カードキャプターさくら Side Story
Bug Buster 知世
Buster 8 −月の力は偉大です−
written by Moonstone
前回(Buster7)で担任の寺田がバグバスターという名のテロリスト知世の強制連行&退治によって入院に追い込まれた友枝小学校4年1組。
勿論担任不在のまま、というわけにはいかない。副担任のこの人が寺田の退院までの間、担任になることになった。
「皆、改めて自己紹介します。観月歌帆です。」
4年1組の教室にどよめきと歓声が起こる。
そう、超絶美人教師として名高い観月歌帆その人である。異論は許さない(きっぱり)。
彼女の美貌の前には男子女子問わず、そして筆者も思わず感嘆の溜息を漏らすものだ。
長い髪を後ろでリボンで束ねた瀟洒(しょうしゃ)なスーツ姿の歌帆は、教壇に立って4年1組の生徒に言う。
「暫く寺田先生の代わりに皆さんの担任となりますので、よろしくね。」
「「「「「はーい!」」」」」
4年1組の元気の良い返事が教室内にこだまする。
それを受けてにっこり微笑む歌帆は、更に魅力を増す。再び言うが異論は許さない(きっぱり)。
そうそう、自己紹介といえば・・・
コミックス4巻P20〜P21を参照のこと
歌帆「さて 改めて自己紹介」
筆者「○○○○○(←筆者の本名)」
歌帆「観月歌帆よ きっと 仲良しになれるわ」
筆者「それもなんとなくか?」
歌帆「うん でも・・・ わたしの希望も入ってる」
言われてみてぇ〜!(絶叫)
・・・失礼しました(爆)。
既に算数の担任ではあるが、臨時とは言え歌帆が担任になったことで、さくらはふんわりした気分になる。
さくらは頬をほんのり赤く染めて、知世に言う。
「やっぱり観月先生って、綺麗だよね。」
「ええ。そうですわね。」
「観月先生を見てると、なんだかふんわりした気分になっちゃうよ〜。」
「(ぴくっ)そ、そうですか・・・。」
流石はさくらを守ることに命をかける(命かかってるのは対象者だな)知世。さくらの只ならぬ雰囲気に危機感を抱く。
知世が「さくらに言い寄る悪い虫」と判断する思考回路は、極めて一方的かつ主観的な思い込みによってなされる。
小僧こと小狼は別として(笑)、桃矢や寺田もさくらに想いを寄せているわけでもないのに、専属諜報員ケロちゃんからの報告で
一方的かつ主観的に悪い虫だと判断し、桃矢を鞭と蝋燭で散々しばき、寺田を結論が見えている査問会議にかけて電撃ショックを食らわせたのだ。
知世はさくらの状況と歌帆を見比べて、勝手に危機感を増幅させる。
こうでなかったら、小狼を三度も病院送りにしたり、桃矢をしばいたり、あろうことか担任の寺田まで病院送りにしたりはしない。
バグバスター知世。早くも臨戦態勢に突入しつつあるようだ(汗)。
その日の夕方、歌帆は桃矢とばったり出くわした。
さくらの兄であり、かつて知世に悪い虫と決め付けられて、鞭と蝋燭で散々しばかれた不幸な人物。
その桃矢は、かつて付き合っていた(筆者:「羨ましい〜!」)歌帆を前にして少々動揺している。
「とーや。どうしたの?何だか落ち着かないみたいね。」
妹のさくらでしか分からないような桃矢の変化を、歌帆は敏感に感じ取って、ちょっと身体を横に傾けた姿勢で笑みを浮かべる。
桃矢は心を見透かされたことに動揺を強めるが、表面上は表情がやや強張っただけだ。
そんな桃矢に、歌帆は言う。
「私、今日からさくらちゃんのクラスの担任になったの。」
「さくらのクラスの担任?」
「うん。臨時だけどね。」
「さくらのクラスの担任といえば・・・感電して病院送りになった、ってさくらから聞いたが・・・。」
そこまで言ったところで、桃矢の脳裏にかつての悪夢の光景が浮かぶ。
小学生、しかも自分の妹を狙っている変質者のレッテルを貼られ、挙句の果てに蝋燭と鞭で散々しばかれたことだ。
その人物がさくらのクラスメート、そして恐怖の存在バグバスターであることを知っている桃矢は、別の観点から動揺する。
さくらの担任が病院送りになったのは、あのバグバスターという名のテロリストの仕業だろう。否、そうに違いない(確信)
幾ら未来を見通して自分をふった相手とは言え、歌帆と付き合った経験がある(筆者:「羨ましい〜!」)桃矢としては、歌帆が心配なのだ。
「歌帆・・・。さくらの様子はどうだった?」
「さくらちゃんなら、何だか嬉しそうな、照れたような表情をしてたわ。」
「・・・危険だぞ。」
「何が?」
かつての悪夢の光景が脳裏に蘇る桃矢に、歌帆は身体を少し横に傾けた姿勢で尋ねる。
「歌帆・・・。さくらのクラスに大道寺知世って奴がいることは知ってるか?」
「勿論よ。今まで副担任をしてたし、算数の授業を受け持っていたから、そのクラスの子の顔と名前は知ってるわ。」
「その大道寺知世はな・・・。ある日いきなり人を変質者呼ばわりして、さくらを守るとか何とか言って、人を散々な目に遭わせるテロリストなんだ。」
「大道寺さんが?」
「ああ。奴はとんでもない思考回路で動いてやがる。どこでどうやって俺がさくらを狙ってると判断したのか知らんが、さくらを狙っている、と
奴が判断したらもうアウト。時と場所と手段を選ばずに退治に乗り込んでくるぞ。」
「あら、そうなの?なかなか大胆な子ね。」
「大胆じゃないって(汗)。あいつは顔形からは想像出来ないほど無茶苦茶な奴だ。歌帆も気をつけろ。さくらが歌帆を見て表情を変えたとなれば、
奴がバグバスターとか何とかいうテロリストになって、時と場所と手段を選ばずに攻撃を仕掛けてくるぞ。」
桃矢の忠告に、歌帆はにっこり微笑んで言う。
「大丈夫。私は月の力に守られてるから。」
「月の力・・・?」
「ええ。大道寺さんが攻撃を仕掛けてきても、私は大丈夫。それよりとーやこそ、また大道寺さんに狙われないようにね。」
「・・・余裕だな、歌帆。」
桃矢は歌帆の余裕たっぷりの口ぶりに疑問と不安を感じずには居られない。
何せバグバスターモードになった知世の思い込みと攻撃手段は尋常ではない。それは嫌というほど桃矢自身が思い知らされている。
あのガキ(小狼)は構わんが(爆)、歌帆がバグバスター知世に血祭りに上げられるのは、どうしても見過ごすわけにはいかない。
だが、焦る桃矢(表情が少々変わった程度だが)に、歌帆は微笑みを絶やさずに言う。
「大丈夫。月の力に守られてる私は、大道寺さんの攻撃から身を守れるわ。」
「・・・相変わらず言い切るな、歌帆。」
「心配してくれてありがと。やっぱりいい子ね、とーや。」
歌帆が手を差し出すと、桃矢は自然に頭を傾け、歌帆に頭を撫でられる。
どういうわけか知らないが、歌帆が手を差し出すと頭を傾けるのは、桃矢にとっては条件反射みたいなものだ。
私にも「いい子いい子」してえ〜!(絶叫)
・・・またまた失礼しました(爆)。
歌帆は、戸惑い気味の(表情は殆ど変わらない)桃矢に言う。
「また会えると良いわね、とーや。」
「・・・まあな。」
「私ととーやはすっごく良い友達だもの。お話出来て嬉しいわ。」
「そうか?」
「ええ。それじゃ・・・またね。」
歌帆は長い髪を揺らしながら、微風のようにふわりと桃矢の横を通り過ぎて立ち去る。
その後姿を、桃矢は心配そうに見詰める。
桃矢はあのガキ(小狼)は別として(爆)、歌帆がバグバスターに血祭りにあげられないことを願うしかない。
その日の夜。
勝手に危機感を募らせた知世とその専属諜報員ケロちゃんとの間で緊迫したやり取りが交わされていた。
「いけません。いけませんわ!」
「な、何でやねん。あの姉ちゃんが特別な力を持っとるのは分かるが、何で知世が危機感募らせやなあかんねん!」
「だって、さくらちゃんは観月先生を見て『ふんわりした気分になっちゃう』と仰ったんですよ!」
「それがどないしたっちゅうねん!」
「さくらちゃんを大人の色気で惑わす観月先生・・・。これは危険人物と見なす以外にないことですわ!」
・・・緊迫したやり取りというより、例によって例の如く知世の妄想ともいえる思い込みが一方的に展開されているだけのようだ。
それよか、何とか知世の暴走を止めろ、ケロ。これは筆者からの至上命令だ(爆)。
勿論ケロちゃんも焦る。また知世がバグバスターという名のテロリストになって、さくらに言い寄る(言い寄ってなくても)人物を散々な目に
遭わせようとするのをみすみす放っておくわけにはいけない。
小学生にしてテロリストの称号を与えるわけにはいかない・・・って、もう手遅れか(汗)。
「お、大人の色気とはちょっと違うんとちゃうか?!」
「いいえ!大人の色気は譬え筆者だろうが小学生だろうが人を惑わす危険極まりないものですわ!」(力説)
「危険極まりないんはお前やて、知世。」(汗)
「かくなる上はこの大道寺知世、さくらちゃんが観月先生の大人の色気にたぶらかされる前に、観月先生を退治いたすますことですわ!」←全然聞いてない
私はたぶらかしてほしいぞ(きっぱり)。
ってか、もうたぶらかされてるぞ(えっへん)。
・・・失礼しました(爆)。
と、兎も角、ケロちゃんではやはりというか、知世の暴走を止めることは出来ない。
というわけで、第7回目の対象者は観月歌帆に決定した。
またしても、さくらに言い寄ったわけでもないのに、知世がバグバスターとなって悪い虫の退治に乗り出すことが決定したわけだ。
ケロよ。お前も封印の獣と言うなら小学生の暴走くらい止めてみせろ。
あ、無理か。封印の獣と言えど、バグバスターモードに突入した知世を止めるのは不可能だったな。
ま、それは兎も角、対象者が決定したらコスチュームの話に移るのはこのシリーズのお約束。
この話でも、ケロちゃんは意見を述べることは出来ても着用を拒否する権利はない(汗)。
もし拒否したら、墓石の下に封印されることになるのは確実。バグバスターモードに突入した知世なら十分可能だ。
「今回のコスチュームは恐らく読者の皆様なら簡単に分かるものになりますわね。」
「あの姉ちゃんが神社の神主の娘やからか?」
「ええ。TPOに応じてコスチュームを用意するのは、バグバスターの使命の一つですわ。」
「・・・ワイもコスチューム着やなあかん理由が分からん。」
「勿論ケロちゃんにも特製コスチュームをお渡しいたしますわ。撮影の際には必ず着用願いますわね。」
知世の声はいかにもお嬢様らしく可憐で上品なものだが、そこに込められた感情はケロちゃんに有無を言わせないものだ。
ケロちゃんは自分が着るコスチュームを予想して、深い溜息を吐く。
対象者の悲惨な末路の一部始終を撮影するためだけに、知世が用意した特製コスチュームを着なければならないのだから、同情の余地はある。
「早速明日の夕方、観月先生のご自宅でもある月峰神社に出撃いたしますわよ。」
「あ、明日って、そんなに急ぐことあらへんやんか。」
「いいえ!さくらちゃんを大人の色気で惑わす危険人物を放置しておいては、さくらちゃんがたぶらかされるのは目に見えてますわ!」(力説)
「さくらがあの姉ちゃんの色気にたぶらかされとるとは思えんのやが・・・。」
「観月先生が発する大人の色気によってさくらちゃんに被害が及ぶ前に。何としても食い止めなくてはなりませんわ!」←まったく聞いてない
「はいはい。んじゃ明日やな。」
「ええ。明日の午後5時、お迎えに上がりますわ。さくらちゃんには私が話をつけておきますからご安心下さいね。」
「ワイはあの姉ちゃんの末路が心配なんやが・・・。」
「何か仰いました?」
「い、いや、な、何も言うとらへんで!が、頑張って退治してや〜。」(大汗)
知世の威嚇がこれでもかと篭った可憐な声にビビったケロちゃんは、慌てて誤魔化す。
バグバスターモードに突入した知世を止めるのは、ケロちゃんが元の姿に戻っても不可能だろう。それくらい知世は容赦ない。
しかし、筆者が完全にたぶらかされている歌帆を対象者にしてしまって大丈夫なのか?と読者の皆さんは心配だろう(違う?)
小狼はまあ仕方ないとして(爆)、歌帆をバグバスターのターゲットにして良いのか?
知世の退治がどうなるかは、これからをご覧戴く以外あるまい。筆者の心は既に決まっている。
翌日の黄昏時の月峰神社。
夜の訪れを告げる黄金色の光が、黄昏の語源である「誰そ彼」の情景を醸し出している。
眩いが何処か切なげな光は人の姿をおぼろげなものにし、人の心を惑わす。
そんな光に混じって、清楚なスーツ姿の歌帆が自宅でもある月峰神社へとやってくる。
上品で端正な横顔は、長い髪と黄昏の光でよく見えないが筆者を「はにゃ〜ん」とさせるには十分である(爆)。
歌帆が月峰神社の境内に入り、自宅へ向かう途中、何かが飛んで来る気配を感じてすっと一歩後ろに下がる。
その直後、歌帆の目の前を目にも止まらぬ速さで何かが駆け抜け、桧(ひのき)の幹に「さくっ」と突き刺さる。
檜の幹に突き刺さったものは、先端が鋭利に研ぎ澄まされた破魔矢である。
歌帆は表情を変えることなく、徐々に弱まる黄昏の光が差し込んでくる方を向く。
向かいの桧の林の影から、何者かが姿を現す。
それは弓道の弓を持ち、大量の破魔矢を背負い、巫女さん衣装を着た知世その人だ。
知世崇拝者で巫女さん属性の読者の皆さんは、感涙で画面が滲んでよく見えないことだろう(笑)。
勿論というか、退治の邪魔にならないように長い髪は後ろで束ね、さらに白い鉢巻まで巻いている。歌帆退治に臨む友世の意気込みが痛いほど感じられる。
そして別の桧の陰からは、ビデオカメラのレンズが歌帆を知世を捉えている。
「と、知世の奴、ホンマに矢を放ちおったわ・・・。」(大汗)
神主衣装でバッチリ決めたケロちゃんは、知世のまさかの先制攻撃に巨大な冷や汗が流れるのを感じる。
歌帆がかわしたから良いようなもの、当たってたらただでは済まないことを分かっててやっているのか?知世!
・・・って、分かってたら人様を鞭や蝋燭でしばいたり、時限爆弾を渡したりするようなことはしないわな(汗)。
歌帆は仇討ちのような出で立ちの知世を見て、柔らかい微笑みを浮かべて尋ねる。
「あら、大道寺さん。一体何の御用かしら?」
「いいえ。私は大道寺知世ではありませんわ。」
「じゃあ、貴方は誰?」
「通りすがりの巫女さんですわ。」
きっぱり言い切る知世に対して、ケロちゃんは空中でずっこける。
一応巫女さんには見えるが、こんな小さな巫女さん、しかも人様に向かって破魔矢を放つ物騒な巫女さんは居ない。
だが、対する歌帆はくすくすと笑って言う。
歌帆「あらあら。その通りすがりの巫女さんが私に何の用かしら?」
巫女さん(知世)「(歌帆をびしっと指差して)観月歌帆さん!貴方はお持ちの大人の色気でさくらちゃんをたぶらかそうをしましたわね!」
歌帆「私はそんなつもりはなかったんだけどなぁ。」
巫女さん(知世)「さくらちゃんに言い寄る悪い虫は、このバグバスター知世が必ず退治してみせますことですわ!」
ケロちゃん「だから自分で正体ばらすなっちゅうに。」(溜息)
歌帆「あらあら。私を退治しにやってきたの?とーやの言ってたとおりね。」(笑)
ケロちゃん「あの姉ちゃん、えらい余裕やな。」
巫女さん(知世)「担任の先生をまたもこの手にかけるのは心苦しいことですが、さくらちゃんに言い寄る以上は容赦しませんわ!」
歌帆「じゃあ、寺田先生を病院送りにしたのは大道寺さんだったのね。」
ケロちゃん「知世。やったことまでばらしてどうすんねん。」(汗)
巫女さん(知世)「いざ、悪い虫退治に参らんことですわ!」
知世は破魔矢を次々と背中の入れ物から引き抜き、構えて弓を引き絞ると、躊躇なく歌帆に向けて破魔矢を放つ。
しかし、歌帆はすっと身体を逸らして破魔矢の襲撃をかわす。
歌帆はバッグから長い紐がいっぱい付いてるあの鈴を取り出して一振りする。
リーン、という心地良い音が響くと、一瞬歌帆の姿が黄昏の光に包まれて見えなくなるが、直ぐに再び現れ、鈴をバッグに仕舞う。
一度ならず二度までも攻撃をかわされた知世は、負けじと歌帆目掛けて文字どおり矢継ぎ早に破魔矢を放つ。
今度はどういうわけか、歌帆は破魔矢の襲撃をかわそうとしない。
あの姉ちゃんが射抜かれる!と恐怖したケロちゃんと勝利を確信した知世の目の前で、信じられない出来事が起こる。
何と、歌帆目掛けて放たれた全ての破魔矢が歌帆の身体をすり抜けたのだ。
さくさく、っと歌帆の向こう側の桧の幹に何本もの破魔矢が突き刺さる。
唖然とする知世とケロちゃんに、歌帆は筆者を「はにゃ〜ん」とさせる微笑みを浮かべて言う。
歌帆「残念ね。今の私には一切の攻撃は無効よ。」
巫女さん(知世)「くうっ!一体どういうことですの?!」
ケロちゃん「あの姉ちゃんの身体、どないなっとるんや?」
歌帆「さあ、大道寺さん。お家の方が心配するといけないから、そろそろ帰りなさい。」
巫女さん(知世)「そうは参りませんわ!さくらちゃんに言い寄る悪い虫を退治することは、このバグバスター知世の使命!ここで引き下がっては
これまでのバグバスターの実績が泣くというものですわ!」
ケロちゃん「そんな実績にこだわらん方がええと思うで。」
歌帆「あらあら、困った子ね。それじゃ私もちょっと本気を出しちゃおうかな。」
巫女さん(知世)「ほ、本気ですって?!」(動揺)
ケロちゃん「一体何するつもりなんや?」
すっかり辺りが暗くなり、天に月が神々しい輝きを見せ始めた丁度その時、歌帆は再びバッグから例の鈴を取り出し、一振りする。
すると何ということか、歌帆の身体からもう一人の歌帆がスライドをずらすように姿を現したのだ。
歌帆が鈴を一振りする毎に、歌帆から歌帆が次々と出てくる。
あっという間に歌帆が10人になり、どれが本物だか区別が出来なくなってしまった。
予想もしなかった悪い虫の能力を前にして、知世は驚きで声も出ない。
それはビデオ撮影しているケロちゃんも同じである。
10人の歌帆は、月の光に照らされて神秘さを加えた微笑みを浮かべて言う。
歌帆「さあ、大道寺さん。どれが本物の私か分かるかしら?」
巫女さん(知世)「こ、こうなったら奥の手を使う以外ありませんわ!」
ケロちゃん「奥の手って何やねん。」
知世は持っていた弓を背中に仕舞い、今度はボウガンを取り出し、そこに幾つもの破魔矢をセットして歌帆目掛けて放つ。
通常のボウガンは一本しか矢を放てないが、知世の母が経営する玩具会社で改造を受けたそのボウガンは、一度に複数の矢を放てる。
もはや本気で歌帆を殺そうとしているとしか思えない知世の攻撃だが、次々飛んで来る破魔矢はどれもこれも
10人の歌帆の身体をすり抜けていく。
ケロちゃんはビデオ撮影しながら考えを巡らす。
『あの姉ちゃん、分身の術を使っとるんか?けど、せやったらどれか一本は当たる筈やし・・・。うーん・・・。』(汗)
ケロちゃんが考えている間にも知世は特製ボウガンで矢を乱れ撃ちするが、10人の歌帆のどれも素通りして背後の桧に突き刺さる。
とうとう破魔矢が尽きてしまった知世は、特製ボウガンを背中に戻し、懐からどこかで見たような可愛い杖を取り出す。
「『正義』の力を秘めし『鍵』よ!真の姿を我の前に示せ。契約のもと知世が命じる。封印解除(れり〜ず)!」
何処かで聞いたような呪文を唱えて、知世は柄のボタンを「ぽちっとな」と押す。
杖がぐっと伸びて戦闘態勢を構築する。見た目こそ可愛いが、実は様々な武器が詰まった殺人兵器だ。
知世は得体の知れない(筆者:失礼な!(怒))敵に接近戦は危険と即断して、杖の先端を10人の歌帆に向けて別のボタンを「ぽちっとな」と押す。
すると、あらゆるものを焼き尽くさんばかりの猛烈な火炎が迸り、10人の歌帆に襲い掛かる。危うし、歌帆!
しかし、炎はやはり破魔矢と同様10人の歌帆を素通りして、背後の桧を焦がす。
現在装備している遠距離攻撃が一切通用しないことを悟って、知世は焦る。
自分の攻撃は一切効かない。一方の歌帆はどんな攻撃手段を持っているか分からない。
とりあえず反撃に備えて知世が杖を構えたところで、バイクの音が近付いてくるのが聞こえる。
巫女さん(知世)「このバイクの音は・・・さくらちゃんのお兄様のもの!」
ケロちゃん「よう音だけで分かるな、知世。」
歌帆「あらあら、お客さんみたいね。」
巫女さん(知世)「観月先生!今日のところは引き上げますが、さくらちゃんをたぶらかすことは許しませんことですよ!」
歌帆「私はそんなつもりはないんだけどなぁ。」
ケロちゃん「ワイもそう思うわ。」(もの凄く同感)
巫女さん(知世)「さくらちゃんに正体がばれるわけにはいきませんわ!残念ですがここは退却します!」
巫女さん知世はすっかり暗くなった桧の林の中に消える。
それを見計ったように鈴がなると、なんと10人の歌帆が一斉に溶け込むように消えてしまった。
目を疑うケロちゃんのビデオカメラに、戦場となった場所の背後に張る桧の陰から歌帆がひょっこり出て来たのが映る。
「あ、あの姉ちゃん、やっぱり分身の術か何かを使っとったんか!」
スーツ姿にバッグを肩にかけた、帰ってきたときそのままの姿の歌帆の前に、バイクに乗った桃矢とさくらがやって来た。
桃矢はバイクを止めてヘルメットを外し、さくらもヘルメットを外して後ろの席から降りる。
その二人を歌帆が出迎える。桃矢の顔が微妙に強張るが、さくら以外には分からない変化だ。
「こんばんは。何か御用?」
「いや・・・。さくらがここのお守りを買いたいって言うから・・・。」
「観月先生、こんばんは!」
「こんばんは。お守りならこっちよ。」
歌帆がさくらを社務所へ案内しようとした時、桧の林の中から普通の服に着替えた知世が姿を現す。
暗闇の林から人が姿を現したことで、お化けが苦手なさくらは思わず悲鳴を上げて歌帆の背後に隠れる。
「ほえええええ〜っ!」
「大丈夫よ、さくらちゃん。大道寺さんよ。」
「え?知世ちゃん?」
「まあ、さくらちゃん。偶然ですわ〜。まさかこんなところでお会い出来るなんて。」
「でも、知世ちゃん。何で林の中から出てきたの?」
「(汗)・・・は、林の中に怪しい気配を感じたもので・・・。」
「え?!何かあったの?!」
「いえ、何も。私の気のせいだったようですわ。」(^^;)
「そう。なら良いんだけど・・・。知世ちゃんに危険が及んだら、さくら、真っ先に駆けつけるからね。」
「感激ですわ〜。」(感涙)
知世のそれっぽい言い訳とさくらの疑わない性格のお陰で、何とか誤魔化せたようだ。
・・・さくら。ちょっとは人を疑うということを知ったほうが良いぞ(汗)。
まあ、知ったら知ったでさくらの性格が崩れてしまうから、このままの方が良いのかもしれないが。
「知世ちゃんもお守り買わない?」
「ええ。勿論ご一緒させていただきますわ。」
「お守りはあそこの社務所にあるわ。好きなもの選んでね。」
「「はい。」」
さくらと知世が手を繋いで、お守りが沢山ぶら下がっている社務所に向かったところで、桃矢が歌帆に歩み寄り、小声で尋ねる。
「歌帆。・・・バグバスターとかいうテロリストになった大道寺の襲撃を受けなかったか?」
「ええ。しっかり巫女さんの衣装を着て、弓道の弓と破魔矢とボウガンと可愛い杖を持って現れたわ。」
「弓とボウガンと可愛い杖・・・(汗)。破魔矢を放ってきて、鞭でしばきにかかってきたってところか。」
「鞭じゃなかったわ。炎で林を燃やしそうだったけど。」
「炎まで出せるのか、あの杖は(大汗)。しかし、よく無事だったな。」
「だから言ったでしょ?私は月の力に守られてるって。」
「月の力って・・・一体何だ?」
「月は太陽の光を受けて輝く空の鏡。そして月は古来より神秘の象徴とされてきた・・・。」
「?」
「それだけ月の力は偉大だってことよ。」
歌帆は月の光を浴びて美しい神秘的な微笑みを浮かべる。
桃矢は何のことやら分からないが、読者の方にはもうお分かりだろう。
念のため言っておこう。
筆者のハンドルネームはMoonstone。そこに含まれる天体と言えば・・・。
・・・。
きったねー!などと言ってはいけない。
バグバスター知世と言えども、歌帆をこよなく愛する筆者には勝てないのだ。わっはっは(高笑い)。
兎にも角にも対象者の哀れな末路を撮影しなくて済んだケロちゃんは、林の影で胸を撫で下ろすのだった。
さくら争奪戦 第8回戦
バグバスター知世(15分35秒 無効試合)観月歌帆
通算成績 バグバスター知世:5勝1敗1分1無効 観月歌帆:0勝0敗1無効
|
・・・知世の戦いとケロちゃんの苦悩の日々は、またまた続く(ケロちゃん「こういう安息の日々が続くとええなぁ〜」(^-^))
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