芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

2001年10月31日更新 Updated on October 31th,2001

2001/10/31

[メールのお返事]
 今日で10月も終わり。日に日に昼間が短くなってくる今、皆様いかがお過ごしでしょうか?私はページの更新と家事一切、たまにメールのお返事をしたためる日々を送っています。メールは基本的に更新した時、それも「魂の降る里」を更新したときしか来ないのが現状ですので。ははははは(乾笑)。
 メールを下さる方には出来るだけ早く、そしてしっかりとしたお返事をするように心がけています。メールを下さる方は深いところまで考えてメールを送ってこられる方が多いので、お返事には結構時間と神経を使います(^^;)。でも更新に対して反応があるのは、ページの運営者としてはとても嬉しいことです。
 今回の更新で実に久しぶりに2グループを更新したんですが、反応はないですねぇ(^^;)。まあ、私も以前のようにメールを半ば強要することもしませんし(ストレス溜まりますから)、自己満足で良いや、と思うようになったので、気長に待つことにします。一言でも良いので出来たら感想を下さいね。
 晶子の手を引いて生協を出る俺の後を、智一はしっかりついて来る。別について来なくて良いのに・・・。まあ、智一の気持ちは分かるつもりだし、数少ない大学の友人を無下にするのも気が引ける。この甘さが智一を未だに付き纏わせている原因なんだが・・・。
 俺と晶子は手を繋いだまま−俺が離そうとしたが晶子がそれを許さなかった−並んで、智一が俺のもう片側に並ぶ。晶子を挟むように並ぶのは俺が許さない。前に晶子の横に並んで身体を寄せてきた時、思わず「こっち側に来い!」と怒鳴って以来、智一は晶子の横ではなく、俺の横に並ぶようにしている。

「晶子ちゃんも大変だね。講義がないのに1コマ分待ってるなんて。」
「必ず祐司さんが来るのが分かってますから、待つのは苦になりませんよ。」
「良いねえ、祐司は。まだ朝晩冷える時期だってのにお暑いことで。」
「その冷える時間まで俺を引き止めたのは、お前自身じゃないか。」
「うっ、それを言われると・・・一人身には染みるねえ〜。」

 智一はそう言ってオーバーアクション気味に肩を竦めて、両腕を抱え込んでわざわざ寒そうに身体を震わせる。俺は呆れて溜息を吐くしかない。智一の奴、俺と晶子が二人きりで居るのを邪魔したいのか、単に羨ましがってるだけなのか、全く分からない。
 ・・・どっちもかもしれない。智一が晶子に真剣に熱を上げていたのは知ってるし、現に晶子に対して先にアクションを起こしたのは他ならぬ智一だ。幾ら俺と晶子が名前で呼び合うような仲に進展したことを知っても−智一が知ることになったのは年が明けてからだが−、そう簡単に諦められないんだろう。その気持ちは分からなくもない。

雨上がりの午後 第632回

written by Moonstone

「待たせて悪かったな。行こう。」
「はい。」
「おいおい、俺を無視しないでくれよなぁ。」

2001/10/30

[やっぱり疲れてたのね(^^;)]
 昨日は朝からバタバタと忙しく、通院前の時間まであっという間に過ぎてしまいました。立ち作業も多く、階段の上下移動も多かったのにぐったりした様子もなく、医師も順調ですね、との一言。それから帰宅して夕食を作って食べて、横になってテレビを見ていたら、気が付いた時には後半の記憶がぷっつりと途絶えてました(爆)。
 正味約1時間ほど寝ていた勘定になります。やっぱり疲れは身体に正直に反映されるようです。ちなみにこのコーナーは目覚めてから準備しています。目覚めて間もないのですが、あまり頭がぼうっとすることもないです。ちょっとずつ、身体が元に戻りつつあるのかな?だと良いんですけどね。
 俺が一撃を加えると智一は沈黙する。俺が生協によるのはそれなりの理由があってのことだ。それも本来、智一がついて来る必要は全くない理由だ。・・・智一もそれを知ってのことだろうが。
 俺と智一は生協に入り、書籍の並ぶ場所へ向かう。一般教養と文系学部が近いこの生協はこの時間になると割と閑散としている。俺が生協を訪れた理由は直ぐに見つかる。

「晶子。待たせたな。」
「あ、祐司さん。」

 晶子は読んでいた料理の本を元に戻して、俺に笑顔を向ける。俺が笑みを返すが、智一は満面の笑みを浮かべて晶子に歩み寄る。その様子に晶子が引いていることに気がつかないんだろうか?・・・気付いててもやってるんだろうな。智一のことだから。

「や、晶子ちゃん。お待たせ。悪いねぇ。お連れさんを長いこと借りてて。」
「は、はあ・・・。」
「俺も悪いとは思ってるんだけどさ、何せ上手く出来ないもんでね。祐司にフォローしてもらってばかりなんだよね。今日も・・・」

 智一が晶子ににじり寄りながら話し掛けるのを見て流石にムカッとした俺は、晶子と智一の間に割り込むように入り、晶子の手を取る。

雨上がりの午後 第631回

written by Moonstone

「悪いな、祐司。また最後まで付き合わせてしまってよ。」
「・・・本当に悪いと思ってるのか?」
「勿論だとも。だからこうしてお前が生協に行くのに付き合ってるんじゃないか。」
「そりゃ何時ものことだろ。」

2001/10/29

[今回は何時も以上に頑張りました]
 今日の更新情報を見て、何時も以上に多いな、と思われたかと思います(実際多いでしょ?)。今回は先先週から準備を積み重ねていたことで、普段更新できる、或いは更新できる可能性が高いグループ(Novels Group 3やSide Stoy Group 1)以外にも手を出す余裕が出来たことが大きいですね。
 これからもこうやって順調に出来ると良いのですが・・・肝心の週末にダウンしてしまうことが多い現在、毎回の定期更新で多くの更新が出来るという自信はありません(^^;)。でも、自分の回復具合を示す一つの目安でもある定期更新は、これからも一つでも多く出来るようにしていきたいと思います。

「試薬の投入だって少しで良いって言ってたじゃないか。なのに瓶から直接入れようとするし・・・大丈夫か?この先。」
「大丈夫、大丈夫。いざとなったら頼りになるペアの相手に任せれば良いことだし。」
「・・・勘弁してくれ。」

 化学の実験は個人単位ですることになっている。元々物理の実験みたいにペアを組んでするもんじゃないってことだ。なのに俺を当てにされると困る。俺だって自分の実験があるし、専門課程の実験ではペアの相手におんぶに抱っこというわけには行かないだろうに・・・。
 ・・・しかし、何をするにしてもあいうえお順の名簿を元にしているから、専門課程でも実験のペアを−ペアとは限らないが−智一と組まされる可能性もある。否、その可能性が高い。となると尚更、智一のフォローをしなきゃならないのか?・・・さっき言った言葉じゃないが、本当に勘弁して欲しい。

 どうにかこうにか実験の時間が終った。俺は特にトラブルもなく順調にことが運んだのでかなり早く終ったが、智一のフォローをしていたら結局時間ギリギリまで居残る羽目になっちまった。最後のコマまで大学に居ると、家に帰ったら即行バイトに行くことになる。まあ、バイト先では食事が待ってるからその点は問題ない。

雨上がりの午後 第630回

written by Moonstone

 こいつ・・・事の重大さが分かってないのか?今はこういう割と安全な実験だからまだ良いが、もし有機化合物を扱う実験があったらどうするんだ?有機化合物に限らず、化学の実験では急な投入はそれこそ爆発的な反応を起こす危険があるっていうのに・・・。

2001/10/28

[眠い一日Part2]
 前日夜中の3時過ぎまで某チャットを楽しみ、それから就寝。目を覚ましたのは何と7時。睡眠薬を飲んだのに4時間も寝られなんて・・・。眠れる気配もないし仕方がないので、さっさと起きて朝食を済ませて、布団を干して広報紙Moonlight(とPAC Edition)の執筆、そして買出しで午前中は終了。
 うん、順調にいけそうだな。この分だともう一つグループ更新できそう、と取り込んだ布団に横になったのが運の尽き。3時間昼寝して以後頭がぼうっとして、寝たり起きたりする間に食事を食べてこのコーナーを準備。もう一つのグループ更新は・・・微妙ですねぇ(^^;)。今日の生活如何にかかっています。果たして規則正しい生活は出来るのか、乞うご期待!(何を言うか)

「やるな、お前。」
「やるな、って・・・。事前に説明があったじゃないか。溶液はガラス棒を伝わらせて慎重に入れるように、って。」
「そんな悠長なことやってたら時間内に終われないと思ってさ。」

 試薬を入れるのもスポイトでせずに瓶から直接入れようとするし−流石にそれは俺が止めたが−、スポイトを使うにしても少しで良いところを思い切り吸い取るし・・・がさつさでは智一に負けないと妙な自信を持っていた俺だが、実験をするようになってその見解は一変した。普段の生活ではどうか知らないが、実験でのがさつさは智一が勝るようだ。どっちにしても威張れることじゃないが。

「智一。お前もしかして、実験の類が苦手だとか?」
「おう。そのとおり。」

 ・・・あっさり肯定しやがった。こうもあっさり肯定されると、次の言葉が出てこない。

「実験って面倒だろ?手順は踏まなきゃならないし、細かい禁止事項があったりさ。だから大胆に出来ない。それが苦手な理由なんだ。」
「だからって、事前の説明や手順を無視したら、かえって失敗したりして時間がかかるだろ?」
「そりゃそうだけどな。」

雨上がりの午後 第629回

written by Moonstone

 溶液を入れ終えると、俺は溶液の入ったビーカーを智一の居る机の上に置いてガラス棒を智一に手渡す。智一が感心したのか驚いたのか、ぽかんと口を開けている。

2001/10/27

[眠い一日]
 普通より30分ほど遅く寝ただけで、目覚めは悪いわ頭がぼうっとするわで大変な一日でした。たった30分、されど30分。今は持病のせいで本格的に寝るときには睡眠薬に頼らざるを得ないのですが、そのタイミングが悪かったかな・・・。
 眠さを堪えながらアートワークを完成させ、基板加工用のデータに変換しました。その後で加工内容には差し支えない部分を修正してデータを換えようと思ったのですが、どういうわけかデータファイルが出力されず、諦めざるを得ませんでした。同じ手順を踏んだのに・・・。前にも此処で「使いにくい」などと不満を述べたソフトウェアなんですが、こういうことが起こるとストレスになりますね。本当に最近のソフトウェアは、利用者のことを考えていないと思います。
 それにしても意外なのは智一だ。物理の実験ではペアを組んでいるんだが−名簿はあいうえお順だからだろう−、予想外に手際が悪くて俺がフォローすることがしょっちゅうある。予習もしてきてないようだ。女関係では手際が良くても実験ではそうもいかないらしい。まあ、両者には何の関係もないが。
 化学の実験ではこうして隣の席で−名簿順だとこうなる−実験をするんだが、時折観察していてもやっぱり手際は悪い。試験管に溶液を入れる様子もぎこちなし、危なっかしい。これじゃ試薬を入れるのにしくじっても無理はない。
 試薬を入れ終えて反応を確認してその記録を取ってから、見かねた俺は智一の手助けをするべく声をかける。いきなり試験管と溶液をふんだくって実験の続きをするのは智一のためにもならないし、智一のプライドも踏みにじってしまうことにもなりかねない。

「智一。俺が少し手伝おうか?」
「え?良いのか、お前の方は・・・って、綺麗に色が出てるじゃないか。」
「どうも見てて危なっかしいんだよ。智一の手際を見てると。」
「すまん。頼む。」

 智一から溶液が少し入った試験管と溶液の入ったビーカーを−失敗しても良いように多めに入れられている−受け取ると、試験管立ての空いているところに試験管を立てて、ガラス棒を伝わらせて溶液を試験管の半分ほどまで少しずつ入れる。智一は溶液をビーカーから直接試験管に入れようとしていた。あれじゃ加減が難しいし、事前の教官からの説明にも反する。

雨上がりの午後 第628回

written by Moonstone

 今日の実験は複数含まれている金属イオンを当てる−こう言うと語弊がありそうだが−というものだ。だから失敗したら蒸留水で洗わないと、水道水に含まれる金属イオンが検出されてしまう恐れがある。
それにしても意外なのは智一だ。物理の実験ではペアを組んでいるんだが−名簿はあいうえお順だからだろう−、予想外に手際が悪くて俺がフォローすることがしょっちゅうある。

2001/10/26

[いい加減にしろ、アメリカ軍!小泉政権!]
 アメリカを中心とするアフガニスタンに対する軍事攻撃は熾烈の一途を辿り、「誤爆」とやらで多数の民間人が死傷しています。そして激しい攻撃に住処を追われた難民が何千何万とパキスタン国境に押し寄せ、国境警備の警官と衝突を繰り返しています。
 アメリカの同時多発テロで死亡した人々の命と、アフガニスタンの人々の命に軽重があるのでしょうか?このまま冬を迎えれば数百万という数の難民の命が危機に晒されると言います。アメリカは世界で一番の国に手を出したらこうなるんだ、という見せしめに連日軍事攻撃を繰り広げているのではないでしょうか?
 そんなアメリカに「Show the flag」と言われただけで、いそいそと自衛隊をアメリカ軍の支援に向かわせるための法律を作ろうとしている小泉政権。「ミサイルが発射されても軍事行動には当たらないから集団的自衛権の行使にはならない」などと欺瞞だらけの答弁で法案成立を強行しようとしているのです。
 NATOが集団的自衛権行使と言っている内容そのものを「集団的自衛権の行使ではない」と誤魔化して実施しようと企む小泉政権にはプライドというものがないのでしょうか?世界の恒久平和を謳い、国家間の紛争を解決する為の戦力放棄を唱える憲法を持つ国であれば、アメリカが振り上げる拳を下ろさせ、国連を中心とした国際法と国連憲章に基づいた行動の先頭に立つという意気込みを見せるときではないでしょうか?私はそう思わずにはいられません。
 暴力は暴力しか生みません。そしてテロにも戦争にも、目的はあっても正義はありません。今こそ報復戦争賛美、中身も見ないで小泉人気を煽り立てるだけのマスコミ報道に踊らされることなく、自国の憲法を読み返すべきときではないでしょうか?
会話がなくても構わない。ただ相手が傍に居るだけで安心できる。こんな関係がずっと続けば、否、この関係をずっと続けたい。俺が今願うのはそれだけだ・・・。

 晶子とのピクニックの日から程なく、2年生の講義が始まった。高校までのようにクラスの面子が変わって自己紹介したりすることはない。それこそ突発的に普段の調子で講義が始まる。まあ、講義によっては多少講師の自己紹介があったりするが。
 2年生になると一般教養の比重が減る分、専門課程の比重が増す。そして実験という厄介なものが加わってくる。それも物理と化学。まあ、実験と言っても一般教養の一部なせいか−必須教科であることは言うまでもない−、テキストも分かり易く書かれているからそれ程頭を悩ませる必要はない。高校まで知識として頭に詰め込んできたものを実験で確かめる、という感覚だ。
 実験は前期に集中して行うようにカリキュラムが組まれている。つまりは2年の後期からより専門課程の色合いが濃くなってくるって言うことだろう。聞いた話じゃ、専門課程の実験はテキストもこんなに分かり易く書いてない上に、終了後のチェックも厳しいらしい。自分で選んで入った学科とはいえ、卒業までの道程の険しさに少々気が重くなる。
 日程は火曜日に物理、金曜日に化学だ。バイトが休みじゃない曜日に二つとも入ってきたから、カリキュラム一覧を見たときには少し冷や汗が出たが、いざ始まってみると、2コマ分の時間で充分終れる程度のものだ。予習を多少なりともしておけば、実験は十分余裕を持って終れる。

「おい、祐司。試験管1本貸してくれよ。」

 白衣を着た智一が、試験管にスポイトで試薬を入れていた俺に言ってくる。俺は試薬を入れ終えてから試験管を試験管立てに入れて、空いている試験管を智一に手渡す。

「サンキュ。」
「そっちに試験管ないのかよ。充分支給されてるだろ?」
「試薬を入れるのに失敗して、蒸留水で洗って乾かしてたら数が足りなくなっちまってさ。」

雨上がりの午後 第627回

written by Moonstone

 俺と晶子はそのまま暫く会話もないまま春風に身体を晒す。まだ微かに冬の冷気の残像を帯びた微風も、暖かい春の日差しがその残像を弱める。そんな穏やかな春の日に、俺と晶子は居る・・・。

2001/10/25

[バグがいっぱい(汗)]
 今、とある回路のアートワーク(回路基板の配線図)を描いているのですが、ひととおり出来た一昨日以降、バグ探しをしています。アートワークから作ると、手配線よりずっと早く、また出来ないことも出来る(その逆もありますが)ので養蜂しているのですが、基板が出来てからバグが判明すると、その修正が大変なんです。既にある配線をカットして、新規に手配線しなければならないんですよ。
 で、そのバグ数実に10個以上(汗)。少ないと思われるかもしれませんが、回路の規模を考えると多い部類に入ります。中には配線しちゃいけない個所に配線してあったり・・・。我ながら頭が痛いです(大汗)。
 もうバグはない・・・と思うので、あとは実際に基板を作るのみです。もっとも作っただけでは終らないのがこの世界の常(?)。今回は厄介な作業もしなければならないので、折角の基板をお釈迦にしないように注意しなければ(燃)。すんなり出来れば良いんですけどねぇ(遠い目)。
 顔を上げた晶子を見て、俺は思わず息を飲む。瞳は潤みを通り越して感情の潮が溢れそうで、形の良い、きゅっと結ばれた唇が微かに震えている。

「何で・・・そんな悲しそうな顔するんだよ。」
「うっかり・・・昔の辛い思い出が飛び出してきたから・・・もう二度とあんな思いはしたくない。そう思いながら弱くなりそうな自分に言い聞かせていたんです・・・。絶対今の幸せを、祐司さんを離さないんだ、って・・・。」

 そうか・・・。晶子も俺と同じような、もしかしたら俺より辛い思いをして、それをどうにか乗り越えて今を生きて、俺と付き合ってるんだ。また辛い思いをしなきゃならないかもしれない、っていう恐怖と背中合わせで・・・。だからあんな呪文みたいな口調になったのか。俺は出来るだけ優しく話し掛ける。どうも油断すると荒っぽい口調になりがちだからな・・・。

「気弱になりがちなのも無理ないさ。何てったって俺と晶子は結婚したいとまで思ってた相手に捨てられて、また同じ思いをするかもしれない、って心の何処かで思いながら、こうして付き合ってるんだからさ。でも、そんな脅しみたいな記憶に負けないように付き合っていこう。俺もそうしたいし。」
「祐司さん・・・。」

 晶子は再び俺の左肩に凭れてくる。今度は泣き伏すように額を当てるんじゃなくて、横になるように右の頬を俺と晶子の手が重なった左肩に乗せる。その顔にはもう見ているのが痛々しいような表情はない。安心しきったような笑みが浮かんでいる。晶子は本当に表情がくるくるとよく変わる。それだけに心の様子が分かり易い。

雨上がりの午後 第626回

written by Moonstone

 晶子は自分に言い聞かせるように、呟くように言う。何だか自分にそうなるように魔法をかけようと呪文を唱えてるようにも聞こえる。

「譬え祐司さんが離れたいって言っても、絶対離さないんだから・・・。」
「・・・晶子。」
「もう決めちゃったから・・・絶対、絶対離さないんですからね・・・。」

2001/10/24

[報復戦争反対署名を是非貴方も!]
 アメリカ、イギリスを中心とする軍隊は連日アフガニスタンを空爆、地上戦も展開されています。そこに「対テロ」を口実に、アメリカが「対テロ」と言えば無条件に自衛隊を海外派兵するための法案を作っているのが小泉政権です。
 無論、テロはいかなる口実でも正当化できるものではありません。しかし、「対テロ」を口実に国連憲章にも国連決議にも基づかない軍事攻撃が(日本のマスコミは何故この事実を報道しない!)許される筈がありません。個人で何かアクションを起こしたい。その気持ちは前からありました。そんな時、某ページでブッシュ大統領宛に軍事行動中止を署名をするというページがあることを知り、英語だらけで苦心しながらも署名とメッセージを送りました。
 署名は氏名の表示をAnonymousと隠すことが出来ますし(私も隠しました)、プライバシーもきちんと保護されるそうです。目的はあっても正義はない戦争は反対だ、でも訴える場所や機会がないという方、是非http://www.thePetitionSite.comから「CALL FOR PEACE & JUSTICE!」へどうぞ!一人一人のアクションが重なることで、政治や社会が動くのです

「私は・・・両方で居て欲しい。」
「?!」
「音楽を教えてもらう時は頼れる先生で、それ以外の時はパートナーで居て欲しい・・・。勝手だって思うでしょうけど、私は祐司さんにそういう存在で居て欲しいんです。」

 つまりはその場その時に応じた対応が出来る存在であって欲しいということか?晶子が言うとおり、確かに勝手な物言いだとは思う。だが、そう思う一方で晶子の言うことは分からなくもない。まだ晶子は音楽に確固たる自信が持てないで居るんだろう。一方で生活面では俺を充分フォローできる自信があるんだろう。実際何度も俺は証明されてるしな。だからそんな答えになるんだろう。そう推測すると晶子の答えにも腹は立たない。それよりそんな存在になりたいと思う自分が居る。

「晶子の言いたいことは・・・俺の頭でも理解できるつもりだよ。」
「・・・勝手ですよね。自分で言っておいて何ですけど。」
「ちょっとな。でも、晶子にそう思われる存在になりたいとは思う。俺は・・・晶子が好きだから。」
「私も・・・。」

 晶子が俺の左肩に額をくっ付けてくる。茶色がかった長い髪が春の日差しを受けて煌きながらふわりと浮き上がって、再び晶子の背中に舞い降りる。

「私も・・・祐司さんが好きだから・・・絶対離しませんからね・・・。」

雨上がりの午後 第625回

written by Moonstone

 草木が何度ざわめいたか分からない。晶子の大きな瞳に俺の顔が移されてその位置で固定される。晶子の中で答えが定まったんだろう。俺は固唾を飲んで晶子の答えを受け止める準備を整える。さあ、どっちなんだ?晶子・・・。

2001/10/23

[うー、しんどかったぜい(-o-;)]
 次回定期更新で約1年ぶりの更新を目指しているPhoto Group 1。それ用の写真を選定してサムネイルを作るわけですが、これが結構面倒(^^;)。もう何度もやっているので作り方は分かっているんですが、面倒なのには違いありません。「自動サムネイル作成ソフト」(jpegの圧縮率や最適化とかプログレッシブを設定できるやつ)なんてものがあると便利なんですけどねぇ、ふう(溜息)。まあ、何とか全部作りましたけど。
 今回の写真集で掲載を予定している写真は全部で約50枚。その分だけサムネイルを作らなければならないので(単に縮小しただけだと重くて仕方がない)、面倒なのは当たり前とも言えますが、芸術創造センターで稀少なオリジナルの美術グループですからね。大事に育てていきたいという気持ちが強いです。撮影を重ねる毎に、身の回りのものの造形美を改めて認識しています。
「・・・私は祐司さんに一方的に依存はしたくありません。お互いに支えあっていけるような関係になりたいです。」
「・・・晶子。」
「そうじゃないと・・・祐司さんの負担になるばかりでしょ?私、それが嫌なんです。自分が好きな人の重荷になることが・・・。」

 晶子の言うことに矛盾を感じる。音楽の先生として自信を持って欲しいと言う一方で、互いに支え合える関係になりたいと言う。頼りになる先生で居て欲しいのか、互いに支え合うパートナーで居たいのか・・・よく分からない。
 これが女ならではの矛盾の両立というやつだろうか?男に頼りたいと思う一方で、男とはパートナーでありたいと思う気持ち・・・。宮城にもそんなところがあった。俺は頼れる存在とパートナーの二律相反をこなさなきゃいけないんだろうか?

「晶子は・・・俺にどう居て欲しいんだ?」
「え?」
「俺に頼れる先生で居て欲しいのか、俺に互いに支え合うパートナーで居て欲しいのか、どっちなんだ?」

 俺の問いに晶子からの即答はない。俺から顔を逸らしはしないが、視線は忙しなく彼方此方を彷徨っている。自分の言ってることの矛盾に気付いてどう答えて良いか分からないのか、それとも気付いたからこそ言えないのか・・・。俺は追い討ちをかけることなく、ただじっと晶子の答えを待つ。

雨上がりの午後 第624回

written by Moonstone

「それくらいの気構えでやっていかないと、これから先待っているかもしれない困難に勝てない。晶子と一緒に居られなくなってしまう。それだけは絶対に嫌だ。だから・・・俺は晶子が安心して頼れるような存在になるように努力する。」

2001/10/22

[お久しぶりでございます]
 突然のシャットダウン宣言から約1週間。久しぶりにリスナーの皆様にお会いすることが出来ました。シャットダウンの間、ひたすら連載を書き溜め、不慮の事態に対する備えを強固にしておきました。あと、週末で「魂の降る里」を書き上げました。定期更新前の時間をPhoto Group 1の制作やMoonlight(とPAC Edition)の執筆に充てたいからです。余裕があったら長らく更新が滞っているグループに手を伸ばそうと思います。
 ようやく意欲が出てきたか、と思われるでしょうが、まだ完璧とはいえません。ただ、シャットダウン以前より何かをしたい、という気持ちが大きいことには間違いありません。時に立ち止まることもあるでしょうが、これから日々更新を進めていきたいと思います。
「ええ。」
「ちょっと俺は頼りないかもしれないけどさ・・・折角出来た絆なんだから、大切に育んで行こうな。」
「祐司さんは頼りなくなくなんてないですよ。もっと自信を持ってくださいよ。。」

 晶子は俺の左肩に添えるように手を置く。

「祐司さんは私の大切な人であって、同時に音楽の先生でもあるんですから。先生が自信持ってなかったら、生徒が不安になるじゃないですか。」
「・・・そうだよな。」

 俺は左肩に乗っている晶子の手に自分の手を重ねる。そして笑みを浮かべてみせる。晶子を安心させたい。ただそれだけの思いだ。

「俺がしっかりしなきゃな・・・。」
「そうですよ。」

 晶子は柔和な微笑みを浮かべる。春麗かなこの日にふさわしいことこの上ない、温かくて優しくて・・・安心できる微笑みだ。この微笑みが続くように、それこそ俺がしっかりしないと・・・。

「俺は・・・絶対晶子を離さないからな。」
「祐司さん・・・。」

雨上がりの午後 第623回

written by Moonstone

「でも、晶子の言うとおりなんだよな。形のない思い出の登場人物に妬いてもどうにもならない。それより思い出に浸る余地がないくらい、晶子との思い出を作っていく方がずっと前向きだよな。」

2001/10/16

[少しの間お休みします]
 何をするにも意欲が湧かず、ただ義務感だけで行動する。そんな最近の毎日が余計につまらなくて、ストレスになって心に蓄積されていきます。このまま義務的にページの更新を続けるのは私もつまらないですし、何よりリスナーの皆様に失礼だと思います。
 よって少しの間シャットダウンして、義務感に感じるものから一つ、自分を解放したいと思います。キーボードを叩くことが楽しかったあの時に自分の心が戻るまで・・・。勿論ネットには繋ぎますし、戴いたメールにはお返事します。ただ、暫くの間ページの更新をお休みするだけです。もしかしたら翌日には何事もなかったかのように更新しているかもしれません。では、また後日!(^^)/~

「・・・。」
「思い出にしがみついて、必死に抱え込んで生きていくつもりはないけど、たまには、ああ、こんなこともあったな、って思い出してひと時の感慨に浸る余地は残しておきたいんだ。・・・晶子からすると、ずるいって思われるかも知れないけどな。」

 ちょっと自嘲気味に言うと、晶子は柔らかい笑みを浮かべながら首を横に振る。

「思い出を大切にしたいのは私だってそうですし、誰だって同じですよ。」
「晶子・・・。」
「私だって過去の思い出を抱えてますし、良かったところだけ都合良く、こんな時もあったな、って思い返すときもありますよ。私も祐司さんも20年くらい生きてきたんですから、思い出せる思い出がない方が不思議ですよ。」
「・・・晶子は、俺が宮城との思い出に浸ってても、焼餅妬かないのか?」
「それは・・・ちょっとは妬けますけど、形のない思い出に妬いてもかないませんよ。それより、私と付き合っていくことで新しい思い出をいっぱい作って、思い出に浸る余地がないくらいにしてやるんだ、っていう気持ちの方が強いですね。」
「・・・俺は結構悔しいけどな。晶子が昔の彼氏との思い出に浸っていると思うとさ・・・。」
「それは無理ないことですよ。」

雨上がりの午後 第622回

written by Moonstone

「吹っ切れたんですか?」
「今更よりを戻す筈もないし、良い思い出だけ残しておきたいしな。これ以上宮城に関わってると、良い思い出まで無茶苦茶になっちまうような気がするんだ。」

2001/10/15

[これからどうしよう・・・]
 昨日、更新から暫くの間、このコーナーが見れなかったのは、FTPが途中でトラブルを起こしてしまってIndexしか更新出来なかったからです。リスナーの皆様には御迷惑をお掛けしました(_ _)。
 さて今回の定期更新、結局、最後の追い込みの日曜日も寝たきりスズメに終ってしまい、Novels Group 3のみの更新となってしまいました。「魂の降る里」やその他のグループの更新を期待されていた方には申し訳なく思います。
 此処最近、仕事にしろページ更新にしろ、義務感しか感じられないんです。以前は楽しんでやっていたことなのに・・・。義務感でしか出来なくなったら、上手くいく筈もないですし、失敗や挫折がストレスになって積もるばかり。暫く考える時間が欲しいです。

「ご、御免。言い方に刺があったみたいで・・・。付き合ってるからってお互いに好きだとは限らないんだよな。上っ面だけの付き合いってこともあるし・・・。俺はそういう意味で言ったんじゃなくて・・・。」
「祐司さんが言いたいことはちゃんと分かったつもりですよ。」

 晶子の声が何時もの快活で労わるような声に戻る。俺は内心安堵しながら晶子の方に再び向き直る。

「私と祐司さんがこうして付き合っているのは、気持ちが向き合っているから。そうでしょ?」
「ああ。」
「気持ちが向き合ってなかったら付き合えませんよね。譬え出来たとしてもそれは、偽りの仮面を被った付き合い。そこにはどちらかに何らかの打算や策略がある・・・。」
「・・・。」
「祐司さんと優子さんの遠距離恋愛がそうだったとは言い切れません。当人でない私には推測しか出来ませんから。でも、初詣に行く時に出会った時の優子さんの言動と祐司さんの話を見聞きした限りでは、優子さんの側に何か考えがあったからとしか思えないんです。」
「晶子もそう思うか・・・。まあ、今となっちゃどうでも良いことだけど。」
「・・・。」

雨上がりの午後 第621回

written by Moonstone

 照れくささを隠そうとしてついぶっきらぼうな言い方になってしまう。言ってからしまった、と思って慌てて言葉を継ぎ足す。

2001/10/14

[ああ、寝たきりスズメ]
 昨日付の日記の悪い予感が的中してしまいました。朝から目覚めが悪かった私は、午前中にどうにか買出しを済ませた後、キャプションどおり殆ど寝たきりになっていました。当然、定期更新の準備なんで出来るわけがありません。威張れることじゃないんですが、どうしても何かをする気が起こらなかったんです。
 今日一日で何処まで準備できるか・・・。「魂の降る里」がギリギリ間に合うかどうかというところでしょう。「雨上がりの午後」は昨日のうちに準備しておいて良かったです。それにしても疲れが取れないというか・・・。まだ完治には程遠いようですね。
 晶子は驚きで顔を強張らせた後、頬をじわじわと紅潮させて俯く。俺も自分で言っておいて何だが照れくさくなって視線を落す。互いに好きだって面と向かって言い合うなんて、もしかしたら、否、多分今日が初めてじゃないだろうか?そう思うと尚更照れくさい。過去の「経験」はこういうときにはあまり役に立たないようだ。
 まあ、「経験」でも好きだと言い合うときは人目を避けるように言っていたから、あまり「経験」になってないのも事実なんだが・・・。困ったな。どうやって話を切り出そう?俺は可能な限り頭をフル稼働させて今後の展開をシミュレーションしてみる。あくまでも自然に、そして照れくささを払拭できるような方法は・・・思いつかない。情けない話だが、恋愛事に関しては素人同然の俺ではこの程度が関の山だ。

「・・・私、凄く嬉しい・・・。」

 あれこれ考えが浮かび、そして消えていく中、晶子が辛うじて聞こえるような少し上ずった声で、しかし俯いたままで言う。

「面と向かって好きだって言われて・・・私、凄く嬉しいです。」
「お、俺も・・・その・・・自分の気持ちをはっきりさせておきたかったから。」
「私と祐司さんの気持ちは同じなんですね。」
「あ、当たり前だろ。俺と晶子はこうして付き合ってるんだから・・・。」

雨上がりの午後 第620回

written by Moonstone

「俺も、いつも朗らかで俺を気遣ってくれる晶子が大好きだよ。」
「ゆ、祐司さん・・・。」

2001/10/13

[上手くいかない時は何をやっても駄目]
 OSの再インストールを終えてさあ本番、というところで、CD-ROMがぶっ壊れていたらしく途中からインストールが進まない。知り合いの方に化して貰えないか尋ねたところ、ライセンス問題などで一時的にしか貸せない(最終的には自分で買ってということ)とのことで、諦めざるを得ませんでした。
 さらに外来者の工作機器の操作監督・指導をしていたら、経験の浅い人が操作したがためにツールをへし折られ、さらに操作慣れしてる筈の人もツールをへし折ってくれて愕然となりました。よりによって1本しかないツールを・・・。
 さらに時間が長引いて、帰宅予定時間が大幅に後ろにずれ込んでしまいました。当然ぐったり疲れて、食事を食べたらベッドにばったり。今日明日で定期更新があるというのに・・・何も出来そうになさそうで怖いです。
「そうですか・・・。でも、無理はしないで下さいね。」

 晶子の表情が再び晴れてくる。晶子に沈んだ表情なんて似合わない。第一俺は晶子のそんな表情は見たくない。そのためにも、俺が学生の本業と生活費の重要な一翼を担うバイトを両立させないといけない。これは俺に課せられた試練だろう。この試練なら喜んで受けてみせよう。そして必ずやり遂げよう。

「私が何か力になれれば良いんですけどね・・・。」
「これは俺の問題だから、俺が処理すべきことだよ。そういう学科を選んだ宿命みたいなもんだし、学生の本業なんだからやり遂げないとな。」
「私、祐司さんのそういう真面目なところが大好きです。」

 面と向かってそう言われるとかなり照れる。俺は内側から体が熱くなってくるのを感じて、思わず晶子から視線を逸らして正面を向いてしまう。

「どうしたんですか?」
「て、照れるじゃないか。面と向かって大好き、だなんて言われると・・・。」
「だって、好きなものは好きなんですもの。自分の気持ちには常に正直でいたいです。」
「そ、そうか・・・。俺も・・・」

 俺は晶子の方に向き直って、思い切って自分の気持ちをぶつけてみる。

雨上がりの午後 第619回

written by Moonstone

「まあ、バイトに行く時間が遅くなるかもしれないけど、行くようにはするつもりだよ。レポートはバイトが終ってからとか週末の昼間とかに片付けるようにすれば良いと思うし。」

2001/10/12

[疲れてぐったり]
 OSのインストールの前段階は出来ました。でも、どうもしくじったらしいので、今日再インストールする羽目になりそうです。必要以上に利用者に訳分からん選択項目用意するんじゃないよ、まったく・・・(- -#)。
 そんなこんなでここ数日は、疲れが溜まりやすく尚且つ取れにくい現状が相俟って、疲れて帰宅して手っ取り早く食事を作って食べて、洗い物を済ませたら直ぐにベッドにばったり、という日々が続いています。実際、昨日一昨日と更新直前でこのコーナーを仕上げています。2時間くらい横になって30分くらい寝ないと疲れが少しも取れないんですよ。今日1日仕事をすれば週末の休みが待っているので、残り僅かな気力を振り絞って頑張ろうと思います。
 変に自分を飾ったりしないし、そうしないといけない雰囲気でもないのもあるだろう。俺も晶子もやれ買い物だのやれ旅行だのと言わないタイプだというのもあるだろう。でも、こうして仲が順調に続いているのは、やっぱり俺が仲を深めようとしないところにあるんだろう。
 俺自身一応健全な(?)男だ。晶子との仲を深めたいと思わないということはない。だが、無理に進めようとして晶子に嫌われるのだけはまっぴら御免だ。自然に、お互いの理解と了承の元で進めていくのが一番良いだろう。互いに一度は恋愛で傷を負った身だから、暗黙の了解でこういう仲の続け方が出来るのかもしれない。そういう意味では、失恋も一度は経験しておくべきことなんだろうな。

「祐司さん。2年から実験が始まるんですか?」

 コップから口を離して晶子が尋ねる。中身までははっきり覚えてないが・・・1年の最初のオリエンテーションでカリキュラム一覧を配られた。その記憶を手繰り寄せると・・・確かあったな。物理と化学の実験が。

「ああ。確か物理と化学の実験があったと思う。うろ覚えだけどな。」
「実験で帰りが遅くなると、バイトも休まなきゃならないんじゃ・・・。」

 晶子の表情が少し沈む。今まではバイトのある日は勿論、休みの日でもこうして何らかの形で顔を合わせているが、実験が入ってくるとそうもいかなくなってくるかもしれない。だけど、可能な限り顔を合わせる時間を作りたい。実験や忙しさを理由にしたくない。

雨上がりの午後 第618回

written by Moonstone

 俺は茶を飲み干したコップを晶子に手渡す。晶子は茶を新たに注いで口をつけて、俺とは対照的にゆっくりと飲む。言動も性格も対照的と言って良い俺と晶子だが、こうして順調に仲が続いているのは不思議にも思える。

2001/10/11

[原始的過ぎる先端機器]
 お釈迦になったHDDの代替品が納品されたので早速換装しようとしたのですが、これがなかなか難しい。コネクタがしっかり食い込んでいるし、入れようと思っても引っ掛かって入らないしで、のっけから大変。
 どうにか換装してOSをインストールしようとしたのですが、エラー続出で右往左往するばかり。同僚の方に手伝ってもらったのですが、BIOSが古くて8.4GBしか認識しないらしいとのこと。おいおい、20GBもあるのに半分も使えんのかい(- -#)。
 やっとフォーマットを済ませてOSをインスト−ルしようと思ったら、エラーばっかりでて出来やしない。現代のOS(Windows2000)なら、CD-ROMにOSのディスクを入れさえすれば全てインストールできて当然じゃないですか?IT機器とカッコ良い言葉を並べても、こんな有様では家電製品の域には達しませんな。
「なくても無理ないですよ。逆にそこまで考えられたら凄いっていうか、怖いです。自分っていう人間が動くのを別のところから別の自分が観察してるみたいで。」
「ははは。確かに怖いよな、それは。あはははは。」

 相変わらず雲一つない青空を見上げながら俺は笑う。心に残っていた暗雲を吹き飛ばすような、気持ち良い笑いだ。それにつられるように晶子もくすくすと笑う。忘れたい過去を抱え込んで苦しむより、笑い飛ばしたほうが良い。
 一頻り笑った後、俺と晶子は弁当の残りを食べて片付ける。暖かくなってきたということは、イコール食べ物が傷み易いということだ。こんな楽しい場で食中りなんてことになったら、つまらないことこの上ない。現実的な話だがこれは注意するに越したことはない。
 弁当箱が全て空になったところで、晶子が手早く、しかし丁寧に箱の蓋を閉めてバスケットに入れる。そして水筒からコップを取り外して湯気が仄かに立ち上る茶を注いで俺に差し出す。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」

 俺はコップを受け取って、少し茶を口に含んでそれ程熱くないことを確認して一気に飲み込む。晶子らしい、程よい加減の熱さだ。この季節、冷水を飲むにはまだ早いし、かと言って冬場みたいな熱さだと飲み辛い。晶子はこの辺りをきちんと心得ている。こういうことにまるで疎い俺には、本当に嬉しい気配りだ。

雨上がりの午後 第617回

written by Moonstone

「でも・・・良かったですね。」
「何が?」
「祐司さんが自分の中で気持ちの整理が出来て。」
「・・・ん。前に晶子が言ったけど、時間がそれなりに解決してくれるもんだな。あの直後はとてもそこまで考える余裕がなかったから・・・。」

2001/10/10

[な、何とか・・・(^^;)]
 病み上がりの仕事初日を乗り切れました。お釈迦になったハードディスクの代替品はまだですが、アートワーク(回路基板のパターンをCADで描くこと)やら打ち合わせやら工作機器の使用監督&指導やらで、眠りに陥る間がなくて良かったです。自宅に帰ってきて食事をしてから2時間ほどうつらうつらしてましたが。
 前回の無断更新停止を受けてメッセージを幾つかいただきました。どれも心温まる労わりのもので、本当に嬉しく思いました。メッセージを下さった方々にはこの場をお借りしてお礼を述べると共に、早く完治して次回定期更新に備えたいと思います。
そうでなきゃ、あの夜の電話口で俺の気持ちを試すために別れを仄めかしたというその後で、俺の家に電話をかけて真意を説明しただろうし、そもそも俺の気持ちを試そうとは思わない筈だ。約3年続いた仲だ。俺の性格を知らない筈がない。

「あれから・・・優子さんから電話とかありました?」
「・・・俺の心を読めるのか?晶子は・・・。」
「表情で大体分かりますよ。あ、今優子さんのこと考えてるな、って。」
「・・・電話も何もない。初詣に行く時に出くわしたのは俺をからかいに来たか、俺に新しい彼女が出来てたら自分が前の彼女だ、って言って揺さぶりをかけるつもりだったか・・・大方その程度のことだったんだろうと思う。」
「私がこんなこと言うのも変ですけど・・・そんなことするくらいなら、祐司さんと別れたくなった理由をきちんと話せばまだ良かったと思うんですけどね。」
「俺もそう思う。結局は晶子もあの時聞いたと思うけど、俺の代わりに選んだっていう同じバイト先の男と一緒になりたくて、けどいきなり俺から乗り換えると失敗した時に自分の気持ちの行き場所がないから、猶予期間として俺をキープしておこうと思った。それが本当のところじゃないかな、って思うんだ。」

 そもそも人の気持ちを確かめる為に別れ話を切り出すってのも変な話だ。今にして思えば随分こじつけっぽい。まあ、それだけ第三者的に自分の身に降りかかったことを見れるほど心の余裕が出来たということだろう。あの電話の後は優子に捨てられた、ってことしか頭になくて、同じ「女」の晶子に荒っぽい態度を見せたくらいだしな。

雨上がりの午後 第616回

written by Moonstone

 両親と弟に続いて宮城の顔が青空に浮かぶ。晶子と初詣へ行こうとしたときに出くわして以来、宮城からの接触はない。結局のところ、この町に来たのも、俺を晶子から奪うと宣言したのも、自分の心変わりを隠す為の方便に過ぎなかったんだろう。

2001/10/9

[これで大丈夫なのか?!]
 連休最後の10/8も殆ど寝込んでました。体調はほぼ回復しましたが、どうも熱っぽさと倦怠感が取れません。鼻詰まりも残ってますし・・・。今週を乗り切れるかどうか、今から非常に不安です(汗)。
 あ、そうそう。トップページで告示したとおり、Nobels Group 1の「Saint Guardians」が株式会社アスキー発行のTECHWinのCD-ROMに収録されました。表記のスペルが間違っていますが(汗)、今まで読むのを躊躇っていた方、その他まだお読みでない方、是非ご覧下さい。もっともオンライン版と内容は変わらないので、オンラインで読める環境のある方は無論そちらでも構いません(^^;)。

「私は実家から遠いんで、親はすんなり納得してくれました。まあ、身の安全を第一に、てことで今住んでるマンションに住むことになったんですけどね。兄のことは・・・確かに辛かったですけど、今の大学を受けたこと自体、兄への依存を断ちたかった面がありますから・・・。」

 成る程・・・。晶子にとっては一大決心だったんだな。そんなに妹に慕われる兄さんってのも罪な、もとい、羨ましい人だ。俺なんか、弟が一人居るけど喧嘩してばっかりだったっけ。あいつ、口煩い親に囲まれてさぞかし息苦しい思いをしてるに違いない。

「どうしたんですか?」
「いや、晶子の話を聞いてて弟のことを思い出してさ。」
「弟さんがいらっしゃるんですか?」
「ああ。今、高校2年生。俺とよく似てがさつで荒っぽい。だからしょっちゅう喧嘩してた。」
「でも、そういうのって、いざ離れてみると懐かしいって思いません?」
「・・・そうだな。」

 俺は笑みを浮かべて空を見上げる。蒼穹には相変わらず翳り一つ見当たらない。その高くて広い青空に弟や両親の顔を思い浮かべる。すると、騒々しくて少し煩わしかったつい1年程前までの日常が、急に懐かしく思い出される。晶子の言ったとおりだ。

雨上がりの午後 第615回

written by Moonstone

「晶子もさ、親元を離れるのに苦労したんじゃないのか?両親は勿論、俺がそっくりだっていう兄さんの元を離れるのは辛かったんじゃないか?」

 晶子は少し沈んだ表情になって視線を下の方に落す。・・・やっぱり辛かったのかな。言わなきゃ良かったと思ってももう遅い。晶子の反応を見守るしかない。沈黙の時間が少し流れ、晶子は再び顔を上げる。

2001/10/8

[まだ寝込んでます(汗)]
 迂闊にも風邪をひいてしまって無断で更新休止という事態まで進めてしまった今回、この連休を利用して完璧に治そうと目論んでいるのですが、なかなか思うようにことは進みません。昨日より幾分回復したものの、まだ熱っぽいですし、食欲もあまり回復してません。
 まあ、今日で仕事に耐えうるだけの状態に持っていければ、と思っています。3連休寝込んだままかい、と勿体無く思われるでしょうが、元々風邪の治りが遅い私では仕方のないことです。リスナーの皆様も風邪には充分注意してくださいね。本当に酷い目に遭いますよ(汗)。
程なく晶子と出会って歌の指導を任された時はいい迷惑に思ったが、晶子が俺の言うことを真剣に聞いて、それに応えようと頑張り、時に俺に質問を投げかけてくるのを見聞きして、人とコミュニケーションを取るのは悪くないと思ったもんだ。

「でも、一人暮らしをすることが決まった時、その・・・優子さんはどういう反応だったんですか?」

 優子の名を出されて俺の気分がちょっと陰る。だけど、あれはもう終わったことだ。晶子に話しても良いだろう。否、むしろ聞いて欲しいとさえ思う。

「最初は驚かれた。次には泣かれたよ。どうして地元から通わないのかって・・・。朝早くなるけど何とか通えないこともない距離だからな。だけどさっきも言ったように親にあれこれ言われるのが嫌だったし、一人暮らしの方が宮城を誘いやすいっていう思惑と毎日電話するってことを話したら、どうにか納得してくれたよ。」
「親元に居たんじゃ、女の人を簡単に呼べませんものね。」
「まあ、そんなところ。」

 俺は苦笑いする。でも、実際晶子の言うとおりだったりするんだよな。・・・そう言えば、晶子はどういう経緯で親元を離れることになったんだろう?セキュリティがちがちのマンションに住んでるところからして、やっぱり心配なんだろうし、何より俺に付き纏うきっかけといえる、俺がそっくりだという兄さんの元を離れたくなかったんじゃないんだろうか?

雨上がりの午後 第614回

written by Moonstone

 晶子は俺の話に聞き入っている。そんなに大層な話じゃないと思うんだが・・・。それでも自分の話を聞いてもらえるってのはやっぱり嬉しい。宮城と別れて暫くは、家に帰って悶々とした気分で一人、ギターの練習をしてたからな。

2001/10/7

[無断で休んですみません(_ _)]
 昨日(10/6付)何時見ても更新されない、それもシャットダウンでもないのに、と不審に思われたかもしれません。これは管理人である私の個人的且つ止むを得ない理由によるものです。その理由とは、10/5付日記でも触れていますが、迂闊にもひいてしまった風邪が非常に悪化したからです。1日休めば治るだろうと踏んでいたのですが、実際にはその逆でかえって悪化してしまい、病院に駆け込んで診察を受けざるを得ない状況に陥ってしまったんです。以前風邪をこじらせて肺炎になって入院した経験のある私は、たかが風邪、というわけにもいかないんですよ(^^;)。
 そんなわけで仕事も2日続けて休み、薬を飲んでベッドで唸っていました(自然治癒力は期待外れ)。ろくに起き上がることも出来ず、食事も栄養剤か果物しか受け付けない状況では、更新はおろかPCの前に座ることも出来ませんでした。そんなわけで、心ならずも無断でお休みすることにしたというのが、今回の経緯です。
 病状によってはここ数日の間は無断でお休みするかもしれません。何時見ても更新されない日があったら、「また寝込んだか」と思って下さい。私も出来るだけ早く治したいと思います。

「驚き・・・ました?」
「驚いたも何もいきなり何て質問するんだよ。びっくりしたじゃないか。」
「御免なさい。でも、祐司さん、バイトに大学にギターの練習があって忙しいから心配で・・・。」
「俺にしてみれば、バイトに大学に歌の練習に加えて自炊までしてる晶子の方が気がかりだよ。」
「私は全部取りましたよ、単位。」
「俺も全部取れたよ。専門教科がちょっと危なかったけどな。ノートきっちり取っといて良かったよ。」
「良かった・・・。」

 晶子は心底嬉しそうに微笑む。俺のことを気遣ってくれるのは勿論ありがたいけど、晶子ももっと自分のことを考えても良いと思うんだが。

「バイトやギターに夢中になって単位取り損ねて留年、なんてことになったら、親が黙ってないだろうからな。油断できない。」
「祐司さんのご両親って、厳しい方なんですか?」
「普通にやってる分には別になんとも言わないけどな。やるべきことをやってないと間違いなくどやされる。俺がこの町で一人暮らしするのも、大学生活をきちんと過ごして、尚且つ生活費の一部自分で工面するって約束で許してもらえたんだからな。」
「・・・厳しいですね。私なんか、凄く恵まれると思います・・・。」
「親にあれこれ言われるのが嫌で、一人暮らしをしたいって言い出したんだのは他ならぬ俺自身だからな。親に対する意地みたいなものがあるんだよ。言い出した以上はやってみせる、って感じでさ。」

雨上がりの午後 第613回

written by Moonstone

 唐突且つ極めて現実的な晶子の質問に、俺は口に含んだおにぎりを丸呑みしそうになる。胸を何度か叩いて気管に入りそうになったおにぎりを口に戻して、改めて何度か咀嚼した後飲み込んで晶子の方を向く。

2001/10/5

[私もダウン]
 仕事のシステムの一つであるPCのハードディスクがダウンしたのに続いて、私本人もダウンしてしまいました(爆)。ダウンの理由は風邪。喉が痛むのともの凄い寝汗をかいていたのと(恐らく夜中発熱したらしい)、無理をして長期化するのを避けるため、大事を取って休みました。
 休んで正解でした。発熱が断続的に起こり、喉は痛いままで、食欲もあまり無いし、頭もふらつくし、これではとても仕事にならなかったでしょう。お話している今も、頭が重く痛んでいます。直前には何度目かの発熱もありましたし・・・。
 今日は(このお話をしているのは前日です)何とか治って欲しいんですが・・・。今の私は迂闊に他の薬を飲めないので(薬の飲み合わせってやつで)、発熱と睡眠で風邪のウィルスを退治するしかありません。自然治癒力に賭けてみます。

「美味い。こりゃお世辞抜きで美味いよ。」
「そうですか?良かった。」

 俺の言葉で緊張気味だった晶子の表情が一気にぱあっと明るくなって、晶子も割り箸を割って弁当を食べ始める。晶子も俺に気兼ねなく食べれば良いのに・・・。もっとも、こういう適度に控えめなところが、晶子の魅力の一つでもあるんだよな。その一方で思いの外積極的だったりするから−最初のキスもディープキスも晶子からだったしな−不思議なもんだ。
 俺と晶子は時折吹き抜ける微風を頬に感じながら弁当を食べていく。俺も晶子もそれ程大食いというわけじゃないから、食べ物の奪い合いになったりすることはない。もっともそんなことになったら洒落にならない。食べ物の恨みは恐ろしいって言うし・・・。
 それはそうとして、こうして穏やかな春の日和の中、相手と談笑しながら弁当を食べるっていうのもなかなか楽しいと思う。最初はわざわざ弁当作って外に出なくても、と思ったりもしたが、こうして燦々と降り注ぐ春の日差しを浴びながら弁当を食べるところにピクニックの楽しさがあるんだろうな・・・。

「祐司さん。1年の単位取れましたか?」

 唐突且つ極めて現実的な晶子の質問に、俺は口に含んだおにぎりを丸呑みしそうになる。胸を何度か叩いて気管に入りそうになったおにぎりを口に戻して、改めて何度か咀嚼した後飲み込んで晶子の方を向く。

雨上がりの午後 第612回

written by Moonstone

 晶子の「案内」を受けて、早速俺はおにぎりを一つ掴んで口に運ぶ。中に入っていた昆布の味を感じてそれを何度か咀嚼して飲み込んだ後、割り箸を割って、晶子がソースをかけたチキンカツを取って口に運ぶ。サクサクした食感と溢れ出る肉汁がたまらない。俺は急いで噛んで飲み込んで晶子の方を向いて言う。

2001/10/4

[果たして復旧できるのか?]
 昨日とうとうお釈迦になったハードディスクを新品に交換できるかどうか、業者の方に見てもらいました。するとちょっと渋い顔。マザーボードが現在市販されている20G程度の容量を認識できるかどうか、調べてみないと分からないとのこと。3年という時間の重みを感じました。
 場合によってはPCを丸ごと交換しないといけないかも・・・。でも、実行速度や今後同様のことが起こった場合のことを考えると、むしろその方が良いのかもしれません。難しいですね、PCに限らず物の換え時って(^^;)。

「はい、祐司さん。」
「ああ、ありがと。」

 俺は晶子が差し出したウェットティッシュを貰って、封を破って中身を取り出して手を拭く。弁当を準備するところを見ていた俺だが−昨日は晶子の家にお泊りした−、こういうものもしっかり揃えているのは流石だ。
 晶子も俺に続いてウェットティッシュの封を破いて手を拭いて、持ってきたビニール袋にゴミを入れる。俺も使い終わったウェットティッシュと破いた封をそのビニール袋の中に入れる。これで食べる準備は整った。次はいよいよ晶子お手製の弁当を堪能する番だ。

「「いただきまーす。」」

 俺と晶子は偶然同時に食前の挨拶をする。それが妙におかしくて、俺と晶子は顔を見合わせて笑う。その後、晶子が弁当箱の箱を開けて、持ってきた割り箸を手渡す。今日の朝揚げたばかりのチキンカツをはじめとして、ミートボールや魚の照り焼き、ひじきと大豆の煮物や胡瓜とワカメの酢の物、そして兎さん林檎など、バリエーション豊かなラインナップだ。

「美味そうだな。」
「腕によりをかけて作りましたから、遠慮なく食べてくださいね。」

雨上がりの午後 第611回

written by Moonstone

「御免なさい。私だけ良い気分に浸ってて・・・。」
「否、良いよ。良い気分に浸ってたのは俺だって同じだから。」

 晶子は微笑みを俺に返して、バスケットを開いて弁当箱を取り出す。おにぎりとたくあんが入った籠型のものと、おかずが入った重箱を一回り小さくしたような漆器の箱を取り出す。ピクニックに必要不可欠(?)なお弁当タイムだ。

2001/10/3

[寿命なら早過ぎる]
 今の仕事でシステムの一つになっているPCのハードディスクが、今日の午後、突然「カッコンカッコン」という怪しい音を立て始めました。この現象は以前にもあったのですが、何度か再起動を繰り返しているうちに正常に動作するようになりましたが、今度ばかりはそうもいかず、ログオンすらできない状況に陥りました。
 仕事のクライアントにメールで尋ねたら「そろそろ寿命かねえ」とのこと。1度だけ正常に起動できたときに、作ったアプリケーションのバックアップを取ったのは正解でした。しかし、3年程度使っただけで寿命がくるなんて、何て脆い・・・。自宅のMIDIシステムのPCのハードディスクなんて、10年近く使っていても全く問題ないのに・・・。
 ひとまず業者と相談して新しいハードディスクを購入することにしました。今度は2年3年なんてことのないように願いたいです。これで仕事は暫く中断せざるを得ないし、アプリケーションをインストールする手間もかかるし・・・。迷惑この上ないです。
それに、智一にも以前言われたように、俺は不器用な人間だから、その場で思いついた美辞麗句を並べても晶子を喜ばせるどころか、折角の良い雰囲気をぶち壊しにするだけだろう。出来る範囲で出来る限りのことをする。それが俺には一番合っていると思う。
 晶子は嬉しそうな微笑を浮かべて俺の手を両手で包み込み、それを抱き締めるように自分の胸に持っていく。手の柔らかさとはまた違う柔らかさと早めの鼓動が微かに伝わってくる。それを感じて俺の胸のドキドキ感は更に高まる。晶子がそうしたとはいえ、晶子の胸に触るのはこれが初めてだ。俺は続ける言葉が見当たらないまま、ただ晶子のするがままに身と心を任せる。

・・・。

 さっきの子ども達より控えめながらも、俺と晶子を冷やかすような何度目かの草木のざわめきが起こった後、晶子はゆっくりと胸から俺の手を離す。もう少しそのままで居て欲しいのに、などと不謹慎なことを思ってしまう。でも、男にとって女の胸の柔らかさは、ある意味神秘的なものだ。
 晶子と付き合い始めて3ヶ月くらい経つが、今までキスから先に進もうとは不思議と思わなかった。関係が深まっていくにつれて、そうすることでしか関係を続けられなくなるのが怖かったという面もある。宮城と遠距離恋愛をしていたときも、そういう関係を続けたかった面がなかったとは言い切れない。これも過去の教訓を生かしていると言えるだろうか?
 その代わりと言っちゃ何だが、キスは頬や唇にするのはもう当たり前みたいな感じで、二人の気持ちが高ぶった時は必ず舌を絡めあう濃厚なキスを交わす。勿論、二人きりであることを確認してからすることだが。

雨上がりの午後 第610回

written by Moonstone

 晶子の嬉しい言葉に俺は礼と笑みを返す。気の利いた言葉を返せない俺が出来る精一杯の感謝の表現だ。

2001/10/2

[大わらわの日]
 定期更新をゆったり出来て幸先良い1週間のスタートを切ったと思ったんですが、仕事はそうはいきませんでした(汗)。本来ある筈のないデータがあって扱いに困ったり(一先ず印刷しておくことに)、データを集計しやすいように変換するところで戸惑ったり(やり方忘れてた(汗))、結果を印刷する時に肝心のキャプションを入力し忘れたり(馬鹿だ(汗))、結局、集計用のデータを集めるのが精一杯でした。まだ締め切りまで期日があるので今日こそ片付けるつもりです。
 プログラムの制作者であって集計作業をするのも私なんですが、前回は(年度末)持病の酷い悪化で締め切り期間を全休したので(同僚の人に代行してもらった)、勝手を忘れてしまっている部分が多々ありました。集計作業が半年に1回ですから忘れやすいのもあるんですが、スムースに出来るようにしたいですね。
潤子さんの推測は見事に的中していたわけだ。俺を好きになった過程を晶子の口から聞いて、改めて晶子にすまないことをしたと思う。

「・・・すまなかったな、晶子。」
「え?何がですか?」
「最初のうち、俺が晶子の兄さんに似てるって言うから、てっきり俺に兄さんの面影を重ねてるのかって思ってたんだ。だから余計に晶子を邪険に扱ったんだ。俺は晶子の兄さんじゃない、ってな・・・。」
「そう思われても仕方ないですよ。私が勝手に祐司さんに兄の面影を重ねてたんですから。・・・でも・・・。」

 晶子は俺の左手にそっと右手を重ねる。不意の柔らかくて温かい感触に、俺は胸を高鳴らせる。手を重ねたり繋いだりするのは初めてじゃないのに・・・。それだけ初々しさが続いているということか?それとも単に俺が照れ屋なだけか?優子、否、宮城とは余り手を繋がなかったしな・・・。手を重ねたり繋いだりすることに免疫がないのかもしれない。
 俺は晶子を見る。晶子は頬をほんのり桜色に染めて俺を見ている。こうして見詰め合うと、俺の胸はさらに高鳴る。微風を受けて木々が微かにざわめく。それを合図にするかのように、晶子は俺を見詰めながら口を開く。

「今は違います。今は祐司さん、その人が好きなんです。祐司さんの・・・全てが・・・。」
「ありがとう。それで充分だよ。」

雨上がりの午後 第609回

written by Moonstone

 晶子ははにかんで照れ笑いを浮かべる。初めて見るこの表情もやっぱり魅力的に映る。それにしても・・・晶子が俺を好きになった過程がああだったとはな・・・。俺が晶子の兄に似てるってのは確かにきっかけではあったが、それが好きになった理由じゃなかったのか・・・。

2001/10/1

[随分ゆったり]
 普段だと更新時間直前までバタバタする定期更新なんですが、今回はキャプションどおり随分ゆったりと出来ました。「魂の降る里」を計画どおり2日間に分けて執筆したのが功を奏したようです。Photo Group 1の更新は、写真選考と短文執筆で(特に英訳)梃子摺ることが予想されたので、今回は見送りました。楽しみにされていた方にはすみません(_ _)。次回定期更新には間に合わせるようにしたいと思います。
 今日から10月。小旅行の余韻を楽しむ間もなく仕事の嵐が待っていたりします(汗)。今月は定期更新が3回もあります。秋の色合いも深まってくるこの時期、長い夜を満喫してもらえるような作品を、一つでも多くご来場者の皆様にお見せできるように作品制作を進めていきたいです。
「俺も。」
「僕も。」
「みんな良い子ね。そろそろお昼の時間だから、お家に戻ったらどう?」

 晶子が言うと、俺が見る限り全員が腕時計を見てはっとしたような表情を見せる。

「・・・あ、本当だ。もう昼過ぎてるじゃん。」
「そう言えば腹減ってきたよな。一旦帰ろうぜ。」
「おう。じゃあ、お兄ちゃん、お姉ちゃん、またね。」
「「またねー。」」
「ああ、またな。」
「気をつけて帰ってね。」

 子ども達は踵を返して緑の丘から俺と晶子に手を振って走り去っていく。実に執着がないというか、切り替えが早いというか・・・。何にせよ、この難局を見事に乗り切れたのは晶子のお陰だ。全く大したもんだ。

「ありがとう、晶子。体良く退散させてくれて。」
「いいえ。祐司さんが困っていたから話を切り上げさせたんですよ。丁度お昼前ですし。」
「晶子って、かなり保母さんの素質あるんじゃないか?あれだけの数を相手に見事退散させたんだから。」
「そんなことないですよ。」

雨上がりの午後 第608回

written by Moonstone

「はいはいはい。みんなも人の前でそういう話をさせられるのって照れくさいでしょ?お兄ちゃんとお姉ちゃんも勿論照れくさかったのよ。だから、あんまり聞かないで欲しいな。」
「・・・うん。分かった。」


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