雨上がりの午後

Chapter 335 初めての結婚記念日

written by Moonstone

 あっという間に10月になった。あれから心の一部で警戒を続けていた晶子の親族のお礼参りはなく、至って平穏な日々が続いている。流石に方法の如何を問わず接触したら即日600万の支払い義務が生じ、払わなければ最悪本家も含む土地建物を処分させられると公正証書になっていれば、迂闊に近づけないか。
 10月と言えば、俺にとっては社会人になって無事半年が過ぎたこともさることながら、それよりずっと大事なことが近づいている。初めての結婚記念日だ。もう1年も経つのかと思うと感慨深いが、何をすれば良いのかいまいち分からない。
 こういうことを相談できる相手は、実のところ身の回りには居ない。会社は個人的なことをあまり言わない風土で−仕事と家庭を区分けするためらしい−、独身の割合も結構高い。俺と同年代では既婚者は俺しか居ないようだし、わざわざ探しに行くのも変だ。
 じゃあ高校時代のバンド仲間や智一あたりに相談するのはどうかと言えば、これも無理がある。連絡先はメールアドレスと電話番号の両方があるが、既婚者は俺だけ。しかも全員が晶子を知っているし結婚披露パーティーに招待したから、相談しても「あー、結婚1周年ですか。それはおめでとう」くらいの反応しか期待できない。
 マスターと潤子さんが適役だが、何しろ晶子の勤務先のオーナー夫妻。何処から漏れるか分からない。こういうことは出来るだけ第3者を挟むか、自分で完結するかにする方が良い。となると、現状では自分で考えるしかない。
 結婚記念日を1週間後に控えた昼休み。オフィスのPCで調べてみる。プレゼントなら何が良いか考えながら探すが、そもそも晶子は今までのプレゼントで十分だと常々言っているし、それを無視して何かをプレゼントするのは、晶子が恐縮するだけで喜び合うという本来の目的から逸脱する。
 基本的に宝石類は高い。当たり前と言えば当たり前だが、どうもぼったくり感覚が拭えない。それに、晶子自身があまり宝石類を好まない。かなり珍しい部類だと思うが−大型ショッピングセンターに行っても立ち止まることもしない−贈られも困るものには違いない。
 雑貨や服は余計に難しい。正直、宝石類は値段を見るより宝石の大きさを見た方が良い気がする。逆に言えば宝石の大きさで選べば良いという明確な基準らしいものがあるが、雑貨や服はセンスが要求される。俺にそれを要求するのは、鷹田入の一等地に豪邸をキャッシュで建てろと言うのに等しい。
 んー…。やっぱりプレゼントは止めた方が良いな。食べ物の方がずっと良い。だけど、食材だと普段の買い物の延長線上みたいだし、結婚記念日に買うもんじゃない。こういう時は…ケーキとかが良いよな。普段は菓子類も晶子の手に委ねられているところが大きいから。
 ケーキと決まれば、洋菓子店などを探せば良い。幸い会社は小宮栄に近いから、店は豊富だし仕事帰りにでも立ち寄れる。どんな店が良いかな…。店の評価は個人の感性や味覚に左右されるから、参考程度に留めておく。かと言って、食べ歩いて比べるのはきついよな…。
 結婚記念日まで1週間余り。ある程度ピックアップして、仕事帰りに順次立ち寄って調べるか。せっかく買うなら美味い物を買いたいし、晶子と一緒に食べて「1年間ありがとう愛してる」「これから1年間よろしく愛してる」と言い合う時間にしたい。

 こういう時の時間の流れは速い。あっという間に結婚記念日は明日に迫った。何とかケーキを買う店には目星を付けたし、トラブルなく帰宅するまで気を抜かないようにすることだな。日に日に晶子が上機嫌になっていく−元々機嫌の悪い様子は見せないが−のが分かる。相当楽しみにしているんだな。

「晶子。明日は早番だよな?」
「はい。間違いなく早番ですよ。」

 即答か。かなり前からこの日は早番か休みになるようにして欲しいと言っていた、とマスターから聞いている。それ以外の日は他のスタッフの都合を優先して構わないから、ともの凄い熱意だった、とも。これだけ聞いても晶子の明日への入れ込み具合が分かる。
 互いに何をするかはおおよそ伝えてある。重複すると勿体ないからだ。どうしても生活圏が新京市のごく一部に限られる晶子は、小宮栄の有名洋菓子店のケーキと聞いて強い関心を示している。俺自身そこで買うのは初めてだから、初めて買ったものを一緒に食べようと言ってある。
 晶子の方は豪華な料理を用意すると聞いている。「これ以上ない」と思わせるほどの味を期待して欲しいとも言っているが、それは期待外れには終わらないだろう。何処でも手に入らないという点では、晶子の方が上だ。もっともこういうものに上下をつけるもんじゃないことは分かっているが。

「遅くなるようだったら、連絡くださいね。」
「分かった。早めに連絡する。」

 懸念は俺に残業がある場合だが、OJTの傍ら講習を受ける今は基本的に残業はない。元々残業が少ない会社だから、その点も安心だ。目星を付けたケーキの中から選んで、形を崩さないように気をつけて帰ることの方が神経を使う。
 車内も混雑するし、ケーキを持ち帰るにはあまり適さない。急行だとどうしても混み合うから、普通や準急を使うかな。時間はかかるが折角のケーキが潰れたりするよりはましだ。帰りが多少遅くなったところでヒステリーを起こす晶子じゃないし。
 ついに結婚記念日当日。朝は普段どおりの見送りだったが、晶子はもう楽しみで楽しみで仕方がないといった気持ちを懸命に抑え込んでいる様子だった。早番の晶子は、今日の勤務を終えたら速攻で帰宅して「これ以上ない」食事の準備に取り掛かるつもりなんだろう。
 昼休みの弁当は普段どおり。茶を給湯室で汲んで来てオフィスのデスクで食べるスタイルも社内で馴染みの光景になって久しい。この弁当を食べるようになってもう…2年は経つ。メインのおかずには未だにローテーションらしいものが見えない。それだけ多数のメニューが作れるわけだが、普段の食費の範疇で出来て来るのも凄い。
 普段は当たり前のように昼に取り出せる弁当だが、あるとないとでは1日のテンションが大きく違う。空腹自体は食堂のメニューでも満たせる。だが、休息している実感と昼以降も頑張ろうというテンションは格段に違う。俺が毎日頑張れるのは、この弁当があるからと言っても過言じゃない。
 結婚と同時に今の家に引っ越してキッチンが格段に広くなったことで、晶子はキッチンを思う存分活用している。何処に何を仕舞うかは冷蔵庫も含めて晶子に一任している。まさに晶子の城となったキッチンは、1日にコンロの火が付かない日は今のところ年末年始くらいしかない。
 早番の勤務を終えたら、家のキッチンが何時も以上に活気づくだろう。何が出て来るのか楽しみでならない。こうしてみると、食事は生活の、否、人生の大きなウェイトを占めてるんだと実感する。幾ら技術が発展しても一昔前の未来予想図のように食事を丸薬だけにすることは出来ないだろう。色々な形や味を楽しむという過程がなくなるのを望む人が増えるとは思えない。
 晶子はどんな気分で毎回弁当を作ってるんだろう?何となく「食べて欲しいから」と答えそうな気がする。本心でも、それは表向きで実際は趣味とか店での勤務の練習でも、俺にとっては想定される価格以上の価値があるものだから、晶子の回答の本心はさほど重要じゃない。無論、本心の方がより嬉しいが。

 普段どおり定時に終業。なかなか密度の濃い1日だった。OJTの一環として早くも主体的に担当する業務が出来そうだ。学生時代に基板の設計からはんだ付け・動作試験までひととおりこなした経験を買われた形だ。
 だが、今はそれより結婚記念日の方がはるかに重要。地下鉄に飛び乗って小宮栄の駅で降り、普段は新京市方面の電車に乗るところを7番出口から外に出て、高層ビルが林立する都心の大通りを少し歩く。東西に2つ並んで聳える高層ビルの東側、1階のフロアの一角に位置する洋菓子店「フロラ・グレンデ小宮栄」が目的地。
 フロアの一角といっても、占有面積はフロアの半分ほど。広大な面積は半分がケーキをはじめとする洋菓子の数々がひしめく販売エリア、もう半分がカフェエリアになっている。カフェエリアでは販売エリアで買った商品を、飲み物付き席料1時間500円で食べられるという形式だ。
 ケーキをはじめとする洋菓子に小宮栄の中心部の大通りに隣接する立地が合わさって、小宮栄大学をはじめ近隣の大学・高校生や社会人の女性がカフェエリアに通い詰め、何時も混雑している。当然というか、男女比は女性に圧倒的に傾いている。正直どれだけ暇なんだと思うが、それは言わぬが花というものか。
 販売エリアも割と人が多い。カフェエリアは此処で買ったものと店内で買える飲み物以外は持ち込み厳禁だから、人が多いのは当然といえば当然。ガラスケースの前まで行かなくても、「今日のラインナップ」と銘打って店内の彼方此方に写真付きの看板が掲げられているから、それを見て良さそうなものを選ぶことも出来る。
 この店は定番商品の数点−苺のショートケーキやモンブランといった有名どころ以外は、頻繁に入れ替わる。季節限定の商品も少なくない。そんな激しい入れ替わりの商品の上位2,3点が定番商品に加わるらしい。売れない商品は即刻製造中止と相成る、なかなか厳しい状況だと言う。
 ケーキは1人1個が無難。ケーキは生菓子だから長期保存は出来ないと思った方が良いし、夕食が相当量あると思うから、幾らデザートや甘いものは別腹と言っても食べ過ぎは控えた方が良い。となると、何を買うかは十分吟味する必要がある。
 何しろ商品の種類が多い。前情報なしでラインナップを見ると、どれを買えば良いか散々迷う羽目になりかねない。調べてきて良かったと思う…が、それでも目の前の豊富なラインナップを見ると多少の迷いが生じる。前情報でベスト5位にあった商品は…。

5位:フルーツタルト。季節のフルーツがふんだんに盛りつけられていて、見た目も豪華。
4位:ブラックジェム。スイス産高級チョコレートを溶かして生地の周囲をプリン状に固めたもの。店で1,2を争う高価な商品だが人気が高い。
3位:レアチーズケーキ。定番ケーキの1つだが、とろけるような舌触りと控えめな甘さが人気。価格も割と安めなのも人気の1つ。
2位:苺のタルトレット。苺をこれでもかとばかりに使ったもの。季節によっては店で最高値になるが、贅沢な苺の使い方が季節を問わず人気が高い。
1位:苺のショートケーキ。定番中の定番。上等な生クリームとワンポイントの大きな苺が絶品。

 …このベスト5位だけでも正直選びにくい。どれも買っていって晶子と一緒に食べたい。でも、最大10個のケーキを買っていくのは値段的にもちょっと厳しい。これは5年分の楽しみが出来たと思って、1つを選ぶしかないな。…これにするかな。

 混み合う急行を避けて、準急で移動。最初の停車駅までは少し人が多かったが、それ以降は座れるほど。ケーキが入った箱を持って帰るにはありがたい。その分胡桃町駅到着が30分ほど遅れたが、ケーキの安全が30分の遅延で守られたんだから誤差の範囲内だ。
 そこから何時ものように自転車に乗って、晶子が働く店に行く。早番だから既に勤務時間は終わっている。俺の到着が30分遅れたからだが、恐らく待つついでに少し手伝ったりしてるんだろう。カウンターに座って手持無沙汰になるとは思えない。

「ただいまー。」
「あら、おかえりなさい。奥様が今か今かとお待ちよ。」

 キッチンで何かを作っていた潤子さんが顔を上げて出迎えてくれる。店を見ると、エプロンを着けて髪を後ろで束ねたキッチンモードの晶子が、料理を運んでいる。ステージ近くの席に配膳したところで俺と目が合って、「待ってました」と言わんばかりの表情で駆け寄って来る。

「おかえりなさい。」
「遅くなったな。」
「メールを貰ってますから、大丈夫ですよ。準備してきますね。」

 晶子はカウンターを経由して奥に消える。スタッフが増えたから、個人の鍵付きロッカーが用意されてそこに上着などある程度の私物を仕舞っておけるようになった。少しして神の拘束を解いてエプロンを外し、ジャケットを羽織って晶子が出て来る。

「お先に失礼します。」
「お疲れ様。祐司君にたっぷり甘えて来なさいね。」
「お疲れさまでしたー。ごゆっくりー。」

 潤子さんと、晶子が戻って来る間に客席から戻ってきた青木さんに見送られて、俺と晶子は店を出る。日が暮れるのが着実に早まって来ている。30分ほど遅くなったから、外はほぼ夜に染まっている。住宅の窓には明かりが灯り、仄かな街灯になっている。
 今の家がある鷹田入は、俺が前に住んでいた胡桃町の南。その胡桃町は胡桃町駅が町の中心から東寄りの位置にある。だから今の家と前の俺の家はそれほど離れていない。そもそも、晶子が今も働く店は、胡桃町駅から東に走る緩い上り坂からかなり近いところまで行ける。
 かつてのルートは店から見て真南だったが、今の家は南東の方向。だから緩い登り坂を横断はするが、意識しないと前の家には近づけない。初めて迎える結婚記念日は、引っ越してほぼ1周年でもある。さほど離れていない場所がすっかり遠くなって、何だか懐かしくもある。

「引っ越して間もなく1周年でもあるんだよな。今日って。」
「引っ越しと殆ど同じ時期でしたよね。それも含めて、1年があっという間でした。」

 晶子の通勤路の住宅街は、点々と街灯が灯るだけで人影はない。家路を急いでいるであろう車の方がずっと多い。大通りに出るとそれはより顕著になる。大通りが含まれる交差点では大抵信号と横断歩道があるが、信号が変わるのが待ちきれないのか、進行方向と違う信号が黄色になったところでじりじりと進み始める車もちらほら見かける。
 レースのような道路の脇の歩道、丁度頂上に位置するT字路以降は緩やかな下り坂になる道を歩いて行く。家があるマンションに到着した頃にはすっかり夜。オートロックを解除して晶子を先に入れてドアを閉め、俺と晶子の家に向かう。

「今日の夕ご飯は楽しみにしていてくださいね。」

 玄関の鍵を閉めるなり、晶子はそう言ってキッチンに急ぐ。見るからに「やる気満々」といった様子だ。俺は早くもフル稼働中のキッチンに入り、無事運べたケーキを冷蔵庫に収納する。その足でうがいをしてから寝室に着替えに向かう。
 料理が出揃うには恐らく1時間くらいかかるだろう。その間俺が手伝えることはない。キッチンは晶子の城だし、何を作るかさえ知らされていない俺が入ったところで邪魔になるだけだ。せいぜいテーブル代わりの炬燵机を拭いておくくらいしか出来ない。もどかしい気もするが待つ時は待たないといけない。
 リビングからはカウンター越しにキッチンが見える。晶子は忙しなく移動しながら料理を進めている。何となくだが、晶子が移動するたびに移動元の料理が進展しているように思う。3つのコンロをフル稼働させているのを見たから、今のキッチンは文字どおりお祭り騒ぎなんだろう。

「祐司さん。料理を運ぶのを手伝ってくれませんか?」
「ああ、分かった。」

 ようやくお呼びがかかった俺は、カウンターに向かう。晶子が差し出した出来たての料理をテーブルに運ぶ。レタスとトマトをベースに玉ねぎや人参の千切りや海藻を盛り付けた野菜サラダ、刻みパセリのアクセントが綺麗なコーンポタージュスープが2人分並ぶ。

「これは前菜ですよ。他の料理は味を染み込ませて調理待ちです。」
「前菜から順に出て来るのか。本格的だな。」

 サラダとスープだけかと一瞬焦ったが、流石にそれはないよな。まずは野菜サラダとスープを食す。…うん、美味い。サラダはシャキシャキした食感が心地よいし、適度な酸味のドレッシングも良い具合。スープは絶妙なとろみとコーンの適度な歯応えが美味さに良いアクセントを出している。
 前菜でも普段より手が込んだものが出て来るんだから−野菜サラダだと普段は千切りキャベツがベース−、メインへの期待が高まる。こうして前菜から順次出て来るあたりは、レストランとかをイメージしてるんだろうか。これだけの味なら遜色ない。個人的にはどのレストランにも負けないと思う。
 食べ終わると、食器は晶子経由でキッチンの奥に対比される。見た限り、キッチンの平たいところは仕込みがされた食材とかが置かれている。料理をしながら空いた食器を洗うんだろう。こういった並行作業が出来ると効率が良いんだろうが、俺には真似できそうにない。
 キッチンからの音はかなり賑やかだ。複数の音が混ざっている。何を作ってるんだろう?期待が膨らんでいく。暫くして音が止まる。終わったようだ。

「祐司さん。もう1回運んでくれませんか?」
「分かった。今行く。」

 カウンターに向かうと、晶子から鉄板と皿が差し出される。今も脂が弾ける音が続く鉄板には大判の肉と付け合わせの野菜、皿には揚げたての湯気が立ち上る唐揚げと千切りキャベツとプチトマトが乗っている。俺は自分の分を持ってテーブルに戻る。少し遅れて晶子が自分の分を持って来て、もう一度キッチンに戻って皿に盛り付けた2人分のご飯を持って来る。

「豪勢だな…。」
「1年に一度のことですから。さ、食べましょうよ。」

 ようやくナイフとフォークが用意されていた理由に気づく。冷めてしまうと勿体ない。早速ナイフとフォークを使って肉を切る。すんなりナイフは通り、軽く引くだけでスムーズに切れる。切り口を見ると、中央の一部がうっすら赤い。良い感じの焼き加減だ。
 周囲を満たしていたソースが絡みついた肉の柔らかさと味わいは絶品。ご飯との相性は最高だ。付け合わせの野菜もソースを絡めて食べると実に美味い。肉の大きさは勿論だが、ただフライパンで両面を焼いただけじゃない、入念な下ごしらえのなせる技を随所に感じさせる。

「美味いステーキだな。」
「良かったです。しっかり味を染み込ませました。」
「この味付けはどうするんだろう、って考えてみても思いつかないな。」
「一般に売っている調味料の組み合わせですよ。」

 下味をつけることで直ぐ思いつくのは塩コショウ。他には…醤油か。偶に買ってきた魚を捌いて、一部を醤油漬けにしている。醤油…だろうか?ステーキに醤油ってのはイメージ出来ないが、他に何かを組み合わせてなら出来そうな気がする。
 晶子は恐らく尋ねても教えないだろう。これはキッチンを我が城とする晶子だけが知り得る秘密であって、俺が知るものじゃない、と考えていそうだ。それは「俺には出来ない」という考えじゃなく、俺が知ることでキッチンが自分の城でなくなってしまうという危機感が背景にあってのことだ。
 ステーキを1/3程度食べたところで、もう1つのメインである唐揚げに箸を伸ばす。…こちらも絶品だ。俺の好物なのを反映して弁等に入る回数も多いが、今日は何時も以上に美味い。衣はサクサク、中身はジューシーという揚げ物の基本にして王道を踏まえつつ、衣に工夫がしてある。

「衣に混じってるのって、ネギだよな?」
「そうですよ。」

 刻みネギが混じっている。衣とは別の食感とネギの匂いが良い具合に絡み合っている。組み合わせが一風変わっているが、美味いことには変わりない。料理は見た目も勿論だが、やっぱり美味いことが第一だと思う。見た目が良くても食べて美味くないとがっかり感が増す。
 刻みネギは薬味には欠かせないが、準備は結構大変だ。晶子は買ってくると刺身包丁で刻んで小分けして冷凍庫に入れる。良く切れる包丁を使わないとネギが潰れて涙が出ることもあるそうだ−悲しい気持ちも若干あるかもしれないらしい−。小分けするのはまだしも冷凍庫に入れて大丈夫かと思ったが、問題なく使えている。
 生活の知恵や料理技術が惜しげもなく投入されて、今日の料理が作られている。勿論普段もそうだが、仕込みを入念にしたり材料を増やして豪華にしたりと並々ならぬ意気込みが随所に表れている。無事最初の結婚記念日を迎えられた喜びや幸せの反映だろう。
 ステーキと唐揚げを全部食べた。大満足の出来栄えだ。脂が弾ける音がようやく静まった鉄板と、空いた皿をキッチンに運ぶ。晶子がアイスティーを淹れてくれる。俺は冷蔵庫からケーキが入った箱を取り出し、慎重に皿に移してリビングに運ぶ。

「苺のショートケーキですか。」
「オーソドックスというか定番だが、これが一番良いと思ってな。」

 俺らしいというか、一番無難な選択をした。苺が多過ぎると苺を食べた方が良いと思うかもしれないし、フルーツタルトもしかり。チョコレートはケーキになると結構好き嫌いが出やすい。となると、シンプルなレアチーズケーキか苺のショートケーキかになるが、小さい頃から馴染み深いケーキと言えばやはりこちらだろう。

「クリームが滑らかそうですね。」
「買って来た店でも不動の一番人気らしい。どの店にもあるだろうけど、それだけ万人受けしやすいんだろうな。」
「性別や年齢を問わずに好まれますよね。私も目の前にして楽しみです。」
「俺と晶子の今日この日のために買って来たんだ。食べよう。」

 ケーキの周囲をピッタリ包んでいる透明のフィルムを慎重に剥がす。そして先端から食べ始める。…美味い。今までの料理がごく正当な、塩味が主体だっただけに、クリームの甘みが余計に引き立つ。晶子が言ったように、クリームはもの凄く滑らかで、口の中でとろけて広がっていくのを感じる。
 割と珍しいアイスティーを合間に口に含む。これも美味い。この匂いは…アールグレイか。大学に入った頃は紅茶なんて名前も碌に知らなかったのに、今は匂いである程度紅茶が識別できるようになった。これも晶子の影響。俺の食生活は完全に晶子に支配されていると言えるな。

「アイスのアールグレイなんて、凝ったものを用意したな。」
「昨日から仕込んでおいたものですよ。アイスティーは水出しだと時間はかかりますけど、水を入れる以外の手間がかかりませんし、何より風味が落ちずに長持ちしますから。」
「こういう飲み物は店か家じゃないと飲めないんだよな。」
「会社の自動販売機とか使わないんですか?」
「給湯室があるから、そこで茶を淹れてる。研修や講習の休憩くらいだな。自動販売機を使うのは。」

 6月までの新入社員全員を対象にした研修から、各部署のOJTや研修や講習に切り替わって久しい。俺の居る機器開発部はOJT重視だが、全員が共通して持っておくべき知識や技術、例えばオシロスコープやスペクトラムアナライザなど測定器の使い方やはんだ付け、特性や品質の検査などは研修や講習という形で受講している。
 研修は会議室や検査室に集合しての座学が多いし、講習は製作室とかで一斉に作業をするから、休憩の時間が決まっている。その時間はそれほど長くないから、オフィスの給湯室に行くより自動販売機で買った方が良い。
 OJTだと適当な時間に休憩が取れる。普段の作業室や隣接する居室には、給湯室がある。そこには所属の班員が月500円を出して維持している緑茶やコーヒーや紅茶がある。俺はそこで茶を淹れて飲んでいる。どうも紅茶は晶子が淹れたものか晶子が働く店で出るものじゃないと飲む気がしない。

「晶子がどうやって紅茶を覚えたんだ?俺は晶子に教わったことばかりだけど。」
「大学−新京大学に入ってからですよ。」

 ケーキが早半分ほどなくなったところで俺がふと尋ねると、晶子が答える。新京大学に入ってからだと、紅茶のキャリアは実は俺と半年ほどしか違わないことになるな。

「新京大学に入ることで新京市に移り住んで、両親や本家の干渉から初めて解放されたところまでは良かったんですけど、何も知らない、誰も知らない土地に独りで来て、直ぐ手持無沙汰になったんです。まだお店でバイトもしてなかったですし、大学は必須講義は少ないし、行けば何処かで男性から声をかけられてそれを女性に妬まれて、誰も話し相手が居なかったんです。」
「…。」
「かと言って読書以外に趣味らしい趣味もないし、せめて男の手が届かない場所で、と両親からあてがわれたマンションだと大きな音を出す趣味は出来ない。何か出来そうなものはないかとショッピングセンターを歩いていたら、今も行っている紅茶専門店が目に入って…。色々買って試して覚えていったんです。」

 晶子が紅茶に詳しいのは、独りで居た時代の寂しさを紛らわせるためでもあり、趣味を作るためでもあったわけか。だが、ちっともおかしいとは思わない。何も知らない、誰も知らない土地に来たのは俺も同じ。違うのは、俺は当時付き合っていた宮城が居たこと、大学では智一と気が合ったこと、ギターが趣味として続いていたことだ。
 俺は晶子と比べてかなり恵まれた条件で新京市に移り住んだんだと思う。一方、晶子は言いようのない孤独を抱えていた。男子学生から頻繁に声をかけられることで同性からのやっかみも結構あったとは以前聞いたが、なまじ容姿が良いだけに謙遜も変に捉えられて相当な苦痛だっただろう。
 晶子が俺に照準を絞りこんで食事と身体で俺を取り込んでいったのは、今まで分かっていた理由の他に、誰かと話をしたい、同じ趣味を楽しめる相手が欲しい、というシンプルな欲求もあったわけだ。それもちっともおかしくない。人間なら程度の差はあれ孤独なことを寂しいと感じたり、それを解消したいと思うのは自然なことだ。

「…しんみりしちゃいましたね。」
「きっかけの質問をしたのは俺だけど…、良い趣味になって定着したな。俺より半年くらい早く始めたくらいなのに、淹れるところまで覚えたんだから。」
「そう…ですね。」
「料理もそうだけど、この手のことは晶子に教わらないと分からないことだらけだから、よろしく頼むな。」
「はい。勿論です。」

 紅茶は俺と晶子を繋いだアイテムだ。そのきっかけが晶子にとって趣味の1つからだったことは何ら問題じゃない。最初は晶子に付き合わされるままに飲んでいた紅茶を、今は夫婦として、夫婦で住んでいる家で結婚記念日の夕飯の締めくくりとして飲んでいる。時と人間関係の変遷が、この香りと味に凝縮されている。
 夕飯を全て済ませて、少し休んでから風呂に入る。何時もどおり、俺が先に身体を洗って−正確には「洗われて」−湯船に浸かって晶子を待つ。晶子も何時もどおり身体を洗って、それ以上に時間をかけて髪を洗う。この地味で手間がかかる作業を毎日繰り返すことで、艶やかな芳香漂う髪が保たれている。
 髪を洗い終えて乾いたタオルである程度水分を取ってから、俺の目前で湯船に入る。向い合せになって直ぐ、晶子は俺に抱きついて来る。何時もは背中を向けて俺にくっついて来るのに、ここだけが違う。否、ここからが違うと言うべきか。

「晶子…。」
「1年…経ったんだな、って実感が次々湧いてきて…。」

 晶子は俺の肩口に額を載せてゆっくり左右に振る。

「カレンダーを見て、お店でマスターと潤子さんに言われて、2人から話を聞いたお店のスタッフにも言われて、祐司さんが帰ってきて、準備しておいた晩御飯を一緒に食べて、祐司さんが買ってきてくれたケーキを一緒に食べて、一緒にお風呂に入って…。そうしていたら、私は間違いなく祐司さんと結婚していて、祐司さんと結婚してこの家に住んで1年経ったんだ、って実感がどんどん湧いて来たんです…。」
「10月、否、9月あたりから待ち遠しそうな感じはあったけど、それとはまた違うのか?」
「今日が来るまでは、結婚記念日まであと何日ってカウントダウンしていくのを楽しんで…、当日になったら今までの生活が今日も確かにあって、ちょっと特別なことがあって、それが祐司さんと私が結婚して1年経ったからこそのことだっていう感慨を噛み締めていく…。そんな感じです。」
「俺は…ケーキを何処で買うか、何を買うかを考えながら1日1日が過ぎて行って今日になった。ケーキを買って帰るなんて誕生日以外はなかったし、誕生日とは全然違うことを晶子と2人で祝うために買って帰るってのは、仕事以上に頭を使ったかもしれない。」
「結婚記念日がこうして過ごせて…本当に幸せです…。私が欲しかったものが…子ども以外は全て今此処にある…。」

 入念な仕込みに始まり、キッチンをフル稼働させて料理を作った晶子と、ケーキを選んで買って来た俺とでは、労力を比べれば明らかに晶子の方が大きく重い。だが、晶子は惜しげもなく自分の時間と手間をつぎ込んで今日を演出することで、それが出来る今の幸せを全身で味わっている。
 この1年だけでも、婚姻届の提出と新居探しに引っ越し、卒研の追い込み、就職、そして晶子の親族の干渉と色々なことがあった。それらを2人で協力して乗り切り、今は平穏な生活を営んでいる。新京市鷹田入の2LDKのマンションの一角に築いた俺と晶子の城は確実に存在していて、そこに立脚した俺と晶子の関係と生活が確実にある。

「晶子…。これからもよろしくな。」
「私こそ、よろしくお願いします。」

 俺と晶子はどちらからともなくキスをする。最初は軽く。直ぐに激しく。興奮と共に普段とは違う感慨めいたものを感じる。初めて晶子とキスをした時、初めて晶子と寝た時にも感じたような…。否、それとはまた違う。夫婦という関係があるからこその特別な今に居る感慨、とでも言えば良いのか。
 長いキスを終えて唇と舌を離す。甘く荒い吐息が絶え間なく肺から押し出される。まだ…足りない。もっとしたい。そんな衝動が湧き上がって来る。それを感じたのか、晶子は俺の唇を覆う。舌を挿し込み絡め合い、激しく長いキスを再開する。

「どうしてか分からないですけど…、もっとキスをしたい、っていう欲求が止まりません…。」
「俺も同じだ…。」

 キスは毎日している。朝出かける時も、帰宅した時も、夜も、それ以外でも。飽きたことはないがある意味日常の一部だった。なのに…今は直ぐ目の前に居る、俺が今抱き締めている晶子とキスがしたくてたまらない。

「のぼせるといけないから、出るか。」
「もう1回だけ。」

 せがむ晶子を見て抗う気力はない。もう1回キスをする。舌が喉の奥まで入り込みえぐり出すような深いキス。必然的に身体はこれ以上ないくらい密着する。風呂から上がるのを提案したのはこのシチュエーションが生み出す激しい興奮を鎮めるためでもあったんだが…、無理みたいだ。

 どうにかキスを終えて風呂を出る。と言っても、歯を磨いたらもう残りはベッドへ行くだけ。風呂であれだけ激しいキスを繰り返したくらいだ。俺は勿論、晶子がそれで満足する筈がない。パジャマを着るのもそこそこにベッドに入り、早速晶子に乗りかかる。

「キスして…。」

 やっぱりそうだよな。俺は晶子の要求に応える。俺は晶子の背中に、晶子は俺の首に腕を回し、熱く深いキスを交わす。呼吸まで一体になったような気分だ。暫くして唇を離して舌を引き抜くが、互いに抱きしめたままだから視界には晶子の顔、否、鼻から上と額あたりまでしか映らない。

「今日はキスしたい日か?」
「自分でも分からないですけど…、キスしたくてたまらない…。」
「俺も同じだけどな。」

 もう1回キス。口の中を舐めまわすように舌を動かし動かされるキスは、今日が初めてじゃない。風呂でピークに達した興奮は今も維持されているが、何故かもっとキスをしたいと思う。付き合って初めてする本格的な肉体の接触だからか?付き合い始めた頃に心が一時的に戻ったからか?
 心赴くままに口の中を這いずり回り、這いずり回られ、ようやく離す。今夜は…キスを重点的にした方が良いな。晶子のパジャマを脱がしつつ、この1年を思い返す。本当に色んなことがあった。卒研の追い込みが始まる中、互いの両親に報告して婚姻届を提出。新居を探して引っ越し。
 俺は高校時代のバンド仲間と智一、晶子はゼミの友人を招いて結婚披露パーティーを開催。店を貸し切りにして料理と準備と後片付けまで自分達でしたパーティーは、当然ながら晶子のウェディングドレス姿が最も注目を集めた。ようやく落ち着いた年末年始は、今居るこのベッドで2日間互いを貪った。
 俺は無事就職して、晶子は引き続き店で働き、社会人の第一歩を踏み出した。俺は研修からOJTへとシフトし、晶子はキッチンを切り盛りしている。そんな中、晶子の親族からの干渉。高島さんとめぐみちゃんが助けてくれて、多額の損害賠償と次回以降は身ぐるみ剥ぐかもしれない公正証書を得た。
 そして迎えた初めての結婚記念日。俺は今、晶子の下着を脱がして自分の服を脱いでいる。毎日のように続けている営みが、特別なもののように思える。何年経ってもこういう気持ちを忘れないようにしたい。こういう関係でありたい。無性にキスしたくてならないのは、深層心理が原点回帰を促しているからだろうか。

「始めるぞ。」
「来て…。」

 キスを多めにしたひととおりの愛撫を終え、念のため意思確認。もっともこれで晶子が拒否したことはないんだが。俺は風呂での興奮を持続した部分で晶子を貫く。晶子は少し背中を反らして、熱い吐息が混じった小さい嬌声を漏らす。俺は動く。結婚記念日の夜はこれから始まる…。

…。

 荒い吐息が闇に浮かんでは消える。初めての結婚記念日の夜は終わった。何時もどおり全力をぶつけ合う夜だった。何時もと違うのは、キスを意識的に多くしたこと。俺が上の時も晶子が上の時も、キスを意識的にした。キスが出来るように体勢も意識したつもりだ。
 最後の俺の放出を終えた後、長いキスをした。失神しかけで不規則に痙攣していた晶子は、キスで意識を取り戻したようだった。晶子は身体全体をずらすように俺に寄り添い、俺の耳元で荒い呼吸を続けている。
 終わってみて無性にキスがしたくなった理由を考えてみる。キーワードは結婚記念日。そんな気がする。特別だから、もキーワードに含まれるような…。前進をくまなく包む疲労もあって考えが散漫になりやすい。

「どうして…今日キスがしたくてたまらなかったか…分かった気がします…。」

 晶子が耳元で囁くように言う。俺は晶子の方を向く。

「こうして同じ家で暮らして…夜は全てを晒してセックスをすることが…、特別な愛情と信頼に基づくものだと確認するため…。それらに基づいて築いた家庭が…1年間続いたことを確認するため…。そうだと思うと…、疑問がすっと消えました…。」
「俺と晶子が夫婦ってことの確認、か…。なるほどね…。そう考えると確かにしっくりくる…。」

 セックスは夫婦でなくても出来るのが実情だ。金を払えば出来る場所も、法律で禁止されている筈なのに存在する。それが必要悪なのかどうかは別として、セックスが夫婦やそれを前提としたカップルに限られたものじゃないことは確かだ。
 金でセックスが出来る場所では、客である男と相手をする女はキスをしないという。それは身体を売る女が、身体は好きにされても良いが心は好きにされないという最後のプライドの証だとか、金で売るセックスは愛情に基づくものじゃないという割り切りの証だとか色々聞いたことはあるが、愛情があってのことじゃないのは確かだろう。
 晶子は徹底的な攻勢の連続で俺との結婚と夫婦生活に辿り着いた。それは晶子にとっては理想的だが、俺に愛情があるのか、言い方は悪いが自分の身体が使えるうちだけしか繋ぎとめられないんじゃないか、といった疑問や不安を産むことにもなる。言ってみれば、俺が割り切った感情で晶子と一緒になったんじゃないか、と。
 晶子は俺以上に多方面の知識を持っているから、風俗嬢のことも知っているだろう。ルポやドキュメントなんて山ほどある中、風俗嬢に関するものがない方がおかしい。それもあって、今自分が幸せに浸れる環境と関係が割り切りや打算といったものじゃなく、愛情に裏打ちされたものだと確認出来ることとして、キスを何度でも出来ることが思い浮かんだんだろう。
 俺としては、晶子と結婚に至ったことは割り切りや打算じゃない。俺は晶子を愛してるし、晶子なしでの生活は考えられない。そもそも、好きでもない女と必ず顔を合わせて、一緒にご飯を食べて風呂に入ってセックスする生活は出来ない。身体目当てでも1年は持たないだろう。
 勇み足や先走りとの懸念や誹りは互いの両親からも受けたが、まったく的外れなものとは言えない。卒業も決まっていないうちに結婚だと言っても飯事の延長だと思われても仕方ない面はあった。それでも協力して引っ越しも新居作りも済ませ、2人揃って大学を卒業して社会人になった。
 俺一人じゃ出来なかっただろうことは多い。晶子と2人だったからこそ出来たことは多い。それに…、誰かが俺を認めてくれる、俺を支えてくれる、そんな存在が欲しいと心のどこかで思っていた。それが晶子だ。家に帰れば晶子が居るし、美味い料理とホッとできる時間が待っている。そんな家庭が欲しかったのは俺も同じだ。

「1年夫婦として暮らしてきて…、晶子が居ることや、結婚したことの良さを感じる毎日だ…。」
「私もですよ…。祐司さんと…結婚出来て良かった…。」

 自然と笑顔になる。夜を終えた後で笑顔になるなんて意外となかったかも…。チャペルでの挙式でつきものの「喜びも悲しみも分かち合い」云々が出来るのは、簡単なようで実は難しい。常に話し合い、認識や価値観を共有出来る環境があることが大前提だ。
 個人の価値観が違うのは当然だが、全く合わないと共同生活は無理だ。多少の我慢や妥協は必要かもしれないが、全く価値観が合わないとそれすら苦痛だろう。食べ物やセックスも含めた相性が合うことは、簡単なようでやっぱり意外と難しい。
 結婚生活の1年目は幸せに満ち足りた中で過ぎていこうとしている。次の1年は何があるんだろう?大切なことは、気遣うつもりで隠し事をしないで、相談して話し合い、認識や価値観を共有して進む方向を見定めること。これは人間関係の基本なんだろうな…。
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