

「潤子さん!何言い出すんですか?!それこそあの女性の思う壺じゃないですか!」
「祐司君の心は決まってるんでしょ?せめてお別れの時間くらい与えてやっても良いんじゃないかな、って。」

 お別れの時間、か・・・。あの夜の電話で俺と宮城の関係が切れたのは−宮城に言わせれば誤解されてしまったということだが−時間にすれば10分あったかなかったかくらいだ。それもほぼ一方的。俺には懇願する猶予はなかった。もうないと思ったのもあるが。それなのに女の場合だけ時間に加えて場所のセッティングまでさせて良いのか?・・・何だか腹が立ってきた。

雨上がりの午後 第825回

written by Moonstone

 二つの部屋を仕切る襖は開け放たれていて、昨日と同じように二つの部屋に一組ずつ布団が敷かれてある。部屋を仕切るものがないから、俺達はそれぞれの格好で寛いでいる。

2002/5/28

[フーリガン対策]
 昨日は簡単明快なフーリガン発生の原因を挙げ、戦争の代理でしかない国際スポーツ大会の抜本的改革をお話しましたが、今日はその対策をお話しましょう。ここのリスナーの方で実際に観戦しに行かれる方が居るかどうかは知りませんが、一応居るという仮定で(^^;)。
 もっとも確実なのは「その場へ(スタジアムだけでなく、開催地全体)行かないこと」です。フーリガンはスタジアムだけでなくて何処ででも暴れるので、わざわざ地雷を踏みに行くようなことをしなければ良いんです。簡単明快でしょ?お住まいが開催地という不幸な方は外へ出ないことが最も賢明ですが、外出する際は外国人との接触を避けることでしょう。
 それでも観戦に行く、という方は、フーリガンが暴れ出した直ぐ脱出できるように出入り口の近くに居るのが良いと思いますが、座って観戦するという方は周囲にどんなサポーターが居るかをよく見て、国旗を振り回したり大声で叫ぶような人間が居たら、常に警戒を怠らず、彼らに動きがあったら直ちに逃げることでしょう。兎に角「外国人と関わるな」「サポーターを気取るな」ということです。開催地にお住まいの方、観戦に行かれる方は充分お気をつけて。
「・・・晶子。マスターと潤子さんは宮城の顔を知ってる筈がないんだから、責めるのは止めるんだ。マスターと潤子さんに罪はない。知らなかった以上、仕方なかったんだ。」
「・・・御免なさいね、祐司君。事情を知ってたら追い返してたところだけど・・・。」
「祐司君、悪かった。」
「マスターと潤子さんは悪くないです。知らなかったんですから・・・。」
「でも、知らなかったとはいえ、訳ありげな娘達を居させるなんて・・・」
「晶子。仕方ないだろ?知らなかったんだから。」

 俺は未だ許せないと言わんばかりの晶子を制する。話をしたいといってもまさかよりを戻したいっていう話だなんて分からなくても無理はないし−分かったら大した推理力だ−、ましてやその中の一人が俺の前の彼女だなんて思いもしなかっただろう。マスターと潤子さんを責めるのはそれこそ可哀相だ。
 今夜8時、此処から北に行ったところにある漁港傍の灯台。そこに行くかどうかは確かに俺次第だ。無視しても構わない。だが・・・何とも言えないが心に引っ掛かるものを感じる。話をする時間、けじめをつける時間、か・・・。あの時の俺には、そんなもの少しも与えられなかったっていうのに・・・。それを要求されるなんて皮肉な話だ、まったく・・・。

 その日の夜、新鮮な魚の刺身や揚げたてのフライを昨日同様たっぷり味わった後−俺としてはもっと脂っこいものが良いんだが、場所が場所だけに仕方ないか−、俺達一行は部屋に戻った。その時点で時間は7時を過ぎていた。「約束の時間」とやらまであと1時間を切ったわけだが・・・。
 正直な話、俺は迷っている。宮城とよりを戻すつもりはさらさらないし、どう懇願されても出来ない相談だ。だが、妙な思惑が生んだ誤解と−そう解釈されても仕方ないと思うが−すれ違いで関係が終わってしまったことに何らかの区切りというか、けじめをつける時間を与えてやっても良いんじゃないか?そんな気もする。だが、こんなこと晶子には言えないし・・・。

雨上がりの午後 第824回

written by Moonstone

「・・・い、井上さん、目が怖いぞ・・・。」
「そう見えますか?なら、私の気持ちが目に出てるってことですね。」
「知らなかったんだよ。まさかあの娘達が祐司君の同期で、その内の一人が祐司君の前の彼女だなんて・・・。」

2002/5/27

[下らんことに手を出すな]
 説教じみたキャプションですが、昨日更新作業をしながら聞いていた(目は殆どPCに向いてた)「特命リサーチ200X U」でのフーリガン特集を見て思ったことを簡潔に示したまでです。
 私はスポーツそのものがあまり好きではありません。特にサッカーやボクシング、中でも今度のW杯のような国際大会となると嫌悪感すら感じます。何故ならそこには常に国旗と国歌、愛国心なる人殺しをも正当化する手段が存在し、それらを何ら問題視することなく商業マスコミが煽り立てるのが腹立たしくてならないからです。
 番組ではフーリガンの発生理由に色々な仮説を立てていましたが、そんなもの、愛国心や自国のチーム至上主義的思考が原因なのは明らかです。それらがが応援という形でヒートアップし、相手チームを「敵」と見なして衝突する。こんな単純な構図で起こるのは心理学の素人である私でも容易に推測出来ます。何故ややこしい仮説を立てるんでしょう?右翼志向の日本テレビ系列ですから、国旗や国歌、愛国心といったものがトラブルの原因になるということを言明したくないという思惑が見え見えです。
 私は人殺しをも正当化する手段である国旗や国歌、愛国心は断固拒否します。そしてそれらを衝突させて勝敗を競う、戦争の代わりと言って良いスポーツの(と言いたくないですが)国際大会とやらを即刻取り止め、純粋に力と技を競い合う形に抜本的に改革することを提起します。
 宮城の友人の一人が慌てた様子で口を挟んでくる。

「何だよ。」
「確かに優子のやったことは安藤君を傷つけたってことは分かる。優子が安藤君以外の男と付き合ったことも分かったし、それは安藤君にしてみれば許せないことだってことも分かる。」
「だったら何だ?」
「ただ・・・少しだけでも良いから・・・せめて二人で話を出来る時間を与えてあげて頂戴。このままじゃ優子が可哀相だから・・・。」
「あたしからもお願い。安藤君の気持ちは分かるつもりだけど、優子に少しでも良いからけじめをつける時間をあげて。」
「「「お願い。」」」

 宮城の友人達は声を揃えて懇願する。これ以上優子に俺との関係を修復する猶予を与えるつもりか?そんなことをしたところで、俺の気持ちはもう変わらない。変わりようがないんだ。何でそんなことが分からないんだ?こいつらは。
 俺が黙っていると、友人の一人が言う。

「今夜8時。場所は此処から北に行ったところにある漁港傍の灯台。もし少しでも優子と話をしてあげる気が出来たら、来て頂戴。そこに優子を待たせておくから。」
「来る来ないは安藤君次第。結果がどうなっても、あたし達は安藤君を責めたりしない。勿論優子にもそうさせない。それでどう?」
「・・・勝手にしろ。」
「それじゃ、あたし達はこれで・・・。どうもお邪魔しました。」
「「「お邪魔しました。」」」
「あ、ああ。」
「ええ、さようなら。」

 宮城の友人達は口々にマスターと潤子さんに頭を下げて、俯いたまま頭を下げた宮城を連れて人波の中に消えていく。姿が完全に見えなくなったところで、俺と晶子はマスターと潤子さんと向き合う形で腰を下ろす。

雨上がりの午後 第823回

written by Moonstone

「・・・行け。話すことがない以上、お前達が此処に居る理由はもうない筈だ。」
「ちょっと待って、安藤君。」

2002/5/26

[うー、しんどい・・・(- -;)]
 昨日は買出しと食事、少々の休憩以外は今日の更新が済むまでずっとPCに向かいっぱなしでした。某連載の新作を書くのに思いのほか時間がかかった上に、別の連載の新作を編集していたんです(これは前回の定期更新の時に勢いで書いてしまってた)。雑音を封じる為に(家が通りに隣接してるので車の走行音がかなり気になる)イヤホンで聞き流していた50〜60分のCDは7枚半。お陰で腰痛いです(泣)。腰に爆弾抱えてる身なのに・・・。
 先週の週末で完全にくたばっていたのが原因とはいえ、これはかなりきつかったです。でもこれで終わりじゃないんですよね。もう一つ連載の新作を書き上げたいところなので。定期更新では最低2つか3つのグループを更新したいですからね。更新が滞っているグループもあるので尚更。
 それはさておき、最近定期更新前後以外でもご来場者が増えているようです。多分、登録式リンクがある大手ページに登録したせいだと思うんですが、これまでご来場いただいている方々は勿論のこと、登録されたリンクから来られた方々の期待を裏切らないような、質、量共に充実したページにしたいです。
「ちょっと。人聞きの悪いこと言わないでくれる?」
「事実を言って何が悪いんですか?」

 立ち上がった宮城と晶子が厳しい表情で睨み合う。まさに二人の間で火花が散っているという表現が相応しい状態だ。でもこの様子を見ると火花なんていう生易しいもんじゃなくて、爆弾が爆発していると言った方が良い。

「・・・そんな事情があったなんて知らなかったわ・・・。」
「マスターと潤子さんは知らなくても無理ないですよ。本物を見るのはこれが初めてでしょうし、まさか以前俺が話した、俺をふった相手だなんて思いもしなかったでしょうから・・・。それより宮城。」
「何?」
「俺とお前の間で話すことはもうない筈だぞ。」
「言ったじゃない。私の中では終わってないって。」
「お前がどう言い訳しようが、お前があの夜の電話で別れを仄めかして、実際お前は別の男と付き合った。時間の長い短いは問わず。それが俺をふったという以外、どう言えば良いんだ?一事の気の迷いとでも言いたいのか?」
「・・・それは・・・軽率だったと思ってる。でも、その人とは何もなかったわよ。一緒にお茶したり、映画見に行ったくらいだから。」
「付き合いの浅い深いも関係ない。俺以外の男と付き合ったって事実は変わらないだろうが!それを何だ!友人連れて俺を待ち伏せまでしやがって!何処まで身勝手なんだ!」
「・・・。」

 宮城は何か言いたいが言葉が見つからないといった表情で視線を俺から逸らす。或いは俺と目を合わせるのが辛いのか。だが、此処で下手な情けは禁物だ。終わった関係はもう修復出来ないんだから。伏目がちになった宮城を見るのは、たとえ切れた相手であっても辛いものがある。これ以上、気分と思い出を薄汚れた色で汚したくないから・・・。

雨上がりの午後 第822回

written by Moonstone

「そうだったの、じゃないですよ、潤子さん!この女性(ひと)こそ祐司さんの気持ちを弄んで捨てた挙句に今更よりを戻したいなんていう、とんでもない女性なんですから!」

2002/5/25

[連載との距離]
 このコーナーの連載が編集されてNovels Group 3で公開されることは、常連のリスナーの皆様ならご存知かと思いますが、今はアナザーストーリーを連載しています。この理由は以前お話したと思いますが、前からあの場面でのアナザーストーリーを書きたかったこともありますし、連載と公開分の距離がかなり接近してきて、連載が間もなくNovels Group 3で公開される事態を回避する、言わば時間稼ぎのためです。
 今週は連載の書き溜めがかなり進んだのに加えて、距離そのものもかなり開いてきたことを確認しました。今連載中のアナザーストーリーが終わる頃には、間違いなく本編の公開が出来そうです。
 ただ、公開のテンポは今までのように定期更新毎ではなく、1ヶ月に1回の割合になると思います。連載と公開本編の距離が接近したのは、隔週というテンポに対して連載の進みが遅いことがあるからです。基本的に平日は仕事、休日は作品制作という生活を送っている私には、日記で特筆するようなことがなかなかないんですよね。昨日のように熱く語るテーマがあれば良いんですが、そうはいかないのが夜の常(?)。Novels Group 3での本編公開が始まったら、他のグループへの本格的なてこ入れをしないといけませんね。
「もしかして祐司君、この娘達に居られると困ることがあるとか?」
「・・・困るも何も・・・。」

 俺はそれ以上どう言って良いか分からない。宮城とその友人達の目的は俺は勿論、晶子も嫌でも分かる。マスターと潤子さんにはこの場に居ることを拒否して追い払って欲しかった。だが、マスターと潤子さんは俺とこいつら、特に宮城と関係があることなど知る由もないから、居る許可を与えたことを責めることは出来ない。もどかしい気持ちが俺の胸の中でモヤモヤと漂う。
 宮城は友人達に守られるように−客観的に言えば宮城が一番可愛い−膝を抱えて座って俺を見ている。一見無表情にも見えるが、その黒い大きな瞳が切なげに俺に何かを訴えているように思えてならない。そんな目で見るな・・・。俺は宮城から視線を逸らす。

「困るどころの話じゃありませんよ、潤子さん!」

 横に居た晶子が何時になく強い口調で潤子さんに言う。潤子さんは意外そうな表情で晶子を見る。まさか事態が只事ではないとは思わなかったんだろう。それに潤子さんは普段おっとりしてるからな・・・。

「怒られても事情が分からないんだけど・・・。この娘達と祐司君って、どういう関係なの?」
「・・・俺の高校の同期です。そのうち一人は・・・。」

 俺は言葉に詰まる。だが、これ以上晶子の「援護射撃」を受けるようでは男が廃る。俺とこの女の中の一人との関係をはっきり言わなきゃ・・・。

「・・・以前、俺と付き合っていた相手なんです。」
「ええ?!そうだったの?!」

雨上がりの午後 第821回

written by Moonstone

「い、いやね、俺と潤子が来て少ししてこの娘(こ)達がやって来てね。何でも祐司君と話がしたい娘が居るから待たせてもらえないか、って頼まれて・・・。別に断る理由が思いつかなかったから居て良いよって言った次第なんだ、はは。」

2002/5/24

[全有権者に告ぐ!]
 今の国会では国家総動員法現代版とも言うべき有事法制3法案の他、「個人情報の保護」を名目にしたメディア規制3法案が審議されています。「戦争と情報統制はセットになってやってくる」。このことは歴史が雄弁に物語っています。さらに国民に1兆円もの負担増を強いる健康保険法改悪案も審議されています。自分の健康を守る為、戦争の加害者にも被害者にもならないためにも、何より多くの先人達と無数のアジアの人々の犠牲の上に成り立っている私達の自由と権利を守る為に、これらの法案はなんとしても廃案に追い込まなくてはいけません。
 これまでの選挙で自民、公明、保守の与党三党の他、民主、自由の両党に投票した有権者、それに選挙を棄権、或いは白票を投じた有権者は、今その責任を厳しく問われなければいけません。これら右翼軍国主義集団が政界再編という名の取引や政党助成金という名の税金の山分けをして、それぞれの法案に対する姿勢の違いはあれど、悪法を成立させようとしているのです。言わば悪法推進に手を貸したも同然なのですから。
 記者クラブという、税金と(補助金として各省庁から支給される)情報を貰って記事を書く集団である商業マスコミは即刻切り捨てましょう。有権者たるもの、税金を払う者たるもの、労働者たるもの、労働者階級の新聞である「しんぶん赤旗」を読まなくてどうするのですか?もう縁故やぐるみ選挙とは縁を切りましょう。私達の自由と権利を守る政党を大きくして、政治を根本的に変えなければ何も変わらないのではないでしょうか?よく考えてみてください。よく見てください。民主主義と国民主権は私達一人一人の自己研鑽(けんさん)の上に成立するものなのですから。今、「有事」や「個人情報保護」の名の元で、民主主義と国民主権が危機に瀕している事実に目を向けてください。そのためにも、政府与党の旗振り役である商業マスコミを切り捨て、色眼鏡なしで今までタブー視してきたものを見てください。それが本当の改革への第一歩です。
 昼前の宮城との遭遇の時といい、さっきの水中口移しといい、俺の不甲斐なさばかりが目立つ。こんなことじゃそれこそマスターが宿で言ってたように、晶子の尻に敷かれちまうな。もっとしっかりしなきゃ・・・。
 それから暫く俺と晶子は、人の少ない沖合いで泳いだり、海水をかけ合ったり、潜って水中口移しをしたりして−全身が水に隠れる程度のところでだが−存分に海水浴を堪能した後、一旦浜辺に戻ることにした。身体もちょっと冷えてきたし−空気は熱いといっても海水はそれ程熱を含んでない−、丁度良いだろう。俺と晶子は手を繋ぎながらゆっくり泳いで浜辺へ向かう。
 人で混み合うところまで1メートルくらいになったところで、俺と晶子は泳ぐのを止めて底に足を着いて立ち上がる。丁度腹まで水に浸かるくらいの位置で、歩いていくのにもそんなに支障はない。手は繋いだままで進んで行くと、徐々に水面が足元まで下がっていく。
 前の人垣を避け、左右に行き交う人波を抜けて、ビーチパラソルの配色と大まかな所在地の記憶を頼りに、マスターと潤子さんが待っているだろう待ち合わせ場所へ向かう。それにしても凄い人ごみだな・・・。この辺じゃ海水浴場は此処しかないんだろうか?まあ、遠出してまで海水浴、とはなかなか思いつかないんだろうが。
 人波の向こうに見覚えのある風景とビーチパラソルが見えてきた。どうやら歩いてきた方向は間違いなかったようだ。俺は少しほっとした気分を覚えながらビーチパラソルの方へ向かう。勿論、晶子と手を繋いだままだ。こんな人波の中で手を離していたらあっという間に引き離されてしまいかねないし、第一晶子目掛けてナンパ男が飛びついてくるに違いない。
 ようやく人波を抜け、マスターと潤子さんとの待ち合わせ場所であるビーチパラソルのところへ辿り着く。お待たせしました、と言おうとした瞬間、俺は全身が硬直してしまう。待ち合わせ場所には勿論、マスターと潤子さんが居た。それだけなら良いものの・・・宮城とその友人達まで居るじゃないか!一体どういうことだ?!

「お帰り、祐司。」
「・・・何で貴方が居るんですか?」
「居ちゃ悪い?ちゃんと此処の人の許可は得てるわよ。」
「マスター?潤子さん?」

 晶子が眉を吊り上げて宮城とその友人達の奥に座っているマスターと順子さんの方を向く。その視線に気迫というか恐怖を感じたのか、マスターは笑って誤魔化している。笑って誤魔化している−正直かなり変だが−マスターはさておき、潤子さんは悠然としている。何か悪いことをしたかしら?と言われているようだ。何でこいつらに居て良いって許可したんですか?!マスター、潤子さん!

雨上がりの午後 第820回

written by Moonstone

「お話と現実とは別物ですよ。私がちょっと調子に乗り過ぎただけですから、祐司さんが気にする必要なんて、それこそないですよ。」
「・・・何かと晶子に救われてばかりだな、俺って。」

2002/5/23

[効き目強烈・・・(^^;)]
 月曜の就寝時から服用することになった睡眠薬、実に良く効きます。でも、注意して飲まないと翌日辛い思いをする羽目になることも実感。火曜日の夜は寝るのがA.M.2:00頃と、普段より1時間ほど遅かったんですが、月曜日の夜同様寝る前に飲む薬+不眠時の薬を飲んだら、中途覚醒なしで目覚ましに叩き起こされました。瞼は重いし、かと言って二度寝したら確実にアウト、ということで、懸命に職場に向かいましたが、午前中は凄い眠気に翻弄されて、回路を考えるのもままなりませんでした。考えてないとすうっと意識が遠のいていくんだから怖い怖い(^^;)。
 勿論昼休みは熟睡(爆)。その後は眠気もすっきり吹き飛んで仕事してました。もっとも大半は回路の構想をあれこれ考えては、やっぱり使えない、と自らボツにするの繰り返しでしたが。結局動かない原因は分かったものの、それが本来動く筈のセミカスタムICだということになって愕然呆然。テスト回路作ってみないとプログラムが悪いのか配線が悪いのか、或いはICそのものがぶっ壊れているか分からないのでそれまでの辛抱です。何時になったら出来るのやら・・・(T-T)。
 それからお話する機会を逃していたんですが、このコーナーのリスナーが40000人を突破しました(喜)。まあ、実際は2000ほど少ないんですが、このコーナーに来てくださる皆様に、改めて感謝いたします。これからも宜しくお願いいたします(_ _)。
 でも、息を吹き戻す度に襲ってくる胸の圧迫感はかなりのものだ。昨日みたいに水中での口移しに浸っている余裕は殆どない。何度目かの「吸引」で俺は我慢の限界に達して、こちらはすっかり浸っている様子の晶子の肩を叩いて親指を縦に向けて上に行きたいと合図する。
 晶子は唇をそっと離して頷き、俺の手を取ったままゆっくりと浮上していく。俺は急いで浮上しようとするが、晶子が首を横に振って制する。そういえば深く潜ったところから一気に浮上すると潜水病とかいう厄介な病気というか症状になるって聞いたな・・・。俺は苦しさを堪えて浮力に任せて白く輝く水面へと向かう。
 水面に出たところで、俺はまず最初に酸欠気味だった全身に荒い呼吸を繰り返すことで酸素を行き渡らせる。晶子は太陽光で煌く髪を後ろにやりながら、平気な顔で浮かんでいる。

「ま、晶子。お前、苦しくないのか?」
「いいえ、特には・・・。」
「肺活量の・・・違いか。・・・それにしても、あんなに・・・深く潜れるなんて凄いな・・・。」
「昔から潜水は得意な方なんですよ。それに歌を歌うようになって肺活量が増したのか、思ったよりも深く潜れました。」

 な、成る程・・・。ヴォーカルの指導の時に喉からじゃなくて腹から声を出すようにって口煩いほど言ったからな・・・。俺はギターだから指先の動きが良ければそれで良いから、肺活量なんて関係ないんだよな・・・。こんな形でそれぞれのプレイヤーとしての「特徴」が出るとは思わなかった。

「御免なさい。祐司さんのことまで頭が回らなくて・・・。」
「気にしなくて良いよ。・・・こんなことじゃ、人魚姫に海の城に連れて行ってもらうにはちょっときついな・・・。」
「王子様を案内するつもりが窒息させたんじゃ、駄目ですよね。まだ王子様を救う人魚姫には遠いですね、こんなんじゃ・・・。」
「考えてみれば、童話の世界じゃ女の方が何かと強いよな。色んな面で。俺はもっと鍛えなきゃ駄目だな。折角の幸運を逃しちまうから。」

雨上がりの午後 第819回

written by Moonstone

 俺はそのお返しにと息を送り返すが、そのたびに肺が圧迫されるような気分が強くなってきて息苦しく感じる。早く息を送ってくれないと窒息しそうな感じだ。だが、晶子はいたってゆったりとしたテンポで呼吸を返してくる。それでようやく救われたような気がする。

2002/5/22

[ああ、爽快・・・(^^)]
 朝、仕方なく転寝をしている最中に目覚ましに起こされ、重い身体と心を引き摺って職場へ向かう・・・。そんな日々が連休明けから続いていました。ところが昨日は違いました。すっきりした気分で起きて、仕事での長時間の思考も眠気に邪魔されることなく続けられ、帰宅して夕食を食べてからベッドに突っ伏すということがありませんでした。
 月曜日の診察で一新した睡眠薬がほぼ完璧に効果を発揮しました。中途覚醒だけは防げませんでしたが(あの薬をも打ち破るとは・・・(汗))、それ以外はぐっすり眠れて気分爽快でした。眠れるというのは本当にありがたいことです。
 仕事は、いくら考えてもそれが適用するに値しない回路と分かることの繰り返しで全く進まなくてがっくりしましたが、それでもそれを帰宅以降に引き摺ることなく、枯渇しかけていた連載の書き溜めをかなり補えました。眠れるか眠れないかでこれほど違うものなんですね(しみじみ)。それにしてもここまで薬を強化しなければ満足に寝られないとは、私の精神状態は極めて危険なようです。

「だったら実際に証明してやるよ。」
「じゃあ、『せーの』で潜りましょう。・・・せーの!」

 晶子はそう言うと大きく息を吸い込んで海に潜る。俺も遅れまいと息を最大限吸い込んで潜る。長い髪を海藻のように漂わせる晶子と向き合った瞬間、俺の手が晶子に掴れて、俺は晶子に引っ張られる形で潜っていく。
 海に潜れば波の音もなく無音と言って良い。優に20mはあろう深さの先に見える光景は青の濃淡を主体としたもので、群青色の世界と呼ぶにふさわしい。此処が水面を隔てただけの同じ地球だとは思えにくい。見ていると奈落の底に吸い込まれていくような、少し恐怖が混じった神秘的な感覚を覚える。
 晶子は俺の手を引きながら足をふわりふわりと上下に揺らしてゆっくりと潜っていく。一体何処まで潜る気なんだ?段々耳の奥から圧迫感が伝わってくる。成る程、ついて来れたらの話だと晶子が言った理由が分かった。晶子の奴、潜水に相当慣れてるんだ。素潜りでこれだけ潜れるなら、あの挑発じみた言葉にも納得がいく。
ふと見上げると、青白く輝く水面が遠くに広がっている。多分10mくらいは潜ったな・・・。耳の圧迫感に加え、胸にも締め付けられるような感覚を覚える。まさかこんなに潜るとは思っていなかっただけに、俺はただ晶子に引っ張られるしかない。
 と思ったら、晶子は潜るのを止めて俺を自分の方に手繰り寄せる。無音の青の世界の中で俺は晶子と向かい合い、そしてぐいと抱き寄せられ−晶子の細い華奢な腕の何処にそんな力があるのかと思うくらい−、唇を晶子の唇で塞がれる。そして例によって例の如くと言うか、舌が俺の唇を割って歯をノックする。
 俺が口を開くと、晶子から空気が吹き込まれてくる。締め付けられるような感覚の上に長時間の−晶子にとっては多分短時間だろうが−潜水でちょっと苦しくなってきたんだが、その息で俺の肺が空気で満たされる。そして胸を締め付けられる感覚が弱まる。

雨上がりの午後 第818回

written by Moonstone

 晶子が珍しく挑発じみたことを言って、悪戯っぽい笑みを浮かべる。貴方に出来るかしら?と言っているように思える。むっとなった俺は言う。

2002/5/21

[寝られない・・・(泣)]
 確かに日曜日は殆ど横になってましたよ。転寝もしましたよ。でも、それで眠れたのが3時、目を覚ましてしまったのが4時過ぎ。以降本当の起床時間まで転寝の繰り返しはないでしょ?幸い、日曜日に存分に休養を取ったせいか、昨日は割とましでしたけど。
 昨日の診察で医師に相談したところ、睡眠薬を抜本的に変えてもらいました。これで効果がなかったらもう駄目でしょう。つまりは、毎日毎日昼は眠く、夜は眠れないという最悪のリズムを繰り返すしかないということです。
 こんなことを繰り返してたら、絶対破綻しますよ。肉体的にも精神的にも。通院するまでは缶チューハイ500ml1本開けて寝ていたんですが、睡眠薬とアルコールを合わせるのは危険なので、今は一新された睡眠薬に掛けるしかありません。今度こそ夜中途中で目覚めるなんてことがないように・・・。
何時までも過去に振り回されてちゃ駄目だ。・・・とは分かっちゃいるけど、いざ宮城を前にすると宮城の未練を断ち切れないで自分の心に暗雲を広げる自分が居る。やっぱり宮城と顔を合わせないようにするのが一番だろうな・・・。
 浜辺に隣接する波打ち際は人でいっぱいだが、胸まで海水に浸かるくらいの場所へ行くと極端に人影は減る。足が海底につかないくらいのところまで行けば、それこそプライベート・ビーチ気分を満喫できる。俺と晶子は浜辺周辺の人ごみを抜けて、二人きりが存分に味わえる沖の方へ泳いで向かう。

「やっぱりこの辺になると人は少ないですね。」
「普通は浜辺や砂浜で遊ぶからな。海水浴って言っても浜辺や砂浜で遊ぶのが殆どで、本当に泳ぐ奴なんてそうそう居ないさ。」
「泳ぐのって気持ち良いし、人も少ないからゆったり出来るのに。」
「溺れる危険もあるし、さっき言ったけど、海水浴だといって泳ぎに来る奴なんてそうそう居ないだろうからな。」

 それに宮城もまさか此処に俺がいるとは思うまい。そう言おうとしたところで俺は慌ててその言葉を飲み込む。晶子に俺がまだ宮城のことにこだわってると思われたくないからな。
 海水が絶え間なく小さく揺れて、その度に横っ面を軽く叩かれる。音といえばそのくらいのもので、浜辺から聞こえて来る音は横っ面を叩く海水の音より小さくてラジオの雑音か録音された雑踏を遠いところから聞いているように思える。

「祐司さん。また、潜りっこしません?」
「よし、やるか。」
「今度は昨日より深いところまで行きましょうね。」
「そんな深くまで潜れるのか?」
「私について来れたら、の話ですけど。」

雨上がりの午後 第817回

written by Moonstone

 俺と晶子はジャンパーを脱ぎ、ごく自然に手を取り合って人波を掻い潜りながら海へ向かう。そうだ・・・。今、俺には晶子という彼女が居るんだ。宮城のことは昔のこと。今は今を大切にするべきだ。

2002/5/20

[昨日も駄目・・・]
 殆ど執筆が進まなかった土曜日の分を挽回しようと思ったんですが、やる気が全く出なくてほぼ一日横になっていました。一時は夕食を作るのも躊躇したくらいです。
 ここ最近、自分のすることに自信が持てなくなってきたんですよ。仕事にしろ、ページ運営にしろ。仕事は納期が迫っているのに遅々として進まないし、作品を執筆して公開したところで反響が悲鳴を上げるほど来るわけではないし、自分の能力の限界が見えたというか・・・そんな感じがします。
 ページ運営に関して言えば、数ヶ月まともに更新してなくても、日記を時々書いているだけでもこのページの定期更新時くらいのアクセスを誇るページがあるわけで・・・。努力の空しさや馬鹿らしさを感じずにいられません。
 俺達一行は少しの間、ビーチパラソルが作る濃厚な黒い影の下でくつろぐことにした。別に相談して決めたわけじゃなくて、成り行きでそうなったという感じだ。それに最高潮に達した熱気と強烈な陽射しの下にいきなり繰り出そうという気にはなれない。昨日は海へ来たのが久しぶりということもあって行こうとなったら即飛び出したが、二日目の今日は余裕というか、行き交う人々を高みの見物と洒落込もうという気が強い。
 俺は時折視線を左右に動かして様子を窺う。何時あの集団が宮城をつれて再び「襲撃」してくるか分からないからだ。とはいってもこの混雑じゃ、人波に紛れて気がついた時には手遅れ、という可能性が高い。出来ることならマスターと潤子さんには見られたくないんだが・・・。
 何時「襲撃」して来るか分からない不安が、時間が流れていく毎に肥大してくる。こうなったら「来襲」の前に「避難」するのが一番だ。俺は立ち上がってマスターと潤子さんに告げる。

「俺、海へ行ってきます。」
「午前中具合が悪くなったのに、大丈夫なの?」
「もう平気ですよ。十分休みましたし。」
「あ、じゃあ、私も行きます。」
「二人の方が安心だな。祐司君も井上さんを置いて行くわけにはいかんだろ?」
「そりゃあ・・・勿論ですよ。」
「行きましょ、祐司さん。」
「ああ。」
「行ってらっしゃい。具合が悪くなったら直ぐ戻ってきなさいね。」
「「はい。」」

雨上がりの午後 第816回

written by Moonstone

 昼過ぎの浜辺は昨日と同じかそれ以上の混雑ぶりだった。俺と晶子は防波堤からの見晴しで目測した位置を頼りに、マスターと潤子さんを朝確保した場所へ案内した。場所はきちんと確保されていて、クーラーボックスの中身もきちんと残っていた。やっぱり世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。

2002/5/19

[大失態・・・]
 昨日は某連載の新作を書き上げる予定でした。ところがまたしても早朝覚醒にやられた余波で起きたのがA.M.11:00前。遅い朝食を取ってから買出しに出かけ、その後遅れていた郵便物を投函しに行ったり昼食を食べたり(薬を飲む関係で、3食摂らないといけない)しているうちに、時間はあっという間にP.M.2:00。2時間スタートが遅れた上に、今回はかなりデリケートな部分を書くということでなかなか執筆が進まず、半分ほど書き上げたところで夕食。
 問題はその後。30分程テレビを見た後執筆を再開しようとしたんですが、どうにもやる気が起こらず、ベッドに横になっていたらあっという間にP.M.11:00。ページ巡回とメールチェックをした後で執筆をする気にはなれないので、今日に(お話の時点では明日)持ち越し。大幅に予定が狂いました。
 どうも今回の新作は書き辛いんですよね。前回の反響が賛否両論真っ二つだっただけに。内容によっては読者を多数失いかねないので、考え考えしながら書いていました。思い切って自分の考えを押し通して修正を入れるか、それとも読者の意見をある程度踏まえて今のように進めていくか、今日もこれで頭を痛めそうです。
「そうよ、祐司君。何事も無理は禁物。休める時はギリギリまで休んでおくことよ。」
「それにしても、さっきの祐司君と井上さんのやり取りは、もう立派な夫婦だな。祐司君が尻に敷かれてそうだが。」
「マ、マスター。夫婦だなんて話が飛躍してますよ。」
「そうかあ?良い感じだと思ったんだが。」
「私も同じ。祐司君、しっかりしてないと本当に晶子ちゃんのお尻に敷かれちゃうわよ。」
「・・・はい。」

 確かにさっきのやり取りは俺が押された格好だ。このままだと本当に晶子の尻に敷かれかねないな。まあ、あれだけだらしないところを見られては、晶子が自分が頑張らないと、と思っても無理はないだろう。宮城とのことは終わったことだと自分で言ったじゃないか。だったらそれに振り回される必要は何処にもない筈だ。本当にもっとしっかりしないと駄目だな・・・。

 昼前に俺は晶子に起こされた。何時の間にか眠っていたらしい。やっぱり疲れが溜まってたのね、と潤子さんに言われた俺は、そうみたいですね、としか言えなかった。心の疲れは身体の疲れになって現れるみたいだな。
 俺は寝起き間もないことでちょっと頭がぼうっとしたが、それも程なく収まったので、マスターと潤子さん、それに晶子と一緒に昼食を食べに食堂へ向かった。その頃には気分も随分楽になっていた。
 朝食に刺身を加えたような昼食を食べ終わり、30分ほど部屋で休んだ後、全員揃って海に向かった。その前にマスターと潤子さんが着替えをするということで俺と晶子が締め出されたことは止むを得ないだろう。

雨上がりの午後 第815回

written by Moonstone

「身体の具合が悪くなった時は、良くなったと思っても安静にしてた方が良いですよ。ぶり返したり後に引いたりしますから。」

2002/5/18

[身体が動かない・・・]
 このところ病状が芳しくありません。午前中から午後3時頃まで何もする気力が起こらず、無性に横になりたい衝動に駆られます。そのくせ、午後4時頃からじわじわと気力が出てきて、終業時間頃には活発になっているという困った状態です。お陰で気力のない時間帯に何とかしようと踏ん張るので、もの凄いストレスを感じます。これは経験した人でないと分からないでしょう。傍目には動作がやたら鈍いとしか見えないんですから。
 シャットダウンで帰省していた時にはなかった早朝覚性も酷くて、処方を変更してもらった薬でも効果なし。危険とはいえ、アルコールでも入れないと満足に寝られないようです。2時に寝て4時過ぎに目が覚めた時にはがっくりしますよ、ホントに。それ以後は転寝程度の眠りですから、疲れが満足に取れない・・・。
 仕事はそれなりに進んでいるんですが、納期というプレッシャーが相当重荷になっているらしく、平日は朝からかなり憂鬱です。このプレッシャーから逃れるには仕事を進めるしかない、でも思うように進まない、ということが些細なことでもストレスになって蓄積されていっているようです。折角良くなってきたのに、また逆戻りなのかなぁ・・・(溜息)。
もう手遅れなんだ。俺とお前の関係は、あの日の夜の電話で終わったんだ。俺のことはすっぱり諦めて他の男を探した方がお前の為だし、お前ならそれくらい訳ないだろうに・・・。
 もう仮病を使うのはよそう。何時までも考えていたところで結局はなるようにしかならないんだから。俺は目を覆っていた右腕を退けて溜息を吐きながら上体を起こす。

「祐司君、もう良いのか?」
「・・・無理しなくて良いんですよ。」
「もう大丈夫。楽になったから。」

 実際はまだ気が重いんだが、いい加減自分の中で吹っ切らないことにはどうしようもない。俺の心の問題は最終的には俺自身で解決するしかないんだから。前の彼女と偶然出くわした。それだけのことだ・・・。

「顔の赤みも出てきてるわね。お昼御飯までまだ時間あるから、念のために横になってた方が良いんじゃない?」
「いえ・・・。大丈夫なのに何時までも床に転がっていてもしょうがないですから。」
「潤子さんの言うとおりですよ。こういう時は大人しくしてるに限りますよ。」
「いや、本当にもう大丈夫だからさ。」
「駄目です。お昼まで横になっててください。」

 晶子はちょっと強い口調で言う。俺を心配してのことだろう。こう迫られた時に押し通そうとすると、それこそ売り言葉に買い言葉になって喧嘩に発展しかねない。それだけは御免だ。ここは素直に晶子と潤子さんの進言に従うとするかな。
 俺は身体を再び横になる。もう目を覆い隠すようなことはしなくて良い。ただ目を閉じてじっとしていて時間が過ぎていくのを待つだけだ。

雨上がりの午後 第814回

written by Moonstone

 俺の口から思わず小さな溜息が漏れる。何でこの期に及んで俺とよりを戻したいなんて言うんだよ、宮城・・・。何でそこまで俺にこだわるんだよ・・・。

2002/5/17

[デフラグで失敗]
 PCを使っているうちにHDDに書き込まれる位置が外周の方に散らばり、アクセスが遅くなってくるという現象は、窓ユーザーの方ならご存知でしょう。私のメインPCもアクセスが遅くなってきた上に、前回の実施からかなり時間が経過していることを考えて、デフラグによる最適化を実施することにしました。
 HDDの容量が増えると時間がかかるのは当たり前ということで、デフラグを実行してベッドに横になると何時の間にやら1時間半ほど居眠り(爆)。で、目覚めた時にはもう終わってるだろうと思ったら、まだHDDのアクセス音が聞こえる・・・。何やってんだ?と思いながら見てみたら、まだCドライブの(Dドライブもある)後半を最適化中で、それも何度か再起動している・・・。
 もしや、と思って常駐させている擬似サーバーと(ネットに繋がなくてもCGIが実行できたりする優れもの)Netscapeを終了させたら、あっという間にCドライブの最適化が終了して、Dドライブも順調に終了。デフラグをする時には常駐ソフトやブラウザは閉じておかないとこうも違うのか、と驚き半分、反省半分。今度実行する時は忘れないようにしないと・・・(メモメモ)。

「お昼御飯までにはまだ時間があるけど、どうかしら?」
「多分ですけど、そのくらいには良くなると思います。ごく軽い熱射病だと思いますから。」

 潤子さんの声が左側から、晶子の声が右側上方から聞こえる。どうやら俺の傍に座ったのは晶子らしい。それを知っただけでも俺は気分が幾らか楽になった気がする。それに晶子が本当のことを敢えて言わずに、軽い熱射病と俺に「話を合わせて」くれたのが嬉しい。また晶子の世話になっちまったな・・・。

「それにしても軽い熱射病だなんてね・・・。寝不足が原因かしら?」
「疲れが溜まってたんじゃないかと思うんですけど・・・。」
「それなら晶子ちゃんも具合悪くなってても不思議じゃないのにね。意外に祐司君、身体弱いのかも。」

 小さい頃はよく熱を出したが、今はそんなことはない。ただ・・・心が弱いと言われれば反論出来ない。どちらにしても情けない話だ。折角の楽しいひと時をぶち壊しにされたことに毅然とした態度を示せなかったばかりか、ことの成り行きを知っている晶子に庇ってもらって・・・。
 それにしても宮城の奴、どうしてこうもタイミング良く、否、タイミング悪く俺の前に現れるんだ?晶子と映画を見に行った帰りにしろ、初詣に以降と電車を待ってる最中にしろ、いきなり現れて、そして逃げ出す経路を断たれたりする。就職活動そっちのけで俺の行動をどこかで監視しているんじゃないかと思えるほどだ。
 また外へ出たら顔を合わせることになるんだろうか?その可能性は否定出来ない。さっきの騒動で俺が居る場所を知られてしまったし、待ち構えている可能性がないとは決して言えない。何せ友人複数と一緒だから、交代で俺が戻って来るのを待っているという、俺にとっては迷惑この上ないことも考えられる。

雨上がりの午後 第813回

written by Moonstone

 横になった俺は、傍に誰かが座った気配を感じる。・・・晶子か?目を隠しているから分からないが、事実を話さずに表情が暗いことを具合が悪いことにして横になったことに罪悪感を感じる。

2002/5/16

[久々に進展♪]
 3年半に渡って死闘を繰り広げている仕事が昨日、大きく進展しました。途中で作業カウントが停止して、OSを再起動しなければならないという現象が、ほぼ確実に解決したようです。まだ何度か実験を繰り返す必要はありますが、5回〜7回を1セットとして10セット以上、不規則な間隔で繰り返し行っても一度も異常が見られなかったことを考えると(今まではそのくらいすれば問題が起こった)、問題は解決したと考えても良さそうです。
 また、これと併せて、データ表示ソフトと起動すると機器に勝手にリセットがかかってしまうという問題も解決したようです。これは予想外でしたが、これも懸案だっただけに解決したのは喜ばしいことです(^^)。
 これにはOSのバージョンアップを(正確にはサービスパックをインストールした)行ったことが影響しています。今まで様々な手段を試みてきたのですが、どうやらOSに問題があるらしいという結論に達し、今回のバ−ジョンアップとなったものです。バージョンアップに行き着くまでにも苦労があったのですが(CD-Rをドライブが認識しないなど)、その苦労が報われてほっとしています。この勢いが他の仕事にも好影響を与えると良いのですが、果たしてどうなるやら。
偽りの笑みだと見破られているんだろうか?勘の良い晶子のことだ。見破っていても不思議じゃない。それに俺は隠し事が出来ないタイプだからな・・・。
 俺と晶子はそれ以後何も話さずに宿に辿り着いた。落ち着いたとはいえ、俺の心は重いままだ。このままマスターと潤子さんと顔を合わせたら多分、否、必ず何かあったのかと問い質されるだろう。多分俺の表情は暗いままだろうし。参ったな・・・。何て言い訳しよう?身体の具合が悪くなった、って言うのが一番自然かな?気分が悪くて−意味は違うが−表情が重ければ疑いはしないだろう。
 俺と晶子は狭い階段を上って201号室へ向かう。マスターと潤子さんは寝直しているんだろうか?それとものんびり寛いでいるか・・・。何れにせよ、二つの部屋を隔てる襖は開け放たれて二つの部屋は繋がっているだろう。俺は覚悟を決めて201号室のドアを開ける。

「ただいま・・・。」
「ただいまー。」
「あら、お帰りなさい。意外と早く戻ってきたわね。」
「ん?祐司君、顔色が冴えないな。具合悪いのか?」

 予想どおり、部屋を隔てる襖は開け放たれていて、服装はそのままのマスターと潤子さんが茶を飲みながら寛いでいた。マスターが早速俺の「異変」に気付いて尋ねてくる。これも予想どおりだ。俺は小さく頷いて答える。

「ええ、ちょっと気分が悪くなって・・・。」
「大変ね。暫く横になってた方が良いわ。」

 潤子さんは壁際に積まれていた座布団を一つとって、それを二つ折りにして床に置く。それを枕代わりにしろということだろう。俺は晶子から手を離して潤子さんが用意してくれた座布団に頭を乗せて横になる。そして直ぐに目を閉じて念のため右腕で目の部分を覆う。万が一涙が出てきても汗とか何とか言って誤魔化せるだろう。

雨上がりの午後 第812回

written by Moonstone

「・・・もう、大丈夫だから・・・。」

 俺は無理に笑みを浮かべて晶子を安心させようとする。それでも、晶子の顔からは不安の色が消えない。

2002/5/15

[ひー、何があったんだ?]
 以前反響の少なさを愚痴った(背景と同色でお話しましたが)ことがありますが、月曜日にはメール3通、書き込み3つをいただき、てんてこ舞いでした。書き込みへのレスを先に済ませて(掲示板に自分の書き込みが長期間放置されているのは気分が悪いでしょうから)メールのお返事を、と思っていたのですが、書き込みへのレスで予想以上に時間を食われて、結局メールのお返事は翌日に先送りせざるを得なくなりました。メールを下さった皆様、遅れてすみません(_ _)。でも、こうして感想や書き込みで賑わうのは悪い気はしませんね。
 意外と言っては何ですが、「雨上がりの午後」がかなり読まれているらしく、知名度ゼロのオリジナル作品が多くの方に読まれていることは嬉しいことです。これからも連載共々精力的に進めていきたいと思います。勿論、他のグループも見捨てたわけではありませんので、機会がありましたら、普段見ていないグループを覗いてみて下さい。新たな発見があるかもしれませんよ。

「俺から・・・離れないでくれよな・・・。」
「離れろって言われても離れませんよ。離しませんよ。」
「・・・ありがとう。」

 月並みな言葉しか返せない自分がもどかしい。晶子の言葉が再び荒れを現し始めていた俺の心にじんと染み込んで潤し、荒れを消し去っていく。俺は目を瞬(しばたた)かせながら、晶子の手を離さずに更衣室へ向かう・・・。

 着替えを済ませた俺と晶子は、再び手を取り合って民宿や商店が建ち並ぶ通りに出る。此処でも潮の匂いが微かに届いてくる。普段なら心地良い気分にさせてくれる匂いだが、今はさっきの出来事を思い出させてくれる招かざるものだ。勿論、潮の匂いに何の責任はないのは分かってる。だが、今は嫌な気分にさせられることには違いない。
 それにしても宮城の奴・・・。新年早々出くわして「衝撃の事実」を語ったばかりか晶子に「奪還宣言」をしておいて−晶子が俺を奪ったっていうのは、それこそ宮城の思い違いだ−、さっきはさっきでよりを戻したいなんて言ってくるとは・・・。そんなに俺に執着するくらいなら、あんなことしなきゃ良かったものを・・・。
 駄目だ。考えれば考えるほど、どす黒いものが胸の底から湧き出してくる。まだ心の整理が途中の段階であんな馬鹿げたことを言い出されたもんだから、あの時と同じようにどす黒いものが噴き出してくるんだろう。全く良い迷惑だ。
 その時、俺の左手が強く握られる。隣を見ると、晶子が俺を見ている。その瞳には、大丈夫ですか?と案ずる感情と、あんなことに何時までも振り回されないで、と叱咤する感情が混じっているように思う。俺の表情が普段と違うことを−智一に、お前は感情が外に出やすいタイプだから隠し事は出来ないって前に言われたな−見てのことだろうな。確かに何時までもずるずる引き摺っていても仕方ないし、折角の楽しい筈の時間が台無しになっちまう。俺が自ら立ち直ろうとしない限り、どうにも話は進まない。

雨上がりの午後 第811回

written by Moonstone

「今は・・・私が居ますから・・・。」

 安心して、と言いたいんだろうか?晶子が居なかったら、俺は今ごろどうなってるか想像もつかない。下手すりゃ宮城に殴りかかってたかもしれない。またのこのこと見たくない面出しやがって、とか叫びながら・・・。晶子は俺の心の支えどころか、心の土台になっているように思う。その土台が崩れたら、俺は本当に壊れてしまうかもしれない。

2002/5/14

[寝たいときに眠れない・・・]
 このところ病状が思わしくありません。非常に疲れやすく、何より辛いのは「寝たくないときに眠くなって、寝たいときに眠れない」ということです。夜帰宅して夕食後に1時間ほど眠ってしまうのは常態化してますし、薬を飲んで就寝しても3、4時間後に目が覚めてしまい、その後本来の起床時間まで転寝する、それで昼間余計に眠くなる、という悪循環に陥っています。
 昨日の診察でそのことを話したら、就寝時の処方を変えてもらいました。これで効果があるかは現時点では不明ですが(お話してるのが日付では前日ですから)、ぐっすり眠って朝爽やかに目覚める、となって欲しいところです。
 昨日から3つの仕事が同時に動き始め、1つは重大な局面を迎えています。場合によってはHDDフォーマットから、という事態も予想されるだけに、万全の状態で臨みたいところです。今私のマウスパッドに置いてある薬がどう効くか・・・。期待と不安が交錯しています。

「まだ完全には心の整理がついてないんですね。」
「・・・ついているつもりだった。だけど、またよりを戻したいだなんて話を蒸し返してきたから・・・崩れちまったよ。」
「私だって本当に気持ちの整理がついてるかって聞かれると、そうじゃじゃないかもしれない、って答えるかもしれませんよ。もし完全に整理がついてるなら、この夏に1週間くらい帰省するか、っていう気になったかもしれませんし。」
「・・・。」
「でも、こうして祐司さんやマスターや潤子さんとの時を過ごして行く度に、少しずつ気持ちの整理が完全になっていっているような気がするんです。その点では祐司さんは・・・大事な過程を邪魔されて辛いんじゃないかなって思うんです。」
「・・・辛い・・・かな。そう言われると確かに・・・。」

 俺自身分かるくらい、声が沈んでいる。言葉も言ったというより漏らしたと言った方が正確だろう。行き場のない、泥沼に嵌まり込んでいくような気分が胸全体を覆っている。同じく行き場を失った、否、形まで失った言葉が唇に粘り付いているように感じ、俺は唇をせわしなく動かしたりしゃぶったりする。

「こういう時、男の人って損ですよね。」
「・・・?」
「泣けないから・・・。耐えるしかないから・・・。」

 晶子の言うとおりだ。男は泣くものじゃない、っていう妙な因習のお陰で泣くことが憚られる。ただ、唇に粘り付いた言葉の塵を拭い去るくらいしか出来ない。こういう時泣けたらどんなに楽になれるだろう。あの時だって泣けることが出来たら、自棄酒飲みながら思い出の品を全部叩き壊して潰して引き裂いて酒の肴にするなんてこともなかったかもしれない。

雨上がりの午後 第810回

written by Moonstone

「・・・上手く言えませんけど・・・。」

 晶子が控えめな口調で声をかけてくる。

2002/5/13

[一日寝っ放し〜♪]
 土曜日に続いて日曜日も、殆どベッドに転がって過ごしました。一旦やる気が失せるとなかなか回復しないんですよね。土曜日に比べて尚悪かったのは、夕食を作らず、栄養剤と菓子と果物で済ませてしまったという点。こんな生活続けてたら絶対バテるぞ、ホントに(汗)。
 まあ、それでも何とか次回定期更新用の作品が仕上がったので、良しとしましょうか。今日からまた仕事ですし、いい加減リズムを取り戻さないといけませんね。もうちょっと頑張ればもっと更新出来たでしょうが、無理して更新したところでどうになるわけでもなし、次回に持ち越すことにします。
 それはそうと「ニュース速報」はご覧いただいたでしょうか?「有事」とやらで戦争に動員されるのは国会の推進派や外部の旗振り役でもなく、我々一般市民であるということを念頭において、アピールも併せてご覧下さい。
初詣で出くわした時にもお前との関係は終わった、って言って俺が拒否したこともすっかり忘れて、尚も俺との復縁を希望してるのか?だったら何で・・・あの夜あんな馬鹿げた真似をしたんだ?直ぐに前言撤回の電話もしてこなかったくせに、その上『身近な存在』とやらと付き合ってたっていうのに、よくいけしゃあしゃあとよりを戻したいなんて言えたもんだ。
 ・・・駄目だ。また以前のように腹の底からどす黒い感情が湧き出してきた感じがする。このままじゃ良い思い出にするどころか、また女に対する疑心暗鬼が生じてしまう。そうなったら晶子すら信用できなくなっちまう。このままこうして宮城と向かい合ってるのは得策じゃない。

「もう俺の前に現れないでくれ。これが最後の頼みだ。」
「祐司・・・。」
「晶子。ちょっと早いけど宿へ戻ろう。」
「あ、はい。」

 俺と晶子は立ち上がり、俺は晶子の手を取って−こうしていないと不安で仕方がない−足早に立ち去る。俺を呼び止める声は聞こえない。宮城、このまま俺のことは良い思い出に留めておいてくれ。頼むから・・・。
 俺と晶子は砂浜を横切り、防波堤を越えて更衣室や海の家が立ち並ぶ通りに出る。此処まで来ればもう追っては来ないだろう。俺は歩くスピードを緩める。それにしても、晶子にはまたみっともないところを見られてしまったな・・・。「援護射撃」までして貰って・・・情けないったらありゃしない。

雨上がりの午後 第809回

written by Moonstone

 俺は思いの丈を宮城にぶつける。宮城は困惑した表情で俺を見ている。まさかこんなにきっぱりと自分を拒否するとは思ってなかったというところか?

2002/5/12

[一日潰した・・・]
 シャットダウン明け最初の週末、寝たのが遅かったせいか、それとも連休明けの仕事の疲れが溜まっていたせいか、昨日は起きたのが11時前で昼間は買出しに出かけた以外ベッドに突っ伏していました(汗)。本当ならこういう時を利用して更新が滞っているグループにてこ入れをしたり連載の書き溜めをしたりすべきなのに・・・。ま、しょうがないですな。自分の身体には逆らえません。
 夕食を食べてからは回復して、ある作品の次回作を(正確には次々回作)書いていました。結構調子良く進んだので、今日も書ければ久しぶりに連続更新が出来そうです。前々から書きたかったシーンにようやく到達して、ちょっと良い気分です(^^)。
 そうそう、「3×3EYES」ってもう連載終わっちゃってるんですね。昨日38巻を買って読んで、末尾の広告欄に(と言うのか?)「次巻完結」と大書してあったのを見て初めて知りました(爆)。今のところ絶望的な展開ですけど、どんな終わり方をするんでしょうか?コミックスを全巻集めて読んできた身としては気になるところです。
「・・・それは・・・本当に悪かったと思ってる。」
「悪かったと思ってようが何だろうが、その電話で俺を切った後、最初に別れ話を切り出した時に存在を仄めかした『身近な存在』とやらと付き合ったんだろ?それはどう説明するんだ?気持ちが切り替わったからじゃないのか?お前はさっき寂しさを紛らわすためとか言ったけど、俺への気持ちが続いていたのにその『身近な存在』とやらと付き合ってたなら、お前は二股かけたことになるんだぞ。違うか?」
「それは・・・。」
「どう言い訳しても、お前の気持ちが俺から離れて、あの夜の電話で俺とお前の関係は終わった。俺は今までの経緯からそう解釈した。そして実際、お前は別の男と付き合って別れて、俺はお前と切れて間もなく知り合ったこの娘、晶子と去年の終わり頃から正式に付き合い始めた。これが事態の大まかな流れだ。だからもう、お前の入る余地は何処にもない。・・・諦めな。」
「ちょ、ちょっと安藤君。確かに話を聞いてみて、優子が安藤君に悪いことをしたとは思うけど、そんなに綺麗さっぱり優子を捨てられるわけ?あんた達、学校中で知らない人は居ないぐらい仲良かったじゃないの。」
「綺麗さっぱり?そんなわけないだろ。俺はあの夜の電話の後で、自棄酒飲みながら宮城絡みのものを全部この手で叩き壊して引き裂いたんだからな!」
「「・・・。」」
「それから暫く女なんて信じられなくなったさ。俺の隣に居る晶子が好意を寄せてきても全部突っぱねたんだ。でも、時間が経つにつれて宮城とのことが良い思い出だけ残るようになってきて、去年の終わり頃になってようやく、俺は晶子の気持ちを受け入れて、同時に自分の気持ちも認めたんだ。俺は晶子が好きなんだ、っていう気持ちをな。」
「「・・・。」」
「ようやく気持ちの整理がついてきたところだったんだ。良い思い出だったな、と思えるようになってきたところだったんだ。なのにまた話を蒸し返しやがって・・・!いい加減にしてくれ!また憎しみを湧き出させるつもりなのかよ!」

雨上がりの午後 第808回

written by Moonstone

「俺の中で終わらせたのは宮城、他ならぬお前自身だろ?電話口で別れ話を蒸し返して俺がこの前会ったのに、って言っても、お前は『御免なさい。でももう疲れた』って言ったじゃないか。お前は言った覚えがないって言うかもしれないが、言われた俺は今でも覚えてる。あの時のショックと一緒にな。」

2002/5/11

[この話題は避けて通れないでしょう]
 中国にある日本総領事館に北朝鮮からの亡命一家らしい一団が駆け込んだところ、中国の警官が日本総領事館の敷地に無断で入って一団を取り押さえて連行したという事件。これには2つの大きな問題と疑惑があります。
 1つ目は「中国側の行動は国際法違反である」ということ。ウィーン条約では公使施設には(領事館や大使館など)切迫した事情がない限り無断で敷地内に入ることが出来ないと定められており、中国の対応は明らかに国際法違反です。過去にも北朝鮮からの亡命者が公使施設に駆け込むということがありましたが、中国がそれを取り押さえたというのは今回が初めてです。日本政府はウィーン条約と何より亡命者の人権擁護の立場から、中国に毅然とした態度で亡命者の身柄引渡しを要求するべきです。
 2つ目は「何故あのような映像が撮影されていたのか」ということ。中国で隠れて撮影することはそれこそ警官に捕まる行為です(場所によっては隠れてなくても捕まる)。なのにあれだけしっかり一部始終が撮影されていたということは、事前に亡命者が来るという情報があり、それが中国側にも流れていたのではないでしょうか?そうして撮影した映像を配信することで中国や北朝鮮の体制批判を喚起しようという意図があったのではないでしょうか?そう思えてなりません。亡命者を政治的に利用することは許されません。そのあたりの真相解明も進めるべきでしょう。
 宮城は唇をぎゅっと結んで晶子を睨んでいる。対する晶子も厳しい表情で宮城を見据えている。一人の男を巡って今の彼女と元彼女が争う、なんて図式は傍目には羨ましく見えるかもしれないが、当事者にとっては緊迫感と険悪な雰囲気ばかりで良いことなんてこれっぽっちもない。

「・・・私は祐司と話してるのよ。邪魔しないでくれる?」
「前にも私、言いましたよね?貴方の言い分は勝手過ぎるって。一度別れ話を切り出して、相手の気持ちを試そうと思って同じように別れ話を切り出して、挙句の果てには別の男の人とお付き合いして、その人と別れたからもう一度、なんて貴方、祐司さんを何だと思ってるですか?」
「しつこいわね!私はあんたとじゃなくて、祐司と話してるのよ!」
「しつこいのはどっちですか!祐司さんを散々弄んでおいて会う度によりを戻した言って言う方が、よっぽどしつこいじゃないですか!」
「安藤君。その女性、私達より年下なの?」
「その逆。俺より1つ上だよ。・・・晶子がそう呼ぶって言ったんだ。」
「年下相手に『さん』付けか・・・。随分腰の低い人ね。」

 腰が低いからじゃなくて、祐司、って呼ぶのは宮城と同じになるから嫌だってことで祐司さん、って呼んでるんだ。それに晶子はかなり躾が厳しい家で育ったみたいだから、敵相手でもですます調で喋ってしまうんだろう。
 周囲を見ると、やはり俺達の方にかなりの視線が向いているみたいだ。そりゃ、こんな状況を見れば成り行きを見たくなるのも無理はない。だが、これは見世物じゃないんだ。宮城とはもう終わったんだし、晶子との時間をこれ以上邪魔されたくない。ここはやっぱり当事者である俺が、譲り合う筈がない闘いに終止符を打つべきだろう。俺だってこんな喧嘩に巻き込まれるのはまっぴらだ。

「宮城。俺は前にも言った筈だぞ。お前とはもう終わったんだ、ってな。どんな事情や思惑があったにせよ、お前が俺を切って別の男と付き合ってたの事実がある以上、やり直そうなんてどだい無理な話だ。それに見てのとおり、俺には新しい彼女が出来た。もうお前の割り込む余地はない。俺のことはすっぱり諦めて別の相手を探しな。その方がお前のためにもなる・・・。」
「・・・諦められる筈ないでしょ?私の中じゃ終わってないんだから。」

雨上がりの午後 第807回

written by Moonstone

 まだ日が浅いのは事実だが、それを口実にして宮城とよりを戻せ、なんて言っても無理な話だ。俺は晶子と別れる気は毛頭ないし、第一、宮城とよりを戻すつもりはさらさらない。俺を「切った」理由が初詣で出くわした時にはっきりした以上、もう昔の良い思い出として記憶のアルバムに残しておきたいんだ。

2002/5/10

[ちょっと(?)ネガティブなお話]
 一体どうすれば良いんでしょうねぇ、反響の少なさは。そりゃページの雰囲気が名称からして固い印象なのは分かってますが、それでも作品公開の際には、特にSide Story Group 1なんて1日2日で1000くらいカウンターが回ります。でも感想は3通来れば御の字。その他のグループなんて更新しても感想が来ないのが当たり前なんです。カウンターはそれなりに回っているのに、ですよ?
 無理してでも感想を送れ、とは言いません。感想を書くのにはそれなりにエネルギーが要ることくらい知ってますから。でもね、作品一つ作るのに少なくとも感想を書くよりはエネルギーを使ってる筈ですよ。そうして世に送り出した作品を読んで(或いは聞くか見るか)終わり、というのは作品を愚弄していると言えはしませんか?
 前のイベントも殆ど無反応だったし、挙句の果てには問い合わせに丁寧に答えたのにその後音沙汰なしなんてふざけたことまであったりして、休日を潰してまで懸命に更新するのが馬鹿らしいですよ、ホントに。別に感想が来なけりゃお返事する必要はないですから、その分楽といえばそうなんですけどね。気分次第で更新、に変えようかな、本気で。
 女の集団からの返答はない。筋が通ってるのは客観的に見ても俺の方だ。関係が切れることが予想外だったとはいえ、実際に別の男と付き合うようになったなら、関係が切れたと宣言してるようなもんじゃないか。それを俺の思い違いが原因だ、なんて勝手なことを言われては困る。

「・・・祐司。あの時は完全に私が悪かったって思ってる。」

 それまで黙って突っ立っていた優子が口を開き始める。

「人の心を試そうなんて馬鹿げたことした、って後悔してる。私、その人とも完全に別れたし、その人と付き合ったのも祐司と別れる羽目になった寂しさを紛らわせるためだった。本当に御免なさい。だから・・・もう一度私と・・・。」
「それは・・・」
「出来ない相談だ、って、まだ分からないんですか?」

 俺が言おうとしていたことを、晶子が遮って言う。思いがけない方向からの「援護」に、宮城の顔が驚きから険しいものに変化する。宮城にとってみれば、晶子は自分の目が行き届かないうちに俺を奪った泥棒猫という感覚なんだろう。もっとも、明らかに関係が切れて、その後で付き合い始めたんだから、晶子が泥棒猫呼ばわりされる筋合いは何処にもない。

「安藤君。その女性誰?」
「今、付き合ってる相手だよ。付き合い始めて約7ヶ月ってとこ。」
「7ヶ月ってことは・・・去年の終わりか今年の初めくらい?」
「そう。」
「じゃあ、まだ日は浅いんだ・・・。」

雨上がりの午後 第806回

written by Moonstone

 俺の語気がどんどん荒くなっていくのが自分でも良く分かる。折角良い思い出になっていく過程を辿ってきたっていうのに、また現れてよりを戻したいだなんて言うもんだから、苛立ちが増してくるのも当然だ。

2002/5/9

[期日迫ってるのになぁ・・・]
 今、私は3件の仕事を抱えています。1件は共同開発で最後の詰めは相手任せで良いんですが(本当はあまり良くない)、2件は自分一人で完結させなくてはならない上にそのうち1件はトラブル続きで期日をとっくに過ぎてて、もう1件は実質半月後が期日です。どれも相手方の都合で実際はそれほど期日は厳密ではなかったりしますが、片付けないことには重荷を何時までも背負わなければいけません。
 ところが肝心のモジュールや部品が全然揃わない・・・。部品が揃わないことには作るどころか設計も(部品配置含む。これ重要)出来ないので、ひたすら待つしかありません。仕方がないのでその間は共同開発の付属品を(Windows用のヘルプ機能)作るくらいしかありません。本題の方は相手方も手を焼いている様子ですし・・・。
 おまけにこっちに戻ってきてから再発した早朝覚醒のお陰で頭はふらふらするし、殆ど1日PCに向かっているので涙がポロポロ出てくるし・・・。早く片付けて楽になりたいです。
「で、その時に優子から安藤君と別れたって聞いてさ。あたし達びっくりして事情を聞いたの。そしたら何でも、安藤君の気持ちを確かめたくて別れ話を電話口で切り出したら本気に取られちゃったって言うじゃない。優子は別れたくないって言ってるし、この際よりを戻したらどうかな、なんて。」

 何を今更・・・!一度は「身近な存在」とやらに気を惹かれて、俺との待ち合わせに思いっきり遅れたばかりか、「疲れた」とか言って別れを暗喩したのは一体誰だ?!それにあの夜の電話で「別れた」後、その「身近な存在」とやらと付き合ってこれも別れて、就職活動の移動ついでに俺が居る町に来て、晶子と映画を見に行った帰りに偶然出くわした俺とやり直したいって言い出したんじゃないか!その辺の経緯も友人に話さないで単に俺とよりを戻したいだなんて、勝手過ぎるにも程がある!

「そんなこと出来るかよ。試しか何だか知らんが、その電話の前に別れ話を持ち出したのはそっちだ。俺は電話でその時と同じような形で別れ話を切り出されたから、もう終わった、と思ったんだ。その辺の事情は知ってんのかよ?」
「それは・・・初めて聞いた。」
「だろうな。自分の都合の良いところしか話さないで俺とよりを戻したいなんて、勝手も良いところだ。・・・もう行ってくれ。これ以上思い出をぶち壊しにされたくない。」
「ちょっと待ってよ。同じ形で別れ話を持ちかけられたからもう終わった、って思ったのは安藤君の思い違いじゃないの?」
「思い違いと言えばそうだけど、人の気持ちを試そうなんて方が問題なんじゃないのかよ。それにさっきも言ったとおり、そいつは実際俺と別れた後に、別れ話の時に存在を仄めかした「身近な存在」とやらと実際に付き合ってたんだ。これが関係が切れたって言う以外、どう言えば良いんだ?」

雨上がりの午後 第805回

written by Moonstone

「何で・・・此処に?」
「あたし達、この4月に久しぶりに集まってね。折角だから泊りがけで何処か行かない?ってことになって、此処に来たのよ。海なんてここ数年行ってなかったし、丁度良いかなって思って。」

2002/5/8

[困ったなぁ・・・]
 2年近く更新が滞っている2つの音楽グループですが、その最たる原因は、文芸関係のグループ更新で手がいっぱいで、音楽制作に使うシンセサイザーに触れることすらなかったことです。
 で、文芸関係の作品制作や連載の書き溜めをする気力が起こらなかった5/6に、実に久しぶりに(もしかすると1年ぶりくらいか?)シンセサイザーの電源を入れて、取り敢えず既成の曲を聞こうとシンセサイザーのFDDから設定をロードしようと思ったら・・・動かない!ディスクの損傷かと思って別のディスクを入れて動作させたら・・・これまた動かない!フォーマットやディスク情報の閲覧さえできないということは、FDDの故障としか考えられません。
 修理に出そうとは思うのですが、何せ買ってから15年近く経つものですし、何より購入店まで持って行く手段がない(鍵盤付きで10kgくらいある)!レンタカーを使うのが早道でしょうが、生憎とある事情で我が家の財政は破産寸前の状況・・・。少なくとも7月までは現在の設定のままで使うしかありません。作品制作には支障はないのがせめてもの救いですが、FDD以外にもあちこちガタがきているし、年数も経ってるから修理可能かどうか・・・。システムの中核を占める機器だけに影響は深刻です。災難続きだなぁ、ここ最近(溜息)。

「ちょっと、あの娘何処行ったの?」
「あ、また男に引っかかってる。ちょっと待っててね。引き連れてくるから。」

 そう言い残してその集団はもと来た道を急いで引き返していく。俺はただ呆然とそれを見送るしか出来ない。記憶の底からある場面が鮮明に浮かび上がってきた。間違いない。あの集団は・・・!

「祐司さん。あの女性(ひと)達、誰ですか?」

 当然、隣に居る晶子が尋ねてくる。俺は緊張か何かで強張った視線を晶子の方へ向けられないまま答える。

「・・・高校の同期の奴等。」
「その割には祐司さん、顔が強張ってますよ。」
「そりゃそうだろうな・・・。あの集団が居るってことは、つまり・・・。」

 答えが核心に入りかけたところで、さっきの集団が一人の女を引っ張って戻ってきた。俺は声を上げることも出来ない。集団はその女を俺の正面に立たせる。女は緊張した面持ちで突っ立っている。肩口で切り揃えた髪、この顔、このスタイル。忘れようにも忘れられない。隣で晶子があっ、と驚きの声を漏らす。そりゃ当然だろう。俺だってまさかこんな場所で出くわすなんて想像もしなかったんだから。

「祐司・・・。久しぶりね。」
「・・・宮城・・・。」

 そう、集団が俺の目の前に引っ張り出したのは紛れもない、宮城優子だ。久しぶり、とか気軽に声をかけようにも喉につっかえて出て来ない。否、無意識に言葉を出すのを拒否しているのかもしれない。

雨上がりの午後 第804回

written by Moonstone

 俺はその集団を見ながら記憶の棚を引っ掻き回す。・・・確かに見覚えがある。何時だったか・・・。最近じゃない。もっと前、・・・高校時代に関係する奴等か?集団・・・。俺の名を知ってる・・・。!もしかして、こいつら・・・。

2002/5/7

[本日より活動再開です]
 1週間以上のシャットダウンを(5/1に更新しましたが)終えて今日から更新を再開します。特別な事情がない限り9月中旬まで更新を休みなく続けていく予定ですので、今後とも宜しくお願いいたします。
 連休最後の日だった昨日は、昼前に起きた後、買い物に走り回って連載を多少書き溜めて(シャットダウン中全然書き溜めが出来なかった)、あとはぐったり横になっていました。寝るのが遅かったのが原因でしょうね。今日から仕事なんですが、いきなりエンジン全開というのは厳しいのでこの1週間は「慣らし」のつもりで仕事を進めていこうと思います。
 シャットダウンの間、殆どネットには繋がず作品制作に専念・・・したかったんですが、何だかんだで実質4日くらいしか作品制作に専念出来ませんでした。まあ、あのグループが思ったより早く更新出来ることが確実になりましたので、今週の週末次第では、今度の定期更新はかなり多彩に出来そうです。お楽しみに(^^)。
ちなみにクーラーボックスの中身にアルコールの類はない。酒を飲んで水に入るのは生命の危険に関わる、という潤子さんの指摘によるものだ。その点に関して、酒飲みのマスターや俺は反対しなかった。無論、晶子もだ。酔っ払って海に入ったらどざえもんになりかねないことくらい知っているつもりだ。

「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」

 晶子は最初ちょっと意外そうな顔をしたが、直ぐに笑顔に戻って俺から缶を受け取る。まさか俺がジュースの缶を取って渡すとは思わなかったんだろうか?まあ、普段の生活から考えれば、俺の方からアクションを起こすことが少ないから驚いても当然といえば当然かもしれない。
 プルトップを開けてジュースを軽く喉に流し込む。酸味と甘味が混じった冷たさが喉を通って腹全体に染み渡る感じがする。夏には冷たい飲み物が良く似合う。ただ、こういう飲み物は後で口に甘味が残るのが欠点なんだよな。その点、熱い茶なんかは飲む時は熱いが、後味はさっぱりする。
 のんびり行き交う人波を眺めながら休息を取っていると、数人の若い女の集団が視界に入る。どれもが男の目を誘うような派手で大胆なカットの水着を着ている。・・・あれ?何処かで見た覚えがあるような、ないような・・・。そう思っていると、その集団の一人がふと俺の方を向いて、目を丸くして俺を指差す。

「あ、安藤君じゃないの!」
「え?あ、本当だ!久しぶりー!」
「・・・誰だ?あんたら。」
「あ、覚えてないのも無理ないか。あたし達の存在はあの娘(こ)の陰に隠れて消え失せちゃったってとこね。」

雨上がりの午後 第803回

written by Moonstone

 熱気の増大にしたがって濡れた肌や髪と同様に乾いてきた喉を潤そうと、俺はクーラーボックスの蓋を開けて、オレンジジュースの缶を2つ取り出す。

2002/5/1

[万国の労働者よ、団結せよ!]
 シャットダウン中ですが色々あって更新となりました。八重桜もこちらではとっくに散っちゃってるのに背景がそのままというのは何となく落ち着きませんし。5月ということでやっぱり藤の花ですが、これはお約束というやつです(笑)。
 さて、今日はメーデーです。労働者が団結し、雇用者の労働条件切り下げに対抗して決起する日です。昨今、業績不振を口実に人員削減や労働条件の切り下げの嵐が吹き荒れる一方、長時間過密労働は一向に改善されていません。企業、とりわけ大企業には多額の溜め込みが(内部留保)あり、これを1%切り崩すだけでも新規雇用増、大幅ベースアップは可能です。
 そういう事実を知らずにストライキ非難をする向きもありますが、これは雇用者側を利するものであって許されるものではありません。労働の重み、対価の重要性を知らないからそのような暴論が吐けるのです。このような保守反動的動向を厳しく批判し、「労働者の為の組合」を作り、支援し、雇用者やマスコミなどと戦っていこうではありませんか!労働者こそ社会の主人公です!主役が輝く社会を目指しましょう!
 俺と晶子が海で遊んでいる間に、砂浜も随分混み合ってきていた。俺と晶子が来た時には2、3しかなかったビーチパラソルが幾つも花咲き、浜辺では俺と晶子と同じように水を掛け合ったりビーチボールで遊んでいるカップルや友人らしい数人の団体、家族連れの姿が見える。砂浜では子どもが城や堤防を作って、それが波で流されまいと懸命に「工事」している様子も見えて微笑ましい。
 混み合ってきたとはいえ、まだ自分達の場所がそう簡単に分からないというほどじゃない。俺と晶子は人波を避けながら主が居なくなって久しいビーチパラソルの下へ戻る。念のためにクーラーボックスの中身を確認してみるが、ちゃんと中身はある。モラルなき社会といわれて久しいが、まだまだ捨てたもんじゃない。
 クーラーボックスの蓋を閉じると、俺は晶子の隣で改めて溜め息を吐く。目の前には海は殆ど見えない。代わりに人の波が左右に行き交う。まだそんなに腹は減ってないが、10時か11時前くらいだろうか?時計を持ってないから混雑具合と自分の感覚で推測するしかないが、後者は楽しい時間を過ごした後だからあまり当てにならない。
 俺の肌に纏わりついていた水分が、熱気でじわじわと空中に吸い取られていくのが分かる。いよいよ夏本番、といったところか。賑わいを見せる砂浜からは、俺と晶子が来た時のプライベート・ビーチの雰囲気はすっかり消えて、日本の夏の海の風景そのものになっている。まあ、これはこれで悪い気はしないんだが。

「熱くなってきましたね。」
「そうだな。人の熱気もあるかもしれないけど。」

 熱気の増大にしたがって濡れた肌や髪と同様に乾いてきた喉を潤そうと、俺はクーラーボックスの蓋を開けて、オレンジジュースの缶を2つ取り出す。ちなみにクーラーボックスの中身にアルコールの類はない。酒を飲んで水に入るのは生命の危険に関わる、という潤子さんの指摘によるものだ。その点に関して、酒飲みのマスターや俺は反対しなかった。無論、晶子もだ。酔っ払って海に入ったらどざえもんになりかねないことくらい知っているつもりだ。

雨上がりの午後 第802回

written by Moonstone

 それから暫くの間、俺と晶子は水を掛け合ったり一緒に沖の方まで泳いだり潜ったりして−昨日と同じく、海中でのキス呼吸もあった−存分に遊び、一旦海から上がることにした。長い間水に使っていたせいで身体が結構冷えたし、何より存分に遊んだからここらで一息入れた方が良いだろう。

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