芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2002年1月31日更新 Updated on January 31th,2002

2002/1/31

[うぐぅ・・・どうにもならん・・・]
 ICの設計を本格的に始めて以来今までそこそこ順調に進んでいたんですが(先送りしてる懸念事項はありますが(汗))、ここへ来て重大な問題が発覚しました。今設計しているカウンタは4桁の10進数ダウンカウンタ(10、9、8・・・、1、0とカウントするもの)でカウントが終了したら止める、というものなんですが、20から数え始めて11の次の10をカウントせずに一気に19に戻ってしまい(シミュレーション波形を見ると199の可能性あり)、何時まで経ってもカウントが終らないというバグなんです。
 どう直そうか思考していたんですが(「下手な鉄砲・・・」方式ではまず解決しない)全く良い案が思いつかず、結局1日PCの前で唸っているだけで終ってしまいました(爆)。ここへ来て完全に立ち往生してしまった格好です。
 まだ完成はおろかカウントさえ出来ない(カウンタだけで終わりではない)この状況、何時まで続くのやら・・・。いくらテキスト形式で設計できるとはいえ、所詮使う側である人間がどうにかしないことには先に進まないんですよね〜。ああ、まだ苦悩の日々が続くと思うとストレスが溜まる溜まる・・・。
・・・ここはこうで、ここはこうする・・・。実験手順を念入りに読む。此処で躓くともう一度最初から、ということも珍しくない。手順をゆっくり読みながら器具を操作する様子をイメージする。・・・ここをこうして、次はこうして・・・。
 どうにかひととおり予習を済ませた。BGMに再び意識を向けると、丁度「always」がフェードアウトしていくところだ。大体30分くらいか。この程度で実験が滞りなく進むなら有り難いものだ。自動車学校の実技だとあっという間に終っるところまでは同じだが、ハンコが押されるかどうかびくびくしているかどうかで決定的に違う。
 その時、ドアが軽くノックされる。俺がどうぞ、と応えると、ドアが開いて料理が乗ったトレイを下から支えた格好で晶子が入ってくる。どうやら夕食の方も完了したようだ。俺はテキストをベッドの上に「退避」させてスペースを用意する。

「お待たせしました。出来ましたよ。」
「こっちも丁度予習が終ったところだよ。」
「じゃあ、丁度良かったですね。途中だと祐司さんの邪魔になるから。」
「予習は食べ終えてからでも少し時間をもらえれば済むことさ。それより夕食は待ってくれないからな。」
「ふふっ、そうですね。」

 晶子は目を細めて屈むと、出来たての料理をテーブルの上に置く。豆腐の味噌汁と、ひじきと大豆の煮物の入った器にもずくと胡瓜の酢の物だ。最近晶子は和食の方にも手を伸ばしていて、洋食メニュー中心だった当初とは趣がかなり異なる。煮込みは予め下拵えしておいたんだろう。手間隙かけて用意してくれていたことがひしひしと伝わってきて嬉しい。
 晶子はリビングとキッチンを何度か往復して料理をテーブルの上に並べる。ほうれん草のお浸しに大きめの焼き魚がテーブルの上に加わり、元々あまり広くないテーブルが料理で殆ど埋め尽くされる。そこに茶碗によそわれた御飯とお茶が入った湯のみが加わると、テーブルは完全に満席状態になる。晶子が俺の左隣の「指定席」に腰を降ろすと、声を揃える。

雨上がりの午後 第717回

written by Moonstone

 ま、それはそれとして、今は目前に迫っている物理の実験の様子をきっちり把握しておくことに尽きる。注意深くテキストを読み、テキストに描かれているように実験器具を繋ぐ様子をイメージする。

2002/1/30

[雪が舞う〜]
 昨日は朝から冷え込んでいて、空も重い灰色の雲で覆われていたので、歩いて職場に行こうかな、と一瞬思ったんですが、やっぱり自転車で行きました(爆)。だって、朝の10分横になっていられるかそうでないかの違いは私には大きいんですよ。疲れやすい身体ですからね。
 昼食を食べに外へ出ようとふと外を見たとき、雨・・・じゃなくて白い小さな物体が舞っている・・・。雪かよ、おい!見事に吹雪いてる・・・。やむなく傘を差して外へ。昼食を食べ終えて外へ出る時にはすっかり止んでいて、それから少ししたら、今度は日差しが見えてきましたよ(汗)。忙しい天気だったなぁ・・・。
 あ、そうそう。一昨日の深夜から今日の朝にかけてこのコーナーのウィンドウが開かず、表記どおりAccess Streetsが更新されなかったのは、例によって例の如くFTPの接続不良です。最近また頻発傾向にあるなぁ・・・。
 さて、どれにしようか・・・。晶子は俺と違って幅広いジャンルの曲を聞くから、CDの種類の不足に困ることはない。むしろ多過ぎてどれにしようか迷うくらいだ。まあ、結局は俺が普段聞くジャンルに絞られるわけだが。
 少し考えた後、倉木麻衣の「Perfect Crime」を選んでコンポにCDをセットして−使い方は前に教えてもらったし、普通に使う分には忘れようも無いほど簡単だ−「指定」のクッションに腰を下ろし、テキストを開いてテーブルの上に乗っていたリモコンの「Play」ボタンをコンポに向かって押す。すると1曲目にしてタイトル曲の「Perfect Crime」がフェードインしてくる。音量を邪魔にならない程度に少し絞って、俺は物理のテキストに視線を移す。
 今度の実験は磁化率の測定だ。・・・また智一が悩みそうな気がする。で、結局俺がメインで実行して、智一はそれを少しサポートして、ちゃっかり実験データを頂戴するんだよな。・・・ずるい奴だ。まあ、どうしてそういうデータが出たか説明する時やレポートを書くときはきっぱりと突き放しているから、俺もそう甘くない奴だと智一も思っているだろう。
 実験の手順をイメージしながらテキストを読んでいく。こうすると実際に手を動かす時にも戸惑うことがぐっと減る。智一もせいぜい1時間要るか要らないかのことをすれば良いものを・・・なまじ意外なほど不器用で、さらにペアの相手である俺が「使える」となれば、予習する必要もないと踏んでいるんだろう。・・・やっぱりずるい奴だ。
 ふとBGMの方に意識を向けると、まだ「Reach for the sky」の途中だ。長いようで意外に時間は経っていない。まあ、予習だからそんなに時間がかかるわけじゃないんだが。今度の実験も機器の取り扱いや手順に気をつければそんなに難しい実験じゃないようだ。一般教養の実験だからこの程度で済むんだろうな。専門教科の実験になったら・・・多分そう簡単に終らせてはくれないだろう。それを思うと今から気が重くなる。

雨上がりの午後 第716回

written by Moonstone

 ギターとアンプの調子を確認し終えると、アンプのスイッチを切ってギターを壁に立てかけて、今度は鞄から明日の物理の実験に使うテキストを取り出してテーブルに置く。晶子の厚意に甘えてCDをBGMに使わせてもらうことにする。家でやっていた時も無音じゃ何となく寂しいから何かCDをかけていた。

2002/1/29

[どうにか第1関門突破]
 原因も意味も不明のエラーにずっと悩まされてきたカスタムICの設計ですが、昨日ようやく原因が判明してエラーを回避することが出来ました。原因はきわめて単純。出力に関する記述がなかったからです。いくら本体の設計がまだだからとはいえ、出力に関する記述がないとICとしては機能を果たさないものだということらしいです。そう考えてみれば確かにそうですね。
 しかし、これで全てが終る筈がなし。これでカウンタ本体の設計が出来る環境が整っただけの話です。実際カウンタ部分を記述してシミュレーションを実行したところ、とても使えないものになってしまいました(^^;)。
 まあ、設計が出来るようになっただけでもずっとましです。これで既存ICをどう組み合わせようとか、そのICが入手できるのか戦々恐々とする必要がないですからね。目的のICが無事設計できるようにします(^^)。
 俺は晶子と並んで晶子の部屋に向かう。ロビー隣にあるエレベーターで3階まで上り、そこから廊下を少し歩くと晶子の部屋に辿り着く。もう晶子の先導なしでも簡単に行ける。もっとも中に入れれば、の話だが。
 晶子がドアの鍵を開けて俺を先に中に入れて、続いて晶子が中に入る。ほんのりと温かい。まだ朝晩多少冷えるから暖房を使っているんだろうか?俺の家ではとっくに使うのを止めている。光熱費が馬鹿にならないからだ。たかが数千円、されど数千円。家計を仕送りとバイト代で折半している俺には重い金額だ。

「今日は先に夕食にします?」
「ああ。腹減ってるし。」
「じゃあリビングで待ってて下さい。今から直ぐ作りますから。CDとかは自由に聞いてもらって良いですから。」
「ありがとう。そんなに慌てなくても良いぞ。今日は此処に泊まらせてもらうんだから。」
「そうですね。今日はずっと一緒に居られるんですよね。」

 エプロンを着けながら晶子が嬉しそうに笑みを浮かべる。俺は笑みを返してリビングに通じるドアを開けて中に入る。相変わらず整然と片付けられている部屋の片隅に鞄とアンプを置き、背中のギターを下ろす。これもそれなりに重いからストラップが肩に食い込んでちょっと痛い。
 一旦晶子のベッドの上にギターを置いて、ギターをソフトケースから取り出してアンプに繋いで、続いてアンプのコンセントを繋いでスイッチを入れる。そして軽く弦を爪弾いてギターの具合を確認する。・・・OKだ。ギターの弦は湿度や温度の影響でチューニングが狂ってくるから、練習の前には本格的に調整しないといけない。まあ、ギタリストなら誰でもやってることだろうが。

雨上がりの午後 第715回

written by Moonstone

「祐司さん、こんばんは。」
「こんばんは。ちょっと遅くなったか?」
「いいえ、むしろ早かったくらいですよ。」
「そうか。なら良いんだ。遅れちゃ悪いからな。」

2002/1/28

[来週に賭けるか・・・]
 散々だらけた土曜日の分を取り戻そうとした筈の日曜日も、結局土曜日と大差ない日になってしまいました(汗)。何とか「魂の降る里」の新作は書き上げましたがそこまで。「雨上がりの午後」アナザーストーリーの方は全くの手付かずで終ってしまいました(汗)。
 どうも気分がすっきりしないというか、乗り気になれないんですよね。特に睡眠不足というわけでもないのに身体がけだるいとか、横になっていた方が楽だという意識が根深くあるんです。こういうのを見ると、持病は完治したとはまだとても言えないです。
 幸い来週の週末があるので、そこに賭けてみようと思います。毎日少しずつ書いていたお陰で半分ほど書けていますので、次の週末でしっかり詰めれば定期更新に間に合うでしょう。しかし、完全に予定狂ったなぁ。本当は今日、「Moonlight PAC Edtiion」の号外とリンク増を予定していたんですが・・・。
 晶子の家までは緩い上り坂が続くから、どうしても進むスピードが遅くなる。その上ライトを点灯させているから尚更だ。正直言って歩いた方が早いと思う。だが、帰りを考えると自転車で行った方が時間的にも得だから−勿論スピードの出しすぎには注意しないといけないが−、敢えて重いペダルを懸命にこぐというわけだ。以前は歩いて通っていたんだが、アンプが何しろ重いから辛い、ということで、自転車を使うようになった。
 人通りが殆ど消え、代わりに車が忙しなく行き来するようになった登り坂をゆっくりと進んでいくと−車の中の人間から見れば、かなり奇妙に見えるだろう−、徐々に白亜の建物が見えてくる。晶子が住むマンションだ。その姿が見えてきたことで、俺の足に篭る力も強まる。もうすぐ晶子と会える・・・。晶子が温かい笑顔で出迎えてくれる様子を想像すると、胸の内が温かくなってくる。
 坂道が平坦になって間もなく、晶子の住むマンションに到着する。俺は空白が目立つ自転車置き場の−駐車場は半分ほど埋まっている−一角に自転車を止めて降りると、手早く荷台の紐を解き、アンプを「解放」してやる。そして鞄と同じ手にアンプを持って入り口へと向かう。俺一人では突破できないガチガチのセキュリティを解いてくれる、そして俺を待ってくれている筈の相手に自分の姿を見せるために。
 入り口正面に立つと、丁度入り口のドアの正面に向かって座っていた晶子が立ち上がって、笑顔を見せながら手を振る。俺が笑みを浮かべて手を振ると、晶子は管理人のところに行って何やら言う。ドアを開けてくれと頼んでいるんだろう。毎週繰り返していることだから、管理人ももう慣れたものだろう。
 案の定、セキュリティをどうこうしなくても−したところで解除できる筈もないが−ドアが開く。俺が素早く入ると直ぐにドアが閉まる。小さな窓越しに見える初老の管理人にこんばんは、と挨拶すると、管理人は笑顔で頷く。毎週のことで、もう3ヶ月以上も繰り返していることだから、管理人ともすっかり顔なじみになった感じがする。管理人も俺の顔を覚えてくれていると思う。交代制らしいが、どの人の顔も識別できる。

雨上がりの午後 第714回

written by Moonstone

 俺はかなり暗くなった道へライトを点灯させて自転車のペダルを漕ぎ始める。この時期、冬ほどではないにしてもまだ日の暮れる時間は早い。早めにライトを点灯させないと事故を起こしかねない。自分が被害者になるならまだしも、加害者になるのだけは絶対避けなきゃいけない。加害者になったら進路やバイトどころの話じゃなくなる。

2002/1/27

[ううっ、ヤバいなぁ・・・]
 土曜日。本来は「魂の降る里」の新作を仕上げる重要な日なんですが、ものの見事に昼間ぶっ倒れてました(爆)。出張の疲れが満足に取れてなかったか、或いは持病の影響か分かりませんが、貴重な時間をぶっ潰したことには違いありません。
 夕食を食べてからこのお話をする直前まで、必死に「魂の降る里」の新作を書いていましたが、やっと半分近く書き上げたところ(汗)。それに人物の会話にいまいち違和感を感じていて、修正を加える必要があるようです(汗)。
 本当なら昨日で「魂の降る里」の新作を書き終えて、今日で「雨上がりの午後」アナザーストーリーの新作を仕上げる、といった段取りだったのですが、予定が見事に狂ってしまいました。このお話をし終えたら即行で「魂の降る里」の新作の続きを書き始めて、出来る限り書いたところで今日に繋げたいと思います。あー、後悔先に立たずとはよく言ったもんだなぁ〜。
 晶子の家の電話番号はきちんと暗記してある。毎週月曜日の練習の時には前もって連絡するからな。・・・あ、そう言えば、今日も練習はするんだったか。晶子の家に泊まるということで頭がいっぱいで、普段の行動をすっかり忘れていた。どうも舞い上がってるな、俺。
 決まった順番にボタンを押して受話器を右耳に当てる。左耳に当てた方がメモをとったりする時に便利だと言うが、右肩と耳で受話器を挟めば支障はないし、長年の習慣はそう簡単に変わりはしない。
 コール音が3回目に差し掛かったところで、ガチャッと受話器が外れる音がする。そして聞き慣れた声が少しくぐもって耳に届いてくる。

「はい、井上です。」
「あ、晶子?祐司だけど。」
「祐司さん。今帰ってきたところですか?」
「いや、もう荷物纏めてそっちへ行こうとしてるところ。」
「早いですね。じゃあ私はロビーで待ってますね。」
「ああ、頼むよ。それじゃ切るよ。」
「はい。待ってますから。」

 晶子との通話は呆気ないほど直ぐに終る。まあ、会話は向こうでそれこそ思う存分できるから、電話でだらだらとくっちゃべる必要はないんだが。
 荷物を再確認して、俺はドアに鍵をかけて家を後にする。そして自転車の荷物籠に荷物を入れるだけ入れて、入りきらないアンプは紐で荷台に固定して、ギターは背負って準備完了。こうしてみると、何だか本当にストリートミュージシャンになったような感じがする。まあ、本物のストリートミュージシャンは自転車にアンプを括りつけて移動するようなことはしないかな。

雨上がりの午後 第713回

written by Moonstone

 小さめの旅行鞄に荷物を詰め込んで、ギターをソフトケースに収めてアンプを持って、と・・・。これで良し。あとは晶子の家に電話するだけだ。いきなり押しかけてもあのガチガチのセキュリティに阻まれてアウトだ。携帯電話なんて洒落たものは持ってないから、連絡は出発する前にしておかないといけない。

2002/1/26

[出張報告でーす]
 昨日(お話している段階では帰宅後夕食を済ませて直ぐ)出張に行ってきたわけですが、今日はそのお話をします。もっとも一般のリスナーの皆様には、内容の詳細は専門的故に分かりにくいと思いますので、会場の印象や全体的な傾向、そして肝心要のセミナーの感想をお話します。
 会場の印象は、臨海副都心の横浜版(出張先は横浜です)という感じで、高層ビルが林立する一方、ぺんぺん草が生えているところもあったりする、人間的な雰囲気が感じられない場所でした。会場そのものもコミケで有名(?)な東京ビッグサイトを髣髴とさせるもので、臨海副都心的な事業は此処でも進められているんだな、という印象を受けました。
 全体的な傾向は、「製品開発の全ての過程を自社製品で行える」ということと「ICの大規模高集積化が一段と進んでいる」という印象でした。派手な演出の製品紹介がある一方で「担当者はどうした」というブースもあって、各社の意気込みの違いがよく分かりました。仕事に関するセミナーはちょっと期待外れでした。もう少し実践的なものかと思っていたのですが・・・残念。
 俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。何を言い出すかと思えば、こいつは・・・。こいつに少しでも罪悪感を感じた俺が馬鹿だった。まあ、言えるだけのことは言っておいてやるか。

「・・・友達は少ないって言ってたぜ。」
「そんなことないだろ。あれだけ美人でしかも立ち居振舞いも大和撫子そのもの。黙ってても人が寄って来るだろう。ああ、文学部が羨ましい・・・。」
「話の合う奴が居なくて、クラスでも浮いた存在だって言ってた。晶子、かなり真面目な方で、そういう手の話をしようとすると人が遠ざかるって。だから友達は少ないんだってさ。」
「うーん・・・。勿体無い。実に勿体無い。文学部に押しかけてみるか。」
「お前だったらその方が確実じゃないか?その話術をもってすれば、軽く引っ掛けられると思うけど。」
「うぉっし。それに賭けてみるか!」
「その元気、実験でも発揮してくれ。」
「それとこれとは話は別だ。実験の方はこれからも頼む。」
「あのなぁ・・・。」

 全く困った奴だ。俺は苦笑いを浮かべる。でも、呆れる一方で羨ましくも思える。これだけの元気と行動力があれば、俺みたいにずるずると過去を引き摺ったりしないだろうし、それが元で相手とつまらない諍いを起こすこともないだろう。俺は智一から学ぶ点があると思う。尻の軽いところは別として。

 智一と別れ、帰宅した俺は早速持ち物の準備に取り掛かる。勿論、晶子の家に泊まる準備だ。何時ものギターとアンプに加えて普通のタオルとバスタオルとパジャマ、それと物理の実験のテキストと下着。着替えは大学に行く途中に此処に立ち寄れば良いだろう。あまり荷物が増えると持つのに苦労する。ただでさえギターとアンプが重いから、その他の荷物は出来る限り減らしておきたいところだ。

雨上がりの午後 第712回

written by Moonstone

「なあ祐司。頼みたいことがある。」
「何だ?」
「・・・晶子ちゃんに、友達を紹介してくれるように頼んでくれ。」
「はあ?!」

2002/1/25

[今日は出張でい]
 お話している時間では明日のことなんですが、約1年ぶりに出張で遠出します。勿論仕事関係のものですが、興味があるというか、私が散々苦しめられている仕事関係のセミナーが開かれるので、職場の先輩と一緒に行ってきます。
 私の職場は職場主催のセミナーとかは結構あるんですが、他所のセミナーとかに行く機会は滅多にないんですよ。朝多少早くなりますが、久しぶりに遠出できるということで、煮詰まりを通り越して焦げ付いている仕事の気分転換と有力な情報が得られれば良いな、と思っています。
 出張は日帰りです。よってシャットダウンは行いません。一昨日深夜から昨日朝にかけて芸術創造センターにアクセスできなかったのは、トップページにも書いてあるとおり、FTPの接続不良でファイル転送が中途半端になってしまったためです。最近になってまた頻発するようになってきたので、ちょっと心配しています。定期更新の時に接続不良になるのが一番怖いですね。
「特に祐司、お前は存分に力を身につけておかないといけないぞ。晶子ちゃんを守って尚且つ自分の腕一つで渡って行かなきゃならない世界を目指そうっていうんだったら。」
「そうだよな。」
「そうともさ。でなけりゃ、晶子ちゃんは俺が戴くぞ。」
「それは絶対許さん!」

 俺は思わず声を張り上げる。周囲に居た学生が何事か、という目でこっちを見やる。だが、晶子を取り上げる−ものみたいな言い方で晶子には失礼だが−なんて言うから、こっちだって必死になってしまう。

「冗談冗談。半分はな。」
「半分は本気ってことか。」
「勿論。女一人守れない弱い男に晶子ちゃんを任せるわけにはいかないからな。」
「守ってみせる。お前みたいな何考えてるか分からないような奴に晶子を託すわけにはいかない。」
「えらい言われ様だな。まあ、それくらい言える元気があれば俺の立ち入る余地はなさそうだな。残念だけど。」

 智一は笑みを浮かべる。その笑みがどこか寂しげに見えるのは気のせいだろうか?・・・否、多分気のせいなんかじゃない。あれだけ晶子に熱を上げていたところで自分の割り込む余地がなさそうだと悟れば、寂しく思えて当然だろう。そんな智一を見ていると、晶子を独占していることにちょっと罪悪感を感じてしまう。
 そう思っていると、智一は真剣な表情になる。何だ、一体・・・。俺の方もつい緊張してしまう。何か重大なことでもあるんだろうか?俺に出来ることなら力になってやりたいところだが・・・。

雨上がりの午後 第711回

written by Moonstone

「まあな。でも、そんな世の中が一朝一夕に変わるはずもない。だとすれば、自分で道を切り開くだけの力を身につけないとな。」
「ああ、そうだな。」

2002/1/24

[30分ほど考えましたが]
 お話することが思いつかない(爆)。まあ、話そうと思えばあることはあるんですが、それがあまりにショッキングなものなのでお話するのを躊躇ってしまうんですよ。まるで2年程前の自分を見ているようで・・・。
 もう何もかも嫌になることってあると思うんです。社会人になって全てが行き詰まってしまうことも度々ですし、ページの運営にしてももう投げ出したいと思うこともあります。でも、それを理由に自分の命を犠牲にするのは勿体無いことだと思うんです。自分の命は自分だけのものなんですから。
 イジメという名の暴行・恐喝などを受けている人にしても、その他様々な困難に直面している人にも声を大にして言いたいのは、「勿体無いから死ぬな」ということです。そんな嫌な物事のために自分の命を差し出すようなことは絶対にして欲しくないです。かつて「その一歩」を踏み出そうとした人間の一人として今そう言いたいです。
 その意味でも、もっと俺は何事にも積極的になるべきなんだろう。慢心は道を誤るが、自信がないと厳しい世間の嵐を防げずに吹き飛ばされてしまうだろう。それは晶子が度々俺に言っていることだ。
 高校までの教育は控えめこそ、沈黙こそ金、というようなものだった。だが、大学に入ってみるとそれは一変した。分からなければ自分から教官に質問したり、図書館で調べたりしないと何も進まないまま過ぎていってしまう。そこまでは高校までと大差ないが、大学では単位という形で最終的に響いてしまう。高校までは極端な話やらなくても先に進めたが、大学ではそうはいかない。単位を取り損ねたら留年というものが待ち受けている。
 俺は今までどちらかと言えばやはり控えめな態度に終始していたように思う。大学生活と一人暮らしで多少は改まったものの、まだ積極的というには程遠いようだ。この環境で積極性を身につけて、時にはそれこそ他人を押し退けてでも、という行動を取らないといけないかもしれない。
 俺とて音楽業界の厳しさは雑誌の記事や特集なんかで多少は知っている。しかし、現実はもっと厳しいと考えて良いだろう。それを乗り切るにはやはり積極性が不可欠だろう。

「・・・今からでも何とかなるさ。」
「ほう。随分楽観的だな。お前にしちゃ珍しく。」
「期間限定だけど、この時期を生かせば良くなる。否、良くしなきゃいけない。」
「ま、そうだな。そっちの道を行くつもりならやっぱり強かさや積極性は欠かせないだろうからな。もっともそれ以外の道じゃ必要ないというわけじゃないが。このご時世、譲り合いなんてものは甘っちょろいものでしかないからな。」
「・・・嫌な世の中だな。」

雨上がりの午後 第710回

written by Moonstone

 随分はっきり言ってくれるもんだ。だが、智一の言うことは間違ってはいないだろう。自分と自分の腕をアピールするだけの積極性というか図太さがないと、ライバルの波に飲み込まれるのが関の山だろう。

2002/1/23

[通常国会が始まりました]
 小泉内閣になって初めての通常国会が一昨日から始まりました。本国会では国民生活に痛打を浴びせる一方で大企業、大銀行甘やかし政策の数々、金権腐敗と癒着の構図、そして有事立法の提案が焦点になりそうです。
 有事法制、といわれてもぴんと来ない方もいるかもしれません。簡単に言えば、戦争が始まった時に国民の権利を制限して戦争に動員する法律や制度です。不審船問題がその口実にされているわけですが、あれは海上保安庁の仕事です(詳細の解明が必要ですが)。有事法制はアメリカの要求と日米ガイドライン(戦争マニュアルというのが正しい。英語ではWar Manualだから)を円滑に実施するために用意されようとしているのが本当のところです(この辺り、マスコミの論調が弱いか煽るかの何れかなのが問題なのですが)。
 何れ広報紙「Moonlight」号外で声明を発表する予定ですが、日本がアメリカの戦争に加担し、被害者にも加害者にもなることは、15年戦争の惨禍の教訓を踏みにじるものに他なりません。有事法制には断固として反対し、アメリカべったりの外交を改める方向へ、の世論を高めるべき時です。気付いた時には銃を持たされていた、では遅いのです。かつての日本がそうだったのですから。
 これは元々俺が奥手な方なのもあるし−自分で言うのも何だが−、俺からアクションを起こしてそれを拒絶された時、どうやってその場を取り繕えば良いのか分からないということがある。宮城と付き合っていたときは互いにで方を窺っていて、俺の方から恐る恐るという表現がぴったりのアクションを起こして、宮城がそれを受け入れるという感じだった。そうでなかったのは、互いを激しく求め合った二人きりの旅行での大きな一線を超えた時くらいだっただろう。
 だが、今は胸を愛撫する以上のアクションを起こす気はない。まだ早いという気持ちが大部分を占めているのもあるし、その一線を超えたら今の晶子とこの関係がただ俺が一方的に身体を求めるだけの関係になってしまいそうで怖い。
 「前例」を踏まえるなら、昨日のことも早過ぎたくらいだ。もっと慎重になっても良いところだが、言い訳になるが、昨日はそれだけ俺の気持ちが高ぶっていたし、晶子も受け入れこそすれど拒否しなかった。晶子もそうなることをある意味覚悟していたんだろう。まあ、夜に一人暮らしの自分の家に男を泊まらせれば余程自制心の強い奴じゃない限り、何らかの行動を起こしていたと思う。言い訳がましいかもしれないが。

「まあ、何て言うか・・・互いの気持ちが一致した時に進めていけば良いかな、って思う。そう焦る必要もないだろ?」
「甘いな。祐司、今のご時世、そんな悠長なこと言ってたら何も進まずに友達感覚で終っちまうぞ。3年の後期から就職活動に入らないと満足な就職先が見つからない世の中だからな。まあ、公務員とか、お前じゃ考えられんが自活の道を選ぶって言うんなら話は別だけど。」
「・・・正直言って迷ってる。会社員や公務員みたいな、世間的に所謂まっとうな道を選ぶか、それとも自分の特技を生かす道に進むか・・・。」
「特技って・・・ギターのことか?」
「ああ。」
「それは所謂まっとうな道より険しいぞ。優秀なベテランの中に割って入って、自分をアピールしなきゃならないんだからな。お前みたいに良く言えば控えめな、悪く言えば臆病な奴が生き残れるとは考え辛いな。」

雨上がりの午後 第709回

written by Moonstone

 リードする・・・か・・・。もっともな話だ。最初にキスしたのは晶子の方だし、昨日晶子の胸を愛撫したのも、晶子の了承があってのことだ。俺から何かアクションを起こすということが少ないのが正直なところだ。

2002/1/22

[うぐぅ・・・(落胆)]
 昨日は災難でした。苦労して入手したトランジスタのデータがないという回答がメーカーから来て、ピン配置不明のまま特製測定を続けて全てろくに使えない特性ということが判明。自分で設計するICのコンパイル段階で出るエラーの原因は不明のまま。期待していたICは入手不可能という通知あり。まさに踏んだり蹴ったりでした。
 どれもこれも躓いてばかりでストレスは強烈。昨日医師に見てもらったところ、「疲れた顔をしていますね」と言われてしまいました。そりゃ疲れますよ。何もかも膠着状態から脱出できないんですから。
 このままだとまた以前の酷い状況に逆戻りしそうで怖いです。あまり根を詰めないようにしてはいますが、出てくるのは溜息ばかり。何時になったら肩の荷が下りるんでしょう?そうするには自分でどうにかするしかないことは分かってはいますが、それは今の私には辛く、難しいことです(溜息)。

「でもさぁ、付き合って4ヶ月目で何もないなんて方がおかしいぞ。お前、4月から自動車学校に行くようになって、晶子ちゃんと会う時間が少なくなっただろ?」
「まあ、前よりはな。」
「だったら、その少なくなった会う時間をより密度の濃いものにしようと思うのが自然だと思うけどな、俺は。」
「そんなもんか?」
「そうさ。」

 流石はその手の「経験」が−自称だが−豊富な智一が言うだけあって、なかなか説得力がある。宮城とも付き合い始めて1ヶ月目でキスを交わしたし−勿論、突っつかれても知らぬ存ぜぬを通したが−大学生になって、付き合い始めて3ヶ月で何もない方がおかしいというのはもっともだ。
 だが、何があったかは言うわけにはいかない。自慢するつもりもないし、何より智一の「暴走」が怖い。未だに俺と晶子の間に付け入る隙を窺っている智一が、俺と晶子がかなり深い関係になったことを知ったら、冗談抜きに錯乱しかねない。疎らとはいえそれなりに人が居る通りで錯乱されたら迷惑なことこの上ない。

「ま、お子様のお前じゃ、晶子ちゃんから迫ってこない限り、手を出しそうにないけどな。」
「な・・・。」
「付き合って3ヶ月を超えて何もないとは思わないし、俺もそれなりに覚悟は出来てるつもりだけどさ、お前もちょっとはリードする気構えくらい持っても良いんじゃないか?」

雨上がりの午後 第708回

written by Moonstone

 務めて平静にそうは言ってみたものの、晶子とキスを交わし、昨日はとうとう晶子の胸を愛撫したことが急激に頭の中にフラッシュバックして、胸の鼓動が激しく高鳴る。まるで敏腕刑事に尋問される容疑者だ。

2002/1/21

[惰眠貪っちゃいました(爆)]
 本当はもう1つか2つグループを更新したかったんですが、生憎土曜日はゲームに没頭し、昨日日曜日は一日ぐったりしてましたので、予定どおり進みませんでした。先週の週末に「これだけは」というコンテンツの準備を整えておいて良かったです。
 まあ、幾ら頑張って幾つものコンテンツを更新したところで、感想が3通来れば御の字、という状態ですから、あまり頑張る必要もないのかもしれません。今回の更新でどれだけ感想が来るか見ものですね。以前みたいに感想が来ないことを理由にページ閉鎖を唆すようなことはしません。でも、頑張って作品を制作して公開しても感想が来ないというのは寂しいですね。
 ある方は、感想が来なければひたすら頑張るしかない、と言いました。でも一人で出来ることには限度があります。それに今頑張っているのに感想が来ないんですから。逆に走ることを止めて(不定期更新にする)続きが読みたけりゃ感想よこせ、とするのも一案ですね。

「祐司。お前、今日はやたらと機嫌良かったじゃないか?」

 ・・・隣に智一が居ることだ。まあ、大学での稀少な友人だし、迷惑ではないんだが、智一の話術に嵌ってうっかり口を滑らせることのないようにしないといけない。晶子の家に泊まる、なんて智一が知ったら、どんな騒ぎを起こすか分からない。
 ちなみに晶子は講義があるが2コマ目からで、3コマ目で終って先に帰っているはずだ。月曜日は専門科目だけになってしまって、晶子が居る文学部に近い一般教養棟に足を向ける必要と理由がなくなってしまった。

「そうか?」
「そうも何も・・・表情も緩めだし口調も何時もみたいにぶっきらぼうじゃないし、・・・さては晶子ちゃんと何かあったな?」
「別に。普通に付き合ってるけど。」

 平静を装って言ったは良いが、いきなり核心に突っ込んできた智一に内心びくっとした。背筋を冷たいものが流れるのを感じる。このままだと本当に口を滑らせてしまいそうだ。だが、妙に不機嫌を装ってぶっきらぼうに話したりすると、余計に怪しまれるかもしれない。その辺、難しいところだな・・・。

「その、普通、ってところが引っ掛かるなぁ〜。もう付き合い始めて4ヶ月目くらいだろ?何かあっても不思議じゃないな。俺の勘から言うと。」
「・・・当てにならない勘もあるぞ。」
「おーっと、言ってくれるじゃないか、祐司。こう見えても色恋沙汰に関する俺の勘は鋭いんだからな。」
「自分で言うな、自分で。」

雨上がりの午後 第707回

written by Moonstone

 その日はあっという間に終った。自動車学校も順調に実技が進み、講義も受けて−いかんせん眠くなるのは避けられなかったが−、帰宅の時を迎えた。問題といえば問題なのは・・・。

2002/1/20

[久しぶりに・・・]
 昨日ス−ファミ(スーパーファミコン)を引っ張り出して遊びました。遊んだゲームは「ドラゴンクエストV」。レベル上げの途中で放り出したままに(最後の敵は倒した)なってたんです。勇者ロト(私)がレベル55。某所に居る「しんりゅう」をどうしても倒せなかったんですよ。
 勇者ロトをLV60まで上げ、その他のメンバーも5つぐらいレベルを上げて挑んだんですが、呆気なくやられちゃいました(汗)。35ターンで倒せば一つ願いを叶えてやる、とはいうものの、無茶苦茶強いんだもんなぁ(汗)。でも以前はもっと低いレベルで規定ターン以内で倒せたと覚えてるんですが・・・何故?
 4度目くらいの挑戦でようやく倒せたんですが、規定ターンをオーバー。強制送還されました。まだレベルが足りないのか?でも武闘家は力と素早さがMAXだし、勇者も殆どの能力値が高いし・・・。あと2人の賢者が弱すぎるのか?確かに弱いですけど(爆)能力的には決して弱くないし・・・。戦い方の問題かな?
 晶子は笑顔で手を振る。俺は笑みを浮かべて手を振ってそれに応えて出口から外に出る。仄かに温かかった玄関と違い、冬を髣髴とさせる凛とした冷気が俺の頬を打つ。今日は冷え込みがきついなぁ・・・。思わず身を縮こまらせる。
 俺は数歩歩いたところ、まだマンションの出入り口が見えるところで振り返ってみる。すると、晶子が正面に立っていて、俺が振り向いたのが見えたのか、再び笑顔で手を降り始める。俺の姿が見えなくなるまで見送るつもりだったんだな・・・。全く俺に似合わず律儀な奴だな、晶子は。でも、そんな心遣いが嬉しい。
 俺は再び笑みを浮かべて手を何度か振った後、正面を向いて冷気の中を歩き始める。今から自分の家に寄って着替えて荷物を持って、自動車学校に向かう・・・。今日はまずそういうスケジュールだ。そして大学の講義が終ったら一旦自分の家に帰ってギターとアンプ、それに下着とタオルくらいを持って晶子の家に向かうんだよな・・・。
 そう思うと何だか足取りが軽く感じる。気分がうきうきすると言えば良いんだろうか?晶子と一緒に過ごせる。晶子と唇を重ね合わせることが出来る。そして・・・晶子の胸に触れて愛撫することが出来る。最後は余計なことかもしれないが、一度超えた壁を超えるのは容易い。だが、それは気分が高揚し、晶子もそれを受け入れる心情になるのが条件だ。無理に行為に及ぼうとすれば、それは嫌悪をもって受け止められるだろう。それだけは・・・嫌だ。
 朝陽が凛とした冷気を徐々に緩ませていく。温かい日差しが俺の身体を照らす。今日も良い日和になりそうだ。俺は軽い足取りで自分の家に向かう。着替えて持ち物を持って自動車学校へ向かう為に。今からもう夜が待ち遠しいなんて変な気もするが、それでも心弾むことには違いない。

雨上がりの午後 第706回

written by Moonstone

「ああ、分かった。事前に電話するから。」
「はい。待ってますね。いってらっしゃい。」

2002/1/19

[日本と韓国のマンガ事情]
 少し前になりますが、あるテレビ番組で韓国のマンガ事情を紹介しているのを見ました。韓国では今マンガが大盛況を見せており、コミマ(日本でいうコミケ)やコスプレも含めて一般の人々に広く認知されていること、政府も文化、芸術の一つとして支援していくというように報じられていました。
 それを見てのリポーターや解説者の様相は極めて冷ややかというか、日本のマンガ事情に追いつけるはずがないといわんばかりの言動に終始していました。何という甘い認識でしょう。そして何という身勝手な言動でしょう。普段マスコミは何かにつけてマンガと犯罪者を結び付けたがり(オウム事件で理工系「エリート」がカルト行動に走ったときはおろおろしていたくせに!)、アニメーターや声優さんなどの過酷な労働条件を全く報道しない分際で、よくもまあ、日本のマンガ事情に韓国が追いつける筈がないと言えたものです。
 これは報道局の系列を見れば明白ですが(フジ系=産経=「新しい歴史教科書を作る会」制作の教科書を発行した扶桑社)、マンガに対するそれと同じくらい、韓国に対する露骨な蔑視感情があります。所詮韓国は後進国、先進国日本に追いつける筈がない、という思い込みです。気付いた頃には日本の書店が韓国発のマンガに(勿論日本語に翻訳されているでしょうが)覆い尽くされていた、という可能性もあるでしょう。そうならないためにも日本のマスコミはマンガに対する認識を新たにして、本気でマンガを文化、芸術として支援する体制を整えるべきです。
「出るのは俺一人でも大丈夫だろ?後片付けとかやっててくれれば良いよ。」
「でも折角ですから・・・。」

 晶子の目が、俺を見送りたい、と切々と訴えているように見えてならない。この目で見詰められると、どうにも断れないんだよな・・・。晶子の「武器」は本当に強力だと思う。

「・・・それじゃ、頼むよ・・・。」
「はいっ。」

 短く応える晶子の声は弾んでいる。やっぱり見送りがしたかったんだな・・・。でも、こうして泊まった翌朝出かけるのを見送られると、同居にまた一歩近づいたような気がしないでもない。こうして俺は思わぬうちに晶子の思う壺に嵌っていくのかもしれない。まあ、それならそれでも良いような気がする。相手が晶子なら・・・。
 俺は晶子に先導される形で出入り口前のロビーに辿り着いた。此処からは俺一人で行ける。頑強なセキュリティは出る時には働かないようになっているからだ。俺は晶子の方を向いて言う。

「じゃあ俺、行ってくるから。」
「はい、いってらっしゃい。気をつけて下さいね。」
「ああ。」

 俺は晶子の微笑みに笑みを返して、管理人の人に会釈してから出口へ向かう。ドアが開いたところで、後ろから声がかかる。

「今日は月曜日ですから、忘れ物のないようにしてくださいね。」

 俺は一瞬何のことかと思ったが、直ぐに思い出す。昨夜、ベッドの中で晶子と月曜日は一緒に過ごすと約束したんだった。ついうっかり、なんてことはみっともないし、晶子を悲しませることになりかねない。それは絶対避けないといけない。

雨上がりの午後 第705回

written by Moonstone

「はい、どうぞ。」
「ああ、ありがと。」
「外まで見送りますよ。」

2002/1/18

[もうやだ・・・]
 一昨日からお話しているICの設計の躓きはどうしようもない段階にあります。最終的には既存のICの組み合わせで作ることになりそうなんですが、そのICが入手できるかどうか明らかでなく、もし入手できない場合は設計そのものが不可能になるということも・・・。昨日お話した謎のエラーの原因もさっぱり究明できず、すっかりお手上げの状態です。
 1/16はショックで夕食も満足に取れず、昨日は半ば無理矢理腹に押し込みました。折角美味しい食材を手に入れてそれを食べても、今の心理状態では美味しいと言い切れません。少し思考を止めれば直ぐにその設計のことが頭に浮かんでノイローゼになりそうです。
 何れにせよ妥協の産物になりそうな今回の設計、私には持病の悪化を誘うだけで何のメリットもないものです。かと言って一旦引き受けた以上できません、ではすみませんから、何とかしないことには・・・何とか・・・(焦)。

「でも、祐司さんは運転するようになっても安心できますね。」
「何で?」
「それだけ慎重な人だと、スピード狂になれといってもならないで済むでしょうから。」
「なるほどね・・・。」

 俺は苦笑いする。確かにこれだけ臆病だと−晶子は慎重だと言うが−アクセルをベタ踏みするようなことは出来ない。実際、スピードの面では今までのところ注意されたことはないしな。急ブレーキ試験の時は、もっとスピードを出しても良い、って言われたくらいだし。
 慎重過ぎるのは良くないが、慎重なことが運転に必要なのは間違いない。慎重なのが自分の良いところだ、と思って取り組めば、良い方向に進むんじゃないだろうか?そうなるように、適度に自信を持たないとな。何事にも・・・。
 晶子との話が弾む中で朝飯は終った。時間は7時半前。これから家に戻って着替えて荷物を纏めて出かけても充分間に合う。自動車学校には大学と同じ駅で大学への昇降口とは反対側の昇降口に出て徒歩5分くらいのところにある。だから、同じ新京大学の学生らしい奴等をよく見かける。見た目では歳は分からないが、やっぱり1年生が多いんだろうな。
 俺はトイレを借りるのに併せて、少々乱れたシャツを整える。ついでに鏡を借りて髪を手櫛で整える。やっぱり若干寝癖が出来ている。幾ら何でもこのまま外に出るのは気が引ける。幸いくせっ毛じゃないから、大抵の場合、手櫛で十分整えられる範囲で収まるのが有り難い。
 見繕いが終ると、俺はリビングに戻る。テーブルの上には整然と重ねられた皿とティーカップがあり、晶子がハンガーにかけてあった俺の上着を取って待っていた。本当に晶子は細かいところまで気が配れる奴だ。

雨上がりの午後 第704回

written by Moonstone

 晶子は俺の欠点をズバリと言ってのける。だが悪い気はしない。自分でも分かりきってるし、それを克服しないことには何事も満足に進まないからな。慎重と臆病は紙一重だから、慎重の方にウェイトを傾けていかないと・・・。

2002/1/17

[うがーっ!(怒)]
 昨日自分でICを設計することが確実になった、とお話しましたが、完全に頓挫してしまいました。理由は只一つ、出所不明のエラーが出るからです。エラーのない記述の筈なのに、「必要なファイルがないぞ」というエラーが出るので、どうにも対処できません。結局昨日は諦めて帰りましたが。
 この難局をどう打開するか・・・。多少の遅れは(数10nsec:n(ナノ)は10のマイナス9乗)妥協して既存のカウンタICで組み上げるか、それともエラーの原因を究明してあくまで自分で設計するか・・・。エラーの打開策が見えないだけに(こんなエラーが出るのは初めて)前者の方で設計を進めようかな、という方向に傾いています。
 予期せぬエラーで自分の目標を諦めざるを得ないというのは悔しいのですが、期日がかなり詰まってきているので躊躇していられません。自分の中のモヤモヤが日に日に溜まっていくのが分かって、嫌な気分です。
「交通標識覚えるの、面倒じゃないですか?」
「あー、あれは面倒。こんなの普通見ないよ、ってやつまで覚えなきゃならないんだよな。」
「ですよね。『その他注意』なんて言われても、具体的に何を注意するのか言ってもらわないと分からないですよね。」
「全くだ。」

 俺と晶子はくすくすと笑う。晶子は「経験者」だけに、話が合う。此処は一つ「経験者」ならではの体験談も聞いてみたいところだ。

「仮免の試験の時に注意しないといけないところって何かあるか?」
「んー、そうですねぇ・・・。実技はあくまでも安全第一で進めることに尽きますね。最初のシートベルトやミラーのチェックは緊張で忘れがちになりますから、それを忘れないように。あと、スピードは常に控えめに。そんなところですね。」
「やっぱり、今のうちにしつこく言われておいた方が良いみたいだな。」
「そうですよ。いざ実技試験って時にそれを忘れると間違いなく減点になりますから。スピードを出すとつい安全確認を怠って減点、ってことになりますよ。」
「うーん、先は厳しいなぁ。」
「大丈夫ですよ。祐司さんは今、教官の人に厳しく指導されてるみたいですから、身体で覚えちゃいますよ。頭で覚えたことは直ぐに忘れちゃいますけど、身体で覚えたことはそう簡単には忘れませんから。あとは自信。祐司さんに一番欠けてることですね。」
「そうなんだよなぁ。どうしても自信が持てないんだよなぁ。もしかしたら、って思うとなかなか踏ん切りがつかないっていうか・・・。」
「慎重なのは良いことですよ。それが度が過ぎて自分を過小評価しちゃうのが祐司さんの欠点なんですから、大丈夫、自分なら出来るって思って取り組めば上手くいきますよ。」

雨上がりの午後 第703回

written by Moonstone

「朝から自動車学校って、大変ですね。」
「仕方ないさ。なるべく乗れる時に乗って、早く免許取りたいしな。」
「私でも取れたんですから、祐司さんなら簡単に取れますよ。学科なんて退屈なくらいじゃないですか?」
「まあな。でも、学科も取っとかないと免許はおろか仮免も取れないから、あんまり気は抜けない。」

2002/1/16

[うむむむむ・・・]
 昨日から仕事が始まったのですが、困ったことに設計段階で重大な問題に引っ掛かってしまいました。何時もはある時間(μsec〜msec)後に短い時間の(μsec)パルス(0Vから数V(5Vくらいが多い)程度に変化する電圧)を出力させるのに定番のICを使うのですが、今回は依頼者の勝手でそれの誤差を1μsec以下に抑えてくれ、と言われているんです。
 で、それを実現するにはカウンタICを使うのが一般的なんですが、生憎今回の用途に使えるICには、後段に行くほど時間遅れが生じてくるものしかなく、自分でICを設計することがほぼ確実になってきました。でも、その設計方法はちょっと難しくて(経験はありますが)幾つかのユニットを組み合わせて作る以外方法がないという、これまた厄介な問題が出てきました(基板パターンも設計によって決まってくる)。
 それは出来るだけ回避したい、でも使用を満たすにはそれしかなさそうだ、どうしよう、と考えている間に病院へ行く時間になってしまいました(爆)。諦めてICの設計をした方が精神衛生上良さそうなんですが・・・。動作試験が難しいし厄介なところです(溜息)。

「朝御飯作りましたから、一緒に食べましょうよ。」
「ああ。それじゃ・・・。」

 俺は軽く伸びをしてからゆっくりした動きでベッドから出る。春とはいえ、まだ朝晩は結構冷えるから、自分の家じゃ時間ギリギリまで布団の中に潜っていて、時間が押し迫ったら急いで朝食を食べて着替えて、持ち物を持って家を飛び出すんだが、今朝はほんのり暖房が効いていて、ベッドから出るのに苦労はしない。
 テーブルには色とりどりのサンドイッチとティーカップが一組ずつ置かれている。そして大きめのティーポットが俺から見て中央やや奥に鎮座している。この微かに漂う匂いは・・・ミントだな。気分的にゆっくりのんびりしたくなる。鼻の通りが良いこの匂いは俺も気に入っているし、晶子もそれを知ったか−元々すきなのも多分にあるだろうが−月曜日の練習の合間や終った後の一服でもよく出される。

「このサンドイッチ、晶子が作ったのか?」
「ええ、そうですよ。自分一人の時は滅多に作らないですけどね。」
「俺が居るからか?」
「御名答。二人分なら作り甲斐があるっていうものですよ。」
「そんなもんなのか。」
「一人の時は手間隙かけるのは億劫ですけど、二人分となれば話は変わってきますから。それより、さあ、どうぞ。」
「ああ。それじゃ・・・。」
「「いただきます。」」

 偶然にも同時に食前の挨拶を交わした俺と晶子は、顔を見合わせてくくっと笑う。晶子がティーポットから紅茶を二人分のカップに注いだ後、二人一緒に食べ始める。微かに塩味の効いた野菜サンド、半熟卵が口の中でとろける卵サンド、ピリッと辛い−辛子マヨネーズだな、これは−ハムサンドというバリエーションは単調になりがちな朝食をメリハリのあるものに演出してくれる。

雨上がりの午後 第702回

written by Moonstone

 壁の時計を見ると7時を少し回ったところだ。これから朝食を食べて一旦自分の家に帰って身支度を整えて、持っていくものを揃えて駅へ向かっても余裕がある。ゆったりのんびりくつろいで、とまではいかないが、時間的余裕があると心理的にも余裕が出来る。

2002/1/15

[まったり過ごした日]
 3連休最後の日となった昨日は、次回定期更新に向けてぼつぼつと準備を進め、一段落ついたところでお昼寝、と実にまったりした、贅沢な過ごし方をしました。これで次回定期更新内容に3つ(何かは秘密)並ぶのは確実になりました(此処を除いて)。あと1作は作りたいところなので、今度の週末にかけるつもりです。ぐったりして手をつけずに終わり、という気がしないでもないですが(爆)。
 それにしても、月日が過ぎるのは早いですね(唐突だな)。この前更新したと思っていたグループがもう数ヶ月空いてしまっていたり。特に驚いたのはMoonlight(読んでくれてます?)。最近の更新が10月下旬。はや3ヶ月過ぎようとしてるんですから。Novels Group 1も同じ。次の展開を固めているうちにあっという間に月日が流れてしまう・・・。多数のコンテンツを抱えていると苦労しますよ(自分のせいだろ)。
 定期更新を月曜日にずらして以来、精神的に余裕が出来ましたね。1週間過ぎてもまだ次の週末があるって感じで。「魂の降る里」が隔週で更新できるようになったのもこの影響が大きいですね。あ、そうそう。連載も昨日で700回を迎えました。早いものですねぇ。このままだと1000回行くかも・・・。
 俺は頬擦りを続ける晶子の髪に指を通す。僅かに湿り気を帯びた滑らかな感触を味わうように、俺は晶子の頭をゆっくりと撫でる。そうしていると、俺自身心地良い気分になってくるのが不思議だ。
 これで毎週月曜日は晶子の家にお泊りすることに決定か。同居という既成事実がこれでまた一つ積み重ねられたような気がしないでもない。でも、今はもうそれを快く思わない理由なんてないし、むしろ、こうして晶子と一緒に居られる時間が確約されたことを嬉しく思う。前に潤子さんが言っていたように、一緒に居られる時間を大切にすること、そして一緒に居られる時間を少しでも多く持つことが、絆を保つために必要なことなんだからな・・・。

「祐司さん、祐司さん。」

 ん・・・。何だ・・・?

「祐司さん、朝ですよ。今日は早いんでしょ?」

 朝?!そうだ、今日は月曜日だから一コマ目に自動車学校に行って、その後みっちり講義があるんだった!
朝という言葉に反応して霧の中を漂っていた俺の意識が一瞬にして肉体に復帰して、俺はがばっと起き上がる。少々シャツが着崩れしてるがそんなものはどうでも良い。急いで朝飯食べて出かける準備しないと・・・。

「まだ時間に余裕がありますから、安心してくださいね。」

 横を見ると、ピンクのブラウスに茶色のフレアスカートにエプロンを着けた晶子が微笑みながら俺を見ている。・・・そうだ。昨日の晩は帰る直前に晶子に引き止められて初めて晶子の家に泊まって・・・話をしたりキスをしたり、晶子の胸を初めて愛撫して・・・そして一緒に寝たんだったっけ。今度から月曜日は晶子の家に泊まるって約束を併せて・・・。

雨上がりの午後 第701回

written by Moonstone

 晶子は嬉しそうにそう言って満面の笑みを浮かべて、また俺の左肩に何度も頬擦りする。本当に猫みたいだ。猫と違うことといえば、姿形が人間で言葉を喋ることと気まぐれじゃないってことくらいじゃないだろうか?

2002/1/14

[新らしいデジカメ(お古ですが)]
 昨日の深夜、1通のメールが舞い込んで来ました。差出人は弟。内容は報告事項と併せて、「お古のデジカメ要らんか?」というものでした。機能的にはこれまで写真撮影に使っていたデジカメより高機能で、さらにUSBでデータを取り込めるし撮影容量も10倍以上というもので、魅力的に見えた私は「持って来て頂戴」という返信を送りました。
 昨日の昼前、弟はやってきました。高速道路をぶっ飛ばして1時間ほどとえらい速さで(^^;)。渋滞がなければこのくらいだ、とのこと。それはさておき、問題のデジカメを受け取りました。USB転送&スマートメディアということでコンパクトなカメラは、以前Photo Group 1収録の写真集「暮れ行く時間」で追加した写真を撮影した時に使ったもので、Webで公開する写真を撮影するには十分すぎるくらいの機能に驚いたことを思い出しました。私より遥かに高給取りですからね、弟は(^^;)。
 唯一のネックは交通費(往復の高速道路料金)を請求されたこと。まあ、デジカメの代金と思って素直に支払いましたが(機能を考えれば安いもんです)。新しく手に入れたカメラでよい写真を撮ろう、と思っています。さて、題材はどうしましょうか・・・。今時期は雪景色なんかが良いんでしょうが、そこまで行けませんからね〜。春まで待ちましょうか(笑)。

「今でも前に比べれば一緒に居られる時間は減ったもんな・・・。今は暫くの我慢で済むけど、俺が3年になったら実験のレポートとかでバイトに来れなかったり、行くのが遅くなったりするだろうからな・・・。晶子の言うとおり、今から出来るだけ一緒に居る時間を増やすようにした方が良いと思う。」
「祐司さんには無茶言いますけど・・・これから月曜日くらいはこうして一緒に夜を過ごしたいです・・・。」

 具体的な提案が晶子から出される。月曜の翌日は物理の実験がある。多少は予習していかないと本番で戸惑うことになる−俺も最初の実験は甘く見ていた−。練習する時間と食事の時間は今までどおりとして、晶子を放ったらかしにし実験のテキストを読むというのも何だか悪いような・・・。
 でも、晶子の願いを叶えたいという気持ちがあるのは言うまでもない。予習は此処でさせてもらうことにして、ギターとアンプを持っていくついでにテキストと下着とタオルを持っていけばいいことじゃないだろうか?

「俺も無茶言うけど・・・火曜日は物理の実験があるから多少なりとも予習をしておきたいんだ。だから・・・」
「それは勿論構わないですよ。私はその間邪魔にならないように小説書いたりしてますから。」

 晶子の声が弾んでいるのがはっきり分かる。自分の願いが叶いそうなのを敏感に感じ取ったんだろうか?

「順序は相談して決めるとして・・・テキストを持ち込んで予習に1時間程貰っても構わないか?」
「はい。じゃあ、一緒に過ごせるんですね?」
「晶子の願いは出来るだけ叶えたいからな。それに俺自身、こうやって一緒に居られる時間を多く持ちたいし。」
「やったぁ。」

雨上がりの午後 第700回

written by Moonstone

 俺は晶子の頭の上に乗せた手を自分の方に押し付ける。より強く晶子を密着させる形だ。晶子は俺のシャツを掴んだまま、俺の方をじっと見詰めている。譬え一瞬でも一緒に居たい、離したくないという意思が、その瞳から痛いほど伝わってくる。

2002/1/13

[ようやく直ったぁ〜!]
 冬の真っ只中で見事にぶっ壊れてくれた我が家のエアコン。昨日業者の方に修理に来てもらって無事直りました(^^)。これで寒い中、悴(かじか)む手をホットカーペットで温め、冷え切った身体を着込んで湯や茶で温める必要がなくなったというものです。いかに慣れてきたとはいえ寒いのは苦手ですし、それが連続するのは肌身に堪えますからね。
 壊れていたのはインバータの基板。エアコンの心臓部ですね。これじゃ動かなくて当然です。幸い肺に当たるコンプレッサの方は異常がなく、7、8万はかかると覚悟していた修理費も3万程度で納まりそうです。多少痛い出費ですが、この程度で寒さから解放されるなら安いものです。
 さあ、これで作品制作のスピードアップか、と行きたいところですが、果たしてそう上手くいくかどうか・・・(^^;)。前回の定期更新が小規模だっただけに次はずらずらと更新グループを並べたいですね。並ぶのは1日だけなんですけど(爆)。
「そうですね。特定の異性と一緒に寝てるんですものね・・・。一緒に寝るのは初めてじゃないのに、何だか今日は・・・特別な感じがするんですよ。」
「前に一緒に寝たときは、俺が熱出して寝込んでたときは添い寝みたいなもんだったし、店に泊まったときは二人で外泊してるみたいな感じだったからな。今は・・・晶子の家で寝てるからそう思うんだと思う。俺自身そう思う。」
「此処が祐司さんの家だったら・・・同じように思うんでしょうね。」
「ああ。多分・・・否、きっとそう思うだろうな。」

 俺は左手を晶子の頭の上に乗せる。見方を変えれば晶子を自分の胸に抱き寄せているような感じだ。晶子の左腕が俺のシャツの胸の部分をきゅっと掴む。緊張してるんだろうか?晶子の視線は俺の方を向いたまま固定されている。

「俺が・・・ミュージシャンへの道を進むことに決めたら・・・何時かは晶子と一緒に暮らすことになるだろうな。俺が売れない間は自活できないから、晶子に頼るしかないし。」
「それは承知の上ですよ。」
「でも、一緒に寝られないかもしれない。俺が夜遅く何処かのジャズバーなんかで演奏して回るような生活をするとなると、晶子は一人で寝て、朝起きた頃に俺が帰って来るとかいうようなことになるかもしれない。」
「・・・。」
「それでも・・・一緒に居られる時間は出来る限り多く持ちたいな。今日こんなことがあったとか、これはどう思うとか言い合ったり考えあったり出来る時間・・・。それを少しでも多く持つことが出来れば、譬え行動時間が昼夜ひっくり返っても絆は保てると思う。マスターと潤子さんもそうしてきたって言ってたし。」
「・・・一緒に居たい。出来る限りずっと・・・。今日、祐司さんを引き止めたのは、さっき祐司さんが言ったように、一緒に居られる時間を少しでも多く持ちたかったってことに帰着するんです。今から始めても遅くないと思って・・・。」

雨上がりの午後 第699回

written by Moonstone

「少なくとも・・・単なる友達やカップルじゃないとは思う。」
「夫婦まではいかないんですか?」
「一緒に住むようになったら夫婦みたいなもんだよ。それに今だって・・・端から見れば夫婦みたいなもんじゃないか?」

2002/1/12

[えっとですね・・・]
 昨日の更新の段階で気付いたんですが、各回の西暦表示が2001年のままだったんんですよね(爆)。昨日の分が先に間違いに気付いて修正したんですが、よくよく見てみたら1/1以外は全て間違ってることに気付いて、慌てて修正しました(大汗)。今回からは間違えることは多分ないと思います。
 こういう間違いに作者や管理人は以外に気づかないことが多いんです。もしこういう些細な間違いを見つけたら、私宛にメールしてください。一言「(ここ)が間違ってるよ」という指摘で結構です。私は街中で「ズボンのファスナーが開いてますよ」と教えてもらったら、慌てて場所を探してファスナーを締めるタイプの人間ですので、怒って暴言溢れるメールを返すようなことはしません(^^;)。併せて作品の感想をもらえると尚嬉しいです(ぼそ)。難しい文でなくても、単に「面白かった」「いまいちだった」という一言でも充分ですよ(ぼそぼそ)。でも、誹謗中傷の類は禁止。マナーは守ってね♪。
まあ、中学高校なら別だが、大学では同期でも一つ二つ歳が違うのも珍しくないから、歳の差を実感できなくても無理ないかもしれない。
 晶子は頬擦りを止めると、再び俺の顔をまじまじと見詰める。何だろう?こうして密着した状態でじっと見詰められると、何だか俺の心の中を見透かされているような気がして無意識に緊張してしまう。防御反応に近いかもしれない。

「祐司さん。」
「ん?」
「こうやって一緒に寝てると、夫婦みたいな気がしませんか?」

 夫婦・・・その単語に込められた想いと重みが心に染みて圧し掛かる。このまま仲が深まっていけば、何れそうなるだろう。否、それ以前に俺が音楽への道を志すことに心を決めれば、俺が有名になるか「まっとうな道」に戻るまで、自ずと一緒に暮らすことになるだろう。そうなれば夫婦同然だ。
 夫婦というのを一概に定義しろと言われれば、俺は生計を一にして一つ屋根の下で日々を暮らす関係だと言う。そういう意味では同居は夫婦同然なのは明らかだし、生計と本来の住まいこそ別だが、一つ屋根の下でこうして褥を共にしている今の状態も夫婦みたいなものかもしれない。簡単に言うなら夫婦ごっこか。
 俺は夫婦という言葉に憧れめいたものを感じる。宮城と一緒に過ごしていた頃も、何れは夫婦になるんだな、とか半分冗談で、半分真剣に言っていたこともある。褥を共にして身体を重ね合わせ、朝を迎えることも何度かあった。その度に俺は、宮城と夫婦になったときの様子を想像していたものだ。
 俺の考えは時代遅れなのかもしれない。でも、一つ屋根の下、それも褥を共にしているということはやっぱり特別なことだし、何かの縁あってこそのものだと思う。夫婦の様子を想像する相手は宮城から晶子に代わったが、想像することは共に日々を暮らす様子には違いない。晶子と一緒に住むようになったら、こうして一緒に寝るんだろうか?

雨上がりの午後 第698回

written by Moonstone

 晶子は微笑んで俺の左肩に何度も頬擦りする。猫がじゃれついてくるみたいでおかしくて、それでいて可愛らしい。一歳とはいえ、俺より晶子の方が年上だということが実感できない。

2002/1/11

[思考停止状態]
 一昨日で設計が完成した回路が、依頼者の我が侭でほぼ一からやり直しという羽目になりました(怒)。打ち合わせの時には一言も言わなかった仕様をこれでもか、とばかりにぶち込んできたので、私はブチ切れ寸前になりました(怒)。あまりに突然のことに、怒りが収まった後、完全に思考停止状態に陥りました。頭のストライキです、はい。
 こんな状態で何を考えても良いアイデアが浮かぶ筈もなし、かと言って設計しないことには先に進めない、というジレンマに陥りましたが、完全に思考停止になった私の頭はそんなことなどお構いなし。一日CRTと仕様書を見比べて溜息を吐いていました。
 どうも私が持つある技術を投入しないと回路基板が肥大しそうですが、その技術は他の回路と動作のタイミングを合わせないといけないので、設計がかなり難しいんですよね。でも仕様をすっきり満たそうとすればその技術を使った方が良さそうだし・・・。ジレンマだらけの日々は当分続きそうです。
。俺の左脇に入って来た物体、即ち晶子は、もそもそと俺に擦り寄ってくる。これ以上右ににずれると壁にくっつく格好になる。まあ、晶子が使い慣れた枕を使いたいというのなら仕方ないが・・・流石にちょっと窮屈だ。

「祐司さん。枕使って良いですよ。」
「え?じゃあ、晶子はどうするんだ?」
「私には枕よりずっと使いたいものがありますから。」

 晶子は闇の中で−真っ暗になって間もないから周囲が殆ど見えない−そう呟くように言って、俺の左肩、胸の近くに頭を乗せる。なるほど。これなら枕は不要だ。さらに寄り添うように左手を俺の胸の上に乗せる。緊張して高鳴る胸の鼓動を感じ取られやしないかと内心でも緊張感が張り詰める。
 晶子は尚も俺に擦り寄ってくる。胸の左脇にさっき右手で感じた独特の柔らかい感触を感じる。シングルベッドだから密着するのは仕方ないが、こうも密着されると・・・また欲望が頭を擡(もた)げてくるじゃないか。晶子の奴、俺を意識的に誘ってるんだろうか?こんな悶々とした状態じゃ・・・とても寝られないじゃないか。

「祐司さん。」

 不意に晶子が声をかけてくる。俺の左肩を枕にしている晶子の頭は布団の中にあるが、辛うじて物の輪郭が見えるようになった目で見ると、晶子が俺を見上げるようにしているのが分かる。何か・・・可愛い仕草だ。

「何だ?」
「嫌じゃないですか?」
「嫌だったら跳ね除けて壁に向かって寝てるさ。それ以前に自分の家に帰ろうとするかもしれないけど。」
「良かった・・・。」

雨上がりの午後 第697回

written by Moonstone

 俺の左脇の布団が持ち上げられて、何かがもぞもぞと入ってくる。・・・晶子だ−それ以外考えられないと言われればそれまでだが−。ベッドの中央に横になっていた俺は、晶子が窮屈に思わないように右側に身体をずらす。

2002/1/10

[バッテリーが・・・]
 今メインで使っているPCはノート型なのですが、それがどうもおかしいんです。コンセントに繋いでいる時はバッテリー容量99%とかでるのに、実際にバッテリーだけにしてみると直ぐ電源が落とされてしまいます。つまりはバッテリーの充電不足なんですよね。
 どうも推測するに、私のPCのバッテリーは過充電に(充電が終了したのに電流を流し込み続けること)対応していないようです。使い始めて9ヶ月くらいですが、バッテリーはもう使い物にならなくなってしまったようです。まあ、外に出てPCのキーを叩く、なんてことはしないので特に支障はないんですが。
 でも、コンセントがなくても暫くは使えるというノートPCのメリットが完全になくなったことで、デスクトップと大差なくなりました。デスクトップに比べれば当然画面は小さいし、テンキーが使えない、拡張性に乏しいなど、ノートPCのデメリットばかりが目立ちます。早くデスクトップPCを更新したいんですが、エアコンの修理代が(場合によっては購入費)がかなりかかりそうなので、もう1年我慢が必要ですかね。弟のお古のPCを(でもCPUはAthlon数百MHz)貰おうかな・・・。なんか立場が逆転してるみたいですけど(^^;)。
俺が晶子の肩を解放すると同時に晶子が立ち上がり、コンポのほうへ向かい、それを操作してBGMとして流れていた「Can't forget your love」を部屋から消す部屋は一転して壁時計の秒針が時の一定の流れを刻む音しかしない、それこそまさに水を打ったかのように静まり返る。俺の気持ちを高ぶらせ、一つの大きな壁を越えるきっかけを作ったこの曲・・・。これからこれを聞く度にさっきの出来事を記憶の大地から掘り出すんだろうな。
 晶子はノートパソコンを終了させて電源を切ると、元の場所である机の上に戻して、再び戻って来ると、今度は布団と毛布をきちんと整える。それより前ははっきり覚えてないが、気になるような乱れはなかったと思う。こういうところ、晶子らしい几帳面な面が窺える。

「先に祐司さんが入ってくださいね。」
「俺から?」
「普段並んで歩くときと同じように、私が祐司さんの左腕の方で寝たいですから。」

 晶子もそうだが、女は自分の心臓がある側、即ち左側に人が来られると不安というか、落ち着かない気分にさせられるらしい。普段並んで歩く時も−最近は殆どバイトの帰りの時だけだが−晶子は必ず俺の左側に来るからな。特に疑問に思うこともなく、俺はベルトを緩めて−念のため言っておくが、寝苦しいからそうするんだ−先にベッドの中に入る。
 初めて入る晶子の布団の中・・・。何となく甘酸っぱい匂いがする。風呂上りの晶子が此処で毎夜寝ているのかと改めて実感する。そして同時に、今、俺の意識がある間に晶子が同じ布団で寝る準備に入るんだと思って、妙に緊張感を感じる。これがついさっきまで、相手の胸を愛撫していた男の心理か、と思うと何やら恥ずかしいやらみっともないやら・・・。もっと堂々と構えられないものか。
 そんなことを思っていると、部屋を照らしていた電灯が少し暗くなり、次にオレンジ色を帯びた闇に変わり、続いて完全に真っ暗になる。晶子が電灯を消したんだろう。そう思うと余計に体が緊張感でがんじがらめにされてしまう。

雨上がりの午後 第696回

written by Moonstone

「・・・そろそろ寝るか?」

 俺が問い掛けると、晶子は小さく頷く。。

2002/1/9

[「雨上がりの午後」休載の理由]
 このところ定期更新の主力の一つとなっていた、第3創作グループの「雨上がりの午後」を1/7付定期更新では新作公開を見送りました。その理由は単純なもので、此処での連載と第3創作グループ掲載の分が接近してきたからです。前回更新時の段階で此処での連載と第3創作グループ掲載分の空きが1ヶ月分くらいしかなくなっていたんです。
 此処の連載を最初から読んでおられる方にしてみれば、近いうちに第3創作グループで読めるんだから、ということになります。それでは連載で先行公開している分を読んで戴いているという「特典」の意味がなくなります。ですので、最低2ヶ月分くらいの空きが出来るまでは、第3創作グループで「雨上がりの午後」の最新作を公開することはないと思います。
 その代わりといっては何ですが、ある企画を始める予定です。1/7付定期更新では間に合わなかったのですが、半分ほど完成しているので次回定期更新からは再び「第3創作グループで・・・」の表記が出ると思います。何かは此処ではお話できませんが、勿論「雨上がりの午後」に関係するものです。どうぞご期待ください。
「良いじゃないですか。双方の意思が向き合ってるんですから。早いも遅いも関係ないですよ。」
「あんまり・・・調子に乗らないようにしないといけないな。特に俺は・・・。」
「ん・・・。祐司さんは男の人だし、気持ちが一気に高ぶるってこともあって不思議じゃないですよ。でも、双方の意思が向き合わなかったら、言い換えれば私がその気になれなかったら・・・拒否しますね。」
「そうしてくれ。男は理性より欲望の方が、どうしても強くなりがちなんだよな。精神的欲望を満たすことより、肉体的欲望を満たすことに走りやすいから・・・。」
「精神的欲望と肉体的欲望は完全に独立したものじゃないですよ。愛し愛されたいっていう気持ちと、キスしたい、セックスしたい、っていう気持ちが重なることだってあると思うんです。私と祐司さんがキスする時、好きだからキスしたいって思いません?」
「ああ、そう思うよ。」
「同時にキスすることで相手と触れ合いたい、もっとくっつきたいって私は思うんです。だからキスが唇だけで終らなくて、大抵私の方から舌を入れるんですよ。それは祐司さんともっと深く愛し合いたいから・・・。」

 俺は深いキスでは大抵最初は「受け身」に回るが−晶子から舌入れてくるからな−、受け身ばかりじゃない。俺だって晶子ともっと深い仲になりたい、なり続けたいっていう気持ちがあるから、俺も「攻め手」に回って晶子の口に舌を入れる。そういう時が、互いの気持ちが向かいあっているということだろう。
 晶子の胸を触った時、晶子がぴくっと反応したのは驚いたせいであって、拒否感から来るものじゃなかったようだ。晶子自身、嫌だったら力の限り抵抗するって明言したし、触られて嬉しいとも言った。愛し愛されたいという気持ちが向き合ったから、晶子は俺の愛撫を受け入れ、今思い出すと色っぽい反応を示したんだろう。
 これからこのまま仲が深まれば、何れは大きな一線を超えるだろう。その時が一番、互いの気持ちが向き合っていなければいけない時だろう。どちらか一方でも気持ちがそっぽを向いた時、俺の気持ちがそうだったら単なる自慰行為の延長線上でしかないし、晶子の気持ちがそうだったら強姦と言って良いだろう。一歩一歩互いに心を向かい合わせながら確実に・・・。そういう関係であり続けたい。

雨上がりの午後 第695回

written by Moonstone

「好きな人だから良いんです。もう付き合い始めて3ヶ月ですし、祐司さんも男の人なんだから、キスだけじゃ満足出来なくなっても不思議じゃないですよ。私も・・・キスだけじゃ満足出来なくなってきましたし・・・。」
「・・・ちょっとテンポが速い気もするけどな。」

2002/1/8

[うぎゃーっ!]
 私は昨日から仕事始めだったんですが、いきなり大災難に見舞われました。はい、近眼のくせに眼鏡を忘れてしまったんですよ(猛爆)。何でそんなもの忘れるんだ、と疑問に思われるでしょうが(当然ですよね(^^;))、朝ちょっと慌てていたので、何時も置いてある場所に置いてあった眼鏡を取り忘れたんですよ。仕事やPCに向かう時くらいしか眼鏡をかけないんです、私。
 で、何時もは鞄の中に予備の眼鏡を(普段のものより度が強いので、車を運転するときくらいしかかけない)入れてあるんですが、それが鞄に入れてなくて(鞄に入れてなかった(汗))、眼鏡なしで仕事をする羽目になりました。まあ、昨日は回路を考えるのが精一杯で眼鏡の出番はあまりなかったんですが、メールを書いたり読んだりする時は、それこそCRTに顔をくっつけるような感じになったので、傍目には奇妙に映ったことでしょう(^^;)。
 結局回路は思いつかなかったし、メールは書き辛いし読み辛いし、夜道は見通しが利かなくて怖いしで大変でした。初っ端からこんなことで、今年は無事に乗り切れるんでしょうか?(大汗)でも、「名探偵コナン」のスペシャル番組で動いて喋る倉木麻衣を見れたから、良いことあるかも(笑)。

「それに・・・こういう格好でこういう姿勢で居たら、祐司さんを誘っているようなものですからね。祐司さんがその気になっても、私のせいですから、気に病まなくても良いんですよ。」
「どうしても・・・その・・・パジャマの胸元が気になるんだよな・・・。」
「気になるってことは、私にそれなりの色気があるってことですよね。言い換えれば、祐司さんが気になるような色気を私が持ってるってことだから・・・、むしろ嬉しいですよ。この格好でこの姿勢で祐司さんが何も感じなかったら、ちょっと寂しく思ったかな・・・。」
「複雑だな、女心って。」
「ええ。私自身そう思いますよ。祐司さんに胸触られて気持ち良くて嬉しく思う気持ちと、恥ずかしいなぁっていう気持ちがあったんです。でも・・・。」
「でも?」
「今、私の胸を触って良いのは祐司さんだけですからね。」

 晶子が穏やかな笑みの浮かんだ表情のままで言う。そう言われて・・・俺は思わず言葉を返す。

「ありがと・・・。」

 言葉に窮したからといって礼を言ってどうする?言ってから気付いても遅いが。かと言って黙っているのも何だし・・・。こういうシチュエーションは初めてじゃないのに−宮城の胸を始めて触ったのは夕闇迫る教室で二人きりになった時だった−、その経験が全く生かされてない。まあ、妙に生かされてぎこちない様子も見せずに平然と出来るのはちょっと嫌な気がする。初めてじゃないんだぞ、と誇らしげにしているみたいで。
 晶子は首を小さく横に振って、穏やかな笑みを浮かべた表情のまま、その大きな瞳に俺を捉えて囁くように言う。

雨上がりの午後 第694回

written by Moonstone

 晶子はそう言って俺を見上げる。穏やかな笑みの浮かんだその顔には、嫌悪感は微塵も感じられない。それを見てようやく俺は安堵する。折角うまくいっていた仲が、その場の欲望で壊れてしまったら最悪だ。

2002/1/7

[今日から活動再開です]
 とはいっても、定期更新の準備でのんびり休養、というわけにはいかなかったんですが(汗)。新年のご挨拶は1/1に抜き打ち更新で済ませたので、今日からまた仕事が始まるのか、ということくらいしか頭にないです。ちょっと仕事が詰まっているので、暢気に正月ボケ解消(殆どないですが)とはいきません。
 エアコンは未だ壊れたままなので寒くてどうしようもないです。土曜日は寒さに耐えかねて昼間ずっと布団の中に潜ってました。直るまでには最低1週間はかかりそうなので、それまではじっと寒さを耐え忍ぶ毎日が続きそうです。あまり良い年の始まりではないですが、このページくらいは盛り上げていきたいと思います。あ、仕事も頑張らないと(^^;)。
 晶子から緩やかな条件付の明確な了承が得られた。俺の頭は沸騰寸前になる。宮城との経験は全く効力を発揮しない。まあ、別にどうでも良いことだし、妙に「上手」なのも変だしな・・・。俺はゆっくりとした周期で晶子の胸を愛撫する。次第に晶子の体が少し早い周期で揺れ始める。荒い呼吸音が微かに耳に届く。気持ち・・・良いんだろうか?
 愛撫する手にほんの少し力を込めると、溜息にも似た吐息の音が聞こえてくる。その吐息で完全に逆上せ上がった俺は、ゆっくりした周期で少し力強く、晶子の胸を愛撫し続ける。晶子の体の揺れが早く、大きくなる。やっぱり・・・気持ち良いんだろうか?だとしたら・・・何か嬉しく思う。
 暫く、俺自身では存分に愛撫した後、晶子の胸から手を離す。今度は晶子は俺の手を引きとめようとはしない。変な言い方だが・・・満足したんだろうか?手を自分の方へ戻すと、急に頭の火照りが消えて、今度は罪悪感が湧き上がってくる。晶子の家に泊まることを、晶子が無防備なのを良いことに、欲望に任せて好き放題した自分が情けなく思えてならない。

「晶子・・・御免。」
「どうして・・・謝るんですか?」
「俺・・・良い気分に浸っていて晶子の胸元が見えたから、晶子の胸に触りたいっていう欲望を抑えきれなかったんだ・・・。嫌だったか?」
「嫌だったら最初から力の限り抵抗してますよ。」

雨上がりの午後 第693回

written by Moonstone

「晶子・・・?」
「いいですよ・・・。優しくしてくださいね・・・。」

2002/1/1

[新年のご挨拶]
 トップページにでかでかと表記しましたが、改めまして・・・

明けましておめでとうございます(_ _)

 私はどうしているかというと、シャットダウン明けの定期更新の準備をちょこちょこと進めています。長期の(と言っても実質1週間くらいですが)休みということであまり集中できないでいます(^^;)。ぐてーっと横になったり、ゲームをしたりして、ようやく小説1本を書き上げたところです。何とかあと2本は書きたいんですが、このお話をする前にもゲームしてたし(爆)。
 連載の書き溜めくらいは割と順調に進んでいます。年が明けたら忙しくなることが分かってますからね。出来る時にやっておかないと・・・。って、定期更新用の作品も忘れちゃいけませんよね。シャットダウン明けの定期更新は規模が小さくなる傾向があるので、気を引き締めて制作に励みたいと思います。でも、また煮詰まったらゲームとかに逃避しそうな気がする(爆)。
「でも、私にはそれが本当に凄く嬉しい・・・。」

 晶子の笑みが笑顔へと変化していく。良かった・・・。どうやら晶子の、聞くだけでも辛い過去の重みを少しは和らげることが出来たようだ。少しでも晶子の力になれたのなら、俺はそれで満足だ。報酬は・・・充分貰っているし。
 エンドレスで流れる「Can't forget your love」を聞きながら、俺は晶子の肩を抱いたままで居る。甘酸っぱい匂いが鼻に届く。晶子の長い豊かな髪の匂いだ。芳しいその匂いに、俺は頭がくらくらするのを感じる。男は女のこういう匂いに弱いんだよな・・・。
 柔らかい感触と芳しい匂い、そして耳に届く「Can't forget your love」に、何だかほろ酔いしたような気分になる。そしてある一つの欲望が徐々に心の中で大きくなってくる。ちらっと下方に視線を移すと、その欲望の「標的」がパジャマの胸元から覗いているのが見える。あまりに無防備なその様子に、欲望が膨らむと同時に頭が中から急激に熱くなって来る。
 俺はそれに引き寄せられるように、ゆっくりと開いた右手を動かして、左手が晶子を逃すまいとよりしっかり晶子の肩を抱く。晶子は俺の肩に凭れて頭を乗せている。完全に俺に身を委ねた格好だ。
 俺の右手がゆっくりと、ゆっくりと晶子の「その部分」へ近付いていく。晶子は目を開けているのかどうかは全く頭にない。そして・・・俺の右手が「その部分」に触れる。触れただけで左手に伝わる感触とは比較にならない−晶子ははんてんを着込んでるしな−柔らかい感触が瞬時に伝わってくる。その刺激は俺をほろ酔い気分から酩酊状態に持っていくのには充分すぎるくらいだ。
 晶子の体がぴくっと揺れる。もしかして、否、やっぱり拙かったか。俺は急いで右手を引き戻そうとすると、その手が別の柔らかいものに引き止められる。見ると晶子の左手が俺の手を押さえ込んでいる。これって・・・どういうことだ?まさか・・・このまま触っていて良いという無言の了承なんだろうか?

雨上がりの午後 第692回

written by Moonstone

「やっぱり祐司さんって、優しい心の持ち主なんですね。」
「よせよ。晶子が風呂に入る前に俺に言ったじゃないか。しっかりして、って。それを少しでも実践しようとしただけだよ。まあ、肩を抱くくらいしか出来なかったけど。」


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