カードキャプターさくら Side Story

Bug Buster 知世

Buster 1 −BB知世、誕生−

written by Moonstone

 メイド服をモチーフに猫耳をあしらったバトル・コスチュームを着たさくらが、「雷」のクロウカードを相手に奮闘している。
額にしっとりと汗が滲むさくらが、背後から放射された雷光に追われるように走る。
足の動きに合わせるかのように尻尾がちらちらと揺れる。
「雷」のクロウカードはさくら目掛けて次々と雷光を放射するが、猫っぽいコスチュームが功を奏しているのか、華麗に宙を舞い、雷光を避ける。
何度か攻撃を避けて、さくらは攻撃態勢を再度整える「雷」のクロウカードの正面に降り立って向かい合う。封印のチャンスである。

「さくら!今や!!」

 ケルベロスの合図でさくらは封印の鍵を高々と掲げて呪文を詠唱する。

「なんじのあるべき姿に戻れ!!『クロウカード』!!」

 封印の杖を「雷」のクロウカード目掛けて振り下ろす。
杖の先にカードが現れ、そこに獣の姿として実体化していた「雷」のクロウカードがそのカードへ吸い込まれていく。
身体から雷を迸らせる獣の姿が描かれたカードを手にしたさくらの表情が凛々しい。その左肩に乗っかるケルベロスも本来の風格を感じさせる。

「はあ・・・。何時見ても、さくらちゃんは可愛いですわ・・・。」

 ややカメラ目線のさくらとケルベロスが映る巨大プロジェクター・テレビを前に、彼女−大道寺知世−は頬を紅く染めてうっとりしている。
さくらがカードキャプターとして散らばったクロウカードを集める際に身に纏う特製コスチュームをデザインして作るのも、
その奮闘ぶりの一部始終をビデオに収めるのも、全て知世自ら買って出たことである。
いや、実際のところは、さくらがカード・キャプターになったことやクロウ・カードを集めることを親友である知世に話したら・・・

分かっておりますわ!
さくらちゃんの雄姿はこの大道寺知世が、全身全霊をかけて記録致しますわ!
勿論、特別なことをなさる以上、それなりの服をご用意いたしますわ!

・・・と、さくらが一言も頼まないうちに知世が一人で引き受けてしまったのであるが(笑)。
 その知世が記録する画像は全て劣化のないデジタルビデオであり、マスターのメディアはしっかりバックアップされた後厳重に保管され、
展示用、鑑賞用はそれとは別に用意される。ちなみに今使用しているものは鑑賞用である。
 マニアとして基本中の基本と言える(?)これらの行動の目的は、さくらの雄姿を記録する云々をとっくに通り越している。
時に危険な目に遭うこともあるにも関わらず、知世がさくらへの協力を惜しまないのは、知世のさくらに対する並々ならぬ深い気持ちがあるからである。
それはもう、といっても良いだろう。
知世はその気持ちに既に気付いている。だからこそ、知世の苦悩もまた深い。愛すれば故に、とでも言おうか。

「ああ・・・、何時かさくらちゃんは、他の誰かのお嫁さんになってしまうのでしょうね・・・。」

 胸に手を当てて切なげな溜め息を吐く知世。
同じ思い、否、それは断じて認めんとお思いの方は多いだろう(^^;)。
クロウカード集めは着々と進んでいるが、それは逆に知世がさくらと密接に関われる機会が残り少なくなっているということでもある。
全てが終わったときを考えると、さくらが目的を達成できて嬉しいのは勿論だが、何か大きなものを失うような気がしてならない。
さくらが幸せになってくれるならそれで良いとも思う。だが、自分を納得させるのは容易ではない。それが愛なら尚更だ。

「せめて・・・せめてさくらちゃんが幸せの瞬間を迎えるその日まで・・・この私がさくらちゃんを悪い虫から守りますわ!」(燃)

 ・・・大きな文字の部分で某少年を真っ先に思い浮かべたなら、きっと知世の叫びにエールを送るだろう(笑)。
知世の目は感動に打ち震えて潤んではいるが、その輝きは真剣そのもの。まさに愛する者を守る使命に燃える目である。

「しかし、可愛いさくらちゃんを悪い虫から守るには私一人では手に負えません。そこで・・・貴方の力が必要なんですのよ!」

 そう叫んで知世がびしっと指さした方向には・・・用意されてあった知世手製のケーキを食べ終えてご満悦のケロちゃんが居る(笑)。
ケロちゃんは人間一人分は優にあるケーキを平らげ、お腹をフグみたいに膨らませて、ちょっと苦しそうに息をしているが表情は満足そのものだ。

「はぁ〜。やっぱ知世のケーキは美味いわぁ・・・。ごっそさん。」
「・・・ケロちゃん。」
「美味いもんをたっくさん食べれるいうんは、本当に幸せなこっちゃ・・・って、何や知世。体震えとるで。寒いんかぁ?」
「・・・ふふっ、ケロちゃんたら本当に困った方ですわね。」

 知世がやや俯き加減だった顔を上げる。顔こそ笑ってはいるが目は全く笑っていない
その奥に潜む恐ろしい感情を察したケロちゃんは、大慌てで口の周りの生クリームを拭き取り、ちょこんと正座する。

「ま、まあ、その・・・何や、えろう大変なことになっとるみたいやな。」(汗)
「そうですわ。これもさくらちゃんが超絶可愛いからですけど・・・。」
「せやけど、ワイに何をしろ言うんや?」
「封印の獣であるケロちゃんは、私よりさくらちゃんと長く一緒に居られます。その最高に羨ましい条件をフルに生かして頂きたいんですの。」

 ケロちゃんは猛烈に嫌な予感を感じずにはいられない。
知世に大事な話があると言われて一人で来て、振舞われた特製ケーキを堪能できたは良いものの、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったのだ。
まあ、無理もない話ではあるが。
 緊張か果てまた腰が抜けたか(^^;)正座したままで硬直し、冷や汗が大量に流れるのを感じるケロちゃんに、
知世はいつものおっとりした口調で、しかし真剣そのものの表情で言う。

「ケロちゃんにお願いしたのは、さくらちゃんに悪い虫が近付いたら、直ぐに私に知らせて欲しい、ということですわ。」
「な、何やて?!ワイにさくらを監視しろ言うんか?!」
「監視だなんて人聞きが悪いですわ。さくらちゃんの動向に常に注意を払って、いざという時には直ぐ知らせて頂ければ良いのですから。」

 世間ではそのような行動を監視という(笑)。
ケロちゃんとしては、さくらの行動を疑うようなことをしたくないが、知世から感じるオーラはそう言っても許してくれそうにない。

「・・・か、仮にその・・・何や、悪い虫が・・・」
「ケロちゃん。悪い虫の部分は必ず強調して下さいな。」
「(汗)・・・そ、その・・・悪い虫がさくらに寄り付こうとしたって知世に知らせたとするで。」
「はい。」
「知世はその知らせを聞いてどうするんや?」
「勿論ただ知らせを聞くだけではありませんわ。さくらちゃんに寄り付く悪い虫は、この大道寺知世が退治致しますわ。」
「た、退治やて?!」(汗)
悪い虫から護るという使命に私を目覚めさせたさくらちゃんは、本当に魅力的な方ですわ。」
「し、使命って何やそれ?!」(汗)
「カードキャプターとしてクロウカードの災いからご町内を守るさくらちゃん。そしてそのさくらちゃんを護り、勇姿を記録する私・・・。
ああ・・・なんて素晴らしいんでしょう。」<=聞いてない

 頬を染めて瞳を潤ませ、うっとりとしている知世を見て、ケロちゃんはますます冷や汗の量が増えるのを感じる。
それは昔、クロウ・リードの作ったケーキを一人で食べてしまい、殺人的な笑みを浮かべたクロウ・リードに詰め寄られた時と同じ、いや、それ以上だ。

やばい。知世の奴、むっちゃやばい(汗)。
このままやとワイは知世と一緒に修羅の道を歩むことになりかねん(大汗)。

 そうっと、そうっと逃げだそうとするケロちゃん。
しかし、知世のケーキは甘くても、世の中はそんなに甘くない(^^;)。

「何処へ行かれるんですの?」
「ぎくうっ!」(動揺)

 抜き足差し足で逃げ出そうとするケロちゃんの背後から妙に優しい声がする。
ケロちゃんはその場で硬直し、猛烈な勢いで冷や汗が流れる。このまま後ろを振り返ることは恐ろしくて出来ない。

「まさかとは思いますけど・・・逃げようだなんて思ってませんわよね?」
「・・・(こくこくこく)。」<=ひたすら首を縦に振るケロちゃん
「さすがはケロちゃん。よく判ってらっしゃいますわ。」

 事実上の脅迫と違うか?とケロちゃんは思うが、決して口には出さない。出したらどうなるかくらいは何となく想像できる。
ケロちゃんは背後から痛いほど感じていた「逃げるなんて絶対許しませんわ」オーラがようやく消えたのを感じる。
改めてちょこんと正座したケロちゃんは、変わらぬ天使の微笑みを浮かべる知世と向かい合う。
なまじ表情に現れない分、全身から発するオーラが凄まじいものになるのかも知れない。

「さくらちゃん・・・その可愛さが日に日に増していき、この世に悪い虫がはびこる・・・。まさにさくらちゃんが持つ希代の魔力がなせる業ですわ。」
「い、いや、希代の魔術はクロウカードやて・・・。」
「私はさくらちゃんに災いをなす悪い虫を退治する、地球でたった一人の献身的な少女になって見せますわ!」(燃)
「あ、あかん・・・全然聞いとらへん・・・。」(汗)
「そうと決まれば善は急げ。早速儀式をしなければなりませんわ。」
「儀式ってなんや?」

 ケロちゃんが聞き返すと、知世は胸の前で両手を組んで浸っている表情で答える。

「さくらちゃんがカードキャプターとなった時のように、何かが新しく誕生する時に、儀式は欠かせませんわ。」
「あ、あれは封印の鍵を取ることで資格が生じるっちゅうことなんやけど・・・。」
「せめて名前くらいは決めておかないと、申し訳が出来ませんわ。」
「申し訳って・・・誰にするんや?」(汗)
「さくらちゃんは『カードを捕獲する者』という意味の英語でカード・キャプター・・・。私の場合はどうなるんですか?ケロちゃん。」<=やっぱり聞いてない

 勝手にどんどん話を進めて行く知世。
ケロちゃんが如何にボケと突っ込みが生活の一部である(?)大阪暮らしが長かったとは言え、こういうタイプは太刀打ちするのが非常に難しい。

「まあ、そやな・・・。知世はさくらに寄り付く悪い虫を退治したいんやろ?」
悪い虫の部分は強調することを忘れないで下さいね。」
「(大汗)・・・虫はこの場合やと・・・バグ(Bug)やな。で、退治するっていうのは・・・バスター(Buster)かいな。」
「では私はバグバスター知世(略称:BB知世)として生まれ変わるのですね。」
「い、いや、生まれ変わらんでもええんやけど・・・。」(汗)
「可愛いさくらちゃんを守るバグバスター知世の誕生ですわ!」(^o^)/
「・・・お。おっしゃあー!!」(^o^;)/

 冷や汗を流しつつも、瞳を輝かせて宣言する知世と一緒に気勢を上げるケロちゃん。
ノリが良いと言うか・・・なるようになれという気持ちだろう。
この日ケロちゃんは、世の中には外見を見ただけでは想像できないことがあるものだと実感したことだろう。

知世のさくらへの愛が深いが故に、勢いのままに誕生したBB知世!
最初の出動は何時か?!そして最初の被害者は?!そしてケロちゃんの運命は?!(笑)
次回「Buster 2]に乞うご期待!

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