カードキャプターさくら Side Story

Bug Buster 知世

Buster 5 −遊園地の死闘(前編)−

written by Moonstone

 ある晴れた日曜日の昼前・・・。

ピンポーン。

「はーい。」

とたとたとた・・・。

「はい、木之本です。」
「あ、お、俺、李 小狼だけど・・・。」
「小狼君。どうしたの?」
「きょ、今日はお前を直接誘いにきた・・・。」
「ほえ?」


 さくらに寄り付く悪い虫と判断すれば、誰彼構わず対象者として問答無用の攻撃を繰り出すバグバスター知世。
このところ平穏な日々が続いていたが、ある日曜日の昼前になって、専属諜報員ケロちゃん(笑)から知世に緊急連絡が入った。

「知世!小僧がこっちに、さくらん家(ち)に来おった!」
な、何ですって?!
「小僧の奴、前に知世が邪魔・・・否、退治して使えんかった遊園地の招待券を差し出して、一緒に行こうてさくらを誘い出しおったわ!」
いけませんわ〜!

 知世の絶叫の音圧は、ケロちゃんを携帯電話から壁際までノーバウンドで吹き飛ばすには十分すぎる威力である。
これまでの反省(?)と経験から、ケロちゃんが言うところの「小僧」こと小狼は、アポイント無しにさくらの家に赴き、
デートに誘い出すという大胆な手段に打って出たのだ。
さくらの動向は監視していても小狼の動向までは監視していない。まさに虚を突かれた格好だ。

「李君はさくらちゃんを誘い出して思いどおりにするおつもりですのね?!」
「な、何やそれ?!」
「遊園地の中では終始手を繋ぎ、ジェットコースターでもしっかり手を繋ぎ、お化け屋敷では怖がるさくらちゃんを抱き寄せて
『大丈夫、俺がついてる』なんて言うおつもりなのですわね!」
「・・・知世。それ、前のときお前がやったことやぞ。」(汗)

 実は前回(Buster2)でさくらを遊園地に誘おうとした小狼を退治した後、知世は何食わぬ顔でさくらと遊園地を堪能したのであるが、
そこでは始終手を繋ぎ、ジェットコースターではさくらの手をしっかり握り、一緒に食事をしたり、お化け屋敷では怖がるさくらを抱き寄せて
「大丈夫。私がついてますわ」などと言っていた
のである(爆)。
それはさくらが大好きな知世にとって、まさに至極の時だっただろう。
 しかし、さくらの相手がこれまで過去2回、対象者として病院送りにした小狼となれば話は別だ。
知世は護るべき存在であるさくらをいきなり奪われたことで、何時もよりさらに「さくらちゃんをお守りしますわ」オーラが噴出している。

「またしても李君は、さくらちゃんをその毒牙に掛けようというのですね。」
「い、いや、それは違うと思うが・・・。」
「それも今度は自宅に押しかけてさくらちゃんを拉致するという強硬手段にまで出るとは!直ちに出動してさくらちゃんをお守りしなくてはなりませんわ!」(燃)
「・・・だ、誰も拉致したりしとらへんて・・・。」(汗)
「遊園地に連れ込んだのをいいことに、何れは観覧車であんなことやこんなことをしようと企んでるんですわ!」
「何でそうなるんやー!」<=突っ込み

 そんなことをしたら18禁になってしまうから、それはない(きっぱり)。
それに小狼、退治希望と望む方々がそんな展開を許す筈がない。ちなみに筆者は歌帆萌えである。念のため(爆)。
 兎も角、知世が何としても守るべき人と思っているさくらが、既に小狼と遊園地へ向かっているとあっては、対象者は文句無しに李 小狼に決定。
そしてケロちゃんはバグバスター知世の雄姿と対象者(被害者)の哀れな末路を撮影する大役を担わされる。これも決定事項。
そして出動時のコスチュームをどうするかという問題が浮上するのだが、今回は場合が場合だから、じっくり考えている暇はない。

「今回の舞台は遊園地・・・。遊園地と来ればさて、どんな衣装が相応しいでしょう・・・。」
「着ぐるみとかどや?」
「それも良いんですけど、李君を退治する装備を追加するには時間がなさ過ぎますわ。」
「や、やっぱ退治されるんか。」(汗)
「!そうですわ!遊園地ですもの。絶対にばれないコスチュームがありますわ!」
「おっ、何やそれ?」
「後でご説明しますわ。ご自宅に迎えに上がりますので待っていてくださいね。」

 慌てた様子で電話を切る知世。宿敵(?)小狼に先手を打たれたことで相当焦っているらしい。
ケロちゃんは窓の外を見ながら、また知世が無茶苦茶せんとけばええけどなぁ、と淡い希望を抱いている。
知世のバグバスターモードは、知世がさくらに寄り付く悪い虫と判断したら、その相手が同級生であろうが、
愛するさくらの兄であろうが、そんなことはお構いなしに発動する(^^;)。
そして、今までバグバスターになった知世は、某機械人間や液体金属人間のような執念で相手を襲い、容赦ない手段で退治してきている。
・・・きっと、ケロちゃんの淡い希望は儚い幻となって宙に消えるだろう(笑)。

 場所はデートスポットとして有名な花が丘遊園地に移る。
余所行きだが動きやすい格好の小狼と如何にも年頃の少女といった服装のさくらは、周囲から見ても少々幼いがなかなかお似合いのカップルである。
・・・小狼、退治希望とおっしゃる方、筆者に怒りをぶつけないように(汗)。あくまでも客観的に述べたまでである(汗)。
流石に手は繋いでいないが(小狼の顔は既に赤い)、結構ぴったりと寄り添っていたりする(だから、筆者に石を投げてはいけませんってば)。
二人は遊園地を歩きながら何の乗り物に乗ろうかと暫く物色する。
小狼としては出来るだけ二人が並んだり向かい合ったり出来る乗り物が良いのだが、さくらの希望を考慮しないといけない。

「あ、あのさ。さくらはどんな乗り物に乗りたいんだ?」
「私は・・・うーんとね・・・メリーゴーランドとか、観覧車とか、そういうのが良いかな。」
「そ、そうか。」

 小狼はさくらのイメージからその手の乗り物をイメージしていたので、内心ほっとすると同時にやっぱり可愛いな、などと思ったりする。
小狼自身は特に苦手な乗り物はないが、出来るならジェットコースターは避けたいというのが本音である。
以前香港に居た時、苺鈴と遊園地に行ってジェットコースターに何度も乗せられ(苺鈴はジェットコースターが好きらしい)
最後にはふらふらになった記憶があるのだ。

「それじゃあ、最初はメリーゴーランドに乗ろうか。」
「うん。」

 一応エスコートなどもしたりする。小狼のこのデートにかける意気込みが分かるというものだ。
メリーゴーランドまでは二人の現在地から多少歩かなければならない。
二人は並んで歩く。その途中には高く聳え、激しいうねりを見せるジェットコースターのラインが見える。
小狼はそれを見て、何となく嫌な予感がする。
 さくらをアポイント無しで誘い出して無事遊園地に入れたは良いが、あの自称婦警のヒットウーマン(知世)や自称さくらの半魚人(知世)が
何処でどんな格好で現れるか分からない。
何せあのバグバスターとやらに二度も病院送りにされた嫌な思い出があるだけに(そのうち一回は嫌がらせの見舞いまで受けた)、
小狼は時々周囲を見回し、警戒を怠らない。
 歩いて行く途中でジェットコースターのラインが見えてくる。
やたらと急傾斜な斜面、そして螺旋、反転、何でもありのコースを見て、小狼は少し顔色が悪くなる。
こんなコースを突っ走るジェットコースターに何度も乗ったら、絶対ふらふらになってしまうだろう。
好きな女の子の前でカッコ悪いところは見せたくないというのは、小狼とて同じことだ。

「どうしたの?小狼君。」
「あ、いや、な、何でもない。さ、メリーゴーランドへ行こう。」

 どうにか誤魔化した小狼は、思い切ってさくらの手を取ってメリーゴーランドへ向かう。
その一部始終を物陰からビデオ撮影している人物プラス一匹が居る。
この遊園地の従業員の制服を着た知世とケロちゃんである。

「さくらちゃん、楽しそうですわ。」
「あ、ああ。」(汗)
「さくらちゃんの自然な笑顔・・・。ああ、超絶可愛いですわ。」
「そ、そやな。」(汗)

 知世の口調も表情は何時もと変わりなく穏やかそのものだが、そのこめかみにはぶっとい青筋が浮き出ている(笑)。
ケロちゃんは知世の「よくもさくらちゃんを」オーラが凄まじい勢いで噴出しているのを感じて卒倒しそうになる。
この調子だとどんな無茶苦茶な退治方法を繰り出すか分からないだけに、ケロちゃんは何とかして知世を落ち着かせようと試みる。

「ま、まあ知世。此処は一つ、考え方を考えてみたらどうや?」
「どういうことですの?」
「まあ、そのなんちゅうか・・・『さくらの楽しい一日の巻』とかいうタイトルでビデオを撮ることを考えてみるんはどうや?」
「ふふふ。ケロちゃん。さくらちゃんが素敵な笑顔を見せるのは、私と一緒に居るときだけで充分ですわ。」
「な、なんちゅう勝手な理屈や・・・。」(汗)

 ケロちゃんにはビデオを回す知世の横顔が、般若の横顔に見えたような気がする。
しかしケロちゃんは、知世が自分とお揃いのコスチュームを着て、「さくらちゃんをお探ししなくては」オーラを全身から噴出して
ものの数分でさくらと小狼を発見して以来、さくら奪還と悪い虫(小狼)退治に乗り出すことなく、ビデオ撮影だけしているのが引っ掛かる。
今日はこのままビデオ撮影だけになればええけどなぁ、とケロちゃんは淡い希望を抱いて知世に尋ねる。

「なあ、知世。どうして小僧を退治せんのや?」
「今はさくらちゃんが隣に居ますもの。私が繰り出す攻撃の余波が、さくらちゃんに降りかかるようなことがあってはなりませんわ。」
「じゃあ、どないすんねん?」
「今回は正面からの退治方法ではなくて、ゲリラ戦的な退治方法で臨みますわ。」

 ゲリラ戦やなくてテロ攻撃と違うか?、とケロちゃんは思うが、絶対口には出さない。

「お食事の時間までは楽しんでいただきましょう。その後、全身全霊を込めて退治いたしますわ。」
「や、やっぱり悪い虫は退治するんか・・・。」(大汗)。

 やはりケロちゃんの淡い希望は、儚い幻となる運命らしい。
というか、知世と共に修羅の道に踏み込んだ以上、そんな甘い希望は幻になって当然かもしれない(笑)。

 さくらと小狼の二人はメリーゴーランドに始まりコーヒーカップなど、遊園地の数あるアトラクションの中でも落ち着いて楽しめる部類の
アトラクションで午前中の時間を費やした。
楽しく遊んで彼方此方移動すれば当然腹は減るもの。小狼が時計を見ると正午の少し前の時間になっている。

「そろそろ・・・何処かで何か食べるか。」
「うん。もう12時近いもんね。」

 二人は手近にあるレストランに入る。時間が時間だけに店はかなり混んでいるが、まだ若干の余裕がある。
早足で駆けつけたウェイトレスによって、二人は店の中央部分にある二人用の席に案内される。
日曜日、それも行楽には絶好の天気とあって、店は家族連れやカップルがよく目立つ。
そんな中でさくらと小狼のカップル・・・もとい(汗)二人は、まだ幼いが美形同士ということで、周囲の客の視線が集まる。

「な、何か俺達、見られてるみたいだな・・・。」
「う、うん、そうみたいだね。」

 二人は照れくさいのか、俯いたり顔を上げたりと忙しない。
どういう話題でどう話を切り出せば良いか分からないためであるが、それが初々しさとなって、より一層周囲の視線を集める。
胸の高鳴る沈黙を破ったのはさくらの方である。

「あ、あの小狼君。メニュー・・・決めない?」
「あ、そ、そうだな。そうしよう。」

 小狼がテーブルの隅に置いてあるメニューを取り出して広げ、さくらの方に向けてテーブルに置く。
二人がメニューを選んでいる間に、コップに入った水と包装されたウェットティッシュのような手拭が二人の前に置かれる。
5分ほどで二人のメニューはそれぞれ決まり、小狼がテーブルに設置されているボタンを押す。これで店員が来るようになっている。
 程なくウェイターが駆けつけて、二人の注文を取る。
さくらがオムライスとミルクティー、小狼はミートソーススパゲッティとレモンティーを注文する。ウェイターはメニューを確認し終えると足早に去る。
あとは注文の品が来るまで待つだけだ。
 メニューを決める間も、そして今待っている間も、小狼の警戒は続いている。
警戒の理由は勿論、過去2回自分を病院送りにした自称婦警のヒットウーマン(知世)や自称さくらの半魚人(知世)の襲撃を恐れてのことである。
だが、これまでのところバグバスターモードを発動した知世が発する「さくらちゃんをお守りしますわ」オーラは感じられない。
もし知世がさくらを連れ出したことを知ったなら、何時何処から襲撃してくるか分からないところだが、これまでその様子はない。
小狼の警戒感は空腹感が増すと共に少しずつ緩まっていく。

 15分ほど経過したところで、まずさくらの頼んだオムライスとミルクティーが運ばれてくる。
それから間もなく、小狼の頼んだミートソーススパゲッティとレモンティーが運ばれてくる。
ふと小狼が注文の品を運んで来た人物を見て、思わず叫びそうになる。
長い黒髪をポニーテールにして、遊園地の従業員の制服の上にエプロンを着け、他のウェイトレスと比較して格段に背の低いその人物は、
間違いなく小狼が恐れる知世その人である。
一方のさくらは、まさか知世が此処で従業員として居るとは思いもしないので、単に知世ちゃんと似てるなぁとしか考えていない(笑)。

「お待たせ致しました。どうぞ。」
「あ、ど、どうも・・・。」
「ごゆっくりどうぞ。」

 格段に背の低いウェイトレス(知世)は、小狼が予測したように攻撃を仕掛けてくることはなく、流石お嬢様という立ち居振舞いで二人の席を後にする。

「小狼君が注文したメニューも来たし、食べようよ。」
「あ、ああ・・・。そうだな。」

 小狼は一抹の不安を抱きながらフォークを手に取り、目の前にある注文の品を観察するが、特に異常な点は見当たらない。
敢えて異常な点を上げるなら、スパゲッティが全体的に少し赤みを帯びているというくらいである。
単なる思い過ごしか、と思って、小狼はフォークにミートソースと共にスパゲッティをからませて口に入れる。
その瞬間、小狼の顔色が一瞬青くなり、次の瞬間、一気に真っ赤になる。

『か、辛すぎるぞ、これはー!!』(大絶叫)

 小狼は心の叫びをどうにか押さえ込み、その激辛ミートソーススパゲッティを急いで何度か咀嚼して一気に飲み込む。
顔と耳を真っ赤にした小狼を見て、オムライスを食べていたさくらが尋ねる。

「どうしたの?小狼君。顔と耳、真っ赤だよ。」
「い、いや・・・、な、何でもない・・・。」
「でも・・・。」
「さ、さくらは心配しなくて良いから・・・。」

 そうは言うものの、小狼は全身から汗を滴らせ、口から胃にかけて油田火災のように激しく燃えるような辛さを感じている。
その様子を店の外の物陰からビデオ撮影して微笑んでいる知世に、隣に居るケロちゃんが恐る恐る尋ねる。

「と、知世・・・。お前、小僧のメニューに何を細工したんや?」
「大したことではありませんわ。タバスコを10本ほど斑(むら)なくかけて差し上げただけですから。」
「・・・そ、それは洒落にならんぞ・・・。」(大汗)

 数滴垂らしただけでも相当辛いタバスコを10本以上かけられたスパゲッティは、激辛どころのものではない。
その超が付くには充分すぎるほどの辛さを含んだミートソーススパゲッティを、小狼はそれこそ必死で食べている。
その姿は周囲の涙を誘うほど悲惨な状況と言う他ない(^^;)。

「まず、先制のジャブは成功ですわね。」
「あれがジャブって・・・まだこの後にストレートかフックかアッパーカットがあるんか?!」(汗)
勿論ですわ(きっぱり)。さくらちゃんに近付く悪い虫は確実に倒しますとも。」(燃)
「あああああ〜!」(T-T)

 ケロちゃんは両手で頭を抱えて全身から冷や汗を、目から涙を濁流のように流す。
その汗や涙も、超激辛ミートソーススパゲッティの辛さを抑えることは出来ない。
ああ、小狼。痛ましや(合掌)。

 午後二時過ぎ。レストランを出たさくらと小狼がベンチに座っている。
ようやく口から胃にかけて存在した、それこそ口から火を吐くような辛さが収まったことで、小狼は上半身全体で溜息を吐く。
小狼は知世が仕掛けた超激辛ミートソーススパゲッティを無理矢理全部食べて、会計を済ませると即行でドリンク販売所へ向かい、
「六○の○い○い水」1リットルペットボトルをがぶ飲みして、燃え盛る辛さを鎮火させることを試みたのだ。
勿論、ペットボトル1本で収まるような辛さではなかったので、買っては飲み、買っては飲みを5回ほど繰り返したのであるが。

「小狼君、大丈夫?」
「あ、ああ。もう大丈夫。ようやく収まったよ。」

 心配そうに声をかけたさくらに、小狼は笑みを浮かべて答える。
小狼は同時に、今回も知世がバグバスターと化して自分を倒そうと狙っていることを思い知らされて、改めてその執念と容赦ない攻撃の恐怖を感じる。
 しかし、遊園地から逃げ出したところで、知世に正面から攻撃してくれと言っているようなものだし、何よりさくらとのデートを中断したくない。
ここはバグバスターという名のテロリスト(知世)の攻撃を警戒しながら、さくらとのデートを続けるのが最善だ、と小狼は決心する。
・・・えー、小狼、退治希望とおっしゃる方々、「さくらとのデート」を太字にしているのは、あくまでも客観的に述べたことです(汗)。
最後まで残っていた舌の辛さ(痛みに等しいかも)も消えたことで、小狼はさくらが次に行きたいアトラクションを尋ねる。

「さくら、次は何処へ行きたいんだ?」
「えっと・・・ジェットコースターに乗りたいな。」

 小狼は聳え立つ急斜面を見て、苺鈴とのことを思い出して少し顔色が悪くなる。
だが、さくらはそう何度も乗ろうとは言わないだろうし、出発さえしてしまえばあのバグバスターという名のテロリスト(知世)も攻撃できまい。
そう考えた小狼は、ジェットコースターに向かう決心を固める。

「それじゃ、ジェットコースターに乗ろうか。」
「うん!」

 二人はベンチから立ち上がって、ジェットコースターへ向かう。
しかし甘い、甘いぞ小狼。知世が二人の行動を見過ごす筈がない。

 場所は変わってジェットコースターの制御室。
知世が片手にマニュアルを持って、右手でボタンを押したりしている。
さくらと悪い虫(小狼)がジェットコースターに行くことを知った知世とケロちゃんは、一足先にジェットコースターの制御室に乗り込んだのだ。
当然、そこに居た本来の従業員と押し問答になったが、彼らは全員、知世の何処かで見たような可愛い杖による「封印の電撃ショック」を食らい、
黒焦げになって彼方此方から黒煙を上げて床にぶっ倒れている。
勿論、彼らは死んではいないので、どうかご安心を(_ _)。
 知世が制御室のドアをノックしたところから撮影に回っているケロちゃんは、改めて見せられたバグバスター知世の容赦なさに体が震える。
そして知世だけは絶対敵に回したらあかんという決意を新たにする。
小狼がジェットコースターに乗り込んだのをモニター画面で見た知世は、急いで残りの操作を行う。
ケロちゃんは嫌な予感を感じながら、操作を終えた知世に尋ねる。

「知世。お前、何しとるんや?」
「大したことではありませんわ。ジェットコースターをロケットスタートできるようにしただけですから。」
「な、何やて?!」(汗)
「この設定で頂点まで上昇すれば、最大速度は時速500km以上。まさに目にも止まらぬ速度でコースを疾走することになりますわ。」
「ちょ、ちょっと待て、知世!あ、あのジェットコースターには小僧だけやなくて、何の罪もない一般市民が大勢乗っとるんやぞ!」(大汗)

 只でさえスピードが出るジェットコースターなのに、さらに最初から加速させれば、乗客が被害なしで済むはずがない。
ケロちゃんの必死の説得に対して、知世は遠くを見るような目でモニターを見ながら、こんなことをのたまう。

さくらちゃんをお守りするためには、多少の犠牲は止むを得ませんわ。」
「と、知世?!」(滝汗)

 流石はバグバスター。目的達成のためには多少、否、相当の犠牲が出るのは想定済みらしい(汗)。
ジェットコースターの座席が埋まったことをモニター画面で確認して、知世は緑色に光るボタンを押して胴体を押さえるロックを乗客に装着してから、
迷うことなく「発進」と書かれた赤く光るボタンを押す。
その瞬間、ジェットコースターが急発進して、乗客の悲鳴が遠くから微かに聞こえるが、直ぐに聞こえなくなる。
 ジェットコースターは本来速度を得るための急斜面も簡単に上り、その下りで更に加速度を得て、人の顔が全然見えないスピードで
螺旋、反転何でもありのコースを疾走していく。
何となくジェットコースターが時々レールから浮いているように見えるのは・・・多分気のせいだろう(汗)。

「これで間違いなく懲りずにまた悪い虫になった小狼君は退治できますわ。」
「・・・そ、それは間違いないやろが・・・。」(滝汗)

 知世は期待たっぷりに、ケロちゃんは不安たっぷりに早くも二周目に突入したジェットコースターをモニター画面を通して見る。

しかしこの一人と一匹、何か重大なことを忘れてやいないか?


 勢い余ってコースを五周したジェットコースターが、ようやく出発地点に戻って来た。
凄まじいスピードに加えて螺旋、反転など何でもありのコースの影響で、乗客の中で出発前と同じ状態の者は一人として存在しない。
それどころか、胴体を押さえていたロックが外されても、誰も立ち上がろうとしない、否、立ち上がることさえ出来ない状況にある。
 乗客は全員顔面蒼白。座席に凭れたままぐったりしていて動く気配すらない。
乗客同様、顔面を蒼白にしたケロちゃんが撮影する中、知世はモニター画面を操作すると、

「う、う〜ん・・・。」

 ・・・と、目を回してぐったりしている小狼が画面に映る。
多分に満足そうな微笑を浮かべた知世が、続いてモニター画面を操作して小狼の隣に移すと、

「ほ、ほえ〜・・・。」

 ・・・と、目を回してぐったりしているさくらが画面に映る。
それを見た知世とケロちゃんは、瞬間的にその場で硬直する。

知世&ケロちゃん「・・・。」(汗)
知世&ケロちゃん「・・・。」(大汗)
知世&ケロちゃん「・・・。」(滝汗)

 そして知世は両手を頬に当てて、首をイヤンイヤンと横に振りながら心の叫びを発する。

迂闊でしたわ〜!!
迂闊違うやろー!!」<=突っ込み

 ・・・ケロちゃん、君も知世のことは言えないぞ。
そう、知世とケロちゃんは小狼を退治することで頭がいっぱいで、肝心要のさくらのことは
頭から「すかぽーん」と抜け落ちていた
のである(猛爆)。
攻撃そのものは大成功だが、守るべきさくらまで巻き込んでしまっては話にならない。完全に知世の勇み足である。
知世は唇を噛み、如何にも悔しそうな表情でモニター画面に向かって、何処かで見たような杖でモニター画面を指す。

「くうっ、流石は李君!さくらちゃんを巻き込んで私の使命を妨害するとは、なかなか機転が利きますわね!」
「・・・巻き込んだんはお前違うんか?知世・・・。」(- -;)
「しかし!可愛いさくらちゃんをお守りする使命を背負った者として、必ずや中国約4000年の歴史を背負った李君に打ち勝って、
その毒牙からさくらちゃんをお守りいたしますわ!」<=聞いちゃいない

 知世は「次こそさくらちゃんをお守りしますわ」オーラを全身から激しく噴出している。
ケロちゃんはその横で「頼むからもう少し加減せえや」オーラを噴出するが、勢いで遥かに勝る知世のオーラにあっさりとかき消されてしまう(笑)。
封印の獣と言えど、バグバスターモードになった知世の前ではやっぱりとことん無力なのだ。

さくら争奪戦 第4回戦
△バグバスター知世(3分38秒 超絶Gアタック&勇み足)李 小狼△

通算成績 バグバスター知世:3勝0敗1分  李 小狼:0勝2敗1分

・・・知世の戦いとケロちゃんの苦悩の時間は、後編へ続く(ケロちゃん「こ、後編やて?!」(滝汗))

このホームページの著作権一切は作者、若しくは本ページの管理人に帰属します。
Copyright (C) Author,or Administrator of this page,all rights reserved.
ご意見、ご感想はこちらまでお寄せください。
Please mail to msstudio@sun-inet.or.jp.
若しくは感想用掲示板STARDANCEへお願いします。
or write in BBS STARDANCE.
Buster4へ戻る
-Back to Buster04-
Buster6(後編)へ進む
-Go to Buster 6(Second Half)-
第2SSグループへ戻る
-Back to Side-Story Group 2-
PAC Entrance Hallへ戻る
-Back to PAC Entrance Hall-