カードキャプターさくら Side Story

Bug Buster 知世

Buster 6 −遊園地の死闘(後編)−

written by Moonstone

〜前編の粗筋〜
ある日曜日、さくらが宿敵(?)李小狼によって遊園地へ攫われた(連れて行かれた)。
そのことを専属諜報員ケロちゃんから知らされた知世は一気にバグバスターモードに突入。直ちに出撃と相成った。
バグバスター知世の襲撃を警戒しながらもさくらと楽しいひと時を過ごす小狼。しかし、知世の魔の手は確実に迫っていた。
昼食で頼んだミートソーススパゲッティに大量のタバスコを混ぜられ、更にさくらと乗ったジェットコースターも知世の手に落ち、
猛スピードでコースを五周する羽目になってしまった。
しかし、小狼退治で頭がいっぱいになっていた知世とケロちゃんは、さくらまで巻き込んでしまったことに気付いて大慌て(笑)。
これを小狼がさくらを道連れにしたと勝手に決め付けた知世は更に闘志を燃やす。次はどんな手で小狼を血祭りに上げるのか?!

 知世が仕掛けた「超絶Gアタック」でフラフラになったさくらと知世は、ベンチに腰掛けてぐったりとなっていた。
どうにかジェットコースターから降りたものの、二人揃って次のアトラクションへ向かう余力は全く残っていなかった。
さくらは俯き加減でハンカチで口を押さえ、小狼はベンチの背凭れに頭を乗せる形で吐き気が上ってくるのを防いでいる。
 そんな二人の様子を物陰から注視している二組の目がある。勿論、我らが(?)バグバスター知世にその専属諜報員ケロちゃんである。
知世はビデオを回しているが、その大きな黒い瞳は涙で潤んでいる。余程さくらを巻き込んでしまったことが悲しいらしい。
その横に居るケロちゃんは、いかにも不安そうな表情で知世を見ている。
「超絶Gアタック」が勇み足になったことをあれ程悔やみ、次こそは、と意気込んでいた知世があまりにも大人しい(笑)ことに不安を隠し切れないのだ。
ケロちゃんは相変わらず瞳うるうるでビデオを回している知世に尋ねる。

「なあ、知世。これからどうするんや?」
「ああ、可愛いさくらちゃんが苦悶の表情を・・・。何て悲惨な・・・。」<=聞いてない
「悲惨な状況にしたんはお前やろ、知世・・・。」
「でもその表情が人の涙を誘う・・・。ああ、可愛いさくらちゃんならではですわ。」<=全然聞いてない
「さくらと小僧が回復したらどうするつもりなんや?知世。もうこれ以上テロ・・・やなくて攻撃に打って出るんは・・・。」
「李君が回復しましたら、直ちに次の攻撃準備に入りますわ。」(燃)
「や、やっぱり・・・。」(汗)。

 流石はバグバスター。悪い虫小狼を退治する使命は忘れていないらしい。それにしても凄い執念だ。
しかし、さくらと小狼はかなりの数のアトラクションを楽しんだ。残すアトラクションを言えば、目立つところでは・・・お化け屋敷と観覧車くらいだ。
その時、知世がぐっと拳を握る。その目は闘争心に燃えている。

「李君は・・・次にさくらちゃんをお化け屋敷に誘うつもりですわ。」
「何でや?さくらはお化けとかが大の苦手なんやぞ。」
「だからこそですわ。さくらちゃんがお化け嫌いなのを知った上でお化け屋敷に連れ込んで『きゃーっ、怖い!』『大丈夫、俺がついてる』
なーんて、さくらちゃんの前でカッコ良いところを見せようと企んでいるに決まってますわ!」
「・・・何も声真似までせんでもええやん。」(汗)
「許せませんわ・・・。さくらちゃんをあんな酷い目に遭わせておいて、今度はさくらちゃんを怖がらせようとするなんて・・・!(怒)
「だから、さくらを酷い目に遭わせたんはお前ちゃうんか?知世・・・。」
「李君!幾ら中国約4000年のデートエスコートの秘術を用いようとも、この私が必ず阻止して見せますわ!」(燃)<=聞いちゃいない
「中国約4000年のデートエスコートの秘術って何やねん。」(一応ツッコミ)

 ビデオを回す知世からは、再び「さくらちゃんをお守りしますわ」オーラが噴出す。
ケロちゃんは「もうテロ攻撃は止めろや」オーラが噴出すが、知世のオーラに比べてあまりにも小さくて脆い(笑)。
果たして悪い虫小狼は、さくらをお化け屋敷に誘うのだろうか?

 それから30分ほどして、さくらと小狼の頬に赤みが戻る。どうやら三半規管の大乱調が収まったようだ。
小狼はハンカチを仕舞ったさくらに、幾分緊張した面持ちで話を持ちかける。

「な、なあ、さくら。次、行けるか?」
「う、うん。もう大丈夫だから。何処へ行くの?」
「・・・お化け屋敷なんかどうかな、って・・・。」

 お化け屋敷という言葉を聞いた瞬間、さくらは身体を強張らせる。
さくらのお化け嫌いはそれ程のものなのだ。

「わ、私、お化けとかそういうものは・・・その・・・。」
「大丈夫さ。お化け屋敷のお化けは本物じゃないから。」
「で、でも・・・。」
「大丈夫。俺がついてるから。」

 小狼はそう言ってさりげなくさくらの手を取る。
・・・えー、小狼、退治希望と仰る方、筆者に石を投げないで下さい(汗)。これは話の成り行き故、ご容赦願いたい。
勿論その様子を見て憤激するのは小狼、退治希望と仰る方だけではない。この方も当然猛烈な怒りの炎を燃やす。

「り、李君・・・。予想どおりさくらちゃんをお化け屋敷に誘った上にさくらちゃんの手を握るなんて、全くご自身の立場をわきまえておられませんわね!」(激怒)
「お、おいおい、知世・・・。」(汗)
「決まりですわ。ケロちゃん、先回りして攻撃準備ですわよ!」

 知世は「さくらちゃんをお守りしますわ」オーラを最大限に噴出しながらダッシュで駆け出す。
ケロちゃんは知世を止められる筈もなく、慌てて知世の後を追う。
次なる戦い(?)の舞台はお化け屋敷。さてさて、知世はどんなテロ・・・もとい、悪い虫退治に打って出るのやら。

 小狼は早くも腰が引けているさくらの手を引いてお化け屋敷へ向かう。
小狼はお化けの類を怖がりはしない。誘った本人が怖がっていては話にならないのも事実だが。
小狼にとって警戒すべきは演出のお化けなどではない。お化けよりはるかに質(たち)が悪いテロリスト知世である。
何処から自分を監視していて、何処からどんな攻撃を仕掛けてくるか分からないから、脅かすだけのお化けなど比較にならない恐怖を併せ持っている。
 小狼は周囲への警戒を怠らずにお化け屋敷まで来て二人分の料金を払って−さくらは財布を出すどころの状態ではない−、さくらの手を引いて中に入る。
分厚いカーテンを潜ると、そこは青や緑で不気味に照らされた、如何にもお化けが出ますよ、と言っているような雰囲気で包まれた、
江戸時代の日本の夜を髣髴とさせるセットが二人を出迎える。
さくらは早くも瞳を潤ませているが、小狼はさくらの横に並んでゆっくりと歩き始める。
何時何処から現れるか分からない・・・。その点ではお化け屋敷のお化けと知世は同じとも言える(笑)。
矢印に従ってゆっくりと歩いていく小狼とさくら。二人の手はしっかりと握られている。
やがて古びた井戸のところに差し掛かる。二人が通り過ぎようとした瞬間、井戸から甲高い笑い声とともに白装束姿の髪の長いお化けが飛び出してくる。

「きゃーっ!!」

 さくらは半泣きで小狼に抱き着く。・・・小狼、退治希望と仰る方、冷静に冷静に(汗)。
小狼もいきなりの登場に少々びっくりしたが、それが作り物だと直ぐに悟って、井戸に引っ込んでいくお化けを見ながらさくらに言う。

「大丈夫だって。所詮作り物なんだから。」
「う、うう・・・。怖いよぉ・・・。」
「さあ、先へ進もう。心配要らないよ。俺がついてるから。」

 小狼はさくらの体を支えるようにコースを進んでいく。
今のところ、テロリスト知世が姿を現す気配はない。
小狼にとって最大の敵、知世こそこのお化け屋敷でもっとも警戒すべき相手である。
少し進んだところで、これまた白装束の髪の長いお化けが逆さになって二人の目の前に落下してくる。

「きゃーっ!!」

 さらに自分に抱きついてくるさくらを見て「可愛いじゃないか」などと思いながら、小狼はゆっくりと上がっていくお化けを見上げながら言う。

「心配要らない。俺がついてるから。」
「う、うん・・・。」

 小狼は自分に抱き着くさくらに気を配りながら、さらにお化け屋敷の奥深くへと進んでいく。
途中、横から骸骨が出てきたり、提灯(ちょうちん)がいきなりケタケタ笑い出したりするというアクシデントがあったが、
さくらがその度に絶叫を上げて小狼にしっかり抱きつき、小狼は次第に少々良い気分になっていた。
気になる女の子が自分に必死に抱きついてくるのだから、男としてある意味至福の時とも言える。
 そうこうしているうちにお化けが脅かすことしかしないことを悟ったさくらは、少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。
今までは小狼に抱きついて離れなかったが、どうにか小狼の手をしっかり握って離さない程度にまで落ち着いていた。
小狼はちょっと残念に思ったが(をい)、さくらが無闇に怖がらなくなったのと、お化けとは比較にならない恐怖の存在、テロリスト知世
全く音沙汰がないことで、安心して出てくるお化けをやり過ごしていく。
しかし油断した時に災難は降りかかってくるものである。
 ちょろちょろと音を立てながら流れる川にかかった橋を渡ろうとした小狼とさくら。
此処では地形や仕掛け上、お化けが出ないだろうと思った小狼は、さくらの手を引いて橋を渡り始める。
その時、川からごぼごぼと泡が立ち始める。
何かと思った小狼が泡を見ていると、川から勢い良く何かが飛び出してきて二人の前に立ち塞がる。
それは・・・長い髪を水に濡らしてシュノーケルを咥え、目に怒りの炎を燃やす蛇女だった。
言うまでもないが、この蛇女は小狼がもっとも恐れるテロリスト知世である。
今まで特定の場所から動かなかったお化けが明らかに自立的に動いていることから、小狼はついに来たか、と剣を構える(何処に持っていたんだ?)。
蛇女は何処かで見たような杖を手に持っていて、ふしゅー、ふしゅーと不気味な呼吸音を立てて身構えている。
勿論、この呼吸音は蛇女(知世)が意識的に立てている音である。

「とうとう現れたな、大道寺!」
「いいえ、私は大道寺などではありませんわ。通りすがりの蛇女ですわ。」
「そんなもん居るわけないだろ!」(怒)
「目の前の現実から目を逸らしてはいけませんわ、李小狼君。」

 小狼と蛇女(知世)は橋の上で睨み合う。さくらは庇われる形で小狼の後ろにいる。
勿論、蛇女(知世)はさくらに危害を加えるつもりは毛頭ない。あくまでもターゲットは悪い虫小狼である。
狭い場所での戦い、果たしてどちらに軍配が上がるのか?
 先に攻撃を仕掛けたのは蛇女(知世)である。
何処かで見た杖を振り上げて、小狼目掛けて振り下ろす。
小狼は剣を水平に構えてそれを受け止める。
蛇女(知世)の指が「封印の電撃ショック」用のボタンに伸びたところで、小狼は素早く剣を横に払う。
小狼もそれなりの腕を持っている。蛇女(知世)の直接攻撃パターンはたいしたものではないことくらい身をもって分かっている。
それよりはるかに強力なのは「封印の電撃ショック」だから、何処かで見た杖との長時間の接触は避けなければならない。
小狼に何処かで見た杖を払われた蛇女(知世)は、その杖を小狼に向けて新たに装備されたボタンを押しながら叫ぶ。

「『火(ファイアリー)』!」

 なんと杖の先端から火炎が放射される。なんと様々な効力を持つ杖なんだろう(笑)。
小狼は札(ふだ)をポケットから取り出して宙に放ち、それに剣を並行に翳して叫ぶ。

「火神(かしん)!」

 すると札が燃えて炎と化し、前方に噴出す。
蛇女(知世)と小狼の炎がぶつかり合い、相殺する。蛇女(知世)は悔しそうな表情を浮かべる。

「や、やりますわね・・・。李小狼君。」
「二度も三度もやられてなるか!」
「・・・今回のところは引き上げますわ。でも無事に此処を出られると思わないほうがよろしいかと思いますわよ。」
「絶対お前には負けない!」

 小狼が強く言い切ると、蛇女(知世)は川に飛び込んで姿を消す。
何処かへ先回りしようとしているのかもしれないが、場内が暗いため、何処に居るか確認できない。
取り敢えず蛇女(知世)を撃退したことで、小狼はふう、と溜息を吐いて剣を仕舞う。
自分を巡る戦いの(当の本人は知る由もないが)一部始終を見ていたさくらは、小狼に感謝と尊敬の眼差しを向ける。

「すごーい、小狼君!お化けを退治しちゃったね!」
「・・・これ以上病院送りにされたくないからな。」(- -;)
「ほえ?」
「さ、さあ、行こう、さくら。」
「う、うん。」

 小狼はさくらの手を取ってやや急ぎ足でコースを進んでいく。
その途中、既設のお化けに加えて彼方此方から蛇女(知世)が姿を現して二人を脅かすが、さくらが悲鳴を上げるだけで小狼は蛇女(知世)との戦いを
右へ左へ避けながら次第に足を速めていく。
蛇行するコースをどんどん進んで行くと、前方に明るい光が見えてきた。出口である。
既設のお化けと蛇女(知世)はしつこく二人を脅かすが、小狼はそれらに構わず悲鳴を上げ続けるさくらの手を引いて懸命に走る。
そしてとうとう出口から外に出る。日差しが暗闇に慣れた目に眩しい。
本当に怖かったらしいさくらは肩を震わせて涙目になっている。そこに小狼がハンカチを差し出す。

「もう・・・大丈夫だ。お化けは明るいところには出ないから。」
「う、うん・・・。」
「さ、これで涙を拭いて。・・・悪かったな。怖がらせちまって。」
「ううん、小狼君のせいじゃないよ。私がお化けが苦手なだけだから。」

 さくらは小狼のハンカチで涙を拭うと、精一杯の微笑みを小狼に向ける。
それを見た小狼は、一気に顔全体を赤く染める。

「どうしたの?小狼君。」
「い、いや、その・・・可愛いな・・・。
「ほえ?」
「な、何でもない。さ、次は安心して楽しめるところへ行こう。」
「・・・うん!」

 さくらは小狼にハンカチを返すと、嬉しそうに微笑む。小狼は更に顔を赤らめてくるっと背を向けて、さくらの手を取ってお化け屋敷を後にする。
その直後、出口から二つの影が姿を現す。

「・・・知世。さくらと小僧を良い雰囲気にしてしもたんやないか?」
「くうっ!さ、流石は中国約4000年のデートエスコートの秘術を持つ李君!私の秘策が全く通用しませんでしたわ!」
「秘策って・・・単にさくら脅かして泣かせてしもただけやんか。」
「李君!これで勝ったと思わないで下さいね!最後の観覧車で思い知らせて差し上げますわ!」

 お化け屋敷の出口には、ハンカチを噛んで両の目から悔し涙を流す蛇女が居た。
その隣に居る、骸骨を被ってビデオカメラを持ったケロちゃんが溜息混じりに言う。

「・・・知世。せめてその着ぐるみは脱げ。」

 それは君もだよ、ケロちゃん。
さくら争奪戦 第5回戦
○李 小狼(15分32秒 怖がりさくらのフォロー)バグバスター知世×

通算成績 バグバスター知世:3勝1敗1分  李 小狼:1勝3敗1分

 日がかなり西に傾いた頃、さくらと小狼は観覧車の待ち行列に並んでいた。
お化け屋敷の騒動からすっかり落ち着いたさくらは、楽しそうに観覧車に乗る番を待つ。
観覧車からの見晴らしは最高で、特に頂上に達したときの眼下の風景は絶景の一言に尽きる。
前回着たときは(小狼を退治した後の)知世と乗って二人でその絶景を満喫したが、今回一緒に乗るのは小狼である。
お化け屋敷での頼もしい一面を見て(本人は病院送りは御免だと必死だっただけだが)、さくらは隣に居る小狼が何か気になって仕方がない。
それは小狼も同じである。
気になる女の子が怖がった結果とは言え自分を頼ってきたことや、慰めに応えた微笑みを見たりしたことで、
小狼はさくらを意識せずにはいられなくなっているのである。
そして控えている観覧車。これにさくらと二人で乗れば自分の気持ちがより一層高まりそうな気がしてならない。
小狼、退治希望と仰る方、知世は諦めてはいませんので、筆者に八つ当たりしないようにお願いします。
 行列は少しずつ前に進み、やがてさくらと小狼の番が回ってきた。
その時、案内する従業員の一人を見て、小狼は思わず叫びそうになる。
従業員の制服を着ている名が良い黒髪の少女は、間違いなく小狼最大の敵、テロリスト知世その人である。
さくらはやっぱり、まさか知世が従業員である筈がないと思っているから、知世ちゃんにそっくりだなぁ、としか思っていない(笑)。
 観覧車の一台がゆっくり降りてきて、中から青年のカップルが出てくる。
それと入れ替わりにさくらと小狼・・・に加えて従業員姿の知世が乗り込む。
もう一人の従業員が(こちらは正規)それに気付いて引き止めようとするが、ドアはさっさと閉められてしまい、ゆっくりと遠ざかっていく。
ちなみにもう一人の正規の従業員は、先回りした知世が「封印の電撃ショック」で黒焦げにして叢に隠していたりする。本当に手段を選ばない(汗)。
 ゆっくりと上っていく観覧車の中に、緊張感が立ち込める。
さくらと並んでにこやかに微笑む従業員姿の知世。知世と向かい合いながら冷や汗を流す小狼。
二人の間に静かな、しかし激しい火花が散る。勿論さくらを巡ってのものであるが当の本人は全く知らない(^^;)。
小狼は冷や汗が止まらないが、まさかこの閉鎖空間でさくらを巻き込む恐れを含みながらテロ・・・もとい、攻撃に出るとは考えにくい。
そう思うと、小狼は次第に冷静さを取り戻してくる。さくらとの二人の時間を邪魔されたのは少々腹立たしく思うが。

「李君。」

 不意に小さな従業員(知世)が話し掛けてくる。

「な、何だ?!」
「今日は如何でした?」
「ま、まあ楽しかったよ。・・・途中で誰かさんが仕掛けた妙な妨害工作があったけどな。」
「まあ、それは災難でしたね。」
「お前のせいだろうが。お前の。」(怒)
「折角この観覧車に乗ってくださった記念に、良いものを差し上げますわ。」
「良いもの?」

 不思議そうな顔をする小狼に、小さな従業員(知世)は両手で持てるくらいの大きさの包みを取り出して小狼に差し出す。
小狼は直感的に何かある、と感じたが、さくらが目の前に居る手前、邪険には出来ないので素直にその包みを受け取る。
すると小さな従業員(知世)がすっと立ち上がり、隣に居たさくらの手を取って立ち上がらせる。
そして何を思ったか、ドアを開けてさくらと共に宙にダイブする。

「きゃーっ!!」
「心配は無用ですわ。」
「ほえ?!」

 突然の事態に絶叫を上げたさくらの落下スピードが急激にゆっくりになる。
さくらの手を取る小さな従業員(知世)のパラシュートが開いたのだ。
小さな従業員(知世)はさくらを後ろから抱えて、ゆっくりと地上へ向けて降下していく。
 一方、観覧車内に只一人取り残された小狼は、ようやく事態を飲み込んで外に出ようとして思いとどまる。
このまま外に飛び出せば、自由落下という名のバンジージャンプを披露することになってしまう。
止むを得ず小狼はドアを閉めて、包みを膝の上に乗せて座る。
 小狼を乗せた観覧車が次第に最上部へと上っていく。
小狼は包みの中身が気になり、包みに耳を当ててみる。
すると、箱の中からチッ、チッ、チッ、という周期的な機械音が聞こえてくる。
まさか、と思って小狼が包みを乱暴に破り取ると、中から透明のプラスチックケースに収められたごちゃごちゃした回路基板と
黒光りする不気味な物体が顔を出す。
周期的な機械音、回路基板、それに黒光りする不気味な物体。これらが揃ったら何が出来るか、感の良い読者諸氏ならお分かりだろう。

「じ、時限爆弾?!」

 小狼は当然狼狽して箱を放り出すが、それでどうになるものでもない。
飾りの為にか付けられたデジタル表示の値が機械音に合わせて減っていく。
それも残りは既にあと3秒を切っていたりする。
小狼はとんでもないテロリスト知世の置き土産を前に絶叫する。

「こ、こういうオチかぁーっ!!」

ちゅど〜ん!!

 大音響と共に小狼の乗る観覧車が爆発して炎と黒煙を上げる。
爆発地点は丁度最上段。まさに知世が計算しての行動としか思えない。実際そうなのだが(爆)。
小さな従業員(知世)と共に地上に降り立ったさくらは、爆発の瞬間を呆然と見上げる。
隣に居る小さな従業員(知世)は、瞳を潤ませながらのたまう。

「ああ・・・。まさかあの包みの中に爆弾が仕込まれていたなんて・・・。私の悪い予感が的中しましたわ。」
「ば、爆弾・・・。」(大汗)
「無事で良かったですわね、さ・・・いえ、木之本さん。では、私はこれで。」
「あ、ちょ、ちょっと待って!貴方は一体・・・?」
「私は・・・あくまでも通りすがりの従業員ですわ。」
「そ、そうなんだ・・・。」

 走り去っていく小さな従業員(知世)を見送りながらあっさり納得してしまうさくら。・・・ちょっとは疑えよ(^^;)。
さくらの視界から消えたのを確認して、知世は夕日に向かって額の汗を拭い、爽やかな笑顔と共に決め台詞をのたまう。

良いことをした後は、気持ちが良いですわ。

 物陰から観覧車が爆発する様子と走り去って決め台詞をのたまった知世を撮影していたケロちゃんは、涙と冷や汗が止まらない。

「と、知世ぉ〜。何もそこまでせんでもええやんかぁ〜。」(泣)

 でもケロちゃんの魂の叫びが知世に届くことはない。
この世にさくらに寄り付く悪い虫がいる限り、テロリスト・・・もとい、バグバスター知世の戦いは続くのだ。
ちなみに知世の爆弾テロという名の悪い虫退治にやられた小狼が、ズタボロになって病院送りになったのは言うまでもないだろう。

さくら争奪戦 第6回戦
○バグバスター知世(7分45秒 贈り物爆撃)李 小狼×

通算成績 バグバスター知世:4勝1敗1分  李 小狼:1勝4敗1分

・・・知世の戦いとケロちゃんの苦悩の日々は、またまた続く(ケロちゃん「も、もう堪忍してや〜!」(ToT))

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