芸術創造センター こぼれ話
Dropped talk of Performing Arts Center

1999年12月31日更新 Updated on December 31th,1999

1999/12/29

 1999年の更新も今日が最後です。来年1/9の更新まで何もなしでは素っ気無いと思い、1/9の予定だった第3創作グループと第1写真グループを先行させました。また、原作として参加させて頂いた冬のコミケに関する情報を「Moonlight PAC Edition」で緊急に纏めました。
 10月から始めた連載「雨上がりの午後」も早79回目を数えました。シャットダウンを明日にずらせば80回で区切りが良かったのに、とも少し思います(笑)。来年以降もこんなペースで書き留めていくつもりです。付くか離れるか微妙で危うい二人の行く先を、見守って頂きたいと思います。

 通例どおりバタバタした更新となりましたが(笑)、掲示板JewelBox以外は通常どおりご来場頂けますので、引き続きご来場頂きたいと思います。なお、シャットダウン中であることや年末年始の2000年問題でネットの混乱が予想されることから、個別にメールで新年のご挨拶をすることは控えさせて頂きますので、ご了承のほどをお願い致します。トップページにご挨拶を掲載しましたので、それを以って替えさせて頂きます。
 開設から初めて迎えた年末ですが、作品の構想や企画、草稿や翻訳などをぼつぼつ行うつもりです(笑)。まあ、普段の休日が長めになったというくらいです。また、シャットダウンは1/8までとなっておりますが、それより早めに再稼動する可能性が有ります。確か8月半ばがそうだったような・・・。

それでは、良いお年をお迎えください。

 俺の方へ向かって走ってくるのは智一だ。随分慌てているが何かあったんだろうか?あの表情を見ると・・・遊びの誘いかな?

「祐司。お前、今日はバイトないんだろ?」
「ああ。定休日だから。」
「だったら合コンに来ないか?何と聖華女子大の1年!お嬢様がわんさか居るぞ!」

 ・・・こいつ、付き合いは広くないといいながら、こういう場の手回しは上手い。智一の家は会社の社長だし、そっちの方面は広いんだろう。聖華女子大は同じ市内にあるお嬢様学校で有名な女子大だが、鍍金(めっき)のお嬢様が鍍金に細工を施してふらふらと寄って来てもおかしくない。だが、男をそういう方面で揃えるなら、俺は場違いな人選だ。
 しかし、智一は井上に随分熱を上げていた筈だ。なのにどうして他所の女と合コンをする必要がある?井上の居る文学部に手を伸ばすのが自然−変な言い方だ−だと思うんだが。

「・・・お前さ、井上を彼女にするって言ってなかったっけ?」
「晶子ちゃんか?勿論狙うさ。だが、彼女はなかなか落とすのが難しそうだから、ここはまず、お嬢様を相手にして勘を掴んでおこうと思ってな。」
「勘って、何の勘だよ・・・。」
「まあ、細かいことは気にするな。勿論来るだろ?」

 智一はそう言って俺の肩に手を置いて来る。細かいこととは思えないんだが、智一の顔を立ててやるのも悪くはない。鍍金の罅割れを摘んでゆっくり剥がしてやるのも面白そうだ。
 OKしようとした時、昨日の井上との約束が鮮明に蘇えって来る。・・・約束・・・。あの時の井上の表情が続いて脳裏に浮かぶ。俺を信頼しきったようなあの表情・・・。人を疑うことを知らない、信じた相手にはどれほど無下にされても食い下がる、執念といっても良いあの気持ちを・・・反故にして良いのか?
 そう思うと、別の気持ちが闇の底から台頭して来る。このまま井上の術中に嵌まって良いのか?俺に夢中な振りをして、二股を掛けてるかもしれないのに−先約があると言った−むざむざ弄ばれようとするのか?冷めた声で執拗に問い掛けて来る。

・・・。

「・・・悪い。俺、パスするわ。」
「お、おい。何でだよ?聖華女子大との合コンなんて絶好のシチュエーションを逃すのか?」
「女と仲良くする気はないし、先約があるからな。じゃ。」

 俺はまさかと言いたげな智一を残して帰路を急ぐ。俺の言ったことは本心だ。先に約束したのは井上との方だから、先着優先が筋ってものだろう。・・・やっぱり俺は、悪人にはなりきれそうもない。だから体よく騙されるんだろうが・・・。
 信じていたことを反故にされる気持ちを骨身に染みて分かっているつもりだから、俺はそんなことをしたくない。・・・それだけだ。

雨上がりの午後 第79回

written by Moonstone

 翌日。今日は2コマからの講義なので朝はゆっくりした。昨夜井上に自宅に引っ張り込まれた俺は、紅茶を飲み終えるとまっすぐ帰宅した。・・・本当だぞ。間際に井上が「明日からお願いしますね」なんて念押ししたくらいだ。俺は「分かったよ」とぶっきらぼうに答えたが・・・。希望に燃える初心者に取る態度じゃなかったな、と少し後悔している。
 俺も中学や高校ではやれ規則だ生活指導だ、部活じゃやれ先輩後輩だの礼儀だの、本質とかけ離れた下らない形式に拘る輩に気分を萎えさせられた記憶が多い。だから教えるということは居丈高にして良いということじゃない、と身に染みて分かっている筈なんだが・・・。こんなことで井上の自宅でマンツーマン指導なんて出来るのか、今から不安に思う。
 講義が3コマで終わった俺は、帰宅の途に就こうとする。その時、後ろから呼びかけてくる声がした。

「おーい、祐司ぃ!」

1999/12/28

(12/27の続きです)

B:Moonstoneさんの小説は、第2グループは勿論のこと、それ以外の作品でも『社会に対する風刺』的記述が多く見られますよね。他の方の場合でも短編等で風刺を効かした作品は時々見かけますが、Moonstoneさん位多く描かれてる方、更に長編でというのはほとんど見かけない様に思われます(ましてEVAでは)。『社会に対する風刺』というのはやはりMoonstoneさんにとって重大なテーマなのでしょうか?

M:はい、重大なテーマであると同時に、避けては通れない要素の一つだと考えています。「魂の降る里」のように一般社会を舞台にするとなると、当然そこにはマスコミの過熱報道や「正義」だから何をしてもよいというような風潮など、様々な問題があって、それらと無関係で話を進めるのは無理があると私は思います。
ただ、オリジナルは良いとしても、エヴァで風刺を盛り込むのには多少躊躇いがあったのは事実です。おっしゃるとおり、エヴァの作品で、さらに長編で風刺を盛り込んだものは非常に珍しいと思いますし、読まれる方には取っ付き難いとか、あまりに厳しくて読む気がしないと思われるのではないか、と。
ですが、やはりNervが社会の中に存在する以上、それとの関わりは必然的にあるでしょうし、「魂の降る里」のようにNervやゼーレが白日の下に晒され、話の舞台が社会になれば、当然無関係ではいられなくなる・・・。そう考えて、描写や展開が厳しくなることを覚悟の上で連載開始に踏み切りました。

B:ピンクの怪獣さんとのなれそめは?

M:最初は「育ての親」こと、ででん様の作品で知りました。

B:ピンクの怪獣さんのどんなところが好きになられましたか?

M:何と言ってもあの着ぐるみ姿で歩き回っては、笑いと災難を齎すところです。特にリツコとのやり取りは最高です。

B:ピンクの怪獣さんとお付き合いされてどんな印象を持たれましたか?

M:今まで関わったことがないタイプだったので最初は非常に戸惑いましたが、付き合っているうちに何事にもめげないタフなところが羨ましく、同時に暴走して自滅するところが私自身に共通するものがあるので、親近感を持つようになりました。今では怪獣ものを書く度に、一緒になって暴れているような気になります。

B:ずばりピンクの怪獣さんとの将来の予定は?

M:一度対決してみたいです。多分負けると思いますが。

B:そういえば、芸術創造センターには圧縮ファイルが無いですね。私みたいに最近来たものだと第1グループ位話が進行しているとオンラインで読むのも辛いものがあるので・・・もし良かったら、また考えていただけると嬉しいのですが。

M:これはおっしゃるとおりですね。一旦ブラウザに読み込んでそれを保存してもらえば良いだろう、と思って圧縮ファイルを置くことはあまり考えなかったのですが、大型連載を一つ一つ読むのは私自身かなり大変ですし、ましてオンラインだと時間を気にする必要がありますから、最近来られた方には不利な条件になっていますね。
ファイル形式や区切り方をどうするかはこれから検討しますが、少なくとも文芸部門に関しては、順次圧縮ファイルを用意していくつもりです。

B.cat様、有り難うございました。

雨上がりの午後 第78回

written by Moonstone

 井上はメモとボールペンを持ってきた。俺はそれを借りて自分の電話番号を書く。俺の電話番号を知っているのは、名簿がある大学の奴を除けばせいぜい実家と高校の時の連れ数人くらいだ。訳の分からない勧誘電話を避ける為と、元々付き合いが少ないからだが・・・ストーカー同然の執念を持つこの女に教えるのは自殺行為かも知れない。しかし、女に電話番号を教えるのは・・・何年ぶりだろう。ああ、大体3年ぶりか。あの女と付き合い始めた時、交換し合ったっけ・・・。

「・・・はい。」
「ありがとうございます。」

 井上はメモを受け取ると如何にも嬉しそうに微笑む。間近で見ると・・・確かに奇麗だ。昨日だったか、井上を「注文」した客が居たっけ。その気持ちが分からなくもない。そう思うと胸がズキッと痛む。軽く締め付けられるようなこの感覚、もしかしてこれは・・・。
 駄目だ!どれだけペースに乗せられても、この気持ちだけは絶対駄目だ!この気持ちが俺の心を支配したら、また俺は騙されて、良いように弄ばれて、そして・・・ある日呆気なく捨てられるんだから!

「どうしたんですか?」

 井上の声で我に帰ると、俺の視線は横に逸れていた。胸の痛みを呼び起こす井上の微笑む顔を見ないように、視線を無意識に逸らしたんだろう。

「な、何でもない。」
「なら良いんですけど・・・。」

 そうは言っても、井上はまだ至近距離で俺の顔を心配そうに見詰めている。あの甘酸っぱい匂いが微かに鼻腔に染み込んで来る。整った顔立ちとこの匂い、そして(俺にすれば強引な)積極的な意思表示・・・男を惑わせるには十分すぎるくらいの材料だ。危うく俺も誑かされるところだった。今の女性不信と言える俺の精神状況を作ってくれたあの女に、今回だけは感謝するべきだろう。
 俺はカップの紅茶を再び飲む。ミントの香りで気を逸らす為とも言える。・・・俺は気付き始めている。井上をあの苦い記憶を作った「女」という生き物として警戒し、拒否しようとする気持ちと、・・・認めたくないが・・・井上に新しい恋を見出そうとしている気持ちが、井上を前にすると先を争って頭を擡げることに・・・。

 やっぱり・・・俺は寂しいんだろうか?何時までも続くと思っていた、当たり前のように感じていたものが突然無くなったから・・・、突然独り放り出されたような状況にどうして良いか判らないから・・・、心にぽっかり空いた虚無の空洞から吹き荒ぶ乾いた風を早く止めたいから・・・。
 だけど、寂しさを新しいもので紛らわせるのは・・・。あの記憶が何時再現されるかもしれない。それに・・・終止符こそ残酷だったが、あの3年間を埋め立ててしまうことの罪悪感というか後ろ髪を引かれるような思いがある。これが・・・未練というやつか・・・。

俺は・・・どうしたら良いんだろう?
俺と井上は・・・これからどうなって行くんだろう?

何れ自分の気持ちをはっきりさせなければならない時が来たら・・・
その時俺はどうするんだろう?

1999/12/27

 今回はこのコーナーの1000HITを踏まれたB.cat様にお越し頂いて、日頃芸術創造センターやこのコーナー、そして私、Moonstoneに関して抱いている疑問にお答えしていきます。

B.cat様(以下、B):
まず、Moonstoneさんの『Moonstone』というHNの由来は?やはり月長石からですか?

Moonstone(以下、M):
はい、そのとおりです。これは私の誕生石でして、ネットの世界に足を踏み入れる時に何か良いものは・・・と考えて、ふと思いついたものです。私自身はかなり気に入っています。

B:結構遅い時間に更新されているみたいですが(それも『こぼれ話』を見る限り毎日更新)体調とかは大丈夫ですか?

M:どうにか大丈夫です(笑)。最近では、平日の場合は帰宅して夕食後に少し製作して仮眠を取って、それから製作や更新をするという生活です。週末は・・・時間の間隔が無くなる場合が多いです(笑)。

B:描かれている女性の方々は多少なりと作者の嗜好を(反面にせよ)反映するものですが Moonstoneさんのタイプは? やはり潤子さんですか?まさか・・・ピンクの怪獣(笑)?

M:はい、好きな女性のタイプはほぼ潤子さんに集約されてます。改めて列記すると・・・
  1. 髪は黒くて長めでストレート。パーマや染色は不可。
    茶色くらいなら許容範囲です(井上さんが茶色なのはそのため)。
  2. 「可愛い」より、大人っぽくて上品な「奇麗な」人。言葉遣いも重要。
  3. 料理ができる。私も同等程度(魚を捌けて包丁を研げて、レシピを見ずに
    20品は作れる)だと尚良い。一緒に料理がしたいので。
  4. 今時の話題より、芸術、政治や社会、考え方などについて
    素面で話が出来る。
  5. 服装はブランドものとジーンズ以外ならこだわらない。
    化粧と香水は不可(臭いがきついものは特に)。
こんなところです。ピンクの怪獣は・・・うーん。好きなんですけど、ちょっと「好き」の方向性が違います(笑)。

B:元々私は『・・・Daddy?』の話に興味を引かれて(好きかどうかはまた別問題ですが)まーくさんの部屋から来たのが、「あ、EVAだけじゃないんだ」と(特に『雨上がりの午後』に惹かれて)見に来るようになったのですが、いったいいつ頃から小説を描かれておられるのですか?結構年期があるようにも見えるのですが。

M:小説を書き始めたのは中学1年の頃ですから、10年以上になりますね。書いたのは学校の班日誌でして、内容はよく覚えていませんが、そこそこ好評を得られて以後こつこつと書くようになりました。第1創作グループで公開中の「Saint Guardians」は高校1年の頃に原形ができました。

B:先にも書いたように私の好みは『雨上がりの午後』なのですが(あと『魂の降る里』や やっぱり☆怪獣☆(笑))、Moonstoneさんが描いてて楽しいのはどのグループですか?

M:凄く難しい質問ですね(笑)。どれも好きで始めたグループなので書いている時は楽しいです。なかなか進まない時はちょっと辛いですが(笑)。思い入れという点では、キャラや設定がオリジナルで長年付き合っている第1創作グループと、好みのタイプを集約した「雨上がりの午後」は特別強いですね。

雨上がりの午後 第77回

written by Moonstone

 ・・・智一が知ったら目の色を変えて欲しがるのは間違いない代物だ。俺は一先ずメモ用紙を受け取って見る。番号からして携帯電話じゃない。携帯電話を持っているとばかり思っていたから正直言って意外だ。今時携帯電話を持っていない人間は俺くらいのものかと思っていたが、そうでもないのか。

「留守電はありますから、居なくても大丈夫ですよ。」
「それは良いけど、何でこれを?」
「ここに来てもらう時は前もって連絡して下さい。玄関のドアを開けますから。」

 ああ成る程。セキュリティのせいで外部の人間が出入りするのは、内部の人間が居ないと出来ないってことか。恐らくあのセキュリティは内部の人間しか登録できないんだろう。そうでなきゃセキュリティの意味がなくなるか。しかし・・・

「会って間もない俺に、よく電話番号を教えられるよな。」
「・・・だって必要でしょ?」
「そりゃそうだが・・・。」

 本当に人を疑うことを知らない奴だ。傷付くことを恐れないのか、それとも恐れるほどに傷付いたことが無いのか?

「それに、安藤さんが悪い人には見えないから、教えても良いって思うんです。」
「・・・そう見えるか?」
「ええ。私だって電話番号を教える人を選ぶことくらいはしますよ。」

 あっけらかんと、しかもきついことを言う。裏を返せば信用できない相手には電話番号を教えないということだ。智一は前に電話番号を聞きだそうと懸命になっていたことを思い出す。あの時井上は巧みに逸らかしていたが・・・さっきの言葉を智一が聞いたら、どんな顔をするだろうか?やっぱり女は怖い、とつくづく思う。

「そうだ。折角ですから安藤さんの電話番号も教えて下さいよ。」

 井上の突然の申し出に俺は紅茶を拭き零しそうになる。カップから目だけ上げて井上を見ると、妙に目が輝いているように見える。まさか、自分の電話番号を教えたのは最初からこれが目的だったんじゃ?
 ・・・そんな気がする。俺は井上のペースに知らず知らずのうちにまんまと乗せられてしまっていることを改めて実感する。この女、やっぱり油断ならない。俺の居場所を追い続けた執念といい、バイトに食い込んだことといい、今日自分の家に引っ張り込んだことといい、興信所か借金取りになったら最強の名を欲しい侭にするタイプだと思う。俺はなんて女に狙われてしまったんだろう・・・。本当に俺には運がない。

「・・・何で俺の電話番号を・・・?」
「何でって、私から安藤さんに連絡したいことだってあるかもしれないからですよ。」
「・・・。」
「あ、もしかして疑ってません?」

 井上はテーブルから身を乗り出して顔を近付ける。子どもの悪戯を事前に見つけた母親のような表情だ。『疑うに決まってるだろ。会って間もないのにいきなり電話番号の交換なんて』と切り返そうとした俺だが、この表情を間近で見ると言葉に詰まってしまう。さしずめ俺は、悪戯を事前に母親に見つけられて詰め寄られる子どもか・・・?

「言っとくけど・・・俺も携帯持ってないから、何時でも直ぐにってわけにはいかないからな。」
「ええ。構いませんよ。早めに連絡とかすれば大抵間に合いますから。」
「・・・紙と書くもの、貸してくれ。」

 駄目だ。井上のこの表情で見詰められると、何だか俺が悪いことをしているような気になって来る。井上のペースと判っちゃいるが、此処は素直に教えることにしよう。

1999/12/24

 うう〜。風邪が一向に良くなりません(T_T)。薬飲んで温かいもの食べて、ネットサーフィンも控えて早く寝たというのに・・・。食べる時に辛い喉の痛みが消えたのは良いのですが、鼻詰まりと咳と熱(三重苦^^;)が延々と続いてます。
 そんな状況ですが、執念でクリスマス特別企画を実施。ただ、第2創作グループですので「普通」じゃありません(笑)。正直夢もロマンもありゃしないので予め御了解の上でご覧ください。

 大阪府知事が結局辞任しました。「(セクハラを)やってない」と強弁しながら法廷で争わなかったし、そのまま押し通せると思ったんでしょうか?ちょっと世間を甘く見ていたような感があります。判決を受け入れたら事実として認めたと同じですから、議会も問責決議なんぞでお茶を濁さずにきっちり辞職勧告すべきだった(共産が提出したけど否決)と思います。
 しかし、セクハラ訴訟で何十人もの弁護団を組むのはどうでしょうか?何だか女性を怒らせると只では済まんぞ、と威圧感を演出して勝訴を迫るような・・・。事実を戦わせる場が戦略の場になっているような気がしてなりません。第2創作グループの「女性帝国」の世界が現実にならなければ良いのですが・・・。
 俺は靴を脱いで上がるとダイニングを見る。小さ目の木のテーブルに調味料を乗せる台に箸立て。箸は・・・一組。椅子は2つ。他に人が使った形跡はない。井上も入ってきて鍵を閉めると、壁のスイッチを入れる。暖房を入れたのだろう。

「その椅子に座って下さい。お茶入れますから。」

 井上はそう言ってドアの向こうへ消える。俺は玄関に近い方の椅子に座る。まだ暖房が効いてないのでコートは着たままだ。そこへコートを脱いだ井上が戻ってきて何かを始める。小さな容器からスプーンで掬ったのは・・・葉っぱか?どうやら紅茶を入れるつもりらしい。

「紅茶、大丈夫です?」
「ああ、飲める。」

 俺は滅多に紅茶を飲まない。別に嫌いじゃないが、インスタントで簡単に飲めるコーヒーと違って、紅茶はちょっと面倒な印象がある。俺自身家で紅茶を沸かしたことはない。湯を沸かすのはインスタントラーメンを作る時くらいだ。
 井上は手慣れたもので、ポットで湯を沸かしながら紅茶の葉を準備する。俺に背中を向けた格好だが、なかなか様になっている。・・・何を見とれてるんだ、俺は。
 頬に触れる部屋の空気に温もりを感じることになると、ポットの湯が沸く。井上が2つのお揃いのカップに紅茶を注いでテーブルに置く。湯気に含まれた何処かで嗅いだことのある匂い・・・これってミントか?ミントが紅茶になるなんて初めて知った。

「砂糖とか入れますか?」
「いや、いい。それよりこれって・・・ミントか?」
「そうですよ。私これが好きでよく買ってるんです。」

 俺はカップを静かに持ち上げて口元に近付ける。・・・鼻から喉へ独特の清涼感が通り抜けて行く。一口喉を通してみても爽やかな香りが口の中を満たす。渋くて苦いだけと思っていた紅茶もなかなか良いもんだ。

「ところで・・・、俺に渡したいものって?」
「あ、ちょっと待ってて下さい。」

 椅子に座ったばかりの井上が再び立ち上がって奥のドアへ消える。少し急ぎ足だったから忘れていたのかもしれない。やはり一つ何かをすると他のことに気が回らなくなるタイプのようだ。井上はすぐに戻ってきて、俺に1枚のメモ用紙を差し出す。そこに書いてあるものは・・・10桁の番号。

「これ、私の電話番号です。」

雨上がりの午後 第76回

 井上の部屋は3階のやや東寄りの場所にあった。時間や場所のせいか廊下やエレベーターに人影はない。井上はカードをスロットに差し込むと今度は暗証番号を打込む。随分面倒な作りだ。鍵が外れる音がすると、井上はドアを開ける。

「さ、どうぞ。」
「・・・お邪魔します。」

 一応挨拶くらいする礼儀は弁えているつもりだ。俺は未知の世界−実際そうだ−に足を踏み入れる。赤外線に反応するのかひとりでに電灯が灯る。入ってすぐにダイニングがあって、その奥にドアが見える。間取りは1DK若しくは1LDKというところか。
 俺の家と同じくらいだが大きく異なるのは整理の度合いだ。きっちり整理整頓されているし、掃除を怠らないのか床なども奇麗だ。俺の家がゴミ集積場に思える。

1999/12/23

 風邪治りません(T_T)。前は割と早く治ったのですが、今度はしつこい・・・。このままだとコミケ行けるかどうかも怪しい状況なので、医者へ行くかもしれません。クリスマス更新は・・・できるところまでやります。そんな訳で今日もPCへ向かう、と。

 うーん、お話することがないです(^^;)。大掃除は仕事場で嫌というほどやりましたし、年賀状は未だ手付かずだし(^^;)。今はコミケに行けるように風邪を早く治すことを第一に考えています。病気だろうが何だろうが、家之子とを全部自分でしなきゃならないのはちょっと辛いです。こういうときだけ誰かに居て欲しい、というのは我が侭ですかね、やっぱり。
 井上は玄関のドアの前に立つと、ポケットから財布を取り出し、さらにカードを取り出して脇の壁のスロットに差し込み、さらに手袋を片方外してスクリーンのようなものに手を押し当てる。すると、ピッという音がして鍵が外れる音がする。セキュリティか。随分大層なものを用意している。これじゃ男も来るのが大変だろう。
 井上がカードを取り出すとドアがひとりでに開く。それを見届けて家まで送り届ける役目を果たした俺が帰ろうとすると、井上が呼び止める。

「あ、待って。中へ入って下さい。」
「何で?」
「良いから、さ、早く。」

 俺が怪訝そうにしていると、井上は俺の腕を掴んでぐいと引っ張る。突然のことに俺は抗う間もなく中に引き込まれる。その直後にドアが閉まって鍵が掛かる音がする。

「このドア、決まった時間しか開かないんですよ。」
「それは良いけど・・・何で俺を?」
「渡しておきたいものがあるからですよ。そのついでにお茶でも飲んで行って下さい。寒いですから。」

 渡したいもの・・・?何のことだか判らないが、どうせ井上のことだ。明日で良いと言っても聞きやしないだろうし、井上が何かをしないとドアが開かないというのは察しが付く。ここは素直に従っておくことにする。
 しかし、相変わらずというか強引な奴だ。まだ知り合って日の浅い俺を自ら引っ張り込むとは・・・。俺の感覚からいえば信じられないことをする。俺の考えが古いのか、それとも井上が進んでいるのか・・・俺には判らない。

雨上がりの午後 第75回

 井上の家に着くまで10分程度歩いただろうか。十分徒歩圏内だが俺の家がある方向からは若干ずれている。闇にぼんやりと白く浮かんでいるその建物はマンションタイプのもので、見たところ築5年は経ってない。

「私の家、此処なんです。」
「俺の家より奇麗だな。新しそうだし。」
「女性専用なんですよ。」

 女性専用・・・ねえ。このところ何かと物騒だし、娘を一人暮らしさせる親の気心配もあるんだろう。しかし、男を連れ込んでいては意味が無いように思う。親も目の届かないところで娘がどうしているか、そうそう知らないだろう。

1999/12/22

 はい、風邪引いちゃいました(T_T)。まったく、肝心な時だというのに・・・。薬と喉飴が手放せない状態です。このお話も食後に薬を飲んで一眠りした後、飴を嘗めながらしています。でも、飴はついつい噛んじゃうのですぐに無くなってしまうんですよね(^^;)。

 今日はこんな状況なので、もう少し製作を進たりメールの返信を書いたりしたら、早めに寝ることにします。Moonstone流クリスマス企画(大々的じゃないですが)には実質あと2日くらい・・・。うーん、スケジュールちょっと厳しいなぁ・・・。

「何処で教えてくれるんですか?」
「・・・今考えてる。」

 一言答えて俺は考える。というか、答えを先延ばしする。答えは既に2つに絞られている。俺の家か井上の家かのどちらかだ。しかし、俺としてはどちらも生きた心地がしない。俺の家にはあの女すら2、3回しか入れたことがないし、女の部屋に入ったことも殆ど無い−大体外で会っていたから−。そうでなくても家に異性が出入りするってのは重大なことだと、俺は認識している。
 それも井上とは会って半月も経ってない。ましてまともに会話を交わすようになったはつい昨日今日のことだ。そんな相手の家に行ったり、逆に家に入れたりするのは俺には想像もできない。究極の選択とはこの事だ。

「やっぱりスタジオなんかでやるんですか?」
「・・・いや、二人で歌の練習には大袈裟だ。第一、俺だって借りたことない。」
「じゃあ、私の家に来てくれませんか?」

 ・・・井上から先に切り出してきた。そう言えばこいつ・・・一人暮らしだったよな・・・?警戒心とかは持たないのか?それとも男を連れ込むことに慣れてるのか・・・?後者と考えれば間違いなさそうだ。そうで無ければ自分から言い出すなんて出来ないだろう。少なくとも俺はそう思う。

「・・・別に良いけど。」
「じゃあ、今日私の家の場所を覚えて行って下さいね。」
「・・・ああ。」

 まあ、俺と井上は教える側と教わる側でしかない。俺が妙に意識しないようにすれば良いだろう。・・・しかし、智一には絶対言えないな。あれほど井上を避けていた俺が、井上の家に出入りするようになるなんて・・・。

雨上がりの午後 第74回

written by Moonstone

 どう切り出そうか思案していると、不意に井上が俺の方を向く。丁度向かい合うような体勢になった俺はびくっと身体が内側から震動するのを感じる。

「・・・早速明日からお願いしますね。」

 井上は俺を見詰めながら言う。やる気満々といった表情だ。俺は一先ず頷く。だが、明日からって・・・。どうすりゃ良いんだ?店は定休日で閉まってるから、何処か別の場所でやるしかない。スタジオを借りるのは大袈裟だし、借りたことがないから勝手が分からない。・・・と言うことは・・・。

1999/12/21

 喉痛いです(T_T)。また風邪引くのかな〜、熱出すのかな〜、頭痛くなるのかな〜。暖かくしてはいるんですが、無茶な生活リズムで蓄積した疲労と睡眠不足がじわじわと効いてきたようです。でも仕事もこちらも年末に向けて追い込み時期だし・・・。人間、やはり睡眠は大事ですね。

 私は世間一般でいえば結婚適齢期の後半くらいに該当します。そのせいで帰省すると親戚が開口一番飛び出すのはほぼ間違いなく「嫁さんはまだか?」です(私は男性です。念のため)。私は「まだです」と答える程度ですが、しかし・・・結婚して良かったと思っている夫婦はどれくらい居るんでしょうか?結婚より離婚の数が多いし、離婚の理由も妻の方が「我慢に疲れた」「自由に生きたい」という自分本意のものばかり。妻子や家庭を守るため自分を犠牲にしてきた男性は会社に捨てられ、妻子にも捨てられ・・・。それで結婚に希望が持てる筈がありません。
 男性にとって今の時代、結婚や恋愛はデメリットこそあれ、メリットはないと思います。私が以前特定の相手を欲しいとは思わないと話したのは強がりでも何でもなく、事実に基づいて最適と判断した行動方針なんです。それを変えるにはそれ相当の事実がない・・・それだけのことです。

「決まりだな。ま、ここは一つ宜しく。」

 即座に反論しなかったので異論はない=了承したと受け取られてしまった。これで俺と井上の関わりの糸はまた太くなった・・・。最初の頃にあった嫌悪や憎悪の念は相当薄らいだ。昨日のことはもう気にしてはいない。だけど・・・恋愛になりそうなことは・・・したくない。
 恋愛は、こういう関わりから生じ易いことくらい知っている。その恋愛が如何に壊れ易くて不安定なものか、俺はよく分かっている。そしてそれで傷付くことがどんなに辛くて悲しくて空しいかも、嫌というほど分かっている。
 それに、潤子さんが言ったように恋愛じゃなくて友情を考えてみることも、正直俺には無理だと思う。幾ら俺が恋愛をしたくないとは言え、井上が女という歴然とした事実に変わりはない。俺が男である上、意識しないなんて無理な話だ。俺は聖人君子には程遠い只の人間なんだから。

「そう難しい顔するなって。君の音楽性からすりゃ、教えることだって十分可能だ。それに人に教えることは自分の技量と知識の整理と向上にも繋がる。」
「はあ・・・。」
「特に期限は設けないから、焦らずにやってくれ。くれぐれも彼女が初心者だってことを忘れないでくれれば良い。」

 ・・・こうなった以上後には引けない。「教える」ことに集中しよう。あくまで俺と井上は音楽を教える側と学ぶ側。その立場の違いだけだと自分に言い聞かせるしかない。意識することが止められなくなったら、俺はまた甘美な罠に嵌まってしまうだろう。これは、聖人君子の修行をするようなものかもしれない。・・・他人は大袈裟と思うだろうが。

 なし崩し的に井上に音楽の個人授業をすることになった俺は、その井上と共に帰路に就く。街灯が転々と灯る夜道にはやはり会話はない。昨日は単に話をしたくなかった俺だが、今日は何をどう話して良いか分からないから黙っている。昨日の出来事があるだけに、俺としても話し辛いものはある。
 対して井上の方は真っ直ぐ前を見て歩いている。その表情からは内に秘めたものを窺い知ることは出来ない。俺が相変わらず不機嫌そうなのが不満なのか、それとも音楽を教わる相手が俺になって緊張しているのか・・・。こういうシチュエーションはどうも苦手だ。俺が悪いことをしているような気になってしまう。

雨上がりの午後 第73回

written by Moonstone

「そ、それに・・・、俺だって弾く方は出来ても歌は自信ないです。」
「メロディは取れるだろ?それに合わせて歌う練習をしてもらえば良い。井上さんはそれで良いかい?」
「はい。」
「本人もOKしてるし、問題無いだろ?」

 ・・・他に何か断る適当な理由はないか?俺はあれこれ考える。教えるのが嫌だ、と言うのはあまりにも直接的すぎるし、それこそその後どうなるか分かったもんじゃない。俺が次の反論を思いつくより先に、マスターが俺の肩をぽんぽんと叩いて言う。

1999/12/20

 うひー、眠いです(-o-;)。更新の数は元より連載の続きが多かったので確認作業でかなり時間が掛かった上に、それが終わってから朝までチャットで遊んでましたからねぇ(をい)。兎も角、これで年内の活動が終わるわけじゃなく、クリスマス・イベント(勿論、礼賛じゃないです)や年明け最初の定期更新に向けてまだまだ製作作業が続きます。寄稿作品も一気に仕上げに掛かるつもりです。

 文芸部門の進捗速報を見て頂くと、久しく更新がなかった第2創作グループに変化がありました。「クリスマス・セール」というタイトルの作品で、12/24若しくは12/25のシャットダウン直前の公開を目指しています。クリスマス特別作品と銘打ってはいますが・・・第2創作グループの性質上、普通の「クリスマス万歳」ではないのは間違いありません(断言)。日頃クリスマス狂想曲に嫌気が差している方、迷惑や嫌な思いをした方、御期待ください。
「まあ、英語とかも多いしね・・・。でも、これを晶子ちゃんがやったら大人気間違いなしよ。」
「・・・行けるな。」
「そうでしょ?『Fly me to the moon』は特にウケるわよ、きっと。」

 マスターと潤子さんは乗り気のようだ。マスターは井上が華麗に歌う姿を想像しているのか、ちょっと口元がにやけている。だが、当の本人の意思確認と適性を忘れてやしないか?音痴で歌われる『Fly me to the moon』は雰囲気ぶち壊しだ。

「・・・井上は・・・どうなんだ?ヴォーカル。」
「歌・・・ですよね?あんまり自信ないんですよ・・・。カラオケも滅多に行かないですし・・・。」
「だそうですよ。まず、歌えるかどうかを試した方が良いと思うんですけど。」
「あ、祐司君の言うとおりね。うーん・・・。晶子ちゃん、どんな曲歌える?」
「何も無しで歌える曲って・・・直ぐには思いつかないです。」
「そうか。じゃあ・・・、祐司君に教えて貰いなさい。」

 !マスター!いきなり何を言い出すんだ?!それじゃ俺に接近するお膳立てをするようなものじゃないか!

「あら、それ良い考えね。祐司君は『Fly me to the moon』の演奏も出来るし、デュオでやれば大ウケよ。」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」
「ん?何か不満か?」
「不満も何も・・・何で俺が・・・。」
「あの曲のバックはやっぱりギターだろう。サックスだと歌の邪魔になる。ピアノは日曜限定だし、ここはギターの君が適任だろ?」

 ・・そう言われりゃそうだが・・・。だからって俺が教えなきゃならないことにはならない。俺だってカラオケなんか行かないから歌に自信と保障はない。

雨上がりの午後 第72回

written by Moonstone

「ヴォーカル?!」
「ヴォーカル・・・ですか?」
「ええ。何かおかしな事言ったかしら?」

 マスターは驚いて聞き返し、俺も意外な提案に驚きを隠せないが、カウンターの上で組んだ両手の上に顎を乗せてこっちを見る潤子さんは、至って真面目に考えているらしい。しかし、楽器の他にヴォーカルとは・・・いきなりどうしたんだろう?

「前々から思ってたのよ。ヴォーカルの人が居るともっと表現が広がるんじゃないかって。」
「・・・確かにそうだな・・・。けど、ここでやるような曲のヴォーカルは結構難しいんじゃないか?」

1999/12/19

御来場者25000人突破です!(歓喜)

 ・・・早すぎる(^^;)。昨日掲示板のレスを終えて見てみたらこうなっていたので・・・。24000人で喜んでからまだ1週間くらいしか経ってないんじゃ?・・・そ、そんな中(動揺中)本日の定期更新は4グループを更新しました。懸案だった第2創作グループと音楽部門は間に合いませんでしたが、今年中に1回は更新するように引き続き製作を進めます。うう、目が疲れるぅ、肩が凝るぅ、腰が痛いぃ・・・(T_T)。

 最近朝起きた時と平日仕事から帰宅した時に紅茶を飲むようになっています。この寒い時期温かい紅茶を飲むと目覚めが良いですし、帰宅してほっと一息という感じがしてなかなか良いです(^^)。今あるのは4種類なんですが、その中で一度も飲んだことがなかった「ウヴァ」(エヴァではない(笑))をいう種類の紅茶を試しに飲んでみました。三大銘葉の一つで豊潤な香りはストレートで飲むのに最適、ということでそのとおりにしてみました(牛乳は在庫がなかったし)。
 ・・・やっぱり美味いです(^^)。変な渋味がなくて鮮やかな色と上品な香りは最高。残りのチョコクッキーを引っ張り出してティータイムとなりました。もうティーバッグの紅茶が飲めなくなりそうな気がします(^^;)。
 5曲リクエストを受けて演奏する緊張感は相当のものだと思うが、マスターを通してみる潤子さんの表情には心地良い疲労感に柔らかい微笑みが乗っている。自分の演奏で素直に感動してもらって悪い気がする演奏者は居ないだろう。

「ありがと。そんなに誉められるとちょっと恥ずかしいわね。」
「最初の『Energy flow』で思わず泣いちゃって・・・。あんなこと初めてで私自身びっくりしました。」
「あの曲はね・・・初めて生で聞いた人は結構泣くのよ。理由はその人それぞれだと思うけど・・・その人が思うところとあの曲の演奏が共鳴するのかもしれないわね。」
「共鳴・・・ですか・・・。」
「感動するっていうのは人間らしさの一つよ。何にも感動できなくなったらその人はもう機械と変わらないわ。感動して泣いちゃったことは貴方の自然な反応だから驚くことはないわ。」
 俺も・・・愛を突然失った翌日、マスターのサックスで泣いたばかりだ。楽しかった思い出や前日のやり場のない気持ちが次々に蘇って、涙が溢れて来た。まさに心と演奏が共鳴したわけだ。

「私、今まで楽器が出来ないことを気にしなかったんですけど・・・あんな風に人を感動させることが出来るなら・・・、私も楽器を弾けるようになりたいな、って思いました。」
「大丈夫よ。晶子ちゃんにやる気があるなら、何時でも始められるわよ。」
「・・・やって・・・みようかな。」
「何事も挑戦だよ。店が終わってから練習しても良いし、持ち運びが出来るものなら貸し出しても良いよ。」

 マスターも乗り気のようだ。楽器が出来ること、をバイトの条件としてきただけに、井上だけ例外のままというのはやはり気が引けるのだろうか。マスターと潤子さんが注目する中−俺も多少は気に掛かる−井上は顔を上げて宣言する。

「私も・・・やってみます。やらせて下さい。」
「勿論だよ。じゃあ何をするかねぇ。楽器はピアノにサックスのソプラノにテナー、ギターにシンセサイザてところだが。」
「初めてやるんだから・・・やりたいものをやってみれば良いんじゃないですか?」
「おっ、祐司君、良いこと言うなぁ。やりたいものを選んで良いよ。」
「うーん。どれにしようかな・・・。」

 井上が迷っていると、潤子さんが提案を持ち掛ける。

「ねえ。楽器は勿論だけど、ヴォーカルもやってみない?」

雨上がりの午後 第71回

written by Moonstone

 結局その日は5回とも全て潤子さんが指名された。出来の良い新作があるのに出番がなかったのはちょっと複雑な心境だったが、潤子さんのピアノをゆっくり聞けたのは悪くない。井上は「Energy flow」以降はさすがに泣くことはなかったが、ピアノの音色にすっかり魅了されてしまったようで、ステージから目を離そうとはしなかった。
 あっという間に営業時間が終了して、後片付けと掃除をする。3人から4人に増えると掃除もかなり早く終わる。もっとも人が増えれば即時間短縮とはいかない。井上がよく動くのが大きいことは勿論だ。

「潤子さん、ピアノの演奏凄かったです。私感激しました。」

 片付けが終わり俺の着替えが済んでからの「仕事の後の一杯」で、井上は興奮気味に語る。

1999/12/18

 明日は今年最後の定期更新です。風邪の兆候と二日酔い(笑)を同時に受けてしまいましたが、以前(11/21)のようにPCの前に座るのもままならないということはないので(かなり気分は悪いですが)、1つでも多くの作品をお見せ出来るようにと追い込みの真っ最中です。是非ご来場ください。第2創作グループと音楽部門もどうにか更新したいのですが・・・間に合うかな?(汗)
 あと、12/23〜12/28の何処かで臨時更新をする予定ですので、定期更新がないからもう良いや、なんておっしゃらずに(笑)御来場下さい。

 携帯電話はもはや必須道具なんでしょうか?私は高周波回路に加えてデータ通信や液晶表示など、様々な機能をあの軽量筐体に集約した技術には多大な興味がありますが、生活に必須なものかは甚だ疑問です。四六時中コール音に追い回される生活に息苦しさを感じないんでしょうか?
 非常時には連絡が取れて便利だ、とは言いますが、そうそう緊急の電話が必要な非常時などあるとは思えません。待ち合わせも事前にきちんと申し合わせておけば良いことですし・・・。あからさまに自分に対して秘め事があって、さらにそれを誇示される気がするので、特に携帯電話を持っている女性は信用できません。
 常連の割合が多いし、日曜日の度に誰かが必ずリクエストするにもかかわらず、この曲が聞き飽きられる様子が無いのは、それだけ浮世の暮らしに明確か漠然かを問わず疲れを感じている人間が多いのもあるかもしれない。しかし、それよりもやはり、良い音楽を聴きたいという思いが強いのだろう。
 音は魂の振動を表現したものだという。色々な場面で精神を高揚させたり逆に沈静化させる為に音楽が使われるのは、魂の振動にダイレクトに共鳴させることが可能だから・・・というのは穿った見方だろうか?呼吸の早さが静まり、瞼の重みが増して来る。眠いわけではない。潤子さんのこの演奏を聞く度に感じる・・・眠りに落ちる前に優しく身体を揺すられるような心地良さだ。魂の振動と音が共鳴しているのをまさに魂で感じる。

「・・・凄い・・・。」

 井上がぽつりと呟く。割と饒舌な方だと思う井上も言葉が見付からないのだろうか?良いものを言葉で表現するのは意外に難しい。詩的な表現を探すより、凄いとか奇麗とか、そんな単純な一言で十分だと思う。思うままの一言や拍手こそ、演奏する者に対する何よりの称賛になるものだ。

 最後の音が空気に溶けて行く。潤子さんが鍵盤から指を離して顔を上げると同時に拍手の嵐が起る。事情を知らない人間が居合わせたら驚くのは間違いない拍手だが、潤子さんのこの曲の演奏の度にこんな光景が繰り返されるのはさらに驚異的なことだ。当の潤子さんは惜しみない拍手を贈る客席にぺこりと頭を下げる。演奏に自信を持つだけにおどおどしたところはなく、それでいて高慢な様子はない。
 いつもながら非の付けようがない演奏に拍手を贈る俺はふと隣の井上を見る。すると・・・泣いていた。その場に立ち尽くし、ステージを真っ直ぐに見詰めて・・・。

「涙が・・・止まらない・・・。」
「・・・。」
「何故か分からないけど・・・どうして良いか・・・分からない・・・。」

 涙を拭わず、ステージに視線を打ち付けたまま井上は途切れ途切れに呟く。恐らく初めて感じる魂の共鳴に実感が掴めないまま翻弄されているんだろう。だが、良いもので感動できるなら、その方がずっと良い。感動できるのは魂が死に絶えていない証拠だから。

雨上がりの午後 第70回

written by Moonstone

 メロディがアルペジオに乗って先程までとは打って変わって静まった客席に流れ始める。この店にある視線の全てが、優しい音の源泉であるピアノに注がれる。音の波がゆったりと、時に強く耳に寄せては返す。手付かずの浜辺に佇み、潮騒に戯れる・・・そんな表現がぴったりだ。
 「癒しの曲」としてインストルメンタルでは驚異的な人気を博したこの曲の魅力は、幅広い音域と音量の和音を奏でることが出来るピアノならではの能力を最大限に生かしているところにあると思う。逆に言えば、この曲で人を満足させるには、ピアノを弾きこなせるだけの力量が要求されるということだ。

1999/12/17

 い、いかん。喉が痛くて食べ物などが引っ掛かる感触あり。長年の経験から考えて明らかに風邪の予兆です。直前に風邪で寝込んで定期更新を見送った(みっともないよなぁ)11/21の繰り返しはしたくないんですが・・・。
 やっぱり無茶な生活リズムが影響してるんでしょうか?早めに矯正するべきとは分かってますが、作品製作したりこの日記と連載書いたり、他のページにお邪魔してCGに見とれたり、掲示板に書き込んだり(笑)してますから、これがなかなか(をい)。

 最近入り浸っている感のある(笑)CG系のページでは、プロフィール欄をよく目にしてそれを結構読んでしまいます。一応日記を標榜しているこのコーナーもコンスタントにリスナーを増やしていることからしても、そのページを運営している管理人の人となりを知りたい、ということなんでしょうか?
 私のプロフィール・・・。大して見所はないと思いますが、昨日挙げたページ改装の一環として考えてみます。でも、何処に置くかがこれまた問題なんですよね(苦笑)。新しくコンテンツを用意するのも何ですし・・・どうしましょ?
 あっという間に恒例のリクエストの時間がやって来た。男性客はライブ会場のような興奮すら見せている。勿論狙いは日曜限定の潤子さんのピアノだ。マスターが事前の説明で井上が楽器が出来ないことを説明したから多少興奮は収まったが、これで井上が楽器が出来るようになればどうなるか、想像すると少し怖い。
 全てのテーブル席が埋まる賑わいもあってリクエスト権は5つ。そのうち先頭を引き当てた高校生らしい男子グループは一斉に立ち上がってバンザイする始末だ。まあ、潤子さんのピアノを聞いたことがある奴ならその異常とも思える喜びようは分からないでもない。全てのリクエスト権が決まり、早速先頭のリクエスト権を獲得したグループがマスターの司会で緊張と興奮の様子で立ち上がり、声を合わせてリクエストする。

「「「潤子さんの、『Energy flow』をお願いしますっ!!」」」

 他の客からも拍手と歓声が上がる。初めての井上は何事が起ったのかと客席を頻りに見回している。無理もない。俺も最初にこの光景に遭遇した時は何が始まるのかと動揺したものだ。

「ど、どうしてこんなに盛り上がるんですか?」
「潤子さんのピアノは日曜限定だからな。腕のほどは聞いてみりゃ分かる。」
「それにしても凄い人気ですね・・・。」
「潤子さんのピアノ聞きたさに来る客も多いからな。」

 カウンターの方で水を飲んで一息つきながら、俺と井上は物凄い盛り上がりを見せる客席を眺めている。こうして並んで居るのも、今日は気にならない。バイトが始まってからは忙しくて、話をするどころか一息入れることもおぼつかなかった。一時は顔を見るのもうんざりしていたのが不思議にすら思える。
 リクエストされた潤子さんが、はにかんだ笑みを浮かべながらステージに上がる。外したエプロンをマスターに持ってもらうあたりは、さり気なくて嫌みがない。1週間に1度だけ封印を説かれるピアノの前に座り、髪を後ろに靡かせると、潤子さんは鍵盤に添えた指を動かし始める・・・。

雨上がりの午後 第69回

 今日のバイトは瞬く間に時間が流れて行くという表現がぴったりだ。
新しく加わった「顔」を見に来たらしい男性客、特に塾帰りの中高生でごった返し、俺やマスターはキッチンで出来た料理が置かれるカウンターと客席を何度往復したか判らない。
 勿論、料理を担当する潤子さんや井上はてんてこまいだ。井上は客寄せと注文の上積みを狙ったマスターの策略で、注文取りにも回る。男性客は面白いように注文を上乗せする。多く注文したからと言って気を引けるとは思えないが、そうしてしまうのは悲しい性というところか。

1999/12/16

 これからこのページで行う(予定)のことを挙げていきますと・・・まずは12/19の定期更新。どーんと一気に大放出(バーゲンの見出しかい(笑))と行きたいところです。他にはリンクの整理。あいうえお+ABC順に並べてるだけなんで、ある程度ジャンル分けするつもりです。
 他は・・・各グループの整備ですね。トップは最近頻繁に背景を代えてますが、各グループはどれも似たり寄ったりの構成でメリハリが無いので、形式上あるだけだった感のある「担当」をキャラのCGを創ったりしてもっと差別化すると、独自性が出るかなと考えてます。・・・作業量が膨大になりそうな予感(- -;)。第一、記念企画のCGですらまだ1枚も描けてないのというのに。・・・はあ(溜め息)。ま、出来るところから少しずつ進めていきます。

 今日の連載は、切りの良いところまで進めたかったのでちょっと長めです。ようやく恋愛ものらしい雰囲気が出て来たと思います(笑)。最後の方はありがちかもしれませんけど、一度やってみたかったんです。他の作風と全然似てない?・・・確かにそうですね(同感)。でも「マヤちゃん、ふぁいとぉ!PAC編」はもっと違いますよ(笑)。

「忘れてたんです。安藤さんが辛い思いをしてまだ気持ちの整理が出来てないってこと・・・。それなのによく考えもせずにあんなこと言っちゃって・・・。」
「・・・。」
「あれは私が押し付けがましくならないようにするって自戒のつもりで言ったんで、本当に安藤さんが悪いなんて言うつもりはなかったんです。・・・言い訳かもしれませんけど。でも、結果的に怒らせてしまったことは謝りたいんです。すみませんでした・・・。」

 井上はもう一度頭を下げる。先に頭を下げるのは俺の方だ。幾ら触れられるとまだ痛む腫れ物に触れられたからって、あんな極端な態度に出て良いなんて理屈はないんだから。

「・・・いや、良いよ。昨日は・・・俺が悪かったと思う。言い過ぎたし・・・怒鳴ることなんてなかった。」
「・・・。」
「俺・・・ちょっと神経質になってるっていうか・・・あのことを言われるとどうしても過敏に反応してしまうんだ。確かにまだ気持ちの整理がついてないし、思い出したくないことには間違いない。けど・・・文脈の前後を考えれば俺を責めてるわけじゃないって簡単に分かることなのに・・・勢いに任せて怒鳴り付けてしまって・・・。」

 俺は注意深く言葉を選びながら、思うことを少しずつ紡ぎ出す。今度はもう暴走は許されない。自分の内側を見詰めながら、ゆっくりと、ゆっくりと・・・。

「今日・・・あれで此処に来るのが嫌に思ったらどうしようかって不安だった。けど・・・来てて安心した。・・・昨日は・・・悪かった。」

 井上は俺を責め立てると思ったら、柔らかい笑みを浮かべながら首を横に振る。どうして・・・俺を責めないんだろう?あんな酷い言い方をされたら、多少なりとも不快に感じてもおかしくないのに。・・・俺に嫌われまい、と無理をしてるんだろうか?

「私も安心しました。もう怒ってなかったから。それに私のことまで気にしてくれて・・・嬉しいです。」
「あんな事言われて・・・本当に嫌にならなかったのか?」
「なりませんよ。だって私・・・此処のバイトもマスターも潤子さんも好きだし・・・それに安藤さんも・・・好きだから・・・。

 ・・・最後の方は消え入るような声だったけど・・・俺にははっきり聞こえた。

雨上がりの午後 第68回

 俺は井上の直ぐ近くまで来ると言葉を失う。頭の中では昨日のことを謝ろうと考えていたんだが、本人を目の前にするとどうしても気まずい。意識し過ぎかもしれないが、昨日が昨日だけにどう出て良いのか分からない。
 兎に角平身低頭で謝罪するか・・・本来そうすべきなのだろうが、まだ何か心に引っ掛かりがあるというか、まだ癒えない傷に触れられたことに蟠りがある。じゃあ昨日はゴメン、という感じであっさり済ませるか・・・昨日の言動をそんな簡単に済ませられるとは思えない。

「昨日は・・・すみませんでした。」

 どうやって切り出そうかとあれこれ考えていると、井上が先手を取って・・・何故か謝る。さっきの潤子さんじゃないけど・・・何で謝るんだ?

1999/12/15

 どうにか落とさずに続けている連載「雨上がりの午後」、最初から読まれている方は「これって本当に恋愛ものなのか?」と思われるかもしれませんが、一応そのつもりです(をい)。恋愛ものではそこに至るまでの過程を重視したいと日頃から考えていますので、ラブラブがお好きな方は進展が遅いとやきもきされるかもしれませんが、その辺はご容赦ください(_ _)。この調子だとかなりの長丁場になることは間違い無いようですが(^^;)。

 某知事のセクハラ訴訟で判決が下りました。それに関しての論述はしませんが、セクハラに関しては思うことがありますので少々。セクハラの広域定義(自分が不快と思った行為)に依れば、昨日触れた、私が受けた「侮辱」なんてのも見事にセクハラなんですよね。ある女性に彼女も居ないのにクリスマス・イブに何で休むの〜?と言われたんですから。
 これは立場が逆なら間違いなくセクハラ扱いでしょうが、この様な場合男性がセクハラと主張することはないでしょう。「男のくせに」とか「事実だから仕方ない」とか言われて損をするのがオチです。男が言うとセクハラで女が言うと事実の指摘・・・。男女平等や男女同権って、そういうことには適用されないんでしょうか?
 兎も角直前になって休むなんて言うわけにはいかない。俺は身支度を整えると重い足取りで外に出る。今日は昨日にもまして寒い。何だか井上に責められるようで余計に辛く感じる俺は、首に巻き付けたマフラーに首を埋めて足早に店へ向かう。
 店へ近付くにつれて自ずと足取りが重くなる。井上は来ているんだろうか?昨夜の俺の態度で嫌になっても仕方が無い。俺は・・・マスターや潤子さんに、そして何より井上に何て謝れば良いんだろう?付き合うとかそういう問題じゃない。いきなり感情に任せて怒鳴り付けるなんて、どう考えてもまともじゃない。・・・俺は本当にどうかしちまったようだ。
 ドアの前に立った俺は開けるのをどうしても躊躇う。いきなり叱責の言葉が跳んで来るかもしれない。・・・だが、俺が蒔いた種なんだから・・・仕方が無い。覚悟を決めて俺はドアを開けて中に入る。

「・・・こんにちは。」
「あ、祐司君。待ってたのよ。」

 何と出迎えたのはマスターじゃなくて潤子さんだった。潤子さんはキッチンに立てる人間を期待していただけに、井上が居なくなったら一番困るだろうし、その原因を作った俺に怒っても無理はない。潤子さんの怒ったところなんて見たことないが、普段怒らない人が怒った時はそれはもう凄いことになるという。ここはもうひたすら謝るしかない。

「す、すみませんでした。」
「・・・な、何で謝るの?」
「え?」
「晶子ちゃんが話したいことがあるからって・・・、私はそれを伝えようとしただけなんだけど。・・・何かあったの?」

 話したいこと?じゃあ、井上はちゃんと来てるのか・・・。緊張の糸が切れた俺は溜め息と共に胸を撫で下ろす。潤子さんは怪訝そうに首を傾げる。

「で・・・、井上・・・さんは何処に?」
「奥で待ってるわ。かなり前から来てるから、早く行ってあげて。」
「は、はい。」

 俺はカウンターの出入り口を通って奥へ向かう。いつも着替える時に通る廊下を走ると直ぐに・・・更衣室のドアの壁に凭れている井上の姿が見えた。井上は俺の騒々しい足音に気付いたのか、こっちを見て何だか安心したような表情を見せる。・・・安心するのは俺の方なのに・・・。

雨上がりの午後 第67回

written by Moonstone

 ・・・翌日。バイトへ行く時間が近付いてきたが身体が重い。具合が悪いわけじゃなくて・・・そう、昨日の帰り道のことだ。あの時、井上が「気持ちの押し売り」と言ったことが、あの記憶は自分に非があると言われているように思えた俺は、一気に怒りを爆発させて井上を怒鳴り付けて走り去った。どうして「被害者」の俺が追い討ちを掛けられなきゃならないんだ、会って一月も経ってない奴に何が分かる、という気持ちだけでまくし立てた。
 だが・・・今日目覚めてから改めて考えてみると、激しい後悔と自責の念が心にずっしりと積み重なる。井上が言った「気持ちの押し売り」とは・・・井上自身が自戒の為に言ったことなんだ。それまでの流れを思い返してみれば容易に分かるし、怒鳴り散らすようなことじゃない。なのに・・・。

1999/12/14

 御来場者24000人突破です!(歓喜)12/12は定期更新の谷間ということもあって更新の規模は小さめでしたが、それでも「どこっ」と増えまして、あら驚いた(^^;)。更新するとしないとで御来場者数に明確な差が出来るというのは、検索ページなどでチェックされているということでしょうか?

 12/12の更新で告示したとおり、12/25、26両日を勝手ながらシャットダウンさせて頂きます。目的は勿論、「Moonlight PAC Edition」で既報のとおり、第1SSグループが出品作品の原作を担当したということで、その購入も兼ねてお邪魔することにしたからです。冬のコミケってこの時期にするんですね。初めて知りました(笑)。
 しかし・・・特定の相手が居ないのにクリスマス前後に休んだり出掛けたりすることが、侮辱の対象になるなんて思わなかったですね(怒)。これだから嫌いなんですよ、クリスマス狂想曲は。・・・まあ、近いうちにバブルの幻想に浮かれるこの乱痴気騒ぎを風刺して見せましょう(-ー-)。文芸部門の進捗速報をご覧くださいませ。
 「予兆」の段階であの女の気持ちはもう、俺の方を向いていなかったのなら・・・俺がどれだけ必死になって繋ぎ止めようとしたところで、それはあの女にとって気持ちの「押し売り」でしかなかったということか・・・?もしそうだとしたら・・・それからあの日までの俺は一体何をしてたんだろう?まさにピエロそのものじゃないか・・・。
 そんなの・・・勝手過ぎる!俺は真剣だったんだ。ガキの戯言だと言われようが、俺は本気であの女と結婚したいと思っていた。なのにあの女は、身近な相手に勝手に乗り換えて俺との関係を一方的に破棄したんだ。あの3年ほどの間に費やしたエネルギーは一体何だったんだ?別れたくないとひたむきになったことを、相手が迷惑がってたのに押し付けがましかったって反省しろというのか?
 俺の中でふつふつと感情が泡を立てて沸騰し始める。以前心の中を荒れ狂った黒い業火と同じものが、僅かに再生しつつあった心を焼き、憎しみの烙印を刻み込む。否定のペンキで塗り潰そうとしても出来なかった親近感の浮き彫りすらも、簡単に飲み込んでしまう。

「・・・押し売りで悪かったな。」
「え?」
「捨てられた俺が、何で反省しなきゃならないんだ?!捨てられた方が悪いって言うのか?!」

 思わず俺は井上にまくし立てる。街灯が僅かに存在感を醸し出す闇に怒声が走る。井上がびくっと身を震わせる。まさか俺が怒るとは思わなかったんだろう。だが・・・、俺は許せない。

「あの女が勝手に俺を裏切ったんだ。一旦よりを戻した振りまでしてな。なのに結局は俺が悪いのか?女一人繋ぎ止められなかった俺が悪いって言うのか?!」
「ち、違う。私、そんなつもりじゃ・・・。」

 井上は俺の突然の怒り様に狼狽した様子だ。首を細かく横に振りながら否定する。だが、前以上に感情が暴走する俺はもう止められない。

「どいつもこいつも俺の気持ちも知らないで悪者扱いしやがって!外見で終始優位に色恋沙汰を展開できる人間に何が分かる!」

何でそこまで言うんだ、俺は。
「ちょっとは無残に捨てられた人間の気持ちも考えろ!」
誰か・・・止めてくれ!

雨上がりの午後 第66回

written by Moonstone

 ゆっくりで良い・・・。こんな言葉、随分久しぶりに聞くような気がする。何かと早く早く、急げ急げと言われ、それが普通と思い込まされていたように思う。そんな時にゆっくり、なんて言葉を聞くとやけに新鮮に感じる。

「気持ちが向き合わなきゃ恋愛にはならないってことくらい、分かってますよ。結果がどうであれ、その過程で時間が必要だってことも分かってますから。」
「・・・。」
「相手の気持ちが自分の方を向いてないのに自分の気持ちを受け入れろって言っても、それは気持ちの押し売りですからね。そういうことはしたくないんです。」

 気持ちの押し売り・・・。その言葉を聞いて俺は、ほんの1週間ほど前に心に刻まれたあの記憶とその「予兆」とも言える時のことを思い出す。

1999/12/13

 日曜はかなり忙しい一日でした。次の定期更新準備は勿論、感想メールの返信書き、お礼のメール・・・。かなりの時間ネットに繋いでました。電話代がちょっと心配です(^^;)。本当に最近はネットに繋ぐ時間が増えたな〜。ページを開設した時とは雲泥の差です。

 私はプロスポーツにはあまり興味が無いのですが、金に物を言わせてベテラン選手を掻き集める某プロ野球球団の行動には、ニュースなどで見る度に嫌悪感を感じます。「実力社会では当然だ」と言われるかもしれませんが、選手を育てるという意識はないんでしょうか?孤軍奮闘した若手投手をはじめとする生え抜きの選手をもっと厚遇するべきだと思うんですが。
 この球団の行動は、今の日本、とりわけ不況だからとリストラを口実に解雇しまくる大企業を象徴しているように思えます。多数と人気に安住して人を育てることをせず、他で成長した「即戦力」を金で掻き集めて地道な努力をするものを「使えない」として簡単に冷遇する・・・。成る程、リストラを応援するマスコミがどれもこれもこの球団を応援する理由が分かるというものです(キツイかな)。
 ・・・予想外だ。俺は冷たくすれば脈が無いと思って諦めると思っていたんだが、それが逆に井上にとっては、下心がないと−話の内容からして多分感じてはいるんだろう−安心させる材料になっていたなんて・・・。井上は井上で予想どおりというか、その外見に釣られてふらふらと寄って来る男が多くて辟易していたわけだ。そこに今までと違って、言い寄るどころか避けようとする俺は、逆に新鮮に移ったというわけか・・・。
 こんなことを予想できなかったとは言え、本当に俺には運が無い。永遠の絆を信じた相手には呆気なく御破算にされ、それを教訓に自分に近付けまいとした相手には逆に引き付けるように仕向けてしまうなんて・・・。

「その興味がだんだんとエスカレートして・・・。私、一旦これと思ったら他のことが見えなくなるタイプなんで、伊東さんって人に住所を教えてもらおうとしたり、同じ電車に乗るからこの近辺に住んでるかなって思って町中歩き回ったり、偶然見つけた安藤さんのバイト先に無理にお願いして、バイトさせてもらうことにしたり・・・。私と同じ音楽を聞いたりするみたいで、ちょっと嬉しいなっていうのもあるんですけど。」
「・・・『AZURE』とか聞くのか?」
「ええ。ソロ用にアレンジされてましたけど、メロディを聞いたら分かりましたよ。」

 同じ音楽を聴く・・・。音楽に限らず、同じ思考を持つ相手には多少なりとも好印象や親近感を持つものだ。俺は全くそうではないと言えば・・・嘘になる。今、賢明に否定しようとするが、それも上手くいかない。どんなに否定のペンキで懸命に塗り潰そうとしても、心に現れた親近感の微かな浮き彫りはペンキを弾く。俺は・・・このまま井上に引き寄せられて行くのか・・・?

また、あの苦い記憶を作る羽目になってもか?!

「・・・同じ音楽を聞くからって・・・気持ちが同じになるとは限らないぞ。」

 あの記憶の味を思い出した俺の心は、鮮明になって来る親近感の浮き彫りに抗う言葉を紡ぎださせる。・・・嫌な言い方だ。だが、こうでもしないと浮き彫りの進行を止められない。だが、井上は表情を曇らせることはない。

「・・・ゆっくりで・・・良いんです。」

雨上がりの午後 第65回

written by Moonstone

 大体、下心のないナンパなんてないだろう。井上は本当に世間知らずなところがあるようだ。カマトトぶりも案外本当なのかもしれない。そんなことを思っていると、井上は俺を見ながらしんみりとした口調で話す。

「・・・安藤さんに興味を持ったのは、兄に似ているからっていうのも理由の一つではあります。でも、それだけじゃなくて・・・。今までの男の人と違って、私に特別に優しくしたりしないから安心できるって言うか・・・。それが大きな理由なんです。」

1999/12/12

 今日の更新は定期更新の谷間ということで作品数から見れば小規模です(ここで一気に出すと次が困る・・・ってそんなに出来てませんが(をい))。ただ、今回はご覧のとおり、各グループのアイコン(ロゴ)を一新しました。
 一時は嫌になって止めたのですが、気を取り直して再び挑戦。試行錯誤すること数時間でようやく揃いました。前よりちょっとロゴらしくなったかなと思います。背景の色をちょくちょく変える方なので、「明るい色+影つき」のロゴが欲しかったのですが、私にとっては新連載の企画を考える時と同じくらい大変です(それ以上かも)。

 今日もやっぱりラジオを聞きながら製作(ロゴを含む)していましたが、ある番組でぴたっと手が止まりました。「クリスマスはやっぱり好きな人と一緒に過ごしたいと思うよね?」と女性DJがのたまったのです。思わず私はラジオに向かって一言。勝手に一般常識にするな(怒)。別にクリスマスはキリスト教の行事だとか、「本場」ではこんな乱痴気騒ぎはしないと講釈する気はありませんが、誰もが彼氏彼女を欲しがっていると思ったら大間違いです。
 元々そんな気はないのですが、当ページでクリスマス企画をしようなどとは全く思いません。普段どおりに御来場頂き、作品を御覧頂けるページとして運営していきます。第2創作グループで読み切りのネタにするかもしれませんが、グループの方針を知っている方ならどうなるか、お分かりでしょうね(笑)。

「・・・何でそこまで俺にこだわるんだ?」
「え?」
「別にあんたの兄貴に似てることに拘らなければ、もっと良い男はいっぱい居るんじゃないか?」

 何度冷たくあしらわれても諦めずに食い下がり、とうとうバイト先まで突き止めて、あろうことか同じ所でバイトを始めてしまった。幾らブラコンでもそこまではしないだろう。何かもっと別の理由があると考えた方が自然だ。
 井上は俺の顔を見て少し驚いた様子を見せる。・・・そうか。俺の方から問い掛けたのはもしかすると初めてかもしれない。いつも井上の方から一方的に話し掛けて俺がそれに事務的に答えるか突っ撥ねるか、どちらかだったように思う。

「見た目だけで言えばそれなりに居ますよ。」
「・・・。」
「あ、ご、御免なさい。そんなつもりじゃなかったんです。」
「良い。自分で分かってるから。それよりその先は?」

 平静を装うが、まだ気を許したわけではない相手に、見た目では劣ることを暗に言われて、少々腹が立つ。まあ、今回は目を瞑ろう。もっと良い男が居るだろうと行程を誘うようなことを言った俺にも多少原因があるし、まだ肝心の答えを聞いていない。

「大学に入ってから時々誘われて、話をしたことはあるんですけど・・・何て言うか・・・そういう人達って大抵、流行の音楽とかファッションとかの話をするんですよね。私、そういうのに興味が無いからただ聞いてるだけなんです。そうしてると相手の人はつまらないらしくて、それっきりで終わるんです。」
「もっと自分の分かる話をされれば付き合っても良いって思った訳?」
「思わないですよ。どうして私に声を掛けたんですかって聞いたら決まって、見た目で声を掛けたくなったって言われて・・・。じゃあ、見た目が今の私じゃなかった声を掛けなかったんですか、って聞いたら困ったような顔をするんですよ。」

 そりゃ困るだろう。ナンパは見た目から入るのが当然だ。相手の思考や性格を把握してから声を掛けるナンパなんて、聞いたこともない。

雨上がりの午後 第64回

written by Moonstone

 寒くなって来ると空は賑やかになって来る。多少の知識があれば多くの人間が認識できる数少ない星座の一つであろうオリオン座も、丁度バイトから帰宅する時間くらいに見上げることが出来るようになる。
 こうしていると自発的な頭の火照りも自然と収まって来る。俺は改めて、否、初めて井上とまともに話すことが出来ると思う。そうすると、やはりまず聞いておきたいことがある。

1999/12/11

 明日は定期更新ではないのですが、その次の12/19が今年最後の定期更新という位置づけなので、その準備を急ピッチで進めています。「中継ぎ」というといい加減な印象を持たれるかもしれませんが、明日はその「中継ぎ」で作品を小出ししたいと思っています。仮眠もとりましたし(またやってる)。

 昨日付の更新で今までのリンクとは全く違う傾向のwebページにリンクを設置しました。「encyclopedia of tea」は文字通り紅茶のwebページです。最近の紅茶への入れ込みがとうとうリンクにまで及んでしまったということです(^^;)。
 ただ、全く芸術に関係しないかというと決してそうではないですし、むしろ相応しいと思います。以前ここでお話しましたが、料理は五感を駆使して出来る芸術だと私は考えています。今までは目(小説とCG、写真)と耳(MIDI)だけでしかが、このページでは味と匂いが分かります(紅茶ですからね)。こういう面白い趣向のページも見つけ次第、リンクを設置して行こうと思います。一応このページは「芸術」を看板に掲げていますから(その割には視覚的に情けないほど劣るよなぁ(泣))。
 ・・・また邪推を始めてしまった。やはり「先約」の存在か・・・。俺の感覚としては「先約」が居れば他の異性との交流は避けるのが当然だと思っているのだが、あの女と同様、幅広く手を伸ばして一番良いものを選ぼうというわけか。
 ・・・結構な御身分だ。やっぱり恋愛は男より女、見てくれが良い方が断然有利に事を運べるというわけか。外見より中身、なんてのは奇麗事でしかない。少なくとも恋愛においては。

・・・だから、俺には関係ないんだって!

 俺は意識を恋愛とその遠因である井上から逸らそうと、星空を見上げる。此処は割と新しい住宅街で、夜ともなれば待ちを縦断する幹線道路を除いて交通量は大きく減る。星空を見上げる時は静かな方が良い。もしかすると無意識に遥か彼方から届く異世界の音を聞こうとしているせいかもしれない。

「星空をこうしてゆっくり見上げるなんて、久しぶりです・・・。」

 井上が少し感傷に浸ったような口調で言う。バイトをしていなくてもコンパへ言ったり夜遊びしたりすれば、星空を見るのは簡単な筈なのに−夜明けを見ることだって不可能じゃないだろう−。カマトトぶってもお見通しだということに気付いていないのか?それとも・・・本当なんだろうか?

「私、大学から帰ったら殆ど家に居たんです。バイトもしてないですし、クラスの娘とそんなに親しいわけじゃないんで、遊びに行くこともなかったんで。」
「・・・。」
「安藤さんと初めてあった日は、たまたま買いそびれた雑誌を思い出して、その途中でお茶菓子も買おうと思って・・・。今まではそれが普通だったし、それ以外にすることが思いつかなかったんですけど、マスターと潤子さんに無理にお願いしてバイトをさせてもらうようになって、こんな楽しい世界もあるんだな、って分かったんです。」

 新鮮な体験だったというわけか?その割にそんな様子が見えなかったから直ぐにはいそうですか、とは信じられない。だが、星空の下で宇宙の音を聞きながら身の上話をするのも・・・悪くはない。

雨上がりの午後 第63回

written by Moonstone

「でも、バイトは夜だけだから、昼間は時間が空きますよね?」
「・・・そう、だけど?」
「今の私はそれで十分なんです。そんなに出かける方じゃないですし。」

 それは妙な話だ。遠距離恋愛もそうだし、そうでなくても時間の都合がつき易い土日は空けておくのが常識なのに、さらに出かけることも少ないという。付き合っていれば、休みの日には何処かへ出かけたいと思ってせがむものじゃないか?それとも普段、大学とかで顔を合わせられるから十分だということか?

1999/12/10

 昨日は更新が未明にまでずれ込んでしまいました(でも、見れるようになったのは何故か昼頃(^^;))。昨日の箇条書き(笑)にもありますとおり、プロバイダのサーバーのトラブルでアップロードそのものが不可能な状況下にあり、復旧までに時間が掛かったこと、それまでにこのコーナーを準備せずに眠ってしまった(またか)ことが原因です。以上、弁明でした(_ _)。

 しかし・・・同じく昨日の箇条書きにありますが、私のデザイン能力がどれほど貧弱なものか、改めて思い知らされました。貧弱どころじゃなくて皆無ですな(- -;)。イメージとしてはあるんですが、それを形にするのはまるで駄目。いい加減嫌になって止めました。今は完全にやる気がありません。
 やっぱり羨ましいんですよね。奇麗なデザインやアイコンが・・・。特に最近多くリンクするようになったCG系のページは、それに加えて私が到底描けないようなCGがそれこそ無数にあって、余計に自分のページがみすぼらしく見えるんです。そしてそれらに少しでも近付けようとしても全く思い通りに出来ないので、嫌になってしまう、と・・・。そういう訳です。
 普段だったら、無いなら無いで、出来ないなら出来ないで良いや、と簡単に割り切れるんですが(執着があまりない?)、今回はそれが出来ません。アイコンやデザインを請け負ってくれる方を募集しようかと本気で考え始めています。プロフィールなどで仕事募集中、とあるページを結構目にするんですが、個人単位の文字通り個人的な仕事を請け負ってくれるんでしょうか?もっと大口の仕事か、出版社とかじゃないと駄目かな、やっぱり(溜め息)。
 井上はベージュのハーフコートを羽織り、紺色のマフラーを巻いている。何処にでも売っているようなものだ。さっき店で言っていたがブランドとかには興味が無いらしい。そういう話題についていけなくてクラスの中でちょっと浮いてしまってる、と笑っていた。女は男以上に集団意識と排他意識が強いというが、それでも存在が浮いたことを笑えるとは大した物だ。神経の強靭さは本物だと思う。・・・単に鈍いだけかも知れないが。

「私、今までバイトはしたことないんですよ。」
「・・・そうには思えんかったが・・・。」
「探したんですけどこれ、って思うのが無くて・・・。やっぱりバイトするなら長く続けられる方が良いですし、あんまり妥協したくなかったんで・・・。」
「一人暮らし・・・だったよな?仕送りとかでやって行けるんだったら別にしなくても良いんじゃないか?」
「親もそう言ったんですけど・・・何でも親に頼ってばかりじゃいけないと思って。」

 それはもっともだ。だが、俺ほど切実な事情が無いからバイト選びに高い理想を持つ様は贅沢に思える。俺自身今のバイトは本当に幸運だったと思っている。多分今後、宝籤には当たらないだろう。
 それよりも井上は、土日も来るということはそうそう遠出は出来ないことになると分かっているんだろうか?俺は趣味の研鑚結果を披露できて金になるから気にならないが、普通の奴には結構堪える筈だ。「先約」があるなら最低でも土日のどちらか一方は空けておくのは必須だ。経験者が言うんだからこれは間違いない。

「でも良いのか?安請け合いして。」
「何がですか?」
「今日はもう終わったけど、これから土日もずっと来るってことだよ。空けとかなくて良いのか?」
「ええ。何も問題ないですけど。」
「何で・・・?」

 遠回しに言ったのが悪かったか、井上は意味が分かってないらしい。もっと直接的に言おうと思ったが既のところで思い止まる。まるで、井上に男が居るかどうかを詮索しているみたいだからだ。そんな事を知っても俺には何の関係も無い筈だ。否、関係ないに決まってる。

「・・・あんたも俺と同じで、土日は暇ってことか。」
「そういうことになるんですね?」

 遠距離恋愛か?・・・って、どうしてまだ気にする?俺には関係ないと思ってはみても、やっぱり「先約」のことが気になるんだろうか?どうして・・・?

雨上がりの午後 第62回

 何を馬鹿なことを・・・。本当に俺は馬鹿なんじゃないだろうか?井上が誰とどうだろうが俺の範疇じゃないし、それよりも前に、恋愛や女を意識しないようにするんじゃなかったのか?・・・全く・・・懲りないというか、覚えが悪いというか・・・。

「良いお店ですよね。『Dandelion Hill』って。」
「・・・あ、ああ・・・。」

 突然井上が話し掛けて来たので、反射的に相槌を打つ。当然だが俺の葛藤など知る由も無い井上は、余程バイトが気に入ったのか、それとも俺を四六時中捕捉できる状況が構築できて満足なのか、見るからに嬉しそうだ。

1999/12/9

問い:最近辛いと思うことを箇条書きにせよ

以下、某氏の解答例である。
  • はうっ、Visual C++ややこし過ぎる。関数も引数も暗号にしか見えんぞ(泣)。MS-DOS版のC++でも散々な目に遭わされたというのに、より一層ややこしくなりおって(号泣)。こりゃ、また越年仕事だな・・・。
  • FTPが出来ないでやんの。サーバーがおかしくなったらしいが、ディレクトリが何にも出てこないんじゃどうしようも無い(泣)。ま、不可抗力だから諦めるしかないか。ふぅ(溜め息)。
  • どう見ても見栄えが良くない(と言うか悪い)このページをどうにかすべく、新しいロゴやアイコンのデザインを始めた。苦闘3時間・・・ろくなものが出来やしない(怒)。はっきり言ってどうしようもないレベルだと我ながら実感する。・・・本気でデザイン依頼しようかと思う今日この頃である。
評:解答者は不幸続きで相当の精神的ダメージを負っていると思われる。それもFTP以外の重要なことが、全て自身の無能力に起因することを承知しているだけに尚更だろう。一刻も早いリハビリが必要であると思われる。

悪い時には悪いことが重なるって、本当ですね〜(自棄気味)。

(この後、FTPはA.M.2:30頃の仮眠後(をい)のチェックで可能になっていました)。

「井上さんと話してたんだけど、このバイトは気に入ったそうだ。」
「・・・そうですか。」
「ええ。お客さんも気の良い人ばかりだし、店の雰囲気も凄く良いし・・・。」
「そういう訳で引き続き晶子ちゃんにはバイトを続けてもらうことになったから、祐司君は先輩として色々教えてあげてね。」
「は、はい・・・。」

 教えると言っても今日の様子を見ていた限りでは、俺の出る幕はなさそうだ。初日にしてすっかりこの店の新しい「顔」になったといっても過言じゃない。おっかなびっくりだった俺とはえらい違いだ。
「それにしても丁度良かったわ。調理と接客が出来る人が一人欲しかったところなのよ。」
「・・・週何日なんですか?」
「え?祐司君と同じ。」
「同じって・・・。」
「この店のお休み以外、毎日来てくれるのよ。」
「そういう訳なんで、これからも宜しくお願いしますね。」

 ・・・俺はもう、井上から完全に逃げられない状況に置かれたことが決まった。これから毎日、意識しないことを意識する−妙な言い方だが−日々が続くのかと思うと気が重くなる。智一が知ったら泣いて悔しがるかもしれないが・・・。

 コーヒーを飲み終えた俺は何時ものように帰途に着く。だが、これまでと違うのは、隣に井上が居ることだ。昨日は逃げ出したが、今日はそういう訳にもいかない。一人でさっさと帰ろうとした俺に、マスターが「彼女を送って行ってやれよ」と押し付けたからだ。同じバイトの人間−「仲間」とは言わないでおく−という立場になった以上、無下にするわけにもいかない。
 俺の頭の中でまだ「既に予約されている」という、井上が口説いて来た学生連中に切り返した時の台詞の断片が引っ掛かっている。意識しないようにしようと思えば思うほど、断片がより形を大きくして離れようとしない。井上が誰と付き合おうが寝ていようが、俺には関係のないことのなずなのに・・・。他の男に「予約」されているのに近付いて来たのが嫌なのか?それは勿論だ。でも・・・その中に含まれた意味は単に二股が許せないという義憤だけだろうか?

予約無しで近付いて来て欲しいと思ってやしないか?

雨上がりの午後 第61回

 俺は小さい溜め息一つ吐いて、谷間の席に座る。周囲が何を言おうとどうしようと、俺が意識しないようにすれば良いことだ。冷静に、あくまでも慎重に・・・。

「緊張してるのか?」

 マスターが声を掛ける。・・・身体は正直というか・・・。なかなか思ったようにはいかないものだ。周囲は勿論、自分自身も。

1999/12/8

 このところCG系のページによくお邪魔しているのですが、自分のページを見てそのあまりの稚拙さに呆れてしまうことが多々あります(^^;)。アイコンのデザイン、色使い・・・。いっそ小説かMIDIを書き下ろしてでもデザインを全面的に依頼しようか、という衝動に駆られたりします(笑)。でも、デザインしてもらうに見合ったものをお渡しするなら、相当作り込んだものじゃないと駄目でしょうね。謝礼だと相場は幾らくらいかな・・・(本気か?)。

 ここ最近、睡眠リズムが無茶苦茶になってます。元々寝付きが悪い上に夜更かしが好き(笑)なんですが、それに拍車がかかって深夜3時、4時以降でないと寝られない状態です。酷い時は平日に関わらず(仕事あり)徹夜する事も・・・。それで昼間大丈夫なのか?というと、仕事は仕事であれこれありますし、眠い事を忘れてしまいます。
 問題は帰宅後です。夕飯の仕込みを終えた、或いは夕食を食べ終わって間もなく急に眠くなってきて、そのままもそもそとベッドに潜ると気が付いた時には何時の間にか2,3時間過ぎてます(^^;)。いけないと思いつつまた今日も・・・。
 ・・・単なる馬鹿だった。それに他の連中も口にする勇気−と言えるかどうか甚だ疑問だが−がなかっただけで、大なり小なり同じことを考えていたらしい。類は友を呼ぶ、とはこのことか。
 井上はその場に突っ立ったままだ。そりゃ、あんな馬鹿な事をバイト初日にいきなり言われたら硬直しても無理はない。仕方ない、ここはフォローしてやるか、と思った時、井上は悪戯っぽい笑みを浮かべて「反撃」に出る。

「生憎ですが、私は限定数量1の上に既に予約を頂いてますので、注文はお受けできません。」

 今度は連中が唖然とする番だ。唖然としていた周囲のテーブルからどっと笑いが起こり、続いて拍手が沸く。見事な切り返しで勝負あった、と言うところか。連中はまさかの痛烈な反撃に顔を引き攣らせて笑うしかない。それにしても井上は神経が強靭というか・・・随分機転が利くものだ。俺も少しは見習った方が良いかもしれない。
 ・・・そう言えば、何か引っかかる。限定数量1と言うのは分かる。逆に複数だったら耳を疑わないといけない。しかし予約って・・・どういうことだ?既に先約が居るのに俺に近づいたのなら、井上は二股という、俺が絶対許せないことをしていることになる。何故なら俺は、それによく似た事をされた経験をつい最近味わわされたばかりなんだから。

女はまた、男を傷つけようとしている・・・?

 再び胸の奥で何かが蠢く。空気の動きに過敏になっている傷の腫れが疼き、この女と関わるな、と警告をして来る。また恋愛をするかどうかで井上を見ようというのか?俺は。・・・否、違う。俺と同じ様な思いをさせられる男が増えるのが我慢できないだけだ。それだけの筈だ・・・。

 それ以降、井上の注目度は抜群だった。さすがにあの連中のように口説こうとする客は居なかったが、いつもより男性客の回転が鈍かったのは確実だ。一方、マスターが井上に入れ知恵をして追加注文を聞いて回らせ、相当の稼ぎを得たのもまた事実。何かのショーのコンパニオンか客寄せパンダそのものだった。
 店の片付けも終わり、服装が違う俺は着替えてから再び店に戻る。カウンターにはマスターと潤子さんがいつもの席に並んで座り、マスターの右隣を一人分空けて井上が座っている。・・・どうやらこの席で決まりのようだ。

雨上がりの午後 第60回

written by Moonstone

 そう言って最後の学生が指差したのは・・・何と井上だった。演奏途中だったマスターが思わず音量を乱してしまう。どうにか取り繕ったが驚きは隠せない様子だ。近くのテーブルに居た客は唖然としている。俺は呆れて声も出ない。まさかそんな恐れを知らない台詞を本当に言ってのけるとは・・・。余程の大物か、そうでなければ単なる馬鹿だ。

「お、お前何言ってんだ?!」
「良いじゃねえかよ。君が欲しいっていうのも立派な注文だろ?」
「くそっ!俺も言いたかったのにぃ!」
「まさかここで本当に言うとは・・・やられたぜ!」
「残念でした。先に言った者の勝ち。」

1999/12/7

 あっという間に御来場者数23000人突破です(歓喜)。早いものですね〜。リンクを一気に3つ増やしたのは特に関係ありません(笑)。今回増やしたリンクはどれもCG系のページですが、CG系のページはバナーを直接URLで指定する場合が多いようです。バナーが頻繁に代わったり複数あったりするというのは私では信じられません(^^;)。今の一つを作るだけでもひいひい言ったというのに・・・。

 某新聞を見ていたら、クリスマスで女性が欲しいプレゼントの平均金額が調査以来過去最高を突破した、という記事がありました。何というか・・・この手の女というのは本当に頭の中がバブルですね。どんどん膨れて行くけど中身はない、と(笑)。
 しかし、この意識がクリスマス商戦を支えているというのも余計に呆れる話です。いっそ愛は金で買えます、売りますとはっきり言って頂きたいものです。「外見より中身が大切」「夢を持っている人が好き」と奇麗事を言わないで。如何ですか?バブルな女性の皆さん(嫌な言い方だな)。

「こちらへどうぞ。」

 井上に案内されて彼らは席に着く。井上はトレイに乗せていた水の入ったコップとお絞りを彼らの前に置く。奥の方に置く時にかなり距離が近づくのが興奮を誘うのか、目と鼻が無意識に大きく見開かれている。何だか発情期の動物みたいだ・・・。はっきり言って相当みっともない。

「ご注文が決まりましたら、そちらのベルでお知らせください。」
「あ、もう注文取って下さい。」
「はい。・・・えっと・・・。ではどうぞ。」

 直ぐに注文を取ることになるとは思わなかったらしく、井上はちょっと慌てた様子を見せる。自分の最初の頃を思い出す。最初マスターと潤子さんから習ったとおりにことが運ばないと、簡単に慌てふためいたものだ。それを思えば、初日にしては井上の対応は上出来だ。案外、こういうところでのバイト経験があるのかもしれない。

「俺、コーヒー下さい。」
「俺も同じ。」
「俺も。」
「俺も同じで良いや。」

 一人が切り出すと全員それに同調する。この手のグループでは珍しくないどころかごく普通の行動だ。しかし、グループで行動や嗜好まで全て統一する必要などあるはずがない。だが、そうしないと集団から浮いてしまいかねないのもまた事実だ。この主体性の無さと見えない無意味な束縛に、集団行動の限界を感じる。
 もう一人残っているが、多分同じだろう。今キッチンに居る潤子さんにしてみれば手間が省けるかもしれないが。そう思っていると、一人がまだ注文していない連れ合いに話を振る。

「お前は?」
「俺か?俺は・・・これを頼む。」

雨上がりの午後 第59回

written by Moonstone

 井上に先導されて俺が居る客席の方に来た団体は、井上の後ろで何か頻りに囁きあっている。恐らく年齢や男が居るかどうかを推測しているんだろう。普段同じような行動をとる智一を見ているから容易に分かる。しかし、周囲から変なものを見るような目で見られていることに気付かないのは、ちょっと滑稽だ。
 当の井上は至って変わった様子を見せない。彼らの声の大きさからして断片的に聞こえても良さそうなものだが、聞こえても耳から耳へ素通りしてしまっているんだろうか?意外に神経が太いというか・・・。まあ、そうでなけりゃ、あれほど俺に冷たくあしらわれても諦めないで、さらに同じバイトを始める気構えなんて出来やしないだろう。

1999/12/6

 この休みでかなり作品製作を進めました。紅茶を飲みながら(笑)。あんまり使うと簡単に無くなってしまうので、緑茶も飲みましたけど(ああ、貧乏性)。ポットのお湯が1日で無くなるようになったので、冬を実感しています。ただ、お茶を寝る前に飲むのは控えた方が良いです。カフェインはコーヒーよりずっと強力なので寝られなくなります。これで何度寝たいのに徹夜に追い込まれたことか・・・(^^;)。

 で、今日もその紅茶の話です(笑)。元々はもらい物の紅茶が無くなり、コーヒーはあまり飲まないし、背に腹は替えられないので買いに行ったのがきっかけですが、買いに行くとすっかり病みつき(^^)。上品な喫茶店で味わった味と香りが自宅でも味わえるというのは嬉しいです(^^)。ミントの香りは最高〜(^o^)。
 訳あって、その店をまた訪れたのですが、やっぱり入り辛いんですよね(^^;)。店員と客を合わせて最低7、8割以上は女性です。こっちには紅茶を買いに来たという目的があるし、後ろめたさも無いんですが・・・。苦手なんです、はい。定期的に通って慣らすしかないかな・・・。
 一方男の客は完全にくつろぎを求めてやって来るらしい。俺もそうだったが、男の受験に対する周囲からのプレッシャーは相当なものだ。男は良い高校、良い大学、良い会社に行けるかどうかで価値が決まるという固定概念は未だ健在などころか、ますますエスカレートしているように思う。マスターにそのことを話したら大笑いした後で「じゃあ、エジソンやアインシュタインは無価値か?」と言ったことがある。
 まあ、男の客はそんな労いの言葉よりもっと安らげるものがあるから、心配は要らないだろう。それは・・・ドアの前にどやどやとやって来た常連組の行動を見れば分かる。

「「こんばんは〜。」」
「いらっしゃいませ。あら、今日は随分大勢ね。」
「いやぁ、この店の良さを味わってもらおうと思ってぇ〜。な?俺が言った通りだろ?
「は、はじめまして。ほ、本当だ。スッゴイ奇麗〜。

 ・・・要するに潤子さん目当てだったりする。まあ、気持ちは分からないでもないが、俺のことは全く眼中に無いらしく、挨拶してもそっぽを向かれることもあるのにはちょっと腹が立つ。客とは言え、挨拶くらい分け隔てしないでもらいたい。マスターにはあの風貌が威圧感を誘うのか、妙に小さくなるのは結構笑える。

「今日は何人かしら?」
「ええっと・・・5人です、5人。」
「じゃあ晶子ちゃん。私がキッチンに回るから、14番テーブルへ案内してあげて。」
「はい。」

 聞き慣れない名前に彼らは戸惑うが、キッチンから出て来た井上を見て声にならない歓声を上げているのがよく分かる。

「そ、その女性(ひと)は・・・?」
「紹介するわね。今日から新しく入った井上さんよ。」
「はじめまして、井上です。宜しくお願いします。」

 一気に彼らは色めき立つ。年代が自分達により近いと感じると−せいぜい2つか3つくらいしか差はないだろう−、余計に親近感が沸くのだろう。あわよくば親密になりたいと思っているかもしれない。

雨上がりの午後 第58回

written by Moonstone

 8時を過ぎると客が増え始めて来て、俺は潤子さんと共に店内を駆け回る。今はマスターがサックスを演奏して、井上はキッチンに居る。3人から4人になると結構余裕が出来るものだと今更思う。
 客はやはり塾帰りの中高生が多い。この年代で一人で来ることはまずないと言って良い。集団行動がある意味当然だからだ。喫茶店に一人で入れるようになったら大人といえるのかもしれない。かくいう俺も、バイトの張り紙を見て最初にこの店に来る時は、かなり勇気が必要だった。
 女の客は如何にも上品な女性が好みそうな雰囲気に憧れて来るらしい。正直な話、雰囲気に憧れるのは結構だが、甲高い声を上げて話し、笑う様は彼女らが嫌う「おばさん」と何ら変わりはない。しかし彼女らはそれに全く気付いていない。

1999/12/5

 やっぱり1週間で更新するのは大変ですわ〜(-o-;)。2週間でも短いとかあっという間とか言ってますが、その半分ですからね(当然)。まあ、楽しんで頂ければ幸いです。
 「Moonlight PAC Edition」でも大々的にお知らせしているとおり、冬のコミケ出品作品の中に掲載される、マンガの原作を担当させて頂きました。マンガの完成原稿を一足先に見せて頂きましたが、原作を遥かに越えた爆笑ものの内容です。まさかこんな面白い作品に仕上げてもらえるとは・・・(^o^)。ピンクの怪獣が大暴れするマンガ、是非ご覧ください!

 あ〜、紅茶は良いねえ〜。地球が(以下略)。・・・といきなりですが(^^;)、買った紅茶を飲んでます。まずはダージリンとミントのブレンド。ほわんとミントの香りがして、口当たりもまろやか(^^)。ちょっと値は張りましたが(ミントは30gで500円!)良い買い物をしました。
 私の周囲を見回しても、男性で紅茶が好きという人は少ないんですよね。紅茶が好きと私が言ったら、驚くというか意外そうな顔をした人も居ます(^^;)。紅茶を飲むイメージじゃない・・・のか?やっぱり。でも、本当に紅茶が好きなんだぁ〜。次はミントとラベンダーとバラを買おうかな〜(笑)。

俺は一体、何をしていたんだろう?

 改めて思い返してみると、さっきまであんなに落ち込んで悩んでいたことが不思議にすら思える。失敗したけど客は居なかったし、練習で失敗したならやり直しは十分可能だ。失敗したらまたやり直せば良い・・・。確かに井上の言うとおりだ。しかし、こんなことですら判らないなんて、本当に俺はどうかしてるんじゃないか?
 ・・・井上を前にすると俺の思考のベクトルが、問題の記憶の原因となったあの女に対する憎悪に向いてしまうようだ。そして、あの記憶を埋め合わせようとする慰めの渇望にも・・・。やっぱり井上が「女」だからだろうか?「女」だから俺を苦しめ続けて来たことを思い出して憎しみを向け、そして新しい「女」の記憶で辛い記憶に蓋をしようとしているんだろうか・・・。だとしたら情けない話だ。もう恋愛は嫌だと思っていながら、失ったものよりもっと強固な絆を求めているなんて・・・。

「でも、気分は楽になたんじゃないですか?」
「え?」
「まだ・・・気持ちの整理がついてないんですね。」
「・・・そうだな。」
「いきなり失ったらどうして良いか分からなくて当然ですよ。失っても良いや、なんて思うなら、それはその人にとって大切なものじゃなかった、ってこと。」
「・・・成る程ね・・・。あんたも・・・そんな思いしたんだ?」
「・・・20年生きてれば、一度くらいはそういう思いもしますよ。」
「そんな風には思えないんだけどね・・・。ん?」

 20年?・・・じゃあ、俺より一つ年上なのか?初めて聞いたぞ・・・って、当たり前か。今までこうしてまともに会話したことなんてなかったからな。

「俺より・・・年上なのか。」
「一年遅れの1年生なんですよ、私。」
「道理で言うことが人生の年輪を感じさせる筈だ。」
「そんな歳じゃないですよー。」

 井上は少し口を尖らせて笑う。俺もつられて笑う。・・・そう、何時の間にか、俺は井上と向き合っていた。思えばあの日以来、初めて笑ったと思う。笑わなかったときは気にも止めなかったが、笑うって・・・気分が良くなるんだな。

雨上がりの午後 第57回

written by Moonstone

「・・・みっともないな、俺は。」
「?」
「こんなこと、あんたに話してもしょうがないのにべらべらと。みっともない。」

 そう言った俺自身、ようやく本題に戻ることが出来た。俺が落ち込んでいたのは、あの記憶が蘇ったことで今まで弾けた曲が途中で打ち切るほどの無残な出来になったことだ。心の乱れた振幅がもろに演奏に現れた形だから、演奏中に余所事を考えないようにしないと・・・。あまり弾かない曲なら尚更だ・・・。って、あれ?

1999/12/4

更新が遅れました。すみません(_ _)。

 もう1週間が過ぎるというのかぁ・・・(遠い目)。定期更新が近付く度に思い、同じ様に追い込みも忙しい・・・。歴史は繰り返す、とはこのことなんですね(違う)。今回は前々から準備を進めていたので、割と楽な方です。明日の定期更新をお楽しみに。でも、1週間の更新がハードなのはよく分かりました(^^;)。

 一昨日のこのコーナーで「行きたいけど行き辛い」と言っていた、紅茶の葉を売っている店に小さな勇気(笑)と共に行きました。背に腹は替えられないというやつです。最初はアールグレイだけを買うつもりだったのですが、ダージリンが気になったのでこちらに浮気(^^;)。さらに沢山並ぶハーブに目移りして「折角だから」とミントとストロベリー、そしてティーポットを購入。こういうのを衝動買いと言いますが、随分久しぶりのことです。
 しかし・・・やっぱり女性客だらけ(T_T)。店員さんも女性ばかりなのでそういうのが好きな人には素晴らしい環境かもしれませんが(笑)、私には場違いな印象が強いだけでした。やっぱり男性で紅茶好きというのは少数派に甘んじなければならないんでしょうか?同志求む!
 吐き捨てた言葉に冷笑が篭る。今まで周囲の、特に男の寵愛を一身に浴びて優雅に生きてきた奴に人生を諭されたくはない。俺とお前とでは生きてきた世界が違うんだから。

・・・何かが違う。

「失敗の辛さくらい・・・知ってます。」

 井上の食い下がる声が重く沈む。今までどんな嫌みも通じず活力の塊のような声しか聞いてなかっただけに、余計に重く感じる。心に共鳴するこの感覚は・・・かつて俺と同じ感情を抱いたという傷痕の証なんだろうか?
 だが、俄かには信じ難い。この女はどう見ても負ける側よりも勝つ側に立つタイプだ。単に俺との「共通項」を増やしたいか、或いは傷が浅かったかどちらかだろう。女は男より恋愛にドライだと言う。一時はショックを受けてもきっと立ち直りは早いだろう。

・・・何で、思考のベクトルがそっちへ向かうんだ?
井上が言いたいのは、それじゃない筈なのに。

「失敗したらそれで終わりじゃないんです。失敗してそこで止まっていたら・・・先へは進めないんですよ。」
「知ったようなことを・・・。それはな、やり直す気力が残る程度の失敗しか知らないから言えるんだ。自分の意志とは無関係に何もかも一瞬にして御破算にされたら、そんな気力は到底残らないさ。」
「・・・。」
「俺の気持ちも知らないくせに、気休めなんか言わないでくれ。迷惑だ。」

 ・・・何故こんな事を言うんだろう?井上が言いたいのは演奏の失敗を気にするなということの筈だ。なのにあの記憶を仄めかしてどうする?俺は・・・一体どうしたいんだ?どうして欲しいんだ?自分で自分の考えていることが、自分のしたいことが、自分にして欲しいことが何か全然分からない。
 もしかすると・・・乱れた感情のベクトルは、あの記憶を塗り替えたいと思う方へ向いているんだろうか?全てが瓦解した恋愛の敷地に、新しくてもっと立派な塔を建てたいと、俺は心の何処かで思っているんだろうか?そしてその塔の建設を・・・井上に求めているのか?弱って苦しんでいるところを見せて、善意で無償の建設を申し出るのを誘っているんじゃないのか?

・・・憐れみを誘っているのは・・・俺の方じゃないのか?

雨上がりの午後 第56回

written by Moonstone

 そうだ。所詮勝利の美酒に溺れ続けていられる奴に、敗北の辛酸を味わわされ続ける者の気持ちなんて分かる筈がない。次という余裕が考えられるのは勝者だけだ。勝利に飢える常「敗」者にそんな余裕はない。勝者からの慰めなんて・・・高みの見物からの憐れみでしかない。

・・・ナニカガチガウ。

「失敗も・・・積み重ねの一つなんじゃないですか?」
「聞いてなかったのか?失敗は今までの積み重ねを全部突き崩すって。」
「じゃあ、もう一度最初から積み上げれば良いんですよ。」
「失敗した惨めさを知らないから、そんな悠長なことが言えるんだ。」

1999/12/3

 うーん、困った困った。音楽グループの次回作が全く進まないです。3部門の中で一番滞っているだけに、どうにかしたいのは山々なんですが・・・(- -;)。せめて年内にグループに1つずつ公開して、遅れに遅れている寄贈作品を仕上げて・・・。あうあう。創作スピードを大幅に向上できる手段なんてないでしょうか(あれば苦労はしない)?

 昨日紅茶の話をしましたが、どうも男性=コーヒー(特にブラック)、女性=紅茶という図式があるような気がします。喫茶店で飲み物の注文を聞いているとほぼその図式どおりです。やっぱり紅茶はケーキと絡むためでしょうか?女性でケーキが好きと言う人は珍しくないですが、男性では表立つことはあまりありません。これも「男らしさ」「女らしさ」の図式の一部なのかもしれませんね。

「・・・あまり気にしない方が・・・。」

 後ろから声をかけて来たのは井上だ。今まで夜の部はキッチンに詰めていた潤子さんだが、井上が加わったことで接客にも回るようになった。今は注文の品を運びに行ったところだ。俺が意気消沈してカウンターに来たところでタイミング良く出ていったのは、潤子さんの配慮のつもりなんだろうか?
 気にするなと言われてもそうは行かない。ギターを弾き始めたころじゃあるまいし、あんな無様な失敗をしでかしたら気にしない方が問題だ。弾き始めの頃は譜面を追うのが精一杯だから、演奏に躓いたりテンポが揺れたりするのはある意味仕方がない。だが、俺は長いとは言えないが年単位の経験を積んでいるし、ステージ経験は豊富な方だ。それに加えて、不慣れとは言え今まではそれなりに弾き熟せた曲をあれほどお粗末なものにしてしまった。今まで出来たことがある日できなくなるというのは、自分がとんでもなく無能に思えるものだ。
 それに、あの記憶がちらつく度にあんなことになるかと思うと、演奏すること自体が怖くなって来る。何時、何の拍子に突然無意識の大海から浮上してくるか分からないから余計に怖い。負けたことがこんなに足を引っ張るなんて・・・やっぱり恋愛はもう御免だ・・・。負けた後には良いことが一つもないんだから・・・。

「失敗したら、次ですよ。次にちゃんと出来れば良いんじゃないですか?」

 次・・・?次だと・・・?随分お気楽なことを言ってくれるものだ。元気付けるつもりなんだろうが、何も知らない人間が言うと一時の気休めにもならない。

「・・・客に聞かせる演奏で失敗した時、次はちゃんとやります、なんて通用すると思うか?」
「それは・・・。」
「良いか?俺には「今」が大切なんだ。失敗は今までの積み重ねを全部突き崩す。その失敗が酷ければ酷いほど、ダメージも深刻なんだよ。」

雨上がりの午後 第55回

 7時を過ぎても客はまばらだ。今度はマスターがステージに上がってサックスを演奏している。曲は「LAND OF INNOCENCE」。ソプラノサックスをあまり使わないマスターは、これを練習の機会と捉えているのだろう。練習とは言え、俺とは違って流れて来るフレーズは随分滑らかだ。まあ、俺の演奏があまりにも酷かったというのもあるが・・・。
 常連が多い客の前で大恥を晒さずに済んだと安堵したのもつかの間、我ながら散々な出来に情けなくなって、俺はカウンターに寄りかかって溜め息を吐くばかりだ。不慣れな曲だと演奏に躓くことはそれほど珍しいことじゃないが、分からないように取り繕う事は出来る。途中で止めざるをえないと自分自身が思うほどの酷さは初めてだからショックが大きい。

1999/12/2

 つい2,3日前に22000人突破で喜んでいたのに、23000人まであと少しに迫っています(^^;)。定期更新後でも1000人以上増えるなんてことは初めてです。やはり相互リンクを増やして検索ページに登録したのが大きいのかな?
 景気良くご来場者数が増える割には、感想とかがめっぽう少なくてちょっと寂しいです(T_T)。感想は勿論、「このキャラが好き!」という熱い思い(読んでて楽しい)や「こんな作品創って!」というご要望(お応えできるかは不確実ですが)、果ては「見てやるから早よ創れ!」という催促(ううっ、遅くてすみません)でもOKですので、メール若しくはJewelBoxへの書き込み、お待ちしてます〜(_ _)。ネットトラブル以外、お返事は確実です(変なメールは別ですが)。

 私はお茶が好きで、特に紅茶は年中飲んでいます。コーヒーメーカーは専ら紅茶メーカーになってます。紅茶の葉を切らしてしまったので買いに行きたいのですが、店はあっても女性客ばかりで入り辛いです(私は男性です。念のため)。菓子作りの材料とかと一緒にあるからでしょうが、どうにかならないものでしょうか?ちなみに私はアールグレイ、ハーブではミントがお気に入りです(^^)。
 それにしても今日は本当に暇だ。客は一人も居ないからこれじゃ調理担当を強引に−個人的見解だが−一人増やした意味がない。ぼんやり突っ立っていても疲れるだけなので、俺はステージの方へ向かう。客が居ない時は練習には絶好の機会だ。自主練習は全くお咎めなしだし、客が居る時に演奏に躓くのは顰蹙を買うだけなので、弾き慣れない曲はこういう時に練習しておくに限る。
 ステージに上がった俺はギターを手に取ってチューニュングをざっと確認して、早速演奏を始める。店ではあまり演奏しない「Andalsia」だ。俺自身は好きな曲なんだが、雰囲気もあってジャズが主体のレパートリーの中でどうしても埋もれがちになっている。幾ら好きでも距離を置くと疎遠になってくる・・・。ここでもそうなのか。否、俺の場合は元々飛び石の一つでしかなかったんだ。きっとそうだ。そうに決まってる・・・。
 ・・・ふと我に返った時、音が乱れていることに気付く。慌てて右足の指で刻んでいたテンポと合わせて元に戻すが、その乱れの影響はさらに尾を引く。ストロークはガタガタになるし、前や後ろにフレーズの流れが揺らぐ。リズムに乗った揺らぎじゃなく、嵐に翻弄される小船に乗っているような不快な揺らぎだ。駄目だ。自分でも気分が悪くなってきた・・・。
 俺が演奏半ばにしてギターから手を放すと、マスターが歩み寄って来る。いつになく表情が険しい。原因は自分でも分かりきっているだけに訝る理由はない。

「おいおい何だ、さっきの演奏は。」
「自分でも一、二を争う悪さですよ。」
「最初は良かったのに、途中から急に未知の音楽になったぞ。」
「・・・やっぱり、酷かったですか?」
「客が居たらブーイングじゃ済まないぞ、あれは。」

 全く同感だ。あんなでたらめな騒音を聞かされたんじゃ客もたまったものではない。第一、弾き手が聞いてて気持ち悪くなるような曲を、客が聞いて気持ち良く思うわけがない、マスターの言うとおり、客が居なくて良かったと胸をなで下ろす。
 音楽は心模様を語る言葉だという。途中であの記憶に対する悔恨の情が沸き上がり、演奏をかき乱したんだろう。・・・まだ俺は、あの記憶を引き摺らなきゃならないんだろうか?憎しみの炎に投じ、懐古の涙で押し流しても尚、俺の頭の中に残り続けるんだろうか・・・?何時までこんな思いをしなきゃならないんだ・・・?もう・・・忘れたいのに・・・。

雨上がりの午後 第54回

 食事を済ませた俺は着替えて接客の準備を整える。土曜日の夜の部は結構暇なことが多い。会社が休みなので社会人の客(特に女性客)が減るのが大きい。学生の客は顔触れが多少変わるくらいで、数はむしろ多くなる。今頃になると受験生にはいよいよ受験という単語が心身に圧し掛かってくる。それと同時に周囲からの圧力も強まってくる。俺はこの御時世で塾に行かなかった少数派だが、周囲全てが敵だらけで息が詰まる、と同じクラスの奴が漏らしていたことを思い出す。
 塾帰りにちょっと一杯・・・。子どもの社会は大人社会の鏡だというが、この店で彼らを見てその話を聞いているとそれを実感する。教師や学校、親への行き場のない不満、将来に対する漠然とした不安、或いは模擬試験の評価を受けての希望進路の諦め・・・。最近の子どもは夢がない、という前に、夢を持っても仕方がないと思わせるような社会を作った大人自身が責任を果たすべきだろう。かく言う俺も年齢的には来年「大人」になるんだが・・・。

1999/12/1

 今日から12月です。このコーナーを始めた時はいよいよ暑さ本番という7月だったのですが、つい数日前のことのように思えます。あ〜、寒い季節は嫌だぁ〜(T_T)。それはさておき、このコーナーはいつ落とすかと思っていましたが未だ落ちてません(笑)。日記など毎日の継続が必要なことは後でまとめて、というパターンが多いのですが、これに限ってはよく続いているものだと我ながら驚いています(^^;)。
 昨日でリスナー数が延べ1000人を数えました。改めてリスナーの皆様に深謝します(_ _)。連載共々末永くお付き合いくださると幸いです。1000人目の方、連絡お待ちしております。次は・・・2000としておきます。

「潤子さん。キャベツ切り終わりました。」
「はぁい。じゃあ、この皿に盛りつけてくれる?」

 潤子さんがそういって井上に手渡した皿は・・・俺の夕食が乗った皿?今日は鍋回肉なんだが、その付け合わせのキャベツになるってことか?井上は千切りにしたばかりのキャベツを皿の脇の方に盛り付けると、潤子さんに返す。潤子さんは御飯と中華スープを盛り付けると、料理が乗ったトレイを俺の前に差し出す。

「はい、お待たせ。今日のキャベツの千切りはどう?試しに晶子ちゃんにやってもらったんだけど。」

 こういうのを毒味って言わないか?まあ、千切りだけなら調理したと言うのは難しいから、こういう場合は品評会とでも言うべきか。
 俺は促されるようにキャベツを箸で一掴みして眺める。潤子さんの細くて均一な千切りには及ばないが、素人目に見ても及第点の出来だと思う。少なくとも俺には真似出来ない事は確かだ。そもそも包丁で細かく切れること自体が信じられない。

「まあ・・・上手く切れてるんじゃないですか?」
「おいおいおいおい。折角やってくれたのに素っ気無さすぎるぞ。」
「・・・じゃあ、どうやって言えば良いんですか?」
「そりゃぁ決まってるだろう。『うん、奇麗に切れてる。君のこと見直したよ。』『え、そんな。私なんてまだまだ・・・。』『そんなこと言うなよ。もっと自信を持って。』『ありがとう。優しいんですね。』・・・とだな・・・。」

 俺と潤子さんは冷たい目で一人芝居をしているマスターを見る。全く調子が良いのには困ったものだ。井上だけがくすくすと笑っている。滑稽ではあるが面白いとは思えないんだが。そう言えば、井上が笑うのを見たのは今日が始めてじゃないだろうか?・・・だからどうとか言うわけじゃない。本当だ。

雨上がりの午後 第53回

written by Moonstone

 俺はカウンターのいつもの席に腰掛けて、いつものように腹ごしらえをするのだが・・・目の前には夕食を作っている潤子さんに加えて、俺に右半身を向ける形でキャベツを刻んでいる井上が居る。井上は白のブラウスにベージュのズボン、それに潤子さんと同じタンポポの刺繍が入ったエプロンを着けている。やや茶色がかった髪は下を向いた時邪魔になるのか、ゴムでポニーテールにしている。それでも先端が首の付け根まで届いているから、結構な長さだ。
 それよりも調理担当ということなので包丁の腕前が気になる。千切りじゃなくて短冊切りのキャベツは、見た目に不格好で食べる気が失せる。それで調理担当なんて俺は認めたくはない。もっとも俺自身は短冊切りより酷いぶつ切りになるだろうし、全て切り終わる前に指が血だらけになっていても不思議じゃない。
 ところが・・・意外というか井上の包丁の扱いは上手い。ちゃんと千切りになっているし、包丁とまな板がぶつかり合って生まれるリズムも、変な揺らぎがない。どうせ包丁なんか使えないだろうと思っていたが、偏見だったようだ。

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